月曜日, 5月 01, 2017

岩村充『新しい物価理論』2004, 『中央銀行が終わる日―ビットコインと通貨の 未来―』2016


   ( 経済学リンク::::::::::
NAMs出版プロジェクト: 経済学日本人著者入門書
http://nam-students.blogspot.jp/2016/10/blog-post_9.html
岩村充 『中央銀行が終わる日―ビットコインと通貨の未来―』新潮社2016
NAMs出版プロジェクト: ビットコイン(bitcoin)

NAMs出版プロジェクト: 岩村充 20170713

http://nam-students.blogspot.jp/2017/07/blog-post_76.html
ゲゼル:減価式貨幣と世界通貨案
http://nam-students.blogspot.jp/2011/12/blog-post_4033.html?m=0
 Irving Fisher: Stamp Scrip; 1933 :スタンプ通貨  アーヴィング・フィッシャー (著) 
http://nam-students.blogspot.jp/2015/12/irving-fisher-stamp-scrip-1933-2016331.html( 
Recursive Macroeconomic Theory トーマス・サージェント教授ら「再帰的マクロ経済理論」:メモ
http://nam-students.blogspot.jp/2015/07/blog-post_25.html 
Sargent & Wallace “Some Unpleasant Monetarist Arithmetic Thomas Sargent,Neil Wallace” (1981)
[マネタリストにとっては少々不愉快な算術]
NAMs出版プロジェクト: ケインズからDSGEまでの流れ:メモ
クリストファー・シムズ (1980,1994☆年論文)
☆Sims, Christopher (1994) “A Simple Model for the Study of the Determination of the Price Level and the Interaction of Monetary and Fiscal Policy.” Economic Theory. Vol. 4. pp. 381–399. 

シムズらの「物価水準の財政理論(Fiscal Theory of the Price Level=FTPL)」はゲゼルの減価マネー*と共鳴すると思っていたが、すでに同じような指摘をする学者がいた。しかも実際的である。現代経済学における数少ない未来への希望ではないか?

ゲゼル型貨幣
ゲゼルの魔法のオカネ
エイジング・マネー
減価マネー 
等の呼び方がある。

FTPLについては以下、(数式なし)
「インフレは財政拡張だけでは生じない」物価水準の財政理論(FTPL)とは 岩村充インタビュー - 
https://www.weekly-economist.com/2017/01/31/インフレは財政拡張だけでは生じない-財政と物価の理論とは-岩村充-早稲田大学大学院教授インタビュー/

追記:
『新しい物価理論』に関しては以下の優れた書評を見つけた。
渡辺努・岩村充(2004)『新しい物価理論』を読んで: デジタル・マイナス金利×100%株準備=ほとんど理想的な貨幣システム? | Necomune
http://necochan.com/2015/03/22/ほとんど理想的な貨幣システム/

岩村充(1950~)
iwamura mitsuru profile  

略歴
1950年5月 東京に生まれる
1974年3月 東京大学経済学部卒業
 4月 日本銀行入行:営業局・総務局・ニューヨーク駐在員などを経て
1992年2月 日本公社債研究所開発室長
1994年4月 日本銀行金融研究所研究第2課長
1996年12月 日本銀行企画局兼信用機構局参事
1998年1月 早稲田大学大学院(アジア太平洋研究科)教授
2007年4月 研究科統合により早稲田大学大学院(商学研究科)教授
2016年4月 研究科再編により早稲田大学大学院(経営管理研究科)教授

岩村充FTPL関連資料:
http://www.f.waseda.jp/iwamuram/files.htm

参考記事:
週刊エコノミスト2016年8月2日号

ヘリコプターマネーは既に現実 予期せぬ“出口”への備えが必要=岩村充

週刊エコノミスト 2016年08月02日号 [雑誌] | 週刊エコノミスト編集部 | ビジネス・経済 | Kindleストア | Amazon
https://www.amazon.co.jp/dp/B01IVFVOGY/
国債永久債化プランの真意 岩村充


代表的著作、

新しい物価理論―物価水準の財政理論と金融政策の役割 (一橋大学経済研究叢書) – 2004/2/20

読み物としては岩村充の以下の近著がやはりゲゼルに触れている。

岩村充 『中央銀行が終わる日―ビットコインと通貨の未来―』新潮社2016    

以下書評。

近年の経済学者のなかでは珍しく(ケインズ、フィッシャー、クライン以来か)、早稲田大学教授の岩村充は
ゲゼル#4:3を真面目に取り上げている(同著者の前著ではゲゼルはコラム扱いだったが
本書では格上げされている。図版は岩村充「企業金融講義」2005から再録が多い)。
(本書は近未来的電子マネーに話題を特化しているが、岩村は翁邦雄『金利と経済』2017で紹介
されていた日本銀行改革案のような現実的な打開案を具体的に述べる学者だ。)
岩村は電子マネーにして(マイナスを視野に入れた)利子変動制を主張する。 インフレターゲット
論などと一線を隠したいのだろう。
ゲゼル案の過去の実例の場合小銭を徐々に回収する必要があったと思うが、電子マネーにすれば
簡単だ(とはいえデジタルとアナログで同じ課題は残る。実質と名目? それでいいというのが岩村の発想)。
租税と減価手数料の相乗りというアイデアを無視しているので、利子がいずれはプラスになる
ことを当然視している。 すべて従来の鋳造益、貨幣発行益=シニョレッジの範囲である。

ケインジアンの考え方が立体的に図解されているのが興味深いが、主になるのはハイエクの貨幣
自由発行論の文脈なので観念論で観念論を相殺する格好になりがちなのが難点ではある。
(知識人がハイエクに拘るの 傾向があるのは、単にその人がゲゼルも評価したプルードンを知らないからである。ただしゲゼルを狭い地域通貨談義から切り離すことには成功している)

ちなみに著者はケインズのバンコールを評価しているが元々ゲゼルのアイデアだとは考えてい
ないようだ。またゲゼルの土地政策案にも触れていない。

全体としては「ゲゼルの魔法のオカネ」という言い方が気になるが(2008年『貨幣の経済学』以来の用語)、基本的にはゲゼルのアイ
デアを最大限評価して、新たなテクノロジー(ビットコインの原理の解説が主だが)で蘇らせよう
としている。

経済学部出身なのに商学部所属ということはゲゼルが見直されるには商学の再興が必要という
ことだろうか? 

索引がないのはわかるが、参考文献表がないのは不親切。また、生命地域主義的な観点は貨幣に関しても無視できない。

追記:
より体系的にゲゼル型貨幣の可能性を検討(ただし理論的なもので電子マネーを考えてはいない)している同著者による『新しい物価理論』(2004)と併読すべきだろう。こちらはゲゼル研究会のurlなども紹介している。

交換手段としての貨幣から価値保蔵手段を切り離すという主張は,彼の代表的著作で
ある「自然的経済秩序」(Gesell 1916)第3.13章で“ I therefore propose a complete
separation of the medium of exchange from the medium of saving"として述られ
ている(1929年英訳版による,なお同版は http//www.systemfehler.de/en/index.htm
から入手できる),なお,ゲゼルに関連する様々な資料は非営利団体である「ゲゼル研究会」
によって提供されており(http//www.grsj.org/),本章の記述も同会の資料に多くを拠っ
ている.》195頁

以下も参考文献に挙げられている。

《Onken, Werner (1983),"Ein vergessenes Kapital der Wirtschaftsgeschichte,"
Zeitschrift fur Sozialokonomie[宮坂英一訳「経済史の忘れられたー章(上)」
「自由経済研究」(ぱる出版),2000年5月]》

貨幣の価値保蔵と交換機能を切り離すこと
ゲゼル式を採用する費用対効果

この2つは重要な観点だ。

理論的には『新しい物価理論』の方がしっかりしているが『中央銀行…』では電子的減価マネーを採用した際のデジタルとアナログの価値の乖離を検証している点が現実的で優れている。

新版及び復刊が求められる。特に#5は英語版での発表が必要だ。


以下メモ:

同195頁

…私たちがデフレ対策としてゼロに貼り付いてしまっている名目金利をさらに引き下げてマイナスにする必要があると考えるとすれば,貨幣が価値保蔵手段としてではなく交換手段としての目的のみで保有されるよう,価値保蔵手段としての貨幣の保有にコスト(持ち越し費用)を課することを考えなければならない。では,そのようなことは実現可能なのだろうか。
 実は,この交換手段としての貨幣から価値保蔵手段としての側面を切り離す方法はないかという問題に対して,すでに20世紀の初頭に答を与えてくれた人物がいる。シルヴイオ・ゲゼル(Silvio Gesell,18621930年)である。彼の業績は,ケインズが『一般理論』の中で「不当に無視された予言者」と呼んで多くの紙幅を費やして議論しているにもかかわらず,既存の貨幣tll度に対して挑戦を試みる社会運動家の間で彼らの理論的先駆者として敬意の対象となつている以外には,ほとんど顧みられることなく現在に至っている1)。しかし,貨幣の保有にコストを課して,それが価値保蔵手段として用いられることの「弊害」をなくそうとするのならば,ゲゼルのァィディアについての考察を避けることはできない。以下では,そうした「保有コストのかかる貨幣」を「ゲゼル型貨幣」と呼んで,その可能性と問題点について考えることにしよう。
 ゲゼルが提案したのは,スタンプ付紙幣と呼ばれる方式である。これは,紙幣の保有者に保有期間に応じた枚数のスタンプを購入させ,そのスタンプを貼り付けておかなければ貨幣としての価値が維持できないと定めておくという制度である.スタンプの金額は法令などによつて決めることになるのだろうが,例えば1週間が経過するたびに表示額の1000分の1に相当する金額のスタンプが必要であると定めるとすれば,紙幣の価値を維持するのに必要なスタンプの総額は1年間(約52週)で券面の52%になるから,すなわち貨幣の保有に5.2%の持ち越し費用あるいはマイナスの金利が課されてぃることになる。こぅすれば,流動性の民の状況は,金融資産の収益率がマイナス52%に低下するまで起こらなくなり金融政策の有効性は大幅に拡大するだろう。

1)交換手段としての貨幣から価値保蔵手段を切り離すという主張は,彼の代表的著作で
ある「自然的経済秩序」(Gesell 1916)第3.13章で“ I therefore propose a complete
separation of the medium of exchange from the medium of saving"として述られ
ている(1929年英訳版による,なお同版は http//www.systemfehler.de/en/index.htm
から入手できる),なお,ゲゼルに関連する様々な資料は非営利団体である「ゲゼル研究会」
によって提供されており(http//www.grsj.org/),本章の記述も同会の資料に多くを拠っ
ている,
195頁

ちなみに,現在の貨幣(銀行券)には番号の表示はあるが発行日の表示はないので,そもそ
も発行日が異なる貨幣間での交換レートは存在し得ない.なお,ゲゼル研究会主宰者の森野
栄一氏によれば,減価型貨幣のアイディア自体は「カレンダーー型」と呼ぱれ,早くからゲゼ
ルや彼の仲間たちの間で共有されていたようである,ただし,カレンダー型貨幣の基本形態
は発行日を貨幣に表示しておくだけではなくて,発行日以降の期間経過に応じた減価金額そ
のものまで表示しておく方式なので,ここで議論している発行日情報のみを表示する貨幣と
は性格が異なる.

