官庁訪問までに専門記述問題をしっかり復習しておきましょう!
みなさん、こんにちは。院卒区分受験の方は、政策課題討議&人物試験の準備に勤しんでいる方も多いことと思いますが、学部生については、CIMA生全員、人事院面接を終えました。あとは、最終合格発表までのんびり…なんて考えてたらダメですよ!総合職試験は、最終合格後が本当の試験なので、前回のブログにも書いたように、しっかり官庁訪問対策をしておきましょう。
その官庁訪問対策ですが、皆さん(特に経済区分の方)、専門記述問題をほったらかしにしてませんか?今年の経済区分専門記述は、財政学で「物価の財政理論(FTPL)」、経済政策で「金融政策の時間的非整合性」というように、現実の日本経済を意識した問題が出題されました(後者については数年前にマクロ経済学で出題されていますし、択一試験では頻出論点ですが…)。
今年の本試験について、CIMAアカデミーでは財政学の「地球温暖化と財政」、経済政策の「金融政策の時間的非整合性」を的中させたとブログやtwitterで告知してきました。2次試験直前ゼミで受講生に出した予想問題を掲載しますので、本試験問題を持っている方は照らし合わせてみて下さい。同じ問題的中でも、択一の肢1つが類似しているとかよりも、記述の大問の最初から最後までの流れが類似している方がはるかに重要だということがわかってもらえるかと思います。
【財政学】
【経済政策】
もちろん、今回のブログは、記述問題的中を誇ることが目的ではありません(就職試験ですので、常に先のプロセスを見据えましょう)。財政学記述のもう一つの大問である「物価の財政理論(FTPL)」についてです。完答出来なかった人が大半でしょうけれど、官庁訪問で経済官庁を訪問する予定のある人は、試験問題をもう一度しっかり見直して、試験問題のメッセージを掴みとる努力をしてください(官庁訪問って面接の受け答えの良し悪しでのみ評価してるんじゃないですからね!)。
FTPL(もしかしたら「シムズ理論」といった方が通りがいいかもしれませんね)は、1990 年代から2000 年代にかけて確立していった理論ですが、我が国では、いわゆるアベノミクスへの期待とともに関心が高まったように思われます。脱デフレに関しては、2013年以降、質的・量的金融緩和政策が実施されていますが、目標とする2%の物価上昇率には現在に至るまで届いていません。さらに近年、「自国通貨を発行して借金ができる国は財政赤字を増やしても心配ない」という主張で注目を集める現代金融理論(MMT)を理論面から正当化しようとする人もおり、こうした事情が我が国におけるFTPLへの関心の高さの背景であると思われます。ただし、MMTとFTPLは全く異なります。詳細な説明はここでは省略しますが、宮尾龍蔵・東京大学教授(マクロ経済学記述の試験委員です)による日経新聞経済教室(2019年6月3日付)★を読むことをおススメします。
話をFTPLに戻します。先日の2次試験を受験した人は試験問題を傍らにおいて、ブログを読んでください。問題を見れば明らかですが、従来の試験で財政問題について理論面から問われる場合、政府の予算制約式(たまに家計の予算制約式も登場しますが…)だけでしたが、FTPLでは基本的に政府と中央銀行の予算が統合した統合予算という考え方になります(本問もそのようになっています)。
問題文にもあるように、統合政府では課税だけでなくシニョレージ(通貨発行益)も財源調達手段と見做されます(債務ではない!)。通貨発行益とは、中央銀行(日銀)が貨幣を発行して国債を買うことにより、節約できる金利を意味しますが、中央銀行が受け取る国債の金利が単に国に返っていく状況を考えてもらえればいいかと思います。ただし、問題では「通貨の増発により物価水準が…変化する」とあるので、各期の物価上昇率π1、π2が満たすべき等式の導出に際して、フィッシャー方程式も考慮することを忘れないでください。そうすることで小問⑤の等式が得られるだけでなく、⑥の答えである「π2上昇」も容易に確認できます。
なぜ、そんな結果になるのかというと、本問では実質利子率、各期の課税および政府支出は定数となっています。この状況でπ1を引き下げる政策は、統合政府の予算制約式において通貨発行益の減少を意味します。そして、式より国債発行増が期待されます。こうした債務先送りが将来における通貨発行益の増加、ひいては将来の物価上昇率(π2)の上昇へとつながります。この小問は、今の日本経済のことだと私は理解しています。すなわち、マイナス金利や長短金利操作など、金融政策は超低金利誘導策を実施している一方で、債務返済は先送りをしていることで、現在のデフレ状況と将来のインフレ要因を形成してしまっている…。
