土曜日, 10月 08, 2016

経済数学の基礎

経済数学の基礎

● dy/dxは、yのxに対する限界代替率?xのyに対する限界代替率?

まず、一般的な分数について。1にしたい方を分母に持ってくる。1人当たり生産量とかならY/N。
為替レートなら円/ドル。1ドルという財の価格が、100円から150円に上昇すれば、
ドルという財の価値が上がったのでドル高。ドル高と来れば、円は安。

○○の××に対する割合は?という文章では、聞きたいのは○○についてなので分子、
基準は××なので分母に持ってくる。GDPに対する税収の割合なら税収/GDP。

ミカン100円、リンゴ300円の時、リンゴのミカンに対する相対価格は3。
リンゴの価値で測った(リンゴの価値で表した)ミカンの価値は、
基準がリンゴで、聞きたい主役がミカンなので、1/3

しかしX財2個を減らすならY財を3個増やさなければならない時、あるいは交換できる時という文章は、
数字は自身の価値ではなく相手の価値を意味する。よってXのY対する相対価格は3/2
限界代替率も同様で、X財のY財に対する限界代替率は3/2である。
すなわち、MRSxy=dy/dxは、xのyに対する限界代替率。

そういう意味では、為替レートも交換するための比率を表す数値なので、
名目為替レートが1ドル100円のとき、すなわち100円/1ドルは、ドルの円に対する相対価格となる。
もしくは円で測ったドルの価値であり、邦貨建て(自国通貨建て)名目為替レートという。


● 変化率および成長率、インフレ率の定義

「t期」の物価水準の変化率、すなわち「t期」のインフレ率の定義は、

    Pt-Pt-1  ⊿Pt
 πt=──────=────  ・・・1A
     Pt-1    Pt-1

「t期」の成長率も同じで、分子の1項目がt期の変数、2項目および分母は「t-1期の変数」。
最右辺の⊿(でるた)という記号は、「変化分」を意味する。時系列分析(時系列データ)では、「階差」と言う。
「差分」とも言うが、差分方程式においては、⊿yt=yt+1-ytを意味する。
微分の公式の分子がf(x+h)-f(x)なのに対応させてなのか、前進差分(前方差分)となっている。

           Pt-Pt-1   Pt
 純インフレ率=πt=──────=───-1
            Pt-1    Pt-1

            Pt
 粗インフレ率=Πt=───=1+πt  ・・・1B
           Pt-1


(名目および実質)金利にも純と粗の概念があり、

       利子
 純利子率=───=it、rt
       元本

       利子+元本
 粗利子率=──────=1+it、1+rt
        元本

100円の元本に対して、5円の利子が付く場合には、純利子率は0.05、粗利子率は1.05となり、
粗利子率は元利合計を意味する。


● フィッシャー方程式と、学部レベルの近似式

t期において、Pt円を名目金利(1+it)で運用したものは、t+1期にその元利が得られるので、
t+1期の期待物価水準、Pet+1で割って、実質的な利回り=実質金利(1+rt)を求めると、

      (1+it)Pt           Pet+1
 1+rt=───────  →  (1+rt)(────)=1+it
       Pet+1              Pt

左辺の2つ目の括弧の中で1を足して引くと、

         Pet+1           Pet+1-Pt
 (1+rt)(1+────-1)=(1+rt)(1+───────)=1+it
          Pt              Pt

  →  (1+rt)(1+πet+1)=1+it  ・・・2A

学部レベルの近似式としてよく出てくるのが、

 1+z=(1+x)(1+y)  →  1+z=1+x+y+xy

において、xおよびyが非常に小さい値ならば、右辺4項目の「xy」はほとんど0に近いので無視できると考え、

 1+z=(1+x)(1+y)  →  z=x+y  ・・・2B

と近似できる。そこで2A式に2B式の近似を当てはめてみると、

 1+it=(1+rt)(1+πet+1)  →  it=rt+πet+1  ・・・2C

というフィッシャー方程式が得られる。
よく学部マクロにおいては、フィッシャー方程式は、it=rt+πetとなっているが、
厳密には、期待インフレ率はπetではなく、πet+1である。
学部レベルでは特に問題ないので、わかりやすくそうしているが、
院以上の上級になると、ちゃんとπet+1となっているので注意しよう。