5.2.2名目金利マイナスの効果と限界
ゲゼル型貨幣の導入で何ができるようになって何はできないのかを整理
重要なてみよう,最初に,第4章で展開した議論を簡単に復習しておこう,人
々の経済に対する予想が変化し,財政余剰に対する人々の予想が変化しな
いままで0期からj期の間の自然利子率に対する予想R,jが大きく低下
したとする,こうした変化の中で物価を安定させるために中央銀行ができ
ることは,人々の名目金利に対する予想に働きかけてRn0,jを自然利子率
と同様に大きく低下させることである.この効果は,すでに第4章で詳し
くみたとおりであり,

P0=M-1+Σ∞j=0 B-1,j/Rn0,1/Σ∞j=0‘sj/Rr0,j

 P_0=\dfrac {M_{-1}+\sum^\infty_{j=0}B_{-1,j}/R^n_{0,j}-\xi A}{\sum^\infty_{j=0}s_j/R^r_{0,j}}
[P0:現在の物価]

と表現できる.

199頁


『中央銀行…』の前著にあたる以下もゲゼルに触れている。

 貨幣進化論―「成長なき時代」の通貨システム (新潮選書)2010/9/23 岩村 充 
(#3におけるケインズのバンコール再評価が的確。ゲゼルと影響とは考えていないようだが)

さらに以下も、

貨幣の経済学―インフレ、デフレ、そして貨幣の未来 | 岩村 充  集英社2008
https://www.amazon.co.jp/dp/toc/4087805069
目次 
第1章 貨幣の経済史―金貨から金本位制へ
第2章 貨幣は漂うか―貨幣価値を支える仕組み
第3章 アンカーを探せ―国債の意外な役割
第4章 貨幣価値の坂と水準―金融政策の理論
第5章 明日はデジタルで―競争的貨幣供給論と電子マネー

#3でFTPLが、179頁#4,179頁で落語花見酒★★★★★が紹介される。以下の#5,182,190頁の物価理論が
重要。

フィッシャーの利子率物価均衡条件:

  1+名目金利
___________ = 1+物価上昇率
  1+自然利子率
(#4,182頁)

①来年の物価水準(P1)は、

[B0:今期国債の金額、B1:来期国債の金額]

P1=__B0(1+i)+B1__
      s

[s:国債償還財源の実質額、i:名目金利]

②今年の物価水準(P0)は、

1+i/1+r=P1/P0

_1+i_ = _P1_
 1+r   P0

[r:自然利子率]

P0=__B0+B1/(1+i)__
     s/(1+r)

(#4,191頁)

(ただし224頁の《地域通貨運動における教祖》のような記述を見ると、著者は循環型社会の重要性をわかっていないと思う。平成の大合併のような行政単位の単純な拡大が長期的にはマイナスになることが検証されるべきだ。)


新しい物価理論ではこれに貨幣価値が加わる。*



P0=M-1+Σ∞j=0 B-1,j/Rn0,1/Σ∞j=0‘sj/Rr0,j



Σ∞j:0(‘sj/Rr0,j) =Σ∞j:0(B-1,jj/Rr0,j)(1/Pj)+(M-1)(1/P0)
(1/Pj)は現在から将来にわたる貨幣価値。
新しい物価理論(200頁)
この式の右辺は現在から将来にわたる貨幣価値(1/Pj)を各期に支払期が到来する公的部門の金融債務B-1,j/Rr0,jでウエイト付けした加重平均であり,一方,左辺は財政余剰の予想流列を自然利子率で現在価値化したものである。したがって,この式は,財政余剰に対する予想が変化しないままで自然利子率が変化するというようなショックの下で,現在の物価を変化させないためには,何らかのかたちで将来の物価流列についての予想に変化を生じさせなければならない,つまり代償を払わねばならないということを示しているのだといえる。これはゲゼル型貨幣であろうとなかろうと効いている制約である。そこで,この制約の意味するところを,縦軸に物価水準(対数値)をとり横軸に時間の流れをとった図5.1**で考えてみよう.なお,前提として,このような自然利子率についての予想が低下するというショックの前には,名目金利と自然利子率とが等しくなるよう金融政策が実行されていて,物価は水準Pで変化せず,すなわち「物価の安定」が実現していたとする。

もっとも,この式は,もし私たちが貨幣をゲゼル型に「改造」することを考えるのならば,制度の移行に伴うデフレ効果にも注意しなければならないということを示すものである.貨幣をゲゼル型に改造すれば,人々は貨幣への課税(あるいは中央銀行の利益)分をも将来の財政余剰の流列に織り込むだろうから,そうした改造が適切な補償措置つまり減税とセットで行われるのでなければ,制度移行に伴うデフレ効果が発生してしまう。》(200頁)

減税というよりも税金をゼロにできる。受益者負担を別の形で実現しなければならないが。

**
 図5.1 ゲゼル型貨幣と金融政策

(5.1A) 現在の貨幣制度~流動性の罠の中の金融政策対応

logP|------→        ↗︎
    |       |      /
    |       |     /
    |       |    /
    |・・・・・・・|・・・
/・・・・・
    |       |  /
    |       | /\ショックによる物価の下落と
    |       |/  その後の物価上昇
    |_______|________________
           現在     将来

(5.1B) ゲゼル型貨幣による「名目金利=自然利子率」の維持
logP|------
    |       |     
    |       | 
    |       |  
    |・・・・・・・|----------→
    |       |  \
    |       |    ショックによる物価水準の変化
    |       |
    |_______|________________
           現在     将来

(5.1C) ゲゼル型貨幣によるアグレッシブなショック吸収(名目金利<自然利子率)

logP|------→    ショックの回避とその後の
    |       |\  継続的な物価下落
    |       | \/
    |       |  \
    |・・・・・・・|・・・\・・・・・
    |       |    \ 
    |       |     \
    |       |      ↘︎
    |_______|________________
           現在     将来

  


(政府が能動的か受動的かでさらに考察の続きがある…)

以下でもゲゼルがコラム扱いだが少し言及されている。

岩村充「企業金融講義」2005
https://itun.es/jp/llgqcb.l

さらに以下は研究書レベルでゲゼルが言及された貴重な例。

新しい物価理論―物価水準の財政理論と金融政策の役割 (一橋大学経済研究叢書) – 2004/2/20

ただし入手困難なので、やはり各種電子書籍版のある以下がオススメ。



岩村充 『中央銀行が終わる日―ビットコインと通貨の未来―』 新潮社 2016

中央銀行が終わる日―ビットコインと通貨の未来―
岩村充/著
1,512円(税込)
発売日:2016/03/25
日本銀行の金融政策はなぜ効かなくなったのか? 仮想通貨はなぜお金として機能するようになったのか? 「金利付き貨幣」の出現は、経済の仕組みをどう変えるのか? 日銀を飛び出した異能の経済学者が、「貨幣発行独占」崩壊後の新しい通貨システムを洞察する。マイナス成長がもたらす大格差時代を生き抜くための必読書。

はじめに
第一章 協調の風景――良いが悪いに、悪いが良いに
一 協調か競争か
なぜ協調なのだろう/かつてハイエクがいた/固定相場制から変動相場制へ
二 戻ってきた流動性の罠
財政政策の時代とその終わり/金融政策リバイバル/流動性の罠、再現@
三 閉じた選択肢の前で
異次元緩和の登場/もう引き返せない、か?/不安の少数派たち/閉じた選択肢の前で

パネル1:各国の消費者物価上昇率(5年間平均)/パネル2:ケインジアンの基本図/パネル3:フィリップス曲線の発見/パネル4:フィリップス曲線と流動性の罠/パネル5:心のバイアスと心の呪縛/パネル6:日銀券発行高の推移
第二章 来訪者ビットコイン――枯れた技術とコロンブスの卵
一 ビットコインの要素技術
枯れた技術の水平思考/暗号の始まり/計量的安全性という概念/データに署名する技術/手形は電子化できるが現金は……/ハッシュ関数☆
二 コロンブスの卵はどこか
秘密鍵と公開鍵そして匿名性/P2Pへのブロードキャスト/ブロックチェーンというアイディア/仮想掲示板システムの悩み/プルーフ・オブ・ワーク/マイナーたちのインセンティブ/仮想掲示板の前のドラマ

パネル7:機械式暗号機エニグマ/パネル8:デジタル署名と楕円曲線暗号/パネル9:ビザンチン将軍問題/パネル10:試行は絞り込みになるか/パネル11:口座番号F5R6I5D1A3XY/パネル12:伝言板あるいは掲示板/パネル13:至るところにあるPOW/パネル14:錬金術師ブラントの貢献/パネル15:300,001枚目のボード
第三章 ビットコインたちの今と未来――それはどこまで通貨になれるか
一 ビットコインからビットコインたちへ
アルトコインたちの出現/ビットコインの問題とビットコインたちの問題は違う/ブロックチェーンの活用法さまざま/暗号通貨あるいは仮想通貨そしてPOWモデル/産業化するマイニング/ビットコインのリスクと限界
二 それはどこまで通貨になれるか
貨幣と通貨の間にあるもの/ヤップ島の巨石貨幣/石貨の価値と金の価値/それを通貨にする方法/POWモデルにおける貨幣間競争/クリストファー・コロンブスとサトシ・ナカモト/捨てきれない疑い

