鳥獣人物戯画 - Wikipedia
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鳥獣人物戯画(ちょうじゅうじんぶつぎが)は、京都市右京区の高山寺に伝わる紙本墨画の絵巻物。国宝。鳥獣戯画とも呼ばれる。現在の構成は、甲・乙・丙・丁と呼ばれる全4巻からなる。内容は当時の世相を反映して動物や人物を戯画的に描いたもので、嗚呼絵(おこえ)に始まる戯画の集大成といえる。特にウサギ・カエル・サルなどが擬人化して描かれた甲巻が非常に有名である。一部の場面には現在の漫画に用いられている効果に類似した手法が見られることもあって、「日本最古の漫画」とも称される。
成立については、各巻の間に明確なつながりがなく、筆致・画風も違うため、12世紀 - 13世紀(平安時代末期 - 鎌倉時代初期)の幅のある年代に複数の作者によって別個の作品として制作背景も異にして描かれたが、高山寺に伝来した結果、鳥獣人物戯画として集成したものとされる。
作者には戯画の名手として伝えられる鳥羽僧正覚猷(とばそうじょう かくゆう)が擬されてきたが、それを示す資料はなく、前述の通り各巻の成立は年代・作者が異なるとみられることからも、実際に一部でも鳥羽僧正の筆が加わっているかどうかは疑わしい。おそらく歴史上無名の僧侶などが、動物などに仮託して、世相を憂いつつ、ときには微笑ましく風刺したものであろう。
各巻の内容および断簡・模本
現状の各巻は、いずれも詞書は伴わない。
鳥獣人物戯画は製作されてから800年程度と長い年月を経過し、また多数の作品を集めた性格から、描かれた当時の形態を留めていない。脱落や繋ぎの変更があり、本来は鳥獣人物戯画の一部であったと思われる「断簡」が多数ある。それらは現在の形になる以前に模写された模本により、描かれた当時の姿、あるいは時代経過に従って進む錯簡を推定することができる。
甲巻
様々な動物による水遊び・賭弓・相撲といった遊戯や法要・喧嘩などの場面が描かれる。描かれた萩などの植生から、秋の光景とみられる。断簡や模本から、甲巻は成立当初は2巻立て以上のそれら自体で独立した絵巻物だったと考えられ、内、少なくとも1巻は、草むらからの蛇の出現によって動物たちは遁走し、遊戯が終わりを迎えるという構成だった。現在の甲巻は、後世に遭遇した火災による焼損被害や、失われた(恐らくは何らかの形で持ち去られた)断簡による不自然さを補うための加筆が一部に見られる。
乙巻
馬・牛・鷹・犬・鶏・山羊といった身の回りの動物だけでなく、豹・虎・象・獅子・麒麟・竜・獏といった海外の動物や架空の動物も含め、さまざまな動物の生態が描かれており、動物図鑑としての性質が強い巻。絵師たちが絵を描く際に手本とする粉本であった可能性も指摘されている。
丙巻
前半10枚は人々による遊戯を、後半10枚は甲巻の様に動物による遊戯を描いている。後半部分については、甲巻の動物の遊戯を手本に描かれたものとも言われる。前半と後半の筆致に違いがあることから、別々に描かれた絵巻を合成して1巻とした巻とみられていたが、京都国立博物館による修復過程で元は表に人物画、裏に動物画を描いた1枚だった和紙を薄く2枚にはがし繋ぎ合わせて絵巻物に仕立て直したものだと分かった[1][2]。19枚目の歩く蛙の絵に墨跡があり、2枚目のすごろく遊びをする人の絵と背中合わせにすると、19枚目の墨跡(烏帽子の滲み)と2枚目の人物画の烏帽子の位置と合致すると判明した後、この他にも1枚目と20枚目、3枚目と18枚目というように墨跡などが合致することが分かった。これにより元々は10枚の人物画の裏に動物画が描かれ江戸時代に鑑賞しやすいように2枚に分けられたと推定されている。
丁巻
人々による遊戯の他、法要や宮中行事も描かれている。描線は奔放で、他の巻との筆致の違いが際立つ巻。
断簡
模本
その他
- 1966年に同人グループ映像社がこれを基に短編映画を制作している。またその映画の音楽を基に間宮芳生が合唱のためのコンポジションシリーズの一つとして鳥獣戯画というタイトルの作品を製作している。
