アダム・スミス Smith, Adam『国富論』1776

水とダイヤモンドのパラドックス
価格
| -_ /ダイヤモンドの供給曲線
| \  ̄-_/
ダイヤの\ / ̄-_
価格___\/E1  ̄-_ _- ̄水の供給曲線
| /\  ̄-_ _- ̄
水の__/__\_______ _- ̄_E2
価格 / \ _- ̄  ̄-_
| \_- ̄  ̄-_水の需要曲線
| _- ̄\  ̄-_
| _- ̄ ダイヤモンドの需要曲線
|___________________________
数量
水とダイヤモンド(逆?)のパラドックスは、需給曲線ではなく、限界効用関数で説明した方がいい。
効用関数
数量と満足度の関数(関係を表した数式)を効用関数といいます。上図のような数式や形で効用関数を表現できる人はピザを何枚もらっても、あたらしくもらったピザの満足度がはじめてピザをもらった時の満足度とまったく変わらないという人ですね。新しくもらったピザの満足度、というのをピザの限界効用といいます。「限界(marginal)」とは「追加的な」という意味です。だから、先ほどの表現を経済学風に変えると、「ピザの限界効用が変わらない人」という表現になります。このように、効用関数をどのような数式、形で表すかによって表現する人間像が変わります。では、あなたはピザを何度ももらう時に、いつも同じ嬉しさを感じるでしょうか?たとえば、ピザを3枚もらった後に新しく4枚目のピザをもらったときの満足度は始めにピザ1枚目をもらった時の満足度と等しいでしょうか?私は1枚目のときには空腹ですからとても嬉しいですけども、3枚食べた後にさらにもらうとなると、お腹がいっぱいですから、あまり嬉しくありません。このように追加的な満足度はだんだんと減少してくるということもあります。これを限界効用逓減の法則といいます。「逓減」とは次第に減少することです。では、限界効用逓減の法則を満たしている効用関数はどのように表せるのでしょうか。それは下の図のようになります。
U
|
| o o
| o
| o
| o
| o
| o
| o
| o
|________________x
0
数式では、
しかし、まれにですがもらえればもらえるほど、追加的な満足度が増加していくということもあるかもしれません。たとえば、お酒。1杯目はおいしいが、何倍も飲んでいると酔いが回って、さらにおいしく感じることがあるなどです。そのときには下の図のように、先ほどの効用関数とは逆になっているはずです。
数式では、
U=x^2
U=2^x-1 など
無差別曲線
無差別曲線(青線)
これに対し、2つの財の組み合わせの効用を分析するグラフに無差別曲線がある。ある消費者Aの効用について、横軸を財X1(例えばコーヒー)の消費量、縦軸を財X2(例えば紅茶)の消費量として1象限の空間を作るとそこにX1とX2の無数の組み合わせが存在する。
ここで例えばコーヒー1杯と紅茶2杯の組み合わせの効用と、コーヒー2杯と紅茶1杯の組み合わせの効用が等しいとするとこの2点を含む効用の等しいコーヒーと紅茶の消費量の組み合わせの曲線を引くことができる。これを無差別曲線という。コーヒーと紅茶の組み合わせの効用が無差別であるというところからこのように呼ばれる。一組の財の組み合わせについては効用の量は無数に存在するので、一つの財の組み合わせについて無数の無差別曲線を引くことができる。(青線)コーヒー1杯の価格と紅茶1杯の価格が明らかになると消費者Aの予算のグラフ(右下がりの直線=赤)を同じグラフに重ねることができる。ところで後述する「限界代替率逓減の法則」により一般に無差別曲線は右下がりで原点(X1=0,X2=0の点)に対して凸の曲線となるので、無数の無差別曲線の内1つは1点で予算のグラフと接することになる。この無差別曲線は消費者Aの予算を満たし、かつ効用が最大となる曲線であり、合理的な消費者はこの接点のコーヒーと紅茶の消費量の組み合わせを選択するであろう。
無差別曲線は、2財モデルの消費者行動分析においては基本的なツールとして用いられる。
無差別曲線
x2
|
| o
|
| o
|
| o
| o
| o
| o o
|________________x1
0
時間選好率
C2
|
| o
|
| o
|
| o
| o
| o
| o o