パネル16:ビットコインの価格/パネル17:歴史の中のアルトコインたち/パネル18:誰が記録を公正に保持するか/パネル19:電子マネーと地域通貨/パネル20:産業化したマイニング/パネル21:四年に一度のチキンレース/パネル22:コインになったビットコイン/ パネル23:ヤップ島の石貨/パネル24:1ドル札が40億円?/パネル25:ムーアの法則/パネル26:コロンブスのサンタマリア号
第四章 対立の時代の中央銀行――行き詰る金融政策とゲゼルの魔法のオカネ
一 中央銀行は成長とともに生まれた
日本は運が良かった/今は病気か常態か/金融政策が始まったころ/銀行券の価値はどこから/フィッシャー方程式
二 金融政策は使命か重荷か
流動性の罠とインフレターゲット/デフレが逆転しても/拡がる所得格差/底辺への競い合い/企業ガバナンスと分配の問題/金融政策における不都合な現実
三 ゲゼルの魔法のオカネ ☆☆
ゲゼルの発想から/魔法のオカネの作り方/銀行券に時間情報を付ける/投信の発想からアナログ円を作る

パネル27:日本と米中そしてドイツ/パネル28:イングランド銀行は中央銀行でない?/パネル29:日本銀行のバランスシート/パネル30:フィッシャー方程式と金融政策の役割/パネル31:マイナス金利が観察される場合/パネル32:景気の循環と物価の循環/パネル33:企業の意思決定とコースの定理/パネル34:ゲゼル型貨幣の地域消費促進効果?☆☆☆/パネル35:「ゲゼルの魔法のオカネ」の収支計算/パネル36:投資信託/パネル37:デジタル円とアナログ円との分離
第五章 中央銀行は終わるのだろうか――ビットコインから見えてくる通貨の未来
一 ビットコインから何が見えるか
その安さはどこから/キャピタライゼーション自体は悪くない/仮想空間の使い方/デジタル銀行券かビットコインたちか
二 通貨独占発行権は必要か
二つの利子率と貨幣の供給量/ティンバーゲンの定理から/銀行券供給の限界費用問題/預金による信用創造という危うさ/通貨独占発行権は不祥の器
三 再びハイエク
貨幣利子率と通貨発行競争/自分の通貨圏を自分で選ぶ/中央銀行は終わるのだろうか/やがて秤座のように

パネル38:金と銀の価格/パネル39:POWは浪費の証明?/パネル40:銀行券モデルの運営費/パネル41:何を使って何を操作するか/パネル42:銀行監督が金融危機を作った?/パネル43:ナローバンク/パネル44:Is Big Brother Watching You?/パネル45:金利差と為替/パネル46:共通通貨という片道切符/パネル47:枡座と秤座
おわりに
_____
ハッシュ関数というのは、対象となるデータの攪拌と圧縮を繰り返して一定の長さの要約値であるハッシュ値を算出するもので、このハッシュ値を通信データの後ろに付加しておくと、通信途上でのデータの欠落や改ざんを検知することができます。
☆☆


☆☆☆

@


     金利
     ↑
     |   
     |   
     |  
     | 
     |
     |__________→総所得
    /
   / 
  /
 ↙︎物価上昇率



財政政策の役割:
物価水準を上下させる。
FTPLでは財政への見方が物価水準を決める
                               物価高 貨幣価値小
      
      -------------------
         ⬆︎  財政赤字は拡大するだろう
  ___________________________物価水準
         ⬇︎  財政が再建されていくだろう
      -------------------
       
      現在                 将来
                               物価低 貨幣価値大

金融政策の役割:
名目金利が物価の“坂”を作る
                               物価高 貨幣価値小
        ̄-_             _- ̄
           ̄-_       _- ̄ 
   金利引き下げ⬆︎    ̄-_ _- ̄
  ___________ _- ̄____________物価水準
   金利引き上げ⬇︎ _- ̄     ̄-_
        _- ̄           ̄-_
     _- ̄                 ̄-_
      現在                 将来
                               物価低 貨幣価値大

穏やかな物価上昇[下降]を取り戻す手段
(名目金利が物価の“坂”を作る)
[金利引き下げすぐに物価上昇⬆︎]               物価高 貨幣価値小
        ̄-_             _- ̄穏やかな
    ̄-_     ̄-_       _- ̄   物価上昇②
       ̄-_     ̄-_ _- ̄
  _______ ̄-__ _- ̄____________物価水準
 ②金利引き上げて⬇︎ _- ̄_ ⬆︎  ̄-_   (財政政策が全体を上[下])
  物価上昇を _- ̄     ̄-_    ̄-_
  先送り_- ̄        ①  ̄-_    ̄-_
            財政への見方の変化 ̄-_
                         ̄-_デフレの現状
      現在                将来
                               物価低 貨幣価値大


全体の底上げで財政政策①の有効性を表している。
左右、現在将来のバランスで貨幣の中立性を前提としたフィッシャー*的な金利政策②の
効果を表している。
デフレでは財政政策①が重要。公共政策による一時的財政悪化は必ずしも悪いとは限らない。

*フィッシャー方程式:
(1+名目金利)÷(1+自然利子率)=(1+予想物価上昇率)


《物価の「水準」を上下させるのが財政への見方で、「坂」を動かすのが金融政策とすると矛盾は解消されるというのが私たちの整理だった。金融政策の役割とは、物価に加わる圧力を、現在から将来にかけて分散させることに過ぎないわけだ。》★★★★
 


2008や2017のネット記事★★★★でも同様の解説がされていたが、金融政策がバランスをとり、財政政策が全体を押し上げると
いうように、財政政策①と金融政策②の協働をうまく説明している。

既出だが、以下でもゲゼルがコラム扱いだが少し言及されている。



岩村充「企業金融講義」2005
https://itun.es/jp/llgqcb.l

☆☆☆☆
翁金利★で参考文献に挙げられていた
珍しく真面目にゲゼルが言及されている

https://www.amazon.co.jp/dp/4000097288
新しい物価理論―物価水準の財政理論と金融政策の役割 (一橋大学経済研究叢書) 単行本 – 2004/2/20
渡辺 努 (著), 岩村 充 (著)


新しい物価理論 物価水準の財政理論と金融政策の役割
叢書名   一橋大学経済研究叢書  
著者名等  渡辺努/著  
著者名等  岩村充/著  
著者等紹介 【渡辺】1959年生まれ。82年東京大学経済学部卒、日本銀行入行。99年一橋大学経済研究所助教授、2002年同教授。専攻はマクロ経済学、国際金融論。
著者等紹介 【岩村】1950年生まれ。74年東京大学経済学部卒、日本銀行入行。98年早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授。専攻は金融論、情報社会論。著書に「入門企業金融論」「銀行の経営革新」「サイバーエコノミー」「企業金融の理論と法」。
出版者   岩波書店
出版年   2004.2
大きさ等  21cm 244p
NDC分類 337.81
件名    物価  
件名    金融政策  
要旨
一九九〇年代後半の新興市場における通貨危機とインフレーションの関係を明らかにして脚光を浴びた「物価水準の財政理論(FTPL)」は、物価水準と財政との関係に注目する新しい考え方である。本書は、この理論をデフレーション下の日本経済の分析に応用し、管理通貨制における政府と中央銀行の物価に対する役割を考察する。

目次    

第1章 誰が貨幣価値を支えているのか
1.1 はじめに
1.2 金本位制の世界
1.3 FTPL―物価水準の財政理論 
1.4 政府と中央銀行
1.5 金本位制から現代まで

第2章 FTPLの道具箱
2.1 財政と貨幣価値のリンク
2.2 最小限のモデル
2.3 多期間モデル
2.4 多国モデル

第3章 ゼロ金利下の政策コミットメント(1)
3.1 はじめに
3.2 日本銀行のゼロ金利政策
3.3 ゼロ金利制約に関する研究
3.4 ゼロ金利下の最適金融政策
3.5 結び

第4章 ゼロ金利下の政策コミットメント(2)
4.1 はじめに 
4.2 流動性の罠と財政コミットメント
4.3 物価水準の決定モデル
4.4 比較静学
4.5 最適な政策コミットメント
4.6 結び

第5章 代替的な制度
5.1 はじめに
5.2 ゲゼル型貨幣
5.3 リカーディアンの政府
5.4 結び

内容
物価水準を財政状況から解明する「物価水準の財政理論」という枠組みを、デフレーション下の日本経済の分析に援用し、管理通貨制における政府と中央銀行の物価決定に果たす役割を、新しい分析方法を用いて考察する。
ISBN等 4-00-009728-8



金利と経済―高まるリスクと残された処方箋

翁 邦雄【著】2017

日銀金融研究所長などを歴任した第一人者が生きた題材をもとに景気、成長と金利の関係を検証。

https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784478101681
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金利と経済―高まるリスクと残された処方箋

翁 邦雄【著】

価格 ¥1,944(本体¥1,800)
ダイヤモンド社(2017/02発売)

目次
第1章 金利とは何か
第2章 バブルとデフレ、どちらをとるか
第3章 長期停滞が懸念される理由
第4章 自然利子率がマイナスの場合の金融政策
第5章 マイナス金利政策の登場
第6章 「マイナス金利」追加の功罪
第7章 「イールドカーブ・コントロール」の行方
第8章 「財政政策の時代」と金融政策 ★★
著者紹介
翁邦雄[オキナクニオ]
京都大学公共政策大学院教授。1974年日本銀行入行。同調査統計局企画調査課長、同金融研究所長などを歴任。2009年4月より現職。専門は金融論、金融政策論、国際金融論。『期待と投機の経済分析』(東洋経済新報社、1985年、日経・経済図書文化賞受賞)、『ポスト・マネタリズムの金融政策』(日本経済新聞出版社、2011年)、『日本銀行』(ちくま新書、2013年)、『経済の大転換と日本銀行』(岩波書店、2015年、石橋湛山賞受賞)など著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
出版社内容情報
「金利操作と成長」の処方箋黒田日銀政策をあらためて検証する≪日銀金融研究所長などを歴任した金融論の第一人者が語り尽くす≫

