月曜日, 10月 09, 2017

経済ショックが生産性低下の循環を招く「清滝・ムーアモデル」1997,2008を構築した 米 プ リンストン大 清滝信宏教授 - NAVER まとめ


NAMs出版プロジェクト: 経済学日本人著者入門書
http://nam-students.blogspot.jp/2016/10/blog-post_9.html(@)

経済ショックが生産性低下の循環を招く「清滝・ムーアモデル」2008を構築した 清滝信宏教授
http://nam-students.blogspot.jp/2017/10/naver.html

貨幣と信用の理論 清滝信宏
http://www.imes.boj.or.jp/japanese/kinyu/1993/kk12-4-6.pdf
現代の経済理論1994に再録



…貨幣はモデルの最初の時点でmの割合の人々によって1単位ずつ保有され、残りの1-mの割合の人々は生産物を1単位ずつ保有すると仮定する…














203頁
資源配分が効率的となる条件は,企業家の土地の限界生産が資産家の土地の
限界生産と等しくなることである (図5の点C), しかしこのモデルの経済の
均衡では,企業家の信用が制約されているために,企業家の土地の限界生産が
資産家のそれを上回る (図5の点E),つまり,企業家の土地が効率的な配分に
比べて過小となっている(K*<K0).経済全体の生産量は限界生産の曲線の
の面積で表されるので, この経済の定常的均衡では総生産量が,効率的な配分
に比べて図のCDEの斜線の部分だけ小さくなっている. また定常的均衡の
近傍で,企業家の土地 Ktが増加すると,生産量の損失CDEが小さくなり,総
生産量Yt+1が増加する.



実験経済学
http://nam-students.blogspot.jp/2018/05/blog-post_21.html (清滝の最重要論文は以下)
Nobuhiro Kiyotaki and Randall Wright,“On money as a medium of exchange,"Journal of Political Economy,Vol.97,1989,pp.927‐954


NAMs出版プロジェクト: ミレニアム・ブリッジ (ロンドン)
http://nam-students.blogspot.jp/2017/10/blog-post_14.html

 Irving Fisher: Stamp Scrip; 1933 :スタンプ通貨  アーヴィング・フィッシャー (著)
http://nam-students.blogspot.jp/2015/12/irving-fisher-stamp-scrip-1933-2016331.html


清滝信宏氏とジョン・ムーア氏の論文「流動性、景気循環、金融政策」(2008年)
Liquidity, Business Cycles, and Monetary Policy Nobuhiro Kiyotaki (Princeton University)  and John Moore (London School of Economics) 2008



経済ショックが生産性低下の循環を招く「清滝・ムーアモデル」を構築した米プリンストン大 清滝信宏教授 - NAVER まとめ
https://matome.naver.jp/odai/2144391944739076401



   期間t(現在)      期間t+1(将来)    期間t+2(現在)
_____________________________________
  一時的な負のショック
  (資産価値の下落)
       ↓
 →企業の純資産価値の減少  企業の純資産価値の減少  企業の純資産価値の減少
↑  (担保余力の減少)    (担保余力の減少)    (担保余力の減少)
       ↓      ↗︎    ↓      ↗︎      ↓       ↗︎
  企業の資産需要の減少   企業の資産需要の減少   企業の資産需要の減少
       ↓           ↓             ↓
  資産利用コストの減少   資産利用コストの減少   資産利用コストの減少
↑            ↙︎             ↙︎
 ←世の資産価値の下落              ←

naverまとめより:
いわゆる「デフレスパイラル」は、売上減少→利益減少→給与減少→消費低迷→売上減少、
のスパイラルと思われがちですが、本当に怖い(実体経済に悪影響が及ぶ)のは、
資産価値下落→純資産価値減少→担保余力減少→貸渋り→買手減少→資産価値下落、
というスパイラルです。これは正に日本のバブル崩壊で起こったこと。
清滝教授はこのサイクルをアメリカに紹介しました。

Credit Cycles. Author(s): Nobuhiro Kiyotaki and John Moore. Source: The Journal of Political Economy, Vol. 105, No. 2 (Apr., 1997), pp. 211-248. Published by: The University of Chicago Press. Stable URL: http://www.jstor.org/stable/2138839.


若田部昌澄氏の経済教室 - 事務屋稼業
http://d.hatena.ne.jp/JD-1976/20100705/p1
 マクロ経済学の課題はふたつ。まずひとつは、金融市場の混乱はなぜ実体経済に大きな影響をおよぼすのか? ふたつめは、金融・財政政策での対応、とりわけ名目金利がほぼゼロになったとき、FRBなどが実施したような、信用市場に直接資金供給を行なう非伝統的政策は効果があったのか? そして、あったとしたらその理由は?
 清滝信宏氏とジョン・ムーア氏の論文「流動性、景気循環、金融政策」(2008年)は、流動性がなぜ実体経済に影響をあたえるかを明らかにした。清滝・ムーア論文は、投資の際の資金調達行動に注目する。外部からの資金調達には限界があり、これを「調達制約」と呼ぶ。そのとき、保有する資産を売却して投資にあてようとするだろう。でも、そのなかにはCPや銀行貸し出し、株式、住宅抵当証券など、非流動的な資産が少なくない。これを「市場流動性の制約」という。
 金融危機とは、市場流動性の制約が突如として高まる現象だとされる。情報の非対称性がある場合、資金の出し手には資産の正確な価値がわからなくなるので、こうした非流動的な資産の価値が暴落してしまう。現金化できても、額はスズメの涙。企業の投資水準は下がり、実体経済にも悪影響がおよぶというわけだ。売却がむずかしくなればなるほど、資産の価格も下がる。すると貨幣国債など、流動性の高い資産への需要が急増し(これを「流動性への逃避」という)、危機に拍車をかけてしまう。
 ここで中央銀行が、民間がもつ非流動的な資産と、みずからがもつ流動的な資産とを交換すれば、金融市場の機能不全を回復し安定化させることができる。これこそが非伝統的金融政策の本質だ。この目的は単なる金融市場の安定だけではない。金融市場の混乱が投資活動の停滞をもたらし、実体経済に甚大な影響をおよぼすのを回避することにある。
 FRBの非伝統的政策には効果はあったのだろうか? 清滝氏がエッガートソン氏らと執筆した論文が「大脱出?」(2010年)だ(翻訳はこちら。himaginaryさんのこのエントリがわかりやすい)。
 論文では清滝・ムーアモデルを動学的一般均衡理論に組み込み、さらに名目賃金・価格の硬直性も考慮した。注目すべき結論は、金融システムが混乱して名目金利がゼロ下限に直面した際は、非伝統的政策による介入が大きな効果をもつという知見。むしろ介入がなければ、大恐慌なみの経済崩壊が起こりかねなかった。アメリカ経済が回復したのは大規模な政策介入のおかげであって、FRBは第二次世界恐慌を防いだとさえいえる。
「大脱出?」論文は、非伝統的政策にともなうコストは論じていない。だから、この論文をもとに非伝統的政策が望ましいかどうか評価するのは今後の課題だけれど、すくなくとも危機においては、非伝統的政策の短期的な利益は大きくなりえるようだ。
 ただし、このモデルには、名目賃金や価格には硬直性が存在するという前提がある。硬直性がなければ、金融ショックは実体経済に大きな影響はあたえず、だから政策介入も効果がないということになる。金融市場の混乱が実体経済に波及する際に重要なのは、名目賃金・価格の硬直性の程度なのだ(どうでもいいけど、このへんに浜田宏一氏との共著の影響がほのみえて、ブログ主としては興味深い)。

economics12 (@cool_warm)
清滝先生といえば、清滝-ムーアのクレジットサイクルが有名。簡単にいうと、金融システムの不安が経済に大きな打撃を与えるというもの。竹森先生の「経済論戦は甦る」や、清水谷先生の「期待と不確実性の経済学」☆☆では、日本のバブル崩壊後の影響を説明する際にこのモデルを引用している。

経済論戦は甦る 単行本 – 2002/10(2007文庫化)

_____
1927年のムッソリーニ、1932年のフーヴァー大統領との会談も紹介している。フィッシャーとシュンペーターの理論上の対立はケインズとハイエクの対立と同じだ。
竹森はフィッシャーの以下を参照している。
  • Stabilizing the Dollar, 1920.
  • The Making of Index Numbers: A study of their varieties, tests and reliability, 1922.☆☆
  • "The Debt-Deflation Theory of Great Depressions", 1933, Econometrica.
  • Irving Norton Fisher: My Father Irving Fisher. New York, 1956.
☆☆

THE ROLES OF DEBT AND DEFLATION 
24. Assuming, accordingly, that, at some point of time, a state of over-indebtedness exists, this will tend to lead to liquidation, through  the alarm either of debtors or creditors or both. Then we may deduce the following chain of consequences in nine links: (1) Debt liquidation leads to distress selling and to (2) Contraction of deposit currency, as bank loans are paid off, and to a slowing down of velocity of circula- tion. This contraction of deposits and of their velocity, precipitated by distress selling, causes (3) A fall in the level of prices, in other words, a swelling of the dollar. Assuming, as above stated, that this fall of prices is not interfered with by reflation or otherwise, there must be (4) A still greater fall in the net worths of business, precipitating bank- ruptcies and (5) A like fall in profits, which in a "capitalistic," that is, a private-profit society, leads the concerns which are running at a loss to make (6) A reduction in output, in trade and in employment of labor. These losses, bankruptcies, and unemployment, lead to (7) Pes- simism and loss of confidence, which in turn lead to (8) Hoarding and slowing down still more the velocity of circulation. 
 The above eight changes cause (9) Complicated disturbances in the rates of interest, in particular, a fall in the nominal, or money, rates and a rise in the real, or commodity, rates of interest. 

