http://www.freeassociations.org/
格差の広がりが競争のインセンティブを低下させるというようなことは
ジョセフ・E・スティグリッツ氏も著作に書いていたようにと思う。
ゴール |-----| スタートラインA
ゴール |------------------| スタートラインB
ゴール |--------------------------------------| スタートラインC
ゴール |--------------------------------------------------------------| スタートラインD
ゴールは同じでもスタートラインに差のあるようなこうした徒競走を行い、
1等には0点、2等には-5点、3等には-10点、4等には-15点が与えられ、
そのマイナスの値のぶんだけ次回に走る距離を増やされてゆく、
つまりペナルティを課される、という繰り返しゲームを考えてみてほしい。
このゲームが繰り返されるほど競争のインセンティブが低下していくであろう
ということは容易に想定できるはず。
こんなレース、どの選手も真剣に走るとは思えない。
教育ローンで消費に回らない
結婚しないから少子化でさらに消費しない
女性にはさらなる踏み絵がある
教育ローンで消費に回らない
結婚しないから少子化で将来的に消費が増えない
女性にはさらなる踏み絵がある
。生存部門(subsistence sector)は、伝統部門、非資本主義部門、農村、農業部門に言い換えられ、資本主義部門(capitalist sector)は、近代部門、先進部門(advanced sector)、都市、工業部門などの表現に変えて論じられることもある。二重経済の表わす意味には、農業部門―工業部門という単なる産業構造上の違いだけではなく、各々の部門において異なる経済原理が働いているという意味においても二重経済なのである。工業部門においては市場経済を基本として資本主義的メカニズムが作用し、農業部門においては慣習経済を基本として伝統的メカニズムが作用する。さらに農村―都市の関係でいえば、ルイスは、農村には農業だけではなく手工業や商業もあるし、都市は工業だけでなく農業も含むと考えていた。こうした理由から、ルイスは論文の中で農業部門―工業部門の図式を前面に出さなかったと思われる。
福留論文
実は、このモデル化のための入り口は、1954年の論文においてすでにルイスが与えてくれている。この部分はルイスが閉鎖経済における自分のモデル(すなわちモデルⅠ、モデルⅡ)をまとめるにあたって述べた部分で、余剰労働が存在しているにもかかわらず、なぜ資本家利潤を減じるほど実質賃金が上昇する可能性があるのか、その理由を列挙しているところであ(16)る。4つ挙げているが、そのうち最初の3つをここに掲示す る 。「1.もし資本蓄積が人口成長よりも速く進行しているとして、そしてその結果、生存維持部門の人口の絶対数が減っているならば、当該部門の1人当たり平均生産物は自動的に上昇する。その理由は生産が変化するからではなく、生産物を分ける口数が減っていくからである。しばらくしてその変化は実際に顕著なものとなり、資本主義部門の賃金は上昇し始める」
「2.生存維持部門に対する資本主義部門の相対的な規模が拡大するとき、(資本主義部門と生存維持部門が異なるものを作っているとして)それは資本主義部門にとって交易条件が悪化する方向に働くかもしれない。それゆえ資本家は労働者の実質所得を一定に保つために、生産物のより高い割合を労働者に支払うことを余儀なくされる」「3.生存維持部門は技術的な意味においてより生産的になるかもしれない。たとえば資本主義部門の技術を模倣し始めるかもしれないし、農民が新しい種を得たり、新しい肥料や輪作について耳にするかもしれない。彼らはまた、資本家の投資のいくつか(例: 灌漑、運輸施設、電力)から直接利益を受けるかもしれない。生存維持部門の(1人当たり平均の)生産性を上昇させるいかなるものも、資本主義部門の実質賃金を上昇させ、その結果、資本家余剰と資本蓄積率を減じるであろう」ルイスは特に上の2と3の理由を気にかけている。2をスキュラ(Scylla)、3をカリブディス(Charybdis)にたとえて農工均斉成長を説こうとしている。スキュラとは海に住む6頭の女性の怪物、カリブディスはイタリアのシシリィ島北部沖の渦潮のことで、between Scylla and Charybdis「進退きわまって」(または「前門の虎、後門の狼」)という慣用句にもなっている。理由の2は、資本主義部門の相対的拡大を問題とする一方、理由の3は逆に生存維持部門の発展を実質賃金の上昇の原因と考えている。つまり、生存維持部門、資本主義部門どちらへ偏った経済成長も、実質賃金が上昇する可能性があって、それゆえ両部門におけるバランス
