柄谷行人『帝国の構造』:目次
柄谷行人『帝国の構造』(青土社 2014年7月31日印刷,8月12日発行)
「現代思想」連載時(2013.5~10)☆の全5章(実質全6章)が全7章になった。
モンゴルに関連する第5章のライプニッツ*を援用した帝国論と第6章が最大の加筆だろう。第5章は「現代思想」(2014.3)での丸川哲史との対談記事☆☆と内容的に重なる。第6章は『世界史の構造』を総括した上で帝国主義/帝国論(この両者は違う~特に後者は自由な交易を国家が保証するものだ~二つの遊動性とともにこの区別が大事になる。本書81頁以降参照)を展開しており、岩波書店創業百年記念シンポジウム時の講演☆☆☆と重なるが、「世界資本主義の諸段階」(資本主義の世界史的諸段階)の図表☆☆☆☆(181頁)などはそれよりさらに改訂されている。
巻末に人名と事項の索引があるのが画期的。
(なお、目次に訂正を記した紙が挟まっていた。印刷と発行の時間差とも関係するかも知れない。)
帝国の構造 中心・周辺・亜周辺 目次
第1章 ヘーゲルの転倒とは何か
1 なぜヘーゲルの批判か
2 マルクスによるへーゲル批判の盲点
3 生産様式論の限界
4 交換様式の導入
5 社会構成体と交換様式
6 前後の転倒
7 未来からの回帰
第2章 世界史における定住革命
1 遊動的狩猟採集民
2 定住の困難
3 互酬性の原理
4 定住革命
5 互酬制の起源
6 遊動性の二つのタイプ
第3章 専制国家と帝国
1 国家の起源
2 恐怖に強要された契約
3 帝国の原理
4 専制国家と帝国
5 帝国と帝国主義
6 ペルシア帝国とローマ帝国
7 ヨーロッパと帝国
第4章 東アジアの帝国
1 秦帝国
2 漢帝国
3 隋唐帝国
4 遊牧民の帝国
5 モンゴル帝国
6 モンゴル帝国以後
第5章 近世の帝国と没落
1 ロシア・オスマン・ムガール帝国 **
2 帝国の衰退
3 ヨーロッパの世界=経済
4 帝国の「近代化」
5 オーストリア・ロシア
6 中国
第6章 帝国と世界共和国
1 帝国と神の国
2 ヘゲモニー国家
3 歴史と反復
4 諸国家連邦
5 自然の狡知
6 自然と歴史
第7章 亜周辺としての日本
1 周辺と亜周辺
2 ヤマトとコリア
3 皇帝と天皇
4 官僚制と文字の問題
5 漢字と仮名
6 日本の封建制
7 徳川体制とは何か
8 明治維新以後
あとがき
索引
________________________________________
|1750〜 |1810〜|1870〜 |1930〜 |1990〜
|1810 |1870 |1930 |1990 |
______|______|_____|____ _|______|______
経済政策 |重商主義 |自由主義 |帝国主義 |後期資本主義|新自由主義
______|______|_____|______|______|______
資本 |商人資本 |産業資本 |金融資本 |国家独占資本|多国籍資本
______|______|_____|______|______|______
国家 |絶対主義王権|国民国家 |帝国主義国家|福祉国家 |地域主義
______|______|_____|______|______|______
世界商品 |繊維産業 |軽工業 |重工業 |耐久消費財 |情報
生産形態 |(マニュファ|(機械 | |(フォーディ|(ポスト・フォ
| クチャー)| 生産) | | ズム |ーディズム)
______|______|_____|______|______|______
b循環的な様相
__________________________________________
|~1750|1750〜|1810〜|1870〜|1930〜|1990〜
| |1810 |1870 |1930 |1990 |
_____|_____|_____|_____|_____|_____|______
ヘゲモニー|オランダ | |英国 | |米国 |
国家 | | | | | |
_____|_____|_____|_____|_____|_____|______
世界資本 |自由主義的|帝国主義的|自由主義的|帝国主義的|自由主義的|帝国主義的
主義 | | | | | |
_____|_____|_____|_____|_____|_____|______
世界資本主義の諸段階(『帝国の構造』181頁より)
探究 II:ノート
http://nam-students.blogspot.jp/2014/02/blog-post.html
NAMs出版プロジェクト: 康有為『大同書』:メモ
http://nam-students.blogspot.jp/2014/03/blog-post_14.html
2013年11月23日 知の現在と未来:メモ(岩波書店創業百年記念シンポジウム)☆☆☆
http://nam-students.blogspot.jp/2013/11/20131123.html
「資本主義の世界史的諸段階」:メモ
http://nam-students.blogspot.jp/2013/12/blog-post_6.html
http://www.iwanami.co.jp/moreinfo/0236930/top.html
☆
柄谷行人「中国で読む『世界史の構造』」
雑誌「現代思想」青土社 2013年5〜10月号:メモ
