マレーシアはゼロ達成 消費税を引き下げた国のその後は?
消費税廃止をぶち上げた「れいわ新選組」は、参院選で228万票を獲得。代表の山本太郎は個人で99万票を集めるなど消費税廃止は有権者の関心が高い。それでも過半数を維持した安倍首相は予定通り増税するのだろうが、世界に視線を向けると、消費税の廃止や減税は必ずしも無謀なことではないのだ――。
消費税廃止のモデルケースがマレーシアだ。マハティール首相は、昨年5月の選挙で史上初めての政権交代を果たす。その目玉公約が、日本の消費税にあたる物品・サービス税(GST)の廃止で、公約通り同年6月1日から税率を6%から0%にしている。
財源の穴埋めで、同年9月から売上税・サービス税(SST)を復活。GSTの税収はSSTの2・5倍もあり、税収不足は避けられず、財政赤字が拡大するリスクがあるだろう。
それでもマハティール首相が強気に消費税廃止に踏み切ったのは、好調な経済を維持するため。マレーシア中央銀行は、今年の経済成長率予測を4・3~4・8%と発表。個人消費や民間投資が旺盛で、昨年マイナス成長だった農業と鉱業がプラス成長に。
マレーシアはゼロ達成 消費税を引き下げた国のその後は?
好調な経済を受けて海外からの投資も右肩上がり。マレーシア投資開発庁によれば、昨年の製造業の外国投資認可額は対前年比約2・7倍の約1兆6000億円に急増している。強い追い風に乗ってマハティール首相はGDP6%成長を見込む。それが財政問題をカバーしつつ、消費税廃止に踏み切った要因だ。
■英国、カナダでは引き下げも
消費税の税率を下げたケースなら、先進国にもある。たとえば、英国はリーマン・ショック直後の2008年12月、付加価値税率を17・5%から15%に引き下げている。急ブレーキがかかった景気の立て直しが狙いで、景気回復を達成すると、10年1月に17・5%に戻している(現在は20%)。
カナダもしかりだ。付加価値税の税率は7%でスタートしたが、財政健全化を達成すると、08年には5%に減税している。カナダは、アルバータ州での石油採掘が本格化。潤沢なオイルマネーが、税率ダウンに大きく貢献したのは間違いない。消費税を廃止したマレーシアも、財源の穴埋めの有力手段として国営石油会社からのロイヤルティーに期待を寄せる。
マレーシアはゼロ達成 消費税を引き下げた国のその後は?
こうして見ると、消費減税はマユツバのテーマでないことが分かるだろう。では、日本では可能なのか。独協大経済学部教授の森永卓郎氏が言う。
「参院選の結果を見ると、次の総選挙から消費減税が大きなテーマになるでしょう。減税分の補填は赤字国債の発行でカバーします。金利はマイナスで、昨年の物価上昇率は0・8%。この状況なら、100兆円規模でもデフォルトのリスクは少ないですから」
安倍首相は、消費税を引き上げる理由のひとつとして社会保障の充実を掲げるが、詭弁だろう。社会保障の財源は、6割が社会保険料だ。議論を税金にすり替えるのはおかしい。マレーシアの歴史的な英断は、決して奇跡ではないのだ。
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