|________________C1
0
将来に消費することよりも現在に消費 することを好む程度を,時間選好率rate of time preferenceあるいは単に時間選好と 呼ぶ。
あらゆる商品は使用価値と交換価値という二重の性質をもっています(商品の二重性)。前者は実用性のことで、後者はある商品がほかの商品と比較してどの程度価値があるかを示したものです。例えば、ボールペンには文字を書く機能が付いており、これがボールペンの使用価値です。またボールペンは他の物と交換する機能が付いています。これがボールペンの交換価値です。
水とダイヤモンドのパラドックスは次のようにいいかえられます。水には使用価値があるのに交換価値がなく、ダイヤモンドはその逆だといえます。図に表すと以下の通りです。
| 使用価値 | 交換価値 |
一般的な商品 | ○ | ○ |
水 | ○ | × |
ダイヤモンド | × | ○ |
これまでは、水とダイヤモンドのパラドックスは使用価値によって交換価値を生み出す、つまり実用性が高いほど価格が高いという前提で議論されていました。しかし、この前提を否定して、交換価値を決定するのはモノの希少性と商品を一単位追加するときに得られる満足度(限界効用)であるとした人たちがいました。その中心人物が、ジェボンズ、メンガー、ワルラスの三人です。1870年代に三人はほとんど同時期にこの概念を提唱しており、この概念は限界革命と呼ばれます。
水は使用価値があるのに交換価値がないとしましたが、それは「一般的な水」だからです。一口に水といっても「一般的な水」と「具合的な水」があり、その2つは区別しなくてはなりません。ここでいう「一般的な水」とは、ほぼ無限に存在する水のことをいい、「具体的な水」とは、たとえばコップ一杯の水や砂漠の中にある少量の水などのことです。「一般的な水」はほぼ無限に存在するので、人々にそれほど満足度をもたらしません。一方で、砂漠の中に一杯の水があるとしたら、その水は人々に大きな満足度をもたらすでしょう。「一般的な水」は希少性と限界効用が低く、「具体的な水」は希少性と限界効用が高いのです。したがって、「一般的な水」は価格がつかず、「具体的な水」には価格がつきます。
水とダイヤモンドのパラドックスが起こる原因は、「一般的な水」と「具体的な水」が区別されてないことにあり、物の価値を決める要因は使用価値にあるのではなく限界効用にあるのです。ダイヤモンドは使用価値がほとんどないのに高価なのは、それ自身がもたらす限界効用が大きいからです。
メンガー表
Les Sciences Economiques et Sociales - La révolution marginaliste : Les grands thèmes
メンガー表については『市場社会の思想史―「自由」をどう解釈するか』 (中公新書) – 1999/3 間宮 陽介 (著) に詳しい。
「『国民経済学原理』*の第三章において、彼(メンガー)はゴッセンの第一法則*と第二法則**に相当する考えを次の表によって例示している。表の各列(ローマ数字によって表示)は欲望の種類を表し、各列の数値は、上から下に、消費量を一単位ずつ増やしていったときの限界効用を表している。
たとえば、Iは食物に対する欲望、Vは契煙の欲望、というふうに、それぞれ異なった種類の欲望を表す。食物の量を漸次増やしていくと、最初の一単位から得られる満足(効用)は10、次 の二単位目から得られる満足は9、以下、8、7、6、5、……と減少して十一単位目から得 れる満足は0、となり、満足はこれ以上は増えない。」
(49-50頁)
*
「人々が一つの、そして同一の楽しみを妨げられることなく満足させていくと、快楽の強度は連続的に低下し、そして最後には飽和状態に至る」
**
「ある財の限られた量をさまざまな用途に振り向けるとき、快楽の総量を最大にするためには、各用途の快楽の強度(限界効用)が等しくなっていなければならない」
ゴッセンに関してはウィリアム・スタンレー・ジェヴォンズ 『経済学の理論』 (近代経済学古典選集) 第二版序文に詳しい。
*
タイトル 国民経済学原理
叢書名 近代経済学古典選集
著者名等 メンガー/[著]
著者名等 安井琢磨/訳
著者名等 八木紀一郎/訳
出版者 日本経済評論社
