信用創造Wikipediaの混乱①
信用創造Wikipediaの混乱① 以前、「お金はどこからやってくるのか―現代金融制度入門―」というコラムで、信用創造のWikipediaの記述を引きつつ、現代金融制度の概説を行った。 現在は、その頃からかなりWikipediaの記述が書き換えられており、コラムの内容とはかなり異なった代物になっている。 この信用創造Wikipediaの混乱については、togetterにおいて『「信用創造」のWikipediaがおかしなことになっている件について』において取り扱った。 今回は、当該togetterで私が行った議論(ないし批判)を、補足しつつまとめてみる。 まず、現在の信用創造Wikipediaは、所謂「又貸し(re-lending)モデル」を踏襲したものになっている。 このモデルは、世間一般(教科書レベル)でもよく知られているモデルなのだが、インチキであることもよく知られている。 又貸しモデルでは、貸出したお金がまず現金として漏出し、その後預金として還流する、ということになっている。 しかし、先に挙げた「お金はどこからやってくるのか」コラムでも述べたように、貸出は、銀行預金の直接の増加、という形で行われる。 会計上の仕訳では、銀行の借方(資産)に貸出債権、貸方(負債)に銀行預金が載るという形になる。 また、又貸しモデルでは、決済はすべて現金で行われることが前提とされている(だからこそ、貸出の際に現金が漏出するということになっている)のだが、これは事実ではない。 銀行預金は(先述コラムでも述べたが)それ単体で決済手段として機能するのである。 そもそも、銀行預金が単独の決済手段として機能しない(常に現金引出を伴わなければならない)のであれば、銀行預金が「マネーサプライ」(非金融部門の貨幣性資産)としてカウントされないではないか。 実務的に論じなおすと、銀行内決済であれば、生じるのは銀行預金の横移動のみであり、現金資産(ベースマネー)は全く必要にならないし、当然増減もしない。 銀行間決済についても、信用創造と同額のベースマネーが必要になるとは限らない。 例えば 「A銀行で10万円が信用創造→B銀行に振込」 「B銀行で8万円が信用創造→A銀行に振込」 上記取引が同日に生じた場合、A銀行とB銀行で必要な取引はA銀行→B銀行の2万円のベースマネーの移動に限るということになる。 18万円が信用創造されても、少なくともこの取引に限れば、決済に必要なベースマネーは2万円だけだ(準備はまた別の話)。 これらの事実は、銀行預金が現金を超えた(ないし現金から独立した)決済手段として機能していることを意味している。だからこそ、銀行預金は通貨としてカウントされるわけだ。 銀行預金は単に銀行負債に過ぎないのだが、それにも関わらず決済手段として機能することは直観的には受け入れ難いらしく、陰謀論的サイトでは「史上最大の詐欺」などと呼称されることもあるようだ。 しかしむしろ、通貨というのを何かの宝物のように扱う考え方の方が、通貨理解としては本質的に誤っているのである。 このことは、『通貨は財ではなく信用から生まれた―信用貨幣と計算貨幣―』の方でも解説したが、今一度簡潔に概説しよう。 まず、この世には何かしらの貸借関係があって、それを記述する手段として、石、金属、紙、場合によっては商品が用いられ、それが単位として統一されれば通貨になる。 問題は、通貨の実態は、単位として設定された石や金属ではなく、元々あった貸借関係である。「誰かへの貸し」(その誰かの借り)を使って売買を行うわけだ。 こうした通貨解釈のことを、信用貨幣論という。 こう考えると、銀行負債が通貨として機能するのは何の不思議もない。「銀行への貸し」(銀行の借り)を使って決済が行われるのは、むしろごく自然なことである。 何なら、現金ですら、日銀の負債なのであって、日銀負債であるからこそ、日銀以外の資産として機能するのである。 一般人にとっては、現金(日銀負債)や銀行預金(銀行負債)が資産であることが余りにも当たり前すぎて、その裏側で「通貨が負債である主体」のことが見えないので、直観に反するのは分かる。 しかし、少なくとも教科書レベルでは、この直観をきちんと解きほぐすことが目指されるべきであり、それを回避すると(ないし直観が間違っていること自体に気付かないと)、又貸しモデルのようなおかしなモデルを頼ることになるのである。 次回は、以上を踏まえつつ、英語版Wikipedia「Money creation」を一部訳出していく予定である。こちらの方が(あくまで比較的にだが)内容が洗練されていると思われるからである。 |
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