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日曜日, 5月 05, 2019

Knapp クナップ 1842~1926


Georg Friedrich Knapp
(1842―1926) 


参考:

クナップ『貨幣の国家理論』に関する概念整理 - 朴勝俊 Park SeungJoonのブログ
https://parkseungjoon.hatenadiary.com/entry/2023/01/11/171107

Georg Friedrich Knapp, 'Der Ursprung der Sklaverei in den Kolonieen' (1890)


ケインズ1914年 Knapp と Bendixen
https://love-and-theft-2014.blogspot.com/2022/11/1914.html 


“Die staatliche Theorie des Geldes ”(1905) 
『貨幣の国家理論』(旧訳書名『貨幣国定説』 )
2022年11月18日
ゲオルク・フリードリヒ・クナップ
小林 純・中山智香子

97~98頁

#2:6
 国家による発行かどうかを境界標識としてはならない。そんなことをすると、場合によっては一番重要な銀行券という貨幣種類が排除されるからだ。 それは国家が発行したものではないが、国家の貨幣の仲間に入り込むことがある。一般的受領義務 (Annahmezwang) も標識としては使えない。国家の貨幣セットの中にはこの義務のない貨幣がよく存在するからである。例えばドイツでは、いわゆる国庫証券にはこの受領強制がない。
 もっとも現実に合うのは、国庫への支払で受領されることを標識にすることだ。つまり、国庫への支払ができる支払手段はすべて国家の貨幣組織に含まれる。 こう考えれば、ここで受容(Akzeptation) と名づけるものが境界を決めるのであって、発行が決めるのではない。だから国家による受容が国家貨幣の範囲の境界となる。 国家による受容というときは、国の窓口での受領だけを指す。 つまりここでは国家が受取人である。

目次
第1章 支払、貨幣と金属
1 金属重量測定制 - 価値単位の名目性
2 表券的支払手段
3 流通上の満足
4 貨幣と金属の板片的、発生的、相場規制的関係
5 貨幣と金属の相場規制的関係
第2章 国内貨幣制度の秩序
6 貨幣の機能的分類
7 複金属主義と本位通貨の類型
8 銀行券と振替支払
9 補助貨幣のプレミア
10 補助貨幣の滞留
11本位貨幣の変更
第3章 外国との貨幣流通
12 本位間相場
13 金銀の価値比率
14 対外相場規制の運営
15 最終目標としての固定相場
第4章 主要国概略
16 英国
17 フランス
18 ドイツ
19 オーストリア(一八五七~一八九二年)
20 オーストリア(一八九二~一九〇〇年)




旧訳クナップ 貨幣国定学説 1922 岩波書店は全訳ではなかった。だから第4章の最後の言葉は初めて訳されたのだ。

「恨みはないが、願わくばこれを最後として告げよう。金属理論よ。さらば。」★

小林純氏、中山智香子両訳者の解説が詳しい(旧訳者宮田喜代蔵氏へのリスペクト★★がこの種の本では珍しくまた感銘を受けた)。

内容面で基本的なことは『富国と強兵』中野剛志が紹介したように貨幣の発行ではなく受領をクナップは重視したということだ。表券主義における表券は民間発行で構わないのである。
ちなみに本書の告知で紹介されるウェーバーのクナップへの賞賛は以下、

《私が最もすぐれていると考える実質的な貨幣理論はフォン・ミーゼスのものである。G・F・クナップの『貨幣国定学説』~~ この分野での最も大規模な著作~~ はその形式的な課題を独自のやり方でみごとに解決している。》
(『経済行為の社会学的基礎範疇』中公世界の名著50321頁。クナップ2022解説参照)

ただしウェーバーはクナップを無条件で賞賛したわけではない。
クナップが序言で言及したジンメル『貨幣の哲学』★★★でも紹介された国家による貨幣の切り上げ切り下げが恣意的になりうるとウェーバーは危惧したのだ。
(とはいえ貨幣の切り上げ切り下げは信用貨幣論の強化でしかないのだが)

https://www.amazon.co.jp/貨幣の哲学-新訳版-ゲオルク-ジンメル/dp/4560092354/

ウェーバーのクナップ宛書簡は田中真晴『ウェーバー研究の諸論点』(2001)第4章に原文と共に所収されている。

https://www.amazon.co.jp/ウェーバー研究の諸論点―経済学史との関連で-田中-真晴/dp/4624321642/

『貨幣国定説 』の英訳版(残念ながら第4章をやはり除外)にあたってはケインズが尽力したようで 、その序文において 、クナップはケインズへの謝辞を述べている 。


ちなみに本書解説で日本における需要を説明していたが、左右田喜一郎(「貨幣と価値」1909でクナップとジンメルを比較した)については触れていなかった。
(クナップがリービヒと親戚関係にあるとの紹介には驚いた)




https://www.amazon.co.jp/State-Theory-Money-Abridged/dp/1646793641/


AUTHOR'S PREFACE TO THE ENGLISH EDITION 
 The State Theory of Money appeared first in 1905; the 2nd edition followed in 1918, the 3rd in 1921, the 4th in 1923. Our translation is based on the 4th. 
 When the work had appeared in Germany, it was reviewed in England by Dr. J. Bonar in the Economic Journal, March 1922.1¹) The somewhat unfamiliar features of the book could not have been more happily brought out than in this review. 
 Thereupon the Royal Economic Society determined to set on foot an English translation, in an abridged form. The work consists of four chapters, of which only the first three will be found here, translated with masterly exactness in spite of all difficulties. The fourth chapter contains the history of currency in England, France, Germany and Austria, as shown in the Contents. The author would not have advised this omission; but the ground is perhaps one of expense and lies in any case beyond his criticism. 
 Moreover, the same curtailment was made in the Japanese translation by Kiyozo Miyata, Tokio, 1922; it might seem as if German writers laid greater stress on history than foreign writers.
  In any case the author is grateful to the Society for carrying out the undertaking, doubtless at some sacrifice. In particular my thanks are due to Messrs. Keynes and Bonar, as well as to the honoured translator, Mrs. Lucas, and her adviser, Mr. Sanger. 
G. F. KNAPP. 
Darmstadt,
 May 16th, 1924.

deepl:
英語版への著者の序文 
 『貨幣の国家理論』は1905年に初版が発行され、1918年に第2版が、1921年に第3版が、1923年に第4版が発行された。本書の翻訳は、この第4版に基づくものである。 
 ドイツで出版された後、イギリスでは、J.ボナー博士が1922年3月の『経済ジャーナル』に書評を寄せた1¹) この書評ほど、本書のやや不慣れな特徴が楽しく引き出されたものはないだろう。 
 そこで王立経済学会は、簡略化した形で英訳を開始することを決定した。本書は4つの章からなり、ここでは最初の3章のみを、あらゆる困難にもかかわらず、見事なまでに正確に翻訳している。第4章は、目次にあるように、イギリス、フランス、ドイツ、オーストリアにおける通貨の歴史が含まれている。著者はこの省略を勧めなかっただろうが、その理由はおそらく経費の問題であり、いずれにせよ著者の批判の埒外にある。 
 また、宮田喜代三氏による邦訳(東京、1922年)でも同じように省略されており、ドイツの作家が外国の作家よりも歴史に重きを置いているように思われるかもしれない。
  いずれにせよ、著者は、間違いなく多少の犠牲を払ってこの仕事を遂行した学会に感謝している。特にケインズ氏とボナー氏、そして光栄な翻訳者であるルーカス夫人とその助言者であるサンガー氏に感謝する。
G. F. KNAPP. 
ダルムシュタット
 1924年5月16日


ケインズ『貨幣論』1929
《 ところで、契約と付け値とに言及することによって、既にわれわれはそれらを履行させることのできる法律あるいは慣習を導入している。すなわちわれわれは、国家あるいは社会を導入しているのである。さらに貨幣契約の一つの特殊の性質は、国家または社会が、単に引渡しを強制するだけでなく、計算貨幣をもって締結されている契約の合法的あるいは慣習的な履行として引き渡されなければならないものは何かということをも決定する点にある。したがって国家は、まず第一に、契約に含まれている名称もしくは記述に照応する物の支払いを強制する法の権威として現われる。しかし国家が、これに加えていかなる物がその名称に照応するかを定め、これを布告し、そしてその布告を時どき変更する権利を要求するとき--すなわち辞典を再編修する権利を要求するとき--国家は二役を演ずることになる。この権利は、すべて近代国家が要求しており、そして少なくとも約四○○○年の間そのように要求し続けてきた。クナップ(Knapp)の表券主義(chartalism)--貨幣はとくに国家の創造物であるという学説--が完全に実現されるのは、貨幣の発展がこの段階に到達したときである。
 したがって、人びとが計算貨幣を採用した瞬間から、貨幣の時代が物々交換の時代の後を引き継ぐに至ったのである。そして表券主義的貨幣すなわち国家貨幣の時代は、国家が、一般に行なわれている計算貨幣に対して、いかなるものを貨幣としてこれに照応させるかを布告する権利を要求したときに--国家が辞典の使用を強制するだけでなく、辞典を作る権利をも要求したときに--達せられた。今日すべての文明社会の貨幣は、議論の余地なく表券主義的[貨幣〕である。》原著1929

邦訳ケインズ全集#5:4~5頁

https://www.amazon.co.jp/dp/4492811451/


レイMMT入門6.3

https://www.amazon.co.jp/dp/B07VKSVKRY/

《 ここでは、貨幣の歴史に関する従来の物語の誤りを証明するために、詳細な歴史を説明する余裕はない。そこで、その代わりとなるものを概観しよう。  
 まずは、計算貨幣は何千年も前から──少なくとも4000年、おそらくはもっとずっと前から──存在することに注目しなければならない(「現代貨幣理論」の「現代」は、「貨幣とは、少なくとも過去4000年間は国家貨幣であった」というケインズの主張から来ている)。我々がこれを知っているのは、例えば貨幣的な価値を記録するメソポタミアの粘土板や、その計算貨幣を使った価格表のおかげである。》原著2015改訂版



《‪クナップの『貨幣国定説』は、その題名から、国家による貨幣の発行や法定を
最も重視したものと誤解されがちであるが、そうではない。クナップが最も重視
したのは、国家による発行や法定ではなく、「受領」であった。》
中野剛志『富国と強兵』#1

https://www.amazon.co.jp/富国と強兵―地政経済学序説-中野-剛志-ebook/dp/B01MQE37PV/

《誰でも貨幣を創造することができる。問題は、それを受け入れさせることである》
ミンスキー『金融不安定性の経済学』#10:284頁参照


https://www.amazon.co.jp/金融不安定性の経済学―歴史・理論・政策-ハイマン-ミンスキー/dp/4811512189/


 


Aber die staatliche Theorie hat auch die vielen anderen Formen des Zahlungswesens unterzubringen und deren gemeinſame Wurzel aufzudecken; 

deshalb muß fie umfasſender und duldsamer ſein als die Metalltheorie,

 von der wir ohne Groll und hoffentlich auf immer Abschied nehmen. 


しかし、国家論は、他の多くの支払い形態にも対応し、その共通の根源を明らかにしなければならない。

したがって、金属理論よりも包括的で寛容なものでなければなりません。

 私たちは、恨みっこなしで、願わくば永遠にお別れをしたいと思います。


358:

すればいいのではないか。その目標は国家理論全体のなかに個別の一ケースとして含まれているから、何

ら非難する必要はない。だが国家理論は、それ以外の支払制度の様々なあり方をも示して、それらに共通

の基礎を発見しようとする。そのため金属理論よりも包括的で寛容でなければならない。 恨みはないが、

願わくはこれを最後として告げよう。金属理論よ、 さらば。



 Die Metallisten verdienen als Praktiker alle Anerkennung;

ſie wollen Barverfassung des valutariſchen Geldes, haben alſo

ein sehr einfaches allgemein verständliches Ziel: weshalb sollten

sie es nicht durch gemeinverständliche Gründe empfehlen? Jenes

Ziel ist in der staatlichen Theorie mit eingeschlossen als ein be

sonderer Fall, begegnet alſo, von da aus, keinem Einwande. Aber

die staatliche Theorie hat auch die vielen anderen Formen des

Zahlungswesens unterzubringen und deren gemeinsame Wurzel

aufzudecken; deshalb muß fie umfassender und buldsamer sein

als die Metalltheorie, von der wir ohne Groll und hoffentlich

auf immer Abschied nehmen.


357~8:

 金属主義者は実践家として大いに評価してよい。 彼らは本位貨幣の正貨セットを求め、 それゆえ極めて

簡単で一般的に理解できる目標を掲げる。 それなら、 普遍的に理解できる根拠を示して彼らの目標を推奨

すればいいのではないか。その目標は国家理論全体のなかに個別の一ケースとして含まれているから、何

ら非難する必要はない。だが国家理論は、それ以外の支払制度の様々なあり方をも示して、それらに共通

の基礎を発見しようとする。そのため金属理論よりも包括的で寛容でなければならない。 恨みはないが、

願わくはこれを最後として告げよう。金属理論よ、 さらば。


『貨幣の国家理論』354~358頁

★★


名古屋の三菱UFJ銀行貨幣・浮世絵ミュージアム(本書に画像提供)に宮田氏寄贈の貨幣があるという。

https://www.bk.mufg.jp/currency_museum/exhibit/world/index.html



貨幣及び流通手段の理論 (近代経済学古典選集) 単行本 – 1980/10/1 


★★★

ジンメル『貨幣の哲学』 

1:2:3
☆☆b

信用貨幣 

 第二章 貨幣の実体価値 

182頁~
 …一六二一年に北ドイツの鋳貨改悪によってライヒスターラー貨(ドイツにおいて一五六六年から一七五〇年頃に通用した銀貨)の 価値が四八から五四シリングに騰貴したとき、ホルシュタイン、ポンメルン、リューベック、ハンブルクや、その他 の政庁は共同の鋳貨法令を発して、
ライヒスターラー貨は一定の時点からはたんに四〇シリングとしてのみ通用すべきであるとした。このことは一般に正当で有益と評価されて受け入れられはしたが、それでもライヒスターラー貨は さらに分割と計算とが比較的に容易であったため、なお長く四八シリングとして通用した。同じことははるかに高い 複雑な段階においても生じる。取引所は現在のところ公債証書が高額と低額とで発行されて、〜〜〈割合からすれ ば〉価値はまったく同じであるにもかかわらず〜〜低額証券のほうがより多く求められ、比較的小さい取引に利用されるから、高額証券よりも低額証券のほうにいくらか高く値段をつけるのをつねとするばあいのことである。さらに 一七四九年にアメリカの植民地における鋳貨目的にかんする委員会の声明したところでは、生産よりも消費の多い経 済の未開発な国においては、貨幣はより豊かな隣国よりも劣悪でないばあいは不可避的にそこへ流出するから、つね にそこよりも劣悪でなければならないという。…十七世紀の終わりにブラジルの採金業者たちのあいだに小銭の欠乏が生じたとき、ポルトガル国王はこれを利用して、金の法外なプレミアムをとって銀貨を提供した。その後カリフォルニアとオーストラ リアにおいても採掘業者がたんに小銭を得るために、その代わりに二倍から一六倍の金属価値を金で支払うというこ とが生じた。この種のもっともひどい現象を提供するのは、最近まで支配していた〜〜最近は改革中であるといわれ ている〜〜トルコの鋳貨状態である。ここにはニッケル貨も銅貨も存在せず、小銭としてはたんに惨めな銀の合金、 アルティリック貨、ベシュリック貨、メタリック貨のみが存在し、これらのすべては取引にはまっなたく不十分な量し か存在しない。その結果はこうである。すなわち政府は一八八〇年にみずからこれらの鋳貨の名目価値をほぼ半分に 滅少させたが、これらの鋳貨はその価値をほとんど変えないで維持し、金にたいして言うに値するほどの逆プレミアムをまった くつけず、そればかりか全世界に流通している貨幣記号のうち最悪とされているメタリック貨が、時には 金にたいして額面以上に上がることがある。まさにこのことこそきわめて特徴的である。…
 貨幣の機能意義の上昇した意識と上昇した事実性とは、銀本位制にたいする異議をもまた可能とした。すなわち貨幣に要求されるものは、第一にも無条件にも便利さと取り扱いやすさとであるという異論である。…


reichsthaler


1773年プロイセン王国 1/3ライヒスターラー銀貨





“Kipper und Wipper”: Rogue Traders, Rogue Princes, Rogue Bishops and the German Financial Meltdown of 1621-23 | History| Smithsonian Magazine
https://www.smithsonianmag.com/history/kipper-und-wipper-rogue-traders-rogue-princes-rogue-bishops-and-the-german-financial-meltdown-of-1621-23-167320079/
キンドルバーガー経由なのでバイアスがある


Reichsthaler - Wikipedia



解説で日本における需要を説明していたが、左右田喜一郎については触れていなかった。
(クナップがリービヒと親戚関係にあるとの紹介には驚いた)

参考:

左右田喜一郎1881-1927 ジンメル関連
 
            ジンメル 左右田喜一郎 インガム 
               イネス モース

クナップ1842-1927

左右田全集2

クナップとジンメルを比較している。
ジンメルは国家の範囲内に貨幣を止める。
2-36頁

貨幣と価値 1909
ジンメル関連





参考:


再びクナップに言及

左右田喜一郎 1909 ジンメル関連
:左右田はクナップを法に囚われ過ぎと考えている。

 

ISHIZUKA Ryouji (@ISHIZUKA_R)
たとえば、Iさんの本でも「貨幣の価値を担保しているのは国家による法的な強制力」とクナップ説を要約しているけれども、クナップを読んだのかな?。クナップは国家の為べきことは法秩序の維持であり、そのためには債務弁済の方法を定めなければならない、といようなことを繰り返し書いている。

https://twitter.com/ishizuka_r/status/1210429648158392321?s=21



ISHIZUKA Ryouji (@ISHIZUKA_R)
クナップの『貨幣国定説』のドイツ語原文、英訳本はネット上で読める。残念ながら邦訳はネットにはない(と思う)。
archive.org/details/staatl…
socialsciences.mcmaster.ca/econ/ugcm/3ll3…

https://twitter.com/ishizuka_r/status/1217369961590444032?s=21

ドイツ語
Stattliche Thorie des Geldes 
https://archive.org/details/staatlichetheor00knapgoog/page/n8
英語
https://socialsciences.mcmaster.ca/econ/ugcm/3ll3/knapp/StateTheoryMoney.pdf
英語版序文にはケインズへの謝辞あり

ケインズ『貨幣改革論』1923『貨幣論』1930:メモ  
http://nam-students.blogspot.jp/2015/10/1979-john-maynard-keynes-treatise-money.html 


____

https://dl.ndl.go.jp/search/searchResult?featureCode=all&searchWord=%E8%B2%A8%E5%B9%A3%E5%9B%BD%E5%AE%
9A%E5%AD%A6%E8%AA%AC&viewRestricted=0&viewRestricted=2&viewRestricted=3
クナップ 貨幣国定学説  1922 岩波書店
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/971256
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/971256/15

https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/971256/90
134頁

https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/971256/56
66頁


_____

ケインズ『貨幣論』の貨幣分類(『貨幣論』9頁参照)

   債務の承認→銀行貨幣     →  銀行貨幣
  /          \     /法定不換貨幣
計算貨幣          代表貨幣      
  \          /     \
   本来の貨幣→国家貨幣       管理貨幣
             \     /
              商品貨幣
                   \商品貨幣


土器に印をつける方が金属鋳造より楽なのは理解出来る
(ケインズが調べた時の)インドで起きたことをみれば
あるいはアメリカの事例からみれば(金を流失させないための兌換停止だから)
商品としての金は無くなるわけではない
あくまで貨幣とは何かという話だ
金を持っていた方が国力は高いが
MMTで供給能力を高めたほうが簡単に国力は上がる



ケインズ全集5巻 貨幣論1 貨幣の純粋理論 | 東洋経済
http://store.toyokeizai.net/books/9784492811450/


 貨幣理論は大きくふたつに分けられる。貨幣金属説と貨幣表券説だ。貨幣金属説では、貨幣を、市場で各個人が発揮する合理的行動から生まれるものと見なす。いっぽう、貨幣表券説では、貨幣は「国家(あるいは中央政権)の創出物」だ。こうしたアプローチには複数の枝葉があり、貨幣表券説のなかには、金本位制や商品本位制も国がシステムを構築して尺度等を定めるという点から表券主義だとする見方もある。
 多くの経済学者が重視しているのは貨幣の一般受容性だ。貨幣に価値をもたせるには、貨幣が国民に受け入れられなければならない。この受容性は、通常、納税等によって保証されている。

世界を変えた…28~9 フォーステイター

Knapp クナップ 1842~1926
https://nam-students.blogspot.com/2019/05/knap-18421926.html


https://archive.org/details/in.ernet.dli.2015.45480/page/n23
John Maynard Keynes A Treatise Money 1929・1965
ケインズ全集5所収

https://twitter.com/kf0612/status/1166339087277547520?s=21

ケインズ「貨幣と計算貨幣との区別は, 計算貨幣は記述あるいは称号であり, 貨幣はその記述に照応する物であるといえば, おそらく明らかにし得るであろう」
ケインズ「貨幣契約の一つの特殊な性質は, 国家または社会が, 単に引渡しを強制するだけでなく, 計算貨幣をもって締結されている契約の合法的あるいは慣習的な履行として引き渡されなければならないものは何かということをも決定する点にある」
「したがって国家は, まず第一に, 契約に含まれている名称もしくは記述に照応する物の支払いを強制する法の権威として現れる。 しかし国家が, これに加えていかなる物がその名称に照応するかを定め, それを布告し, そしてその布告を時々変更する権利を要求するとき国家は二役を演じることになる」
「この権利は, すべて近代国家が要求しており, そして少なくとも約4000年の間そのように要求し続けてきた。
クナップの表券主義 (chartalism) 貨幣はとくに国家の創造物であるという学説 が完全に実現されるのは, 貨幣の発展がこの段階に到達したと
きである」
イネスとケインズの貨幣論 / “konan-u.repo.nii.ac.jp/?action=reposi…” htn.to/4gvNXFzFw2
https://konan-u.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=2991&item_no=1&attribute_id=22&file_no=1
https://htn.to/4gvNXFzFw2 p.79

貨幣論1
p.4

  Now by the mention of contracts and offers, wehave introduced Law or Custom, by which they areenforceable; that is to say, we have introduced theState or the Community. JHirthermore it is a peculiarcharacteristic of money contracts that it is the Stateor Community not only which enforces delivery, butalso which decides what it is that must be deliveredas a lawful or customary discharge of a contractwhich has been concluded in terms of the money-of-account. The State, therefore, comes in first of allas the authority of law which enforces the paymentof the thing which corresponds to the name or de-scription in the contract. But it comes in doublywhen, in addition, it claims the right to determine anddeclare what thing corresponds to the name, and tovary its declaration from time to time—when, thatis to say, it claims the right to re-edit the dictionary.This light is claimed by all modem States and hasbeen so claimed for some four thousand years at least.It is when this stage in the evolution of Money hasbeen reached that Knapp’s Chartalism—the doctrinethat money is peculiarly a creation of tte State—^isfully realised. 


貨幣論
 ところで、契約と付け値とに言及することによって、既にわれわれはそれらを履行させることのできる法律あるい
は慣習を導入している。すなわちわれわれは、国家あるいは社会を導入しているのである。さらに貨幣契約の一つの
特殊の性質は、国家または社会が、単に引渡しを強制するだけでなく、計算貨幣をもって締結されている契約の合法
的あるいは慣習的な履行として引き渡されなければならないものは何かということをも決定する点にある。したがっ
て国家は、まず第一に、契約に含まれている名称もしくは記述に照応する物の支払いを強制する法の権威として現わ
れる。しかし国家が、これに加えていかなる物がその名称に照応するかを定め、これを布告し、そしてその布告を時
どき変更する権利を要求するとき--すなわち辞典を再編修する権利を要求するとき--国家は二役を演ずることに
なる。この権利は、すべて近代国家が要求しており、そして少なくとも約四○○○年の間そのように要求し続けてき
た。クナップ(Knapp)の表券主義 (chartalism)--貨幣はとくに国家の創造物であるという学説--が完全に実
現されるのは、貨幣の発展がこの段階に到達したときである。
 したがって、人びとが計算貨幣を採用した瞬間から、貨幣の時代が物々交換の時代の後を引き継ぐに至ったのであ
る。そして表券主義的貨幣すなわち国家貨幣の時代は、国家が、一般に行なわれている計算貨幣に対して、いかなる
ものを貨幣としてこれに照応させるかを布告する権利を要求したときに--国家が辞典の使用を強制するだけでな
く、辞典を作る権利をも要求したときに--達せられた。今日すべての文明社会の貨幣は、議論の余地なく表券主義
的[貨幣〕である。

全集#5:4~5頁





富国と強兵#1より

クナップの 『貨幣国定説 』は 、その題名から 、国家による貨幣の発行や法定を最も重視したものと誤解されがちであるが 、そうではない 。クナップが最も重視したのは 、国家による発行や法定ではなく 、 「受領 」であった 。 

《(貨幣を定義する )基準は 、貨幣が国家によって発行されることではあり得ない 。というのも 、それでは 、最も重要な種類の貨幣が排除されてしまうだろうからだ 。私が言っているのは 、銀行券のことである 。銀行券は国家によって発行されるのではないが 、貨幣システムの一部を形成している 、法貨であることもテストにはならない 。というのも 、貨幣システムの中で 、しばしば法貨ではないものが存在するからだ (一九 ○五年時点のドイツでは 、財務省証券は法貨ではなかった ) 。
 もしテストとして用いるならば 、我々は 、貨幣が国家機関への支払いにおいて受け入れられるという事実に最も着目すべきである 。そして 、国家に対する支払いのための手段はすべて 、貨幣システムの一部を成している 。こうしたことから 、決定的なのは 、発行ではなく 、受領と呼ばれるものである 。国家による受領が貨幣システムの境界線を定める ★ 3 0 。》

 そして 、国家が受領するものとして特に大きな役割を果たすのが租税だとクナップは言う ★ 3 1 。このように 、彼の表券主義は 、信用貨幣論を前提とした 「国定信用貨幣論 」であった。


★ 1 2 『貨幣国定説 』の英訳版にあたってはケインズが尽力したようで 、その序文において 、クナップはケインズへの謝辞を述べている 。 G e o r g F r i e d r i c h K n a p p , T h e S t a t e T h e o r y o f M o n e y , M a r t i n o P u b i s h i n g , 2 0 1 3 , p . v i .
95,52
邦訳『貨幣国定学説』昭和63年復刻版132-3頁参照(原書記号85)67頁(42)

就中(なかんずく)この貨幣は吾々を国家に対する債務より免除する、蓋し発行者としての國家は、受領者としての國
家が斯かる支払要具を以て 満足する旨を極力承認 せるが為めである。國家に於て租税が益々重要と
なるに従つて、この事情は愈々大なる関係を有つに至る。  邦訳66~7頁



国会図書館デジタルコレクション、クナップ 『貨幣国定学説 』岩波書店 1922

https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/971256/89

宮田喜代蔵訳



《国家の発行(staatliche Emission)を以って識標としてはならない、然らざれば或事情の下に於て

甚だ重大なる意義を有する貨幣種類が除外せられるからである。予は此処に銀行券を考へている。

 吾々が国庫に向けられた支払に於ける受領を識標さして利用する時、現実に最も密接なる関係に立つ。是れに拠れば国家に宛つる支払を弁済し得る総ての支払要具は国家の貨幣制度に所属する。

さんば斯の限界を決定するものは発行の如何ではなく、吾々の受容 (Akzeptation) と命名するもの

である。故に国家の受容が国家的貨幣制度の範囲を境界づける。こに国家の受容とは只国庫に於

ける受領、即ち国家が其際受取人として考へられる受領の謂ひである。》132133







The State Theory of Money (英語) ペーパーバック – 2013/10/1

https://archive.org/details/StateTheoryOfMoneyGeorgKnapp1924
https://ia800209.us.archive.org/26/items/StateTheoryOfMoneyGeorgKnapp1924/
Economics%2C%20NatSoc%20-%20The%20State%20Theory%20of%20Money%20-%20Georg%20Knapp%20%281924%29.pdf


 話は変わりますけど記事に出てくる貨幣国定説のゲオルグ・フリードリヒ・クナップ(G.F.クナップ)ですが、マックス・ウェーバー、ジョン・メイナード・ケインズなども支持しており、ケインズの論も表券主義の前提に立ったものであるのですね。
 で、アバ・ラーナー(機能的財政論)やハイマン・ミンスキー(金融不安定性仮説)は、この流れを組んだポストケインズ主義でして、当然ながら彼らの理論も表券主義を前提としているのです。
 ではアバ・ラーナーやミンスキー、ケインズを拒否した新古典派経済学は?というと、当然ながら自然な解釈では金属主義、商品貨幣論という立場になるわけです。
 この貨幣に対する価値観、解釈の違いが需要を重視するか、供給を重視するか?という違いにそのまんま現れたりしてるのです。
 端的に表現すれば、政府支出を重視するのか、それとも市場原理と小さな政府なのか?という違いです。




参考:
ゾンバルト『恋愛と贅沢と資本主義 』(ドイツ歴史学派)
http://nam-students.blogspot.com/2018/09/blog-post.html
A.E.グッドハート Charles Albert Eric Goodhart 1936~
https://nam-students.blogspot.com/2019/05/ae-charles-albert-eric-goodhart-1936.html

Knap クナップ 1842~1926
[生]1842.3.7. ギーセン
[没]1926.2.20. ダルムシュタット
























ドイツの経済学者。ミュンヘン,ベルリン,ゲッティンゲン大学で統計学,経済学を学び,1867年ライプチヒ市統計局長,69年ライプチヒ大学員外教授,74年シュトラスブルク大学教授。初め統計学,次いで農政史の研究に専念した。 G.シュモラー,L.ブレンターノらとともに新歴史学派の中心の一人であり,また社会政策学会の設立メンバーの一人でもある。クナップの名が今日よく知られているのは,彼がその著作『貨幣国定説』 Die staatliche Theorie des Geldes (1905) で展開した貨幣の概念によるところが大きい。彼は,貨幣は法秩序あるいは国家によって生成するのであり,素材としての貨幣価値から貨幣の本質を導き出すのは,大きな誤りであるとした。ほかに『旧プロイセンにおける農民解放と農業労働者の起源』 Die Bauernbefreiung und der Ursprung der Landarbeiter in den älteren Teilen Preussens (2巻,1887) など著書多数。
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クナップ

























ドイツの経済史家,貨幣理論家。シュトラスブルク大学教授。歴史学派の立場から東西ドイツ農業構造の差を明らかにしたほか,貨幣は国家が強制通用力を付与するために価値をもつとする《貨幣国定学説》の著者として著名。
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ドイツ歴史学派 (The German Historical School)


若きドイツ歴史学派

  • Georg Friedrich Knapp, 1842-1926.- (1)
    • Die Neueren Ansicthen uber Moralstatistik, 1871.
    • Theorie des Bevolkerungs-wechsels, 1874.
    • Die Bauernfreiung und der Uroprung der Landarbeiter, 1887.
    • Grundherrschaft unde Rittergut, 1897
    • The State Theory of Money , 1905.
    • 仕事熱心な経験論者だったクナップは、その統計ツールを経済的な構造の歴史的/人口的研究にいろいろ向けた。農業システムやマネーについての研究がいちばん有名だろう。クナップはマネーの「Chartalist」理論の旗手だった。これはつまり、マネーの価値は国の税制によって人工的に「創造」される、ということだ。
  • Ludwig Joseph (Lujo) Brentano, 1844-1931.
  • エルンスト・エンゲル Ernst Engel, 1821-96. 
    • Der Kostenwerth des Menschens, 1883.
    • 統計家で有名な「エンゲルの法則」や「エンゲル曲線」(消費需要の構成を消費者の所得と関連づけたもの)の考案者として有名(日本では「エンゲル係数」で知られる、あのエンゲル)。



クナップ【Georg Friedrich Knapp】




























1842‐1926
ドイツの統計学者,経済史家,貨幣理論家。ギーセンに生まれる。ミュンヘン,ベルリン,ゲッティンゲンの諸大学で学び,1867‐74年ライプチヒ大学教授,1874‐1919年シュトラスブルク大学教授。はじめ統計学者として,ついでシュトラスブルク大学時代は農業史家として知られ,またこの時期以降,G.シュモラーやL.ブレンターノらとともに新歴史学派の中心人物の一人として活躍した。最大の業績は《貨幣国定学説》(1905)で示された貨幣理論である。
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クナップ
くなっぷ
Georg Friedrich Knapp
(1842―1926) 


























ドイツの経済学者。ギーセンに生まれ、ミュンヘン、ベルリン、ゲッティンゲンの各大学に学ぶ。ライプツィヒ市統計局長を経てライプツィヒ大学の員外教授となり、人口統計を研究したが、1874年にシュトラスブルク大学に移り、社会政策学会に所属して新歴史学派の影響を受け、ドイツ農業史に転じた。主として、16世紀の東エルベ地方の領主制大経営から19世紀のユンカー経営の成立に至る過程の分析を行い、東部ドイツと西部ドイツの農業構造近代化の類型的区別を明らかにし、その後のドイツ比較農業史研究に大きな影響を与えた。晩年には貨幣論に向かい、『貨幣国定学説』(1905)において、貨幣の価値は、その素材によってではなく、国家が貨幣に与えた法的な強制通用力によって決まると主張し、いわゆる名目主義学説を基礎づけた。[一杉哲也]
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【歴史学派】より



























…この仕事を実行したのはG.シュモラーをはじめとする新歴史学派に属する人々である。
[新歴史学派]
 新歴史学派の代表的な学徒としては彼のほか,A.H.G.ワーグナーL.ブレンターノK.ビュヒャーG.F.クナップらの名を挙げることができる。歴史学派はこの段階に至ってはじめて学派と呼ぶにふさわしいグループを形成するが,旧歴史学派を特徴づけた歴史哲学の要素はここでは影をひそめ,代わって没理論的な〈細目研究〉が盛んに行われるようになった。…
※「クナップ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。 
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