翁 邦雄[オキナ クニオ]

★★
2 0 1 6年 5月 、岩村充氏 (早稲田大学大学院商学研究科教授 )が日経ナウキャストでひとつの試案 ( 「日銀保有国債の変動利付永久債化プラン 」 )を公表して話題になった。


岩村提案の中核的な部分は 、日銀がもっている長期国債を市場金利連動のコンソルに置き換えることで 、日銀のバランスシ ートを金利変動リスクから遮断し 、金融政策の自由度を回復させる点にある 。
リンク切れ
正確なリンクは、

問題提起0523.pdf

さらに以下2017年改訂版

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10)2016 年5月に「日経ナウキャスト予測物価指数」の提供会社であるナウキャスト社のサイトにて公開の後、毎日新聞出版『週刊エコノミスト』2016年8月2日号にも説明を掲載している。 

9)当時の講演録(The 60th Anniversary  Meeting,  The  Japan  Society  of  Monetary Economics)では「I  am intrigued  by  a  simple  proposal  that  I  understand  has  been suggested  by  the  Japanese  Business  Federation,  the  Nippon  Keidanren.  Under  this proposal  the  Ministry  of  Finance  would  convert  the  fixed  interest  rates  of  the  Japanese government  bonds  held  by  the  Bank  of  Japan  into  floating  interest  rates」となっているが、これは「魅力的で信頼される国債市場の発展に向けて」( 2003年5月20日・日本経済団体連合会)を踏まえたものであろう。・・・本脚注2017年4月13日部分修正・・・ 
10 )2016 年5月に「日経ナウキャスト予測物価指数」の提供会社であるナウキャスト社のサイトにて公開の後、毎日新聞出版『週刊エコノミスト』2016年8月2日号にも説明を掲載している。
 11 )いわゆる評価損の問題は、日銀よりも民間金融機関における方が本質的である。金融緩和の「出口」で日銀に生じる評価損は、統合政府としてみれば、同時に発生する財政部門における評価益で相殺されるはずだからである。日銀における評価損への対応が必要なのは、現実の制度において政府と日銀は別個の財務管理がなされているからに過ぎない。なお、現状では、政府も日銀も金融資産負債における時価評価を行っていないので、評価損益の問題は制度的な問題というよりも、各々の機関に対する市場からの信認の問題と、金融緩和の出口における自由度確保の問題と位置付けるべきだろう。 
12 )連動の基準金利をオーバーナイト金利としたのは、D項による償還(償還のための買い入れ)を柔軟に行えるようにすることを重視したのが主な理由だが、売却時のことを考えると最長期物国債の利回りを基準とすべきという考え方もありうる。この辺りは、日銀のイールドカーブ・コントロールへの信認にもかかる問題なので別に議論したい。 


追記:
以下の優れた書評を見つけた。

☆☆☆☆

渡辺努・岩村充(2004)『新しい物価理論』を読んで: デジタル・マイナス金利×100%株準備=ほとんど理想的な貨幣システム? | Necomune
http://necochan.com/2015/03/22/ほとんど理想的な貨幣システム/

渡辺努・岩村充(2004)『新しい物価理論』を読んで: デジタル・マイナス金利×100%株準備=ほとんど理想的な貨幣システム?


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前々から気になっていた渡辺努・岩村充著による『新しい物価理論』を読みました。主に「物価水準の財政理論」(Fiscal Theory of Price Level)を扱った本ですが、特に興味を持ったのは、既存の制度にとどまらない代替的な貨幣システムを論じた最終章でした。
最終章で示唆されているのは、「物価の安定」を目的とした場合、ゲゼル・マネーと実物資産準備(例えば金準備)の組み合わせが、ほとんど理想的な貨幣システムではないか、ということです(p.212)。
すなわち、Ⅰ)時間と共に価値が減価する通貨(=ゲゼル・マネー)を電子マネーなどによって実装することで、現金までの名目マイナス金利を実現し、「流動性の罠」を克服すること。並びに、Ⅱ)自然利子率の低下などのリアル・ショックに対して、現在物価と将来物価のトレードオフを避けることのできない名目利子の操作だけで対応するのではなく、政府の実物資産準備を実質貨幣残高と毎期逐次的に一致させるルールを導入することで乗り越えること、が提案されています。
以下、FTPLの下で導かれるこの結論を、順を追って要約してみたいと思います。

 中央銀行と政府のバランスシート(B/S)を統合して考える

FTPLでは中央銀行と政府の財務上の結合が重視されます。例えば日銀の場合、その役割としては法的に独立性が確保されているものの、財務的にはそうではありません。利益が出ればその大部分は納付金として国庫に返納され、また、仮に大幅な損失が発生した場合、政府から資本を補填されることになります。
したがって、「貨幣の信用度とは、強力な親会社の傘下にある子会社が発行する社債の信用のようなもので、それを子会社の財務だけで判断するわけにはいかない」(p.6)、ものと考えられます。

 国債のネットアウト(コア国債)

重要なことに、政府と中央銀行のバランスシートを統合して考えれば、中央銀行の資産の大部分を占める国債保有額が、政府の負債サイドの国債発行額とネットアウトされます。
このため、統合政府のバランスシートには、負債としてネット国債(=民間保有国債)[B]の市場価値と貨幣(=マネタリーベース)残高[M]が計上され、これが資産サイドの保有資産[ξA]および将来に渡る名目財政余剰[s]の割引現在価値の合計とバランスすることになります。
式1:
 \sum^\infty_{j=0}\dfrac{P_j s_j}{R^n_{0,j}}+\xi A=M_{-1}+\sum^\infty_{j=0}\dfrac{B_{-1,j}}{R^n_{0,j}}
 R^n_{0,j}\equiv (1+i_0)(1+i_0)\times\ldots\times(1+i_{j-1})
この均衡式で重要なのは、政府バランスシートの状態に対する民間部門の評価(期待)が大きな影響を持つことです。すなわち、(1)負債サイドのネット国債残高は市場価値ベース、すなわち、前期までに発行済みの国債が生み出す将来時点のキャッシュフロー(元利支払い)を市場で決まる名目利子因子[Rn]で割引いた現在価値の合計です。また、(2)資産サイドの将来財政余剰は、人口動態や税制をもとに予想される実質ベースの財政収支と、将来の各時点でのそれら実質公共財サービス提供と課税対象に係る物価水準への期待で決まり、さらにそれが名目利子因子で割り引かれています。

 名目FTPV式とフィッシャー式

物価水準の財政理論(FTPV)の基本式は、上の統合政府のバランスシート均衡式を現在時点の物価水準について解くことで得られます。そのためには、次のフィッシャー方程式(名目金利=実質金利+期待インフレ率)を用いて将来の物価水準を消去します。
式2:
 P_j/P_0=R^n_{0,j}/R^r_{0,j}
すると、式1は以下のように現在物価の決定式に変形されます。
式3:
 P_0=\dfrac {M_{-1}+\sum^\infty_{j=0}B_{-1,j}/R^n_{0,j}-\xi A}{\sum^\infty_{j=0}s_j/R^r_{0,j}}
これがFTPLのエッセンスとなる式であり、物価決定における政府の財政収支と国債市場価値の重要性が表われています。例えば、将来財政収支の悪化が予想された場合、市場がそれを見越して名目金利が上昇しない限り、現在の物価水準が上昇することになると示唆されます。この意味では、国債市場がスムーズに機能し、名目金利が情報集約的に決定されることは、物価の安定にとって不可欠なこと、ともいえるでしょう。

 貨幣需要関数と金融政策

また、FTPLにおいても、金融政策は名目金利に働きかけることで物価に影響し得ることが確認されますが、量的緩和政策(QE)についてはどうでしょうか。QEでは、通常、マネタリーベース[M]を増加させるために民間から国債を購入します。このため、式3において、Mが増える分だけBが減少し、それだけでは物価に対してニュートラルです。肝心なのは、QEがマネー増加と国債購入を通じて、政策金利をゼロにしただけでは下げ尽くせない長期の名目金利を押し下げる作用です。これには、マーシャルのkが金利に反比例するような貨幣需要関数の存在が大前提となります。
式4:
 M=k(i)PY
貨幣需要がこうした単純な形に従う限り、将来にわたり貨幣供給量を増大させた状態にすることで、十分長期までの名目利子率が低下し、長期金利を押し下げます。その結果、式3において、マネタリーベースの増加によって民間保有国債は減るけれども、長期金利の低下によって、国債の時価総額が増すことで、式3の分子が拡大、物価水準に上昇圧力を与えることになります。

  ゼロ金利制約によるデフレーション

高齢化やバブル後の過剰資本の影響などによって、将来の実質利子率(=自然利子率=潜在成長率[Rr])に対する期待が下方シフトした場合、FTPL式(式3)の分母が拡大します。これに応じて市場金利[Rn]が低下してくれれば分子も拡大し、物価への影響はニュートラルです。しかし、実質変数である自然利子率が大幅に低下してマイナスとなった場合、名目利子率はゼロ金利の下限にぶつかってしまうことがあります。この時には、式3の分母の拡大に分子の拡大が追いつかないため、物価水準に低下圧力が発生。将来の実質マイナス成長が期待された場合に、ゼロ金利制約があることによるデフレーションが生じます。

