木曜日, 12月 09, 2010

書評:『プルードン・セレクション』(平凡社ライブラリー)



プルードン(1809-1865)を読んだことのない読者には冒頭の伝記が便利だろう。
ただ再読すると全体の構成が気になってくる。
本書はプルードンの著作から引用された断片が、近年出版された柄谷行人著『世界史の構造』と同じ構造に再構成されているのだ(初版は1977年2月)。

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編者の河野健二によって、1「状況の認識」、2「自由と労働」、3「抑圧の構造」、4「あるべき社会を求めて」と再編集、区分けされた全体の構成は、柄谷の言うネーション、キャピタル、ステート、アソシエーションに対応させ得る。
そして特に第三部の抑圧の構造はさらに所有/国家/教会に三分割されているのが注目される。
これら「絶対主義の三位一体」(173頁)はヘーゲルやコントに近いとはいえ、交換を基本にする点で柄谷の先駆けだ(「正義は‥交換的である」126頁)。

交換的正義(154頁)、
真実の社会/公認の社会(ソシエテ・レール/ソシエテ・オフィシエル 129頁)、
自由(138、146頁)、
社会契約(156頁)、集合力(163頁)、
所有(174頁)、国家(199頁)、
宗教(213頁)、アナルシー(240頁)、
などの定義、マルクスへの手紙(91頁)や結婚観(265頁)も興味深い。
また、アトミズム(211頁)という言葉を社会学的に使ったのがプルードンが最初?だということもわかった。

表紙で採用された肖像画を描いたクルーベに関する言及(『芸術の理論とその目的について』1865)もあると良かったが、、、、索引はありがたい。

本書は同じ編者のより詳細な『プルードン研究』(岩波書店)と一緒に読むべきだろう(こちらは本格的な共同研究で、年表が便利)。

引用元を年代順に並べ替えると以下になる(☆は邦訳なし)。

☆『日曜励行論』(1839) (25)/(233)/(299−300)
『所有とは何か』(1840) 131/131−2/133−5/135/158−9/174/174−5/175−7/
 177−9/185−7(不可能)/187−8/188−9/190−2/192−3/193/193−4
☆『人類における秩序の創造』(1843) 159−161/162/189−190/213−4
「マルクスへの手紙」(1846.5.17) (マルクス)91−3
☆『経済的諸矛盾の体系』(1846) (ルイブラン批判)79−83/127−8/147/161−2/168−9/
 207−8/209−210/214−9/271−3
「信用・流通の組織化と社会問題の解決」(1848) 152−3/153/179−185/211(アトム)
☆「モーリスへの手紙」(1848.2.25) 70−1/71−4/74−5
☆「ドゥー県選挙人への手紙」(1848.4.3) 75−6
☆「ゴードンへの手紙」(1848.4.10) 76−7/78−9
☆「革命的綱領」『人民の声』(1848.5.30) 273−6
☆「マゲへの手紙」(1848.6.25) 96−7
☆「『人民の声』紙編集長へ」(1848.7.6)93−5
☆「ルイ=ナポレオン・ボナパルト」「人民」(1848.12.17) 97−9/99−105 
『一革命家の告白』(1849.1)
 54−6/56−8/58−60/60−1/62/65−66/67−9/95−6/ 106−8/108−110/137−9/139−141/211−2/220−3/228−9/249−251
☆「革命に対する抵抗」『人民の声』(1849.12.3) 83/83−7/87−90/199−200/238−240
「ルイ・ブランについて」『人民の声』(1849.12)
90−1(1849.12.26)/208−9(1849.12.28)/236−7(12.28)
『19世紀における革命の一般理念』(1851) 59−60/60−1/65−6/154−5/155−7/
201−3/223−6/229−232/241−3/243−5/251−5
☆『クーデタによって証明された社会革命』(1852) 110−2/113/114ー7/117−9/200−1/245−8
☆『投機家への手引』(1854-7) 119ー121
☆『革命と教会における正義』(1858) 126−7/136−7/143−5/146−7/163−4(集合力)/165−6/265−271(家族、結婚)/276−7
☆「手帖」(1843-1860,1960-1968刊) 129−130/147/166−8
☆「X氏への手紙」(1861.8.20) 240−1
「イタリア統一の再検討」(1862) 280/282−3
☆『イエスとキリスト教の起源』(-1862,1896刊) 219−220/128-9(☆『宗教論集』)
『連合の原理』(1863) 262/262−4/265
『労働者階級の政治的能力』(1865)
 148-151/151ー2/153/153−5/194ー5/195−8/237−8/277-9/
 284-8/288ー290/290-2 /292-4 /295ー7/297-8 


