金曜日, 2月 22, 2019

経済学史の本



                 ( 経済学リンク::::::::::
NAMs出版プロジェクト: Famous Figures and Diagrams in Economics (英語)
http://nam-students.blogspot.jp/2015/09/famous-figures-and-diagrams-in-economics.html

NAMs出版プロジェクト: 経済学大図鑑 ナイアル・キシテイニー 2012,2014
http://nam-students.blogspot.jp/2017/01/blog-post_27.html

ジョサイア・チャイルド 1668
https://nam-students.blogspot.com/2019/02/blog-post_49.html

経済学の歴史   根井雅弘 講談社学術文庫  電子書籍版あり 2014^2005(^1998筑摩)


内容説明

『経済表』を考案したケネーはルイ15世寵妃の侍医であり、『国富論』の著者・スミスは道徳哲学の教授だった。興味深い経済学草創期からリカード、ミル、マルクス、ワルラスを経てケインズ、シュンペーター、ガルブレイスに至る12人の経済学者の評伝と理論を解説。彼らの生きた時代と社会の発展をたどり、現代経済学を支える哲学と思想を再発見する。(講談社学術文庫)

目次

なぜ経済学の歴史を学ぶのか
フランソワ・ケネー―「エコノミスト」の誕生
アダム・スミス―資本主義の発見
デイヴィッド・リカード―古典派経済学の完成
ジョン・ステュアート・ミル―過渡期の経済学
カール・マルクス―「資本」の運動法則
カール・メンガ―主観主義の経済学
レオン・ワルラス―もう一つの「科学的社会主義」
アルフレッド・マーシャル―「自然は飛躍せず」
ジョン・メイナード・ケインズ―有効需要の原理
ヨゼフ・アロイス・シュンペーター―「創造的破壊」の世界
ピエロ・スラッファ―「商品による商品の生産」
ジョン・ケネス・ガルブレイス―「制度的真実」への挑戦

 この一冊だけでいいという本はないが、経済学史としては、まずはこの一冊、

『経済学の歴史 』根井雅弘 講談社学術文庫  電子書籍版あり 2014^2005


通史ではなく伝記の寄せ集めだが、アダム・スミスとマルクスとケインズだけでも読んでおくべきだ。
ゲゼルの名がないのは仕方ないがフィッシャーがいないのはおかしいが。
#5にカレツキ、#7でプルードンの名が出てくる。
カレツキに関しては同著者の、

『現代イギリス経済学の群像~正統から異端へ』(岩波書店 1989年,新版,1995年)

『ケインズ革命の群像~現代経済学の課題』(中公新書 1991年)KOBOあり
『わかる現代経済学』根井 雅弘【編著】朝日新書 2007 (カレツキ関連の執筆は服部 茂幸)
のどれかで補完する必要がある。
ブローグやシュンペーターの経済学史の大著は調べるにはいいが読み物としては勧められない。
ブローグは持っておくべきだが。

経済理論の歴史 1 - 3  – 古書, 1966


フィッシャーに関しては、全然網羅的ではないが、
NAMs出版プロジェクト: 竹森俊平『経済論戦は甦る』日経ビジネス人文庫 2007
http://nam-students.blogspot.jp/2017/10/2007.html(第1、2章でフィッシャーに言及)
がおすすめ。

フィッシャーの伝記としては吉川洋『経済学をつくった巨人たち』(2001)の小文がいい。
これらは対デフレ理論的に再評価したもの。

マルクスに興味があれば以下もおすすめ、
越村 信三郎『四元的価値のパラダイム マルクス経済学と近代経済学の統一のために』1989
(サミュエルソンの樹形図より優れている)

斎藤他マクロ、ブランシャール下巻付録、ここら辺の顔写真付きの経済学史の記述もおすすめ

限界革命についてはブローグを読むべきだが
(ブローグによるとジェボンズはフロイトとも親交のあったフェーヒナーから限界効用のアイデアを得たという。)
以下がわかりやすい


ライブ・経済学の歴史―“経済学の見取り図”をつくろう | 小田中 直樹

 


