土曜日, 3月 04, 2017

スーパーフレア、窒素、生命の起源?

          N2窒素分子

   N(4S)、N窒素原子      N(2D)、N窒素原子

H2CN?                     NHイミン
          NO一酸化窒素

 HCNシアン化水素       N2O亜酸化窒素


Prebiotic chemistry and atmospheric warming of early Earth by an active young Sun : Nature Geoscience : Nature Research

http://www.nature.com/ngeo/journal/v9/n6/full/ngeo2719.html






太陽フレアで人類滅亡…ならぬ、生命の起源だった? NASAの研究|ギズモード・ジャパン

2016

http://www.gizmodo.jp/2016/05/solarstorm_nasa_4.html

太陽フレアで人類滅亡…ならぬ、生命の起源だった? NASAの研究 1

巨大なエネルギーが窒素を生み出したのかも。

巨大な太陽嵐が地球を襲うと、地球全体が停電であらゆるテクノロジーが止まり、我々は暗黒時代に戻ってしまうかもしれません。幸いそんなことはめったに起こらないんですが、40億年ほど昔には、そんな激しい現象がわりと平常運転でした。でもそれは世界の終わりを意味するのではなく、むしろ生命の始まりだったかもしれないんです。

Nature Geoscienceに掲載された新たな論文では、そんな興味深い結論が導き出されています。その研究が根拠としたのは、これまでNASAのケプラー宇宙望遠鏡が捉えてきた若い星の観測結果です。若い星では爆発的な活動が活発で、スーパーフレアでものすごい量のエネルギーを放出しています。それに比べたら、最近の太陽系の太陽嵐なんて小雨みたいなものらしいです。

NASAの研究者、Vladimir Airapetianさんの研究は、もし40億年前の我々の太陽がその若い星たちと同じくらい活発だったとすれば、それが地球に生命をもたらした可能性があることを示しています。Airapetianさんのモデルによると、太陽スーパーフレアが我々の大気と衝突して化学反応を起こし、温室効果ガスなど生命に必要な物質を生み出したと考えられるのです。

「地球は40億年前、深い凍結状態にあったはずです」Airapetianさんは米Gizmodoに語りました。40億年前というのは、カール・セーガンとジョージ・ミューレンが問題提起した「暗い太陽のパラドックス」の時期です。セーガンらは、「40億年前の太陽は現在の70%ほどの明るさしかなかった(そのため地球全体の気温は氷点下だった)」とされるにもかかわらず、地球上に液体の水の兆候があったという矛盾を指摘したのです。「(これを説明するための)唯一の方法は、何らかの方法で温室効果が起きていたことを証明することです」とAirapetianさんは言います。

もうひとつ黎明期の地球に関して不思議なのは、DNAやRNAといったタンパク質形成に必要な窒素がどうやって集まったのかということです。太古の地球の大気は現在と同様、主に不活性な窒素(N2)で構成されていました。「窒素フィクサー」と呼ばれる特殊なバクテリアがN2を分解してアンモニア(NH4)に変える方法を編み出しましたが、初期の生物にはこれができなかったんです。

NASAの新たな研究は、これらふたつの問題に鮮やかに答えています。この研究は数年前、AirapetianさんがNASAのケプラーデータベースで星の磁気運動について調査していた頃に始まりました。彼は、太陽のようなG型主系列星が若い時期にはダイナマイトのように、原子爆弾100兆個分にもあたる圧倒的なエネルギーの波を頻繁に放出していたことを発見しました。人類が経験した最も強力な太陽嵐は1859年のキャリントン・イベントと言われるもので、世界中で停電を起こしましたが、大昔の地球が受けた衝撃はそれをはるかに超えています。

「それはクレイジーな量のエネルギーです。私自身もほとんど把握できないほどです」コーネル大学の宇宙生物学者、Ramses Ramirezさんは米Gizmodoに語りました。彼は研究には直接関わっていませんが、Airapetianさんには協力しています。

Airapetianさんはすぐ、この発見にもとづいて太陽系の初期の歴史をひもとけそうだと気づきました。そこで彼が計算したところ、40億年前の太陽は1時間に数十回ものスーパーフレアを放出していた可能性があり、1日1回以上地球の磁場をかすめていたのです。「基本的に、地球はつねにキャリントン・イベントを超える攻撃を受けていたのです」。

