柄谷 …実は、私はカントのことはずいぶん長い間忘れていたんですが、最近あらためてカントのことを考えるようになった。とくにカントが晩年に語った「自然」についてです。カントは、『永遠平和のために』のなかで、社会の歴史を「自然の隠微な計画」として見ました。つまり、そこに、人間でも神でもない何かの働きを見出したんです。「自然」は、ヘーゲルの「精神」のようなものではないし、「神」の言い換えでもないと思います。明らかに物理的な意味での自然ですから。だけど、「自然の隠微な計画」は、単なる唯物論でもないわけです。私が考えた交換様式も同じなんじゃないかと思ったんですね。神が出てくるのではなく、交換様式Dが出てくる。Dは「自然」なんですよ。うまく説明できませんけど、カントは「神」という言葉をみだりに使わなかったわけです。「統整的理念」にもそういう謎めいたところがあるけれど、自分がやっていることはカントに近いということを、今度の本を書き終える段階であらためて思いました。マルクスは『資本論』で、ヘーゲルの弟子と名乗ったけど、違いますね。カントの弟子ですよ。
目 次
Ⅰ:著者と読み解く『力と交換様式』
「柄谷行人」ができるまで──「交換の力」を考え続けた六十年
講演 「力と交換様式」をめぐって 國分功一郎×斎藤幸平 ★
モース・ホッブズ・マルクス
Ⅱ:「思考の深み」へ
可能性としてのアソシエーション、交換様式論の射程
交換様式と「マルクスその可能性の中心」
文学という妖怪
Ⅲ:『力と交換様式』を読む
柄谷行人はすべてを語った 大澤真幸
転移D──友・親・店・鬱 東畑開人
希望の現実化のために 渡邊英理
「不可能の可能性」の追究 佐藤優
霊の力はどこから来るのか 鹿島茂
あとがき
〈初出一覧〉
Ⅰ:著者と読み解く『力と交換様式』
賞金1億円の使い途(「文藝春秋」2023年4月号、改題)
講演 「力と交換様式」をめぐって 國分功一郎×斎藤幸平(「文學界」2022年10月号)
モース・ホッブズ・マルクス(「週刊読書人」2022年11月11日号)
Ⅱ:「思考の深み」へ
可能性としてのアソシエーション、交換様式論の射程(「談」2022年3月)
講演 交換様式と「マルクスその可能性の中心」(「文學界」2019年12月号)
文学という妖怪(「文學界」2020年3月号)
Ⅲ:『力と交換様式』を読む
『力と交換様式』を読む(「文學界」2023年2月号)
「柄谷行人はすべてを語った」大澤真幸
「転移D──友・親・店・鬱」東畑開人
「希望の現実化のために」渡邊英理 「『不可能の可能性』の追究」佐藤優
「霊の力はどこから来るのか」鹿島茂
0 Comments:
コメントを投稿
<< Home