● ln(1+x)=x、という近似

y=ln(1+x)とすると、

  dy   1
 ───=────
  dx  1+x

y=ln(1+x)のグラフにおいて、x=0のときの接線の傾きは1となることを意味する。
ということは、その接線のグラフというのは、y=xを意味する。
x=0のときに成り立つ関係なので、xが十分に小さく、0に近ければ、次のような近似が成り立つ。

 ln(1+x)=x  ・・・3

2C式のフィッシャー方程式の導出にも、この近似は使えて、2C式の両辺の対数を取ると、

 ln(1+it)=ln(1+rt)+ln(1+πet+1)  →  it=rt+πet+1  ・・・2C

z=x^2とか、z=xyという関数は、次数は2次であり、非線形である。
z=xyの両辺の対数を取ると、lnz=lnx+lnyとなり、対数線形化という。


● 対数差分=成長率(変化率)

               xt
 lnxt-lnxt-1=ln(───)
              xt-1

右辺の括弧の中で、1を足して引くと、

                 xt         xt-xt-1
 lnxt-lnxt-1=ln(1+───-1)=ln(1+──────)
                xt-1          xt-1

3式の近似式より、

            xt-xt-1
 lnxt-lnxt-1=──────  ・・・4
             xt-1


● テイラー展開による近似(テイラー近似)

f(x)という関数の、点a近傍での、1次のテイラー展開(原点の0近傍だとマクローリン展開)の公式は、

 f(x)=f(a)+f'(a)(x-a)

2変数関数の、点(a,b)近傍で、1次のテイラー展開の公式は、

           ∂f(a,b)      ∂f(a,b)
 f(x,y)=f(a,b)+─────(x-a)+─────(y-b)
            ∂x        ∂y

lnΠt=ln(1+πt)をマクローリン展開(原点の0近傍でテイラー展開)すると、ln1=0より、

              1
 ln(1+πt)=ln1+────(πt-0)=πt  →  ln(1+πt)=πt  ・・・3’
             1+0

すなわち、3式の近似式はテイラー近似(マクローリン近似)からでも導出可能。
また粗インフレ率の対数を取ると、純インフレ率になることを意味する。

純と粗の関係で面白いのが、実質金利で説明するとして、純利子率=rt、粗利子率=1+rt=Rtとすると、

           Rt-Rt-1
 粗利子率の変化率=──────=lnRt-lnRt-1=rt-rt-1=純利子率の差分
            Rt

純利子率の差分を用いると便利なのは、純利子率が3%から4.5%に変化したとき、
差分なら1.5%増だが、変化率だと50%増となってしまうからだ。
利子率とかインフレ率などは、最初から変化率を表す数値なので、差分で定義することが多い。
上級マクロで最初に利子率を粗利子率と定義することが多い理由も、
その後の式展開で対数線形近似することが多く、粗利子率を対数線形近似すると、純利子率(の差分)になるためだ。

閑話休題。lnxtをxt-1の近傍で1次のテイラー展開すると、

            1                       xt-xt-1
 lnxt=lnxt-1+───(xt-xt-1)  →  lnxt-lnxt-1=──────  ・・・4
            xt-1                       xt-1