いま、ある時点で、過剰債務の状態が起こっていたとしよう。それはやがて、債務者もしくは債権者(あるいは両方)がパニックを起こして、「債務の清算」へと走る結果を生む。これを受けて、つぎのような九項目の連鎖反応が起こるだろう。①「債務の清算」の結果、「投げ売り」が発生する。②銀行ローンが繰り延べされないことにより、「預金通貨の減少」が生まれ、同時に「貨幣の流通速度の低下」が起こる。「投げ売り」によって生じた、預金通貨と貨幣流通速度の減少とは、つぎに、③「物価水準の下落」、いい換えれば「ドルの価値の上昇」を生む。もしも、この物価水準の下落がリフレ政策によっておさえられない場合には、つぎに、④「企業の純資産価値のさらなる低下」が生まれ、その結果、「破産」が起こる。そして、⑤「利潤の低下」が起こり、それが損失を生んでいる私企業に、⑥「生産」、「販売」、「雇用」の削減をうながす。このようにして、「損失」、「破産」、「失業」が積み重なる結果、⑦「悲観論」と「自信喪失」とが生まれる。そのためさらに、⑧「買い控え」が起こり、それがさらにいっそう、「貨幣の流通速度の減少」を深刻なものとする。こうした八項目が重なった結果は、⑨「利子率の複雑な攪乱」である。すなわち、名目利子率は低下するのに、実質利子率は上昇するのである。 

竹森 2007年129~130頁
大恐慌の検証であるとともに予言


Negro他「大脱出?FRBの非標準的政策の定量的効果の評価」2010 - リフレーションに関連する海外記事および論文集 - アットウィキ
The Great Escape? A Quantitative Evaluation of the Fed’s Non-Standard Policies
Marco Del Negro, Gauti Eggertsson, Andrea Ferrero, Nobuhiro Kiyotaki 

大脱走 - himaginaryの日記



経済ショックが生産性低下の循環を招く「清滝・ムーアモデル」を構築した米プリンストン大 清滝信宏教授 - NAVER まとめ
https://matome.naver.jp/odai/2144391944739076401
土地や住宅などの資産を担保にお金を借りられる経済では、資産価格の変動が信用市場と経済活動に与える影響を増幅し、しかもその影響は長期間続く――清滝らはこの現象を理論的に証明した。バブル崩壊後の日本の「失われた10年」を説明する理論であり、08年のアメリカ発金融危機も説明できるとして引っ張りだこになった。
「清滝=ムーア」モデルが優れているのは3つの数式に簡略化できるシンプルさだ。研究者は独自の変数(賃金や価格など)を追加して、持論を検証したり政策をシミュレーションすることができる。
清滝 信宏(きよたき のぶひろ、1955年(昭和30年)6月24日 - )は、日本の経済学者。プリンストン大学教授。専門はマクロ経済学。ニューケインジアンであり、マクロ経済学のミクロ的基礎付け(英語版)を行っている。経済に対する小さなショックが生産性低下の循環を引き起こすメカニズムを示した「清滝=ムーアモデル(英語版)」を構築したことで知られており、ノーベル経済学賞の有力な候補の一人として注目されている
来歴
東京大学教養学部文科3類から経済学部へ進学し宇沢弘文研究室に所属。1978年(昭和53年)に東京大学経済学部卒業。1985年(昭和60年)にハーバード大学大学院修士課程修了、ハーバード大学大学院博士課程修了。ハーバード大学からPh.D.(経済学博士号)を取得した。
池田銀行(現・池田泉州銀行)を創業した清滝家の家系。父は元池田銀行頭取の清滝一也
ウィスコンシン大学で6年間助教授を務め、ミネソタ大学で6年間准教授として教鞭を執る。その後渡英しロンドン・スクール・オブ・エコノミクス (LSE) で10年間教鞭をとった後、2006年(平成18年)にプリンストン大学に移籍した。プリンストン大学に移籍後もLSEには客員教授として在籍し、2010年(平成22年)はLSEでマクロ経済学の講義等を行っている
small shock がどのように生産性下落の cycle を引き起こすかを示す清滝・ムーア・モデル
研究
1987年、オリヴィエ・ブランチャードとともに独占的競争が集合的需要にもたらす重要性を考察した。マクロ経済学でニューケインジアンの文献は独占的競争を前提としているがそれはこの論文による。
1989年、ランダル・ライト(英語版)とともに貨幣の役割を考察し、それが相対取引では成り立たないような多くの財を交換させることで経済効率を高めることを示した。これはジェヴォンズの「欲求の二重の一致が取引を阻害する」という直観をフォーマルにしたもので、清滝=ライトモデルとして知られている。
1997年には、ジョン・ハードマン・ムーア(英語版)とともに経済に対しての小さなショックが大きな影響を与えることを示したが、これは信用の役割を強調したものであり、清滝=ムーアモデル(英語版)として知られている。
松山公紀や松井彰彦とともに貨幣についての考察も行った
清滝教授はニュー・ケインジアンであり、マクロ経済学のミクロ的な基礎付けの研究で大きな成果を上げた
デフレについて
日銀に対して、「もっとデフレ対策に力を注いでほしい」と不満を持っている。
インフレを起こすのは論外ですが、デフレが続くのもやはり良くありません。デフレを止めるために、国債だけではなく、ETF(上場投資信託)やREIT(リート=不動産投資信託)をなど、実物資産をもっと買ってもよいと思います。(中略)名目賃金が過去20年、ほとんど上昇していないというのは言語道断でしょう。(中略)せめて毎年1~2%程度の賃金上昇を維持するような政策運営をしてほしいところです。
TPPについて
TPPについて、「最終製品になるまで国境を複数回またぐ中間財の貿易が比重を増しているため、関税撤廃を進める環太平洋連携協定(TPP)に加盟しない場合、世界貿易の輪から取り残される」と述べている
年表
1978年 - 東京大学卒業
1985年 - ハーバード大学博士課程修了(Ph.D.)
1985年 - 1991年 ウィスコンシン大学マディソン校経済学部助教授
1987年 - ウェスタンオンタリオ大学客員講師
1989年 - 1990年 一橋大学非常勤講師
1989年 - 1991年 ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス経済学部講師
1991年 - 1997年 ミネソタ大学経済学部准教授、ミネアポリス連邦準備銀行客員研究員
1995年 - 1996年 ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス経済学部招聘教授
1997年 - 2006年 ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス経済学部教授
2000年 - 2001年 マサチューセッツ工科大学経済学部客員教授
2005年 - 2006年 ニューヨーク連邦準備銀行シニアエコノミスト
2006年 - プリンストン大学経済学部教授、ニューヨーク連邦準備銀行学識顧問
受賞歴
1997年 - 日本経済学会より中原賞
1997年 - ヨーロッパ経済学会(英語版)よりユルヨ・ヨハンソン賞(ジョン・ハードマン・ムーア(英語版)と共同受賞)
2010年 - The Stephen A. Ross Prize in Financial Economics(ジョン・ムーアと共同受賞)
2010年 - トムソン・ロイター引用栄誉賞『清滝ムーアモデルの構築』
2015年 - フランス銀行・トゥールーズ経済学院(英語版)より 2014 Senior Prize of BDF-TSE in Monetary Economics and Finance
清滝教授が主張してきた「清滝=ムーア クレジットサイクル」という学説は、実体経済のちょっとした資産価値の下落は、信用制約(企業の担保余力が減少することなど)が金融システムを介して純資産の下落を増幅し、さらにそれが資産の取得需要を減退させ、金融機関の貸渋りにより借手の資金調達余力も減少し、資産のデフレスパイラルが続く、というものです。これを理論的に説明しました。
よく、デフレの実態を把握する指標として消費者物価指数が使われますが、120円のジュースが100円になったからといって(△16.7%)、生活や仕事に大した影響はありません。飲料メーカーのみなさんは大変でしょうが、安売りスーパーに行けばもっと安く買えますから、経済への影響は大きくありません。
 しかし、120億円のビルが100億円になったらどうでしょうか。下落率は同じです。でも、120億円のビルは個人で買える人はほとんどいませんし、企業が買うにしても、通常は銀行などから借入をして買います(不動産ファンドであれば、社債を発行して資金調達をします)。仮に、借入率が7割(84億円)として、資産価値が100億円に下落したらどうなるでしょうか。自己資金は36億円の投資ですが、純資産は100-84=16億円に縮小。20億円分の資産価値が吹っ飛び、投資家は大打撃です。
これを、投資家の「自業自得」として単純に考えることはできません。このような損失が出ると、この投資家が別の資産を取得することを考えても金融機関が融資を渋ります。そうなると、この投資家が市場から消えます。このような状況が重なると、不動産の取得者が市場から減り、他の不動産の価値も下がります。金融機関が他の投資家にも資金を融資しなくなり、この不動産を買いたいと申し出た投資家も資金調達が厳しくなるので、さらに買手がつきづらくなります。不動産の価格は更に下落し、80億円でも売れなくなるかもしません。
 そうなるとさらに大変なことになります。金融機関が貸し付けた84億円のうち、4億円が回収できなくなります。銀行に不良債権が溜まり、不動産投資とは関係ない一般の事業者に対しても貸渋りが始まります。これにより、実体経済を悪化させるのです。
いわゆる「デフレスパイラル」は、売上減少→利益減少→給与減少→消費低迷→売上減少、のスパイラルと思われがちですが、本当に怖い(実体経済に悪影響が及ぶ)のは、資産価値下落→純資産価値減少→担保余力減少→貸渋り→買手減少→資産価値下落、というスパイラルです。これは正に日本のバブル崩壊で起こったこと。清滝教授はこのサイクルをアメリカに紹介しました。
清滝信宏氏とジョン・ムーア氏の論文「流動性、景気循環、金融政策」(2008年)は、流動性がなぜ実体経済に影響をあたえるかを明らかにした。清滝・ムーア論文は、投資の際の資金調達行動に注目する。外部からの資金調達には限界があり、これを「調達制約」と呼ぶ。そのとき、保有する資産を売却して投資にあてようとするだろう。でも、そのなかにはCPや銀行貸し出し、株式、住宅抵当証券など、非流動的な資産が少なくない。これを「市場流動性の制約」という。
金融危機とは、市場流動性の制約が突如として高まる現象だとされる。情報の非対称性がある場合、資金の出し手には資産の正確な価値がわからなくなるので、こうした非流動的な資産の価値が暴落してしまう。現金化できても、額はスズメの涙。企業の投資水準は下がり、実体経済にも悪影響がおよぶというわけだ。売却がむずかしくなればなるほど、資産の価格も下がる。すると貨幣や国債など、流動性の高い資産への需要が急増し(これを「流動性への逃避」という)、危機に拍車をかけてしまう。
論文では清滝・ムーアモデルを動学的一般均衡理論に組み込み、さらに名目賃金・価格の硬直性も考慮した。注目すべき結論は、金融システムが混乱して名目金利がゼロ下限に直面した際は、非伝統的政策による介入が大きな効果をもつという知見。むしろ介入がなければ、大恐慌なみの経済崩壊が起こりかねなかった。アメリカ経済が回復したのは大規模な政策介入のおかげであって、FRBは第二次世界恐慌を防いだとさえいえる。


リスクと流動性: 金融安定性の新しい経済学 | ヒュン ソン・シン, 大橋 和彦, 服部 正純 |本 | 通販 | Amazon
https://www.amazon.co.jp/リスクと流動性-金融安定性の新しい経済学-ヒュン-ソン・シン/dp/4492444122/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1507533744&sr=8-1&keywords=清滝信宏

