月曜日, 12月 10, 2018

経済学者トマ・ピケティのグループが「より公平なヨーロッパ」を目指して予 算 100兆円規模の税制マニフェストを提案



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NAMs出版プロジェクト: ピケティ関連:メモ
http://nam-students.blogspot.jp/2015/01/blog-post_30.html


ピケティのグループが予算100兆円規模の税制マニフェストを提案
http://gigazine.net/news/20181210-thomas-piketty-group-plan/@


経済学者トマ・ピケティのグループが「より公平なヨーロッパ」を目指して予算100兆円規模の税制マニフェストを提案

By Fronteiras do Pensamento

2015年頃に日本でも注目を集めたフランスの経済学者トマ・ピケティ氏が率いるグループが、崩壊の危機に近づきつつあるといわれるEUを「より公平にするため」に、多国籍企業や富裕層から徴税する総額8000億ユーロ(約100兆円)規模の税制案を中心とするマニフェストを発表しました。

Group led by Thomas Piketty presents plan for ‘a fairer Europe’ | World news | The Guardian
https://www.theguardian.com/world/2018/dec/09/eu-brexit-piketty-tax-google-facebook-apple-manifesto

複数国から集まった経済学者や歴史家、元政治家など50人以上のメンバーからなるグループによって発表されたマニフェストは、多国籍企業や「ミリオネア」と呼ばれる富裕層に重く課税することで税収を増やし、EU諸国が直面している貧困や移民、気候変動、そしていわゆる民主主義の赤字など喫緊の問題に取り組むために必要な資金を捻出しようというものです。

折しもイギリスではEU離脱「ブレグジット」をめぐって国内でも賛否が入り乱れ、各国でも「極右」に分類される政治家による政治が人々の関心を集める中、グループはEUが「技術的な袋小路(technocratic impasse)」に追い込まれていると主張。「もはや従来と同じであり続けることは不可能」であり、「我々はこれ以上、現在のヨーロッパの状態を根本的に変化させないままに新たなEU離脱国を出し、組織が解体してしまうのを待つわけにはいかない」として、新たな政策を進めることを提言しています。

「ヨーロッパの民主化のためのマニフェスト」と題された提言は、以下のサイトで配布されています。このマニフェストには、スペインの左派政党「ポデモス」のパブロ・イグレシアス党首やイタリアのマッシモ・ダレマ元首相、ベルギーの政治家であるポール・マニェット氏、そしてイギリスのブラウン政権の際にアドバイザーを務めたマイケル・ジェイコブズ氏らが署名を行っています。

Manifesto - Manifesto for the democratization of Europe : Manifesto for the democratization of Europe
http://tdem.eu/en/manifesto/


このマニフェストの骨子といえるのが、8000億ユーロ(約100兆円)規模の税制改革案です。巨額の税収の内訳(下図左)は、AppleやGoogle、Amazonといった巨大多国籍企業の課税率に15%分を上乗せすることで得られる税収と、年収10万ユーロ(約1300万円)以上の個人に対する増税、そして評価額100万ユーロ(約1億3000万円)以上の個人資産に対する富裕税、そして企業などが排出する二酸化炭素に対する課税などで賄われます。


このようにして得られた税収は、その半分がEU各国に分配されるほか、25%がEU全体での研究開発や教育に、そして残りが気候変動に対処するための予算や、移民問題を解決するための予算として振り分けられる方針が定められています。また、税収の使われ方は各国の政治化や欧州議会議員などによって構成される委員会によって監視されることになる模様です。

ピケティ氏といえば、富が社会の富裕層から一般市民へと順番に流れてくる「トリクルダウン」というキーワードが密接に関わってくることを思い浮かべる人も多いはずですが、今回発表されたマニフェストも一つのトリクルダウンの実効策といえるのかも。ただし、このマニフェストには反対意見を唱える人物も現れています。イギリス労働党議員のリチャード・コルベット欧州議会議員は、すでにEUに備わっている税収の仕組みを利用すればいい話であり、今回のマニフェストは「車輪の再発明である」と否定的な見方を示しています。

EUの実質的なリーダーを務めるドイツで長期政権を担ってきたメルケル首相が2021年秋での引退を表明するなど、EUはリーダーシップを取れる人材をうまく見いだせていない状況にあります。ヨーロッパ統一の悲願として設立されたEUが今後も存続できるのか、そしてその障壁となるポピュリズムや移民問題といった問題を解決できるのか、注目が集まりそうです。