- 福音館書店『こどものとも』で『かえるのごほうび』として、甲巻から場面を抽出してコマ割りされ、新たなストーリーを構成して使用された。
- 2005年にはキリンビバレッジ「茶来」のおまけとして鳥獣人物戯画のカエル・ウサギ・キツネ・サルの携帯ストラップが登場した。
- 日本には「劇団鳥獣戯画」という絵巻物から名前をとったミュージカル劇団がある。
- 2013年1月25日、岩手県平泉町の柳之御所遺跡で、カエルを擬人化した絵が書かれた木片が出土したと岩手県教育委員会が発表した。木片は、他に出土した遺物などから12世紀後半奥州藤原氏の時代のものと見られ、鳥獣人物戯画の成立時期と同じ時代とされる。都の最先端の表現技法が、既に平泉にまで到達していたことを示す貴重な資料である[3]。
- 2016年には登場する動物がカプセルトイ(バンダイ)[4]や動物フィギュア(海洋堂)[5]として商品化。また、丸紅新電力のテレビCMとしてスタジオジブリによりアニメーション化された[6]。
甲巻の画像(全巻)
第1紙 - 第4紙前半
- 谷川で水浴する兎と猿、鼻をつまんで水に飛び込もうとする兎、柄杓をもつ兎、猿の背中をさするもう1匹の猿、鹿に馬乗りする兎と、後から水を引っかける猿。[7]
第4紙後半 - 第7紙
- 草木の描写に続いて、兎と蛙の賭弓競技。蓮の葉製の的、狐火を点す狐、篠竹の弓を引き絞る兎、出番を待ち弓矢の具合を調べる兎と蛙の選手たち。
第8紙 - 第10紙
- 賭弓競技後の宴会用の酒肴を運ぶ。長唐櫃をかつぐ2匹の兎、重い酒壺を大儀そうにかつぐ蛙と兎。賭弓競技に遅刻し、あわてて試合場に駆け付ける兎。
第11紙 - 第16紙前半
- 猿僧正に引出物の鹿を渡す兎/猪の手綱を引く蛙と世話をする兎(この場面は前の場面とつながりがなく、本来は甲巻最後の猿僧正への贈り物の後に続く場面)。
- 走って逃げる猿の犯人と、それを追跡する兎・蛙の検非違使/仰向けにひっくり返った蛙(喧嘩の被害者か)と心配して声をかける兎・蛙、「何ごとか」と振り向く狐の一家。
- びんざさらを手に舞う蛙の田楽法師、それを見物する烏帽子姿の老蛙と猫。兎の背後から猫の様子をうかがう2匹の鼠もいる。左端の雉(裾から尾羽が出ているのでそれと分かる)の姫君とその従者たちの絵は本来この場面にあったものではない。
第16紙後半 - 第18紙
- 兎と蛙の相撲。声援する兎、兎の耳にかぶりつき足技をかける蛙、兎を投げ飛ばして雄叫びをあげる蛙、投げ飛ばされ、仰向けにひっくり返る兎、それを見て笑い転げる蛙たち。鳥獣人物戯画で最もよく知られる場面のひとつ。
第19紙 - 第23紙
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161003-00000035-asahi-soci
京都市の高山寺(こうさんじ)に伝わる国宝の絵巻「鳥獣人物戯画」(平安~鎌倉時代、甲乙丙丁の4巻)の甲巻で、中盤と後半の絵の順序が入れ替わっていたことが、紙に残ったはけの跡の調査で裏付けられた。場面のつながりが不自然な箇所があることは以前から指摘されていたが、改めて紙の状態から確認できた。
【写真】現在の甲巻の10枚目(右)と11枚目=修理報告書「鳥獣戯画 修理から見えてきた世界」から
9月に刊行された修理報告書「鳥獣戯画 修理から見えてきた世界」(勉誠出版、京都国立博物館編)で発表された。鳥獣人物戯画のうち、ウサギ、カエル、サルなどの動物を擬人化して描いた甲巻は特に有名だ。
朝日新聞文化財団の助成で、2009年から4年かけて行われた大規模な修理で、絵を1枚ずつに分離し、裏打ち紙をはがして透過光で調べた。
すると23枚目と11枚目は、紙をすいて乾かす段階でついたはけの跡がつながっており、元は1枚の紙だったことを確認した。23枚目と11枚目は他の紙より小さく、合わせて1枚のサイズになる。
修理を監督した一人、鬼原(きはら)俊枝・元京都国立博物館列品管理室長は「絵巻の形になってから切り離されたのだろう。現在の16~23枚目の後に、11~15枚目が続くのが制作当初の順序と考えられる」と話す。
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