商品の説明

内容紹介

本書は、金融市場においてリスク管理を行う金融機関や投資家の行動が資産価格や流動性に与える影響を分析することで、金融危機発生のメカニズムを解明しています。
本書に示される考え方は、グローバル金融危機後の世界的な金融規制改革の理論的背景であるとともに、今日のグローバル金融市場の動向を理解する基礎となるものです。その意味で、本書は研究者のみならず、銀行関係者や機関投資家を含む金融市場で働く実務家にとっても役立ちます。第11章「グローバル流動性の第二局面と新興国経済への影響」は、日本語版向けに追加された新章です。
世界的な経済学者・清滝信宏プリンストン大学教授による解説(「刊行に寄せて」)も収録しています。

内容(「BOOK」データベースより)

金融危機発生のメカニズムと新しい金融規制の理論的背景を解説。日本語版向けの新章と清滝信宏教授(プリンストン大学)の解説も収録。
商品の説明をすべて表示する

登録情報

  • 単行本: 264ページ
  • 出版社: 東洋経済新報社 (2015/1/9)
  • 言語: 日本語
  • ISBN-10: 4492444122
目次
刊行に寄せて(清滝信宏)
日本語版への序文
第1章 金融リスクの性質 ☆
第2章 バリュー・アット・リスクと資本
第3章 バリュー・アット・リスクが引き起こすブームとその崩壊
第4章 ダイナミック・ヘッジング
第5章 アセット・ライアビリティ・マネジメント
第6章 金融システム
第7章 貸出ブーム
第8章 ノーザン・ロックの事例
第9章 証券化と金融システム
第10章 未来に向けた新たな出発
第11章 グローバル流動性の第二局面と新興国経済への影響

NAMs出版プロジェクト: ミレニアム・ブリッジ (ロンドン)
http://nam-students.blogspot.jp/2017/10/blog-post_14.html


ついに日本人が初受賞!?
http://blogos.com/article/251041/
記事

ついに日本人が初受賞!?

スウェーデン王立科学アカデミーは9日、2017年のノーベル経済学賞を米プリンストン大学の清滝信宏教授(62)と英エディンバラ大学のジョン・ムーア教授(63)に授与すると発表した。金融や信用創造をマクロ経済分析に結び付け、資産価格の急落・高騰と、それが生み出す景気循環との相互作用を解明した業績が評価された。両氏は1999年に、ヨーロッパ経済学会が選ぶ最高の経済学術賞であるユルヨ・ヨハンソン賞を共同受賞している。

授賞理由は「金融と経済の動きを統一的に分析するマクロ経済理論の構築」。清滝氏とムーア氏は、実体経済に対する負のショックが資産価格の減少をもたらし、それが担保価値の減少などを通じて金融仲介機能を低下させ実体経済へさらにマイナスの影響を及ぼすことを明らかにした。資産市場と実体経済が相互連関しながら負のスパイラルを形成する彼らの理論は、金融危機以降の世界経済の長期停滞を説明する有力な理論として、大きな注目を集めた。

授賞式は12月10日にストックホルムで行われ、賞金計900万スウェーデンクローナ(約1億2500万円)が両氏に等分して贈られる。
というのは(現時点では)私の創作によるフェイク・ニュースですが、これが明日の発表、あるいは近い将来に実現することを本当に願っています。日本人の受賞可能性や、ノーベル経済学賞の特徴・傾向などについては、次の記事をぜひご参照ください。
ノーベル経済学賞って何だろう?

本年度の予想については、次のスライド資料に情報をまとめさせて頂きました。
2017年ノーベル経済学賞予想 --- 参考資料 

ちなみに、清滝先生が受賞された場合に、彼の専門的な業績については東京大学経済学部の青木浩介教授に伺うのがベストではないかと思います。LSE時代の同僚で清滝氏との共同研究もあり、間違いなく清滝理論を最も良く知る人物の一人です。清滝先生の直接の教え子としては、早稲田大学の戸村肇准教授や、一橋大学の陣内了准教授といった方々がいらっしゃいます。私は清滝先生から直接ご指導頂いたことはありませんが(セミナーでコメントは頂戴しました^^)、プリンストン大学博士課程の最後の1年間が重なっており、経済学部の建物で談笑したり、清滝邸での食事会にお招き頂いたことがあります!日本人初の受賞をぜひ期待したいです!!

☆☆
清水谷論「期待と不確実性の経済学」 - ラスカルの備忘録
http://traindusoir.hatenablog.jp/entry/20050819/1124470077







清水谷論「期待と不確実性の経済学」

 

期待と不確実性の経済学
プロローグ マクロ経済政策のミクロ的実証を
  • 70年代以後、いわゆる「ルーカス批判」をきっかけに、マクロ計量モデルの限界が強く認識。80年代に入ると、マクロ経済学のミクロ的基礎付けが強調されるようになり、マクロ変数だけでマクロ経済、特に家計や企業行動を検証する時代は終わる。
  • マクロ経済の実証研究も、自然にミクロデータを利用したものが主流となる。特に、政策効果の評価について著しい進展。現在の経済政策担当者にとって必要なのは、実証分析に基づいた政策の企画立案(Evidence-based Policy Making)。
第1章 90年代大停滞の犯人を捜す−家計消費・企業投資はなぜ停滞したか
  • この「デフレ時代」は、長期間に及ぶ低成長と、マイルドなデフレの持続という2つの際だった特徴。この間、家計消費は落ち込むが可処分所得がそれ以上に落ち込みが激しく、平均消費性向は上昇傾向。その裏面として家計貯蓄率は低下傾向であり、貯蓄投資バランスを通じた経常収支への影響や潜在的な成長率の悪影響が懸念。消費の内訳としては、サービス及び耐久消費財のシェアが増加。消費性向は、30歳代・高所得者層を除いて上昇しており、前者の背景には、住宅ローン世帯での消費性向の低下がある。
  • 民間設備投資はバブル期以降急速に落ち込む。これまでの景気回復局面では、製造業中小企業の伸びの高さと、タイミングの早さが知られてきたが、90年代はそのパターンが当てはまらない。その背景の一つには、いわゆる「貸し渋り」があるか。製造業の設備投資は、金融・資本市場の重要性や労働投入の側面は、徐々に重要性を失い、財務状況や設備投資の収益性をより重視。
第2章 進化しているマクロ経済学−家計・企業は将来を見据えて行動する
  • 経済主体が将来も視野に入れながら最適化を行う「動学的最適化問題」。ケインズ型消費関数:C(t)=a+bW(t)+u(t) は、実際の推計を行うと、データの取り方(クロスセクションまたは時系列)によって係数の値が大きく異なり、クロスセクションでは、bに低めのバイアスが生じる。
  • ライフサイクル・恒常所得仮説では、予算制約の下で、異時点間の消費量の無差別曲線をとり、効用を最大化させる(フィッシャー・ダイアグラム)。これを定式化すると、U'(C(t))=E(t) [(1+r)/(1+rho)・U'(C(t+1))] r:利子率 rho:時間選好率(=r)というオイラー方程式が導出される。*1効用関数を、U(C)=C-(a/2)・C^2なる二次間数で仮定すると、C(t+1)=C(t)+u(t) となり、来期の消費は今期の消費「のみ」で決まる。*2
  • 上記より得られるインプリケーションは、①恒常所得の変化による限界消費性向は、一時所得の変化による限界消費性向を上回ることと、②所得の変化が恒常所得であれ一時所得であれ、消費は予期された所得の変動には反応しない。このうち②より、dC=a+b・dW+u, dC/dt=a+b・dW/dt+u について、b=0が有意かどうかをみるのが「過剰反応(excess sensitivity)テスト」と呼ばれる一連の研究。
  • 設備投資については、最も単純には費用最小化問題 min[wL+rK] s.t. F(K,L)=Y(0)*3により決まるが、これは資本ストックが瞬時に調整されることを仮定*4。そこで、資本ストックの変化は望ましい資本ストック量と今期の資本ストック量の差を縮めるように決められるとする「ストック調整型」設備投資関数や、設備投資自体が生産量の変化に直接影響されるとする「投資の加速度原理」がある。*5
  • 設備投資は、企業の利潤最大化行動と矛盾する可能性。現在の標準的な設備投資理論では、調整費用を明示的に考慮し、「動学的最適化問題」を下に構築。具体的には、I(t)/K(t)=h(q), q=(株式市場で評価される企業価値+負債総額)/資本の再調達費用、と表され、投資・資本ストック比は、資本*6の市場価値と資本の再調達費用の大小関係*7を示すq「のみ」で決まる。*8
第3章 地域振興券政策は消費刺激効果をもったか−ミクロデータで検証する商品券政策
  • 回帰分析では、左辺の変数は右辺の変数に影響しないことを前提。しかし、左辺(被説明変数)が右辺(説明変数)に影響する(「内生性」がある)場合、推定された係数は一致性、つまりサンプル数が十分大きくなれば、推定された係数は真の値に近づくという性質を持たなくなる。一つの流れは、誤差項との相関を気にせずとも良いように、「自然実験」つまり外生的に決定される出来事を用いること。
  • 分析の定式化は、振興券配布後3月以後の各月の消費水準の変化率=c+a・(振興券受取額/平均月収額)+b・(家計属性、年次ダミー)+u により、aの過剰反応を見る。家計調査のデータを用いる場合、半耐久財について、aはプラスで有意*9となるが、時間が経つにつれて、小さくなり有意性もなくなる。
第4章 従来型の景気刺激策は効果をもったか−所得減税・法人減税の効果
  • フィッシャー・ダイアグラムでは、所得減税がある場合、その分将来の支払税額が増えるため、予算制約式は代わらず無差別曲線はシフトしないので、現在の消費水準は変わらない(リカード立命題)。これが当てはまらない代表的なケースは、①現在、流動性制約の状況にあり、(借入ができないため、)異時点間の効用を最大化する水準まで現在の消費水準を高めることができない場合と、②家計の期待形成が完全には合理的でない場合。加えて、政府の債務残高が極めて大きい場合、政府が歳出を増加させると、将来の税負担の増加が明らかに予想されるため、消費が手控えられる(非ケインズ効果)。
  • 所得減税による過剰反応を分析すると、そのプラスの効果は一過性で、主として実施された付きにのみ刺激効果を持つ。また、その効果も減税の恩恵を受ける家計の消費があとの月で少なくなることで、数ヶ月単位でみるとほぼゼロに近い。法人減税の設備投資効果についても、停滞した設備投資を大きく刺激したとは言い難い。
第5章 資産価格の大幅下落と消費・投資行動−バブル崩壊の後遺症の評価
  • ファンダメンタルズからの乖離として定義される「バブル」的な要素の中には、市場参加者が合理的に行動していても、資産価格が破裂する危険をはらみながら発散してしまう「合理的なバブル」と、「ファッズ」(気まぐれな流行)。
  • 資産価格の変動が家計に与える影響は、①現在の消費は現在の資産価格と将来の労働所得の現在価値で決まるというモディリアーニのライフサイクルモデル*10から、直接消費に影響を与える「直接効果」と、②家計が資産価格の変動を将来の景気のシグナルと捉えることによる「間接効果」。
  • 「直接効果」と「間接効果」を測るための定式化として、実質消費の伸び率=c+a1・(株価の変化率)+a2・(株価の変化率×株式保有ダミー)+b1・(地価の変化率)+b2・(地価の変化率×持家保有者ダミー)+b3・(地価の変化率×マンション保有者ダミー)+r・世帯属性等ダミー+u :それぞれ当期と一期ラグ により回帰分析すると、株式保有者に限り消費は株価に左右され「直接効果」が明らかに観察される一方、実物資産には明示的に見いだせない。一方、一期前の資産価格変動の影響は小さく、「間接効果」は見いだせない。
  • 企業投資に対する資産効果は、金利チャネルと信用チャネル*11。後者について代表的な研究は「フィナンシャル・アクセレレーター」論。*12なお、経営者の主観的指標からは、資産価格の直接的な影響は小さい。
第6章 デフレ期待と消費・投資行動−長期マイルドデフレの評価
  • デフレ期待をどのように図るかは主に4つの手法があるが、ここでは、直接質問によるデータを利用。過去1年間の物価上昇率(適合的期待)、過去1年間の所得の動き、期待物価上昇率のラグ(期待の慣性)、金融緩和政策変更ダミー、テロ事件・イラク戦争ダミーで回帰する。金融政策については、金融政策変更を知っていたか(認知ダミー)と知っておりかつ期待物価上昇率を変化させたか(変更ダミー)とすると、前者からは有意な結果が得られず、後者では、テロ・戦争と同等の反応。
  • 期待消費成長率について、足下の消費上昇、足下の所得上昇、期待所得上昇率、足下の物価上昇、期待物価上昇、住宅ローンの有無、失業不安、社会保障・年金不安で回帰すると、住宅ローンのある家計に限り期待物価上昇率の係数が有意。*13
  • デフレは、債権者よりも債務者の債務負担が大きくなり、経済活動を萎縮させやすい。経済全体でみれば、企業が実質金利や実質債務負担が大きいと感じることになるが、デフレ期待が企業の設備投資に及ぼす影響をみると、その影響が大きいとは言えない。*14
第7章 期待成長率の低下と不確実性の増大−将来への悲観論・不透明感が家計・企業を萎縮させた
  • 予備的貯蓄の現代マクロ経済学での扱いは、U'(C)が下に凸の減少関数である場合、Cの水準に不確実性がある(幅を持つ)場合の限界効用は、不確実性がない場合の限界効用を上回る。この場合、(不確実性のない)今、消費するよりも、(不確実性のある)将来の消費のため、貯蓄することが、将来得られる効用が高くなる。このため、家計の慎重さを測る一つの尺度は、弧の突き出る度合い。これを基に分析すると、99年に家計はかなり慎重。
  • 外の解釈として、①所得が大幅に減少する事態に備える目標となる貯蓄(緩衝在庫)水準が存在し、現在の消費を犠牲にして緩衝在庫を蓄積しようとする一方、不確実がなくなれば貯蓄を取り崩してでも消費する動機が働くとする「緩衝在庫モデル」、②所得リスクが同じ時点の異なる家計同士で当分に共有されるという仮定から出発する「消費保険仮説」。②については、89〜97年の個票を使った研究で棄却されている。
  • 設備投資に、期待成長率の低下、不確実性増大の与える影響を、今後3年間の設備投資の伸び率=c+a1・期待成長率+a2・不確実性指標+a3・企業属性ダミー+u で回帰(順序プロビット)すると、期待成長率の低下が設備投資の低迷をもたらしている可能性。*15
第8章 これからのマクロ経済政策の処方箋−家計・企業の期待にどう働きかけるか
  • 最近のマクロ経済学では「複数均衡」という考え方が有力。「悪い均衡」からどうやって抜け出すことができるのかはとても難しく、経済学研究の最先端分野の一つ。
エピローグ 実証に基づいた政策を
  