ルイスは1880~1910年における日本の例をひいて、農民に対する地代と政府の課税が増大し、それによって農民の手元に発生した農業余剰を吸収し、それが資本主義部門の資本形成に利用されつつ、生存維持部門の農民(17)の賃金上昇を抑制したことを述べてい る 。この部分は、まさに3節で引用した大川一司・高松信清の推計や寺西重郎の推計が扱っている期間の日本である。さらに、旧ソビエトにおいても、日本と同様の政府による農業余剰の強制的移転によって、農業が工業化へ資金提供したことが述べられている。このソビエトの例は、明らかにプレオブラジェンスキーの社会主義(18)的原始蓄積論、スターリンの強制モデルを指してい る 。
ルイス・モデルでは、資本主義部門が生存維持部門から労働者を引きつけるためには、すくなくともそれぞれの部門の実質賃金が同価値を持つようにしなければならなかった。したがって生存維持部門での賃金上昇は、資本主義部門の労働者の賃金引き上げにつながる。しかし、生存維持部門での実質賃金は食料で測られている一方、資本主義部門の実質賃金は工業製品で測られており、両者の関連をすこし丁寧に見る必要がある。いま、(なんらかの価値尺度があるとして)両部門の「名目賃金」をWとする。食料価格をPA、工業製品価格PMとするとき、生存維持部門の実質賃金はW/PA、資本主義部門の実質賃金はW/PMと表すことができる。この2つはW/PM=(W/PA)(PA/PM)というふうに書きつなぐことができる。右辺第2項PA/PMは2部門間の交易条件であることがわかる。この式より、生存維持部門の実質賃金上昇は
たしかに資本主義部門の実質賃金の上昇につながっている。しかしさらに、交易条件PA/PMの変化の影響も受けることがわかる。この交易条件が、資本主義部門に対して不利に働くように、すなわち資本主義部門の資本家の利潤を圧迫するように動くとすればどうだろうか。交易条件PA/PMが上昇する場合、工業製品で測られた実質賃金は上昇し、資本家の利潤を減じる可能性がある。 このような交易条件の変化はいかにして生じるだろうか。ここでいま議論の俎上にあるルイス・モデルは2部門間に交易のあるモデルⅡであることに注意したい。生存維持部門は食料を販売し工業製品を購入する。資本主義部門は工業製品を販売し食料を購入する。つまり、生存維持部門の労働者も資本主義部門の労働者も、食料と工業製品の両方を需要し、消費するものと考えてよい。労働者は通常ミクロ経済学で仮定されるように、消費に関して最適化行動を取ると考えると、交易条件(PA/PM)とは、それぞれの財の需要量を決定する相対価格である。このように解釈すれば、交易条件の変化を労働者の消費行動を変える相対価格の変化と読み替えることが可能になる。 では、相対価格の変化は、労働者の消費行動の分脈
ルイスの「二重経済モデル」
労働の限界生産物[の価値]
(一人当たり)
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0 労働投入量(人数)M M1 労働
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20150204/277158/?P=4&mds 4/8
《吉川:なるほど。では、ここで少し経済学の議論をしてもいいですか。あなたは基本的に「ソロー
モデル」に依拠しています。資本の中身を分けずひとくくりにして経済成長を分析している「ワンセ
クターモデル」よりも、私は19世紀を理解するうえでは、アーサー・ルイスの提唱した「二重経済モデ
ル」(ルイス・モデル)の方が良いと思います。
これは途上国経済を分析するモデルで、経済を分析する時に経済を都市工業部門と農業部門に分け、
農業部門にある余剰労働力を使いながら工業部門が経済成長していくモデルです。ポイントは、実質
賃金が労働の限界生産に等しくないことです。
ソローモデルは全く信用できない
ピケティ:まず、ソローのワンセクターモデルはあまりいいモデルではないと思います。私のアプローチ
