旧約聖書の失われた古代都市「ジクラグ」の存在を示す秘宝を学生が発見
history_archeology 2020/04/15
イスラエル南西部に位置する古代遺跡「キルベット・エル・ライ(Khirbet el-Rai)」。
ここは発見以来、旧約聖書に登場する伝説上の都市・ジクラグ(Ziklag)が存在した場所と考えられてきました。
一方で断定できる証拠がなく、専門家の間で意見が分かれていました。しかし長年にわたるこの論争にも、ついに終止符が打たれるかもしれません。
今年初めから行われていた発掘調査にて、ジクラグの存在を示唆する失われた秘宝の数々が発見されたのです。
しかも、発見者は、オーストラリア・マッコーリー大学の学生32名とのこと。
本調査はイスラエル考古学庁の支援のもとで行われ、報告の詳細は、4月8日付けで「The Lighthouse」に掲載されました。
「ジクラグ」の存在を示唆する遺物を発見!
古代都市・ジクラグは、旧約聖書の『サムエル記』によると、巨人ゴリアテを倒したダビデ王に対し、同地に住んでいた
ペリシテ人が与えたとされます。
年代的には、紀元前13〜12世紀ころにペリシテ人が同地に移住して都市として機能し始めたのは、紀元前10世紀ころのようです。
それ以前に、この地一帯はカナン人が住んでいた「
約束の地」として知られます。
カナンの歴史も大変古く、紀元前3000年にはすでに文献に登場していました。
そして今回の発掘調査では、カナン人が信奉していた神・バアルをかたどったブロンズ像が見つかっています。
バアルは嵐と慈雨の神として崇められ、長い帽子を被り、すらっと背が高く足を前後に開いて、右手を振りかざしているのが特徴です。
上画像が以前に発見されていたバアル像です。
そして、下の画像が今回見つかったものであり、まさにバアル像の背格好に合致しています。
バアル像は、カナン人からペリシテ人へ、そして都市・ジクラグへと受け継がれたのでしょう。
また、旧約聖書『出エジプト記』にある「金の子牛」の物語に関連しているとみられる子牛のブロンズ像も見つかりました。
モーセは、シナイ山で神から十戒の石版を授かるまで40日という期間を待たなければなりませんでした。
その間、山のふもとに残されたイスラエルの民は、モーセが死んだと思い込み、新たに民族を導いてくれる存在として「金の子牛」を鋳造したのです。
偶像崇拝を禁ずるモーセは、これに激怒し、子牛を粉々に粉砕して水に混ぜ、それを民に飲ませたと伝えられています。
調査の結果、これらの遺物の年代は3300〜3000年前の間と推定され、ジクラグが存在したとされる年代にも符合します。
さらに、遺跡の地層を調べてみると、白い灰や焦げた泥のレンガ、木の燃えかす、燃やされた陶器の破片などが多数見つかりました。
これは同地で大規模な火災が起きたことを示します。
もしかしたらジクラグは、火に焼かれ灰となり、人々の記憶からも奪い去られていったのかもしれませんね。
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