いずれにせよ、FTPLにおいて物価水準は、統合政府の予算制約式の帳尻が合わせられるように決まるというわけです。こうした、中央銀行が公債を購入し通貨発行益を増やすことにより、結果として物価が上昇する、すなわち、財政当局ではなく中央銀行が通貨発行益を出すという形で帳尻合わせをするというメカニズムこそが、ウォレス=サージェントのいう「マネタリストの不愉快な算術」なのです。
これで小問⑦までの解説および答えが終わりました。受験生の多くは、「財政再建を(一時的に)しないとコミットすることにより、脱デフレが実現する」と読み解いたのかもしれません。この辺りが、もしかしたらMMTとFTPLをセットにして基礎的財政収支を重視する人への攻撃材料になっているのかもしれません。ですが、そもそも両者は全く異なるものですし、ここまでの話をきいてくれれば、FTPLのカギになっているのは、人々の期待形成であるということは明らかです(統合政府の予算制約式にフィッシャー方程式を忘れないで!と書いたのはそのためです)。問題は、人々の期待ってそんな簡単にコントロールできるものなのか?という点です。2013年以降、あれだけ大規模な質的・量的金融緩和政策が実施されていますが、人々の期待形成は中央銀行の想定通りとは到底言えません。金融政策で上手くいかないものが財政政策ならば上手くいくなんて、私の口からはとても言えません。それに、モデル式の通りもし期待の変化により将来の物価が上昇に転じたとき、今度はどうやってコントロールしていくのでしょうか…。
最後の小問⑧「短期的にも長期的にもインフレを抑制するには政府はどういった政策を実施するべきか」という質問は、まさに不安を象徴しているように思われます。式およびこれまでの小問の流れを踏まえれば答えはもう明らかですね。財政収支健全化こそが、長期に渡るインフレ抑制すなわち物価コントロール手段に他ならない、ということです。近年、注目されているFTPLですが、決して「財政再建を棚上げしても大丈夫!」なんていう無責任な理論なんかではないということです。打ち出の小槌を見つけ出したような気になっている人には、この記述問題を解いてみてほしいと思います。キーワードだけで全体像を分かった気になっている人の頭を冷やすに十分意義のある問題です。
私が何故、経済官庁を訪問する予定ならばこの問題をちゃんと復習しておくべきだ、と言っていたのかブログを最後まで読んでくれた方にはわかってもらえたと思います。専門記述問題、特に財政学や経済政策は例年、出題者のメッセージ性が強い傾向にあります。「試験終わったからもう関係ない!」では、様々な経済事象に対して問われた時に何も答えることができなくなりますよ。官庁訪問はパンフレットの丸暗記力を試す場ではないことを忘れずに!それでは、また。
5 Comments:
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目次
はじめに i
第1章 GMM
1 モーメント法(Method of Moments)
2 GMM推定量の考え方
3 GMM推定量の一致性と漸近的正規性
4 最適GMM推定量
5 GMMによるVasicekモデルのパラメータ推定
第2章 VARモデル
1 VARモデルの推定とインパルス反応分析
2 政策ショックと構造VARモデル
3 ベイジアンVAR
4 VARモデルの分析例:金融政策効果の実証
第3章 DSGEモデル
1 DSGEの基本モデル
2 DSGEモデルの解法
3 シミュレーション分析
4 カルマン・フィルタ
5 ベイズ統計学の基礎
6 Markov Chain Monte Carlo法
7 MCMCによるDSGEモデルのパラメータ推定
8 より進んだトピック:DSGE-VARモデル
第4章 ボラティリティ分析
1 ARCHモデル
2 GARCHモデル
3 拡張モデル
4 多変量GARCHモデル
第5章 質的選択モデルとトービット・モデル
1 質的選択モデル
2 トービット・モデル(途中打ち切り回帰モデル)
3 サンプル・セレクション・バイアス
第6章 ダイナミック・パネル分析
1 ダイナミック・パネル分析とは
2 VAR計測上の問題
3 モデル定式化の問題
4 Arellano-Bond操作変数について