___________
|③ ⑤⑥| |
| | ② |
|④ | |
|_____①_____|
| | |
| ⑥ | |
| | |
|_____|_____|
著者が2012年9月から2カ月間にわたって中国の研究機関(中国の友人に頼まれ北京清華大学及び、北京哲学会、中央民族大学、社会科学院、上海大学)で『世界史の構造』の詳細な解説を行った記録。2013年5〜10月号、全六回。
5月号 第一回「『世界史の構造』について」
6月号 第二回「世界史における定住革命」
7月号 第三回「専制国家と帝国」
8月号 第四回「東アジアの帝国」
9月号 第五回「亜周辺としての日本(上)」
10月号 第六回「亜周辺としての日本(下)」
↓
第1章 ヘーゲルの転倒とは何か
第2章 世界史における定住革命
第3章 専制国家と帝国
第4章 東アジアの帝国
第5章 近世の帝国と没落@
第6章 帝国と世界共和国@
第7章 亜周辺としての日本
柄谷行人の発言 (現代思想2014年 3月号、討議;柄谷+丸川 より抜粋)
http://38870660.at.webry.info/201404/article_9.html
柄谷行人の発言
(現代思想2014年 3月号、討議;柄谷+丸川 <帝国・儒教・東アジア>より抜粋)
1、なぜ帝国か
2、互酬性を超える国家原理
3、二つの中国
4、帝国の原理
5、現代における儒教と帝国
1.なぜ帝国か
(1).私はもともと「世界史の構造」で、帝国について書きました。それはブローデルの見方にもとづくもので。世界=帝国と世界=経済を区別します。彼の考えでは、世界=経済は、世界=帝国の周辺、もっと正確に言えば、亜周辺に成立した。それが、ヨーロッパに世界=帝国が成立しなかったこと、それゆえ、世界=経済、資本主義市場経済が発展したことの理由です。資本主義的発展だけを見ていると、帝国はただ古い社会でしかありません。しかし、世界史の総体は、世界=帝国を見ないと分からないのです。
(2) 帝国の問題として考えたことがもう一つあります。それは第一次大戦のあと、旧帝国が崩壊したとき、帝国の輪郭を保ったのはマルクス主義者が革命を起こしたところだけだ、ということです。たとえば、ソ連や中国は言うまでもないし、それにユーゴスラビアも、ある意味でオーストリア帝国の遺産を継いでいます。なぜマルクス主義者がリードしえたのか。それは、民族よりも階級を重視したからですが、そもそも、彼らが旧帝国のなかで考えたマルクス主義者だったからです。かれらは民族問題をかんがえなければならなかった。マルクス自身は、民族問題について、あるいは、帝国の問題について考えなかった。彼にとって、帝国は政治的上部構造の一形態であり、また東洋の帝国は、たんに東洋的専制国家あるいはアジア的生産様式ということで片づけられる。
(3) 一九九〇年頃、ソ連が崩壊するとともに、それらが相継いで崩壊しました。ところが中国だけは存続した。それはなぜなのか。それを考えるようになったのは、数年前ですね。二〇一二年に汪暉が来日して東大駒場で一緒に講演したのですが、そのとき、私は帝国の問題について話しました。またその翌年に、「世界史の構造」の漢訳が出るのを合わせて、清華大学で講演したのですが、その問題がいつも頭にありました。汪暉さんや他の教授らが、私のクラスに毎回聴講にきましたし。しかし、私が中国の帝国に関して考えるようになったのは、中国の問題に関心があったからではない。中国の帝国の問題を考えないと、帝国のことが一般的に理解できないからです。
(4) 私がもともと帝国に関心をもったのは、そこに、近代国家(ネーション=国家)を超えるものがあると考えたからですね。ハンナ・アーレントはこう言っています。ローマ帝国には帝国の原理があった。近代の国民国家にはそれがない。だから、国民国家が拡大…
亜周辺| ヨ 亜周辺| |中心 | 朝 |
アテネ ____| | 西ヨーロッパ____| | | 鮮 |
/ア | ロ /バ | | 中国 | 半 |
古 ローマ / ナ 周辺| ッ / ル 周辺| | | 島 |
典 / リト | パ / 半カ | | / /
古 / ア __| 中 / 島ン __| |__/ベ /
代 /キ / | 世 /イ / | | ト /
社 | プ /ペルシア 社 | ベ /イスラーム |周辺 ナ / 日
会 | ロ |帝国 中心 会 |半リ |帝国 中心 |___ム/ 本
__|_ス__|____| __|島ア__|____| |亜周辺__________
ユーラシア西1 ユーラシア西2 ユーラシアの東
(中心) ペルシア帝国 |イスラム帝国 |中国
(周辺) キプロス・アナトリア |バルカン半島・イベリア半島 |朝鮮半島・ベトナム
(亜周辺)アテネ・ローマ |西ヨーロッパ |日本
=古典古代社会 | =ヨーロッパ中世社会 |
(湯浅 赳男 『 「東洋的専制主義」論の今日性—還ってきたウィットフォーゲル 』より)
http://yojiseki.exblog.jp/6583022/
ローマという中心の亜周辺にゲルマン,西ヨーロッパがあるとも考えられる(『世界史の構造』180頁他)。なお東ローマ帝国と西ローマ帝国の統治方法の差異は中心と亜周辺の差異として説明される(p93,3-6)。
これは上の図ではローマがイスラムに場を譲ることで説明される。