は、(農地、住宅など)複数のセクターに分けて資本をとらえています。それは『21世紀の資本』の113
ページ(注:英訳版、邦訳版では119ページの第3章「資本の変化」)から書いたのですが、重要なのは、
資本の中身の変化をとらえることです。》
ルイスの「二重経済モデル」
労働の限界生産物[の価値](一人当たり)
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0 労働投入量(人数)M M1 労働
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20150204/277158/?P=4&mds 4/8 (日経、要登録)
《吉川:なるほど。では、ここで少し経済学の議論をしてもいいですか。あなたは基本的に「ソロー
モデル」に依拠しています。資本の中身を分けずひとくくりにして経済成長を分析している「ワンセ
クターモデル」よりも、私は19世紀を理解するうえでは、アーサー・ルイスの提唱した「二重経済モデ
ル」(ルイス・モデル)の方が良いと思います。
これは途上国経済を分析するモデルで、経済を分析する時に経済を都市工業部門と農業部門に分け、
農業部門にある余剰労働力を使いながら工業部門が経済成長していくモデルです。ポイントは、実質
賃金が労働の限界生産に等しくないことです。…
ピケティ:まず、ソローのワンセクターモデルはあまりいいモデルではないと思います。私のアプローチ
は、(農地、住宅など)複数のセクターに分けて資本をとらえています。それは『21世紀の資本』の113
ページ(注:英訳版、邦訳版では119ページの第3章「資本の変化」)から書いたのですが、重要なのは、
資本の中身の変化をとらえることです。》
ルイスの「二重経済モデル」
労働の限界生産物[の価値](一人当たり)
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http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20150204/277158/?P=4&mds 4/8 (日経、要登録)
《吉川:なるほど。では、ここで少し経済学の議論をしてもいいですか。あなたは基本的に「ソロー
モデル」に依拠しています。資本の中身を分けずひとくくりにして経済成長を分析している「ワンセ
クターモデル」よりも、私は19世紀を理解するうえでは、アーサー・ルイスの提唱した「二重経済モデ
ル」(ルイス・モデル)の方が良いと思います。
これは途上国経済を分析するモデルで、経済を分析する時に経済を都市工業部門と農業部門に分け、
農業部門にある余剰労働力を使いながら工業部門が経済成長していくモデルです。ポイントは、実質
賃金が労働の限界生産に等しくないことです。…
ピケティ:まず、ソローのワンセクターモデルはあまりいいモデルではないと思います。私のアプローチ
は、(農地、住宅など)複数のセクターに分けて資本をとらえています。それは『21世紀の資本』の113
ページ(注:英訳版、邦訳版では119ページの第3章「資本の変化」)から書いたのですが、重要なのは、
資本の中身の変化をとらえることです。》
ルイスの「二重経済モデル」
労働の限界生産物[の価値]
(一人当たり)
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http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20150204/277158/?P=4&mds 4/8 (日経、要登録)
《吉川:なるほど。では、ここで少し経済学の議論をしてもいいですか。あなたは基本的に「ソロー
モデル」に依拠しています。資本の中身を分けずひとくくりにして経済成長を分析している「ワンセ
クターモデル」よりも、私は19世紀を理解するうえでは、アーサー・ルイスの提唱した「二重経済モデ
ル」(ルイス・モデル)の方が良いと思います。
これは途上国経済を分析するモデルで、経済を分析する時に経済を都市工業部門と農業部門に分け、
農業部門にある余剰労働力を使いながら工業部門が経済成長していくモデルです。ポイントは、実質
賃金が労働の限界生産に等しくないことです。…
ピケティ:まず、ソローのワンセクターモデルはあまりいいモデルではないと思います。私のアプローチ