コメント マクロ経済動学理論、特に、異時点間の効用最大化をその基礎に持つマクロ経済モデルを構築し、ミクロデータからその理論の適合性を判定し、併せて、政策効果を測るというスタイルに貫かれている。無論、その理論は発展途上の要素を持つため、必ずしも理論通りの結論が得られず、パズルとされている要素(株式プレミアムパズルや予備的貯蓄に関連した慎重度の問題)等もある。しかしながら、マクロ経済学の最新の動きに手軽に接するには適した書籍と言える。*16それにしても、本書を著するにあたって著者が参照した論文の数には圧倒される。
なお、本書の主要な主張である、実証分析に基づいた政策の企画立案(Evidence-based Policy Making)が重要であるという点には全く同感。特に、政策を事後的に分析するという姿勢があまりみられないことは問題であると思う。
*1:導入方法は、no ponzi gameの条件及び横断性条件(無限将来の資産の現在価値はゼロ)を仮定し、perturbation argument methodまたはLagrange未定乗数法による。
*2:オイラー方程式からは、消費CAPM理論の定式化も導ける。ただし、現実へのあてはめについては、解決できない問題(株式プレミアムパズル)がある。
*3:F(K,L)=A・K^a・L^(1-a):コブダグラス型と仮定すると、ラグランジュ未定定数法より、wL/(1-a)=rK/a?
*4:調整費用が考慮されない。
*5:GDP統計で見る経済成長に関しては、消費よりも設備投資が重要な要素。また、消費について、代表的個人の効用最大化を想定するモデルの問題については、次のコメント・議論を参照。
*6:会計的には資産。
*7:q>1であれば、資本を得るよりも資本を増加させることで、利益を生み出すことができる。その意味でqは、「平均」ではなく「限界」の概念。
*8:次のコメント・議論を参照。
*9:つまり、(ライフサイクル・恒常所得仮説の含意とは異なり、)過剰反応が観測され、一定の政策効果を持つことが証明される。
*10:オイラー方程式によるアプローチとは別の定式。
*11:信用チャネルについては、銀行の財務状況による「貸出チャネル」と、企業の財務状況による「バランスシート・チャネル」に分かれる。
*12:06/03付けエントリー参照。なお著者は、このフィナンシャル・アクセラレータ効果と、期待成長率の低下が設備投資の低迷の主因であると主張。
*13:失業不安ダミーの係数も大きい。
*14:ここはポイントか。
*15:不確実性指標の影響も有意。
*16:加えて、ichigoBBSにおけるいわゆる「ザモデル議論」を整理したいと考えている人にも適した書。


Negro他「大脱出?FRBの非標準的政策の定量的効果の評価」2010 - リフレーションに関連する海外記事および論文集 - アットウィキ
https://www29.atwiki.jp/nightintunisia/pages/23.html

The Great Escape? A Quantitative Evaluation of the Fed’s Non-Standard Policies



Marco Del Negro, Gauti Eggertsson, Andrea Ferrero, Nobuhiro Kiyotaki 


March 3, 2010 


Abstract

この論文では、名目賃金の硬直性と価格の摩擦を取り入れ、短期名目金利のゼロ下限を明示的に取り扱えるように拡張した清滝=ムーアモデル(2008)を考察する。我々は2008年のアメリカの金融危機と同等のショックをこのモデルに与える。この枠組みにおいて我々が問うのは次のようなことである。名目金利のゼロ下限のために、これ以上金利の引き下げができなくなった時に、流動的な政府の負債と非流動的な民間の資産とを交換するという非標準的な金融政策はどのような効果を持つであろうか?我々はこの非標準的金融政策の効果はゼロ金利の下では大きいものとなりうることを明らかにする。モデルのシミュレーションからこれらの政策は2008年〜2009年に大恐慌の再来を防いだことがわかったのである。


1 Introduction

2008年、フェデラルファンドレートはゼロまで降下した。金利の操作を通じた標準的な金融政策はその限界に達した。その同時期に連邦準備は1兆ドル、アメリカのGDPの7%、ほどの資産を拡大させた(図1を見よ)。この拡張は政府の流動性----貨幣と公債---と民間資産との交換(直接の購入や短期証券の担保として)を含むものがほとんどであった。これは様々な「手段」---Term Auction Facility (TAF)やPrimary Dealer Credit Facility (PDCF) を通じて行われた。広い意味でこれらの手段を通じての政策執行は、政府が極めて流動性の高い負債とより流動性の低い民間の資産との交換という「非標準的」公開市場操作と考えることができる。言い換えるならば、これらは緩い意味で非標準的な「公定歩合貸出(discount window)」と捉えることができるのである。これらもまた(この場合は担保として)民間資産を政府の流動性と交換することを含む。この論文はこの政策の定量的な効果を考察するものである。そして得られた結果は、その効果は特にゼロ金利の下では非常に大きなものになりうる、と言うことである。


Wallace (1982)の有名なirrelevance result以来、多くのマクロ経済学者にとってもベンチマークは民間資産に対する非標準的な公開市場操作は影響を与えないというものだった。この結果はEggertsson and Woodford (2003)によって拡張され、ゼロ金利の下で名目的・貨幣的摩擦があるモデルで標準的な公開市場操作、すなわち公債の通貨発行による償却、についてもirrelevance resultが成り立つことが示された。これらのモデル、あるいは他のほとんどのモデル---Rotemberg and Woodford (1997)やChristiano, Eichenbaum and Evans (2005)やSmets and Wouters (2007)など---では「流動性」には何の役割も存在しない。いかなる民間証券---株式であろうと社債であろうと---の価格は経済のさまざまな状態における支払に依存している。これらの証券の供給は、もしそれが状態依存ペイオフを変化させない時にはirrelevantである。政府や民間部門がある特定の株や証券がもたらす期待収益の流列を一定に保ったままそれらを保有することの何が重要なのだろうか?実際、最近のよく知られた論文Taylor and williams (2009) で最近の危機において連邦準備の行った操作、特にTAFは実際の影響が全くなかったと結論づけている。それ以前の研究はWallaceのirrelevance resultを取り込んだ現代的な一般均衡理論に基づいていると考えられる。


