水曜日, 4月 24, 2019

アフリカのジュース工場(2009年8月号 発明家・非電化工房主宰 藤村靖之さ ん)


アフリカのジュース工場

中間技術【ちゅうかんぎじゅつ】

発展途上国に技術移転を行うとき,その国に適合した技術体系を選択して移転させるという考え方。1965年ドイツのE.F.シューマッハーが近代科学技術体系に代替するものとして提唱したintermediate technologyの訳語。対象地域の労働力,資源,市場,自然条件,文化等に適するように改良して適用することを目的とする。その後,地域の特性に応じて地域自立を達成するうえで,最終的効果を最大化する〈適正技術appropriate technology〉という考え方に発展し,1970年代後半にはOECDの報告書もまとめられた。例えば,ボーリング技術による井戸掘りよりも日本の上総(かずさ)掘りのほうが,地域によっては現地によく適合するとされる。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 


2009年8月号  発明家・非電化工房主宰 藤村靖之さん

https://chikyumura.org/2009/08/20098.html

藤村:どちらも現地から輸入して建てました。木造のコテージはキットを組み立てるだけのもので、「ムーミンハウス」と名付けました。私はトーベ・ヤンソンさんの「ムーミン」が大好きでして、あの物語は自然と平和と家族愛がテーマで、それって私たちが言ってることと一緒でしょう ? それを子どもも大人もわかるように童話にしたのが「ムーミン」なんです。そして、トーベ・ヤンソンさんの哲学を代弁しているのがスナフキン。家を持たない旅人で、ムーミンが俗世間に感化されそうになると、優しく諭して、今ある幸せに気づかせてくれる。

高木:藤村先生は、スナフキンのように優しく気づかせる人を目指しておられるのでしょうか。

藤村:ああ、そうなれるとうれしいですね。

高木:モンゴルは支援に行かれているそうですが。

藤村:非電化冷蔵庫や馬力発電(馬に発電機とバッテリーを引かせて発電する装置)の技術提供に、もう何度も行っています。彼らは主として肉食なんですが、とても優しくてシャイでね。遊牧生活の中で、非電化製品は非常に喜ばれています。馬力発電もばかにできませんよ。テレビが十分映りましたからね。



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https://blogs.yahoo.co.jp/ht_sue/2890257.html?__ysp=6Jek5p2RIOmmrOWKmyDnmbrpm7vmqZ8g6aas


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非電化工房主催の藤村靖之氏の講演の続き。 


藤村氏は海外ではモンゴルに一番行っている。 
去年は6回足を運んだそうだ。 

モンゴルは9ヶ月間が冬で―40℃にもなり、残りの3ヶ月だけが 
緑の大地となる。 
そして、遊牧民が多い。 

今回は、藤村氏がモンゴルで「非電化冷蔵庫」を作った話。 

モンゴルでは、近代化の波が押し寄せて遊牧をやめざるをえない状況が 
起こっている。 
そして、60万人が遊牧をやめて首都のウランバートルに移動したが、 
職がなくて食うに食えなくなっている。 

親は生きるために泣く泣く子供を捨ててしまうそうだ。 
捨てられた子供は、マンホールの中で生活している。 
ウランバートルのマンホールには温水が流されているので、冬でも 
暖かく、そこを寝床にして生き延びている。 

なぜ、遊牧を捨ててまで、都会に移動したがるのか? 

遊牧民に尋ねてみると、大きな理由は「テレビ」と「照明」と 
「冷蔵庫」らしい。 

①遊牧していると飼っている羊の肉も食べるのだが、今まで育ててきた 
羊をいざ殺して食べようとしても保存が効かない。(夏場の話だと思う。) 
3日で腐ってしまう。 
「もったいない」というよりは「胸が痛む」のだそうだ。 
これが最大の理由。 

②1日に15時間は真っ暗である。 
暗くなると小さなろうそくだけですごしている。 
隣の集落は何十Kmも先にある。 
孤独に耐えて生活をしてきているが、せめて照明が欲しいと 
切に思っている。 
「周りに人がいないなら、せめて本を読みたい。」これが彼らの願いだ。 

③「テレビが見たい。」 
情報が入らなくて、ついつい孤独さを感じてしまう。 
世界で何が起こっているのか知りたい。 
天気も知りたい。 
こういう願いも持っている。 

もちろん、遊牧の生活に電気などない。 

周りの文明の生活とのギャップに苦しんでいるといった感じだろうか? 