 ゲゼル・マネーによる解決

こうした名目ゼロ金利制約の解決策として、本書の最終章で取り上げられているのがゲゼル・マネーです。これは20世紀初頭の経済思想家であるシルヴィオ・ゲゼルによって発案された「時間とともに価値が減価するマネー」であり、J.M・ケインズが『一般理論』のなかで好意的に紹介していたものです。
もともとのゲゼルのアイディアは、「スタンプ貨幣」と呼ばれるもので、紙幣の保有者に保有期間に応じた価格のスタンプを購入させ、そのスタンプが貼りついていない貨幣は使用できないとする、貨幣に対する課税のような仕組みです。
この煩雑さに対して、本書では、貨幣が発行日からの経過日数に応じてマイナスの日歩[i]で減価するようにして、発行日の異なる貨幣が違う価値をもった債務だと認識できるようにすること、そして、そうした発行日間の交換レートを計算する煩わしさを解消するために紙幣を廃止して電子マネーを使用すること、が提案されていました。確かに、制度的なコストをあまり掛けずに、こうした貨幣に対するマイナス金利が実現できるのなら、国債に対するマイナス金利を定着させることも可能ですし、それによって、自然利子率低下によるデフレ・ショックを中和することもできそうです。

 しかし、フィッシャー式から将来デフレが発生

もっとも、本書の最終章では、ゲゼルマネーによって名目金利のゼロ制約が解消されても、実質変数である自然利子率の低下に対して、市場金利の低下という名目変数だけで対応することには限界があると強調されています。
というのも、式3から分かるように、自然利子率低下の現在物価への影響をオフセットするのに必要な名目利子率の低下幅は、自然利子率のそれを上回る必要があるため、名目利子率<自然利子率となる必要があります。この場合、フィッシャー方程式(式2)により、将来的なデフレーションの予想が避けられないのです。つまり、金融政策がリアル・ショックに対して実現できるのは、その現在物価への影響を将来のいづれかの時点へと先送りすることだけなのです。このことは、式1を現在物価で除して実質ベースに変換した以下の「金融政策の制約式」に表れています。
式5:
 \sum^\infty_{j=0}\dfrac{s_j}{R^r_{0,j}}+\dfrac{\xi A}{P_0}=\dfrac{M_{-1}}{P_0}+\sum^\infty_{j=0}\dfrac{B_{-1,j}}{R^r_{0,j}}(\dfrac{1}{P_j})
すなわち、「財政余剰に対する予想が変化しないままで自然利子率が変化するというようなショックの下で、現在の物価を変化させないためには、何らかのかたちで将来の物価流列についての予想に変化を生じさせなければならない」(p.200)。

 実物資産準備による解決

以上のように、リアル・ショックによる物価への影響を、金融政策によるマネタリー・ショックによって完全に中和することはできません。そこで本書で最後に提案されているのが、実質政府資産残高を逐次調整することによる解決です。すなわち、以下の式が毎期成り立つように、実質政府資産残高[ξA/P]を実質貨幣残高に一致させ続けるというルールを設定すること、が提案されていました。なお、アスタリスク付の自然利子率はショック前のベースラインの値を意味します。
式6:
 s_j - B_{-1,j}/P_j = M_{-1}/P_j -(\dfrac{R^r_{j}}{R^r*_{j}})\dfrac{\xi_j A_j}{P_j}=0
これが成り立っていれば、少なくともj期については、あらゆるショックが中和された状態が保たれていることを意味します。当期に発生した自然利子率の変化に対しても、また、財政収支の変化に対しても、当期の政府資産残高を調整して対応させるのです。こうした戦略を毎期逐次に行うことをルール化し、それを民間経済主体が期待として織り込めば、物価の長期的な安定に寄与すると考えられます。
本書は、こうした制度が、「当期において実質貨幣残高相当の実物資産を政府自身で区分管理し、そうして区分管理した資産額を、毎期洗い替えして、常に実質貨幣残高相当の実物資産が政府部門のどこかに保管されている状態を作る」という意味で、「100%準備の金本位制」に相当することを確認しています。
もっとも、現代において、実質貨幣残高に相当する実物の金を集めることはほとんど不可能であり、実行しようとすれば、金価格の高騰による産業での需要減を招くため、非効率が発生すると警告しています。
そのため、金ではなくとも、中央銀行に、統合政府でみた場合にオフセットされる国債ではない実物資産を、実質貨幣残高に対応するように準備させ、その状態を逐次維持していくことで、同様の「逐次100%準備」の貨幣制度が実現されると述べています。具体的には、実物資産の価値にリンクする証券、すなわち、「十分に分散された株式ポートフォリオと、そうした株式を発行している企業の社債とを組み合わせて自然利子率資産を合成する」(p.227)ことが提案されています。
個人的には、エクイティ・リスクプレミアムの謎が解けない以上、このような株式ポートフォリオによって適切な自然利子率資産が合成できるとは思いませんが、何らかの形でそのような証券を組成し(例えば、民間発行による実質GDP連動債など)、中央銀行の準備とすることには納得できます。
結論としては、FTPLから見た場合、「実物資産100%準備によるデジタル・ゲゼルマネーの発行」というのが、「物価安定」のためにほとんど理想的な貨幣システムである、と言えそうです。

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岩村充(2016)『中央銀行が終わる日』を読んで:  | Necomune
http://necochan.com/2016/06/15/iwamura2016/

岩村充(2016)『中央銀行が終わる日』を読んで: 


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刺激的なタイトルですが、岩村先生は決済システムに精通した日銀OBで、しっかりとした中身のある良書でした。
歴史的にも稀なマネー・システムの転換点にある現在ですから、こうした議論の整理は大変勉強になります。以下、簡単に内容をまとめました。

1: ビット・コインとブロックチェーンの仕組みを要約

  • ブロック・チェーン=P2Pネットワーク上の伝言パネル
と取引メモを次々に貼り付けて、パネル(ブロック)がいっぱいになったら枠から外して、クローズ処理(ハッシュ値の書き込み)をする。次のブロックには、先ほど前のブロックに書き込んだハッシュ値が初期値として入っている(マルコフ・チェーン)。見立てる<入っている(マルコフ・チェーン)。
  • P2P伝言パネルで起こりそうな悪さ
1) 他人になりすまし→デジタル署名(公開鍵)で克服
2) 勝手な消し去り→ブロードキャストで不可能化
3) 二重譲渡(保有量を超えて提供)→掲示しただけでは有効にならない仕組み→POW、管理人がチェック、嫌なら有志で→Bitcoinの場合は経済的利益に誘因された「マイナー」がやる
  • システムの維持費用そのものを価値の源泉にする
マイナーの経済インセンティブは新規コイン獲得と手数料。現状、コイン獲得余地が残っているので、手数料はごくわずか
コロンブスの卵: 貨幣の流通を確認し証明する作業そのものが、同時に新しい貨幣を生み出す = 費用の資産計上(キャピタライゼーション)
金や銀の資産価値もそれを採掘・精錬するのにかかったコストをキャピタライズしたものが源泉 = キャピタライゼーションへの違和感は感性の問題

2: BitCoinとその類似品の根本的な弱点

  1. 遅延処理が前提
  2. スケーラビリティの問題
発掘可能量(マイニング事業の生産性)が4年で一回スケールダウンする問題→ 供給量が非弾力的なので、価格が需要サイドだけで決まり、安定しない(貴金属市場と同じになる)→金融取引(現在と将来の取引)には向かない。したがって、新規発行量がゼロになったら、マイナーのインセンティブを維持するために送金手数料を上げざるを得ない。

  • Fintech=ビットコイン2.0の根本問題
ビザンチンン将軍問題:
多数決を採用しているために、システムの状態が発散方向へ進むこと
そうした崩壊への動学過程を狙ったアタックに脆弱なこと
BitcoinはPOWのビザンチン将軍問題をマイナーの経済的インセンティブ(マイニングの産業化)で迂回している
マイニングを除き、ブロック・チェーンだけ取り出して使う場合には、分散処理(ビザンチン将軍問題の克服)がより難しくなる。
特に、単なる決済情報以外をブロック・チェーンに乗せる場合、意図的な情報の改ざんや排除の動機が強まる → 価値源泉は外から取り込まれることになり、ただのITシステムに過ぎなくなる
マイニング原理なしでのブロック・チェーンの維持には、結局、二重使用の防止などを担う管理者が必要になる

 3: 銀行による預金通貨(バンクマネー)へのインプリケーション

  • BitCoinは電気代本位制、信用的ではなく実物的な貨幣
供給が弾力的で為替が安定するなら、価値尺度として通用し、預金や貸出の金融事業も可能になる
決済と価値保存を超えて価値尺度になれば、金融が発生する
  • フリードマン的には、貨幣供給も競争的であれば限界費用価格で均衡する
独占企業利益としてのシニョレッジはなくなる = 貨幣利子率(中銀調達金利)と市場利子率(中銀運用金利)のスプレッド(NIM)はなくなる
→通貨発行の法的な独占権を放棄しても、政府の徴税力の信用を持っているのは中銀だけであれば、外部性の強さから自然独占になるのではないか?
  • 通貨発行権の独占がなくなったら法定通貨建ての銀行預金は不要になる→各銀行が独自のデジタル銀行券(負債)を発行
決済通貨としては、デジタル銀行券を発行すればいいので、流動性預金を信用創造する必要はない。すべてが多様なM0ということになる→取り付けは起きない。預金の価値安定はなくなり、銀行券の為替リスクを家計が受け持つことになる。
もっとも、資産の範囲内でしか貨幣が存在しなくなるので、バブルは起きにくい?
P2P空間での貨幣発行独占権を維持しようとすれば、ネット監視と罰則を強化せざるを得ず、難しい。日銀券の偽造防止技術という差別化(企業秘密)は通用しない。
発券銀行間の競争は、決済serviceの良さにくわえて、いかに良い見合いの資産構成を確保するか、になる。→実物経済の情報集約化に寄与=本来の金融
貨幣生産が自由化されても、価値尺度機能の高い通貨は、中銀券になるのではないか。決済性や価値貯蔵性で顧客を増やすよりも、「通貨価値の安定」をシングル・マンデートにしてBSを調整していけば、そうなるだろう。

