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《 かくして、ポストケインジアンにとって変動の主要な因果的連鎖は、主に慣性的な貨幣価格のも
とでの生産量の変化から借入れ金の需要の変化へと向かう。すなわち、借入れ金の需要は、在庫と
資本投資が増加するとき、その資金を賄うために増加し、生産量が減るときには減少する。次に、
資金の借入れ需要の変化は、貨幣の供給量を変化させる。このとき物価の上昇が起こるであろう。
それは費用の上昇、とりわけ賃金費用が上昇することによって起こるであろう。そして賃金費用の
上昇は、市場が逼迫し、労働者が自らの相対的立場を改善するための一定の交渉力を享受している
ときに起こるであろう。このような状況で、その因果関係の連鎖は、間接的に物価変動から借入れ
需要および貨幣需要の変化へと向かう。
これを形式的に表現すると、まず、マネタリストの場合ではMV=Py という交換方程式は、V
(貨幣の流通速度)とy(実質産出量)を一定としているので、次のように因果関係の連鎖がM(貨幣
供給量)からP (物価) に向かうことがわかる。
→
MV'=Py'
それに対してポストケインジアンの場合は、 交換方程式は依然として有効であるが、 いかなる所
与の時点においても物価水準は慣性的な変数であり、次に示すように直前の期の費用(C)とマーク
アップ(μ)の関数である。
P t=(1+μ)Ct-1
したがって、貨幣の供給が主に実質産出量の変動に依存するとき、因果関係の方向は、次に示す
ようにほとんどの場合、yからMへ向かう。
←
MV'=Py'
中央銀行は、費用(特に賃金費用)の漸増に対して利子率を引き上げることにより反応するであ
ろう(現にそうである)。ところが、最初の効果は物価水準に対してではなく、必然的に産出量と
雇用量に対するものである。連邦準備制度は失業を創出することによってのみ、賃金を抑制でき、
それゆえ、物価水準の上昇を遅らせることができる。ポストケインジアンは、期待などを通じて機
能し、貨幣の増加率の縮小が直接にインフレの減速をもたらすような市場メカニズムは存在しない、
と主張する。》
ジェームス・K.ガルブレイス『現代マクロ経済学』(1998年原著1994年)352頁より
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