5 その他の推計方法
6 時系列分散不均一性に関して
7 実証例:Dahlberg and Johanssonによる地方政府行動の分析
8 Anderson-Hsiao推定と実証
9 まとめ
第7章 最適化アルゴリズム
1 非線形推定の具体例
2 数値微分
3 最適化アルゴリズム
4 EViewsの非線形推定法と最適化アルゴリズム
5 非線形最適化アルゴリズムの応用
索 引
著者紹介
EViewsで学ぶ実証分析の方法
著者名等 北岡孝義/著 ≪再検索≫
著者名等 高橋青天/著 ≪再検索≫
著者名等 溜川健一/著 ≪再検索≫
著者名等 矢野順治/著 ≪再検索≫
著者等紹介 【北岡】神戸大学大学院博士後期課程中退。広島大学経済学部教授を経て、2000年よ
り明治大学商学部教授。専門は金融論。著書「EViewsで学ぶ実証分析入門基礎編・
応用編」「証券論」。
著者等紹介 【高橋】米国ロチェスター大学博士課程修了。カナダ・サスカチュワン州立大学経済学部
講師等を経て、1996年より明治学院大学経済学部教授。専門は成長理論、動学ゲーム
理論、公共経済学。著書「EViewsによるデータ分析入門-計量経済学の基礎からパ
ネルデータ分析まで」など。
出版者 日本評論社
出版年 2013.12
大きさ等 22cm 312p
NDC分類 331.19
件名 経済分析‐データ処理 ≪再検索≫
要旨 最新のデータ分析の手法を網羅!GMM、ベイジアンVAR、DSGE、動学的相関係数
(DCC)、ダイナミック・パネル等をわかりやすく解説。EViews Ver.8に
完全対応!
目次 第1章 GMM;第2章 VARモデル;第3章 DSGEモデル;第4章 ボラティリ
ティ分析;第5章 質的選択モデルとトービット・モデル;第6章 ダイナミック・パネ
ル分析;第7章 最適化アルゴリズム
内容 EViewsを操作しながら、より発展的な実証分析の手法を学ぼう。GMM、ベイジア
ンVAR、DSGE、動学的相関係数、ダイナミック・パネルなどをわかりやすく解説。
EViews Ver.8に完全対応。
ISBN等 4-535-55736-5
以下同様に,第2式のインフレ率πrの式,第3式のマネタリーベースれの式を表すと,π′=[3つの変数のラグで説明される頂]+zπ,′%′=[3つの変数のラグで説明される頂]+z″″となります。各式のカギ括弧内は(A3.2)式のカギ括弧と同様の表現が入り,“πル%zノはそれぞれの誤差項です。以上の3つの式をまとめて表現すると,最終的に,ベクトル自己回帰モデルは,Xr=41Xr lキスメ_2+%`は3.3)と表されます。(A3.1)式の1変数の自己回帰モデルと見た目にはまったく同じですが,ベクトル自己回帰モデルは,3つの変数をそれぞれの過去の値で説明する式体系となります。るは3つの変数からなるベクトル,ム,42は3行×3列の係数の行列,“′も3つの誤差項(ら`,%π,`,%",Dからなるベクトルになります。(3)構造ベクトル自己回帰モデルの導出ベクトル自己回帰モデルによく似た表現で,経済構造に基づいて政策効果などを議論するフレームワークが「構造ベクトル自己回帰(structrual VAR)モデル」です。ここで,典型的な構造VARモデルを,上記の3変数モデルで考えると,光=E3つの変数のラグで説明される頂]+ε″π′=α力+[3つの変数のラグで説明される項]+επ,′協′=βヵ+νπ′+[3つの変数のラグで説明される項]十εz,′と表されます。第3章 非伝統的金融政策の効果はあるのか(■) 117第1式は産出量(実質GDP)を説明する式です。GDPを説明する要因は,家計の消費や企業の設備投資行動など多岐にわたりますが,特定のモデルや定式化を仮定せず,過去のGDP,インフレ率,マネタリーベースがさまざまな構造的な関係式を経由して現在のGDPを説明すると想定します。特定のモデルに依拠して,各支出項目の説明式を詳細に設定するのは,伝統的なマクロ計量モデルのアプローチですが,その際にはシステムが大規模になるとともに数多くの制約が仮定されます。ここでは,そうした特定モデルに基づいて数多くの想定を置くことはしないという意味で,分析者の恣意性をできるだけ排除した制約の緩いモデルと解釈できます。第2式はインフレ率を説明する式で,基本的にはGDPと同様に(緩い制約のもとで)各変数のラグが説明変数として入りますが,それに加えて,インフレ率とGDPとの間に同時点の相関を容認しています(π′=α光)oこの関係の傾きが正であれば,標準的な右上がりの総供給関数もしくはフイリップス曲線の関係を表すことになります。