新歴史学派
しんれきしがくは
neue(junge) historische Schule; new(younger) historical school

ドイツ統一 (1871) や産業資本の確立に伴う労働運動の激化などに対応して,1873年に G.シュモラー,A.ワーグナー,L.ブレンターノらによって社会政策学会が設立されたが,これら学会に属するドイツの歴史学派の人々をさし,後期歴史学派,あるいは社会政策学派,講壇社会主義者とも呼ぶ。各国経済の歴史性や国民性を説く点では旧歴史学派と同様であるが,この学派の特徴はむしろ労働問題の深刻化とも関係して国民経済の倫理性を説き,資本主義体制を是認しつつも,ドイツ資本主義の強化のために古典学派の説く経済的自由主義 (自由放任論) を排して,労働階級の生活水準をある程度向上させ,労使の対立を緩和するために国家が積極的に社会政策を行うことの必要性を強調し,社会政策の経済的,倫理的基礎づけを行おうとした点にある。旧歴史学派とともにアメリカの制度学派やイギリスの一部の経済学者,明治後期~大正期の日本などにかなりの影響を与えたが,この学派のやや無理論的な歴史主義は C.メンガーによって批判されてシュモラーとの間に激烈な方法論争が起り,その倫理的性格は M.ウェーバーに批判されて価値判断論争を生み,さらに W.ゾンバルトの内在的批判が加わったりして,学派としては 20世紀初頭に事実上,発展的解消をとげた。
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世界大百科事典内の新歴史学派の言及

【経済学説史】より


























…歴史学派の特徴としてはさらに,普遍性を排する相対性の観点,社会生活の統一性の観点,倫理的動機を強調する反合理主義的観点,発展の観点,原子論的・機械論的社会観を否定する有機的社会観,などをあげることができよう。古典派経済学の自由貿易主義を批判し,重商主義的・保護主義的な主張をしたF.リストは歴史学派の先行者であり,歴史哲学要素の濃いW.ロッシャーK.G.クニースなどは旧歴史学派,歴史的・記述的な細目研究を重視するG.シュモラーなどは新歴史学派とよばれる。そして《プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神》で有名なM.ウェーバーの理念型や価値自由性などの方法論的研究は,歴史学派の自己批判であったといえる。…

【経済史学】より


























…事実,経済史的な叙述は,経済学と同様,イギリス重商主義の文献やアダム・スミスの《国富論》を起点とする。けれども,経済史学を経済学の理論や政策論から分化した独立の専門科目として確立させたのは,F.リストを始祖とするドイツ歴史学派経済学(とくにG.シュモラー以下の新歴史学派)であり,それは,経済史学がとりわけ後進国の歴史意識にたって,経済現象がもつ歴史性・国民性を強調しつつ成立したことを物語っている。〈二重革命〉(イギリス産業革命とフランス市民革命)に始まる19世紀ヨーロッパ世界のなかで,経済的にも社会的にも後進国であったドイツの現実を背景として台頭した歴史学派経済学は,イギリス古典派経済学の万民的(コスモポリタン)な性格を批判して,たとえば次のように主張した。…

【社会政策】より



























…社会政策という言葉がどのような領域の政策を指しているかということに即していえば,さしあたり,労働組合立法など労使関係にかかわる政策を基軸とし,工場法をはじめとする労働者の労働条件にかかわる政策,さらには救貧立法から社会保障制度にいたる国民の生活保障にかかわる政策などを包含するものといってよい。
[社会政策の諸理論]
 もともと社会政策という言葉は1872年ドイツで創立された社会政策学会に結集した新歴史学派(〈歴史学派〉の項参照)の経済学者,A.H.G.ワーグナーG.シュモラーL.ブレンターノなどによって喧伝(けんでん)されるようになったもので,そこでは,ドイツの急速な資本主義化にともなう階級対立の深刻化と社会主義運動の勃興による社会革命への危惧にもとづいて,階級利害を超越した国家が経済に介入し分配的正義を実現しなければならないと主張された。つまり,新歴史学派による社会政策の勧めは,現存の資本主義体制を容認しつつ,自由主義に反対し社会主義にも反対するという社会改良の主張にほかならなかった。…

【シュモラー】より


























…ドイツの経済学者。新歴史学派の重鎮。ビュルテンベルクに生まれチュービンゲン大学に学ぶ。…

【歴史学派】より



























[旧歴史学派]
 歴史学派はドイツにおける資本主義発展のこのような局面に即応し,官立大学の経済学者によって学派としての成立をみる。W.G.F.ロッシャーB.ヒルデブラントK.G.A.クニースはその3巨人であり,彼らの歴史学派は後の新歴史学派に対して旧歴史学派と呼ぶこともある。まず口火を切ったのがロッシャーである。…
※「新歴史学派」について言及している用語解説の一部を掲載しています。 
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ドイツ歴史学派 (The German Historical School)

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 ドイツ歴史学派は、19 世紀終わりにカール・メンガーオーストリア学派との長い Methodenstreit 論争を開始するまでは、自分たちが学派だという認識すらなかったかもしれない。でも、自分たちのやっている経済学が、リカードミル古典派アングロサクソン世界でやられているものとはまるでちがうことは、ずいぶん前から認識していた。かれらの経済学は、名前からもわかるとおり、「歴史的」で、だから経験的、帰納的な理由づけに大きく依存していた。そのルーツはヘーゲル哲学とリストミュラーのロマン主義・国粋主義的な抽象理論批判にある。英仏海峡を越えた仲間意識は、古典派とではなく、イギリス歴史学派とのものだった。

 歴史学派の初期の手法原理は、ヴィルヘルム・ロッシャーによって決められた。ヘーゲルに従って、ロッシャーは普遍的な理論体系という考え方を否定した――経済的なふるまい、ひいては経済の「法則」はその歴史的、社会的、政治的な文脈に依存しているのだ、と論じて。つまり、経済的な手法はどうしても学問領域をまたがるものとなる。経済活動は、経済学者としての目だけでなく、歴史家と社会学者の目をもって見る必要がある。だから最初の仕事は、その社会における経済組織と社会組織との関連についての発想を得るために、歴史を細かく検分してやることだ、ということになる。結果として初期の歴史学派の仕事――特にロッシャーの初期の弟子たち、ブルーノ・ヒルデブラントとカール・クニースの仕事は、歴史を通じた経済組織の段階論に集中している。
 グスタフ・シュモラーの下の若き歴史学派が台頭したとき、こうした慎みはだんだん失われた。かれらの主張では、経済学は本質的に規範的な学問分野であって、だから政策立案者やビジネスマンの使うツールを考案するべきなのだ。かれらの見方では、歴史は単に手元のある問題にとっての事例を提供するために存在するだけだ。歴史学派たちはそのことばに従って、Verein für Sozialpolitik を 1872 年に設立し、経済政策への説教的関与を目指した。でも、 Verein はすぐに、保守的プロシア政府の手先と見なされるようになり、シュモラーとその同僚たちは "socialists of the chair" (em>Katheder Sozialisten) というレッテルを貼られることになる。
 カール・メンガーが 1883 年にその手法論的な攻撃を歴史学派に向けると(当時、歴史学派はドイツの大学を実質的に独占していて、古典派と新古典派のどちらも排除している状態だった)、歴史学派は規範的な立場から、古いロッシャーの議論に撤退した――自分たちの手法は、理論を適用する以前に、単に歴史的な法則をまず探そうとしているだけで、positiveな活動なのである、と論じて。この手法論争 (Methodenstreit) はきわめて辛辣になって、後の経済学への影響という点では何一つ解決しなかったけれど、メンガーとオーストリア学派が勝者となった。が、短期的には、それは空疎な勝利だった。歴史学派たちはドイツの経済学教授職を支配し続け、その影響力をアメリカにまで広げた――リチャード・イーライ、エドウィン・ゼリグマン、初期のアメリカ制度学派たちを通じて。

 「最若年」歴史学派はまったくちがった味わいの人々だった――当初は、シュモラーの世代よりはるかに保守性が弱く、初期のロッシャーのpositivismに回帰しようとしていた。実際、ヴェルナー・ゾンバルト、アーサー・シュピートホフ、マックス・ヴェーバーは、シュモラーのグループよりもマルクス主義経済学のほうと関係が深かった――もっともゾンバルトは後に、ドイツナショナリズムとの関係に巻き込まれることになるのだけれど。この「最若年」学派には、1920 年代のAdolph Lowe率いるキール学派も含めることができる。キール研究所は、独立ビジネスサイクル研究や、学際社会科学の両方において重要な機関だった。この意味で、「最若年」学派はロッシャーと古い歴史学派の positivist 的立場を採用したわけだ。でも、その規範的な「器具主義 (instrumentalism)」の追求は、この学派を政策追求型の集団にもした――だからかれらは、シュモラーのVereinの社会主義者版として見ることができる。キール学派は社会民主党の政治に深く関わり、ワイマール共和国の社会経済政策にも関連していた。キール研究所はヒトラーが政権の座について、そのメンバーが追放されたことで解体された――そしてニューヨークのNew School for Social Researchに新しい故郷を見いだした。
 社会科学一般に対するドイツ歴史学派の影響は広範だけれど、でも経済学にはほとんど影響を与えなかった――とはいえ、その影響の痕跡はあちこちに散在しているようには見える――たとえば貨幣/マネーの「goldsmith」やChartalist 理論など、あるいは経済発展と経済地理の理論など。さらに、ヨーロッパとアメリカの非主流経済学においては、ドイツ歴史学派の要素が常に残っていた。

ドイツ歴史主義のナショナリスト/ロマン主義的ルーツ

  • ゲオルグ・ヘーゲル Georg W.F.Hegel, 1770-1831. - (1)(2)(3)(4)
    • The Phenomenology of Mind, 1807.
    • The Objective Logic, 1813.
    • The Subjective Logic, 1816.
    • Encyclopedia of the Philosophical Sciencies in Outline, 1817.
    • Philosophy of Right, 1821.
    • Philosophy of Religion,1832.
    • History of Philosophy, 1833-36.
    • Philosophy of History, 1837
  • Adam Müller, 1779-1829. 
    • On the Idea of the State , 1809.
    • The Elements of Politics , 1809.
    • Theory of State Finance , 1812.
    • へんてこな愛国的ロマン主義者で、古典経済学と現代リベラル社会一般を批判――中世神聖ローマ帝国の経済、政治、社会的な仕組みの復活を提唱。
  • Friedrich List, 1789-1846.

初期のドイツ歴史学派

  • Wilhelm G.F. Roscher, 1817-1894. - 肖像
    • Outline of Lectures on Political Economy According to the Historical Method , 1843.
    • System of Political Economy , five volumes, 1854-94.
    • ドイツ歴史学派の創始者であるロッシャーは、歴史的進化の周期的な「段階」を主張。歴史的手法を、規範的科学としてではなく、positive科学として主張。かれの 1843 年の著書は、この学派の決定的な手法解説となった。
  • Bruno Hildebrand, 1812-1878.- 肖像
    • Economics of the Present and the Future, 1848.
    • 古典派理論にきわめて批判的だったヒルデブラントは、ほとんどの時間を容赦ないリカード批判に費やし、物質主義的で、普遍論的でコスモポリタンだと糾弾した。自分独自の発想をまとめたのは、晩年になってからのことだった――特に、経済史の線形「段階」を発達させた。でもその経験論的・統計的な研究は、そうした洞察をまるで使っていない。
  • Karl Knies, 1821-1898.- 肖像
    • Political Economy from the Standpoint of the Historical Method , 1853.
    • Money and Credit , 1873.
    • クニースの線形段階議論は、「道徳的な進歩」を云々していて、だからそのほとんどの理論はもう時代遅れだ。でもその 1873 年の研究は、歴史学派的な手法をほとんど含んでいない。その政治的な関与のおかげで、1848 年には一時的に国外追放となった。

若きドイツ歴史学派

  • Georg Friedrich Knapp, 1842-1926.- (1)
    • Die Neueren Ansicthen uber Moralstatistik, 1871.
    • Theorie des Bevolkerungs-wechsels, 1874.
    • Die Bauernfreiung und der Uroprung der Landarbeiter, 1887.
    • Grundherrschaft unde Rittergut, 1897
    • The State Theory of Money , 1905.
    • 仕事熱心な経験論者だったクナップは、その統計ツールを経済的な構造の歴史的/人口的研究にいろいろ向けた。農業システムやマネーについての研究がいちばん有名だろう。クナップはマネーの「Chartalist」理論の旗手だった。これはつまり、マネーの価値は国の税制によって人工的に「創造」される、ということだ。
  • Ludwig Joseph (Lujo) Brentano, 1844-1931.
  • エルンスト・エンゲル Ernst Engel, 1821-96. 
    • Der Kostenwerth des Menschens, 1883.
    • 統計家で有名な「エンゲルの法則」や「エンゲル曲線」(消費需要の構成を消費者の所得と関連づけたもの)の考案者として有名(日本では「エンゲル係数」で知られる、あのエンゲル)。
  • カール・ビューヒャー Karl Bücher, 1847-1930. 
    • Die Bev(゚lkerung von Frankfurt am Main im XIV. und XV. Jahrhundert, 1886
    • Die Entstehung der Volkswirtschaft (Industrial Evolution), 1893.
    • Arbeit und rhythmus, 1896
    • Die Frauenfrage im Mittelalter, 1910.
    • Beitr臠e zur wirtschaftsgeschichte, 1922
    • ライプツィヒの経済学者で、産業革命の世帯-町-国「段階」の理論で有名。これを「進歩」のように見せたがるヘーゲル的な傾向は、ゾンバルトに厳しく批判された。

  • Adolph H.G. Wagner, 1835-1917.- 肖像
    • Science of Finance , four volumes,1877-1901.
    • Foundations of Political Economy , 1876.
    • "Marshall's Principles of Economics", 1891, QJE
    • シュモラーの Verein の活発なメンバーだったが、ヴァグナーは実は Methodenstreit においてメンガーを支持していた。経済学では、かれは公共財政についての研究で知られている。経済学の外では、かれはラサールと Rodbertus の仲間だった――が、かれらの社会主義的な理想を完全には共有せず、政治的な麺ではもっと保守的な直感に従っていた。ヴァグナーは野放しの資本主義を厳しく批判し、労働者に対する重荷を国が軽くすべきだと推奨。

ドイツ歴史学派最後の世代

  • ヴェルナー・ゾンバルト Werner Sombart, 1863-1941.
  • Alfred Weber, 1868-1958. 
    • Theory of the Location of Industries, 1909.
    • マックス・ヴェーバーの兄弟、経済地理理論を考えた初の経済学者の一人。
  • カール・ポランニー Karl Polanyi, 1886-1964




ドイツ歴史学派についてのリソース





























タイトル:, マックス・ウェーバーの貨幣論新資料--ウェーバークナップ宛,1906年7月21 日付書簡. 著者:, 田中 真晴. 出版地( ...






















タイトル:, G.クナップの貨幣国定理論について--マックス・ウェーバー(「経済と社会」第1 部第2章第36節補給論)(資料).






















ただし、このクナップの「貨幣国定説」のように、貨幣をもっぱら国の法による創造物であるとみなすのは正しいとはいえない。 ... マックス・ウェーバーによると国家とは暴力の独占であり、その暴力を ...






















また、この「基礎範疇」部は、ヴェーバー自身が何度も書いているように、「決疑論( ... は貨幣論を取り上げますが、その内容のほとんどが、クナップの「貨幣国定学説」の再構成だということです。






















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cruel.org/econthought/schools/historic.html

Diertes Kapitel. Überſicht nach Staalen.

erweitert, daß man nun für das Geldwesen leicht die noch ver-

mißte Theorie schaffen kann:

394

Der Staat empfindet sich als Zahlungsgemeinschaft und

achtet auf die fremden Leute nicht. Er schafft für sein Nechts-

leben den Begriff der Werteinheit, den er historisch definiert; die

Zahlungsmittel erhalten durch den Staat proklamatoriſche Geltung;

manche, aber nicht alle Zahlungsmittel haben daneben auch Metall-

gehalt, was gerade deshalb zuläſſig iſt, weil die Geltung nicht

am Gehalte hängt, also auch diesen oder jenen Gehalt duldet.

Von dieser Grundlage aus wird die Handlungsweiſe des Staates

begreiflich, ob wir ihn beobachten bei Barverfaſſung oder bei

Notalverfassung des valutarischen Geldes. Aber zur Vollständig-

keit der lytrischen Verwaltung gehört noch die Exodromie, was

praktisch erst in der neueren Zeit erkannt ist. Da wir dies alles

vom Standpunkte des Staates aus und nicht nach privaten

Wünschen oder Ratschlägen dargestellt haben, so ist es wohl

gerechtfertigt, die vorgetragene Theorie, obgleich ſie eigentlich alle

Zahlungsmittel umfaßt, nach dem wichtigsten Beispiel als die

staatliche Theorie des Geldes zu bezeichnen.

Die Metallisten verdienen als Praktiker alle Anerkennung;

ſie wollen Barverfassung des valutariſchen Geldes, haben alſo

ein sehr einfaches allgemein verständliches Ziel: weshalb sollten

sie es nicht durch gemeinverständliche Gründe empfehlen? Jenes

Ziel ist in der staatlichen Theorie mit eingeschlossen als ein be

sonderer Fall, begegnet alſo, von da aus, keinem Einwande. Aber

die staatliche Theorie hat auch die vielen anderen Formen des

Zahlungswesens unterzubringen und deren gemeinsame Wurzel

aufzudecken; deshalb muß fie umfassender und buldsamer sein

als die Metalltheorie, von der wir ohne Groll und hoffentlich

auf immer Abschied nehmen.