マルサスについても補完すべきだが初心者向けの良書を知らない。
前述の越村『四元的価値のパラダイム マルクス経済学と近代経済学の統一のために』がマルサスの位置付け、見取り図としては正しいが。

その他の推薦書に、
ブローグが編集にかかわった図解モデルで振り返った本(電子版はあるが邦訳なし)
                 
NAMs出版プロジェクト: Famous Figures and Diagrams in Economics (英語)

Famous Figures and Diagrams in Economics Hardcover – December 29, 2010


図解 使えるマクロ経済学 (中経出版) | 菅原 晃 ( kindleあり)は近年の経済学史に詳しい

瀧澤弘和 現代経済学 中公新書 2018/8  のゲーム理論関連の系譜図
(ティロール『良き社会…』の該当部分#4:5を併読するとわかりやすい)
 

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キシテイニー本より、


さあ、交易をはじめよう

紀元前380年ころ
プラトンがその理想国家についての説明をおこなう。そこでは、財産は万人によって所有され、労働は専門化されている。

紀元前350年ころ
アリストテレスが私有財産を擁護する議論を展開するが、金銭をそれ自体のために蓄積することには反対した。

後1265-74年
トマス·アクィナスが、生産物の代価が「公正」であるのは、利益が超過しておらず、販売過程になんのごまかしも見られないばあいだけのことだと論じる。

