財務省がMMTに異例の反論 財政拡大論の広がり警戒
米国で注目されるMMT(現代金融理論)など財政規律の軽視につながる議論をめぐり、財務省が反対するデータを集めた資料を財政制度等審議会の分科会に出した。資料は反論データに異例の分量を割いている。来年度予算へ向けた議論をスタートするにあたって、国の借金が膨らむことへの楽観論に反論し、財政健全化への理解を広げたい考えだ。
17日に提出された資料には、国の歳出や歳入、債務残高といった基礎データのほか、財政再建を不要と見なす議論を牽制(けんせい)するデータを載せた。2年前の年度初めの資料の5倍近い62ページを費やした。
MMTは一定の条件下で財政赤字を問題視しない考え方だ。提唱する米経済学者は「日本の債務は全く過大ではない」と主張する。日本の国会でもMMTを引いて財政支出の拡大を求める声が出ている。財政審の場で話し合うのは初めての新理論に、資料では4ページを割いて、MMTに批判的な世界の著名な経済学者ら17人の意見などを列挙し反対する考えを示した。
ほかにも「日本国債は大半が国内で保有されるため財政破綻(はたん)しない」、「インフレで財政の改善が期待できる」などの意見に対し、国債の海外投資家の保有割合が高まっているデータや、インフレになれば歳出も増えて財政は悪化するなどの見解を盛り込んだ。
財務省の担当者は「いま財政危機だと主張したいわけではない。ただ将来を見すえた時に現在の債務を抱え続けるのはリスク。発信不足の反省も踏まえ、深刻さを疑う指摘にデータを示して現状への理解を広げたい」と話した。
分科会長代理の増田寛也元総務相は終了後の会見で、会合でMMTに理解を示す意見は一切出なかったと紹介した上で、「私も、(MMTは)理論ではなくポリティカル・アクティビティー(政治活動)のように考えている」と述べた。
財政状況への理解を広げるため、分科会は13年ぶりとなる地方公聴会を5月13日に大阪で開く。財政についての基調講演や委員らによるパネルディスカッションが催される。(木村和規)
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