394
Diertes Kapitel. Überſicht nach Staalen. 
erweitert, daß man nun für das Geldwesen leicht die noch ver- mißte Theorie schaffen kann: 
 Der Staat empfindet sich als Zahlungsgemeinschaft und achtet auf die fremden Leute nicht. Er schafft für sein Nechts- leben den Begriff der Werteinheit, den er historisch definiert; die Zahlungsmittel erhalten durch den Staat proklamatoriſche Geltung; manche, aber nicht alle Zahlungsmittel haben daneben auch Metall- gehalt, was gerade deshalb zuläſſig iſt, weil die Geltung nicht am Gehalte hängt, also auch diesen oder jenen Gehalt duldet. Von dieser Grundlage aus wird die Handlungsweiſe des Staates begreiflich, ob wir ihn beobachten bei Barverfaſſung oder bei Notalverfassung des valutarischen Geldes. Aber zur Vollständig- keit der lytrischen Verwaltung gehört noch die Exodromie, was praktisch erst in der neueren Zeit erkannt ist. Da wir dies alles vom Standpunkte des Staates aus und nicht nach privaten Wünschen oder Ratschlägen dargestellt haben, so ist es wohl gerechtfertigt, die vorgetragene Theorie, obgleich ſie eigentlich alle Zahlungsmittel umfaßt, nach dem wichtigsten Beispiel als die staatliche Theorie des Geldes zu bezeichnen. 
 Die Metallisten verdienen als Praktiker alle Anerkennung; ſie wollen Barverfassung des valutariſchen Geldes, haben alſo ein sehr einfaches allgemein verständliches Ziel: weshalb sollten sie es nicht durch gemeinverständliche Gründe empfehlen? Jenes Ziel ist in der staatlichen Theorie mit eingeschlossen als ein be sonderer Fall, begegnet alſo, von da aus, keinem Einwande. Aber die staatliche Theorie hat auch die vielen anderen Formen des Zahlungswesens unterzubringen und deren gemeinsame Wurzel aufzudecken; deshalb muß fie umfassender und buldsamer sein als die Metalltheorie, von der wir ohne Groll und hoffentlich auf immer Abschied nehmen.



:

第4章 主要国概略

357

も同じことである。 銀行がこの課題を引き受けて、しかも首尾よくやってくれたではないか。それゆえ本

位になっていなかった正貨を、いま頃になってわざわざ本位に据える必要はない。つまり、銀行券を正貨

の金貨で兌換することもとくに必要ではない。

 この理解に対しては「リアル」な満足という観念に根ざした疑念が持ち出されるのだが、オーストリア

も国家が支払共同体だとみなせるから、 そんな満足にまったく意味などない。

 絶え間なく政治的試練に見舞われたオーストリア国家は、こうして現在の貨幣セットをつくり出した。

それは、正貨が本位になっていなくても、 本位間相場を固定してくれるのだ。だがこの相場の固定が無償

では得られないことに驚く必要はない。相場固定はどこの国であれ、必要な犠牲が払われなければ行えな

いからである。こうしてオーストリアは、意に反するところではあったが経験の幅を著しく広げたので、

未開拓だった貨幣制度についての理論をいまや容易に創出できるほどになった。

 国家は、自らを支払共同体であると意識すると、外部の人たちを考慮しない。 そして自国の法的活動の

ために価値単位をつくる。 国家はこれを歴史的に[以前のものと接続関係を持たせて〕 定義する。 支払手

段は国家の公布によって通用力を持つ。 同時に、すべてではないが多くの支払手段は金属純分量をも備え

ている。純分量は、多くても少なくても、またなくてもかまわない。つまり通用力は純分量に依存してい

るのではない。これを基礎にすれば、正貨セットと非正貨セットのどちらが本位貨幣なのかに応じて国家

の行動様式を理解することができる。だが支払手段の (lytrisch) 管理運営を完全なものとするには、さ

らに対外相場規制が必要だ。 これは実際には最近ようやく分かったことである。本書ではこれらすべての

ことを、個人の希望や助言者の立場からではなく、国家の観点から叙述してきた。 それゆえ本書で提起し

た理論は、あらゆる支払手段を包括してはいるが、そのなかのもっとも重要な事例に即して貨幣の国家理

論と名づけてもいいだろう。

 金属主義者は実践家として大いに評価してよい。 彼らは本位貨幣の正貨セットを求め、 それゆえ極めて

簡単で一般的に理解できる目標を掲げる。 それなら、 普遍的に理解できる根拠を示して彼らの目標を推奨


358

すればいいのではないか。その目標は国家理論全体のなかに個別の一ケースとして含まれているから、何

ら非難する必要はない。だが国家理論は、それ以外の支払制度の様々なあり方をも示して、それらに共通

の基礎を発見しようとする。そのため金属理論よりも包括的で寛容でなければならない。 恨みはないが、

願わくはこれを最後として告げよう。金属理論よ、 さらば。



オーストリアを論じたのはワグナーに通じる。

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  1. それにもかかわらず 、理論的に検討するならば 、信用貨幣論もまた 、国家と深く関係していることが分かるのである 。そのことを明らかにするために 、改めてクナップによる貨幣論の古典 『貨幣国定説 』を紐解いてみよう 。 『貨幣国定説 』は表券主義の理論書として知られているが 、実際には 、その議論は信用貨幣論を前提としていた 。確かにクナップは 、貨幣の定義について 、次のように述べて 、表券主義を表明している 。 「貨幣とは常に表券的な支払い手段のことを指す 。あらゆる表券的な支払い手段のことを我々は貨幣と呼ぶ 。貨幣の定義とは 、したがって 〝表券的な支払い手段 〟である ★ 2 3 。 」しかしクナップは 、続けて次のように論じている 。支払いとは 、即座に行われるものとは限らない 。取引のほとんどは 、異時点間のものである 。支払いが即座に行われない場合は 、支払いの義務 、すなわち負債が残る ★ 2 4 。このようにクナップの念頭にあるのは 、貨幣とは 「負債 」の表券的な支払い手段であるという信用貨幣論にほかならない 。クナップは 、 「 c h a r t a (表券 ) 」というラテン語を選んで 「 c h a r t a l i s m (表券主義 ) 」を造語したのは 、貨幣が実体をもつものではなく 、チケットやト ークンといった記号的 ・象徴的なものであることを表現するためだとしている ★ 2 5 。記号ないしは象徴としての表券貨幣が示すものは 、 「名目的な価値の単位 」である 。表券貨幣とは 、計算貨幣だということである 。なお 、その計算単位は歴史的に決まってきたものであるとクナップは言う ★ 2 6 。そして 、 「表券性は 、法律との間の一定の関係に依存する 。したがって 、紙きれ自体から 、それが表券であるかどうかを言うことはできない ★ 2 7 。 」特定の表券を負債の支払い手段として定めるのは法律である 。その法律を守らせるものが国家である ★ 2 8 。こうして 、負債の支払い手段 、すなわち信用貨幣は 、法律そして国家を必要とする 。ここで必要とされている国家の機能は 、民間の取引における負債の支払いを保証する 「司法 」である ★ 2 9 。さらに 、 「司法 」機能だけではなく 、国家の 「財政 」機能も 、信用貨幣にとって重要な意味を有する 。すなわち 、国家が 、租税の支払い手段として定めることが 、貨幣にとって重要であるとクナップは論じるのである 。クナップの 『貨幣国定説 』は 、その題名から 、国家による貨幣の発行や法定を最も重視したものと誤解されがちであるが 、そうではない 。クナップが最も重視したのは 、国家による発行や法定ではなく 、 「受領 」であった 。

    (貨幣を定義する )基準は 、貨幣が国家によって発行されることではあり得ない 。というのも 、それでは 、最も重要な種類の貨幣が排除されてしまうだろうからだ 。私が言っているのは 、銀行券のことである 。銀行券は国家によって発行されるのではない

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  2. が 、貨幣システムの一部を形成している 、法貨であることもテストにはならない 。というのも 、貨幣システムの中で 、しばしば法貨ではないものが存在するからだ (一九 ○五年時点のドイツでは 、財務省証券は法貨ではなかった ) 。もしテストとして用いるならば 、我々は 、貨幣が国家機関への支払いにおいて受け入れられるという事実に最も着目すべきである 。そして 、国家に対する支払いのための手段はすべて 、貨幣システムの一部を成している 。こうしたことから 、決定的なのは 、発行ではなく 、受領と呼ばれるものである 。国家による受領が貨幣システムの境界線を定める ★ 3 0 。

    そして 、国家が受領するものとして特に大きな役割を果たすのが租税だとクナップは言う ★ 3 1 。このように 、彼の表券主義は 、信用貨幣論を前提とした 「国定信用貨幣論 」であった 。このクナップの議論に依拠するならば 、信用貨幣論もまた 、国家を抜きにしては語れないことが明らかとなろう 。まず 、民間取引における負債の確実な支払いを保証するには 、国家の司法機能が必要となる 。この司法機能は 、貨幣にとって 、ほとんど必要条件と言ってもよいであろう 。そして 、もう一つは 、信用貨幣を租税の支払い手段として受領するという国家の財政機能である 。これは 、すでに述べたように 、貨幣の十分条件である 。こうして 、信用貨幣論は 、ほぼ論理必然的に 、国家を強く要請するのである 。すでに述べたように 、貨幣とは負債の一形式であり 、負債にはデフォルトの可能性という不確実性が伴う 。この不確実性を払拭しなければ 、負債が貨幣として受け入れられることは難しい 。この不確実性を最大限にまで低減し 、負債に貨幣としての役割を与えるのが 、国家の司法機能と財政機能なのである 。再び歴史を参照しよう 。先に挙げたイタリア主要都市における預金銀行業は民間活動の中から発生したが 、経営基盤が脆弱で倒産が頻発したため 、一五世紀から一六世紀にかけて 、南ヨ ーロッパ及び北ヨ ーロッパにおいて公立の預金銀行が相次いで誕生し 、主要な支払決済業務を独占して行うようになっていった 。また 、イギリスにおいても 、一六九四年に設立されたイングランド銀行が三年後に銀行券の発券業務の独占を認められ 、金匠銀行は発券業務を放棄した 。そしてイングランド銀行の銀行券や同行の預金債務が国家への納税などの支払いに受け取られることで 、国家の貨幣と同等の地位を得ていったのである ★ 3 2 。このように 、銀行券や預金といった信用貨幣は 、国家が関与することで不確実性を克服し 、貨幣システムの一部となることができ 、近代的な信用制度に基づく資本主義の成立を促したのであった 。クナップが指摘するように 、 「 〝資本主義 〟は 、なるほど国家が生んだものではないが 、国家が育てたもの ★ 3 3 」なのである 。



    ★ 2 3 K n a p p ( 2 0 1 3 : p . 3 8 ) ★ 2 4 K n a p p ( 2 0 1 3 : p . 1 1 ) ★ 2 5 K n a p p ( 2 0 1 3 : p p . 3 2 3 3 ) ★ 2 6 K n a p p ( 2 0 1 3 : p . 1 7 ) ★ 2 7 K n a p p ( 2 0 1 3 : p . 3 4 ) ★ 2 8 K n a p p ( 2 0 1 3 : p . 3 9 ) ★ 2 9 K n a p p ( 2 0 1 3 : p . 1 1 ) ★ 3 0 K n a p p ( 2 0 1 3 : p . 9 5 ) ★ 3 1 K n a p p ( 2 0 1 3 : p . 5 2 ) ★ 3 2楊枝 ( 2 0 1 2 ) ★ 3 3 K n a p p ( 2 0 1 3 : p . 1 3 7 ) ★ 3 4 M i c h a e l M c L e a y , A m a r R a d i a a n d R y l a n d T h o m a s , ' M o n e y C r e a t i o n i n t h e M o d e r n E c o n o m y , ' Q u a r t e r l y B u l l e t i n , 2 0 1 4 b , Q 1 , B a n k o f E n g l a n d , p p . 1 4 2 7 .

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  3. 富国と#1


    しかし 、不確実性を排除するということは 、貨幣の存在意義を排除することである 。ワルラスが一般均衡理論において不確実性を消去した時 、そこから貨幣も蒸発した 。主流派経済学の経済モデルが大前提とする 「一般均衡理論 」が想定するのは 、貨幣が存在し得ない世界なのである 。実際 、ワルラス系の一般均衡理論に関する中心的な理論家の一人であるフランク ・ H ・ハ ーンですら 、そのことを認めている ★ 4 2 。チャ ールズ ・ A ・ E ・グッドハ ートとディミトリオス ・ P ・トゥソモコスも 、日本銀行金融研究所が主催した二 ○一一年の国際コンファレンスにおける講演で 、次のように述べている 。

    ワルラス系のモデル (アロ ー 、デブリュ ー 、ハ ーン )では 、金融市場の完全性と完備性が仮定されているため 、貨幣に道理に適った役割がないということは 、理論家の間では古くから知られている 。誰もが無リスクである世界においては 、誰の借用書であっても 、財やサ ーヴィスの完全な対価として即座に受け入れられる 。会計システム (完全な市場で時価評価する [ m a r k i n g t o a p e r f e c t m a r k e t ]神聖なる会計士 )のほか 、おそらく基準財は必要となろうが 、貨幣と呼ばれる特別な資産クラスは必要ではない 。誰であっても自身の借用書で必ず支払うことができる世界において 、なぜ貨幣が必要となろうか 。金融市場が完全であるシステムにおいて 、効用関数に貨幣を含めようとするのは 、単に論理の誤謬にすぎない 。貨幣 、流動性 、銀行 、多様な資金調達手段という 「人のなせる技 ( h u m a n i n s t r u m e n t s ) 」に実態と意味を与えるのは 、デフォルトの概念 、すなわち全ての負債が完全に返済されるわけではないという事実である ★ 4 3 。



    アメリカの金融機関リ ーマン ・ブラザ ーズの経営破綻により世界金融危機が勃発した二 ○ ○八年の一一月 、イギリス女王エリザベス二世が 、権威ある経済学者たちに対して 、 「なぜ誰も危機が来ることをわからなかったのでしょうか 」と問い質したという話は 、あまりにも有名である 。だが 、主流派の経済学者たちが危機を予見できなかったというのは 、実は 、不思議なことではない 。なぜなら 、彼らの経済モデルが前提とする一般均衡理論には 、そもそもデフォルトの可能性が組み込まれていないのである 。その経済モデルが想定する世界では 、金融機関も適切な役割を与えられてはいない 。それどころか 、そこでは貨幣ですら必要とされないのである 。物々交換的な世界を想定した経済


    ★ 4 2 F r a n k H . H a h n , ' O n M o n e t a r y T h e o r y , ' E c o n o m i c J o u r n a l , 9 8 ( 4 ) , D e c e m b e r , p p . 9 5 7 9 7 3 . ★ 4 3チャ ールズ ・ A ・ E ・グッドハ ート 、ディミトリオス ・ P ・トゥソモコス 「マクロ経済学におけるデフォルトの役割 」 『金融研究 』 2 0 1 1年 1 0月 、日本銀行金融研究所 。 ★ 4 4マ ーティン ( 2 0 1 4 : p . 3 2 1 )

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  4. マックス・ヴェーバーの「経済行為の社会学的基礎範疇」(富永健一訳) | 知鳥楽/ Chichoraku
    https://shochian2.com/archives/30806


    また、もう一つ興味深いのは、この「基礎範疇」の中で、ヴェーバーは貨幣論を取り上げますが、その内容のほとんどが、クナップの「貨幣国定学説」の再構成だということです。クナップは金属貨幣に見られるような実質的な使用価値よりも、紙幣に見られるような国家権力によって支えられた「シンボル性」を重視します。しかし、私はそれをさらに進めて、「貨幣とは言語と同じようなシンボルの体系である」と言い切る、カール・ポランニーの貨幣論を既に知っていますので、まったく驚きませんし、またヴェーバーは1920年に亡くなっていて、いわゆるハイパー・インフレーションの初期の状態は経験しているのですが、後数年生きてその後の大インフレーションの時期を経験していたら、その後自分の貨幣論をどう書き直したであろうか、という興味があります。

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  5. G.クナップの貨幣国定理論について--マックス・ウェーバー(「経済と社会」第1部第2章第36節補給論)(資料)
    水沼 知一 訳解説

    詳細情報

    タイトル G.クナップの貨幣国定理論について--マックス・ウェーバー(「経済と社会」第1部第2章第36節補給論)(資料)
    著者 水沼 知一 訳解説
    シリーズ名 藤田重行先生退職記念論文集
    出版地(国名コード) JP
    注記 記事分類: 経済・経営--経済学
    出版年(W3CDTF) 1977-01
    NDLC ZD11
    対象利用者 一般
    資料の種別 記事・論文
    掲載誌情報(URI形式) https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000006463-00
    掲載誌情報(ISSN形式) 03868737

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  6. <<前資料 16 件目/ 19 件中 次資料>>

