NAMs出版プロジェクト: ゲンロン4,2016浅田彰インタビュー
他方では 、人間がプログラム総体を上から完全に統御することは可能でも必要でもなく 、
かつてマーヴィン ・ミンスキーが 『心の社会 』 (原著八五年 )で言ったように 、複数の
計算モジュールを並列して走らせておいてもけっこううまくいく 、あるいはうまくいくものが
遺伝的に選ばれていく 、振り返ってみれば 、それはプログラミングに限った話ではなく 、
人間社会そのものが人間の意識や統御の外にある物たちを含んだネットワークの複合体として
動いてきたのだ 、と 。ブルーノ ・ラトゥールのアクター ・ネットワーク論なども 、荒っぽ
く言えば 、そういう流れのなかに位置づけられるでしょう 。これは各論としては具体的な
プラグマティズムになるのだけれど 、さきに述べた数学的形而上学と背中合わせになって
おり 、総じて現代における反人間主義ないし非人間主義を形作っているように思います 。
新カント派から構造主義にいたる流れにおいて 、人間が世界に投げかけるフィルターのなか
で 、とくに言語が注目され 、主体の意識よりそれに先立つ言語的構造を重視する 「言語学的
転回 」が生じた 。それは反主体主義であり 、さらに言えば反人間主義だった 。しかし 、
コンピューター時代になると 、言語そのものがすでにあまりに人間的なものと意識される
ようになり 、それを超えるさらにラディカルな反人間主義へと 「思弁的転回 」が生じたわけ
でしょう 。そのようにして人間を相対化するという契機は哲学的にみて重要です 。ただ 、
「言語学的転回 」においてすでにそうだったように 、 「人間は死んだ 」と宣言すると 、
なんだかラディカルなことを言った気分になって高揚するという一種幼児的なロマン主義が
あって 、 「思弁的転回 」の流行もそれと無関係ではないのではないか 。そういうロマン主義
から S F的な新種の神学に飛びつくというのは 、ずいぶんナイーヴなふるまいのように思え
ます 。
─ ─実際に最近では 、本来ならば政治的メッセージを持つはずのテロ行為についても 、
世界というシステムが存続するうえで半ば不可避に発生するノイズのようなものとして捉えら
れ 、セキュリティの論理で統計的に処理されているきらいがあります 。ノイズをいかに抑える
かという話は盛んにされるとしても 、テロリストや被害者たちの物語を作り 、そこに感情移入
するといった文学的作業への関心はどんどん薄れている 。
浅田 まったくそのとおりで 、神学 (テロリストの宗教的原理主義のみならず超人間的システム
論も含め )とプログラミングが勝利し 、もはや文学の入る余地はなくなったということでし
ょう 。しかし 、個々の人間は 、幻想にすぎないとしても 、主観的な意識を持って行動する
わけで 、それを理解しようとすれば 、やはりカント主義的に考えるしかないんじゃないか 。
われわれの時代には 、人工知能といってもやはりトップダウン型のモデルを考えていた 。
たとえば自動翻訳を考えるにしても 、ノーム ・チョムスキーの生成文法のように S (主体
=主語 )から分岐していく構造を分析的にあきらかにしたうえで 、個々の単語を置き換えると
いった手順を考えていた 。しかし 、普遍性を持つ構造を定式化しようとしてもなかなかうまく
いかず 、他方で計算力や記憶容量が飛躍的に伸びていくと 、チェスや将棋と同様 、言語で
あっても 、膨大なサンプルを集めてコンピューターに学習させれば 、こういうゲームの局面
ではこういう手を選べばいい 、こういう会話の場面ではこういう言葉を選べばいいということ
が 、かなり的確に判断できるようになる 。量が質に転化した ─ ─というより 、量だけでか
なりのところまで割り切れるようになったわけです 。プラグマティックにはそれで十分なの
で 、そもそも深層構造などという 、あるのかないのかわからないものにこだわる必要はないと
いうことになるんですね 。たしかに 、人間が将棋を指したり話したりしているときも 、実際
はかなりのところまで脳が過去の棋譜や会話のデータを適当にアレンジして自動的に反応して
いるだけなのかもしれない 。しかし 、人間の意識においては 、われわれはあくまで主体的に
考えてゲームをプレイし 、発話しているつもりなので 、社会システムの制御だけが目的なら
そんなものは無視していいのかもしれないとしても 、個々人に関する限り 、自然科学的な
「説明 」で割り切るのではなく内的な 「了解 (理解 V e r s t e h e n ) 」がどうしても必要で
しょう ─ ─ディルタイや新カント派の古臭い概念をあえて使って言えば 。
心の社会
著者名等 マーヴィン・ミンスキー/著
著者名等 安西祐一郎/訳
出版者 産業図書
出版年 1990.7
大きさ等 22cm 574p
注記 The society of mind./の翻訳
NDC分類 141
件名 心理学
件名 思考
件名 知能
要旨 心はどうはたらくのか?大昔から問われてきたこの問題に対して、『心の社会』は革命的
な回答を与えている。本書は、ミンスキー教授が長い間練りに練った、人間の知能につい
ての新しい考え方を示したものである。ミンスキー教授は、心とは、「一つひとつは心を
持たない小さなエージェントたちが集まってできた社会」と提示する。本書の内容は、子
どもの描く絵から自己意識に至るまで、あるいは、何かを否定するような思考のもつ力か
ら日常の思考におけるユーモアの役割に至るまで、多岐にわたっている。また、わかりや
すい図がたくさん挿入されており、読者の想像力を直接かきたてるような、いわば心の世
界への冒険物語としても読むことができる。
目次 心の社会;全体と部分;争いと妥協;自己;個性;洞察と内省;問題と目標;記憶の理論
;要約すること;パパートの原理;空間の形;意味の学習;見ることと信じること;定式
化の直し;意識と記憶;感情;発達;推論;言葉と考え;文脈とあいまいさ;トランスフ
レーム;表現;比較;フレーム;フレームアレイ;言語フレーム;検閲エージェントと冗
談;心と世界;思考の領域;心の中のモデル
1 Comments:
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朝日新聞
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時事通信
東洋経済オンライン
日刊ゲンダイ
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http://agree.2ch.net/test/read.cgi/mango/1513847945/
禁止ワードに追加された原因はまだ判明していません。
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★1が立った時間 2017/12/25(月) 13:39:51.75
前スレ
https://asahi.5ch.net/test/read.cgi/newsplus/1514176791/
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