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今日は経済用語、Goldilocks Economyを紹介します。Goldilocksと聞いても一般の日本人にはちんぷんかんぷんですが、イギリスでは有名なおとぎ話の主人公として馴染み深い名前です。
物語の題名は一般的に「Goldilocks and the Three Bears」ですが、単にGoldilocksだったりThe Three Bearsだったり。邦訳も「ゴルディロックスと三匹のくま」とか「三匹のくま」などとなっています。日本の「ももたろう」や「かぐや姫」のように、イギリスの子供が小さいころから絵本を通じて慣れ親しんでいる童話の一つです。
そんな童話に出てくる女の子ゴルディロックスちゃんがどうして経済用語になっているのでしょうか。ゴルディロックス経済とはどんな経済用語なのでしょうか。
この物語のあらすじは以下のとおりです。
……
ある朝のこと。クマの親子は朝ごはんにスープ(原作ではporridge)を用意しますが、「熱すぎて飲めないから、お散歩に行こう」と出かけます。
一方、森で道に迷っていた女の子ゴルディロックスがクマの家を見つけます。
中へ入ると、テーブルにスープが3つありました。おなかペコペコのゴルディロックは大喜びで飲んでみると、1つめは熱すぎ(too hot)、2つめはぬるすぎ(too cold)、3つめがちょうどいい (just right) と、3つめを飲みほします。
その後、ゴルディロックスは居間に入りイスに座ろうとしますが、1つめも2つめも大きすぎ(too big)、3つめがちょうどいい(just right) ので座ると、壊れてしまいました。
次に彼女は、寝室に行くと3つのベッドがあり、1つめは固すぎ (too hard)、2つめは柔らかすぎ (too soft)、3つめがちょうどいい(just right) とそこで眠りにつきます。
クマの親子が散歩から帰り、目を覚ましたゴルディロックスはびっくりぎょうてん、大あわてで逃げていったとさ、という話です。
…
では、経済の話に戻ります。
経済が過熱する (too hot)とインフレが起こり、冷め込む (too cold) と景気後退につながり、どちらも望ましくありません。そこでちょうどいい状態(just right)がゴルディロックス経済と呼ばれています。経済指標によって定義づけされているわけではありませんが、低い失業率、資産価格(株価・地価など)のゆるやかな上昇、低金利、安定したGDP成長、低インフレ率などを特徴とした理想的な景気を指しています。
そのような理想的な状態の継続は誰もが夢見ることですが、現実はそうはいきません。このトピックは拙訳本『市場原理主義の害毒-イギリスからの眺め』の第4章で詳しく取り上げられているので、興味のある方はぜひ読んでみてください。
この文脈ではporridgeがどうして「スープ」で適訳なのかは、翻訳理論を取り入れて説明すると長くなるので、今回は割愛します。
ちょうどこの記事を書いた後、最新号のThe Economist誌(2015年10月24日発売)のFinance and economicsセクションの最後の記事Free exchangeでGoldilocksが小見出しに出ていることに気がつきました! これは「気候変動が労働生産性に与える影響」について書かれた記事でGoldilocksは経済活動ではなく気温に関連して使われています。Goldilocksを知らなくても本文を読めば内容は理解できると思いますが、知っていると小見出しを見て内容が推測できるのできっと役に立つことでしょう。
「秋」は暑すぎず、寒すぎず、ちょうどいい (not too hot, not too cold, just right)、何をしてもはかどる季節として日本では「読書の秋」「スポーツの秋」「芸術の秋」などと言われますね。充実した日々をお過ごしください。
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