    タイトル 
    貨幣国定学説
    著者名等 
    クナップ/著  ≪再検索≫
    著者名等 
    宮田喜代蔵/訳  ≪再検索≫
    出版者  
    有明書房
    出版年  
    1988.7
    大きさ等 
    22cm 434,15p
    注記   
    岩波書店大正11年刊の複製
    NDC分類
    337.1
    件名   
    貨幣  ≪再検索≫
    ISBN等
    4-87044-091-1
    書誌番号 
    3-0193005064

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  7. ウェーバー研究の諸論点 経済学史との関連で
    著者名等 
    田中真晴/著  ≪再検索≫
    出版者  
    未来社
    出版年  
    2001.05
    大きさ等 
    20cm 340p
    NDC分類
    331.5
    件名   
    ウェーバー マックス
    件名   
    Weber Max.
    要旨   
    著者が長い年月にわたって主として専門誌に発表してきた論文から自選し、学界で報告したが印刷はしなかった論稿を加えてまとめた論文集。
    目次   
    第1部 ウェーバー研究の諸論点(因果性問題を中心とするウェーバー方法論の研究;マックス・ウェーバーにおける農政論の構造;ウェーバーのロシア論研究序説;マックス・ウェーバーの貨幣論新資料―ウェーバーのクナップ宛、1906年7月21日付書簡;ウェーバーの貨幣論);第2部 経済思想史論考(貨幣生成の論理;ヒュームの死とスミス;1890年代初頭の経済学界―イギリス;社会主義像と思想の問題)
    ISBN等

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  8. 貨幣は 、商品の生産に対する信用として創造され 、商品の取引に用いられて 、経済の中を循環する 。コモンズは 、 「クナップの 〝支払い共同体 〟とは 、履行共同体 ( p e r f o r m a n c e c o m m u n i t y )でもある ★ 3 6 」と言う 。 「履行 」とは 、銀行融資によって実現する生産活動や商業活動のことである 。


    ★ 3 6 C o m m o n s ( 1 9 9 0 : V o l . 1 , p . 4 6 7 )
    中野2016

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  9. 新フィッシャー主義とFTPL - himaginaryの日記
    http://d.hatena.ne.jp/himaginary/20170109/EconReporter_Cochrane_interview
    インタビュアー
    サージェントはこの理論を30年以上前に開発しましたが、主流派にこれまで採用されてこなかったのはなぜでしょうか? 何が最近変わったのでしょうか?
    コクラン
    実際のところ、FTPLはもっとずっと以前に遡ります。アダム・スミスは次のような素晴らしい言葉を残しています:
    税のうち一定割合はある種の紙幣で支払わなければならない、と布告した王子は、それによってその紙幣に一定の価値を与えているのである。(国富論、第2冊)

    “A prince who should enact that a certain proportion of his taxes should be paid in a paper money of a certain kind might thereby give a certain value to this paper money.” (Wealth of Nations, Book II)
     
    ということで、基本的な考えはアダム・スミスにあったのです。
    すべての貨幣経済学における謎は、「この紙切れのためになぜ我々はこれほど一生懸命に働くのか?」というものです。考えてみれば、それは本当に謎です。あなたも私も一日中額に汗して働き、家に何を持ち帰るのでしょうか? 死んだ大統領の絵が印刷された幾枚かの紙切れです。この小さな紙切れのためになぜ我々はこれほど一生懸命に働くのでしょうか? 誰かがそれを受け取ると知っているからです。しかしなぜその誰かはそれを受け取るのでしょうか? これが経済学の謎です。
    FTPLはこの謎に根本的な回答を与えます。その理由というのは、米国では毎年4月15日に税金を払わなければならないからです。そして納税は、まさにその政府貨幣によって行わねばなりません。かつては羊や山羊で納税していた時代もありましたが、今は受け取ってもらえません。彼らは紙幣を取り戻したがっています。ということで、根本的には、貨幣の価値は、政府がそれを税金として受け取ることから生じているのです。
    サージェントの研究はそのことを示す上で極めて素晴らしいものでした。しかしミルトン・フリードマンも、金融政策と財政政策の協調について有名な論文を書いています。ということで、ある意味においては、この理論は昔から存在していたのです。問題は、どの程度重きを置くか、ということに過ぎなかったわけです。


    Cochrane, John H. (1998) “A Frictionless View of US Ination.” In Ben S. Bernanke and Julio J. Rotemberg. eds. NBER Macroeconomics Annual 1998. Cambridge, MA US: MIT Press. pp. 323–334.

    Sargent & Wallace (1981)
    Some Unpleasant Monetarist Arithmetic Thomas Sargent,Neil Wallace (1981)
    https://www.minneapolisfed.org/research/qr/qr531.pdf


    《ある君主が、かれの税の一定部分は一定の種類の紙幣で支はらわれなければならないという、法令をだすとすれば、かれはそうすることによって、この紙幣に一定の価値をあたえうるであろう。》
    アダム・スミス『国富論』2:2最終部
    世界の大思想上
    参考:
    ミルトン・フリードマン 資本主義と自由 Milton Friedman Capitalism and freedom 1962
    http://nam-students.blogspot.jp/2015/12/milton-friedman-capitalism-and-freedom.html

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  10. 66~7

    てのみ、その紙祭は法律的意味に於て債務と謂ふことが出弥るであらう。而して吾々の前提よりす
    れば紙祭は質にか >る性質を有つものではない!
    常に自己登生的貨幣の歓黙のみを弊げる代りに、時には又、か ^る貨幣でも矢張り如何なる務め
    「を果してあるかに就いても考慮すべきであらう。この貨幣は債務者をその債務より死除する。然も
    その債務より解除せられた者は、素材を受取つたか否かに就いて最早反省するの必要はない。就中(なかんずく)
    この貨幣は吾々を風家に野する債務より死除する、蓋し登行者としての函家は、受領者さしての闘
    「家が斯かる支挑要具を以て 満足する旨を極力承認 せるが露めである。図家に於て租稔が金々重要と
    なるに従つて、この事情は愈々大なる闇係を有つに至る。 闘家は自己登生的貨幣を造る時、これら
    の手段に償務償却の力を俊けて贈る、而してこの準備は素材的準備の鉄けてめる時に於ても質現し
    得るものである。
    非素材的貨幣|予は素材なき貨幣と言ふのではないーーを以てする支携は、その探用せられる
    法律範園に野しては、他の凡ての支携と等しく純粋な支携である。 この場合矢張り筒貨幣なる制度
    は存在してゐる、只そは表雰的組織に於て考へ得る最も簡罪な形畿にて現はるゝのみである。かゝる
    る貨幣制度はよく関内取引の慾望を溺たしてゐる。何こなれば図内取引はこの場合筒可能であるか
    ら。勿論この幣制度は其他の一定の要求を充すものではない。併し此現象はそれ自ら凝則ではな

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  11. 66~7

    てのみ、その紙祭は法律的意味に於て債務と謂ふことが出弥るであらう。而して吾々の前提よりす
    れば紙祭は質にか >る性質を有つものではない!
    常に自己登生的貨幣の歓黙のみを弊げる代りに、時には又、か ^る貨幣でも矢張り如何なる務め
    「を果してあるかに就いても考慮すべきであらう。この貨幣は債務者をその債務より死除する。然も
    その債務より解除せられた者は、素材を受取つたか否かに就いて最早反省するの必要はない。就中(なかんずく)
    この貨幣は吾々を国家に対する債務より死除する、蓋し発行者としての函家は、受領者としての國
    家が斯かる支払要具を以て 満足する旨を極力承認 せるが為めである。國家に於て租税が益々重要と
    なるに従つて、この事情は愈々大なる関係を有つに至る。 闘家は自己登生的貨幣を造る時、これら
    の手段に償務償却の力を蝕(さず)け?て贈る、而してこの準備は素材的準備の鉄けている時に於ても質現し
    得るものである。
    非素材的貨幣|予は素材なき貨幣と言ふのではないーーを以てする支携は、その探用せられる
    法律範園に野しては、他の凡ての支携と等しく純粋な支携である。 この場合矢張り筒貨幣なる制度
    は存在してゐる、只そは表雰的組織に於て考へ得る最も簡罪な形畿にて現はるゝのみである。かゝる
    る貨幣制度はよく関内取引の慾望を溺たしてゐる。何こなれば図内取引はこの場合筒可能であるか
    ら。勿論この幣制度は其他の一定の要求を充すものではない。併し此現象はそれ自ら凝則ではな

    1:09 午前 削除

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  12. 餞ける

    はなむける

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  13. 就中(なかんずく)
    この貨幣は吾々を国家に対する債務より免除する、蓋し発行者としての函家は、受領者としての國
    家が斯かる支払要具を以て 満足する旨を極力承認 せるが為めである。國家に於て租税が益々重要と
    なるに従つて、この事情は愈々大なる関係を有つに至る。 闘家は自己登生的貨幣を造る時、これら
    の手段に償務償却の力を餞(はなむ)けて贈る、而してこの準備は素材的準備の鉄けている時に於ても

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  14. 就中(なかんずく)この貨幣は吾々を国家に対する債務より免除する、蓋し発行者としての國家は、受領者としての國
    家が斯かる支払要具を以て 満足する旨を極力承認 せるが為めである。國家に於て租税が益々重要と
    なるに従つて、この事情は愈々大なる関係を有つに至る。

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  15.  貨幣理論は大きくふたつに分けられる。貨幣金属説と貨幣表券説だ。貨幣金属説では、貨幣を、市場で各個人が発揮する合理的行動から生まれるものと見なす。いっぽう、貨幣表券説では、貨幣は「国家(あるいは中央政権)の創出物」だ。こうしたアプローチには複数の枝葉があり、貨幣表券説のなかには、金本位制や商品本位制も国がシステムを構築して尺度等を定めるという点から表券主義だとする見方もある。
     多くの経済学者が重視しているのは貨幣の一般受容性だ。貨幣に価値をもたせるには、貨幣が国民に受け入れられなければならない。この受容性は、通常、納税等によって保証されている。

    世界を変えた…28~9
    フォーステイター

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  16. https://archive.org/details/in.ernet.dli.2015.45480/page/n23
    John Maynard Keynes A Treatise Money 1929・1965
    ケインズ全集5所収

    貨幣論1
    p.4

      Now by the mention of contracts and offers, wehave introduced Law or Custom, by which they areenforceable; that is to say, we have introduced theState or the Community. JHirthermore it is a peculiarcharacteristic of money contracts that it is the Stateor Community not only which enforces delivery, butalso which decides what it is that must be deliveredas a lawful or customary discharge of a contractwhich has been concluded in terms of the money-of-account. The State, therefore, comes in first of allas the authority of law which enforces the paymentof the thing which corresponds to the name or de-scription in the contract. But it comes in doublywhen, in addition, it claims the right to determine anddeclare what thing corresponds to the name, and tovary its declaration from time to time—when, thatis to say, it claims the right to re-edit the dictionary.This light is claimed by all modem States and hasbeen so claimed for some four thousand years at least.It is when this stage in the evolution of Money hasbeen reached that Knapp’s Chartalism—the doctrinethat money is peculiarly a creation of tte State—^isfully realised. «
       Thus the Age of Money had succeeded to the Age…

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  17. 貨幣論

     ところで、契約と付け値とに言及することによって、既にわれわれはそれらを履行させることのできる法律あるい
    は慣習を導入している。すなわちわれわれは、国家あるいは社会を導入しているのである。さらに貨幣契約の一つの
    特殊の性質は、国家または社会が、単に引渡しを強制するだけでなく、計算貨幣をもって締結されている契約の合法
    的あるいは慣習的な履行として引き渡されなければならないものは何かということをも決定する点にある。したがっ
    て国家は、まず第一に、契約に含まれている名称もしくは記述に照応する物の支払いを強制する法の権威として現わ
    れる。しかし国家が、これに加えていかなる物がその名称に照応するかを定め、これを布告し、そしてその布告を時
    どき変更する権利を要求するとき--すなわち辞典を再編修する権利を要求するとき--国家は二役を演ずることに
    なる。この権利は、すべて近代国家が要求しており、そして少なくとも約四○○○年の間そのように要求し続けてき
    た。クナップ(Knapp)の表券主義 (chartalism)--貨幣はとくに国家の創造物であるという学説--が完全に実
    現されるのは、貨幣の発展がこの段階に到達したときである。
     したがって、人びとが計算貨幣を採用した瞬間から、貨幣の時代がか物々交換の時代の後を引き継ぐに至ったのであ
    る。そして表券主義的貨幣すなわち国家貨幣の時代は、国家が、一般に行なわれている計算貨幣に対して、いかなる
    ものを貨幣としてこれに照応させるかを布告する権利を要求したときに--国家が辞典の使用を強制するだけでな
    く、辞典を作る権利をも要求したときに--達せられた。今日すべての文明社会の貨幣は、議論の余地なく表券主義
    的[貨幣〕である。

    全集#5:4~5頁

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  18. https://archive.org/details/in.ernet.dli.2015.45480/page/n23
    John Maynard Keynes A Treatise Money 1929・1965
    ケインズ全集5所収

    貨幣論1
    p.4

      Now by the mention of contracts and offers, wehave introduced Law or Custom, by which they areenforceable; that is to say, we have introduced theState or the Community. JHirthermore it is a peculiarcharacteristic of money contracts that it is the Stateor Community not only which enforces delivery, butalso which decides what it is that must be deliveredas a lawful or customary discharge of a contractwhich has been concluded in terms of the money-of-account. The State, therefore, comes in first of allas the authority of law which enforces the paymentof the thing which corresponds to the name or de-scription in the contract. But it comes in doublywhen, in addition, it claims the right to determine anddeclare what thing corresponds to the name, and tovary its declaration from time to time—when, thatis to say, it claims the right to re-edit the dictionary.This light is claimed by all modem States and hasbeen so claimed for some four thousand years at least.It is when this stage in the evolution of Money hasbeen reached that Knapp’s Chartalism—the doctrinethat money is peculiarly a creation of tte State—^isfully realised.


    貨幣論

     ところで、契約と付け値とに言及することによって、既にわれわれはそれらを履行させることのできる法律あるい
    は慣習を導入している。すなわちわれわれは、国家あるいは社会を導入しているのである。さらに貨幣契約の一つの
    特殊の性質は、国家または社会が、単に引渡しを強制するだけでなく、計算貨幣をもって締結されている契約の合法
    的あるいは慣習的な履行として引き渡されなければならないものは何かということをも決定する点にある。したがっ
    て国家は、まず第一に、契約に含まれている名称もしくは記述に照応する物の支払いを強制する法の権威として現わ
    れる。しかし国家が、これに加えていかなる物がその名称に照応するかを定め、これを布告し、そしてその布告を時
    どき変更する権利を要求するとき--すなわち辞典を再編修する権利を要求するとき--国家は二役を演ずることに
    なる。この権利は、すべて近代国家が要求しており、そして少なくとも約四○○○年の間そのように要求し続けてき
    た。クナップ(Knapp)の表券主義 (chartalism)--貨幣はとくに国家の創造物であるという学説--が完全に実
    現されるのは、貨幣の発展がこの段階に到達したときである。
     したがって、人びとが計算貨幣を採用した瞬間から、貨幣の時代がか物々交換の時代の後を引き継ぐに至ったのであ
    る。そして表券主義的貨幣すなわち国家貨幣の時代は、国家が、一般に行なわれている計算貨幣に対して、いかなる
    ものを貨幣としてこれに照応させるかを布告する権利を要求したときに--国家が辞典の使用を強制するだけでな
    く、辞典を作る権利をも要求したときに--達せられた。今日すべての文明社会の貨幣は、議論の余地なく表券主義
    的[貨幣〕である。

    全集#5:4~5頁

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  19. 商品貨幣と信用貨幣

       計算貨幣

    貨幣金属説と貨幣表券説

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  20. 資本論
    3:5:35:2
    《第三五章 貴金属と為替相場〔612〕

    第二節 為替相場(末尾)


    重金主義(モネタールジステール)は本質的に旧教的であって、信用主義(クレディッ
    トジステール)は本質的に新教的である。「スコットランド人は金貨をきらう。」
    (The Scotch hate gold.)紙幣としては、諸商品の貨幣定在はただ社会的な定在で
    ある。救済するものは信仰である。諸商品の内在的精霊としての貨幣価値を信仰
    すること、生産様式とその予定秩序とを信仰すること、自己じしんを増殖する
    資本の単なる人格化としての、生産の個々の代理者を信仰すること。だが、新教が
    旧教の基礎から解放されていないように、信用主義は重金主義の基礎から解放され
    ていない。》河出書房新社世界の大思想

    熊野資本論の思考712頁参照

    ケインズの脱金本位制案も金の流出を防ぐためのものだ。マルクスは ケインズに先行している。

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  21. ただし計算貨幣を4000年の歴史あるものとケインズは見る

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  22. 信用主義は呪術、もしくは宗教の起源に位置付けられ得る

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  23. 岩波文庫7

    経済原論=74
    3:35:2

    重金主義[モネタルジュステム]は本質的にカトリック的であり、信用主義は本質的にプロテスタント的である。「スコットランド人は金をう The Scotch hate gold.」。紙券としては、諸商品が貨幣として存在することは、一つの単に社会的な存在[ダーザイン]である。聖列に加わらしめるものは、信仰である。商品の内在的霊魂としての貨幣価値にたいする信仰、生産様式とその予定秩序とにたいする信仰、自己自身を価値増殖する資本の単なる人格化としての、個々の生産担当者にたいする信仰。しかし、プロテスタント教がカトリック教の基礎から解放されないように、信用主義は、重金主義の基礎から解放されない。

