経済計算論争 ランゲ、そしてカレツキ
http://nam-students.blogspot.jp/2015/12/keynes-kalecki-correspondence-1937.html
(五)B點はここでは體系が、若し資本設備が變動しないならば(このことは上で不變であると假定されてきた)、何等の
變動をも持たないと云ふ意味における一つの條件均衡を表示する。しかし乍ら、投資は一般に魔損の水準に迷しない故
に資本設備は變動し、また、以下で詳細に證示されるであらう如く、「條件均衡」の狀態は永久的なものではあり得ない。
ケインズの理論の單純模型を構築した多くの學者達(註二)は彼等の注意をB點によって表示される均衡に集中させてきた
のであるが、とのことは彼等が投資決定と投資とを區別しなかったことに起因する。從つて彼等はB點によって表示
された狀態とは異った狀態にある體系にまでは想到することができなかった。
更に彼等は資本設備の變動の影響を考察しなかったことも附言しなければならない。
(註二)
J.E. Meade, “A Simplified Model of Mr. Keynes's System," Review of Economic Stirlies, February 1937.
J. R. Hicks, "Mr. Keydes and the Classics," Econometrica, April 1937.
Oskar Lange, " The Rate of interest and the Optimum propensity to Consume" Economica, February
1938.
ケインズ雇傭と賃銀理論の研究 (121,123頁より)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2386038
著者カレッキ 著 増田操 訳
Essays in the Theory of Economic Fluctuations Kalecki 1939(後述)
経済計算論争
けいざいけいさんろんそう
ところがミーゼスのこの問題提起は、理論的にはすでに1908年にイタリアの経済学者バローネの論文「集産主義国家における生産省」によって解決済みであることが、その後明らかにされた。バローネは、生産手段の公有制のもとでも中央計画当局(生産省)が各種の財や用役に一種の計算価格を設定し、これに市場価格と原理的に同一の機能を果たさせることが可能であり、したがって社会主義のもとでも資源の合理的配分が可能であることを数学的に証明していたのである。そこで、ミーゼスと同じ立場にたつイギリスの経済学者ロビンズとハイエクはこの点を考慮に入れて、1930年代なかばに、社会主義経済においてそのような計算価格が設定可能であることが理論的に証明されたとしても、現実問題としてそうするためには中央計画当局は膨大な量の統計資料を収集・加工し、それに基づいて数十万(ハイエク)ないし数百万(ロビンズ)の連立方程式を解かねばならないから、それは実行不可能であると主張した。
これらの議論に反論しつつ社会主義のもとでの経済計算可能論を主張したのは、アメリカの経済学者F・M・テーラー、A・P・ラーナー、およびポーランドの経済学者で当時滞米中のO・R・ランゲらで、うちもっとも有名なのがランゲの論文「社会主義の経済理論」(1936~37).★であった。ランゲはこの論文において、第一に、社会主義のもとでも合理的な資源配分を実現するためには、価格をシグナルとして個々の経済主体の意思決定が行われるという意味での「価格のパラメータ機能」が保持されなければならないが、その際の価格はかならずしも市場価格である必要はなく、技術的代替率に基づく計算価格であれば十分であること、第二に、その実際的解決の仕方として、企業に自律性(生産上、販売上の自由)を与え、中央計画当局は任意の計算価格をこれらの企業に伝達し、その結果生ずる需給の不均衡に応じて計算価格を逐次修正してゆけば、価格のパラメータ機能が果たされうることを明らかにした。このランゲの見解は、「競争的解決」とか「市場社会主義」とかよばれたが、要するに、ソ連で集権的計画経済システムが成立した1930年代に早くも、計画経済と市場メカニズム(価格メカニズム)のフィードバック機能との結合を内容とする分権的社会主義経済モデルを提唱したものであり、ランゲの見解は60年代以降の東欧やソ連における市場メカニズム導入論(それは結局、失敗に終わったが)に大きな影響を与えた。[宮鍋 幟]
『A・F・V・ハイエク編、迫間真治郎訳『集産主義計画経済の理論』(1950・実業之日本社) ▽O・ランゲ、F・M・テーラー著、B・E・リピンコット編、土屋清訳『計画経済理論』(1951・社会思想研究会出版部) ▽W・ブルス著、鶴岡重成訳『社会主義経済の機能モデル』(1971・合同出版)』
計画経済理論―社会主義の経済学説 (1951年), 1951
テーラー (著), ランゲ (著), 土屋 清 (翻訳) : 198ページ
出版社: 社会思想研究会出版部 (1951) ASIN: B000JBFYPG 発売日: 1951
《若し価格のパラメーター機能が保有されれば、同じ客観的価格体系が社会主義経済においても得られる。》「社会主義の経済理論」95頁
1937. "On the Economic Theory of Socialism, Part Two," Review of Economic Studies, 4(2), pp. 123–142.
1938. On the Economic Theory of Socialism, (with Fred M. Taylor), Benjamin E. Lippincott, editor. University of Minnesota Press, 1938.
『政治経済学』でランゲは限界効用学派を快楽主義、主観主義的として切り捨てている。
歴史学派にも歴史的発展理論を欠いていると厳しい批判をしている。
『計量経済学』に関しては投入産出表を丁寧に説明している。
カレツキとランゲは親しかった…
x資本主義経済の動態理論 (ポスト・ケインジアン叢書 (6)) 単行本 – 1984/12
M.カレツキ (著), 浅田統一郎 間宮 陽介
2件のカスタマーレビュー
ケインズより先に有効需要の原理を見つけた男
投稿者 θ トップ1000レビュアー 投稿日 2008/3/31
形式: 単行本
有効需要の原理といえば誰もがケインズを思い浮かべるだろう。
だが、ケインズよりはやく有効需要の原理を見つけたのが、このカレツキなのだ。
ケインズの主著『雇用、利子および貨幣の一般理論』と比べてみて、本書は簡潔で明晰である。
ケインズのが難解でまた内容が整理されていない(当のケインズが理解していなかったとさえ言われるくらいだ)のに対し、本書は数式を使って意味と論法を明確にし、内容もまとまっている。
そういう意味では、ケインズよりも先に本書を読んだほうがいいかもしれない。
また、ケインズ本が難解で読めない、あるいは時間がないという人には、本書を読んでいただきたい。
本書は、前半が利潤、所得、投資といった内容で、ケインズと重複するところが多い。
後半は、経済変動の循環の話であり、これもまた興味深い。
最後に目次を記しておく
第1部 独占度と所得の分配
費用と価格@
国民所得の分配@
第2部 利潤の決定と国民所得の決定
利潤の決定要因@
利潤と投資
国民所得の決定と消費の決定
第3部 利子率
短期利子率
長期利子率
第4部 投資の決定
企業者資本と投資@
投資の決定要因@
統計的説明
第5部 景気循環
景気循環(のメカニズム)@
統計的説明
景気循環と衝撃
第6部 長期経済発展
経済発展の過程
発展要因
@が日本経済評論社版に新訳で再録。