すなわち、4式の対数差分=成長率(変化率)という公式は、テイラー近似(マクローリン近似)からも導出可能。
対数も取っていることから、対数線形近似という。


● 全微分と成長会計

 生産関数:Y=AF(K,L)=A(K^α)(L^1-α)  以下、コブダグラス型とする。

で全微分の公式を説明すると、

     ∂Y    ∂Y    ∂Y
 dY=───dA+───dK+───dL  ・・・5A
     ∂A    ∂K    ∂L

「∂」という偏微分の記号は、「でる」と打って変換すると出てくる。

  ∂Y        Y
 ───=F(K,L)=──
  ∂A        A

  ∂Y               Y
 ───=αA(K^α-1)(L^1-α)=α──  ・・・5B
  ∂K               K

  ∂Y                    Y
 ───=(1-α)A(K^α)(L^-α)=(1-α)──  ・・・5C
  ∂L                    L

を踏まえると5A式は、

     Y     Y        Y
 dY=──dA+α──dK+(1-α)──dL  ・・・5D
     A     K        L

両辺をYで割ると、

  dY  dA   dK      dL
 ───=───+α───+(1-α)───  ・・・5E
  Y   A    K       L

dYを変化分⊿Yと考えると、

 生産の成長率=技術進歩率+α×資本の成長率+(1-α)×労働の成長率  ・・・成長会計

という3つの成長率に要因分解できることを意味する。


● 対数差分で成長会計

対数差分なので、まずは時間の変数であることを示すため、tという番号(添え字)を付けてみよう。

 生産関数:Yt=AtF(Kt,Lt)=At(Kt^α)(Lt^1-α)

両辺の対数を取り、t+1期の式も用意すると、

 lnYt=lnAt+αlnKt+(1-α)lnLt  ・・・6A
 lnYt+1=lnAt+1+αlnKt+1+(1-α)lnLt+1  ・・・6B

6B式から6A式を引くと、

 lnYt+1-lnYt

  =(lnAt+1-lnAt)+α(lnKt+1-lnKt)+(1-α)(lnLt+1-lnLt)  ・・・6C

4式より、対数差分=成長率なので、

  Yt+1-Yt  At+1-At   Kt+1-Kt      Lt+1-Lt
 ──────=──────+α──────+(1-α)──────  ・・・成長会計(離散的)
   Yt      At      Kt          Lt


● 対数微分=対数を取って時間微分=成長率(変化率)と、成長会計

Ytを時間tの関数と考えて、tについて微分すると、時間微分は瞬間的な「変化」を意味するので、
差分の記号⊿と区別して、ドット(・)を用いて、

  dYt  ・
 ────=Yt
  dt

と表記する。Ytの対数を取って時間微分した場合は、合成関数の微分を用いて、
                   ・
  dlnYt  dlnYt  dYt   Y
 ─────=─────・────=───  ・・・7A
   dt    dYt   dt   Yt

7A式は瞬間的な「成長率」を意味する。

 生産関数:Yt=AtF(Kt,Lt)=At(Kt^α)(Lt^1-α)

について、対数微分すると、まずは対数を取って、

 lnYt=lnAt+αlnKt+(1-α)lnLt  ・・・6A

時間tについて微分すると、

  ・   ・    ・       ・
  Yt   At    Kt       Lt
 ───=───+α───+(1-α)───  ・・・成長会計(連続的)
  Yt   At    Kt       Lt

ちなみに、全要素生産性(TFP)とソロー残差の違いは、

 全要素生産性(TFP):At

        ⊿At   ⊿Yt    ⊿Kt      ⊿Lt
 ソロー残差:────=────-α────-(1-α)────
        At    Yt     Kt        Lt

