木曜日, 11月 13, 2014

『古文解釈のための国文法入門』(松尾總、研究社、昭和27)序説冒頭より

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 以下『古文解釈のための国文法入門』(松尾總、研究社学生文庫、昭和27年)序説冒頭より引用。
(著者の松尾總は学習院大学教授で三島由紀夫も教わった。同書は名著とされるが入手困難で、復刊が待たれる。)

    序説

 諸君は次の問に答えられるか。もし答えられないのだったら、この本をよむ必要があるだろう。
何故といえば諸君は、古語について極めて初歩的な知識さえもしっかり身につけていないことが
確かなのだから。

〔問題〕次の中古(口語)文または上古(口語)文を正確な現代(口語)文に言いかえよ。*

 中古(口語)文または上古(口語)文  現代(口語)文
(イ)花咲かむ。
(ロ)花咲くらむ。
(ハ)花咲きなむ。
(ニ)花咲かなむ。
(ホ)花咲きけむ。
(ヘ)花咲きけり。

(ト)花咲けり。 
(チ)花咲けりけり。
(リ)花咲きぬ。
(ヌ)花咲きにき。
(ル)花咲きたり。
(ヲ)花咲きしか。
(ワ)花こそ咲きしか。
(カ)花こそ咲かな。
(ヨ)花こそ咲かね、春は来にけり。
(タ)花咲かね。(上古文)
(レ)花咲きね。
(ソ)花な咲きそ。
(ツ)花咲かず。
(ネ)花咲かざり。
(ナ)花咲かじ。
(ラ)花や咲かまし。
(ム)花だに咲く。
(ウ)花だに咲け。
(ヰ)花さへ咲く。
(ノ)花咲かむや。

(オ)花咲かめや。
(ク)水流れぬ。
(ヤ)水ぞ流れぬ。
(マ)水流れぬべし。

(ケ)水流るゝなり。
(フ)水流るなり。
(イ)花が咲こう(花が咲くだろう)。
(ロ)今頃は花が咲いているだろう。
(ハ)花が咲いてしまうだろう。
(ニ)花が咲いてくれ。
(ホ)(嘗て)花が咲いたろう。
(へ)花が咲いた。
  (これには説がある。後述)**
(ト)花が咲いている。
(チ)花が咲いていた。
(リ)花が咲いてしまう。
(メ)花が咲いてしまった。
(ル)花が咲いている。
(ヲ)花が咲いたか。
(ワ)花こそ咲いた。
(カ)花こそ咲かない。
(ヨ)花こそ咲かないが、春は来てしまった。
(タ)花が咲いてくれ。
(レ)花が咲いてしまえ。
(ソ)花がどうか咲くな。
(ツ)花が咲かない。            
(ネ)花が咲かないでいる。          
(ナ)花が咲かないだろう。          
(ラ)花が咲くだろうか、恐らく咲かないだろう。
(ム)花でさえ咲く。
(ウ)せめて花なりと咲け。
(ヰ)花までが咲く。
(ノ)花が咲くだろうか。
  (疑問の場合と、反語の場合とがある)
(オ)花が咲こうか、咲きはしまい。
(ク)水が流れてしまう。
(ヤ)水が流れない。
(マ)水がきっと流れるだろう。(又は水が流れ
   てしまうだろう。)
(ケ)水が流れるのだ。
(フ)(音が聞こえるから)どうやら水が流れるら
   しい。

 右に上古文と註したのは、上古(奈良時代)の言い方で、中古(平安時代)には殆どすたれた
ものである。さて右の現代語による訳文は、できるだけ正確にその意をつたえるように直訳体を
以てしたのであるから、なかにはぎごちない感じをうける節もないではなかろうが、しかし訳語
のあいまいさを、できるだけなくなそうとすると大体こんなところに落ちつくべきだと思う。
 右の訳文をみてなかには疑問をおこす諸君もあるかも知れない。たとえば「(ル)の『花咲きた
り』を『花が桜咲いている』と訳したのは、へんだ。むしろ『花が咲いた』であって、過去のこと
をいっているのではないか」などと。だが、その疑問は、その「花咲きたり」が中古文である限
りにおいては、明らかに誤っているのである。


引用者注:

図表化して右にすぐ答えを載せた(書式がズレる場合があるかもしれない)。
**
52頁以降で「き」は単純過去で「目者(目編)回想」、「けり」は過去の詠嘆的な表現で「伝承回想」「伝聞」といった説が複数紹介されるが、『竹取物語』以外は使い分けの例があまりなく、確証がないとされる。

///////////////




以下、改稿前バージョン:

 序説

 諸君は次の問に答えられるか。もし答えられないのだったら、この本をよむ必要があるだろう。
何故といえば諸君は、古語について極めて初歩的な知識さえもしっかり身につけていないことが
確かなのだから。

〔問題〕次の中古(口語)文または上古(口語)文を正確な現代(口語)文に言いかえよ。
(イ)花咲かむ。           
(ロ)花咲くらむ。         
(ハ)花咲きなむ。          
(ニ)花咲かなむ。        
(ホ)花咲きけむ。         
(ヘ)花咲きけり。          
(ト)花咲けり。 
(チ)花咲けりけり。            
(リ)花咲きぬ。
(ヌ)花咲きにき。
(ル)花咲きたり。
(ヲ)花咲きしか。
(ワ)花こそ咲きしか。
(カ)花こそ咲かな。 
(ヨ)花こそ咲かね、春は来にけり。       
(タ)花咲かね。(上古文)____
(レ)花咲きね。
(ソ)花な咲きそ。
(ツ)花咲かす。
(ネ)花咲かざり。
(ナ)花咲かじ。
(ラ)花や咲かまし。
(ム)花だに咲く。
(ウ)花だに咲け。
(ヰ)花さへ咲く。
(ノ)花咲かむや。
(オ)花咲かめや。
(ク)水流れぬ。
(ヤ)水ぞ流れぬ。
(ニ)水流れぬべし。
(ケ)水流るゝなり。
(フ)水流るなり。

右の答を次に掲げよう。
(イ)花が咲こう(花が咲くだろう)。
(ロ)今頃は花が咲いているだろう。
(ハ)花が咲いてしまうだろう。
(ニ)花が咲いてくれ。
(ホ)(嘗て)花が咲いたろう。
(へ)花が咲いた。(これには説がある。後述)
(ト)花が咲いている。
(チ)花が咲いていた。
(リ)花が咲いてしまう。
(メ)花が咲いてしまった。
(ル)花が咲いている。
(ヲ)花が咲いたか。
(ワ)花こそ咲いた。
(カ)花こそ咲かない。
(ヨ)花こそ咲かないが、春は来てしまった。
(タ)花が咲いてくれ。_____
(レ)花が咲いてしまえ。       
(ソ)花がどうか咲くな。          
(ツ)花が咲かない。            
(ネ)花が咲かないでいる。          
(ナ)花が咲かないだろう。          
(ラ)花が咲くだろうか、恐らく咲かないだろう。
(ム)花でさえ咲く。             
(ウ)せめて花なりと咲け。        
(ヰ)花までが咲く。                
(ノ)花が咲くだろうか。(疑問の場合と、反語の場合とがある)
(オ)花が咲こうか、咲きはしまい。
(ク)水が流れてしまう。
(ヤ)水が流れない。
(マ)水がきっと流れるだろう。(又は水が流れ
   てしまうだろう。)
(ケ)水が流れるのだ。
(フ)(音が聞こえるから)どうやら水が流れるら
   しい。

 右に上古文と註したのは、上古(奈良時代)の言い方で、中古(平安時代)には殆どすたれた
ものである。さて右の現代語による訳文は、できるだけ正確にその意をつたえるように直訳体を
以てしたのであるから、なかにはぎごちない感じをうける節もないではなかろうが、しかし訳語
のあいまいさを、できるだけなくなそうとすると大体こんなところに落ちつくべきだと思う。
 右の訳文をみてなかには疑問をおこす諸君もあるかも知れない。たとえば「(ル)の『花咲きた
り』を『花が桜咲いている』と訳したのは、へんだ。むしろ『花が咲いた』であって、過去のこと
をいっているのではないか」などと。だが、その疑問は、その「花咲きたり」が中古文である限
りにおいては、明らかに誤っているのである。

 