藤村氏は考えた。 
「冷蔵庫」と「テレビ」と「照明」さえあれば、人々が遊牧を捨てる 
理由はなくなる。 
元々は遊牧することが大好きな人たちだ。 

しかし、彼らの年収は2万円ぐらいのものだ。 

「冷蔵庫」を買える訳もないし、発電所を作ることも無理だ。 

藤村氏は2004年に日本で「非電化冷蔵庫」を発明している。 

しかし、それをモンゴルで作ったのでは意味が無い。 

実はモンゴルには日本にあるような材料がなかったりする。 
目先だけではなくて、将来的な「生産」「流通」を考えれば、 
「モンゴルにある材料で作る」というのが最低条件になってくる。 

あとは値段の問題がある。 
幾らの「非電化冷蔵庫」だったら、買ってもよいと考えるか?と 
率直に聞いてみたところ、羊2頭分だという。 
ということは、 
「羊1頭分で作れて、羊2頭分で買える」物を発明すれば、 
モンゴルの人が商売できる。 

よって、「羊1頭分で作れる」ということが条件として加わった。 

そこで、ウランバートルで企業家50名を集めてこの事業の 
説明をした。 
非電化冷蔵庫を発明して、そのアイデアはあげるから、 
「羊1頭分のコストがかかって、羊2頭分儲かるビジネスを起業する 
気のあるやつはいるか?」と聞いたら、全員が手を挙げたそうだ。 
その中の1人に絞り込んで、詳細を打ち合わせして、発明をスタート 
させた。 

モンゴルにはペットボトルはある。 
      木は少しある。 
      ガラスはない。 
      製鉄もない。 

ペットボトルに水を入れたものを保冷材として使う。 
日本ではガラスや金属を使って作るのだが、それも無いので、 
木などの現地で採れる材料を組み合わせて完成させた。 

結果、先の2条件をクリアした上に4℃以下をキープできる「物」が 
完成した。 

この話を聞きつけて、100Km、200Km離れた集落の遊牧民が 
馬に乗ってやって来てくれた。 

そして、この「非電化冷蔵庫」を見て皆が涙を流して喜んだそうだ。 

今までは、無理だと思って、勇気と希望を失いかけていたようだ。 
遊牧民の方々に「勇気」を与えられる発明となった。 

「非電化冷蔵庫」の果たす役割は他にもある。 
「羊1頭分のコストで羊2頭分の収入が入る」ビジネスモデルが 
出来たことで、地域レベルで環境と雇用が創出できた。 
これはまさに「非工業国」における自立型・持続型産業の創出であると 
藤村氏は言う。 




もう一つの課題に、「電力」があった。 
照明やテレビを見るための「電力」が遊牧生活には存在しない。 

そこで藤村氏が考えたのが、「馬力発電」。 

最初は、遊牧民は力が強いので、人力による発電を考えていたそうだが 
、それだと明かりはつけられるが、大きな仕事はできそうにない。 

そして、遊牧生活に欠かせない馬に目をつけた。 
写真にもあるが、バッテリーを載せた小さな車を2時間、馬で草原を 
走らせれば、1週間照明とテレビが楽しめる。 
遊牧民はみんな仲良しだから、同じ集落の人はみんなで共同でテレビを 
見ればいいし、共同で「馬力発電」を所有すれば良い。 