は、(農地、住宅など)複数のセクターに分けて資本をとらえています。それは『21世紀の資本』の113
ページ(注:英訳版、邦訳版では119ページの第3章「資本の変化」)から書いたのですが、重要なのは、
資本の中身の変化をとらえることです。》
ルイスの「二重経済モデル」
労働の限界生産物[の価値](一人当たり)
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0 労働投入量(人数)M M1 労働
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20150204/277158/?P=5&mds
英国とフランスの資本の中身を1700年から2010年まで見渡すと、農地が極端に減って、一方で純外国資本(その国の市民が所有する外国資産と、外国がその国で所有する資産の差。国債も含む)が増えています。宅地も1950年代から増えています。つまり「資本」はひとくくりにできるものではなく、常に多層なのです。ワンセクターモデルは全く信用していません。資本は常にマルチセクター(複数のセクター)です。この本で示したのは異なるタイプの資本の蓄積モデルで、だからこそこんなに分厚くなったのです。
資本の中身は変化し続けます。しかもそれは重要な構造変化です。構造変化を描く方法の1つが、あなたのおっしゃったルイスの「二重経済モデル」です。これも興味深いですが、私はもっと一般的で分かりやすく、かつもっと多層な資本の変化を説明するモデルが必要だと思います。そうしなければ、資本所得比率の変遷や資本シェアの推移をたどることができません。
本で提示したかった新しい経済モデル
最近のデータを見れば、住宅価格が上昇していることが分かると思います。日本や英国、フランスにおける資本所得比率の上昇を理解するためには、セクター内ではなく、セクター間の代替性にも注目する必要があります。
また、日本や英国、フランスの過去数十年の資本所得比率や賃金所得比率の上昇は、ほとんどが不動産・住宅セクター、あるいはエネルギーセクターが要因になっています。資本集約的なセクターに注視する必要があるのです。私が開発しようとしたのは、こうした分析が可能になる、多層的な資本蓄積アプローチ(による経済モデル)なのです。
吉川:そうですね、ソローのワンセクターモデルでは、資本を議論する時に土地をあまり重視しません。しかも土地と機械設備すら区別をしない。しかしあなたはそれこそが極めて重要であると考えるわけですね。
ピケティ:大変重要です。ソローモデルは現実世界をあまりに単純化しすぎていて、大きな構造変化を捉えることができません。
吉川:それなら、私は、あなたがルイス・モデルを発展させればうまくいくのではないかと思いますけれど、どうですか。
ピケティ:いえ、ルイス・モデルよりもっと一般的なものにしたいのです。この本では、資本蓄積におけるマルチセクターモデルを押し出しました。ルイス・モデルの一種と呼んでも構いません。しかしルイス・モデルよりもっと分かりやすいと思います。
結局ケネーの経済表が一番わかりやすい
ルイス転換点
賃金
| 工業部門の 農業部門の
| 限界生産性 限界生産性
| \ /
生存水準の賃金|_____\____○______
| |\➡︎ /|転換点
| | \/ |
| | /\ |
|_____|/__\|______ 労働力
工業部門の雇用 過剰労働力 農業部門の雇用
http://www.rieti.go.jp/users/china-tr/jp/ssqs/070911ssqs.htm
付録:「ルイス転換点」とは
中国のような農業という伝統部門と工業といった現代部門からなる二元経済における経済発展を分析する際、経済学者
W. A.ルイス(1915-1990)が発案したモデル(彼の業績に因んで「ルイスモデル」と呼ばれている)が有効である。
これによると、多くの発展途上国においては、農村部における大量の余剰労働力が存在するため、工業部門にとって、
労働力の供給が実質上、無限大である。賃金が労働者の生存のために必要である最低水準に据え置かれることになるが、
工業部門と農業部門における雇用は、それぞれの限界生産性と賃金水準が一致するレベルで決められる(図)。外資
導入などによる工業部門での生産性の上昇は賃金上昇を招くことなく、農業部門の余剰労働力を吸収する形で(工業