この論文で我々は素直な方法でWallaceのirrelevance resultを破る。Kiyotaki and Moore (2008)(以下、KMとする)で提案された信用摩擦の具体的な方法を取り込む。我々の目的は二つある。第一に、我々はKMでモデル化された流動性ショックが現在の不況で観察されているようなマクロ変数と金融変数の動きを定量的に生成するかどうかを調べる。第二に、KMで示されたどのような形の信用摩擦が2008年から2009年の危機の間に採用された連邦準備の手段の定量的な効果を表しているのかを探る。KM信用摩擦は二つの異なる形式を取る。一つ目は、投機機会に直面した企業(または銀行)はその投資のネットの現在価値収益の一定割合までしか借入することができないものである。これは比較的標準的な借入制約である。二つ目は、売却に関する制約である。投機機会に直面した企業は毎期その「流動」資産のある一定割合しか売却できないとするものである。これらの流動資産は他の形でのエクイティに対応する。より一般的に言うと、これらの流動資産を民間部門が発行したコマーシャルペーパー、銀行のローン、株式、住宅ローンなどと解釈する。


KMではこの売却制約を不完備情報をベースに議論しているが、ここではいかなるミクロ基礎についても扱わないが、それを所与のものとして扱いその定量的インプリケーションについて考察する。売却制約にさらされる民間部門の流動性の扱いとは対照的に、政府発行の証券、すなわち貨幣と公債、について我々はKMに従い、この制約はないものとする。これによって政府の負債と貨幣は取引を円滑にする「流動性」としての需要な役割を果たすことになる。この経済においてはWallaceのirrelevance resultはもはや成立しない。なぜなら民間部門が保有する流動性と非流動性資産の相対量は均衡に影響を与え、政府がその比率を変化させることができるからである。これは2008年の危機の自然な説明を与え、KMモデルでの連邦準備の反応を追認する。


2008年危機の原因として考えられるショックとして我々は民間資産の売却制約へのショックを考えた。信用市場は突然膠着した。我々は2008年危機の中心的な側面としてとらえるものとこのショックを考える。定量的な分析のために我々は我々がファンドのデータから構築し、「流動性シェア」---経済における流動性資産の比率---を捉える新しい観察可能な変数をマッチングすることでこのショックをカリブレートした。このショックをカリブレートする観察可能なモデルの変数を使うことに加え、1兆ドルの介入を政府の非標準的政策反応関数をカリブレートするために使用した。これによって我々は危機のショックの定量的な影響を分析できるだけでなく、連邦準備が介入しなかった場合の反実仮想的な経済の変化も調べることが可能になった。


我々はKM信用摩擦をChristiano, Eichenbaum and Evans (2005) やSmets and Wouters (2007) に沿った比較的標準的なDSGEモデルに埋め込む。このモデルは賃金と価格の当局製と集計的な資本調整コストといった標準的な摩擦を含む。標準的な金融政策は名目金利の変更である。非標準的な政策は毛試合全体の流動性のレベルを増加させる民間資産の公開市場操作である。


最初の主な結論は、物価と賃金の硬直性がない場合には金融ショックも1兆ドルの介入も大きな定量的な影響はない、というものである。二番目の主な結論は、このモデルの他の摩擦を先行研究と整合的な値でカリブレートし、金融政策がテイラールール(名目金利がインフレ率に対して1対1以上に反応するルール)に従うならば、金融ショックも非標準的政策も重要な影響を与える、ということである。三番目の結果は、短期名目金利にゼロ下限が導入されると、介入が行われない場合には経済が大恐慌タイプの崩壊を味わうことになる。介入を伴う場合にはこれとは対照的にアメリカ経済において現在観察されるような反応を示す。これがこの論文のタイトルを「大脱出」と名付けた理由である。なぜなら、我々の数値例では非標準的政策なしではアメリカ経済は第二の大恐慌を経験したことになっていたはずだからである。非標準的政策がゼロ金利の下で特に大きな効果がある理由はChristiano, Eichnbaum and Rebelo (2009) とEggertsson (2009)で示されたものと同様である。ゼロ金利の下では財政政策の乗数は通常よりも大きくなるからである。


この論文はBernanke, Gertler and Gilchrist (1999), Christiano, Motto and Rostagno (2003, 2009), Goodfriend and McCallum (2007) and Cudia and Woodford (2009a)といった金融DSGEの金融摩擦を導入した一連の研究に属するものである。Gertler and Karadi (2009)、Gertler and Kiyotaki (2009)、Curdia and Woodford (2009b)は現在の不況における非伝統的な中央銀行の政策の役割について分析している。


先へ進む前に、この分析の重要な限界について強調しておきたい。我々の主な目的は非標準的政策が、それらには効果がないというWallaceのベンチマークに対して、重要な定量的インプリケーションを持つかどうかを理解することである。この問いに光を当てるために我々は第一接近として最も自然と思われるKiyotaki and Moore (2008) で提案された流動性制約の特定の形式を選んだ。しかしながら、これらの流動性制約はある意味においての「誘導形」である。つまりこのモデルは今後の重要な検討課題となるであろうより長期の問題について取り組むためには現在の方法では役に立たないのである。具体的には我々のアプローチはレンプ準備が行ったような介入が民間部門の今後のインセンティブ構造に与える影響については何も語らないが、そのような介入は我々がここで所与とした「誘導形」流動性制約を内生的に変化させるかもしれないのである。より一般的に言えば、我々は介入のコストをモデル化していないのであるが、それは非常に大きなものになりうるのだ。したがって、これは規範的な論文ではなく、実証的なものである。非標準的な金融政策は短期のマクロ経済安定製には定量的に重要な効果を与えることを示す。そしてこの結果の理解が今後の研究課題として重要になるであろう。


2 The model

モデルは6つの異なる経済主体からなる。企業家、資本供給者、消費財供給者、金融供給者、労働者、そして政府である。我々は企業家の説明から始める。もっとも標準から外れるからであり、モデルの核心であるからである。彼らが直面する問題は本論では標準的な実質及び名目負債からなる「流動」資産の特定化を除いてKiyotaki and Moore (2008) のものと同一である。モデルの残りは他のいくつかのDSGE研究と同様である。[...]


10 Conclusions

この論文で我々はKiyotaki and Moore (2008)によって提示された金融摩擦の理論を使って非標準的金融政策について分析した。そして非標準的政策は大きな効果があることが示された。特にゼロ金利においては顕著である。また、数値例においては非標準的政策が採られなかった場合には大恐慌が発生することを示した。


清滝信宏氏とジョン・ムーア氏の論文「流動性、景気循環、金融政策」(2008年)
Liquidity, Business Cycles, and Monetary Policy Nobuhiro Kiyotaki (Princeton University)  and John Moore (London School of Economics) 2008






アベノミクス:
砂漠にスプリンクラーで水を撒くようなもの
循環システムが壊れているのだからまずそれを直さなければならないのに
ただ量を増やせばいいと言うものではない
水が流れたままだから修理がしにくい


大脱走 - himaginaryの日記
http://d.hatena.ne.jp/himaginary/20100306/The_Great_Escape

大脱走Add Starnabezo-rhat_24ckg

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昨日(と言っても日本時間で言えばほぼ今日)、サンフランシスコ連銀で「Financial Market Imperfections and Macroeconomics」という一日掛かりのセミナーが行なわれたらしい(Economist’s View経由)。スケジュール表を見ると、イエレン総裁自身が開会の辞と晩餐の挨拶を務め、スヴェンソン・リクスバンク副総裁が晩餐のスピーカーになっている。


発表者も討論者も錚々たる顔触れが揃っているが、その中でも、清滝信宏プリンストン大学教授と、今ある意味旬の人であるEggertsson等4人による共同発表が目を惹いた。タイトルは「The Great Escape? A Quantitative Evaluation of the Fed’s Non-standard Monetary Policy」となっている。
幸いにも発表者の論文へのリンクも張られているので、発表内容を凡そ把握することができる。論文の梗概は以下の通り。
This paper extends the model in Kiyotaki and Moore (2008) to include nominal wage and price frictions and explicitly incorporates the zero bound on the short-term nominal interest rate. We subject this model to a shock which arguably captures the 2008 US financial crisis. Within this framework we ask: Once interest rate cuts are no longer feasible due to the zero bound, what are the effects of non-standard open market operations in which the government exchanges liquid government liabilities for illiquid private assets? We find that the effect of this non-standard monetary policy can be large at zero nominal interest rates. We show model simulations in which these policy interventions prevented a repeat of the Great Depression in 2008-2009.
(拙訳)
論文は、清滝=ムーア(2008)のモデルを拡張し、名目賃金と価格の摩擦を取り入れ、短期名目金利のゼロ下限も明示的に組み込んだ。我々はこのモデルに対し、2008年の米国金融危機をほぼ正確に再現するショックを加えた。ここでの我々の問題意識は、ゼロ下限によって金利引き下げができなくなった場合、政府が非流動的な民間資産を流動的な政府負債に交換するという非伝統的な公開市場操作の効果はどの程度か、ということである。我々は、その非伝統的な金融政策の効果が、ゼロ金利において大きなものになり得ることを見い出した。我々のモデルシミュレーションは、そうした政策介入が、2008-2009年に大恐慌の再来を防いだことを示している。


そのゼロ金利における政策介入の効果を示したのが、以下に引用する論文の図10である。
f:id:himaginary:20100306142650j:image
これを見ると、ゼロ下限制約が無ければ金利は約-3.5%まで下がっていたことになる(赤点線)。その場合、生産とインフレ率の低下は最大約4%であるが、それに政策介入を加えていれば、いずれも1%ほど改善していたことが分かる(赤実線;金利も-2%までの低下で済む)。一方、ゼロ下限制約を取り込むと、何もしなければ生産は一割近く落ち込み、インフレ率も-8%に近づいてたことになる(青点線)。政策介入のお蔭で、いずれも4%ほど改善する(青実線)。つまり、ゼロ金利制約の下では、そうした制約が無い時に比べ、政策介入は約4倍の効果を持つのである*1


また、論文では、極端なケースとして、ショックが2年ではなく(大恐慌や日本の90年代のように)8年間継続した場合のシミュレーションも行なっている。それが以下の論文の図8である。
f:id:himaginary:20100306180254j:image
この場合、政策介入が無ければ、生産は2割近く落ち込み、デフレは15%を超えていた。政策介入により、それぞれ5%前後の低下で済むことになる*2。まさに政策によって大恐慌の再来というセカンドインパクトの虎口を逃れたことになるわけで、論文ではこれを「大脱走(The Great Escape)」と呼んでいる。


なお、このモデルのシミュレーションに際して鍵となる変数は、流動性資産が全体資産に占める割合(流動性比率=liquidity share)とのことである。危機の際、その流動性比率が2割以上跳ね上がったことが実際のデータから分かるが(下図=論文の図2)、これは政府中央銀行)の流動性の供給と、非流動性資産にくらべ流動性資産の相対価格が上昇したという2つの効果が合成されたものになっている。FRB流動性供給は1兆ドルであることが分かっているので、これから流動性ショックの規模も算定することができるとの由。
f:id:himaginary:20100306184224j:image


…ちなみに当該セッションの討論者はジェームズ・ハミルトンとのことなので、ひょっとしたらEconbrowserで何らかの後報が上がるかもしれない。
*1:ちなみに論文の表2では、FRBのバランスシート拡大が生産に与える効果の乗数が示されているが、ゼロ金利制約が無い時が0.233、ある時が0.629で、その比率は2.7となっている。なお、この乗数はピーク値についてではなく、期間合計についてのものであることに注意。
*2:この場合の乗数は、ゼロ金利制約が無い時は0.288で標準シミュレーションの場合とそれほど変わらないが、ゼロ金利制約がある時は2.295に達する(前注と同じく論文の表2より)。
Fellow TravelerFellow Traveler2010/03/07 11:28いつも大変勉強になります。
ところでスヴェンソンは副総裁ではないでしょうか。
http://www.riksbank.com/templates/Page.aspx?id=26735
himaginaryhimaginary2010/03/07 12:00ご指摘ありがとうございます。修正しました。

9 Comments:

Blogger yoji said...