後1397年
イタリアのフィレンツェにメディチ家の銀行が創設される。これは、国際貿易を当てにした金融機関の最初のもののひとつだ。

1400年ころ
手形が、ヨーロッパ内での貿易における支払い方法のスタンダードとなる。その信用を保証するのが商人銀行だ。

1492年
クリストファー·コロンブスが、アメリカ大陸へ到達する,ほどなくして金がヨーロッパに流れこみ、貨幣の供給が増加する。

1599年
国際貿易をつかさどる会社にして、世界最初のグローバル·ブランドとなったイギリスの東インド会社が、設立される。

1630年ころ
トマス·マンが国内の富を増加させる方法として海外への輸出を活用する、重商主義政策を推奨する。

1637年
オランダのチューリップ市場で投機によるバブルがはじけて数千人にのぼる出資者が破産を余儀なくされた。

1668年
ジョサイア·チャイルドが、自由貿易のありようを描きだして、輸出と同じく輸入の同等の増加を促す。

1682年
ウィリアム·ペティが、『貨幣小論』のなかで、どのようにすれば経済現象が計測可能となるかを示す。

1689年.
ジョン·ロックが富の源泉は貿易ではなく、労働だと主張する。

1697年
グレゴリー·キングが、17世紀のイギリスにおける貿易取引の統計的概略を計算する。

1752年
デイヴィド·ヒュームが、公共財の費用は政府がまかなうべきだと主張する。

1756年
フランソワ·ケネーとそのあとを継いだ重農主義者たちが、土地と農業こそが経済的繁栄の唯一の源泉であると論じる。

1758年
フランソワ·ケネーが「マクロ経済学」すなわち経済全体の機能についての最初の分析である「経済表」を公刊する。


理性の時代

1766年
アン=ロベール=ジャック·チュルゴが課税対象から貿易と産業を免除すべきだと主張する。


1770年代
デイヴィド·ヒュームが貿易保護政策を非難して、各国は輸入よりも輸出を優先しようとすべきではないと主張する。

1771年
リチャード·アークライトが、イギリスに機械化された綿エ場を開設し、さらにそこに機械を導入して、産業革命の速度を速める。

1774年
チュルゴが、フランスの財務大臣に任命され、税制を改革して裕福な地主に課税できるようにする。


1776年
アダム·スミスの『国富論」が刊行される。

1776年
ジェームズ·ワットの蒸気エンジンの第1号が、イギリスの工場で稼動しはじめ、ここから産業革命がはじまる。

1776年
アメリカ独立宣言がアメリカ議会に採択される。

1780年代
スミスの貿易自由化についての提案が、当時のイギリス首相ウィリアム·ピット (小ピット)によって採用される。

1789年
パリのバスチーユ監獄の襲撃をきっかけとして、フランス革命が勃発する。


1791年
ジェレミー·ベンサムが、「最大多数の最大幸福」を目標とする、自身の功利主義理論を確立する。


1795年
エドマンド·バークが、賃金と価格の統制への国家の介入を批判する。


1798年
トマス·マルサスが人口が資源を超過することの危険と、その結果生じるであろう被害について警告を発する。

1803年
ジャン=バティスト·セーが、セーの販路法則を提案する。それによれば、経済活動において商品の需要不足ないし供給過剰という事態はけっして起こりえない。

1817年
デイヴィド·リカードが、自由貿易と分業を説いた19世紀の古典派経済学の基礎をすえる。

1819年
ジャン·シャルル·レオナール・デ·シスモンディが、景気循環と、長期的な成長と短期的な変動とのあいだのちがいを説く。

1819年
アメリカが最初の大規模な金融危機をこうむる。これにつづいて、持続的成長の時代が到来する。


産業革命と経済革命

1838年
アントワーヌ·クールノーが経済学に関数と確率の役割を採りいれ、需要と供給をひとつのグラフで表現した最初のひとりとなる。


1841年
バブル経済の現象が、チャールズ·マッケイの『狂気とバブル-なぜ人は集団になると愚行に走るのか』のなかで描写される。

1848年
ジョン·スチュアート·ミルが、貿易と社会的公正の双方を推奨して、自由経済学の基礎をすえた。

1848年
カール·マルクスとフリードリヒ·エンゲルスが、『共産党宣言』を公刊する。

1867年
カール·マルクスが『資本論」第1巻を公刊したが、第2巻以降はフリードリヒ·エンゲルスによってマルクスの死後に公刊された。

1870年代
ロバート·ギッフェンが、価格とともに消費が上昇するギッフェン財の概念を導入する。

1871年
ウィリアム·ジェヴォンズが、価値を生産者から買い手へ伝えられるものとみなす価値の限界効用理論を公表する。

1871年
カール·メンガーがオーストリア学派を設立し、社会主義の理念にたいして自由主義経済を擁護した。

1874年
レオン·ワルラスが、自由市場の安定性を主張する一般均衡理論の土台をすえる。

1890年
アルフレッド·マーシャルが、『経済学原理」を公刊して、経済学に新しい数学的手法を持ちこむ。

1894年
社会運動家ベアトリス·ウェッブとシドニー·ウェッブが、画期的な『労働組合運動の歴史』を公刊する。

1899年
ソースタイン·ヴェブレンが、『有閑階級の理論』のなかで、富裕層の誇示的消費を描きだす。

1906年
ヴィルフレド·パレートが、ほかのだれかの現状が悪化しないことにはだれの現状も上向きにはならないような状態を意味するパレート最適を定式化する。

1914年
フリードリヒ·フォン·ヴィーザーがおこなわれなかった選択の価値を推定する機会費用を記述する。

1920年
アーサー·ピグーが、企業は自社が生みだす汚染にたいして課税されるべきだと主張する。

1922年
ルートヴィヒ·フォン·ミーゼスが、『社会主義--経済的·社会学的分析』のなかで、共産主義の計画経済を批判する。

1927年
ヨーゼフ·シュンペーターが、企業家の決定的な役割を、産業を前進させる革新者として描きだす。


戦争と不況

1929年
イオシフ·スターリンが、ソ連における農場経営の強制的な集産化を宣言する。

ウォール街の株価暴落(アメリカにおける証券と株価の大暴落)が大恐慌時代の幕あけを告げる。

1930年
経済活動の数理的統計学的諸側面を研究する目的で、計量経済学会がアメリカで創設された。

1931年
フリードリヒ·ハイエクが、経済活動への国家の干渉はよくないし、最後には抑圧にいたるだろうと論じる。

金本位制(その国の通貨の価値を金にリンクさせる通貨制度)が停止された。

1932年
ライオネル·ロビンズが「希少な資源の科学」という経済学の定義をおこなう。

1933年
ジョン·メイナード·ケインズが、『ニューヨーク·タイムズ」紙にアメリカの大統領ルーズヴェルトにあてた公開書簡を執筆し、経済にはずみをつけるための政府による財政支出を推奨する。