TFPというのは観測できないので、成長会計と観測できるY、K、Lから求めた⊿At/Atが、ソロー残差。 


● オイラーの定理

m次の同次関数というのは、KとLという変数を同時にλ倍すると、Yはλ^m倍になるような関数で、

 Y=F(K,L)  →  λ^mY=F(λK,λL)  ・・・8A

オイラーの定理の導出で面白いのは、その「λで微分する」こと。
とはいえ、変数はKとLなので、λK=k、λL=lとでもおいて、合成関数の微分を使って、

        ∂F    ∂F
 mλ^m-1Y=───・K+───・L
        ∂k    ∂l

λは2倍であっても3倍であっても別に構わないので、単純にλ=1とすると、

     ∂F   ∂F
 mY=───K+───L  ・・・オイラーの定理
     ∂K   ∂L

m次同次関数には、このような関係が成り立つことを示したのが、オイラーの定理。
生産性を表すAを除けば、全微分の5A式とよく似ているように見えるかもしれないが、違いをよく確認しよう。

さらに1次同次関数ならば、m=1となるので、

    ∂F   ∂F
 Y=───K+───L  ・・・8B
    ∂K   ∂L

一方、利潤最大化条件から、π=実質利潤、r=実質利子率、w=実質賃金とすると、

 π=F(K,L)-rK-wL

  ∂π        ∂F
 ───=0  →  ───=r  ・・・8C
  ∂K        ∂K

  ∂π        ∂F
 ───=0  →  ───=w  ・・・8D
  ∂L        ∂L

それぞれの結果(最適化の1階の条件とか、英語だとFOCという)を8B式に代入すると、

 Y=rK+wL  ・・・8E

すなわち、生産関数が1次同次関数で、規模に関して収穫一定の経済では、生産物は生産要素に分配され尽くす。
従って、(会計学的な利潤は別として)経済学的な利潤は、「常に0」なのである。
規模に関して収穫一定ということは、長期平均費用曲線は水平となることからもわかるだろう。
ただし企業単位で規模に関して収穫一定でなくとも、産業全体の長期供給曲線は参入によって水平となるので、
長期的にはやはり利潤はゼロになる。

経済学の分野では、オイラーの定理と言えば、8E式のことを指すことがほとんど。
最近では、8E式は「完全分配定理」と言われるみたい。

またコブ=ダグラス型の生産関数の場合、5B式と5C式より、

  rK  ∂F  K   Y  K
 ───=───・──=α──・──=α
  Y   ∂K  Y   K  Y

  wL  ∂F  L      Y  L
 ───=───・──=(1-α)──・──=1-α
  Y   ∂L  Y      L  Y

すなわち、生産量Yに占める(こちらは平均概念)、資本所有者への支払いと、労働者への支払いの割合は、
それぞれコブ=ダグラス型生産関数のパラメータである、αと1-αの割合になる。
途中の式展開が(偏)弾力性であることにも注意しよう。


● 指数、複利計算、成長率

まず基本的な用語の確認。

 z=2x+yの次数は1
 z=2xyやz=x^2の次数は2。

 z=2xyやz=2xは単項式
 z=2x+yのように+や-で結ばれていると多項式

 z=2x^3y^2+3x^4+4y+5という多項式の次数は、各項の中で最大の次数である5。

ちなみに、変数や関数のx1,x2,・・・,xnの線形結合(1次結合)とは、定数a1,a2,・・・,anを用いて、
a1x1+a2x2+・・・+anxn。

 y=x^10   ・・・9A
 y=3^x  ・・・9B

9A式は単なる10次の関数だが、9B式のような関数は「指数関数」という。
指数の部分が変数となっており、9B式における「3」の部分は「底」という。

この指数関数というのは恐ろしい関数で、9A式と9B式のそれぞれのxに、

 2,5,10,20,30,40,50,70,100

という数字を1つずつ代入して計算してみると、最終的に100を代入した時に得られる解の桁数は、
9A式では21桁、9B式では47桁になる。
グラフに描くと、最初の内は9A式の方が上に位置するのだが、途中で9B式の方が上回って伸びていく。

「指数関数的(ねずみ算式)に増加」という言葉が使われるぐらい、
途中までは増加の仕方が緩やかなのだが、ある一定の時間や水準を越えると爆発的に増加する怖い関数なのである。
人口増加、ウイルス感染、ねずみ講などの話題でよく出てくる。最近だとドーマーの定理とか。