**引用者注:
52頁以降で「き」は単純過去で「目者(目編)回想」、「けり」は過去の詠嘆的な表現で「伝承回想」「伝聞」といった説が複数紹介されるが、『竹取物語』以外は使い分けの例があまりなく、確証がないとする。


古典文法助動詞活用表
接続意味基本形未然形連用形終止形連体形已然形命令形活用の型
未然形受身
尊敬
可能
自発
るるるれれよ下二段型
らるられられらるらるるらるれられよ
使役
尊敬
するすれせよ下二段型
さすさせさせさすさするさせれさせよ
しむしめしめしむしむるしむれしめよ
打消(ず)
ざら

ざり

ざる

ざれ

ざれ
特殊型
推量
(ん)
四段型
むず
(んず)
むずむずるむずれサ変型
まし(ませ)
ましか
ましましましか特殊型
打消推量特殊型
希望まほし(まほしく)
くほしから
まほしく
まほしかり
まほしまほしき
まほしかる
まほしけれ形容詞シク活用型
連用形過去(せ)しか特殊型
けり(けら)けりけるけれラ変型
完了つるつれてよ下二段型
ぬるぬれナ変型
たりたらたりたりたるたれたれラ変型
推量けむ
(けん)
けむけむけめ四段型
希望たし(たく)
たから
たく
たかり
たしたき
たかる
たけれ形容詞ク活用型
終止形推量らむ
(らん)
らむらむらめ四段型
べし(ぺく)
べから
べく
べかり
べしべき
べかる
べけれ形容詞ク活用型
らしらしらしらし特殊型
めり(めり)めりめるめれラ変型
打消推量まじ(まじく)
まじから
まじく
まじかり
まじまじき
まじかる
まじけれ形容詞シク活用型
伝聞・推定なりなりなりなるなれラ変型
連体形
体言
断定なりならなり
なりなるなれなれ形容動詞ナリ活用型
たりたらたり
たりたるたれたれ形容動詞ナリ活用型
その他完了ラ変型
比況ごとくし(ごとく)ごとくごとしごとき形容詞ク活用型

3 Comments:

Blogger yoji said...


http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1414738074
「おざなり」と「なおざり」の違いが分かりません。教えてください。
回答数:2 閲覧数:132,832 お礼:知恵コイン0
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ベストアンサー

seshi3333さん2008/02/10 15:11:35
「おざなり」は適当にいいかげんに済ましてしまうこと、「なおざり」はまともに着手すらしないことを言います。

「おざなり」はもともと「お座なり」で、江戸時代の幇間(ほうかん)の隠語だったという説が一般的です。(幇間は宴席に出て客の遊びに興を添える仕事。太鼓持ち。)お座敷の時に、お客のランクによって扱いを変える、つまりその「座」なりに適当にやる、という意味です。

「なおざり」は平安時代から使われていたそうで、当時の辞典にも「等閑ナヲザリ」とあるそうです。「等閑(とうかん)」は「なおざり」と同じ意味の漢語です。
「なおざり」は「そのまま」という意味の「なお(直・猶)」に「去り」あるいは「せざり(しない)」がついたという説が一般的で、何もしないで放っておく、という意味です。

(過去の知恵袋Q&Aから引用しました:http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1311638473)
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質問した人からのコメント2008/02/11 16:02:35
お二人ともどうもありがとうございました。

10:33 午後  
Blogger yoji said...

意外と綺麗に書けない「ひらがな」ランキング - ネタりか
http://netallica.yahoo.co.jp/news/20150212-00000610-granking
そんなひらがなを書く時に、多くの人が苦戦しているのはどの文字なのでしょう。ランキングの同率1位に選ばれたのは《ふ》と《を》でした。《ふ》の元になった漢字は「不」。書き順は、頭の点から下に続き左の点から右の点へ。流れるように書くのがポイントです。左右の点のバランスを取ると綺麗な《ふ》を書くことができそう。《を》の元になったのは「遠」だそうです。あまり面影がないので驚いた人もいるのではないでしょうか。3位に選ばれたのは「奴」から発展した《ぬ》でした。一画目と二画目が交わってできた隙間と、最後の一回転のバランスが難しいひらがなですね。みなさんが苦手なひらがなは何位にランク・インしていましたか。

7:01 午後  
Blogger yoji said...



単語で喋るな、文章
12で割る
12を割る
てにをは
が大事
20141125#ノンストップ

1:58 午前  

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