ラグナー·フリッシュが、マクロ経済学とミクロ経済学の区別を設ける。

アメリカ大統領フランクリン·D·ルーズヴェルトが経済活動を再活性化する目的で国家が介入する一括した政策~ニューディールを導入する。

1936年
ケインズが『一般理論』を公刊して、マクロ経済学ならびに経済活動への国家の重要な役割についてのアプローチをしつらえる。

1937年
ジョン·ヒックスがケインズ乗数を数学的にモデル化したISLMモデルを記述する。

1939年
ヨーロッパで第二次世界大戦が勃発する。

1940年代
サイモン·クズネッツが、景気循環の存在をあきらかにし、開発経済学の分野の基礎をすえる。

1944年
カール·ポランニーが文化的観点から経済学へアプローチすることで、伝統的な経済学思考に挑戦する。

主要産業国の戦後の金融関係を調整する目的でブレトン·ウッズ協定が調印される。

1945年
第二次世界大戦が終結し、経済再建の時代がはじまる。



戦後の経済学
1945年
国際通貨基金が、アメリカのワシントンD.C.をベースに活動を開始し、影響力を行使しだす。

1949年
共産党の指導下に、中華人民共和国が建国される。

コンラート·アデナウアーが、広大な私有部門と公共部門とをそなえた、ドイツの社会的市場経済の建設に着手する。

1950年代
ミルトン·フリードマンによって、政府が貨幣供給を制限するマネタリスト政策が推奨される。

1951年
数学者ジョン·ナッシュが、こんにちでは経済活動における意思決定の説明に用いられて
いるゲーム理論のパイオニアとなる。

1951年
ケネス·アローの不可能性定理が、完璧な投票システムのありえないことをあきらかにする。

1953年
コルナイ·ヤーノシュの『行きすぎた中央集権」が、共産主義国家の計画経済の批判的分析を
提示する。

モーリス·アレが、意思決定のパラドックスをあきらかにして、人びとが、勝てる
見こみよりも損するおそれのほうをどれほど嫌うかを示す


1955年
ジェネラル·モーターズ社が、アメリカで最初の年間売上げ1000万ドル以上の企業となる。
ワルシャワ条約が東ヨーロッパの7カ国とソ連のあいだで締結される。

1956年
リチャード·リプシーとケルヴィン·ランカスターが市場の失敗を正そうと
する市場介入によって事態がいっそう悪くなるばあいのあることを示す。

1957年
欧州経済共同体(EEC)が、ローマ条約によって創設される。

1958年
ビル·フィリップスが、フィリップス曲線を提示して、インフレと失業の関係を図示する。

毛沢東が大躍進政策を打ちだして、破滅的な飢饉に陥りかねない中国の産業化を試みる。

1960年
石油輸出国機構(OPEC)がバグダッドで創設される。

1962年
ロバート·マンデルとマーカス·フレミングが、為替相場と生産量のあいだの相関関係を
あきらかにする。

1970年
アンドレ·グンダー·フランクが、従属理論を用いて、グローバル経済は富裕な国と
貧しい国との分断を生みだすと主張する。

ユージン・ファーマが効率的市場仮説を提案して、投資家がつねに市場に活気を与えられる
わけではないと示唆する。


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現代の経済学
1970年
ジョージ·アカロフが、ある売り手がほかの売り手よりもよい情報をもっている市場を採りあげて、情報経済学という新たな領域を開拓する。

1971年
リチャード·ニクソン大統領が、ミルトン·フリードマンの助言にしたがって、ドルと金の価格との連動
を打ちきる。

1973年
石油産出国の集まりであるOPECが、石油生産·供給制限を開始し、世界を経済危機に陥れる。

アウグスト·ピノチェトがクーデターによって権力を掌握、チリがマネタリスト経済政策を実行した
最初の国家となる。

1974年
アーサー·ラッファーが、税金が増えるとどのようにして歳入の減少にいたるのかを示す、ラッファー曲線を説きあかす。

ハイマン·ミンスキーがその金融不安定性仮説の概要を提示し、安定状態がどのようにして不安定状態
へと変貌してゆくかを示す。

1977年
エドワード·プレスコットとフィン·キッドランドが独立した中央銀行の必要性を訴える。

1979年
心理学者エイモス·トヴェルスキーとダニエル·カーネマンが、「プロスペクト理論」を公刊して、行動
経済学の基礎を築く。

1985年
ミハイル·ゴルバチョフが、ペレストロイカとして知られる、ソ連における経済改革のプロセスを始動させる.