また9B式の指数関数に、1,2,3,・・・と正の整数を順次代入して計算した結果を並べると、

 3,9,27,・・・

つまり等比数列となっている(公比は3)。

 指数関数の底=等比数列の公比

一方、対数関数については、

 Y=logaX  a=底、X=真数

指数関数に直すと、X=a^Y となる。つまり指数関数の逆関数が対数関数(その逆も然り)。


・ 離散型の複利計算

A円を年間利子率rで運用したとき、複利計算では、得られた利子にもさらに利子が付く。

 1年目の元利合計:A(1+r)
 2年目の元利合計:A(1+r)^2
 3年目の元利合計:A(1+r)^3
   ・・・     ・・・
 t年目の元利合計:A(1+r)^t=Vt  ・・・9C

この複利計算はA円がrの率で成長していることを意味し、1+rは等比数列の公比とも言える。
例えば1年目から2年目に向かっての成長率は、

  A(1+r)^2-A(1+r)
 ─────────────=r
     A(1+r)

9C式から、逆にt期の変数であるVtの割引現在価値は、

     Vt
 A=──────=Vt(1+i)^-t  ・・・9D
    (1+r)^t

何かの変数に(1+r)^-tを乗じていれば、それは割引現在価値に直していることを意味する。


・ 連続複利と(瞬間)成長率

まず「ネイピアのe」という(自然対数の底)を紹介しよう。その定義は、

      1
 e=(1+──)^n=2.71828・・・
      n

10を底とした対数は常用対数、eという定数を底とした対数は自然対数という。
前者の記号log、後者の記号をlnとする場合もあるが、後者の自然対数もlogと表記することが多い。

離散型の所では、rを「年間」利子率としたが、世の中には「半年複利」とか「3ヶ月複利」などもある。
たとえば年間利子率6%とすると、半年複利で利子を付ける場合、
半年後に半分の3%の利子を付け、複利なのでそれを元金に加えた上で、残りの半年後に3%の利子を付ける。
従って1年後の元利合計の増え方は、6%より少し多くなる。

元金をA、t年後の元利合計をVtとすると、まず利子率rで年複利の場合には、

 Vt=A(1+r)^t  ・・・9C

半年複利の場合には、

        r
 Vt=A(1+──)^2t
        2

3ヶ月複利の場合には年に4回なので、

        r
 Vt=A(1+──)^4t
        4

無限に短い期間ごとに複利計算を行う「連続複利(瞬間複利)」は、

           r           r
 Vt=limA(1+──)^nt=limA(1+──)^(n/r)(rt)=Ae^rt  ・・・9E
    n→∞    n    n→∞    n

9E式は離散型の9C式と対応している。ということは9D式との関係からもわかるように、

 A=Vte^-rt  ・・・9F

9F式のように、何かの変数にe^-rtが乗じてあれば、それは割引現在価値に直していることを意味する。
9D式と9F式の関係から、(1+r)^-t と e^-rt がパラレルであることがわかる。

Vtの瞬間的な成長率は、

 dVt/dt=rAe^rt=rVt

            dVt/dt  rVt
 Vtの(瞬間)成長率=──────=────=r
              Vt     Vt

対数差分でも求めてみよう。9E式と1期前の式も用意して、両辺の自然対数を取ると、

 lnVt=lnA+rt
 lnVt-1=lnA+r(t-1)

 lnVt-lnVt-1=r

ちなみに所得(GDP)や元本が、成長率や利子率によって複利的に増加していくとき、
連続的なら指数関数的に、離散的なら幾何級数的に増加するという。


・ 70の法則

元本や初期値(基準値)が複利的に増加していくとき、
2倍になるまで何年掛かるかを簡単に計算できるのが70の法則。
利子率や成長率のrは今まで0.05とかだったが、今度は5%の5という数字をrで表記すると、