 4: 中央銀行へのインプリケーション

  • 一人当たりGDPの成長は19世紀であり、産業革命よりも100年後
私有財産権と金融資本市場(中央銀行誕生と通貨価値の安定)が成長の源泉ではないか
そうみると、日本とイギリスの差はわずか40年
  • 金本位制は、金の実物価値のアンカーによって物価を安定させていたわけではなかった
大英帝国とBoEによる金量目の維持へのコミットメントとその実行力によって金価格が安定し、それにペグした通貨は自動的に安定した
  • 中銀の貨幣は、投資信託の受益証書のようなもの
BSの資産側に運用金融商品を保有して、負債側に決済機能に特化した銀行券を発行している
楽な商売: 決済性がある証券を独占しているからといって、ゼロ金利(市場金利以下)で負債を発行し、利ザヤを稼いでいる(シニョレッジ)
結局国債で運用するし、50%以上の株主が政府なので、政府の徴税力(未然の強奪可能性)が中銀券の価値源泉=信用貨幣
  • 電子ゲゼル・マネーで、流動性の罠は克服可能
せっかくならP2P上のネットワークで実装したらいい→デジタル銀行券
紙の銀行券は廃止するか、発行体(中央銀行のBS)を分割することで対処
第1セクションは中央銀行勘定のまま、デジタル円を負債にし、金融資産を資産とする。第2セクションは資産としてデジタル円だけを引き受け、それに見合う(初期は等価)紙のアナログ円を負債として発行する。デジタル円には金利があるので、アナログ円との金利差に応じて、為替が変動する。アナログ円をデジタル円に交換するには、この為替を使えばよい。
金融取引(価値尺度)にはデジタル円が主流になり、周辺的な決済にはアナログ円がわずかに残る程度になるだろう。
  • リアルの潜在成長=自然利子率は変えられない
とはいえ、究極的に金融政策にできるのは「金利操作」=将来の価値と現在の価値の交換のみ。

★★★
FTPL関連資料
研究室紹介のページでも書いた通り、最近ではFTPLへの関心が強いようです。ときどき聞かれることがありますので、2000年代の初めのころに書いた資料へのリンクを紹介しておきます。
岩村充、「公的コミットメントの整理とそのデフレ効果」、富士通総研Economic Review2002
渡辺努・岩村充、「ゼロ金利下の物価調整」、財務省財務総合研究所フィナンシャル・レビュー第64号、2002
Iwamura, Mitsuru and Tsutomu Watanabe Price Level Dynamics in a Liquidity Trap RIETI (独立行政法人経済産業研究所)Discussion Paper Series No.03-E-002, 2002
Iwamura, Mitsuru, Takeshi Kudo and Tsutomu Watanabe Monetary and Fiscal Policy in a Liquidity Trap, The Japanese Experience 19992004 NBER Monetary Policy under Very Low Inflation in the Pacific Rim, NBER-EASE, Volume 15 (Conference Date: June 25-27, 2004 / Publication Date: September 2006), 2004

 また、FTPLという観点からみると、いわゆるヘリコプターマネー(略してヘリマネ)とはどういう位置づけになるのかという問題を扱った短い論考を、以前から多少のつながりがあるナウキャストという日次物価指数などを提供する会社のサイトに20173月に寄稿して公開しました(http://www.nowcast.co.jp/news/2)。論考への直接リンクは以下の通りです。
リンク切れ
以下改訂版
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ヘリコプターマネーは既に現実 予期せぬ“出口”への備えが必要=岩村充


岩村充(早稲田大学大学院経営管理研究科教授)

 真偽のほど定かではないが、2014年まで米連邦準備制度理事会(FRB)の議長だったベンジャミン・バーナンキ氏には、ちょっとした「都市伝説」がある。彼が議長に就任する前の03年、長引くデフレに悩む日本を訪れ、「それなら国債や他の債券をどんどん買ってマネーを増発したらどうか。国債や他の債券を買い尽くしたら、後はケチャップでも何でも買い入れることだ。そうすれば必ずデフレを逆転できる」。そう発言したというのである。

 さて、このケチャップ買いの勧め、政策提言としての適不適はともかく、「ヘリコプターマネー」略して「ヘリマネ」の本質を、見事に言い当てているところが面白い。リアルの経済価値の裏付けなきマネーの散布をヘリマネと言うのだとすれば、長く持っていれば無価値になるに決まっているケチャップを買い入れてマネーを発行するというのは、既にヘリマネに他ならないからだ。

 バーナンキ氏には、積極的なマネー供給論者であるという文脈から、「ヘリコプター・ベン」というあだ名が奉られていたことがあったが、そうしたあだ名の由来には、この都市伝説も含まれているかもしれない。

 日銀を含め多くの中央銀行がマネー供給の手段として採用している国債の買い入れは、それがいかに大量のマネーを散布するものでもヘリマネとは言わない。ケチャップは、レストランならぬ中央銀行が持っていても何も得られないし、賞味期限を過ぎれば廃棄するほかはない。だが、国債を金庫に収めておけば利子が得られ、償還期には元本が戻ってくる。だから、ケチャップを買うのはヘリマネでも、国債を買うのはヘリマネではないはずなのである。

 ◇金庫の中身は突然変わる

 でも、いつもそうなのだろうか。金庫の中の国債が、いつのまにか賞味期限切れのケチャップに変わっている、そんなことは起こらないのだろうか。

 実はそこが怖いところだ。悪夢のシナリオは、GDP(国内総生産)の2倍にまで膨張した国債発行残高、その借り換え能力に人々が疑いを持ち始めたときに始まる。そのとき人々は、日銀資産の大半、400兆円にも迫っている膨大な量の国債を、ただの不良資産、つまりは「賞味期限の過ぎたケチャップ」と思うようになるかもしれない。そうしたら何が生じるだろうか。

 生じるのは、通貨価値のスリップ・ダウン、言い換えれば物価水準のジャンプ・アップ、それへの予感である。日銀が望んでいるような緩やかで持続的なインフレではない。そして、長期金利は突発的な上昇を始めることになる。中央銀行が直接にコントロールできるのは、短期の市場金利であって長期金利、つまり長期債の市場利回りではない。そこに悪夢の基本構造がある。


 図1は、日本国債の保有状況を示したものである。財投債を含め1000兆円を超える国債のほとんどは、日銀を含む金融機関や機関投資家などに保有されていることが分かる。長期金利の急上昇は彼らの信用を直撃するだろう。

 日本の国債は、1700兆円の家計貯蓄に支えられていると言われることがある。その通りである。だが、家計貯蓄は、直接に国債市場を支えているわけではない。日本国債のほとんどは、期間決算に拘束される法人や組織を通じて保有されているのだ。だから、国債の借り換え能力に対する疑念は、日銀と民間銀行あるいは保険会社などのバランスシート毀損(きそん)を通じて、日本円や日本の金融システムに対する信用への破壊的な衝撃になりかねない。

 もちろん、黒田東彦日銀総裁の見事な手綱さばきで、異次元緩和が緩やかに「出口」を迎える可能性だってある。だが、それは保証できることではない。政府債務の基盤は盤石だと説明することと、それを信じてもらえるかどうかは別問題だからである。

 危機の可能性を否定できない以上、私たちは備えを怠るべきではない。

 ◇“永久債”にするのなら

 筆者は2016年5月末より、「日経ナウキャスト日次物価指数」の配信サイトである株式会社ナウキャストのホームページを借りて、一つのプランを公開している。

 ◇日銀保有国債の変動利付永久債化プラン

  1. 現在の準備預金を、通常の支払い準備に使用する第1階層預金と、第2階層比で上乗せ金利(スプレッド)が得られる第2階層預金に分離する。第2階層預金には最低保証金利(フロア条項)を定めておく。
  2. 第2階層預金の第1階層預金への振り替えは、(所定のペナルティーを払う限り)いつでも可能とするが、第1階層預金の第2階層預金への振り替えは下記Cに応募する以外にはできないものとする。
  3. 日銀は、準備預金保有金融機関に対し、現在の準備預金から第2階層への振り替えを入札方式により募集する。
  4. 上記Cによる落札額相当額につき、日銀保有国債を永久債に転換する。永久債の金利はCに準じたスプレッド条件(及び最低保証金利)を付した市場金利連動とする。
  5. 政府は、本永久債につき、額面での繰り上げ償還権を持つ。

 図2に示すように、その骨子は、今や国債発行高の4割にまで達している日銀保有国債を他の国債から切り離し、変動利付永久債に交換すること、そして、そこから生じるキャッシュフローを、少なくとも異次元緩和の終了まで、準備預金保有金融機関へと移転する仕組みを構築しておくところにある。

 参考にしたのは、日銀自身が1月のマイナス金利導入の際に採用した仕組みだ。マイナス0・1%の金利が付される一般の準備預金から、過去の積み立て実績に応じた一定金額を基礎残高として区分し、それにプラス0・1%の金利を付すというものである。

 筆者のプランでは、分離した準備預金の付利条件を入札で決定することにし、さらに、分離した準備預金を永久債に転換した変動利付国債に見合うものと位置付けてみた。国債を永久債化し変動金利に転換としたのは、政府の借り換え負担を軽減しつつ日銀のバランスシートを守るためである。だが、得られる効果はそれだけでない。

 日本あるいは日本国債をみる投資家の「潮目」が変わり、価格の下落(利回りの上昇)が始まったときのことを考えてみよう。もちろん、金利の上昇は、「潮目」の変化だけで起こるとは限らない。アベノミクスが成功し、異次元緩和が「出口」に至ったときにも、これは日銀の誘導に沿って、市場金利はマイナス領域から離れ始めるはずだ。

 いずれにしても、そうしたとき、政府は、自身のALM(資産・負債総合管理)的な判断から、この変動利付永久債の償還と借り換えを考え始めるはずである。異次元緩和が終わりを迎え、金利が上昇を始めれば、自身の資金調達を長期化し、再び固定金利化しておいた方が安全なはずだからだ。

 もう気付いていただけただろう。こうすれば、この仕組み自体に固定的な終了期をセットしておかなくても、変動金利のメカニズムがその代わりをしてくれるのである。そうしてこれまでの量的緩和の「成果」を切り離して凍結し、足元では日銀が追加的な緩和に動く余地を確保するとともに、事情が変わったときには、散布されたマネーを回収する仕組みを準備すること、それが今回の提案の狙いである。