部門、ひいては経済全体の)雇用の拡大をもたらす(図)。これに対して、完全雇用が達成される「ルイス転換点」
を超えると、工業部門において農業部門での雇用を減らす形で労働力を確保するために、賃金水準を上げなければ
ならないが、全体の雇用は増えない(図)。
参考:小野旭『労働経済学』168頁
カルドア(Nicholas Kaldor, 1908 - 1986):メモ
http://nam-students.blogspot.jp/2015/08/blog-post_23.html (本頁)
カレツキを受け継ぎ
2部門モデルを主張したカルドアは重要
経済成長と分配理論―理論経済学続論 (ポスト・ケインジアン叢書) 単行本 – 1989/2
N. カルドア (著), 笹原 昭五 (翻訳), 高木 邦彦 (翻訳)
服部論文参照
http://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/44778/1/10006782.pdf
参考記事:
http://markethack.net/archives/51573974.html
ルイスのターニング・ポイント(Lewisian Turning Point)にさしかかった中国
2010年06月11日09:34
ホンダの賃上げ闘争以来、「ルイスのターニング・ポイント(Lweisian Turning Point)」と呼ば
れる経済学の概念が脚光を浴びています。
ルイスとは[黒人最初の]ノーベル賞を受賞した経済学者、アーサー・ルイスを指します。
彼は1950年代に「Economic Development with Unlimited Supplies of Labor」という本を書き、
開発経済学に功績を残しました。
ルイスの主張は「無限に労働力の供給がある間は工員さんの賃金は余り上昇しない」というものです。
その無限の労働力は普通、農村から供給されます。
最初は農業より工業の方が生産性が高いので、工員さんに支払うお給料は農家の収入より
魅力的な水準に設定されます。
中国では当初、農村の労働人口が余っていたので都会に働きに出た方が有利な収入を得られました。
このような構図をルイスは二重経済モデル(Dual sector model)と呼んでいます。
農村はルイスの定義では生存維持的部門(伝統的部門=低賃金で無制限に近い労働供給が
ある)に相当します。
一方、深センなどの都会は資本家的部門(近代部門=大量の資本がある)に相当します。
生存維持的部門から近代的部門へ労働力が絶え間なく流入している間は一定の賃金水準で
労働供給曲線が無限に弾力的になります。
しかしルイスの理論によれば追加的労働力の投入は限界生産力や相対的賃金を押し下げる
働きがある一方、農家は残った人手が少なくなると農家での収入は上昇し、これにより賃金は
平準化されます。
するとある時点から農村から都市への労働力の流れが悪くなってしまうのです。
その場合、労働者へのインセンティブ(良い社員寮、良い賃金、より多い休日など)を増やさ
なければ雇用が確保できなくなります。また賃金はどんどん上昇しはじめます。これが「ルイス
のターニング・ポイント」と呼ばれる地点なのです。
この説明からもうかがえるように現在の中国で相次いで起こっている労働争議は極めてマクロ
経済的な現象であり、後戻りできない類の構造変化だと言えます。
>>7補足
ルイス転換点
賃金
| 工業部門の 農業部門の
| 限界生産性 限界生産性
| \ /
生存水準の賃金|_____\____○______
| |\→ /|転換点
| | \/ |
| | /\ |
|_____|/__\|______ 労働力
工業部門の雇用 過剰労働力 農業部門の雇用
http://www.rieti.go.jp/users/china-tr/jp/ssqs/070911ssqs.htm
付録:「ルイス転換点」とは
中国のような農業という伝統部門と工業といった現代部門からなる二元経済における経済発展を分析する際、経済学者
W. A.ルイス(1915-1990)が発案したモデル(彼の業績に因んで「ルイスモデル」と呼ばれている)が有効である。
これによると、多くの発展途上国においては、農村部における大量の余剰労働力が存在するため、工業部門にとって、
労働力の供給が実質上、無限大である。賃金が労働者の生存のために必要である最低水準に据え置かれることになるが、