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  24. 3:33
    恐怖となれば、信用主義がとつぜん重金主義に転変する。〔583〕 河出

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  25. 3:35:1
    中央銀行は信用制度の軸点である。そして金属準備はまた銀行の軸点である。信用主義の重金主義への転変が必然であるのは、私がすでに第一部第三章の支払手段のところで述べたとおりである。

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  26. 421 金持ち名無しさん、貧乏名無しさん (ワッチョイ edc9-PxCh)[sage] 2019/09/07(土) 09:48:46.89 ID:s0a3wgLR0
    資本主義と貨幣 ――クナップ、ジンメル、マルクス: 付・不換紙幣はいかにして発行されたか ――フランス、イギリス、アメリカ シリーズ 貨幣論 Kindle版
    福田徳三 (著), 山口正太郎 (著), 笠信太郎 (著), 高田早苗 (著), 経済思想史研究会 (編集)

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    ¥ 350 Kindle 価格

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  27. 632 金持ち名無しさん、貧乏名無しさん (ワッチョイ edc9-PxCh)[sage] 2019/09/08(日) 05:57:53.99 ID:WS+5pCEq0
    「スチュアートの貨幣論と表券貨幣説」 柴田德太郎(帝京大学)
    https://jshet.net/docs/conference/82nd/shibata.pdf
    4.小括
    第 1 節では 2 人の表券貨幣論者の議論を検討した。クナップの議論は、①名目貨幣説、
    ②表券貨幣説、③国際決済には正貨が必要、という 3 つに要約できる。イネスの議論は、
    ①商品貨幣説批判、②貨幣の信用理論、すなわち、「貨幣は信用である」という議論。③「貨
    幣の国家理論」と「貨幣の信用理論」の統合、すなわち、「政府の貨幣も国の債務であり、
    信用貨幣である」という議論の3つに要約できる。この 2 人の表券貨幣論者の議論をスチ
    ュアートの貨幣論と比較するとどのようなことが言えるだろうか。
    ①スチュアートの「計算貨幣」の定義は、「販売品の其々の価値を尺度するために発明さ
    れた任意の度量標準」というものであった。これは、明らかに「名目貨幣論」である。②
    スチュアートの鋳貨に関する説明は「鋳貨の内在的価値は一般的合意または国家の権威に
    基づく」というものであった。彼は、(象徴貨幣)信用貨幣だけでなく、鋳貨も表券貨幣で
    あると考えていたと言えるだろう。③同時に、スチュアートは鋳貨の持つ 2 面性にも気づ
    いていた。素材商品の価格変動が、「諸物の価値を尺度するための不変の度量標準の有効性」
    を阻害するという弱点を指摘していたのである。このため、計算貨幣としては鋳貨よりも
    信用貨幣の方が優れているという認識を持っていた。その結果、債務の譲渡性を高めて信
    用貨幣の発行を促進することを提言していたのである。
    したがって、スチュアートの貨幣論は、クナップやイネスの名目貨幣論、表券貨幣論の
    先駆者であると評価できる。とくに、イネスの議論は、スチュアートの議論を継承、発展
    させたものであると言える。(相違点については、報告、full paper で詳述する)

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  28. ‪ISHIZUKAさま‬

    ‪いつも勉強させていただいております‬

    ‪国会図書館デジタルコレクションに以下があります‬
    ‪クナップ 『貨幣国定学説 』岩波書店 1922年‬
    ‪https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/971256‬
    ‪https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/971256/15‬

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  29. Ryouji Ishizuka (@ISHIZUKA_R)
    2020/09/15 8:57
    レイがクナップの本をどのように位置づけているかについては、彼のワーキングペーパーのクナップについて書いた箇所に書いてある。「奇異な用語がたくさんある」と。
    levyinstitute.org/pubs/wp_792.pdf
    https://twitter.com/ishizuka_r/status/1305656828299157504?s=21


    From the State Theory of Money to Modern Money Theory: An Alternative to Economic Orthodoxy by L. Randall Wray* Levy Economics Institute of Bard College March 2014
    http://www.levyinstitute.org/pubs/wp_792.pdf


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  30. 中野剛志

    クナップの 『貨幣国定説 』は 、その題名から 、国家による貨幣の発行や法定を最も重視したものと誤解されがちであるが 、そうではない 。クナップが最も重視したのは 、国家による発行や法定ではなく 、 「受領 」であった 。

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  31. ‪クナップの『貨幣国定説』は、その題名から、国家による貨幣の発行や法定を最も重視したものと誤解されがちであるが、そうではない。クナップが最も重視したのは、国家による発行や法定ではなく、「受領」であった。》中野剛志‬

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  32. 富国と強兵#1
     れた貴金属などに対して金匠ノ ート (受領証 )を発行し 、それが譲渡 ・流通していた 。いずれも近代的な信用貨幣の先駆とも言うべき預金や発券を提供していたが 、その創設に国家が関与したわけではない 。それにもかかわらず 、理論的に検討するならば 、信用貨幣論もまた 、国家と深く関係していることが分かるのである 。そのことを明らかにするために 、改めてクナップによる貨幣論の古典 『貨幣国定説 』を紐解いてみよう 。 『貨幣国定説 』は表券主義の理論書として知られているが 、実際には 、その議論は信用貨幣論を前提としていた 。確かにクナップは 、貨幣の定義について 、次のように述べて 、表券主義を表明している 。 「貨幣とは常に表券的な支払い手段のことを指す 。あらゆる表券的な支払い手段のことを我々は貨幣と呼ぶ 。貨幣の定義とは 、したがって 〝表券的な支払い手段 〟である ★ 2 3 。 」しかしクナップは 、続けて次のように論じている 。支払いとは 、即座に行われるものとは限らない 。取引のほとんどは 、異時点間のものである 。支払いが即座に行われない場合は 、支払いの義務 、すなわち負債が残る ★ 2 4 。このようにクナップの念頭にあるのは 、貨幣とは 「負債 」の表券的な支払い手段であるという信用貨幣論にほかならない 。クナップは 、 「 c h a r t a (表券 ) 」というラテン語を選んで 「 c h a r t a l i s m (表券主義 ) 」を造語したのは 、貨幣が実体をもつものではなく 、チケットやト ークンといった記号的 ・象徴的なものであることを表現するためだとしている ★ 2 5 。記号ないしは象徴としての表券貨幣が示すものは 、 「名目的な価値の単位 」である 。表券貨幣とは 、計算貨幣だということである 。なお 、その計算単位は歴史的に決まってきたものであるとクナップは言う ★ 2 6 。そして 、 「表券性は 、法律との間の一定の関係に依存する 。したがって 、紙きれ自体から 、それが表券であるかどうかを言うことはできない ★ 2 7 。 」特定の表券を負債の支払い手段として定めるのは法律である 。その法律を守らせるものが国家である ★ 2 8 。こうして 、負債の支払い手段 、すなわち信用貨幣は 、法律そして国家を必要とする 。ここで必要とされている国家の機能は 、民間の取引における負債の支払いを保証する 「司法 」である ★ 2 9 。さらに 、 「司法 」機能だけではなく 、国家の 「財政 」機能も 、信用貨幣にとって重要な意味を有する 。すなわち 、国家が 、租税の支払い手段として定めることが 、貨幣にとって重要であるとクナップは論じるのである 。
     クナップの 『貨幣国定説 』は 、その題名から 、国家による貨幣の発行や法定を最も重視したものと誤解されがちであるが 、そうではない 。クナップが最も重視したのは 、国家による発行や法定ではなく 、 「受領 」であった 。

    (貨幣を定義する )基準は 、貨幣が国家によって発行されることではあり得ない 。というのも 、それでは 、最も重要な種類の貨幣が排除されてしまうだろうからだ 。私が言っているのは 、銀行券のことである 。銀行券は国家によって発行されるのではないが 、貨幣システムの一部を形成している 、法貨であることもテストにはならない 。というのも 、貨幣システムの中で 、しばしば法貨ではないものが存在するからだ (一九 ○五年時点のドイツでは 、財務省証券は法貨ではなかった ) 。もしテストとして用いるならば 、我々は 、貨幣が国家機関への支払いにおいて受け入れられるという事実に最も着目すべきである 。そして 、国家に対する支払いのための手段はすべて 、貨幣システムの一部を成している 。こうしたことから 、決定的なのは 、発行ではなく 、受領と呼ばれるものである 。国家による受領が貨幣システムの境界線を定める ★ 3 0 。

     そして 、国家が受領するものとして特に大きな役割を果たすのが租税だとクナップは言う ★ 3 1 。このように 、彼の表券主義は 、信用貨幣論を前提とした 「国定信用貨幣論 」であった 。このクナップの議論に依拠するならば 、信用貨幣論もまた 、国家を抜きにしては語れないことが明らかとなろう 。まず 、民間取引における負債の確実な支払いを保証するには 、国家の司法機能が必要となる 。この司法機能は 、貨幣にとって 、ほとんど必要条件と言ってもよいであろう 。そして 、もう一つは 、信用貨幣を租税の支払い手段として受領するという国家の財政機能である 。これは 、すでに述べたように 、貨幣の十分条件である 。こうして 、信用貨幣論は 、ほぼ論理必然的に 、国家を強く要請するのである 。すでに述べたように 、貨幣とは負債の一形式であり 、負債にはデフォルトの可能性という不確実性が伴う 。この不確実性を払拭しなければ 、負債が貨幣として受け入れられることは難しい 。この不確実性を最大限にまで低減し 、負債に貨幣としての役割を与えるのが 、国家の司法機能と財政機能なのである 。再び歴史を参照しよう 。先に挙げたイタリア主要都市における預金銀行業は民間活動の中から発生したが 、経営基盤が脆弱で倒産が頻発したため 、一五世紀から一六世紀にかけて 、南ヨ ーロッパ及び北ヨ ーロッパにおいて公立の預金銀行が相次いで誕生し 、主要な支払決済業務を独占して行うようになっていった 。また 、イギリスにおいても 、一六九四年に設立されたイングランド銀行が三年後に銀行券の発券業務の独占を認められ 、金匠銀行は発券業務を放棄した 。そしてイングランド銀行の銀行券や同行の預金債務が国家への納税などの支払いに受け取られることで 、国家の貨幣と同等の地位を得ていったのである ★ 3 2 。このように 、銀行券や預金といった信用貨幣は 、国家が関与することで不確実性を克服し 、貨幣システムの一部となることができ 、近代的な信用制度に基づく資本主義の成立を促したのであった 。クナップが指摘するように 、 「 〝資本主義 〟は 、なるほど国家が生んだものではな

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  33. 明らかにしたのであるが 、それについて論じるのは次章の課題である 。 ★ 1 B e n j a m i n C o h e n , ' T h e N e w G e o g r a p h y o f M o n e y , ' i n E m i l y G i l b e r t a n d E r i c H e l l e i n e r ( e d s . ) , N a t i o n S t a t e s a n d M o n e y : T h e P a s t , P r e s e n t a n d f u t u r e o f N a t i o n a l C u r r e n c i e s , R o u t l e d g e , 1 9 9 9 , p . 1 2 4 . ★ 2 C o h e n ( 1 9 9 9 : p . 1 2 4 ) ★ 3 M i c h a e l M c L e a y , A m a r R a d i a a n d R y l a n d T h o m a s , ' M o n e y i n t h e M o d e r n E c o n o m y : A n I n t r o d u c t i o n ' , Q u a r t e r l y B u l l e t i n , 2 0 1 4 a , Q 1 , B a n k o f E n g l a n d , p p . 4 1 3 , h t t p : / / w w w . b a n k o f e n g l a n d . c o . u k / p u b l i c a t i o n s / D o c u m e n t s / q u a r t e r l y b u l l e t i n / 2 0 1 4 / q b 1 4 q 1 0 1 . p d f ★ 4たとえば 、 R . G . H a w t r e y , C u r r e n c y a n d C r e d i t , L o n g m a n s a n d G r e e n c o , 1 9 1 9 , C h . I 、ホ ートリ ーの議論を要約したものとして 、内藤敦之 『内生的貨幣供給理論の再構築 :ポスト ・ケインズ派の貨幣 ・信用アプロ ーチ 』日本経済評論社 、 2 0 1 1年 、第 3章 。 ★ 5このクル ーソ ーとフライデ ーの例も M c L e a y , R a d i a a n d T h o m a s ( 2 0 1 4 )から借りている 。 ★ 6 A . M i t c h e l l I n n e s , ' W h a t i s M o n e y , ' i n L . R . W r a y ( e d . ) , C r e d i t a n d S t a t e T h e o r i e s o f M o n e y , E d w a r d E l g a r , 2 0 0 4 , p . 4 2 . ★ 7 G e o f f r e y I n g h a m , T h e N a t u r e o f M o n e y , P o l i t y P r e s s , 2 0 0 4 , p . 1 2 . ★ 8 H y m a n M i n s k y , S t a b i l i z i n g a n U n s t a b l e E c o n o m y , M c G r a w h i l l , 2 0 0 8 , p . 2 5 5 . ★ 9 M c L e a y , R a d i a a n d T h o m a s ( 2 0 1 4 : p p . 6 7 ) . ★ 1 0 M a x W e b e r , E c o n o m y a n d S o c i e t y , V o l u m e O n e , U n i v e r s i t y o f C a l f o r n i a P r e s s , 1 9 7 8 , p . 1 7 9 ★ 1 1 J o h n M a y n a r d K e y n e s , A T r e a t i s e o n M o n e y , M a r t i n o P u b l i s h i n g , 2 0 1 1 , p . 5 .なお 、ケインズの 『貨幣論 』と 『雇用 、利子 、貨幣の一般理論 』との間には 、その貨幣観を巡って断絶があるとする指摘があるが 、内藤 ( 2 0 1 1 :第 4章 )は 、ケインズは 、信用貨幣論の枠組みを一貫して維持していたことを示している 。 ★ 1 2 『貨幣国定説 』の英訳版にあたってはケインズが尽力したようで 、その序文において 、クナップはケインズへの謝辞を述べている 。 G e o r g F r i e d r i c h K n a p p , T h e S t a t e T h e o r y o f M o n e y , M a r t i n o P u b i s h i n g , 2 0 1 3 , p . v i . ★ 1 3 C h a r l e s A . E . G o o d h a r t , ' T h e T w o C o n c e p t s o f M o n e y : I m p l i c a t i o n s f o r t h e A n a l y s i s o f O p t i m a l C u r r e n c y A r e a s , ' E u r o p e a n J o u r n a l o f P o l i t i c a l E c o n o m y , V o l . 1 4 , 1 9 9 8 , p p . 4 0 7 4 3 2 . ★ 1 4岩田一政 『現代金融論 』日本評論社 、 1 9 9 2年 、 p . 1 0 1 。 ★ 1 5吉田暁 『決済システムと銀行 ・中央銀行 』日本経済評論社 、 2 0 0 2年 、 p . 1 5 9 。 ★ 1 6 M c L e a y , R a d i a a n d T h o m a s ( 2 0 1 4 a : p . 1 0 ) ★ 1 7 L . R a n d a l l W r a y , M o d e r n M o n e t a r y T h e o r y : A P r i m e r o n M a c r o e c o n o m i c s f o r S o v e r e i g n