 これまで通りにデフレと戦い続けるのか、それとも戦いの弊害の方に眼を向けるのか、それは英明な黒田総裁が決めることである。プランを永久債ベースで考えたのは、その黒田総裁が「出口」に至るステップを語っていないからである。永久債にしておけば、総裁が異次元緩和の終わりを語り始めるまで、市場は待つことができるわけだ。

 日銀総裁が「出口」を語る日は、まだまだ当分は来ないかもしれない。いや、日銀総裁が「出口」を語り始める前に、異次元緩和そのものが、予期せぬ終わりを迎えることになるかもしれない。それは楽しくない予想だが、その予想を無視できない以上、備えが必要なのである。

 具体的イメージをつかむために、このプランを実施した場合、量的緩和の「終わり」の前後で何が起こるか、一例を図3に示しておこう。あえて「一例」と断ったのは、そこで何が起こるかは、具体的な制度設計、すなわちスプレッド(上乗せ金利)とフロア条項(最低保証金利)、そして第2階層から第1階層へと準備預金を振り替える際のペナルティーの設定に依存しているからである。ここで示すのは、あり得そうなシナリオの一つに過ぎない。

 ◇シナリオは設計次第

 現行の金利体系からの移行を基本に考えてみよう。その場合、最低保証金利は移行時の基礎残高への付利水準(0・1%)と同じにするのが妥当だろう。また、ペナルティーはゼロでスタートするのが自然と思われる。その場合、スプレッドは多少のマイナスになるはずだ。そう想定する理由は、量的緩和終了前後のシナリオを考えれば分かってくる。

 今のマイナス金利の状況が膠着(こうちゃく)し動かない間のことを考えてみよう。その間は、第2階層の金利は最低保証金利にくぎ付けになったままで動きそうもない。スプレッドはマイナスに設定されているが、実際の金利適用に有効なのはフロア条項の方だからだ。

 では、状況が変わって第1階層預金の金利がゼロあるいはプラス領域にまで、つまりはフロア条項の意味がなくなるほどまで上がってきたとき、準備預金保有金融機関はどう反応するだろうか。

 スプレッドが存在する限り、第2階層に実際に付される金利は第1階層のそれよりも低く、かつフロア条項も無意味になっているわけだが、それは金融機関に新たな不利益をもたらすものではない。彼らは、いつでも第2階層預金を第1階層に振り替えることができるからだ。彼らがそうしないとすれば、それは、いったんは引き上げた準備預金金利を再び日銀が引き下げてくる可能性を読んでいるせいである。

 こう整理すれば、入札条件に応じてスプレッドがどうなるかの見当が付く。量的緩和の終わりの前でも後でも、彼らにとって第2階層預金を持つことは、第1階層預金比で必ず有利なのである。したがって、条件を入札で決めれば、スプレッドはマイナスになるはずである。入札でスプレッドがプラスになるとしたら、それは、第2階層から第1階層への振り替えにペナルティーを設定した場合である。ただ、そうした設定は、現状を基準に考える限り、あまり現実性はないように思われる。

 ちなみに、このプランでは、量的緩和継続中の国債(変動利付転換された国債)の金利は、もしそれにフロア条項が付されるのなら第2階層の金利と等しく、そうでなければ単純にスプレッドに沿ってもっと低くなる。いずれにせよ、際限なくベースマネーを供給する異次元緩和下では、市場金利は第1階層預金の金利に張りついて動かないので、それに連動する国債金利も事実上の固定となるだろう。このプランによる国債の金利が上昇を始めるのは、日銀が無制限のベースマネー供給を止めたとき、すなわち量的緩和が終わりを迎える局面に至ったときである。

 量的緩和が終わりを迎えれば、日銀は、保有国債の対市中売却つまり「売りオペ」を開始することになる。だが、保有国債が固定利付のままだったら、日銀は、オペ対象国債に生じる売却損だけでなく、保有国債全体に対する評価損をも気にしつつ、緩和の終わらせ方を探らねばならない。ところが、もし保有国債が変動利付に転換されていれば、わずかばかりのスプレッドに相当する売却損がオペ対象国債に生じる以外に損失は生じなくなる。それは、「出口」における金融政策運営に、新たな自由度と機動性を与えてくれるはずだ。

 言うまでもないことだが、描いた図は、プランの採用で演出できるシナリオの一例に過ぎない。だが、こうして準備をしておけば、金融政策と国債管理政策とが区別ないまでに溶け合ってしまった日本を予期せぬ衝撃が見舞ったときにも、それで市場と政策とが同時に崩壊する事態だけは避けることができよう。

 ◇緩和依存症への処方箋

 異次元緩和は一種の「麻薬」である。麻薬は痛みを和らげてくれるが、使い続けていれば健康を損なう。異次元緩和という処方箋に浸かりきった日本経済も同じようなものだ。そして、薬物依存症の患者を救うのには、それを断ったときへの恐怖から解放する治療が必要なのと同じように、異次元緩和依存症に陥った日本経済にも、やがて来る金利上昇への備えが不可欠なのである。このプランの狙いも、そうした備えについての議論を促すことにある。

 とはいえ、ここで提案したプランは、今日明日からでもスタート可能というものではない。プランの根幹にあるのは、日銀保有既発国債と新規発行の変動利付国債とのスワップ(交換取引)だが、それを既発国債の繰り上げ償還と新規国債の引き受けというかたちで行おうとすれば、国会の議決を経ない日銀国債引き受けを禁じている財政法第5条との関係を整理しなければならないし、そうした形式上のことだけでなく、プランの考え方の全体について、それを考えざるを得なくなった背景にまでさかのぼった議論が必要だろうからである。

 ただ、現実にリスクがある以上は、打てる手は早く打っておいた方がよい。また、そうして手を打っておけば、日銀保有国債への利払い負担が軽くなるだけでなく(ただし、政府と日銀を連結した「統合政府」でみれば、これは統合政府内の付け替えに過ぎず、本質的な負担軽減ではない)、日銀が国債市場の激変に備えて積み上げている自己資本(*1)の相当部分が不要になり、そこで生じた財政的余裕を、他の活動に振り向けることも可能になるからだ。

 16年1月の日銀によるマイナス金利導入は、いかにも評判が良くない。それは当たり前だろう。拙著『中央銀行が終わる日』でも説明したように、停滞の色を濃くする今の世界で求められているのは、銀行券を含むベースマネーの全体にマイナスの金利を付し、デフレ時における金融政策を、ケインズのいう「流動性の罠(*2)」から自由にさせる手法を確立することである。世はマイナス金利なのに、ゼロ金利という利回りが確保され、しかも流動性まで備えた金融資産である銀行券をそのままにして、市場金利だけを強引にマイナス領域に押し下げようとする政策は、金融システムに深刻なゆがみを生じさせることになる。

 マイナス金利政策が金融機関経営に及ぼす影響について問われた黒田総裁、そこで「金融政策は金融機関のためにやっていない」と切り返したと報じられたことがあった。ただ、筆者は、それは彼の真意の全部ではないと信じたい。金融政策が金融機関経営のためのものでないことは自明だが、安定した金融システムなくして実効ある金融政策運営ができないことも自明だからである。黒田総裁ほどの知見の持ち主が「社会の利益を増進しようと思い込んでいる場合よりも、自分自身の利益を追求する方が、はるかに有効に社会の利益を増進することがしばしばある」(『国富論』大河内一男監訳・中公文庫より)と説いたアダム・スミスを知らぬはずはあるまい。

 危機の足音が聞こえ始めた今、日銀はこれまでにも増して市場の声に注意深く耳を傾ける必要がある。

(岩村充・早稲田大学大学院経営管理研究科教授)
◇日銀の自己資本(*1)
 日銀は利益の大半を政府に納めるが、うち5%を自己資本に積み増すよう義務付けられている。資産購入で利益が増す一方、リスクが増しているため、2013年度は20%、14年度は25%を財務大臣の許可を得て自己資本に積み増した。

◇流動性の罠(*2)
名目金利がゼロ以下まで低下すると、金利ゼロの金融資産である銀行券の需要が無限大になるため、貨幣供給量を増やしても金利は下がらなくなる。
◇いわむら・みつる
 1950年生まれ。東京大学経済学部卒業。74年日本銀行入行。企画局兼信用機構局参事を経て、98年より早稲田大学ビジネススクール教授。著書に『貨幣進化論』『中央銀行が終わる日』など。

*『週刊エコノミスト』2016年8月2日号 特集「ヘリコプターマネーの正体」掲載



書評改訂版:

シムズ「物価水準の財政理論(FTPL)」はゲゼルの減価マネーと共鳴し合うと思っていたが、
すでに同じような指摘をする日本人学者がいた。しかも実際的である。現代経済学における
数少ない希望ではないか?経済学は80年かけてケインズ一般理論#23(ゲゼルへの賞賛がある)へと還ってきた…

岩村充(1950~)FTPL関連:
http://www.f.waseda.jp/iwamuram/files.htm (http://www.nowcast.co.jp/news/2

参考記事:
週刊エコノミスト2016年8月2日号
ヘリコプターマネーは既に現実 予期せぬ“出口”への備えが必要=岩村充
https://www.weekly-economist.com/2016/08/02/ヘリコプターマネーの正体-予期せぬ-出口-への備えが必要-2016年8月2日号/
https://www.amazon.co.jp/dp/B01IVFVOGY/ 30~33頁 国債永久債化プランの真意 岩村充

翁 邦雄『金利と経済―高まるリスクと残された処方箋』(2017)#8で岩村案が賞賛されている。
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784478101681

岩村の代表的著作は、

新しい物価理論―物価水準の財政理論と金融政策の役割 (一橋大学経済研究叢書) – 2004/2/20
渡辺 努 (著), 岩村 充 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4000097288

これはゲゼルの復活を準備する上記は重要文献だ。
(シムズ「物価水準の財政理論(FTPL)」に関する数少ない体系的解説を加えた邦語文献でもある)
残念ながら入手困難だが、以下の優れた書評で内容を把握できる。

http://necochan.com/2015/03/22/ほとんど理想的な貨幣システム/
http://necochan.com/2015/03/22/%E3%81%BB%E3%81%A8%E3%82%93%E3%81%A9%E7%90%86%E6%83%B3%E7%9A%84%E3%81%AA%E8%B2%A8%E5%B9%A3%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A0/