         r
 Vt=A(1+────)^t
        100

VtがAの2倍になるということは、Vt/A=2だから、

       r
 2=(1+────)^t
      100

両辺の自然対数を取ると、真数に付く指数(t)は、lnの前に係数として出せるので、

             r
 ln2=t・ln(1+────)
            100

ln2≒0.7なので、3式のln(1+x)=xという近似より、

 0.7=t・(r/100)  →  70=rt

つまり利子率や成長率と、年数tを掛けて70になると、元本や初期値(基準値)が2倍になることを意味する。
例えば、利子率が5%だったのなら、元本は14年で2倍になると計算ができる。


・ たかが1%、されど1%。

「バロー=サラ・イ・マーティンの内生的経済成長論」の序章にあるように、
成長率が1%違うだけで、同じ初期値から出発しても、何十年後かには所得(GDP)は数倍違う。

例えば所得の初期値をAとして、成長率を2%(t年後の所得をGt)と3%(t年後の所得をHt)で比べた時、
所得の違いが2倍(Ht=2Gt)となるのに何年掛かるか計算してみよう。

 Gt=A(1+0.02)^t
 Ht=A(1+0.03)^t

 Ht=2Gt  →  A(1+0.03)^t=2A(1+0.02)^t

 2=(1.03/1.02)^t=(1.00980392156863)^t

両辺の自然対数を取ると、

 ln2=t・ln(1.00980392156863)

関数電卓(検索するとWEB上でできるのがある)を使って計算すると、

 t=0.69314718055995÷0.00975617494537=71年

3倍になるには112年。1%成長と2%成長の比較でも70年で2倍となる。
逆に言えば、もし35年前からの成長率が2%低ければ、今頃、人々の所得は現在の半分しかないことになる。 


● 割引率と割引因子の違い

投資理論や資産価格の式における割引現在価値を求めるときの利子率を割引率と呼ぶ。
一方、将来の消費から得られる効用を割り引くときの割引率は、単に割引率と言われることも多いが、
主観的割引率と言われることも多い。

例えば異時点間の消費の動学的最適化から得られるオイラー方程式には、
予算制約式から将来の所得を割引現在価値に直すときの1+利子率(1+r)と、
効用関数の方から将来の消費を主観的に割り引く1+主観的割引率(1+ρ)の両方が含まれる。

主観的割引率は、時間選好率とも言われ、

 主観的割引率=時間選好率=「現在」選好率と覚えておけばいい

現在が好きなほど、消費を将来に先延ばししたり将来得られる効用の価値は低くなる。
従って時間選好率が大きいほど、将来の価値を大きく割り引く。割引率と割引因子の違いは、

    1       1
 ──────=────────=β (β≦1)
  1+割引率  1+時間選好率

 β=割引因子


● 1階の自己回帰過程とホワイトノイズの簡単な紹介。

  xt=ρxt-1+εt   ・・・A

1階の自己回帰モデル(1階の自己相関モデル)とかAR(1)モデルとも言われる。
字の通り1つ前の自分自身と相関してる形。

右辺第2項のεtは、定式化したモデルと実際に発生したデータとの間に生まれる誤差。ホワイトノイズと仮定する。
そのホワイトノイズとは、期待値=0、分散=σで一定、Cov(εt,εs)=E(εtεs)=0(自己相関なし)。
なんのことかと思われるだろうが、ようは期待値を取ると消えるので、有って無いようなもの。気にしなくていい。
ρ=1だと有名な単位根、その中でもA式は定数項が無いのでランダムウォークと言われる。