工業部門と農業部門における雇用は、それぞれの限界生産性と賃金水準が一致するレベルで決められる(図)。外資
導入などによる工業部門での生産性の上昇は賃金上昇を招くことなく、農業部門の余剰労働力を吸収する形で(工業
部門、ひいては経済全体の)雇用の拡大をもたらす(図)。これに対して、完全雇用が達成される「ルイス転換点」
を超えると、工業部門において農業部門での雇用を減らす形で労働力を確保するために、賃金水準を上げなければ
ならないが、全体の雇用は増えない(図)。
https://www.rieti.go.jp/users/china-tr/jp/images/070911ssqs-f2.gif
https://www.rieti.go.jp/users/china-tr/jp/images/070911ssqs-f3.gif
参考:小野旭『労働経済学』168頁
う
経済学を変えた七人―栄光のノーベル経済学賞受賞者 単行本 – 1988/10
ウィリアム ブレイト (編集), ロジャー・W. スペンサー (編集), 佐藤 隆三 (翻訳), 須賀 晃一 (翻訳), 小川 春男 (翻訳)
ルイスのノーベル賞記念講演所収
ロンドン
ハイエク
アーサー・ルイス
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ウィリアム・アーサー・ルイス(Sir William Arthur Lewis、1915年1月23日 - 1991年6月15日)は、イギリスの開発経済学者。
1979年にアーサーはセオドア・シュルツとともにノーベル経済学賞を受賞した。アーサーは平和賞以外のノーベル賞を受賞した初の黒人である。1983年、アメリカ経済学会会長。
アーサー・ルイス
経済学者
生誕
1915年1月23日
大英帝国、セントルシア、カストリーズ
死没
1991年6月15日(76歳)
バルバドス,ブリッジタウン
国籍
セントルシアの旗 セントルシア
イギリスの旗 イギリス
研究機関
LSE(1938-1948)
マンチェスター大学(1948-1958)
ウエスト・インディーズ大学(1959-1963)
プリンストン大学(1963-1991)
研究分野
開発経済学
母校
LSE
影響を
受けた人物
アーノルド・プラント
実績
二重経済モデル
オーバーヘッド・コスト
取引条件モデル
世界経済史
受賞
ノーベル経済学賞(1979)
テンプレートを表示
ノーベル賞受賞者ノーベル賞
受賞年:1979年
受賞部門:ノーベル経済学賞
受賞理由:発展途上国問題の考察を通じた経済発展に関する先駆的研究を称えて
目次
生涯
編集
1915年1月23日 - 西インド諸島セントルシアに生まれた。
セントルシアの高校を卒業。
1934年(19歳) - ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)に入学。
1937年(22歳) - 理学士号を取る。
1938年(23歳) - LSEで教え始める。
英国政府の商務省と植民省で過ごした戦時勤務期間を終わり、LSEに戻る(1948年まで在籍)。
1940年代初期 - マンチェスター大学よりMAを得、次いでロンドン大学より博士号を得る。
1948年(33歳) - マンチェスター大学の経済学教授となる。
1953年(38歳) - 黄金海岸政府のコンサルタントを務める。
1955年(40歳) - 西ナイジェリア政府のコンサルタントを務める。
1957年(42歳)~1958年(43歳) - ガーナ首相の経済顧問となる。
1958年(43歳) - マンチェスター大学を去り、ウエスト・インディーズのユニバーシティ・カレッジの校長となる。
1962年(47歳) - そのカレッジを西インド諸島大学に拡張して、初代副学長になる。
1963年(48歳) - ナイトの爵位を授与された後、アメリカ合衆国に渡ってプリンストン大学の経済学教授となる。
1970年(55歳) - アメリカを離れ、カリブ開発銀行の頭取に就任した。
1973年(58歳) - プリンストン大学に戻る。
1979年(64歳) - ノーベル経済学賞を受ける(セオドア・シュルツとともにノーベル経済学賞を受賞)。
1983年(68歳) - 西インド諸島大学を退職。
1991年6月15日(76歳) - バルバドスのブリッジタウンにて没した。そしてアーサーの遺体は、アーサーの名誉を称えてその名が付けられたセントルシアのサー・アーサー・ルイス大学の構内に埋葬された。