    「ショック」が及ぼす効果

     企業家    投資家     地価の動き
今期                  土地の担保価値低下
              ↙︎
        企業家への融資額減少
        ↙︎
   土地に対する投資減少
              ↘︎
               土地の遊休化 →地価下落
                       ↓
来期                  土地の担保価値低下
              ↙︎
        企業家への融資額減少
        ↙︎
   土地に対する投資減少
              ↘︎
               地価下落予想 → 地価下落
                       ↓

12:36 午前  
Blogger yoji said...

実際に世の中に出回っているお金の指標にマネーサプライというのがあるのですが、
マネーサプライ=「現金」+「普通預金」+「当座預金」+「定期預金」+「外貨預金」+「譲渡性預金(CD)」
の総合計でして、現在約900兆円ぐらいです。この残高が増えないとインフレや
円安にならないと言われており、今まで、白石前日銀総裁もマネタリーベースを増やしてきたのですが、マネーサプライがほとんど増えなかったので、
デフレの現状が続いているということでした。今回、黒田総裁はマネタリーベースをちびちびと増やすのではなく、皆がびっくりするほどの規模で増やすということで、
インフレ期待感をあおり、マネーサプライを増やそうとしているのです。マネーサプライには銀行の信用創造分が加味されており、例えば、Aが100円を銀行に預金し、
銀行がそのお金をBに貸し出すとマネーサプライは200円となります。Bがまたこのお金を預金して銀行がCに貸し出すとマネーサプライはAの預金100円、Bの預金100円、Cの現金100円で300円になります。100円のベースマネーが300円の
マネーサプライとなるのです。ようするに経済が活性化してお金が世の中をぐるぐる回り、
銀行貸出が増えるとマネーサプライが増えるのです。そのために規制緩和等の第2第3の矢を放つと安部政権は言っておるのですが、これが本当にできるかどうかがポイントになってきます。
ものすごく大きな石を動かそうと白川前総裁が押していたのですが、全然動かないので、黒田総裁がどかんと動かしたと言う状況です。
これが適度な速さで動いてくれれば良いのですが、
制御を間違えると加速していき、今度は止めることが出来なくなるかもしれません。
その結果お金の価値が半分になるということはあるのかもしれません。



日銀はお金を刷れるのでどこからも持ってきません。当座預金の残高の数字を増やすだけです。引き出されてお札が必要な場合はお札を刷るだけです。
マネタりーベースが2倍になってもマネーサプライは2倍にはなりません。マネーサプライ(マネーストック)が2倍になればお金の価値は半分になります。

8:39 午前  
Blogger yoji said...

全要素生産性(ぜんようそせいさんせい)とは - コトバンク
kotobank.jp/word/全要素生産性-5295
全要素生産性ぜんようそせいさんせい. Total Factor Productivity. TFP。経済成長を供給面から分析すると、労働と資本という通常の生産要素と、それらの要素でははかれない技術革新などの要因があるが、後者のことをいう。

1994年(平成6)版の経済白書 ...
野村證券 | TFP(証券用語解説集)
www.nomura.co.jp/terms/english/other/A02825.html
全要素生産性(Total Factor Productivity、TFP)の略称。経済成長(GDP成長)を生み出す要因のひとつで、資本や労働といった量的な生産要素の増加以外の質的な成長要因のこと。技術進歩や生産の効率化などがTFPに該当する。TFPは直接計測することが ...

6:33 午後  
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経済ショックが生産性低下の循環を招く「清滝・ムーアモデル」を構築した米プリンストン大 清滝信宏教授 - NAVER まとめ
https://matome.naver.jp/odai/2144391944739076401
土地や住宅などの資産を担保にお金を借りられる経済では、資産価格の変動が信用市場と経済活動に与える影響を増幅し、しかもその影響は長期間続く――清滝らはこの現象を理論的に証明した。バブル崩壊後の日本の「失われた10年」を説明する理論であり、08年のアメリカ発金融危機も説明できるとして引っ張りだこになった。
清滝教授が主張してきた「清滝=ムーア クレジットサイクル」という学説
出典
livedoor.blogimg.jp
清滝教授が主張してきた「清滝=ムーア クレジットサイクル」という学説
「清滝=ムーア」モデルが優れているのは3つの数式に簡略化できるシンプルさだ。研究者は独自の変数(賃金や価格など)を追加して、持論を検証したり政策をシミュレーションすることができる。

2:58 午後  
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信用と景気循環
203
右辺は企業家の土地·工場1単位当りの生産物から,
工場の利子·減
である·
価償却費を差し引いた値に等しい.

203頁

資源配分が効率的となる条件は,企業家の土地の限界生産が資産家の土地の
限界生産と等しくなることである (図5の点C), しかしこのモデルの経済の
均衡では,企業家の信用が制約されているために,企業家の土地の限界生産が
資産家のそれを上回る (図5の点E),つまり,企業家の土地が効率的な配分
比べて過小となっている(K*<K0).経済全体の生産量は限界生産の曲線の
の面積で表されるので, この経済の定常的均衡では総生産量が,効率的な配
に比べて図のCDEの斜線の部分だけ小さくなっている. また定常的均衡の
近傍で,企業家の土地 Ktが増加すると,生産量の損失CDEが小さくなり,総
生産量Yt+1が増加する.


から将来
点)にお
発散しな
(25)
生産量
+1が増加する。
示すると
土地は右
産を表
地の限
次に,企業家の生産性が突然一時的に変化したとき,均衡で何が起こるか考
察しよう。仮にt-1期には経済は定常的均衡にあったとして, t期において企
業家の生産性が一時的に だけ, t-1期の予想に反して上昇し, t+1期以降
にはもとの水準に戻ったとしよう·動学的均衡における地価·企業家の土地.
負債の径路(qr, K,, Br),a:は(20), (21), (24)式によって特徵づけられる
が, t-1期における(24)式だけは予期しない変化のために事後的に成立しな
い, その替り地価atは, (25)式を満たし定常的均衡に収束するような径路の
上に急上昇することになる数学的な分析はKiyotaki-Moore (1993) を参照
することにして,本論では直観的な説明を行なうio), t期において企業家の生
E
(26)
10)
t-1期における
(24)
式から,
Q1は
(24')
となる. (24')式を(20, (21)式のQ1に代入すると, K.とBtはq,-, Kt-1,B-1の関数となり,
式と合わせる
(24')
この差分方程式を定常的均衡の近傍で線型
e,
(q,,K, B.)の非線型差分方程式となる.
近似すると,
at-i-q
Bt-B
Bi-1-B
となる、たたしJはジ
件の下で
Jの固有値の1つはRに等しく,
素数となる.
他の2つの固有値は一定の条
したがってこの勤学系は鞍点解となり. K., Bt-1を
ャコピアンで.
絶対値が1より小さ1、複
式を満たして
,
与とす
唯一の鞍点径路が存在する
ると、
る.
まる
(25)
また
定常的均衡に循環しながら収束する,
(24')式は前期の時
点(1-1期)で満たされるとは限らず,
q'は鞍点径路上に乗るよ

11:50 午後  
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https://r.nikkei.com/article/DGXMZO34111020T10C18A8TCR000?unlock=1&s=4

リーマン後10年、次の危機は(時論)

清滝信宏氏

2018年8月14日 2:00
米証券大手リーマン・ブラザーズが破綻してから9月で10年を迎える。世界中に広がった金融危機の記憶は薄れつつあるものの、米中の貿易戦争など次なる危機への懸念も生じている。財政再建の進まない日本も含め、今後起こりうるリスクへの備えは十分か。金融危機の経済分析で世界的に知られる米プリンストン大の清滝信宏教授に聞いた。

貿易戦争、金融に波及も


――2008年8月、信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題について「適切な政策で危機は回避できる」と本紙「経済教室」に書きました。

「直感でそう書いたが、将来のことは分からない。07年夏から米連邦準備理事会(FRB)は短期金融市場に流動性を供給するなど様々な政策により危機を封じ込めようとしていた。その方向は間違っていなかったが、08年9月にリーマンを破綻させたのは予想外だった。同年3月に米当局は証券大手のベア・スターンズを救済し、世論の批判を浴びていた。政治的なプロセスはよく分からないが、当局が金融大手を続けて救済するのはまずいと思ったのではないか」

――リーマン破綻以降、米当局は大規模な資産買い入れなど非伝統的な政策に踏み切った。

「市場の流動性が枯渇する金融危機の際には、リスク資産と安全資産の間のスプレッド(利回りの差)が大きくなる。FRBがリスク資産を買い取ることでスプレッドを抑えたのは市場の不安を和らげるための措置として適切だった。さらに当局は流動性の高い資産を供給する代わりに低い資産を買い取ることで、後々利益を得られる。実際、FRBは09~10年に過去最高の利益を国庫に納入した」

――日米欧の対応にはどのような違いがあったと考えますか。

「米当局の対応は90年代の日本に比べると迅速だった。危機に陥った金融機関への資本注入などは同じようだったが、タイミングが圧倒的に早かった。さらに欧州と比べて政策への信頼も厚かった。FRBが09年に大手銀の健全性を評価した資産査定(ストレステスト)を公表すると、直後から各種の金融指標が安定した。欧州のストレステストがなかなか市場の信頼を得られなかったのとは対照的だ」

