火曜日, 3月 01, 2016

30秒で読む「意思決定の脳科学」 « WIRED.jp

30秒で読む「意思決定の脳科学」 脳外科手術で「感情的部位」を失った人は、一分の隙もない論理的な人間になるわけではなく、「決断を下せない人」になる。意思決定プロセスを脳科学で説明する。

「意思決定の神経科学」について、30秒間で説明することは可能だろうか。わたしは米国で3月10日に出版された『30-Second Brain』の共同執筆者として、その新刊から引用しよう。

古代ギリシャの哲学者プラトンは、人間の感情と理性の関係を「馬と御者」に喩えた。近代の心理学者フロイトは、「本能的な欲求(イド)が自我(エゴ)によって抑制される」という概念を打ち立てた。つまり、ずっと以前から、理性と感情は対立するものと考えられてきた。

こうした見方を神経科学的に解釈すると、的確な判断とは、合理的な前頭葉が、生物進化の早い段階に出現した、感情をつかさどる脳の部位(脳の奥深くにある大脳辺縁系など)における「動物的本能」をコントロールするものだと思われるかもしれない。

しかし、実際はかなり違う。感情的な情報インプットが生み出す「動機づけ」や「目的」がなければ、効果的な意思決定は不可能なのだ。

脳神経科学者アントニオ・ダマシオの患者「エリオット」を例に取ろう。有能なビジネスマンだったエリオットは、脳腫瘍を切除するための外科手術を受け、脳の「眼窩前頭皮質」を切除された。これは、前頭葉と感情を結びつける部位だった。その結果エリオットは、映画『スタートレック』に登場するミスター・スポックのような、感情が欠落した人間になってしまった。しかし、感情を持たないからといって、一分の隙もない論理的な人間になったわけではなく、むしろ決断を下せなくなってしまったのだ。

こうした症例からダマシオ氏は、「直感的な感情」が人間の決断を支援するプロセスを説明する「ソマティック・マーカー仮説」を唱えるようになった。被験者にカードゲームをさせるギャンブル課題という実験では、プレーヤーが、自分にとって不利なカードを手に取る前に、手に汗をかくことがわかっている。つまり、誤った決断を下したと頭が意識する前に身体が反応しているのだ。

別の箇所からも引用しよう。

われわれは、決断の際に感情が必要だ。感情的なインプットが必要ということは、人間が、従来の経済学が仮定するような「冷たい合理的な行為者」ではないということを意味する。例えば、ダニエル・カーネマンエイモス・トベルスキーとともに、損失が感情に与える負の影響は、利益による正の効果の2倍の強さがあることを証明した。このことは、予見可能な形でわれわれの決断に影響している。例えば、われわれは「失敗した投資」を回収不能と見なすことにかたくなに抵抗しやすいが、そうした行動もこれによって説明することができる。


※脳神経科学者アントニオ・ダマシオによるTEDの講演。日本語版はこちら

アントニオ・ダマシオ:意識の理解はどこまで進んだか | TED Talk | TED.com

http://www.ted.com/talks/antonio_damasio_the_quest_to_understand_consciousness

生存する脳改題新訳

デカルトの誤り 情動、理性、人間の脳 (ちくま学芸文庫) | アントニオ・R・ダマシオ, 田中 三彦 

http://www.amazon.co.jp/dp/4480093028/


ヒトにおける眼窩前頭皮質の役割編集

眼窩回の位置を様々な角度から見たアニメーション。赤く塗られているところが眼窩回。

眼窩前頭皮質はヒトの脳の中でも最も理解が進んでいない領域である。しかし、この領域は、感覚情報の統合、強化子 (reinforcer) の感情価 (affective value) の表現、意思決定や期待に関連しているという考えが提唱されている[2]。特に、ヒトの眼窩前頭皮質は報酬と罰に対する感受性に関連した行動計画を制御していると考えられている[3]。このことはヒトや非ヒト霊長類、げっ歯類の研究から支持されている。この領域に関するヒトを対象とした研究は、健常者に対する脳機能イメージング研究と、眼窩前頭皮質の一部に損傷を負った患者の神経心理学的研究に集中している。



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