サンフランシスコの「足」:車って古い?!
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Vol. 214
春うららの良い季節の到来です。そこで、今月は、サンフランシスコの街で見かける新しい「足」のお話をいたしましょう。
<そこのけ、ウーバー!>
アメリカと聞くと、「どこに行くにも車」というイメージがあります。我が家のあるサンノゼ市郊外もご多分にもれず、ちょっとそこまでお買い物というときにも、車がないと困ってしまいます。まさに車は、サンダル代わりでしょうか。
アメリカと聞くと、「どこに行くにも車」というイメージがあります。我が家のあるサンノゼ市郊外もご多分にもれず、ちょっとそこまでお買い物というときにも、車がないと困ってしまいます。まさに車は、サンダル代わりでしょうか。

おかげで、街の人口密度は年々悪化し、住宅難が続きます。が、同じく深刻なのは、交通事情。馬車やケーブルカーが唯一の「足」だった時代は遠く過ぎ去り、街には渋滞で動けなくなった車の波が押し寄せています。

一般人が運転手となって、お客を乗せてあげるスマートフォンアプリを使ったシステムですが、それは、タクシーが極端に少なく移動が不便であるとともに、交通渋滞や駐車スペースの事情が悪く、車を持たない人が多いという理由もありました。だったら、車を持つ人が誰かを乗せてあげて、同時にお小遣いも稼げたら、両者がハッピーでしょう、という発想でスタートしました。
たとえば、ダウンタウン地区で赤く塗られた車線は「バス・タクシー専用車線」です。配車サービスの車もタクシーではないので、ここに乗り入れると、背後に迫ったバスやトロリーバスからナンバープレートの写真を撮られて、あとで違反チケットが送られてくるとか。

こちらは、その施行日に撮影した写真ですが、それまで車でギューギュー詰めだったマーケット通りが、ウソのように空いています。

もともとは、「ベイエリア・バイクシェア(Bay Area Bike Share)」という名でスタートしましたが、今は、自動車メーカーのフォードが「ゴーバイク(Ford GoBike)」と銘打って運営しています(英語で「バイク(bike)」というと、自転車(bicycle)をさす場合が多いです)。

サンフランシスコでは、「こんなに便利な乗り物はないわ!」と5年前に耳にした記憶があるので、そこから5都市に発展したということは、かなり人気の高い「足」なんでしょう。
<今年の新しい「足」は?>
すると、今度は、いちいち決められたステーションで自転車を借りて、別のステーションで降りるのが面倒になってきたようで、今年に入って、自由に乗り降りできるシステム(dockless bike-share)が登場しています。

こちらは、1月にお目見えしたばかりの「ジャンプ(Jump)」という真っ赤な、かわいらしい自転車のシェアサービスです。従来の「ゴーバイク」とは違って電動アシスト自転車で、前方には荷物を入れられる買い物かご、座席の後ろには利用コードを入力するテンキーが備え付けられています。

「ジャンプ」は、いまだテスト稼働中で、市内には250台しか投入されていません。が、ダウンタウンを歩いていると、ブロックごとに赤い自転車を見かけるので、稼働率はかなり高いと見受けます。サンフランシスコ市交通局はジャンプに一年半の独占営業権を与えていて、当初9ヶ月間の利用状況に問題がなければ、秋には、250台の追加が許可されることになっています。

そして、配車サービスの大御所ウーバーは、自転車を使ったシェアサービスにも目を付けていて、自社アプリ内でジャンプ自転車を利用可能とするとともに、4月に入り、ジャンプ社を買収するとも明らかにされています。
<自転車なんて古いよ!>
ところが、ジャンプと同じ時期に市に営業許可を申請したのに、ジャンプだけが独占営業権を与えられ、いい目を見ているのが面白くない競合が何社かいたんです。この競合たちは、「だったら、別のサービスを始めてやるぞ!」と、市内で新手のシェアサービスを始めました。なにかって、電動スクーターを貸し出すんです。
ところが、ジャンプと同じ時期に市に営業許可を申請したのに、ジャンプだけが独占営業権を与えられ、いい目を見ているのが面白くない競合が何社かいたんです。この競合たちは、「だったら、別のサービスを始めてやるぞ!」と、市内で新手のシェアサービスを始めました。なにかって、電動スクーターを貸し出すんです。
自分の足で蹴って進む子供用のスクーターとは違って、こちらは電動で楽ですし、かなりのスピード(最大時速24キロ)が出ます。スマートフォンアプリで簡単に利用できますが、利用資格は18歳以上であること、そして電動なので運転免許証が必要です。
料金は、スタートするのに1ドル、その後は1分ごとに15セントと安価に設定されています。ダウンタウン地区は広くはないので、だいたい片道3ドル(約330円)で事足りるようです。

サービス開始10日後には、「電動スクーターが歩道に乗り入れて危ない!」と話題になっていましたし、駅の前に乗り捨てられた何十台ものスクーターが、通勤の邪魔になると問題視されていました。スクーターの利用者に腹を立てた人の仕業なのか、ゴミ箱に突っ込まれたスクーターまで見かけるようになりました。

その一方で、市議会の方は、もう少し柔軟な態度を示していて、違法駐車のスクーターは市が撤去してもかまわないけれど、専用の駐車スペースを設けるなど、今後のあり方を一緒に模索していきましょう、と三社と協力することを決議しています。

ジャンプの場合は、市内二カ所に充電ステーションを保有していますが、ここまで運ばなければならないので、利用者がここで降りれば料金を割り引いてあげたり、代わりに充電してくれる会社や一般家庭を募ったりしています。電動スクーターの場合も、自社で充電する以外に、自宅で代行してくれる利用者をリクルートすると聞きます。

懐の深いフォードや、大手ウーバーに買収されるジャンプ以上に、起業したばかりのスクーター三社にとっては、今は潤沢な投資に恵まれているものの、いずれは収支が気なってくることでしょう(ちなみに、サンフランシスコのスピン、サンマテオのライムバイク、南カリフォルニア・サンタモニカのバードと三社とも、昨年(2017年)起業したばかりの「できたてのホヤホヤ」です)。
というわけで、車社会からの脱却を図るアメリカの都市部。新手のシェアサービスは、サンフランシスコだけではなく、首都ワシントンD.C.、ダラス、マイアミ、シアトルと全米の諸都市で始まっています。
自転車やスクーターのシェアサービスが、街の混雑に頭を抱える自治体や、投資先を探すベンチャーキャピタリストの「夢の一手」となるのかは、乞うご期待! といったところでしょうか。
夏来 潤(なつき じゅん)
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