A式を見ればわかるように、εtを無視すれば1つ前の値にρをかけた値になるということは、
初項をx0とすれば、1期以降をずらっと並べると、

  ρx0、ρ^2x0、ρ^3x0、ρ^4x0、ρ^5x0、、、、、、、、

という等比数列になる。


● 数列の基礎

まず数列の基礎として、斉藤他マクロの14-7式、14-16式、15-14式の導出は、よく出てくる基本。
http://www.econ.hit-u.ac.jp/~makoto/education/Part_4_ch_14.pdfでは
14-3-5、14-6-1がそれらに該当。ポイント14-2の配当がgの率で成長する公式も一応。
http://www.econ.hit-u.ac.jp/~makoto/education/Part_4_ch_15.pdfでは、15-3-2になる。

PDFの方では14-16式の導出は書かれてないので一応

    B  t-g  M  π
  ――=――――+――・――  統合予算制約式
   P   r   P  r

     t-g         1    M  
  =Σ―――――― + Σ[――――――・――π]   1≦i≦∞
     (1+r)^i      (1+r)^i  P

(PDFでは、2行目の右辺第2項の一番右端が(M/P)(π/r)となっているが、間違いだろう。
 教科書ではちゃんと(M/P)πとなっている。)

2行目の導出は、等比級数の公式を用いている。
例えば右辺第1項は、初項が(t-g)/(1+r)で、公比が1/(1+r)なので、
無限等比級数の公式=初項/(1-公比)を用いると、

   (t-g)      1       (t-g)
  ―――――・――――――――――=―――――
   (1+r)  1-[1/(1+r)]    r



● 離散時間モデルでの最適化問題

目的関数=Σf(ct,kt)と、制約条件式がkt-kt-1=g(ct)

Σが出てきたらとりあえずt=1~3ぐらいにして具体的に書き出してみる。
では実際にラグランジュ関数を作ってみよう。

 L(ct,kt,λt)=f(c1,k1)+f(c2,k2)+f(c3,k3)

   +λ1{g(c1)+k0-k1}+λ2{g(c2)+k1-k2}+λ3{g(c3)+k2-k3}  t=1,2,3

例えば、c2で微分すれば、上式の2項目と5項目しか出てこない。後は微分で全部消える。
k2で微分すれば、2項目と5項目と6項目で微分するだけ。

一般化してtで考えても一緒。tの範囲を第1期から無限大まで考えても、
1,2,・・・,t-1,t,t+1,・・・∞ の中の t が出てくる部分だけctなりktで微分すればいいだけ。


● 加藤涼のマクロ講義のp219~220について。

問題Pの最適化(微分してゼロ)問題を解けば、ctとatの経路は決まるので、
後はytの経路が決まればいいということで、ytは1階の自己回帰過程に従うと仮定し、

  ct^σ=βRct+1^σ  ・・・1 <オイラー方程式
  at+1=R×(at-ct)+yt  ・・・2 予算制約式
  yt+1=ρyt  ・・・3 <所得の遷移式

まず2式から2’式の導出。2式を変形すると、

  at=(1/R)(at+1-yt)+ct  ・・・2A

ここからが基本としてよく出てくる式展開(逐次代入)で、まずは2A式は全ての期で成り立つので、
1期ずつ先に進めた式をずらっと並べる(将来に向かって展開とか、フォワードに展開と表現するみたいだ)。

  at+1=(1/R)(at+2-yt+1)+ct+1  ・・・2B
  at+2=(1/R)(at+3-yt+2)+ct+2  ・・・2C
  at+3=(1/R)(at+4-yt+3)+ct+3  ・・・2D
          ・
          ・
          ・

とりあえず、2Dを2Cに代入すると、

  at+2=(1/R)×[(1/R)(at+4-yt+3)+ct+3-yt+2]+ct+2
     =(1/R)^2(at+4-yt+3)+(1/R)(ct+3-yt+2)+ct+2  ・・・2C’

さらに2C’を2Bに代入すると、

  at+1=(1/R)×[(1/R)^2(at+4-yt+3)+(1/R)(ct+3-yt+2)+ct+2-yt+1]+ct+1
     =(1/R)^3(at+4-yt+3)+(1/R)^2(ct+3-yt+2)+(1/R)(ct+2-yt+1)+ct+1  ・・・2B’