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  34. M o n e t a r y S y s t e m s , P a l g r a v e M a c M i l l a n , 2 0 1 2 , p . 5 0 . ★ 1 8 L . R a n d a l l W r a y ( e d . ) , C r e d i t a n d S t a t e T h e o r i e s o f M o n e y , E d w a r d E l g a r , 2 0 0 4 . ★ 1 9フェリックス ・マ ーティン 『 2 1世紀の貨幣論 』東洋経済新報社 、 2 0 1 4年 。 ★ 2 0 K e y n e s ( 2 0 1 1 : p . 1 3 ) ★ 2 1楊枝嗣朗 「貨幣とは何か ? : 『歴史の中の貨幣 』序章 」 『佐賀大学経済論集 』 3 9 ( 6 ) 、 2 0 0 7年 ;楊枝嗣朗 『歴史の中の貨幣 :貨幣とは何か 』文眞堂 、 2 0 1 2年 。 ★ 2 2吉田 ( 2 0 0 2 : p p . 1 5 7 , 1 6 0 1 6 1 ) ★ 2 3 K n a p p ( 2 0 1 3 : p . 3 8 ) ★ 2 4 K n a p p ( 2 0 1 3 : p . 1 1 ) ★ 2 5 K n a p p ( 2 0 1 3 : p p . 3 2 3 3 ) ★ 2 6 K n a p p ( 2 0 1 3 : p . 1 7 ) ★ 2 7 K n a p p ( 2 0 1 3 : p . 3 4 ) ★ 2 8 K n a p p ( 2 0 1 3 : p . 3 9 ) ★ 2 9 K n a p p ( 2 0 1 3 : p . 1 1 ) ★ 3 0 K n a p p ( 2 0 1 3 : p . 9 5 ) ★ 3 1 K n a p p ( 2 0 1 3 : p . 5 2 ) ★ 3 2楊枝 ( 2 0 1 2 ) ★ 3 3 K n a p p ( 2 0 1 3 : p . 1 3 7 ) ★ 3 4 M i c h a e l M c L e a y , A m a r R a d i a a n d R y l a n d T h o m a s , ' M o n e y C r e a t i o n i n t h e M o d e r n E c o n o m y , ' Q u a r t e r l y B u l l e t i n , 2 0 1 4 b , Q 1 , B a n k o f E n g l a n d , p p . 1 4 2 7 . ★ 3 5 J o s e p h A . S c h u m p e t e r , H i s t o r y o f E c o n o m i c A n a l y s i s , O x f o r d U n i v e r s i t y P r e s s , 1 9 5 4 , p . 7 1 7 . ★ 3 6 J o s e p h A . S c h u m p e t e r , T h e T h e o r y o f E c o n o m i c D e v e l o p m e n t : h i s t o r y o f E c o n o m i c A n a l y s i s , T r a n s a c t i o n P u b l i s h e r s , 1 9 8 3 , C h . 3 . ★ 3 7 M i n s k y ( 2 0 0 8 : p . 2 7 8 ) ★ 3 8 M c l e a y , R a d i a a n d T h o m a s ( 2 0 1 4 b : p . 1 5 ) ★ 3 9内藤 ( 2 0 1 1 :第 1章 ) ★ 4 0 K n a p p ( 2 0 1 3 : p . 1 0 9 ) ★ 4 1 D u d l e y D i l l a r d , ' T h e B a r t e r I l l u s i o n i n C l a s s i c a l a n d N e o c l a s s i c a l E c o n o m i c s , ' E a s t e r n E c o n o m i c J o u r n a l , X I V ( 4 ) , 1 9 8 8 . ★ 4 2 F r a n k H . H a h n , ' O n M o n e t a r y T h e o r y , ' E c o n o m i c J o u r n a l , 9 8 ( 4 ) , D e c e m b e r , p p . 9 5 7 9 7 3 . ★ 4 3チャ ールズ ・ A ・ E ・グッドハ ート 、ディミトリオス ・ P ・トゥソモコス 「マクロ経済学におけるデフォルトの役割 」 『金融研究 』 2 0 1 1年 1 0月 、日本銀行金融研究所 。 ★ 4 4マ ーティン ( 2 0 1 4 : p . 3 2 1 )

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  35. ★ 3 0 K n a p p ( 2 0 1 3 : p . 9 5 )
    ★ 3 1 K n a p p ( 2 0 1 3 : p . 5 2 )
    G e o r g F r i e d r i c h K n a p p , T h e S t a t e T h e o r y o f M o n e y , M a r t i n o P u b i s h i n g , 2 0 1 3

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  36. ‪クナップの『貨幣国定説』は、その題名から、国家による貨幣の発行や法定を最も重視したものと誤解されがちで
    あるが、そうではない。クナップが最も重視したのは、国家による発行や法定ではなく、「受領」であった。》
    中野剛志『富国と強兵』#1

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  37. Everyone can create money the problem is to get it accepted.
    Hyman Minsky

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  38. クナップに言及


    MMT-MCT Fields Institute Seminar: Stephanie Kelton
    2012
    https://youtu.be/khaypwRG5C0?t=23m
    https://freeassociations2020.blogspot.com/2021/01/kelton-2012.html?m=1

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  39. レイ6:3

    ここでは、貨幣の歴史に関する従来の物語の誤りを証明するために、詳細な歴史を説明する余裕はない。そこで、その代わりとなるものを概観しよう。
     まずは、計算貨幣は何千年も前から──少なくとも4000年、おそらくはもっとずっと前から──存在することに注目しなければならない(「現代貨幣理論」の「現代」は、「貨幣とは、少なくとも過去4000年間は国家貨幣であった」というケインズの主張から来ている)。我々がこれを知っているのは、例えば貨幣的な価値を記録するメソポタミアの粘土板や、その計算貨幣を使った価格表のおかげである。

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  40. 我々はまた、貨幣の起源は負債およびその記録と関係が深く、貨幣や負債に関する多くの言葉が宗教的な意味を持っていることを知っている。例えば、「debt」「sin」「repayment」「redemption」「wiping the slate clean」「Year of Jubilee」がそうである。キリストが使ったアラム語では、「debt(負債)」に当たる言葉と「sin(罪)」に当たる言葉は同じものである。ふつう「我らの罪(our trespasses)を許したまえ」と訳される『主の祈り』は、「our debt」または「our sin」と、あるいはマーガレット・アトウッドが述べているように「our sinful debts」と訳してもいいかもしれない★1。  メソポタミアの貸方と借方の記録は、現代の電子的な記録とよく似たものだった──それはコンピューターのテープにではなく、粘土に刻まれていた。また、初期の貨幣単位はいずれも、主要な食用穀物の測定単位に由来している。例えば、何ブッシェルの大麦に相当するものを債務として負い、債権として有し、支払うのか、といった具合である。これらはすべて、貨幣を商品と捉えるよりも、計算単位、社会的価値の表象、債務証書と捉える考え方に合致する。つまり、MMT派が説くように、貨幣とは、オペラの上演が終わった時にコートと引き換えられるクロークの札のような、「証拠」である。  実は、pawnshop(質屋)の「pawn」は、質屋から貨幣を受け取る代わりに担保として預ける「pledge(質草)」を意味する言葉からきている。貨幣は後に、質草と引き換えられる。聖ニコラウス(St. Nick)が質屋(しかも、盗品を質入れする泥棒のための質屋)の守護聖人である一方、「オールド・ニック(Old Nick)」とは、我々が自分の魂を質入れする悪魔のことである(それゆえ、赤い服と煙突の煤が特徴である。そして、「nick」には「盗む」という意味がある)。「隣人の妻を欲してはならない」という、十戒の第10の戒め(これは「男の奴隷、女の奴隷、牛、ロバ、隣人の所有するすべてのものを欲してはならない」と続く)は、もともとセックスや姦淫に関するものではなく、借金の担保としてそれらを受け取ることを戒めたものである。一方、キリストは「the Redeemer(救い主)」として知られる。救い主とは、我々がredeem(贖罪/弁済)できないdebt(罪/負債)をpayする(償う/支払う)ために名乗り出る「Sin Eater(罪食い人)」であり、その背景には、神にrepayする(返済する/報いる)人身御供というさらに古い習わしが存在する(Atwood[2008])。  「借り手にも貸し手にもなるな」というシェイクスピアの警句は、誰もが知っている。一般的に宗教は、「悪魔の」債権者と、妻子を質入れして「自分

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  41. ケインズ『貨幣論』
    《 ところで、契約と付け値とに言及することによって、既にわれわれはそれらを履行させることのできる法律あるいは慣習を導入している。すなわちわれわれは、国家あるいは社会を導入しているのである。さらに貨幣契約の一つの特殊の性質は、国家または社会が、単に引渡しを強制するだけでなく、計算貨幣をもって締結されている契約の合法的あるいは慣習的な履行として引き渡されなければならないものは何かということをも決定する点にある。したがって国家は、まず第一に、契約に含まれている名称もしくは記述に照応する物の支払いを強制する法の権威として現われる。しかし国家が、これに加えていかなる物がその名称に照応するかを定め、これを布告し、そしてその布告を時どき変更する権利を要求するとき--すなわち辞典を再編修する権利を要求するとき--国家は二役を演ずることになる。この権利は、すべて近代国家が要求しており、そして少なくとも約四○○○年の間そのように要求し続けてきた。クナップ(Knapp)の表券主義(chartalism)--貨幣はとくに国家の創造物であるという学説--が完全に実現されるのは、貨幣の発展がこの段階に到達したときである。
     したがって、人びとが計算貨幣を採用した瞬間から、貨幣の時代が物々交換の時代の後を引き継ぐに至ったのである。そして表券主義的貨幣すなわち国家貨幣の時代は、国家が、一般に行なわれている計算貨幣に対して、いかなるものを貨幣としてこれに照応させるかを布告する権利を要求したときに--国家が辞典の使用を強制するだけでなく、辞典を作る権利をも要求したときに--達せられた。今日すべての文明社会の貨幣は、議論の余地なく表券主義的[貨幣〕である。》原著1929

    邦訳ケインズ全集#5:4~5頁


    レイMMT入門6.3
    《 ここでは、貨幣の歴史に関する従来の物語の誤りを証明するために、詳細な歴史を説明する余裕はない。そこで、その代わりとなるものを概観しよう。  
     まずは、計算貨幣は何千年も前から──少なくとも4000年、おそらくはもっとずっと前から──存在することに注目しなければならない(「現代貨幣理論」の「現代」は、「貨幣とは、少なくとも過去4000年間は国家貨幣であった」というケインズの主張から来ている)。我々がこれを知っているのは、例えば貨幣的な価値を記録するメソポタミアの粘土板や、その計算貨幣を使った価格表のおかげである。》原著2015改訂版

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  42. ※国定信用貨幣論は中野剛志の用語
    クナップ、貨幣国定説
    イネス、信用貨幣論を統合

    《レイは、貨幣とは負債であるという「信用貨幣論」[イネス]と、貨幣の価値の源泉は国家権力
    にあるという「表券主義」[クナップ]を結合させたのである。このような貨幣論を「国定信用貨幣論(Credit and State Theory of Money)」と呼んでおこう。》富国と強兵

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  43. 《‪クナップの『貨幣国定説』は、その題名から、国家による貨幣の発行や法定を
    最も重視したものと誤解されがちであるが、そうではない。クナップが最も重視
    したのは、国家による発行や法定ではなく、「受領」であった。》
    中野剛志『富国と強兵』#1

    《誰でも貨幣を創造することができる。問題は、それを受け入れさせることである》
    ミンスキー『金融不安定性の経済学』#10:284頁参照

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  44. 573 金持ち名無しさん、貧乏名無しさん (ワッチョイ a724-3958)[] 2021/02/15(月) 19:39:14.73 ID:9+UX725q0
    《クナップの『貨幣国定説』は、その題名から、国家による貨幣の発行や法定を
    最も重視したものと誤解されがちであるが、そうではない。クナップが最も重視
    したのは、国家による発行や法定ではなく、「受領」であった。》
    中野剛志『富国と強兵』#1

    《誰でも貨幣を創造することができる。問題は、それを受け入れさせることである》
    ミンスキー『金融不安定性の経済学』#10:284頁参照

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  45. クナップの著書名の邦訳『貨幣国定説』は誤解を生む。第1章の冒頭は「貨幣は法制度の創造物ein Gshöps der Rechtsordnungである」とある。貨幣法定説とすべき。
    ケインズも「Knapp's Chartalism - the doctrine that money is peculiarly a creation of the State」と書いてすこし残念だ

    ただし、ケインズはその少し前で、「Law or Custom ........the State or Community」としているので、より広い意味で理解しているのだろう。

    タイトルは直訳すると『国家的貨幣理論』あるいは『貨幣の国家理論』で、すこし座りがわるいかな。
    畏友が新訳を準備中ということなので、タイトルをどうするのかメールで聞いてみよう。

    『貨幣の国家理論』だそうです。

    第四章の最後の言葉からとのことなのですが、なんと書いているか見ると「金属理論からさようなら」。金属理論から国家理論へと。

    Aber die staatliche Theorie hat auch die vielen anderen Formen des Zahlungswesens unterzubringen und deren gemeinsame Wurzel aufzudecken;deshalb muß sie umfaffender und duldsamer sein als die Metalltheorie, von der wir ohne Groll und hoffentlich auf immer Abschied nehmen.

    しかし、国家理論は他の多くの支払い形態にも対応し、それらの共通のルーツを明らかにする必要があります。したがって、金属理論よりも包括的で寛容である必要があります。

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  46. 『貨幣国定説』 Die staatliche Theorie des Geldes (1905)

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  47. 第4章は具体例なので英訳と旧邦訳では割愛されている
    https://archive.org/details/staatlichetheor00knapgoog/page/n409/mode/2up

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  48. MMTとは簡単に言えば信用通貨論と国定通貨論の合体である.

    東大生動画 >>8 は中野剛志の国定信用貨幣論なる概念を採用している。

    >【15分で全体がわかる】現代貨幣理論(MMT)入門 後編
    > https://youtu.be/Oqnko9Y6Wnw

    信用貨幣論はイネス>>33, >>63
    国定貨幣論は歴史学派のクナップ >>32 に代表される。

    ※国定信用貨幣論は中野剛志の用語
    クナップ、貨幣国定説
    イネス、信用貨幣論を統合

    《レイは、貨幣とは負債であるという「信用貨幣論」[イネス]と、貨幣の価値の
    源泉は国家権力にあるという「表券主義」[クナップ]を結合させたのである。この
    ような貨幣論を「国定信用貨幣論(Credit and State Theory of Money)」と呼ん
    でおこう。》富国と強兵

    《クナップの『貨幣国定説』は、その題名から、国家による貨幣の発行や法定を
    最も重視したものと誤解されがちであるが、そうではない。クナップが最も重視
    したのは、国家による発行や法定ではなく、「受領」であった。》
    中野剛志『富国と強兵』#1


    《「(貨幣を定義する )基準は 、貨幣が国家によって発行されることではあり得ない 。というのも 、それでは 、最も重要な種類の貨幣が排除されてしまうだろうからだ 。私が言っているのは 、銀行券のことである 。

     もしテストとして用いるならば 、我々は 、貨幣が国家機関への支払いにおいて受け入れられるという事実に最も着目すべきである 。そして 、国家に対する支払いのための手段はすべて 、貨幣システムの一部を成している 。こうしたことから 、決定的なのは 、発行ではなく 、受領と呼ばれるものである 。国家による受領が貨幣システムの境界線を定める 。」》

    参考
    ‪国会図書館デジタルコレクション、クナップ 『貨幣国定学説 』岩波書店 1922年
    ‬ https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/971256/89

    《国家の発行(staatliche Emission)を以って識標としてはならない、然らざれば或事情の下に於て
    甚だ重大なる意義を有する貨幣種類が除外せられるからである。予は此処に銀行券を考へている。…
     吾々が国庫に向けられた支払に於ける受領を識標さして利用する時、現実に最も密接なる関係に
    立つ。是れに拠れば国家に宛つる支払を弁済し得る総ての支払要具は国家の貨幣制度に所属する。
    さんば斯の限界を決定するものは発行の如何ではなく、吾々の受容 (Akzeptation) と命名するもの
    である。故に国家の受容が国家的貨幣制度の範囲を境界づける。こに国家の受容とは只国庫に於
    ける受領、即ち国家が其際受取人として考へられる受領の謂ひである。》132〜133頁


    《誰でも貨幣を創造することができる。問題は、それを受け入れさせることである》
    ミンスキー『金融不安定性の経済学』#10:284頁参照

    個人的には両者は概念的にはアウフヘーベンさせず分離して捉えた方がいいと思う。
    国家官僚がいないと取引が出来ないと考えてしまう危険があるからだ。
    広義の共同体(計算貨幣の母体)が必要というならわかる。

    参考:
    「アンチノミーは解消されない。ヘーゲル哲学が全体として根本的にダメなところはここだ。
    アンチノミーをなす二つの項は互いに、あるいは、他のアンチノミックな二項との間でバランスを
    とる」
    http://www.kagomma.net/saito/travaux/vive.html
    この言葉はベンヤミン『パサージュ論』(岩波文庫第4巻391頁)にも孫引きされている。

    ちなみに
    バークレー、ラスキンを信用貨幣論の系譜に入れるとしたら
    交換銀行をつくろうとしたプルードンも入れないとおかしい。
    流石にジンメルはプルードンに言及していた。歴史学派と国家観は違うが立ち位置は近い。

    第二章 帝制度論
    脈史的理由に非(ものである
    故に吾々は便宜如何を注意するこそなく、これが叙逃を試みねば
    令楚に複離なる貨幣制度が存在する時は、其境界は果して如何にして生するか×第一に問題とな
    るであらう。何が脳家の貨幣制度に罵し、何が属しないか? 此腐に何よりも重大なるは此限界を
    除り狭~設けないこざである。
    《国家の発行(staatliche Emission)を以って識標としてはならない、然らざれば或事情の下に於て
    甚だ重大なる意義を有する貨幣種類が除外せられるからである。予は此処に銀行券を考へている。…》

    夫れは闘家の登行にか、るものではないが、併し時として脳家の貨幣制度に参加するこごがある
    又1般的受領弾制(allgenmeiner Annabmezwang)を融標に充てるこざは出来ない、何さなれば隣家
    の貨幣制度中にはこの強醐を具へざる貨幣種類が甚だ腰々存在してあるからである(例ば弱逸(一
    九〇五年)に於ける帝圏金庫設券はこの張制を有つて居ない)。
    吾々が固庫に向けられた支排に於ける受領を避標さして利用する時、現賞に最も審接なる闇係に
    立つ。是れに徽れば園家に宛っる支携を携済し得る纏ての支排要具は繊家の貨幣制度に所属する
    されば新の限界を決定するものは登行の如何ではなく、 吾々の受容(Akzeptation) 命名する」の
    である。故に園家の受容が岡家的貨幣制度の範園を境界づける°gこAに固家の受容さは只風庫に於
    ける受領、即ち闘家が共際受取人さして考へられる受領の謂ひである。

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  49. MMTとは簡単に言えば信用通貨論と国定通貨論の合体である.