1988年
マリリン·ウェアリングの『もし女性が数にいれられたなら--新フェミニスト経済学」が、経済学にジェンダーにもとづいた視角を拓く。

1989年
アリス·アムスデンが、東アジア·タイガー経済の興隆を叙述する。

1994年
ロバート·フラッドとピーター·ガーバーが一連の通貨危機モデルの最初のモデルを創造する。

2000年代
アルベルト·アレシナとダニ·ロドリックが、経済成長と不平等との関係についての研究をおこなう。

2005年
ジェフリー·サックスが『貧困の終焉』のなかで、債務免除が第三世界の経済を起動させるきっかけに
なりうると示唆する。

2006年
ニコラス·スターンが地球温暖化を人類社会が直面する「最大の集合行為問題」として描きだす。

2008年
銀行危機が全世界的な景気後退の原因となり、信用は失墜し、住宅バブルがはじける。


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NAMs出版プロジェクト: マリリン・ウェアリング Marilyn Waring
http://nam-students.blogspot.jp/2017/02/marilyn-waring.html
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帝国と経済発展: 発展途上世界の興亡 (サピエンティア) 単行本 – 2011/12/1

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THE LINKAGE BETWEEN SPECULATIVE AtTACK AND TARGET ZONEKODELSOF EXCHANGE RATESRobertP.FloodPeter K. GerberWorking Paper No. 291.8NATIONALBUREAU OFECONOMIC REflARCM1050 l4asnchus.tts AvenueCathridge MA 02138April 1989
Robert P. Flood Peter K. Gerber 1994

Speculative BubblesSpeculative Attacks, and Policy Switching ...


mitpress.mit.edu/.../speculative-bubbles-speculative-atta...
Robert Flood and Peter Garber confess to a "fixation on understanding extreme events" such as speculative bubbles, ...