第3式はマネタリーベースを説明する式で,同じく各変数のラグに加えて,同時点の関係として産出量とインフレ率にも依存することを容認しています。これは経済活動に依存してマネーが供給される「内生的な貨幣供給」の面と,景気やインフレ動向に金融政策が反応する「政策反応関数」の面の両方を含んでいる可能件があります。各式の誤差項は,各変数の変動を引き起こす「構造シヨツク」として解釈されます(それぞれの説明される変数に対応して「GDPショック」,「インフレ・シヨツク」,「マネタリーベース・シヨツク」と呼ばれます)。以上の3つの式と構造シヨツクをまとめて表現すると,構造ベクトル自己回帰モデルは
宮尾非伝統116-8
以下同様に,第2式のインフレ率πrの式,第3式のマネタリーベースれの式を表すと,
π′=[3つの変数のラグで説明される頂]+zπ,
′%′=[3つの変数のラグで説明される頂]+z″″
となります。各式のカギ括弧内は(A3.2)式のカギ括弧と同様の表現が入り,“πル%zノはそれぞれの誤差項です。
以上の3つの式をまとめて表現すると,最終的に,ベクトル自己回帰モデルは,
Xr=41Xr lキスメ_2+%`は3.3)
と表されます。(A3.1)式の1変数の自己回帰モデルと見た目にはまったく同じですが,ベクトル自己回帰モデルは,3つの変数をそれぞれの過去の値で説明する式体系となります。るは3つの変数からなるベクトル,ム,42は3行×3列の係数の行列,“′も3つの誤差項(ら`,%π,`,%",Dからなるベクトルになります。
(3)構造ベクトル自己回帰モデルの導出
ベクトル自己回帰モデルによく似た表現で,経済構造に基づいて政策効果などを議論するフレームワークが「構造ベクトル自己回帰(structrual VAR)モデル」です。
ここで,典型的な構造VARモデルを,上記の3変数モデルで考えると,
光=E3つの変数のラグで説明される頂]+ε″
π′=α力+[3つの変数のラグで説明される項]+επ,
′協′=βヵ+νπ′+[3つの変数のラグで説明される項]十εz,′
と表されます。
第3章 非伝統的金融政策の効果はあるのか(■) 117
第1式は産出量(実質GDP)を説明する式です。GDPを説明する要因は,家計の消費や企業の設備投資行動など多岐にわたりますが,特定のモデルや定式化を仮定せず,過去のGDP,インフレ率,マネタリーベースがさまざまな構造的な関係式を経由して現在のGDPを説明すると想定します。特定のモデルに依拠して,各支出項目の説明式を詳細に設定するのは,伝統的なマクロ計量モデルのアプローチですが,その際にはシステムが大規模になるとともに数多くの制約が仮定されます。ここでは,そうした特定モデルに基づいて数多くの想定を置くことはしないという意味で,分析者の恣意性をできるだけ排除した制約の緩いモデルと解釈できます。
第2式はインフレ率を説明する式で,基本的にはGDPと同様に(緩い制約のもとで)各変数のラグが説明変数として入りますが,それに加えて,インフレ率とGDPとの間に同時点の相関を容認しています(π′=α光)oこの関係の傾きが正であれば,標準的な右上がりの総供給関数もしくはフイリップス曲線の関係を表すことになります。
第3式はマネタリーベースを説明する式で,同じく各変数のラグに加えて,同時点の関係として産出量とインフレ率にも依存することを容認しています。これは経済活動に依存してマネーが供給される「内生的な貨幣供給」の面と,景気やインフレ動向に金融政策が反応する「政策反応関数」の面の両方を含んでいる可能件があります。
各式の誤差項は,各変数の変動を引き起こす「構造シヨツク」として解釈されます(それぞれの説明される変数に対応して「GDPショック」,「インフレ・シヨツク」,「マネタリーベース・シヨツク」と呼ばれます)。
以上の3つの式と構造シヨツクをまとめて表現すると,構造ベクトル自己回帰モデルは
8ДOXr=BIXr_1+B基_2+ε′
と表されます。ここでXrは3つの変数からなる人夢iル,32は3行×3列の係数の有力,ε′は3つの構造ショッεπ″,ε物″)からなる人夕iルになります(構造ショックは,れ系列相関がなく,互いに無相関と仮定されます)。
ここで同時点の関係を表す係数島は,
(A3.4)30,Bl,ク (ε″,それぞ二0=I11ク