出版年 1999.12
大きさ等 22cm 274p
NDC分類 331.71
要旨 理論的国民経済学は経済的行為にたいする実際的提案を取り扱うものではなく、人間が欲
望満足に向けて先慮的行為を展開するにあたってその基礎となる諸条件を取り扱うもので
ある。本書では、人間の経済的行動の結果を制約し、人間の意思から完全に独立した現象
の合法則性を対象としている。取り扱われた、国民経済学の一般的な諸理論を包摂する領
域は、その少なからぬ部分をドイツ国民経済学の最近の発展に負っており、本書で試みら
れた国民経済学の最高諸原理の改革は、ドイツ的篤学心の産み出した予備業績を基礎とし
て行われたものである。
目次
第1章 財の一般理論;
第2章 経済と経済財;
第3章 価値の理論;☆
第4章 交換の理論;
第5章 価格の理論;
第6章 使用価値と交換価値;
第7章 商品の理論;
第8章 貨幣の理論
索引
1999年邦訳
3:2a
81頁
にメンガー表
____
1:11:2
食物にたいする欲求は、各人において、人間の胃のせまい能力によって制限されているが…
“The demand for food is limited by the capacity of a man's stomach."
限界効用の考え方
フィッシャー1892で引用。邦訳30頁。
参考:
マーシャル, Alfred Marshall:メモ(付『経済学原理』目次)
_____
限界効用理論
さまざまな財を消費ないし保有することから得られる効用を考え、ある財をもう1単位だけよけいに消費ないし保有することにより可能になる効用の増加を「限界効用(英: marginal utility)」と呼ぶ。
ここで、ある一人の消費者が、一定の所得をさまざまな財の購入にどのように支出すればよいか、考慮している状況を考えよう。たとえば、米への支出をもう100クローネだけ増やした場合の効用の増加がコーヒーへの支出を100クローネだけ減少させたときの効用の減少より大きければ、コーヒーへの支出を減らして米への支出を増加させたほうが、より「得な」選択とされるだろう。
したがって、消費者がそのような行動を常にとるのだと仮定したならば、「それぞれの財の限界効用をその財の価格で割った値が、すべての財について等しくなっていなければならない」ということになる。これを「加重された限界効用均等の法則」ないし「ゴッセンの第2法則」と呼ぶ。この法則から、いろいろな財の価格と所得とがわかっているとき、消費者のいろいろな財の需要を説明することができる。
限界革命(げんかいかくめい、Marginal Revolution)とは、1870年代にウィリアム・スタンレー・ジェヴォンズ、カール・メンガー、レオン・ワルラスの3人の経済学者が、ほぼ同時に、かつ独立に限界効用理論を基礎にした経済学の体系を樹立し、古典派経済学に対して近代経済学を創始したことをいう。
パラドックスという言葉が大げさなのはその通り
ジェボンズのパラドックスという(石炭の消費量に関する)パラドックスは別にあるから
ただし「一般的な水」と「具体的な水」とを区別したとしても
スミスのように使用価値から交換価値を説明する限りこの問題はパラドックスであり続ける
水はいずれ希少になるという予測を理性は取り得る(はずだ)から
ここで効用、さらに限界効用という考え方が必要になる
ワルラス、ジェボンズ、メンガー、さらにマーシャルよりも
フィッシャーによる比という概念が重要
比(対他的ではなく自己内のそれ)という概念によって初めて理性的なものとして限界効用が定位される
参考:
スミス国富論1:4
《水ほど有用なものはないけれども、それはほとんどなにも購買しないだろう。どんな
ものも、それと交換に手にいれることは、ほとんどできないのである。その反対に、
ダイアモンドは、ほとんどなんの使用価値ももたないけれども、非常に大量の他の
財貨が、しばしば、それと交換にえられるであろう。》
スミス国富論1:11:2
《食物にたいする欲求は、各人において、人間の胃のせまい能力によって制限されている…》
“The demand for food is limited by the capacity of a man's stomach."
(フィッシャー1892が引用)
スミスは自分で答えを出していた。