Airapetian氏は数値モデルを使い、古代の太陽スーパーフレアの地球への影響を示しました。それによると、太陽スーパーフレアは地球の磁気圏を劇的に圧縮するほど強くなり、また太陽の荷電粒子が地球の極近くの磁気圏に穴を空け、大気圏に入って窒素や炭素、メタンと衝突を起こしていたと考えられるのです。「つまり、粒子が大気の中で分子と相互作用を起こし、新たな分子を作り出していたのです…連鎖反応のように」Airapetian氏は言います。

太陽フレアで人類滅亡…ならぬ、生命の起源だった? NASAの研究 2

太古の地球に太陽スーパーフレアによるエネルギー粒子が降り注ぐイメージ(Image via Vladimir Airapetian)

これら太陽と大気の相互作用によって、二酸化炭素の300倍もの温暖化効果をもたらす亜酸化窒素が発生していきました。Airapetian氏のモデルでは、十分な量の亜酸化窒素があれば、地球の温度が相当高まったことが示唆されています。太陽嵐がひっきりなしに起こることでもうひとつ生まれたのはシアン化水素(HCN)で、これも地球表面に生命体の構成要素をもたらすのに役立った可能性があります。

「従来、窒素生成の要因は、雷や隕石だと思われてきました」とRamirez氏は言います。「この論文の一番クールなところは、誰も太陽嵐を(生命誕生の原因として)見る気がなかったということです。」

スーパーフレアで生成された分子たちが生命誕生の起爆剤として十分だったかどうか、その見極めは生物学者の手に委ねられます。そして、その調査はすでに始まっています。東京工業大学地球生命研究所などの研究チームは、Airapetian氏のモデルを使って、太古の地球環境をシミュレートする新たな実験を進めています。この実験でアミノ酸とRNAの元となるものが生成されれば、太陽フレアが生命誕生に貢献したというアイデアを強力に後押しするはずです。

Airapetian氏のモデルは、地球の生命の起源だけでなく、火星に生命が存在したかどうかという問題にも光を投げかけます。40億年前、火星に届く太陽の放射線は地球よりさらに少ないはずにもかかわらず、液体の水があったらしいのです。この研究はさらに、我々の太陽系をも超える影響がありそうです。

星のハビタブルゾーンを成立させるものが何なのか、我々はまだ探り始めたばかりです。現在のハビタブルゾーンの定義は、中心になる星の明るさだけを考慮しています。でも星の爆発活動を考慮に入れることで、系外惑星の大気形成とか、強い温室効果の可能性についても理解を広げられるかもしれません。

「この研究を突き詰めれば、星のエネルギーが生体物質を作り出すほどの現象を起こせるのかどうかがわかるでしょう」とAirapetian氏。「それがなければ、生命の存在は奇跡です」。

source: Nature Geoscience

Maddie Stone - Gizmodo US[原文

(miho)



12.窒素を含んだ有機化合物と無機化合物 - 炭素の科学

http://blog.goo.ne.jp/tatsushi-murae/e/f842f7d5efa4ec3cc71dd1058104fb67

窒素は宇宙の元素形成の早い段階で作られた安定元素の一つである。宇宙の元素合成の初期反応として水素(1H)からヘリウム4(4He)が合成される経路は、陽子‐陽子連鎖反応と呼ばれるものである。同様に水素(1H)からヘリウム4(4He)が合成される経路にCNOサイクルがある。出発物質の水素と生成物の中のヘリウムだけをみると陽子‐陽子連鎖反応と同じであるあるが、CNOサイクルの開始には炭素原子の存在が必須であることが陽子‐陽子連鎖反応との決定的な差である。CNOサイクルの反応経路には水素(1H)と炭素12(12C)からヘリウム4(4He)と炭素12(12C)が作られる経路(この場合には炭素は触媒の役目をしている)の他に、反応の途中から分岐してさらに2個の水素(1H)が加わって、ヘリウム4(4He)と窒素14(14N)が形成されるルートがある。この反応では炭素12(12C)が窒素14(14N)に変換されており、このルートが宇宙の窒素原子の供給源と考えられている。水素が豊富にある宇宙空間に炭素が放出され、再度集合して星を形成し、その星の内部で窒素原子が合成されるケースは、宇宙における元素合成の初期にも多くあったと考えられる。したって、有機分子の大半を形成する、水素、炭素、酸素、窒素の四つの元素は、宇宙における物質形成の早い時点から揃っていたことになる。