以下、本来の目次と引用元。

1:1
54-56 一革命家の告白
56-58 同
58-59 同 
(ルソー) 59-6019世紀における革命の一般理念
60-61 同
62 告白
62-64 告白
65-66 一般理念
67-69 告白

1:2
70-71 モーリスへの手紙
71-74 同
74-75 同
75-76 ドゥー県選挙人への手紙
76ー77 ゴードンへの手紙
78-79 同
(ルイブラン批判)79-83 経済的諸矛盾の体系
83 革命に対する抵抗 人民の声
83-87 同
87-90 同
90-91 ルイブランについて 人民の声
(マルクス)91-93 マルクスへの手紙 1946、5、17
93-95 人民の声』紙編集長へ 1948、7、6
95-96 告白 
96-97 マゲへの手紙 1948、6、25
97-99 「ルイ=ナポレオン・ボナパルト」人民 1948、12、17
99-105 同

1:3
106-108 告白
108-110 告白
110ー112 クーデタによって証明された社会革命 
113     同
114-117 同
117ー119 同
119-121 投機家への手引

2:1
126-127 革命と教会における正義
127-128 体系
128-129 宗教論集
129ー130 手帖
131  所有とは何か
131-132 同

2:2自由
133-135 同
135 同
136-137 正義
137-139 告白
139-141 同
141-143 同
143ー145 正義
146ー147 正義
147 手帖
147 体系

2:3
148-151 労働者階級の政治的能力
151ー152 同
152-153 社会問題の解決
153 能力
153 解決
153-154 能力
154-155  一般理念
155ー157 同

2:4
158-159 所有とは何か
159-161 人類における秩序の創造
161-162 体系
162  創造
(集合力とは)163ー164  正義
165-166 正義
166ー168 手帖
168-169 体系

3:1(所有)
174 所有
174-175 同
175ー177 同
177ー179 同
179ー185 社会問題の解決
(所有は不可能である)185ー187 所有
187ー188 所有
188-189 同
189ー190 創造
190-192 所有
192-193 所有
193     所有
193-194 所有
194ー195 能力
195-198 同

3:2(国家)
199-200 「革命に対する抵抗」人民の声
200-201 クーデタによって証明された社会革命 
201ー203 一般理念
207ー208 体系
208ー209 ルイブランについて
209ー210 体系
(アトム)211 解決
211ー212 告白

3:3(教会)
213ー214 創造
214ー219 体系
219-220 『イエスとキリスト教の起源』
220-223 告白
223ー226 一般理念
226-228 同
228ー229 告白
229-232 一般理念

4:1
236ー237 『ルイブランに~』
237-238  能力
238-249  「革命に対する抵抗」人民の声
240-241  X氏への手紙
241ー243 一般理念
243ー245 同
245-248 『クーデタによって~社会革命』
249ー251 告白
251-255 一般理念

4:2
256ー257 能力
258-259 クーデタ
259-262 一般理念
262 連合の原理
262-264 同
265  同
(家族、結婚)265ー271 正義
271ー273 体系
273ー276 「革命的綱領」『人民の声』1848、5、30
276-277 正義
277-279 政治的能力
280  イタリア統一の再検討
281ー282 正義
282-283 イタリア統一の再検討

4:3
284-288 政治的能力
288ー290 同
290-292 同
292-294 同
295ー297 同
297-298 同

3 Comments:

Blogger yoji said...