「米当局が迅速かつ信頼性の高い政策を打ち出せた要因は2つある。一つは資本市場が高度に整備されていたため、証券化されたローンの価値が評価しやすかった。もう一つは資産評価や審査を担う当局の人数が非常に多かったためだ」

――10年制定の米金融規制改革法(ドッド・フランク法)などにより次の危機は封じ込められますか。


「危機の引き金となった投資銀行をはじめ、大銀行への規制は大幅に強化された。自己資本を厚く積ませるだけでなく、仮に破綻したときも混乱を引き起こさないように手続きを明確化した。大銀行については危機前よりも安全になった」

――次の危機の芽はなんでしょうか。

「貿易戦争がエスカレートするのを心配している。米トランプ政権が自動車や関連部品の輸入に多大な関税を課したら大変なことになる。貿易関税が上がればインフレ要因となり、米財政も拡張気味だからFRBはさらに金利を上げるだろう。それらのショックが為替の混乱や株価の下落を通じて金融システムに及ぶ可能性がある。いわば相乗効果の危機だ。実際に米国の利上げの影響もあって、一部の新興国では資本流出が起きかけている」

日本、財政破綻へ備えを

――日本は約20年前に金融危機に直面し、リーマン危機を迎えました。

「日本は90年代のバブル崩壊以降、生産性が伸びていない。技術革新が停滞しているだけでなく、人的資本の蓄積が進んでいない可能性がある。かつての日本企業は若い人を雇ってがっちり訓練していた。長引く不況で新規採用を削り続けた結果、熟練労働は継承されず、人的資本の蓄積も進まなくなった」

「中途採用の拡大で企業が『コストをかけて訓練しても辞められてしまうので訓練しない』という意識になった。そうなると自己負担で向上するしかないが、誰もができるわけではない。成功者と失敗者、経営者と被雇用者などの格差が大きくなった。雇用流動性が高くなるのはある程度は仕方ない現象だが、日本は金融危機が労働市場の変化に結びついたパターンだ」

――アベノミクスをどう評価しますか。

「安倍政権と黒田日銀は多少のリスクはあってもデフレを止めるという政策にかじを切った。デフレが止まってインフレになれば長期債の価格が下がり、金融機関などに損失が出る恐れがある。しかしインフレによる金利上昇で利子所得が増えれば5~6年で損失は解消できる。そのような考え方は間違っていない」

「政策がうまくいっていないという人もいるが、安倍政権の前は物価はマイナス1%からゼロ近傍だった。それがゼロからプラス1%の間に収まるようになったのだから、政策目標は半分くらい達成した。デフレは少なくとも止めたと言える」

――金融政策は今後どう展開すべきでしょう。

「2%の物価上昇率を達成する目標はあきらめる必要はないが、無理して2%にこだわる必要はない。1%の上昇率を2%に高める利益は、マイナス1%をプラスにする利益よりは小さいからだ。物価上昇率はプラス1~2%に収まっていればいい」

「一方で日銀が導入したマイナス金利には副作用がある。金融機関の収益を圧迫するだけでなく、資源配分をおかしくしてしまう。例えば相続税対策のアパート建設に金融機関が貸し込んでいることがその兆候だ。社会的に有用な投資とはいえず、ゆがみを生んでいる。マイナス金利はそろそろ解除すべきだろう」

――日本の財政は持続可能ですか。

「かなり危ない。財政破綻に備えたコンティンジェンシープラン(緊急時の対応計画)を作り、国民の合意を取り付けるべきだ。プランは支出カット、税収増、インフレによる国債減価という3つの政策をどのような割合で発動するかがポイントになる」

「支出カットと税収増の双方に効くのは定年延長で長く働いてもらうことだ。年金の支給期間を短くし、元気な高齢者に働いて税金も納めてもらうことが基本になる。ただし雇用形態が多様になっているので、所得の捕捉は難しい。税収増には消費増税も欠かせない」

「財政破綻への対応で重要なのは、病気などで衰えた人にも最低限の生活を保障することだ。まずは憲法が定める『健康で文化的な最低限度の生活を営む権利』を国民に確保すること。それ以上は資本主義国家なのだから、自分でがんばれというのが原則だ」

――そのような困難な状況は起こりますか。

「やがて外国人が大量に国債を買う時がくる。日本の貯蓄率がどんどん下がり、自国だけでは債務の償還や借り換えが間に合わなくなるからだ。外国人は低金利では国債を買わない。そこで金利の急上昇を引き金として財政危機がやってくる。低金利や高い貯蓄率がいつまでも続くとは考えない方がいい」

――未然に防ぐ手立てはありませんか。

「財政の持続可能性は政府の責任だ。金利が上昇したときに日銀に国債を買わせて上昇を抑えるなど無理なこと。財政の持続可能性について長期的なメドを立てるしかない。19年10月に予定される消費増税はやるべきだ」

ノーベル経済学賞の呼び声
 きよたき・のぶひろ 1978年に東大経済学部を卒業後、85年に米ハーバード大博士。英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)教授などを経て2006年から現職。専門は金融理論とマクロ経済学。金融危機が資産価格の下落を通じて実体経済に波及する過程を理論化した「清滝=ムーア・モデル」などで世界的に知られる。10年以降は日本人として初めてノーベル経済学賞を受賞するか注目されている。大阪府出身、63歳。

◇   ◇

〈聞き手から〉政策決定、理論家と対話を

「金融パニックの経済モデル」「FRBによる流動性供給の量的評価」――。清滝氏は近年発表した論文でも10年前の金融危機を研究対象としている。「昔は『そんなの重要なのか』と言われていたが、今は話を聞いてくれるようになった」。危機前から金融ショックの重要性を論じ続けてきた自負がのぞく。

金融危機後、FRBや国際決済銀行は清滝氏が重視するレバレッジ(負債依存度)や流動性に関する規制強化を進めた。有限責任監査法人トーマツの大山剛パートナーは「清滝氏の理論モデルは新たな規制のバックボーンの一つとなった」と話す。

清滝氏はインタビューで、07年以降にニューヨーク連銀の担当者と市場介入の手法について意見交換した経験も明かした。理論の構築にとどまらず、政策形成の現場に赴く行動派の顔も見せる。一方で大規模な資産買い入れなど異例の政策に踏み切った米当局が、理論家とも積極的な対話の場を持っていた側面もうかがわせて興味深い。

日本はどうか。安倍政権下の経済財政諮問会議は14年以降、政策コメンテーターと呼ばれる有識者から意見を吸い上げている。しかし消費増税の判断など重大な局面に「有識者の議論が反映されたとは言いがたい」(鶴光太郎・慶大教授)。政策コメンテーターを務める清滝氏は今回、日本財政の危機的な状況に警鐘を鳴らした。政策決定を官邸に一元化するだけでなく、外部との開かれた対話に臨む柔軟性が問われている。

(高橋元気、高見浩輔)

7:56 午前  
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https://r.nikkei.com/article/DGXMZO34111020T10C18A8TCR000?unlock=1&s=4

リーマン後10年、次の危機は(時論)

清滝信宏氏

2018年8月14日 2:00
米証券大手リーマン・ブラザーズが破綻してから9月で10年を迎える。世界中に広がった金融危機の記憶は薄れつつあるものの、米中の貿易戦争など次なる危機への懸念も生じている。財政再建の進まない日本も含め、今後起こりうるリスクへの備えは十分か。金融危機の経済分析で世界的に知られる米プリンストン大の清滝信宏教授に聞いた。

貿易戦争、金融に波及も


――2008年8月、信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題について「適切な政策で危機は回避できる」と本紙「経済教室」に書きました。

「直感でそう書いたが、将来のことは分からない。07年夏から米連邦準備理事会(FRB)は短期金融市場に流動性を供給するなど様々な政策により危機を封じ込めようとしていた。その方向は間違っていなかったが、08年9月にリーマンを破綻させたのは予想外だった。同年3月に米当局は証券大手のベア・スターンズを救済し、世論の批判を浴びていた。政治的なプロセスはよく分からないが、当局が金融大手を続けて救済するのはまずいと思ったのではないか」

――リーマン破綻以降、米当局は大規模な資産買い入れなど非伝統的な政策に踏み切った。

「市場の流動性が枯渇する金融危機の際には、リスク資産と安全資産の間のスプレッド(利回りの差)が大きくなる。FRBがリスク資産を買い取ることでスプレッドを抑えたのは市場の不安を和らげるための措置として適切だった。さらに当局は流動性の高い資産を供給する代わりに低い資産を買い取ることで、後々利益を得られる。実際、FRBは09~10年に過去最高の利益を国庫に納入した」

――日米欧の対応にはどのような違いがあったと考えますか。

「米当局の対応は90年代の日本に比べると迅速だった。危機に陥った金融機関への資本注入などは同じようだったが、タイミングが圧倒的に早かった。さらに欧州と比べて政策への信頼も厚かった。FRBが09年に大手銀の健全性を評価した資産査定(ストレステスト)を公表すると、直後から各種の金融指標が安定した。欧州のストレステストがなかなか市場の信頼を得られなかったのとは対照的だ」

「米当局が迅速かつ信頼性の高い政策を打ち出せた要因は2つある。一つは資本市場が高度に整備されていたため、証券化されたローンの価値が評価しやすかった。もう一つは資産評価や審査を担う当局の人数が非常に多かったためだ」

――10年制定の米金融規制改革法(ドッド・フランク法)などにより次の危機は封じ込められますか。


「危機の引き金となった投資銀行をはじめ、大銀行への規制は大幅に強化された。自己資本を厚く積ませるだけでなく、仮に破綻したときも混乱を引き起こさないように手続きを明確化した。大銀行については危機前よりも安全になった」

――次の危機の芽はなんでしょうか。

「貿易戦争がエスカレートするのを心配している。米トランプ政権が自動車や関連部品の輸入に多大な関税を課したら大変なことになる。貿易関税が上がればインフレ要因となり、米財政も拡張気味だからFRBはさらに金利を上げるだろう。それらのショックが為替の混乱や株価の下落を通じて金融システムに及ぶ可能性がある。いわば相乗効果の危機だ。実際に米国の利上げの影響もあって、一部の新興国では資本流出が起きかけている」

日本、財政破綻へ備えを

――日本は約20年前に金融危機に直面し、リーマン危機を迎えました。

「日本は90年代のバブル崩壊以降、生産性が伸びていない。技術革新が停滞しているだけでなく、人的資本の蓄積が進んでいない可能性がある。かつての日本企業は若い人を雇ってがっちり訓練していた。長引く不況で新規採用を削り続けた結果、熟練労働は継承されず、人的資本の蓄積も進まなくなった」