業績
編集
アーサーの最大の業績は、発展途上国が抱える問題を説明するため、二重経済モデルと取引条件モデルを構築したことである。アーサーはこの「発展途上国問題の考察を通じた経済発展に関する先駆的研究」が称えられ、1979年にノーベル経済学賞を受賞した。
二重経済モデルは、1930年代の世界経済、特に周辺国の実情の分析から、古典派経済学の視点で構築された分析モデルであり、これは発展途上国の経済を資本家的部門(近代部門)と生存維持的部門(伝統的部門)とに分けて分析するものである。この理論は、農村の農業部門と都市の工業部門の共栄であり、発展途上国の経済発展のためには相互に有機的な関連を持つことが必要であると主張するものである。
また、アーサーが行った初期の産業組織論研究からは、オーバーヘッド・コスト(製品・サービス個々の単価に振り分けることの困難な、初期投資、固定的費用、税金といった全体に関わる諸経費)の概念が生み出された。
二重経済モデル
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詳細は「二重経済モデル」を参照
二重経済モデルは、経済を単純に2つの部門に分けて分析するモデルである。アーサーは発展途上国の経済を伝統的部門(低賃金で無制限に近い労働供給がある部門)と近代的部門(大量の資本がある部門)とに分けて分析する二重経済論を考案し、伝統的部門からの無制限労働供給によって、一定の賃金水準において労働供給曲線が無限に弾力的になると説明した。特に余剰労働力を用いたインフラ投資が鍵を握るとして、政府による積極政策の必要性を説いた。
二重経済論はその後、ジョン・フェイやグスタフ・レイニスらによって、新古典派経済学の視点からモデル化されている。
取引条件モデル
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アーサーは、先進国と発展途上国との間で取り交わされる取引条件の決定過程をモデル化した。アーサーは取引に参加する国を富裕国と貧困国の2グループに分類した上で、各グループの国はそれぞれ2種類の財(富裕国は食物と鉄鋼、貧困国は食物とコーヒー)を生産するモデルを構築した。そして、このモデルにおいて同一グループ同士では財の取引を行わないと仮定したとき、2つのグループ間の取引条件は農業部門の相対的な労働生産性によって決定されることを示した。
日本語翻訳
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『世界経済論』石崎昭彦・森恒夫・馬場宏二 訳、新評論、1969年。 - 参考文献:pp.279-288.
『国際経済秩序の進展』原田三喜雄 訳、東洋経済新報社、1981年9月。 - 原タイトル:The evolution of the international economic order。
『国際経済秩序の発展』水上健造 訳、文化書房博文社、2001年1月。ISBN 4-8301-0932-7。 - 原タイトル:The evolution of the international economic order。
『人種問題のなかの経済』益戸欽也・勝俣誠 訳、産業能率大学出版部、1988年10月。ISBN 4-382-04984-9。 - 原タイトル:Racial conflict and economic development。
関連項目
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ルイスの転換点
外部リンク
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ノーベル財団の公式ホームページ(英語)
アーサー・ルイス
ノート
リフレ女子 (@antitaxhike)
2020/08/06 17:25
財政のタガが外れている? ご冗談を。国民は、ムダな締め付けが強すぎて困っているんですよ。外れるものなら外してくれませんかねぇ。
企業融資について「将来性ある企業に限定して行うべき」という指摘も、その「将来性」が政府にはわからないのだから的外れ。話にならない。 reut.rs/33tc6Kt
https://twitter.com/antitaxhike/status/1291289379286081536?s=21
リフレ女子 (@antitaxhike)