ピケティ解説「黄色いベスト」:ルモンド紙2018年12月8日朝刊


政権を救いたければ、マクロンは即座に富裕税(ISF)を復活させなければならない。その収入は、燃料税の上昇で一番苦しんでいる者の損失補完に当てられなければならない。

「黄色いベスト」危機はフランスだけでなく、ヨーロッパに重大な問いを投げかけている。つまり税制上の公正である。事実・歴史・政治に関する一連の過ちを現政権は犯した。この過ちはすぐに修正すべきであるし、それは可能である。

富裕税は富裕層資産の外国逃避を引きおこす。それを避けるために富裕税を廃止したとマクロンは正当化してきた。しかしこれはまったく事実に合わない。1990年以来、富裕税を申告する人数、そして額は連続的に、また驚くほど上昇している。これは富裕税が課せられる層すべてに見られ、特に最も富裕な層に当てはまる事実である。

1990年から2017年の期間に10億ユーロから40億ユーロへと富裕税徴収額は膨らんだ。同期間のGDPは二倍になっただけだ。富裕税を課せられる条件が最初1990年には資産60万ユーロ以上の世帯だったのが、2012年には130万ユーロに上げられた(つまり課税される層がより高くなった)。それでもこの数字だ。

この税金の徴収に関する監査は従来からずっと不十分だった。通常の所得税の場合は税務署が収入を事前に把握し、収入申告書にすでに額が記入されている(フランスでは源泉徴収がなされず、各自毎年申告します。小坂井注)。しかし、このやり方が富裕税には一度も適用されてこなかった。必要な情報を税務署に知らせることは銀行にとって何も難しくない。2012年には300万ユーロ以上の資産に関しては詳細を申告する必要が無くなり、単に資産総額を記入するだけでよくなった。これでは監査のしようがない。

税務管理がしっかりしていれば、富裕税の徴収額は今日100億ユーロ以上に上るはずだ。固定資産税の増額が400億ユーロに上る事実から考えても、それは驚くことでない。監査不十分な現状であっても、富裕税は1990年から2017年にかけて10億ユーロから40億ユーロへと増加したのである。このまま富裕税を維持していれば、2022年には60億ユーロ近くまで増えたことだろう。富裕税が廃止され、そして代わりに不動産富裕税(IFI:不動産だけに課税される資産税)が導入されたが、それにより徴収額は2018年に10億ユーロに減った。つまり30年後退し、現在から2022年の期間で少なくとも50億ユーロの減収を意味している。

政府の犯した誤りの二つ目は歴史理解だ。時代錯誤の判断をした。米国と英国は1980年代に累進課税の原則を次第に壊した。そして1990年代および2000年代初期にはヨーロッパもその動きにならった。ドイツとスウェーデンで資産税が廃止されたように。しかし、この政策は思惑通りの成果を上げただろうか。2008年の危機、そして特にトランプ政権誕生、Brexit、ヨーロッパ各地で起きた外国人排斥を求める投票結果以降、格差拡大と庶民層が見捨てられた感覚から生まれる危険がはっきりしてきた。そして資本主義経済の新たな制御方法を模索する必要を多くの人間が理解した。このような状況において、2018年にさらに最富裕層を優遇する政策を加えたのは、賢いやり方ではない。1990年代の大統領ではなく、2020年代の大統領でいたいなら、マクロンは今すぐ政策を現実に合わせるべきである。

一番哀しいのは、環境問題に恐るべき損失を与えたことだ。燃料税が成功するためには、環境移行で生ずる損害の補填に、徴収した総額を当てなければならない。しかし政府はその正反対のことを行った。2018年の燃料税の40億ユーロ増収分、そして2019年に見込まれる同額の増収分のうち、政府は10%しか損失補填に当てず、残りは富裕税廃止による減収補填と、資本利益のフラット・タックス導入による補填に使われる。任期を満了したければ、マクロンは富裕税を即時に復活させなければならない。そして燃料税で一番苦しむ人々の救済に富裕税の徴収分を宛てなければならない。それをしないならば、金持ち優遇という時代遅れのイデオロギーを選択し、温暖化対策に背を向けたことを意味する。