    東大生動画 >>8 は中野剛志の国定信用貨幣論なる概念を採用している。

    >【15分で全体がわかる】現代貨幣理論(MMT)入門 後編
    > https://youtu.be/Oqnko9Y6Wnw

    信用貨幣論はイネス>>33, >>63
    国定貨幣論は歴史学派のクナップ >>32 に代表される。

    ※国定信用貨幣論は中野剛志の用語
    クナップ、貨幣国定説
    イネス、信用貨幣論を統合

    《レイは、貨幣とは負債であるという「信用貨幣論」[イネス]と、貨幣の価値の
    源泉は国家権力にあるという「表券主義」[クナップ]を結合させたのである。この
    ような貨幣論を「国定信用貨幣論(Credit and State Theory of Money)」と呼ん
    でおこう。》富国と強兵

    《クナップの『貨幣国定説』は、その題名から、国家による貨幣の発行や法定を
    最も重視したものと誤解されがちであるが、そうではない。クナップが最も重視
    したのは、国家による発行や法定ではなく、「受領」であった。》
    中野剛志『富国と強兵』#1


    《「(貨幣を定義する )基準は 、貨幣が国家によって発行されることではあり得ない 。というのも 、それでは 、最も重要な種類の貨幣が排除されてしまうだろうからだ 。私が言っているのは 、銀行券のことである 。…
     もしテストとして用いるならば 、我々は 、貨幣が国家機関への支払いにおいて受け入れられるという事実に最も着目すべきである 。そして 、国家に対する支払いのための手段はすべて 、貨幣システムの一部を成している 。こうしたことから 、決定的なのは 、発行ではなく 、受領と呼ばれるものである 。国家による受領が貨幣システムの境界線を定める 。」》同

    参考
    ‪国会図書館デジタルコレクション、クナップ 『貨幣国定学説 』岩波書店 1922年
    ‬ https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/971256/89

    《国家の発行(staatliche Emission)を以って識標としてはならない、然らざれば或事情の下に於て
    甚だ重大なる意義を有する貨幣種類が除外せられるからである。予は此処に銀行券を考へている。…
     吾々が国庫に向けられた支払に於ける受領を識標さして利用する時、現実に最も密接なる関係に
    立つ。是れに拠れば国家に宛つる支払を弁済し得る総ての支払要具は国家の貨幣制度に所属する。
    さんば斯の限界を決定するものは発行の如何ではなく、吾々の受容 (Akzeptation) と命名するもの
    である。故に国家の受容が国家的貨幣制度の範囲を境界づける。こに国家の受容とは只国庫に於
    ける受領、即ち国家が其際受取人として考へられる受領の謂ひである。》132〜133頁


    《誰でも貨幣を創造することができる。問題は、それを受け入れさせることである》
    ミンスキー『金融不安定性の経済学』#10:284頁参照

    個人的には両者は概念的にはアウフヘーベンさせず分離して捉えた方がいいと思う。
    国家官僚がいないと取引が出来ないと考えてしまう危険があるからだ。
    広義の共同体(計算貨幣の母体)が必要というならわかる。

    参考:
    「アンチノミーは解消されない。ヘーゲル哲学が全体として根本的にダメなところはここだ。
    アンチノミーをなす二つの項は互いに、あるいは、他のアンチノミックな二項との間でバランスを
    とる」
    http://www.kagomma.net/saito/travaux/vive.html
    この言葉はベンヤミン『パサージュ論』(岩波文庫第4巻391頁)にも孫引きされている。

    ちなみに
    バークレー、ラスキンを信用貨幣論の系譜に入れるとしたら
    交換銀行をつくろうとしたプルードンも入れないとおかしい。
    流石にジンメルはプルードンに言及していた。歴史学派と国家観は違うが立ち位置は近い。

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  50. MMTとは簡単に言えば信用通貨論と国定通貨論の合体である.

    東大生動画 >>8 は中野剛志の国定信用貨幣論なる概念を採用している。

    >【15分で全体がわかる】現代貨幣理論(MMT)入門 後編
    > https://youtu.be/Oqnko9Y6Wnw

    信用貨幣論はイネス>>33, >>63
    国定貨幣論は歴史学派のクナップ >>32 に代表される。

    《レイは、貨幣とは負債であるという「信用貨幣論」[イネス]と、貨幣の価値の
    源泉は国家権力にあるという「表券主義」[クナップ]を結合させたのである。この
    ような貨幣論を「国定信用貨幣論(Credit and State Theory of Money)」と呼ん
    でおこう。》富国と強兵

    《クナップの『貨幣国定説』は、その題名から、国家による貨幣の発行や法定を
    最も重視したものと誤解されがちであるが、そうではない。クナップが最も重視
    したのは、国家による発行や法定ではなく、「受領」であった。》
    中野剛志『富国と強兵』#1

    《「(貨幣を定義する )基準は 、貨幣が国家によって発行されることではあり得ない 。というのも 、それでは 、最も重要な種類の貨幣が排除されてしまうだろうからだ 。私が言っているのは 、銀行券のことである 。…
     もしテストとして用いるならば 、我々は 、貨幣が国家機関への支払いにおいて受け入れられるという事実に最も着目すべきである 。そして 、国家に対する支払いのための手段はすべて 、貨幣システムの一部を成している 。こうしたことから 、決定的なのは 、発行ではなく 、受領と呼ばれるものである 。国家による受領が貨幣システムの境界線を定める 。」》同

    参考
    ‪国会図書館デジタルコレクション、クナップ 『貨幣国定学説 』岩波書店 1922年
    ‬ https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/971256/89

    《誰でも貨幣を創造することができる。問題は、それを受け入れさせることである》
    ミンスキー『金融不安定性の経済学』#10:284頁参照

    個人的には両者は概念的にはアウフヘーベンさせず分離して捉えた方がいいと思う。
    国家官僚がいないと取引が出来ないと考えてしまう危険があるからだ。
    広義の共同体(計算貨幣の母体)が必要というならわかる。

    参考:
    「アンチノミーは解消されない。ヘーゲル哲学が全体として根本的にダメなところはここだ。
    アンチノミーをなす二つの項は互いに、あるいは、他のアンチノミックな二項との間でバランスを
    とる」
    http://www.kagomma.net/saito/travaux/vive.html
    この言葉はベンヤミン『パサージュ論』(岩波文庫第4巻391頁)にも孫引きされている。

    ちなみにバークレー、ラスキンを信用貨幣論の系譜に入れるとしたら
    交換銀行をつくろうとしたプルードンも入れないとおかしい。
    流石にジンメルはプルードンに言及していた。歴史学派と国家観は違うが立ち位置は近い。

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  51. MMTとは簡単に言えば信用通貨論と国定通貨論の合体である.

    東大生動画 >>8 は中野剛志の国定信用貨幣論なる概念を採用している。

    >【15分で全体がわかる】現代貨幣理論(MMT)入門 後編
    > https://youtu.be/Oqnko9Y6Wnw

    信用貨幣論はイネス>>33, >>63
    国定貨幣論は歴史学派のクナップ >>32 に代表される。

    《レイは、貨幣とは負債であるという「信用貨幣論」[イネス]と、貨幣の価値の
    源泉は国家権力にあるという「表券主義」[クナップ]を結合させたのである。この
    ような貨幣論を「国定信用貨幣論(Credit and State Theory of Money)」と呼ん
    でおこう。》中野剛志『富国と強兵』#1

    《クナップの『貨幣国定説』は、その題名から、国家による貨幣の発行や法定を
    最も重視したものと誤解されがちであるが、そうではない。クナップが最も重視
    したのは、国家による発行や法定ではなく、「受領」であった。》同

    《「(貨幣を定義する )基準は 、貨幣が国家によって発行されることではあり得ない 。というのも 、それでは 、最も重要な種類の貨幣が排除されてしまうだろうからだ 。私が言っているのは 、銀行券のことである 。…
     もしテストとして用いるならば 、我々は 、貨幣が国家機関への支払いにおいて受け入れられるという事実に最も着目すべきである 。そして 、国家に対する支払いのための手段はすべて 、貨幣システムの一部を成している 。こうしたことから 、決定的なのは 、発行ではなく 、受領と呼ばれるものである 。国家による受領が貨幣システムの境界線を定める 。」》同

    参考
    ‪国会図書館デジタルコレクション、クナップ 『貨幣国定学説 』岩波書店 1922年
    ‬ https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/971256/89

    《誰でも貨幣を創造することができる。問題は、それを受け入れさせることである》
    ミンスキー『金融不安定性の経済学』#10:284頁参照

    個人的には両者は概念的にはアウフヘーベンさせず分離して捉えた方がいいと思う。
    国家官僚がいないと取引が出来ないと考えてしまう危険があるからだ。
    広義の共同体(計算貨幣の母体)が必要というならわかる。

    参考:
    「アンチノミーは解消されない。ヘーゲル哲学が全体として根本的にダメなところはここだ。
    アンチノミーをなす二つの項は互いに、あるいは、他のアンチノミックな二項との間でバランスを
    とる」
    http://www.kagomma.net/saito/travaux/vive.html
    この言葉はベンヤミン『パサージュ論』(岩波文庫第4巻391頁)にも孫引きされている。

    ちなみにバークレー、ラスキンを信用貨幣論の系譜に入れるとしたら
    交換銀行をつくろうとしたプルードンも入れないとおかしい。
    流石にジンメルはプルードンに言及していた。歴史学派と国家観は違うが立ち位置は近い。

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  52. MMTとは簡単に言えば信用通貨論と国定通貨論の合体である.

    東大生動画 >>8 は中野剛志の国定信用貨幣論なる概念を採用している。

    >【15分で全体がわかる】現代貨幣理論(MMT)入門 後編
    > https://youtu.be/Oqnko9Y6Wnw

    信用貨幣論はイネス>>33, >>63
    国定貨幣論は歴史学派のクナップ >>32 に代表される。

    《レイは、貨幣とは負債であるという「信用貨幣論」[イネス]と、貨幣の価値の
    源泉は国家権力にあるという「表券主義」[クナップ]を結合させたのである。この
    ような貨幣論を「国定信用貨幣論(Credit and State Theory of Money)」と呼ん
    でおこう。》中野剛志『富国と強兵』#1

    《クナップの『貨幣国定説』は、その題名から、国家による貨幣の発行や法定を
    最も重視したものと誤解されがちであるが、そうではない。クナップが最も重視
    したのは、国家による発行や法定ではなく、「受領」であった。》同

    《「国家による受領が貨幣システムの境界線を定める 。」》同

    参考
    ‪国会図書館デジタルコレクション、クナップ 『貨幣国定学説 』岩波書店 1922年
    ‬ https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/971256/89

    《誰でも貨幣を創造することができる。問題は、それを受け入れさせることである》
    ミンスキー『金融不安定性の経済学』#10:284頁参照

    個人的には両者は概念的にはアウフヘーベンさせず分離して捉えた方がいいと思う。
    国家官僚がいないと取引が出来ないと考えてしまう危険があるからだ。
    広義の共同体(計算貨幣の母体)が必要というならわかる。

    参考:
    「アンチノミーは解消されない。ヘーゲル哲学が全体として根本的にダメなところはここだ。
    アンチノミーをなす二つの項は互いに、あるいは、他のアンチノミックな二項との間でバランスを
    とる」
    http://www.kagomma.net/saito/travaux/vive.html
    この言葉はベンヤミン『パサージュ論』(岩波文庫第4巻391頁)にも孫引きされている。

    ちなみにバークレー、ラスキンを信用貨幣論の系譜に入れるとしたら
    交換銀行をつくろうとしたプルードンも入れないとおかしい。
    流石にジンメルはプルードンに言及していた。歴史学派と国家観は違うが立ち位置は近い。

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  53. 簡単に言えばMMTとは、信用通貨論と国定通貨論との統合である。

    東大生動画【15分で全体がわかる】現代貨幣理論(MMT)入門 後編 >>8 は中野剛志の国定信用貨幣論なる概念を採用している。

    信用貨幣論はイネス>>33, >>63 、
    国定貨幣論(表券主義)は歴史学派のクナップ >>32 に代表される。

    《レイは、貨幣とは負債であるという「信用貨幣論」[イネス]と、貨幣の価値の
    源泉は国家権力にあるという「表券主義」[クナップ]を結合させたのである。この
    ような貨幣論を「国定信用貨幣論(Credit and State Theory of Money)」と呼ん
    でおこう。》中野剛志『富国と強兵』#1

    《クナップの『貨幣国定説』は、その題名から、国家による貨幣の発行や法定を
    最も重視したものと誤解されがちであるが、そうではない。クナップが最も重視
    したのは、国家による発行や法定ではなく、「受領」であった。》同

    《「国家による受領が貨幣システムの境界線を定める 。」》同

    参考
    ‪国会図書館デジタルコレクション、クナップ 『貨幣国定学説 』岩波書店 1922年
    ‬ https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/971256/89

    《誰でも貨幣を創造することができる。問題は、それを受け入れさせることである》
    ミンスキー『金融不安定性の経済学』#10:284頁参照

    個人的には両者は概念的にはアウフヘーベンさせず分離して捉えた方がいいと思う。
    国家官僚がいないと取引が出来ないと考えてしまう危険があるからだ。
    広義の共同体(=計算貨幣の母体)が必要というならわかる。

    参考:
    「アンチノミーは解消されない。ヘーゲル哲学が全体として根本的にダメなところはここだ。
    アンチノミーをなす二つの項は互いに、あるいは、他のアンチノミックな二項との間でバランスを
    とる」
    http://www.kagomma.net/saito/travaux/vive.html
    この言葉はベンヤミン『パサージュ論4』(岩波文庫430頁)にも孫引きされている。

    ちなみにバークレー、ラスキンを信用貨幣論の系譜に入れるとしたら、
    交換銀行をつくろうとしたプルードンも入れないとおかしい。
    (表券説は金属主義と素材的に対立する)
    流石にジンメルはプルードンに言及していた。歴史学派と国家観は違うが立ち位置は近い。

    根拠    貨幣観   素材

         信用貨幣論 表券主義
    国定貨幣論
         商品貨幣論 金属主義


    国定貨幣は信用貨幣と商品貨幣を両方採用可

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  54. 根拠    貨幣観   素材
               表券主義
         信用貨幣論 
    国定貨幣論      金属主義
         商品貨幣論 


    国定貨幣は信用貨幣と商品貨幣を両方採用可
    信用貨幣は金属主義を従属させ得る

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  55. クナップ1905がジンメル1900に序文で言及

    著者序文
    技術に於ては遙かに予を凌駕した、 併し予の観る所では、共著作の構造が透徹的であることは充分
    稱讚することが出来ない。他の學生フィリップ・カルクマン Philipp Kalkmann は、 英國、和蘭及
    瑞西に關する研究によつて予の知識の範圍を著しく大した。若し彼が共内に他の職に従事しなか
    つたならば、子は飲んで彼と提携したであらうに。
    一八九五年の秋は、伯林で試みた連講義に於て、初めて予の直観をより明瞭に顕はさんと全て
    た。即ち一國の貨幣を認識するには、一般的受領強制でなく、公金庫に於ける受領を標準とするこ
    且本位を選ぶには、金属の性質に準備せず、商業政策上重要なる隣國の爲替相場にするよう
    合目的な影響を目標とすることである。
    其後間もなくゲオルグ・ジンメル Georg Simmel は『貨幣の哲學』 “Philosophie des Geldes," Leipzig
    1900, を公刊した。併し此才氣渡測たる著述は本來貨幣それ自身を取扱ふものではなく、貨幣經濟
    の社會學的方面を取扱ふものであるから、予の仕事は共作に對す六角逐と見ることが出来ない。
    オット・ハイン Otto Heyn は一八九四年に『外國取引に對し金準備を有する紙幣本位』“Papierwäh-
    rung mit Goldreserve für den Auslandsverkehr 1894,と題する著作を公にしたるが、手はジンメル
    に對するより以上にハインと親密な間柄を感じてある。彼は政治記者的に力をした、而して彼は
    實際に受けたより以上の注目を惹くべき資格はないであらう。


    Stattliche Thorie des Geldes
    https://archive.org/details/staatlichetheor00knapgoog/page/n8
    英語
    https://socialsciences.mcmaster.ca/econ/ugcm/3ll3/knapp/StateTheoryMoney.pdf
    英語版序文にはケインズへの謝辞あり

    ケインズ『貨幣改革論』1923『貨幣論』1930:メモ
    http://nam-students.blogspot.jp/2015/10/1979-john-maynard-keynes-treatise-money.html



    ____

    https://dl.ndl.go.jp/search/searchResult?featureCode=all&searchWord=%E8%B2%A8%E5%B9%A3%E5%9B%BD%E5%AE%
    9A%E5%AD%A6%E8%AA%AC&viewRestricted=0&viewRestricted=2&viewRestricted=3
    クナップ 貨幣国定学説 1922 岩波書店
    https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/971256
    https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/971256/10

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  56. かく‐ちく【角逐】 〘名〙 (「角」は勝負を争うの意) 互いに争うこと。 せり合うこと。 競争。

    https://kotobank.jp>word>角逐-460510
    角逐とは - コトバンク

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