2020/08/06 17:25
財政のタガが外れている? ご冗談を。国民は、ムダな締め付けが強すぎて困っているんですよ。外れるものなら外してくれませんかねぇ。
企業融資について「将来性ある企業に限定して行うべき」という指摘も、その「将来性」が政府にはわからないのだから的外れ。話にならない。 reut.rs/33tc6Kt
https://twitter.com/antitaxhike/status/1291289379286081536?s=21
https://jp.mobile.reuters.com/article/amp/idJPL4N2F81Q1?__twitter_impression=true
インタビュー:日銀はMMT実践中、タガはずれた財政 アクセル全開に懸念=吉川立正大学長
中川泉
[東京 6日 ロイター] - 吉川洋・立正大学学長は6日、ロイターとのインタビューで、新型コロナ感染症対策における財政出動の方向性は間違っていないものの、内容や拡大の度合いをみると、すでにタガがはずれつつあると指摘。今後、コロナ対応に加えて国土強靭化等一段とアクセル全開状態に突入していく危険性に警鐘を鳴らした。背景には日銀による財政ファイナンスがあり、金融政策は現在「MMT理論」を実践中だとの見方を示した。
<巨額の金融措置、リスクは国民の税金に>
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政府によるコロナ対策は相当な財政拡大をもたらしているが、吉川氏は財政出動の方向性自体は、グローバルに一斉に対応をとっており、間違っていない」としたが、総額200兆円を上回る規模感や対策内容には「いろいろと問題がある」と指摘。
最近でいえばGoToトラベルがやるべき対策ではないことは言うまでもなく、10兆円の巨額の予備費計上は「財政民主主義の1丁目1番地である国会審議を無視するもの」と批判した。
また「無利子無担保融資」の制度は、今回使い勝手をよくするために初めて民間金融機関を通じて実施されているが、5、6月の2カ月間だけでも信用保証会保証額(融資額)が10兆円を超え、大規模な公的融資となっている。
これについて吉川氏は90年代の金融危機時と同様に、企業のモラルハザードを招きかねないとみている。
「公的資金による融資だけに、むやみな融資の貸し倒れリスクは、民間銀行ではなく政府が負う。つまりは国民の税金でリスクを負っていることになる」と指摘。融資すべき対象は、「本来は、一時的な資金繰り困難に陥っている将来性ある企業に限定して行うべき」とした。
国民への10万円給付も、急ぎ給付する必要から「一律」としたものであることを考慮すれば、数か月を経過した現在、真に困窮している世帯を対象とした給付となるよう、基準作成が終わっていてしかるべき時期だと指摘。「もし同じような一律給付が2度あるようならそれは国の無策を露呈することになる」との見方を示した。
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<日銀の財政ファイナンス、コロナに加えて国土強靭化も>
財政拡大にプラスの状況を作り出しているのが長期金利の低位維持に貢献している金融政策だ。吉川氏は「金融政策はまさに財政ファイナンス状態にあり、MMT理論を実践している状態」との見方を示す。MMT理論は、財政を拡張しても自国通貨を発行する政府においてデフォルト(債務不履行)に陥ることはないとするもので、政府債務残高の拡大に問題はないという理論だ。
しかしコロナ禍の影響で税収は今後1-2年は回復しない見通しであり、歳出は逆に膨張を余儀なくされる環境となる可能性が高い。
例えば、「MMT理論が実践されている中では、コロナ対策に限らず、従来からの政策の目玉でもある国土強靭化の恒久化を求める政治的な動きが、今また強まっているようだ」と吉川教授は指摘。
こうした動きも踏まえ、「もともとGDPの2倍もの公的債務残高を抱える日本においては、債務膨張には非常に気を付ける必要がある」とみている。「長期金利は日銀の国債購入で当面は上がらないにしても、国債の格付け引き下げは、むしろ民間銀行の格付けに影響し、ドル調達コストに影響することになる」と警鐘を鳴らす。
ウィリアム ブレイト (編集), ロジャー・W. スペンサー (編集), 佐藤 隆三 (翻訳), 須賀 晃一 (翻訳), 小川 春男 (翻訳)
ルイスのノーベル賞記念講演所収