また、「圏外」には狩猟採集民が残った(『世界史の構造』161頁)。
上記は以前紹介した図だが、『帝国の構造』ではもうひとつ、モンゴル(中国)を中心にした図が必要になる。上記一番右の図の左半分と考られる。
亜周辺| 周辺 | 中心|
| | |
キエフ|ロシア | |
公国 | |モンゴル|
|オスマン|(中国)|
\トルコ \ |
\ \__|
\ムガール帝国|
\(インド)|
\____|
_____________|
亜周辺| 周辺 | 中心 | 周辺| 亜周辺
| | | 朝 |
キエフ|ロシア | モンゴル | 鮮 |
公国 | | (中国) 半 |
|オスマン| 唐→(宋)→元| 島 |
|トルコ \ / | 日本
\ イラン\____/ベ /
\ ムガール帝国 ト /
\ (インド) ナ /
\________ム_/
___________________________
近世以降ユーラシア全体 4-5,4-6,5-1,7-1
「元は中国の王朝であるよりも、モンゴルの世界帝国の一部」
(「現代思想」2013.08,『帝国の構造』123頁参照)
__________________________________________
|~1750|1750〜|1810〜|1870〜|1930〜|1990〜
| |1810 |1870 |1930 |1990 |
_____|_____|_____|_____|_____|_____|______
ヘゲモニー|オランダ | |英国 | |米国 |
国家 | | | | | |
_____|_____|_____|_____|_____|_____|______
世界資本 |自由主義的|帝国主義的|自由主義的|帝国主義的|自由主義的|帝国主義的
主義 | | | | | |
_____|_____|_____|_____|_____|_____|______
世界資本主義の諸段階(『帝国の構造』181頁,6-2より)
*
《カントの世界共和国という理念は、ルソーではなくライプニッツから来るものです。
さらにいえば、アウグスティヌスの『神の国』から来るものです。》(196頁,6-5)
世界=経済Cにおいてヘゲモンはあり得ても、もはや帝国AB(p129,4-6)はあり得ない。
(ヘゲモンは帝国主義的Bではなく、自由主義的Cだ)
生産力だけ見るとリニアに発展しているように見えるが、過去のヘゲモンを見れば歴史は循環
的だとわかる。そして地政学的には常に亜周辺に可能性Cがある。
ヘーゲルはヘゲモンに期待したが、カントは贈与Dに期待した。Dだけが今後起こりうるBCの
結託(戦争及び一国支配)を相対化し世界宗教Aを高次元で取り戻す。
国家 | ネーション
B | A 平
______|______
| アソシエ 等
資本 | ーション
C | D X
|
自 由
『世界史の構造』15頁、
定本『トランスクリティーク』425頁(文庫版415頁)参照。
国家 | ネーション
B | A
| 平
__________|__________
| 等
|
資本 | アソシエーション
C | D X
|
自 由
『世界史の構造』15頁、定本『トランスクリティーク』425頁(文庫版415頁)参照。
前近代文明の三重構造の地政学的型(一部のみ):
亜周辺|
アテネ ____|
/ア |
古 ローマ / ナ 周辺|
典 / リト |
古 / ア __|
代 /キ /中心|
社 | プ /ペルシア
会 | ロ | 帝国
__|_ス__|____|
ユーラシア西1
(湯浅赳男 『 「東洋的専制主義」論の今日性—還ってきたウィットフォーゲル 』より)
古代以降、ペルシア(p74,3-3)→(ヘレニズムp99,3-7)→ローマ(p99)→イスラム(p131,4-6)と
『帝国の構造』ではさらにもうひとつ、モンゴル(中国)を中心にした図が必要になる。
亜周辺| 周辺 | 中心 | 周辺| 亜周辺
| | | 朝 |
キエフ|ロシア | モンゴル | 鮮 |
公国 |_ | (中国) 半 |
|オスマン| 唐→宋x→元| 島 |
|トルコ \ / | 日本
\ イラン\____/ベ /
\/ ムガール帝国 ト /
\ (インド) ナ /
\________ム_/
___________________________
近世以降ユーラシア全体 4-4~6,5-1,7-1
「元は中国の王朝であるよりも、モンゴルの世界帝国の一部」
(「現代思想」2013.08,『帝国の構造』4-4,123頁参照)
b循環的な様相
__________________________________________
|~1750|1750〜|1810〜|1870〜|1930〜|1990〜
| |1810 |1870 |1930 |1990 |
_____|_____|_____|_____|_____|_____|______
ヘゲモニー|オランダ | |英国 | |米国 |
国家 | | | | | |
_____|_____|_____|_____|_____|_____|______
世界資本 |自由主義的|帝国主義的|自由主義的|帝国主義的|自由主義的|帝国主義的
主義 | | | | | |
_____|_____|_____|_____|_____|_____|______
世界資本主義の諸段階(『帝国の構造』6-2,181頁より)