グローバリゼーション・パラドクス: 世界経済の未来を決める三つの道 単行本 – 2013/12/20

財政再建に何が必要なのか ~アレシナの法則を考える~2015

アレシナの法則をご存知でしょうか。米ハーバード大学のアルバート・アレシナ教授は研究の中で、過去の40年間にわたって各国の財政再建の取り組みを詳細に調査しました。その結果を受けて、アレシナ教授は、成功した事例と失敗した事例において、歳出削減の努力と歳入増の努力の比率に一定の法則性があった、ということを主張しています。財政再建に成功した国では歳出削減と歳入増の財政改善に対する貢献度が7:3であったのに対して、財政再建に失敗した国では、それが4.5:5.5であった、ということです。その一点だけを取り出して、財政再建のために議員定数削減や公務員削減など身を切る改革を断行すべきだ、公共事業・公共投資を削減すべきだと一部の政党は主張しています。
ところが、アレシナ論文には続きがあります。アレシナ教授の調査をより子細にみると、社会保障の削減や公務員数の増加抑制を行った国が財政再建に成功し、公共事業などの公共投資を削減した国はむしろ財政再建に失敗しているのです。では、日本も社会保障の削減や公務員の削減を行なえば良いのでしょうか。日本の社会保障費の増加は世界に類を見ない高齢化を背景とするものであり、これまでの社会保障給付策のもと、日本の社会保障支出をGDP比でみると既にG7平均を下回っています。また、公務員の数についても、国民の4人に1人が公務員であるギリシャと異なり、日本の公務員の数は、ピークの平成6年から比べると7割近くに減っています。日本はOECD加盟国の中で国民千人当たりの公務員数が最も少なく、米国や英国の半分近くとなっています。絞り切った雑巾のような我が国の歳出構造から更にまとまった額の予算を削ろうとすれば、高齢者の医療、介護や年金の給付を大幅にカットする、あるいは消防や警察等の災害や防犯を司る現場の職員を大幅に減らすなど、国民生活に支障が出ることも覚悟せねばなりません。
さらに、アレシナ論文は、歳出削減を通じて国債の信用度が高まることにより長期金利が低下し(=民間投資を増やし)、総需要の減少をカバーしたと分析しています。これも果たして日本に当てはまるのでしょうか。我が国ではご案内のとおり長期金利はかなり低い水準にあり、歳出削減したところで更なる長期金利の低下を期待することはできません。
 歳出削減が必要ないというつもりはありません。官僚機構は肥大化する「パーキンソンの原則」が示しているとおり、官僚機構は常に無駄を生み出してしまうものです。時代に合わなくなった予算や、効果の上がらない予算が無いか常に検証し、果断に削減する努力は必要です。小倉まさのぶも自民党の無駄撲滅プロジェクトチームの一員として、その努力を続けていくつもりです。ただ、それが、日本の財政健全化をそれだけで達成してしまうほどの大きな歳出の削減を実行しうるかは別問題です。さらに言えば、各国を比較分析してその集合体から一般則を導き出している経済学の論文が日本にも当てはまるかどうかは慎重に検討しなければならない、とも思います(これは、最近のトマピケティ論文を巡る主張にもあてはまりますが)。
 では、どうすれば良いのでしょうか。小倉まさのぶは「歳出削減をすれば財政再建できる」との過激で単純な主張を止め、経済成長・歳入改革・歳出削減を組み合わせた、より穏健で堅実な主張をすべきだと考えています。急激な歳出削減は需要不足を招きデフレに逆戻りする危険性を孕んでおりますので、必要な公共投資は行い需要を下支えしつつ、その間、民間主導の投資にバトンタッチしていく。企業活動を拡大し、日本の雇用が増えていけば、自然と法人税や所得税も増えていきます。歳入改革については、アレシナ論文の中に、保険料や所得税の引き上げよりも、法人税の課税ベース拡大や消費増税によるほうが財政再建の成功率が高いとの示唆があります。各国と比べて直接税の割合が高い日本の直間比率の是正や、租特等の例外措置の多い日本の法人税制をより公平かつシンプルなものにする改革が必要だと思います。

人口あたり公務員数の国際比較
各国の人口当たりの公務員数の比較(※社会データ実情データ図録より)。日本は既にかなり少ない。



基礎的財政収支の推移

基礎的財政収支(プライマリーバランス)の推移。自民党が政権に復帰してから改善傾向にある。
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貧困の終焉: 2025年までに世界を変える (ハヤカワ文庫 NF 404) 文庫 – 2014/4/10 ジェフリー・サックス (著), 野中 邦子 (翻訳), 鈴木 主税 (翻訳)

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ニコラス・スターン スターン報告 2006 日本語要旨

1 Comments:

Blogger yoji said...

360 名無しさん@お腹いっぱい。[] 2019/02/25(月) 16:38:17.42 ID:LYaKGmBl
『宇野理論を現代にどう活かすか』Newletter第24号に横川信治が反論していた。

現代古典派価値論と宇野理論:資本主義世界システムの歴史的動態をいかに分析するか
http://www.unotheory.org/files/2-24-1.pdf

>>355 は見落としであったので、訂正しておく。全体の感想は変らない。

第1節で塩沢の「現代古典派価値論」を取り上げて7点にわたってコメントしているが、
基本的には反論になっていない。たとえば、次は簡単にわかることである。

(3)利潤率ではなく剰余価値率が技術選択の基礎となる点を明らかにする。
★の技術選択は、経済学者の行なうものではなく、資本家(経営者)が行なう
ものであり、剰余価値率を基準にすることはない。第一、剰余価値率を知りも
計算もしないだろう。


(7)利潤を含む国際価値では賃金率を決定する理論が必要である。国際的な生産性
の違いは単位労働付加価値 VAL を決定するが、賃金を直接的に決定するものでは
ないので、賃金論が必要である。
★新しい国際価値論は、財価格と共に各国の賃金率を決定する理論であることが
理解できていない。

12:34 午前  

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