窒素14(14N)は原子核に陽子を7個、中性子を7個持っている。電子は、1s軌道に2個、2s軌道に2個、2p軌道に3個存在する。外殻電子は5個で、安定な8個にするには3個の電子を必要とする。従って共有結合では原子価は3となる。共有結合に関与する3個の電子の他に共有結合に関与しない2個の電子が1個のp軌道に孤立電子対として存在する。窒素の原子価を全て水素との共有結合で満たすとアンモニア分子(NH3)が形成される。アンモニアの構造は以下のように表される。ただし、ピンクのボールは孤立電子対を表す。


もし、水素が豊富に存在する適度に冷却された空間に窒素原子が放出されるとアンモニアが形成されることになる。宇宙における元素合成の過程で窒素よりも早い時点で形成される安定元素には、炭素と酸素があり、これらの元素も同様な条件でそれぞれメタン(CH4)と水(H2O)を形成する。このことは、宇宙における物質形成の早い時点から水(H2O)もメタン(CH4)もアンモニア(NH3)も存在し、それらの分子から様々な条件で誘導される多種多様な有機化合物が、宇宙のあちらこちらに存在する可能性がある。

窒素を含んだ有機化合物は、酸素を同時に含んだ化合物も含めると、一般的名称が与えられているものとして、アミンイミンニトリル、イソシアン化物、ヒドラジンアミドヒドラジド、シアン酸エステル、イソシアン酸エステル、イミドアミジン尿素アミノ酸等がある。これらの化合物を命名する時の母体は窒素が結合している炭化水素でその炭化水素の水素が窒素の誘導体よって置換されたものと考える。アミノ酸は炭化水素の水素がカルボキシル基(COOH)に置換されてできるカルボン酸のアルキル鎖の水素がアミノ基(-NH2)で置換されたものの一般名称で、アミノ基の置換された位置を、カルボキシル基に近い方からα、β等のギリシャ文字で表す。それらの化学構造的な特徴を以下に示す。

 


 

  IUPACによる有機化合物命名法によると、窒素を含んだ特性基で接頭語としてのみ使われるものに、=N2(ジアゾ)、-N3(アジド)、-NC(イソシアノ)、―NCO(イソシアナト)、-NO(ニトロソ)、-NO2(ニトロ)がありる。例えば、CH2N2(ジアゾメタン)CH3NO(ニトロメタン)等がある。―NH2(アミン)、=NH(イミン)、-NHNH2(ヒドラジン)の場合、それぞれが接頭語として使われる場合は、アミノ…、イミノ…、ヒドラジノ…と呼ばれ、接尾語として使われる場合は、…アミン、…イミン、…ヒドラジンと呼ばれる。アミドの場合には、酸素を特性基(-CONH2)に含めた場合、接頭語としてはカルバモイル…、接尾語としては…カルボキサミドという用語が用いられるが、アミドの炭素を母体化合物に含ませて(-(C)ONH2)命名する場合がある。この場合にはカルボン酸のカルボキシル基(-C(=O)OH)のOHがアミノ基(-NH2)に置換されたものみなし、酸の代わりにアミドという接尾語が使われる。例えばCH3(CH24CONH2の場合にはヘキサンアミドとなる。一つの分子にいろいろな特性基が存在する場合にどの特性基を接頭語とし、どの特性基を接尾辞とするかの規則も定められている。

初期の宇宙で窒素原子ができた時には、安定元素として水素、ヘリウム、リチウム、炭素、窒素、酸素が作られている。これらの元素のうちヘリウム以外は地球上の通常の条件では、単独の原子として存在するよりは複数の原子で結合を作ることによってより安定化された分子として存在する。リチウムは金属的な性質が強く、LiHと表される化合物(水素化リチウム)もイオン結合(Li+H-)によるもので共有結合による分子とは異なる。ヘリウムは単独の原子で分子のように振る舞うので単原子分子と呼ばれる。前記の元素のうちリチウムとヘリウムを除いた元素(水素、炭素、窒素、酸素)は複数の原子が共有結合によって分子を形成した方が単独の原子の状態より安定になる。上記の元素のうち2個の同一種の元素で形成された分子は等核二原子分子と呼ばれ、地球でも水素分子(H2)、酸素分子(O2)、窒素分子(N2) は通常に存在する。2個の炭素でできた分子(C2)は二原子炭素と呼ばれるが、高温な状態などの特殊な条件下で存在する。地球で通常に存在する炭素を含んだ二原子分子としては一酸化炭素(CO)が存在する。このように異なった2個の元素で形成されている分子は異核二原子分子と呼ばれる。ここにあげた二原子分子は、全て無機化合物とされている。