さらに2B’を2Aに代入すると、

  at=(1/R)×[(1/R)^3(at+4-yt+3)+(1/R)^2(ct+3-yt+2)
    +(1/R)(ct+2-yt+1)+ct+1-yt]+ct

    =(1/R)^4(at+4-yt+3)+(1/R)^3(ct+3-yt+2)
    +(1/R)^2(ct+2-yt+1)+(1/R)(ct+1-yt)+ct  ・・・2A’

となる。2D式からはじめたので、(1/R)^4at+4の部分が残っているが、
もっと無限の将来から逐次代入を繰り返してきたと考えた上で、
 2A’式をctとytのそれぞれでいったん整理してみよう。

 ctの項目=・・・+(1/R)^3ct+3+(1/R)^2ct+2+(1/R)ct+1+ct
      =Σct+j(1/R)^j   0≦j≦∞

 ytの項目=・・・-(1/R)^4yt+3-(1/R)^3yt+2-(1/R)^2yt+1-(1/R)yt
      =-(1/R)Σyt+j(1/R)^j   0≦j≦∞

すなわち、at=Σct+j(1/R)^j-(1/R)Σyt+j(1/R)^j  ・・・2’となる。

ここで、2A’式の(1/R)^4at+4の部分は最終的に無限大にまで行くと、

  lim(1/R)^j・at+j=0  j→∞

と仮定している。無限先における終端条件で、横断性条件とかNPG条件という。
t=∞において横断性条件はat>0を否定し、NPG条件はat<0を否定する。
前者は資産を残したまま死ぬことはなく、後者は借金を残したまま死ぬこともないという意味。
代表的個人の無限先についてなので経済全体に関する地球最後の日と思えばいい。
このような終端条件を仮定しておかないと無限先を扱えない。

次に1式と3式について。

  ct^-σ=βRct+1^-σ   ・・・1
  yt+1=ρyt   ・・・3

まず1式は、1/σ=zとすると、今期の値ctにβR^zをかければ来期の値ct+1になることを意味する。

  1/ct^σ=βR/ct+1^σ   ・・・1A

  βRct^σ=ct+1^σ   ・・・1B

両辺をz乗すると、

  (βR^z)ct=ct+1   ・・・1C

c0からスタートするとして、第1期の値は(βR^z)c0、以降ずらっと並べてみると、

  c0、(βR^z)c0、(βR^z)^2c0、(βR^z)^3c0、・・・と単なる等比数列になる。

3式も同じ。βR^zの部分がρとなるだけ。そこでj期について書き直す。

  ct、(βR^z)ct、(βR^z)^2ct、(βR^z)^3ct、・・・(βR^z)^jct

  ct+j=(βR)^(j/σ)ct   ・・・1A

  yt+j=(ρ^j)yt   ・・・3A

これらを2’に代入すると、

  at=Σct(1/R)^j(βR)^(j/σ)-(1/R)Σyt(1/R)^j(ρ^j)   0≦j≦∞

    =Σct(R)^-j(βR)^(j/σ)-(1/R)Σyt(1/R)^j(ρ^j)

    =Σct(R)^-j(R)^(j/σ)(β)^(j/σ)-(1/R)Σyt(1/R)^j(ρ^j)

    =ΣctR^[(j/σ)-j](β)^(j/σ)-(1/R)Σyt(1/R)^j(ρ^j)

 (j/σ)-j=[(1/σ)-1]j なので、1/σ=z、(1/σ)-1=w、R=1+rとすると

    =Σct(β^z・R^w)^j-(1/R)Σyt(ρ/R)^j   0≦j≦∞

    =[1/(1-β^zR^w)]×ct-[1/(1+r-ρ)]×yt

  ct=[1/(1-β^zR^w)]×[at+yt/(1+r-ρ)]=γ1at+γ2yt


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