発明するにあたって、発電機だけは日本から中古品を持っていったそうだ。 
あとは現地の材料を使っている。 

しかし、バッテリーには問題がある。 

2年でダメになるのだ。 
そして、不要となったバッテリーは捨てられている。 
モンゴルの草原にもよく捨ててあるそうだ。 

新たにバッテリーを買うとなると、鉛と硫酸とプラスチックの固まり 
であるが、こんな装置でも1万円はする。 
年収2万円の遊牧民には手が届かない金額だ。 

そして、藤村氏は「バッテリーの再生」に取り組むことにした。 

実は、使えなくなったバッテリーには高圧電流を当てると再生できる 
そうだ。 
その再生する装置は日本では500万円する。 
これでは、ここでは無理だ。 
1台5万円でできる「バッテリー再生装置」を造ろうと氏は決めた。 

そして、装置を完成させて、「バッテリー再生ビジネス」も出来た。 

まず、モンゴルの企業家が廃棄バッテリーを拾ってくるか不要となった 
人から5ドルで買う。 
それを「バッテリー再生装置」を使って再生させ、モンゴルの消費者に 
50ドルで売る。 

この流れが完成した。 
ここでも地域レベルの雇用の創出に役立っている。 




「経済が生まれないことは選択肢に入れない」という現代社会の考え方 
が世の中をおかしくさせたと藤村氏は言う。 
長続きしないシステムだ。 



一方、モンゴルでは、一番貧しい人々が照明とテレビを楽しめることが 
実現しつつある・・・・。 




アフリカのジュース工場 - ノボ村長の開拓日誌

https://kawasimanobuo.hatenablog.com/entry/20130326/p1


「ゴージャス」と「シャビイー」のどちらが幸せか
『愉しい電力自給自足生活』より

 現在、藤村さんはナイジェリアでオレンジジュース工場の計画を進めている。

「ナイジェリアではオレンジが大量に採れますが、保存ができないので腐らせています。一方でオフシーズンにはオレンジジュースを輸入している。国内にオレンジジュース工場を作れば、産業になるし雇用も生まれるという状況です。でも当初は、電化された工場にまっしぐらでした。工場の中でロボットがオレンジをサツと運んで、皮を剥いて果汁を搾り出し、殺菌してパックを作る。人間が誰もいないところで、あつという間にオートメーションで作ってしまう。プロモーションビデオを見れば、日本人だってびっくりするくらいのゴージャスな工場を作ろうとしていた。


 そこで、政治家も含めていろいろを職業の人に現地で集まってもらって、僕がアンチテーゼとしての話をしました。

 まず、今ある案はゴージャスだけど、建設するにはお金と技術が必要だよね、それはどこからくるのって聞いた。先進工業国に、お金を貸してあげるよ、技術も教えてあげるよ、だからすぐに作れるよつて言われていないかい、と。そこで、これまでの経験を思い返してほしい。いろいろな工場を作ったとしても、他の国にマーケットができれば、すぐに撤退してしまっていないかい。残ったのは借金と失業者だけじやないかつて。

 何よりも失業率が60%以上の国なのに、全自動にする必要があるのだろうか。全自動の巨大な工場を作っても雇用は生まれないよね。一部の人は儲かるかもしれないけど、それじゃ貧富の差が広がるだけじゃないか。殺菌だって、全自動で高温殺菌するには多くの電気を使うことになる。人口の50%の人が電気のない生活をしている国に、そんな工場が本当に必要なのかと。

 次に僕の案を話しました。僕の案は、絞るのは手動の絞り機、そして太陽熱を使って殺菌をする。電気はほとんど必要としないし、たくさんの手間がかかるけど、それは雇用にもつながる。何よりも電気とケミカルに頼ることは、環境を破壊することにもつながるんだ。僕が提案するのは、非電化の工場。『シャビイー(みすぼらしい)』かもしれないけど、先進工業国の世話にならないで自分たちでできる、雇用も生まれる、と。

 そして、決めるのは君たちだ。全自動でゴージャスな工場と非電化のシャビイーな工場とどちらがいいか、みんなで決めてくれといいました。そうしたら全員、涙を流しながら非電化にするって決めたんです。よく考えた結果、テクノロジーに幻惑されて幸せを見失ってしまう可能性が大きいってことが分かったんだと思う。このオレンジジュース工場は、政治状況もあってなかなか進展はしていませんが、電気と幸せを考えるいい例です」