以下の文章も採用してほしかった。

「アンチノミーは解消されない。ヘーゲル哲学が全体として根本的にダメなところはここだ。アンチノミーをなす二つの項は互いに、あるいは、他のアンチノミックな二項との間でバランスをとる」(プルードン『正義論』第二巻、原書の155頁)

斉藤悦則氏のサイト↓「矛盾と生きる」より

http://www.minc.ne.jp/~saito-/works.html

9:14 午前  
Blogger yoji said...

kindle
ibooks化された





プルードン「マルクスへの手紙」一八四六年五月一七日

 もしよければ、社会の諸法則やこれらの法則が実現される様式、われわれがそれにそって諸法則を発見するにいたる進歩を一緒に探究したいものです。しかし、あらゆる先験的独断論をしりぞけたあとで、こんどはわれわれが人民を自分の教義に従わせようなどとは決して考えないでおきましょう。カトリック神学を転覆した直後に、破門と呪詛を多用してプロテスタント神学をうちたてはじめたお国のマルチン・ルターのような矛盾に陥らないようにしましょう。ここ三百年というもの、ドイツはルターの塗り替えた漆喰を破壊することだけに専心させられてきたのです。新たな混乱によって人類に新たな仕事を課するようなことはやめましょう。私は、すべての意見を公にするというあなたの考えに心から拍手を送ります。われわれは実り多い真面目な論争をやりましょう。賢明で先見の明に満ちた寛容の模範を世界に示しましょう。しかしわれわれは一つの運動の先頭に立っているのですから、新たな不寛容の頭目になったり、新しい宗教の使徒を自任したりしないでおきましょう。たとえそれが論理の宗教や理性の宗教であったとしても、です。あらゆる異議を歓迎し、奨励しましょう。すべての排他性や神秘主義を払拭しましょう。いかなる問題でも決して解明され尽くした問題とは見なさないようにしましょう。そしてわれわれがとことんまで議論を尽くしたあとでも、もし必要なら、雄弁と皮肉でもってもう一度議論をやりはじめましょう。この条件でなら私は喜んであなたの同盟に加わりましょう。だが、もしそうでないのならおことわりします。
 私はまた、あなたの手紙のなかの「行動の時には」というくだりについて、いくつかの見解を述べておかねばなりません。いかなる改革も、実力行使なしには、すなわち、かつては革命と呼ばれていたが、せいぜいのところ動乱でしかないものの助けなしには、実際には不可能だという考えを、たぶんあなたはまだ持っておられるようです。私自身この考えを長いあいだ持ち続けてきたわけですから、この考えを理解していますし、喜んで議論するつもりですが、私はごく最近の研究によってこの見解を完全に放棄したことを告白しておきます。それはわれわれが成功するために必要なものではないと思います。つまり、革命的行動を社会改革の手段と見なしてはならないのです。なぜなら、この手段なるものはたんに力や専制への呼びかけ、要するに矛盾にすぎないからです。だから私は問題をつぎのように立てましょう。すなわち「ある経済組織によって社会から取り上げられた富を、別の経済組織によって社会に返還すること」です。いいかえれば、われわれは経済学において、あなたがたドイツの社会主義者が共産主義と呼んでいるもの──私はさしあたりそれを自由とか平等とかと呼ぶだけにしておきますが──を作り出すことを通じて、所有の理論を所有に対抗させねばならないのです。ところで、私はこの問題を近いうちに解決する方法を知ることができると思っています。つまり、私は、所有者にたいして聖バルテルミーの虐殺を行って所有に新しい力を与えるよりもむしろ、所有をとろ火で焼き上げることを選ぶものです。
                               (「マルクスへの手紙」一八四六年五月一七日)


https://itunes.apple.com/jp/book/purudon-serekushon/id1038315012?mt=11

プルードン・セレクション
ピエール=ジョゼフプルードン, 阪上孝 & 河野健二
カテゴリ: 哲学/思想



6:15 午前  
Blogger yoji said...

2015.09.01
電子書籍化

6:17 午前  

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