「中途採用の拡大で企業が『コストをかけて訓練しても辞められてしまうので訓練しない』という意識になった。そうなると自己負担で向上するしかないが、誰もができるわけではない。成功者と失敗者、経営者と被雇用者などの格差が大きくなった。雇用流動性が高くなるのはある程度は仕方ない現象だが、日本は金融危機が労働市場の変化に結びついたパターンだ」

――アベノミクスをどう評価しますか。

「安倍政権と黒田日銀は多少のリスクはあってもデフレを止めるという政策にかじを切った。デフレが止まってインフレになれば長期債の価格が下がり、金融機関などに損失が出る恐れがある。しかしインフレによる金利上昇で利子所得が増えれば5~6年で損失は解消できる。そのような考え方は間違っていない」

「政策がうまくいっていないという人もいるが、安倍政権の前は物価はマイナス1%からゼロ近傍だった。それがゼロからプラス1%の間に収まるようになったのだから、政策目標は半分くらい達成した。デフレは少なくとも止めたと言える」

――金融政策は今後どう展開すべきでしょう。

「2%の物価上昇率を達成する目標はあきらめる必要はないが、無理して2%にこだわる必要はない。1%の上昇率を2%に高める利益は、マイナス1%をプラスにする利益よりは小さいからだ。物価上昇率はプラス1~2%に収まっていればいい」

「一方で日銀が導入したマイナス金利には副作用がある。金融機関の収益を圧迫するだけでなく、資源配分をおかしくしてしまう。例えば相続税対策のアパート建設に金融機関が貸し込んでいることがその兆候だ。社会的に有用な投資とはいえず、ゆがみを生んでいる。マイナス金利はそろそろ解除すべきだろう」

――日本の財政は持続可能ですか。

「かなり危ない。財政破綻に備えたコンティンジェンシープラン(緊急時の対応計画)を作り、国民の合意を取り付けるべきだ。プランは支出カット、税収増、インフレによる国債減価という3つの政策をどのような割合で発動するかがポイントになる」

「支出カットと税収増の双方に効くのは定年延長で長く働いてもらうことだ。年金の支給期間を短くし、元気な高齢者に働いて税金も納めてもらうことが基本になる。ただし雇用形態が多様になっているので、所得の捕捉は難しい。税収増には消費増税も欠かせない」

「財政破綻への対応で重要なのは、病気などで衰えた人にも最低限の生活を保障することだ。まずは憲法が定める『健康で文化的な最低限度の生活を営む権利』を国民に確保すること。それ以上は資本主義国家なのだから、自分でがんばれというのが原則だ」

――そのような困難な状況は起こりますか。

「やがて外国人が大量に国債を買う時がくる。日本の貯蓄率がどんどん下がり、自国だけでは債務の償還や借り換えが間に合わなくなるからだ。外国人は低金利では国債を買わない。そこで金利の急上昇を引き金として財政危機がやってくる。低金利や高い貯蓄率がいつまでも続くとは考えない方がいい」

7:58 午前  
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――アベノミクスをどう評価しますか。

「安倍政権と黒田日銀は多少のリスクはあってもデフレを止めるという政策にかじを切った。デフレが止まってインフレになれば長期債の価格が下がり、金融機関などに損失が出る恐れがある。しかしインフレによる金利上昇で利子所得が増えれば5~6年で損失は解消できる。そのような考え方は間違っていない」

「政策がうまくいっていないという人もいるが、安倍政権の前は物価はマイナス1%からゼロ近傍だった。それがゼロからプラス1%の間に収まるようになったのだから、政策目標は半分くらい達成した。デフレは少なくとも止めたと言える」

――金融政策は今後どう展開すべきでしょう。

「2%の物価上昇率を達成する目標はあきらめる必要はないが、無理して2%にこだわる必要はない。1%の上昇率を2%に高める利益は、マイナス1%をプラスにする利益よりは小さいからだ。物価上昇率はプラス1~2%に収まっていればいい」

「一方で日銀が導入したマイナス金利には副作用がある。金融機関の収益を圧迫するだけでなく、資源配分をおかしくしてしまう。例えば相続税対策のアパート建設に金融機関が貸し込んでいることがその兆候だ。社会的に有用な投資とはいえず、ゆがみを生んでいる。マイナス金利はそろそろ解除すべきだろう」

――日本の財政は持続可能ですか。

「かなり危ない。財政破綻に備えたコンティンジェンシープラン(緊急時の対応計画)を作り、国民の合意を取り付けるべきだ。プランは支出カット、税収増、インフレによる国債減価という3つの政策をどのような割合で発動するかがポイントになる」

「支出カットと税収増の双方に効くのは定年延長で長く働いてもらうことだ。年金の支給期間を短くし、元気な高齢者に働いて税金も納めてもらうことが基本になる。ただし雇用形態が多様になっているので、所得の捕捉は難しい。税収増には消費増税も欠かせない」

「財政破綻への対応で重要なのは、病気などで衰えた人にも最低限の生活を保障することだ。まずは憲法が定める『健康で文化的な最低限度の生活を営む権利』を国民に確保すること。それ以上は資本主義国家なのだから、自分でがんばれというのが原則だ」

――そのような困難な状況は起こりますか。

「やがて外国人が大量に国債を買う時がくる。日本の貯蓄率がどんどん下がり、自国だけでは債務の償還や借り換えが間に合わなくなるからだ。外国人は低金利では国債を買わない。そこで金利の急上昇を引き金として財政危機がやってくる。低金利や高い貯蓄率がいつまでも続くとは考えない方がいい」

――未然に防ぐ手立てはありませんか。

「財政の持続可能性は政府の責任だ。金利が上昇したときに日銀に国債を買わせて上昇を抑えるなど無理なこと。財政の持続可能性について長期的なメドを立てるしかない。19年10月に予定される消費増税はやるべきだ」

ノーベル経済学賞の呼び声
 きよたき・のぶひろ 1978年に東大経済学部を卒業後、85年に米ハーバード大博士。英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)教授などを経て2006年から現職。専門は金融理論とマクロ経済学。金融危機が資産価格の下落を通じて実体経済に波及する過程を理論化した「清滝=ムーア・モデル」などで世界的に知られる。10年以降は日本人として初めてノーベル経済学賞を受賞するか注目されている。大阪府出身、63歳。

◇   ◇

〈聞き手から〉政策決定、理論家と対話を

「金融パニックの経済モデル」「FRBによる流動性供給の量的評価」――。清滝氏は近年発表した論文でも10年前の金融危機を研究対象としている。「昔は『そんなの重要なのか』と言われていたが、今は話を聞いてくれるようになった」。危機前から金融ショックの重要性を論じ続けてきた自負がのぞく。

金融危機後、FRBや国際決済銀行は清滝氏が重視するレバレッジ(負債依存度)や流動性に関する規制強化を進めた。有限責任監査法人トーマツの大山剛パートナーは「清滝氏の理論モデルは新たな規制のバックボーンの一つとなった」と話す。

清滝氏はインタビューで、07年以降にニューヨーク連銀の担当者と市場介入の手法について意見交換した経験も明かした。理論の構築にとどまらず、政策形成の現場に赴く行動派の顔も見せる。一方で大規模な資産買い入れなど異例の政策に踏み切った米当局が、理論家とも積極的な対話の場を持っていた側面もうかがわせて興味深い。

日本はどうか。安倍政権下の経済財政諮問会議は14年以降、政策コメンテーターと呼ばれる有識者から意見を吸い上げている。しかし消費増税の判断など重大な局面に「有識者の議論が反映されたとは言いがたい」(鶴光太郎・慶大教授)。政策コメンテーターを務める清滝氏は今回、日本財政の危機的な状況に警鐘を鳴らした。政策決定を官邸に一元化するだけでなく、外部との開かれた対話に臨む柔軟性が問われている。

(高橋元気、高見浩輔)

7:59 午前  
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リーマン後10年、次の危機は(時論): 日本経済新聞
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO34111020T10C18A8TCR000

リーマン後10年、次の危機は(時論)
清滝信宏氏
2018年8月14日 2:00

米プリンストン大教授
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米証券大手リーマン・ブラザーズが破綻してから9月で10年を迎える。世界中に広がった金融危機の記憶は薄れつつあるものの、米中の貿易戦争など次なる危機への懸念も生じている。財政再建の進まない日本も含め、今後起こりうるリスクへの備えは十分か。金融危機の経済分析で世界的に知られる米プリンストン大の清滝信宏教授に聞いた。
貿易戦争、金融に波及も
――2008年8月、信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライ
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768 名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 2020/09/22(火) 22:08:38.75 ID:T00FFYzc
766
(記者)「日本の財政は持続可能ですか?」
2018

(清滝教授)「かなり危ない。財政破綻に備えたコンティンジェンシープラン(緊急時の対応計画)を作り、国民の合意を取り付けるべきだ。プランは支出カット、税収増、インフレによる国債減価という3つの政策をどのような割合で発動するかがポイントになる」

(記者)「未然に防ぐ手立てはありませんか」

(清滝教授)「財政の持続可能性は政府の責任だ。金利が上昇したときに日銀に国債を買わせて上昇を抑えるなど無理なこと。財政の持続性について長期的なめどを立てるしかない」

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO34111020T10C18A8TCR000/

769 名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 2020/09/22(火) 22:13:45.69 ID:T00FFYzc
続き

「財政破綻への対応で重要なのは、病気などで衰えた人にも最低限の生活を保障することだ。
まずは憲法が定める『健康で文化的な最低限度の生活を営む権利』を国民に確保すること。
それ以上は資本主義国家なのだから、自分でがんばれというのが原則だ」

――そのような困難な状況は起こりますか。

「やがて外国人が大量に国債を買う時がくる。日本の貯蓄率がどんどん下がり、自国だけでは債務の償還や借り換えが間に合わなくなるからだ。
外国人は低金利では国債を買わない。
そこで金利の急上昇を引き金として財政危機がやってくる。
低金利や高い貯蓄率がいつまでも続くとは考えない方がいい」

――未然に防ぐ手立てはありませんか。

「財政の持続可能性は政府の責任だ。
金利が上昇したときに日銀に国債を買わせて上昇を抑えるなど無理なこと。
財政の持続可能性について長期的なメドを立てるしかない。
19年10月に予定される消費増税はやるべきだ」


日本人の貯蓄で国債買ってるのかー(棒
金利の上昇局面で金融緩和しても利下げできないのかー(棒

8:00 午前  

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