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土曜日, 8月 04, 2018
マルサス『経済学原理』、過少消費説
岩波文庫下262
[420]
「シスモンディ氏は、彼の最近の著作において,蓄積の限界を述べている。『つまり人は,およそ年生産物の総体を前年の生産物の総体と交換するに過ぎない。』[新原理p.120]もしこれが事実であるとするならば,国民生産物の価値はどうして増大するだろうかを言うことは困難であろう。しかし,もし生産物が,それを獲得しかつ消費するために適当な犠牲を払うという願望を刺激するように,よく配分され,かつ社会の嗜好と欲求とにうまく適合されるならば,事実その大きな増大はただちに適当な市場を見い出し,したがって交換価値を大いに増大させるであろう。いっさいの商品の増大はまず収入の増加としてあらわれてくる。そしてそれが正しく分配されかつ消費が供給に正しく比例したことによって価値においても分量においても増大するかぎり,収入の年々の増大と支出およひ需要の年々の増大とが矛盾することなしに,年々の貯蓄がおこなわれることは,明らかなことである。」とマルサスは明らかに,年生産物と年所得を同一視している。彼の場合,問題となるのは年所得と年支出が一致するかどうかということである。…
cycloped回B円tannica,1830. (IT'マルサス人口論綱要~,小林時三朗訳,1959.) (17) Malthu" T, R. P門前ipleso[ PoZitical Economy. 1st edn. 1820, 2nd edn目1836, (W経済学原理~,'J、林時三朗訳,岩波書出,1968,)
欧州 2017年6月25日
【三橋貴明】マルサスの過少消費説
【近況】
18世紀末から19世紀にかけて活躍した経済学者トマス・ロバート・マルサスといえば「マルサスの罠」でございます。
マルサスの時代の経済は、生産活動に「土地」「労働」を投入し、農産物を生産するスタイルでした。土地の広さには限界があるため、当時の経済学は「収穫逓減」が常識でした。
土地という制約条件がある以上、労働をどれだけ増やしても、「労働者一人当たりの生産=所得」は増えません。それどころか、収穫逓減の法則により、投入される労働者「単位当たり」の生産量は減少していくのです。
収穫逓減が必ず成立するとなると、人口の増加率が常に生産物の増加率を上回ることになり、人類は飢餓から逃れることができない。これが「マルサスの罠」でした。
実際には、産業革命や技術革新が、マルサスの罠を破壊することになったわけですが、マルサスと言えば、もう一つ、非常に示唆的なことを言っています。
所得格差の拡大が、過少消費、過剰投資を生み出し、経済を長期的停滞に追い込むという考え方、すなわち過少消費説です。
なぜ、所得格差が過少消費をもたらすのか。低所得者は、消費性向は高いものの、消費するために十分な所得を得られない。高所得者は、消費するために十分な所得はあるが、消費性向が低い。
結果的に、有効需要が不足し、経済は長期停滞に陥る。マルサスの過少消費説は、やがてはケインズの有効需要の理論に引き継がれました。
本気で我が国が経済成長を追求したいならば、消費性向が高く、かつ消費するための所得が十分にある「中間層」の復活が不可欠ということです。と言いますか、中間層を低所得者層に落とす政策は、全て経世済民に反しているということになります。
珍しく、明日に続きます。
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1060987
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1060990