となり,下三角行列になります。データからlA 3.3)式を推定し,とで求められます。
構造モデルを導出する際,(A3.5)式の同時点の制約(下三角の形になるように島の上三角の要素にゼロを仮定)が用いられます。たとえば30行列の3列目に置かれている「2つのゼロ制約」は,マネタリーベースの変化は同時点では産出量とインフレ率には影響を及ぼさない(金融政策の効果波及には時間がかかる)という仮定を意味します。構造モデルを求める際に課される制約は,一般に「識別制約(identiting resmc●。ns)」と呼ばれます。3。のように,変数間の同時点の依存関係が1つずつ(つまり「逐次的(リカーシブ)」に)拡大していく制約は「リカーシブな識別制約」と呼ばれ,構造VAR分析の基本的な制約としてしばしば用いられます。4変数日,5変数日に金融部門の変数(長期金利と資産価格)を追加して,同様のリカーシブ制約を仮定するアプローチは,「ブロック・リカーシブ制約」(chnstianO,Eichenbaum andい、s,1999)と呼ばれ,本文の分析で用いられる識別制約に当たります。
NEW MEDIA (月刊ニューメディア) 2019年 08月号 「特集 MMT入門 -注目の異端経済学、その理論と政策-」 [雑誌] (Japanese) Print Magazine – July 2, 2019
https://www.amazon.co.jp/-/en/gp/product/B07STB7PJR/ref=ox_sc_act_image_3?smid=AN1VRQENFRJN5&psc=1
【特集】MMT入門 -注目の異端経済学、その理論と政策-
米中ハイテク覇権争い・米中貿易摩擦による景気悪化、消費増税、米大統領選挙などでさらに注目されそうなのが、「自国通貨を発行する国家は、財政赤字をいくら増やしても問題なく、財政再建は必要ない」と主張する経済理論「MMT(Modern Monetary Theory:現代貨幣理論)」だ。異端経済学とも言われ、賛否両論の論争を巻き起こしているMMTとは何か。その理論、政策、事例、結果予測を気鋭の経済学者が解説する。
・論点1
MMTと主流派経済学の理論を比較する
(佐藤主光 一橋大学 国際・公共政策研究部 教授)
MMTの本質は、主流派経済学の各学派の理論と比較することによって明らかになる。佐藤主光・一橋大学 国際・公共政策研究部 教授に聞いた。主流派経済学の中でもMMTと類似性があると捉えられることの多い長期停滞論やヘリコプターマネー論との違いも解説する。さらに、MMTと主流派経済学を隔てる貨幣に対する認識の違いも見ていく。
・論点2
政策レジームの観点でMMTを考察する
(宮尾龍蔵 東京大学 大学院 経済学研究科 教授)
MMTが主流派経済学の各学派と異なるのは理論だけではない。政策レジーム(政策の枠組み)でも大きな違いがある。日本銀行政策委員会審議委員も務めた宮尾龍蔵・東京大学 大学院 経済学研究科 教授に聞いた。政府は財政収支の均衡を目指すのか、中央銀行は政府・財政に従属せず物価安定を目指すのか、といった政府と中央銀行の政策レジームの組み合わせから、MMTと主流派経済学の各政策を考察する。
・論点3
アベノミクスはMMTの成功事例なのか
(宮尾龍蔵 東京大学 大学院 経済学研究科 教授)
MMTを提唱しているステファニー・ケルトン米国ニューヨーク州立大学教授は、「日本政府と日銀はMMTを長年実証してきた。日銀は日本国債の40%を買い上げ、金融政策で長期金利も抑制している。政府債務が問題なら、実体経済に問題が出るはずだ」(「日本経済新聞」2019年4月13日朝刊)と述べている。日本はMMTの成功事例という指摘は正しいのか、再び宮尾龍蔵・東京大学 大学院 経済学研究科 教授に聞いた。
・論点4
MMT政策の実施結果を予測する
(佐藤主光 一橋大学 国際・公共政策研究部 教授)
「政府は自国通貨建て国債を増発し、中央銀行が財政ファイナンスで引き受け続けるが、財政再建は行わない」というMMTの政策を実践した場合、どのような結果に至る可能性が高いのか。インフレ率や金利の変化、民間の資金需要への影響などについて、佐藤主光・一橋大学 国際・公共政策研究部 教授が予測する。また、米大統領選挙、米中貿易摩擦、日本の消費増税がMMTの影響力に及ぼす変化も聞いた。
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