炭素と窒素が結合してできる無機化合物にシアン化合物がある。有機化合物としてのニトリル(  


  )が共有結合を介して分子を形成するのに対して、無機化合物のシアン化合物は、CN部分がシアン陰イオン( 

)として存在し、陽イオンとイオン結合を介して化合物を形成する点が有機化合物のニトリルと異なっている。身近な例として有機化合物としてアセトニトリル(CH3―CN)、無機化物としてシアン化カリウム(青酸カリ:K+CN)があげられる。

炭素が水素と窒素と酸素とに結合して形成する無機化合物にシアン酸(HCON)、イソシアン酸(HCNO)、雷酸(HONC)があり、それらは以下の構造式で表される。


シアン酸とイソシアン酸は通常平衡状態にあり、液体状態やプロトン溶媒中のように水素結合が形成されやすい環境ではシアン酸が優位であるが、気体状態や非プロトン溶媒中ではイソシアン酸が優位となる。雷酸は上図のように共鳴構造で表される状態にある。

窒素と酸素で形成される無機化合物には、NO(一酸化窒素)、NO(酸化二窒素)、NO(二酸化窒素)、N(三酸化二窒素)、N(四酸化二窒素)、N(五酸化二窒素)等のノックス(化学式のNOxに由来)と呼ばれる一群の化合物がある。五酸化二窒素は水に溶かすとHNO(硝酸)を生ずる。硝酸は窒素のオキソ酸と一般名で呼ばれる化合物で、HNO(亜硝酸)もこれに属する。

窒素原子を含んだ星間分子としては以下のものが報告されている。

CN、HN、N2、NO、NS、SiN、AlNC、HCN、HNC、NH+、HNO、KCN、MgCN、MgNC、NH2、N2H+、N2O、NaCN、SiCN、SiNC、C3N、H2CN、HCCN、HCNH+、HNCO、HNCS、NH3、H2CCN、H2CNH、HC3N、HCC-NC、NH2CN、CH3CN、CH3NC、HCONH2、HC4N、CH2CNH、H3CNH2、CH2CHCN、HC4CN、H3CC2CN、CH2CCHCN、CH3CH2CN、CH3CONH2、HC6CN、HC7N、CH3C5N、HC8CN、HC10CN、DCN、DNC、N2D+、NH2D、NHD2、ND3、DCCCN、DC5N



2017年2月26日の放送|NHK「サイエンスZERO」

http://www.nhk.or.jp/zero/contents/dsp555enc.html

No.555アンコール放送
太陽フレア 生命の脅威か? 母なる恵みか?
2017年2月26日 放送

再放送
34日(土) [Eテレ] 030

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放送内容

太陽の爆発現象“フレア”。もし巨大なフレアが発生し、爆風が地球を直撃すると、通信障害や大規模停電など、インフラに甚大な被害が発生。大混乱に陥ると予測されている。そんな中、フレアの発生を予測する最新技術が開発され、被害を回避する可能性が見えてきた。一方、NASAの研究者が、太陽フレアこそ地球に生命が誕生したカギだった、という新説を発表。脅威か、それとも恵みか。地球に影響を与える太陽フレアに迫る!(2016年9月11日放送分)

  • 太陽フレアで通信障害?

  • スーパーフレアが太陽で起きる可能性は?(京都大学院理学研究科 柴田一成教授)

  • 太陽の大爆発「フレア」。

  • フレアの威力は大きなもので水素爆弾1億個に相当。これが地球に到達することで、通信障害や停電などを引き起こし、現代社会に大きな脅威となる。

  • 1989年カナダでは太陽フレアによる9時間の停電が発生。600万人に影響が出た。

  • 一方で、太陽フレアが40億年前、地球に生命が誕生した時の鍵を握っているという新説が発表され、注目されている。

  • スタジオゲスト 京都大学大学院理学研究科教授 柴田一成さん

ゲスト

  • 柴田 一成 (京都大学院理学研究科教授)

キーワード

  • 宇宙
  • 自然