ゲゼルの減価マネー関連:

岩村充 『中央銀行が終わる日―ビットコインと通貨の未来―』新潮社2016 #4:3
https://www.amazon.co.jp/dp/B01L1DYU96/

この『中央…』は体系的ではないのでやはり『新しい物価理論』の改訂新版が待たれる。


以下『中央…』書評。

近年の経済学者のなかでは珍しく(ケインズ、フィッシャー、クライン以来か)、早稲田大学教授の岩村充は
ゲゼル#4:3を真面目に取り上げている(前著ではゲゼルはコラム扱いだったが本書では格上げされている)。
岩村は電子マネーにして(マイナスを視野に入れた)利子変動制を主張する。 インフレターゲット
論などと一線を隠したいのだろう。
ゲゼル案の過去の実例の場合小銭を徐々に回収する必要があったと思うが、電子マネーにすれば
簡単だ(とはいえデジタルとアナログで同じ課題は残る。実質と名目? それでいいというのが岩村の発想)。
租税と減価手数料の相乗りというアイデアを無視しているので、利子がいずれはプラスになる
ことを当然視している。

ケインジアンの考え方が立体的に図解されているのが興味深いが、主になるのはハイエクの貨幣
自由発行論の文脈なので観念論で観念論を相殺する格好になりがちなのが難点ではある。
(ゲゼルを狭い地域通貨談義から切り離すことには成功している。80年かけて経済学がケインズ一般理論#23に戻ってきただけだが…)

ちなみに著者はケインズのバンコールを評価しているが元々ゲゼルのアイデアだとは考えてい
ないようだ。またゲゼルの土地政策案にも触れていない。

全体としては「ゲゼルの魔法のオカネ」という言い方が気になるが、基本的にはゲゼルのア
イデアを最大限評価して、新たなテクノロジー(ビットコインの原理の解説が主だが)で蘇らせ
ようとしている。

索引がないのはわかるが、参考文献表がないのは不親切。
(当然ながらゲゼルのIVA=超国家通貨案には言及されていない。その代わり週刊エコノミス
トに転載され翁邦雄『金利と経済』2017で賞賛された先述の岩村の「国債永久債化プラン」はIVAを想起させる…)
追記:
『新しい物価理論』を読むと、岩村充はゲゼル『自然的経済秩序』の英語版を参照しているようだ。邦訳2007はその後の著作でも記載がない。

**




新フィッシャー主義とFTPL - himaginaryの日記
インタビュアー
サージェントはこの理論を30年以上前に開発しましたが、主流派にこれまで採用されてこなかったのはなぜでしょうか? 何が最近変わったのでしょうか?
コクラン
実際のところ、FTPLはもっとずっと以前に遡ります。アダム・スミスは次のような素晴らしい言葉を残しています:
税のうち一定割合はある種の紙幣で支払わなければならない、と布告した王子は、それによってその紙幣に一定の価値を与えているのである。(国富論、第2冊)

“A prince who should enact that a certain proportion of his taxes should be paid in a paper money of a certain kind might thereby give a certain value to this paper money.” (Wealth of Nations, Book II)
 
ということで、基本的な考えはアダム・スミスにあったのです。
すべての貨幣経済学における謎は、「この紙切れのためになぜ我々はこれほど一生懸命に働くのか?」というものです。考えてみれば、それは本当に謎です。あなたも私も一日中額に汗して働き、家に何を持ち帰るのでしょうか? 死んだ大統領の絵が印刷された幾枚かの紙切れです。この小さな紙切れのためになぜ我々はこれほど一生懸命に働くのでしょうか? 誰かがそれを受け取ると知っているからです。しかしなぜその誰かはそれを受け取るのでしょうか? これが経済学の謎です。
FTPLはこの謎に根本的な回答を与えます。その理由というのは、米国では毎年4月15日税金を払わなければならないからです。そして納税は、まさにその政府貨幣によって行わねばなりません。かつては羊や山羊で納税していた時代もありましたが、今は受け取ってもらえません。彼らは紙幣を取り戻したがっています。ということで、根本的には、貨幣の価値は、政府がそれを税金として受け取ることから生じているのです。
サージェントの研究はそのことを示す上で極めて素晴らしいものでした。しかしミルトン・フリードマンも、金融政策と財政政策の協調について有名な論文を書いています。ということで、ある意味においては、この理論は昔から存在していたのです。問題は、どの程度重きを置くか、ということに過ぎなかったわけです。


Cochrane, John H. (1998) “A Frictionless View of US Ination.” In Ben S. Bernanke and Julio J. Rotemberg. eds. NBER Macroeconomics Annual 1998. Cambridge, MA US: MIT Press. pp. 323–334. 
http://www.nber.org/chapters/c11250.pdf 全100頁

Sargent & Wallace (1981)
Some Unpleasant Monetarist Arithmetic Thomas Sargent,Neil Wallace (1981)
[マネタリストにとっては少々不愉快な算術]

Leeper, Eric M. (1991) “Equilibria under ’Active’ and ’Passive’ Monetary Policies.” Journal of Monetary Economics. Vol. 27. No. 1. pp. 129–147.

Woodford, Michael (1994) “Monetary Policy and Price Level Determinacy in a Cash in Advance Economy.” Economic Theory. Vol. 4. pp. 345–380. http://link.springer.com/article/10.1007/BF01215377 有料
Woodford, Michael (1995) “Price Level Determinacy without Control of a Monetary Aggregate.” CarnegieRochester Conference Series on Public Policy. Vol. 43. pp. 1–46. 
(1994,1995でウッドフォードは受動的に財政政策を決めるリカーディアン型と非リカーディアン型とを区別命名した)

 Sims, Christopher (1994) “A Simple Model for the Study of the Determination of the Price Level and the Interaction of Monetary and Fiscal Policy.” Economic Theory. Vol. 4. pp. 381–399. 




《ある君主が、かれの税の一定部分は一定の種類の紙幣で支はらわれなければならないという、法令をだすとすれば、かれはそうすることによって、この紙幣に一定の価値をあたえうるであろう。》
アダム・スミス『国富論』2:2最終部
世界の大思想上

★★★★
「インフレは財政拡張だけでは生じない」物価水準の財政理論(FTPL)とは 岩村充・早稲田大学大学院教授インタビュー - 世界と日本でいま起きている経済事象の核心をあますことなく伝えます
https://www.weekly-economist.com/2017/01/31/インフレは財政拡張だけでは生じない-財政と物価の理論とは-岩村充-早稲田大学大学院教授インタビュー/

「インフレは財政拡張だけでは生じない」物価水準の財政理論(FTPL)とは 岩村充・早稲田大学大学院教授インタビュー


FTPL(Fiscal Theory of the Price Level、物価水準の財政理論)に日本でいち早く着目していたのが、早稲田大学大学院経営管理研究科の岩村充教授だ。FTPLがにわかに脚光を浴びる現状をどう見るか、岩村教授に聞いた。
(聞き手=黒崎亜弓・編集部)

── FTPLとは何か。

岩村 国の財政の先行きを人々がどう見るかによって、物価水準が上下するという理論だ。根底には、国は、資金調達が自国通貨建てであるならば、倒産しないことがある。そうした国では、財政力が極端に低下しても、倒産の代わりにインフレが起こって実質的な債務負担が低下し、それで済んでしまう。つまり政府債務の時価を物価水準が調整している。

 政府の将来税収と支出との関係を、中央銀行を含めたバランスシートのイメージとして図1に示した。

 政府は将来にわたって税金を徴収し、公共サービスの支出に充てながら国債の元利払いを行う。その国債の一部を中央銀行が保有し、中央銀行は国債を見合いにして銀行券を発行している。政府と中央銀行を一体として考えると、将来的な税収と支出の差(財政余剰)が、市中保有の国債と銀行券の信用を支えている。
 財政余剰、すなわち政府の信用が貨幣価値のアンカーであり、貨幣価値を裏返したものが物価だ。

 ◇財政への“見方”がカギ

── 財政拡張、あるいは財政再建が物価を動かすのか。

岩村 物価水準を上下させるのは、財政赤字などの数字の変化ではなく、人々の財政運営への「見方の変化」だ(図2)。

 貨幣価値を支える財政余剰とはあくまでも予想なので、税制や行財政改革といった政府のコミットメントに基づいて人々が考える税収と支出の差であることに注意してほしい。

財政再建が進むと人々が見れば差が大きくなり、財政赤字が膨らみ続けると人々が見れば小さくなる。

── FTPLに着目した端緒は。

岩村 2000年代初めに、なぜ日本がバブル崩壊後にデフレから抜け出せないのかを考えていた。金融政策では物価を支えられない状況にあった。名目金利がゼロまで下がると、貨幣供給量を増やしても、銀行券の金利がゼロであるため、その需要が無限大となって名目金利は下がらなくなるという「流動性の罠(わな)」に陥っていた。こうした状況で、日銀に対し「貨幣供給量を積極的に拡大せよ」と催促する声が強まっていた。

 しかし、日銀が国債をどんどん買えば、それだけで物価が上がるのだろうか。中央銀行と政府を一体として見ると、そう簡単にはいかないのではないかと、日ごろから議論を交わしていた渡辺努東京大教授(当時・一橋大教授)に話すと、「それは海外でFTPLと呼ばれ始めた新しい考え方だ」と教えてもらった。そこで、一緒にこの理論で当時の状況を分析し始めた。

── 00年代初め、FTPLは海外でどのように扱われていたのか。

岩村 私たちが調べた限りでは、財政と物価の関連に最初に着目したのは、米国の経済学者のトーマス・サージェントとニール・ワラスだ。1981年に論文を発表している。
 サージェントたちは、貨幣量さえ決めれば物価が決まるとするマネタリストは、財政の役割を見落としているのではないかと鋭く指摘した。ただ、論文の「Some Unpleasant Monetarist Arithmetic」(マネタリストにとっては少々不愉快な算術・編集部訳)という皮肉なタイトルもあってか、当時は敬遠されたようだ。

 FTPLが現実を説明する理論として注目されたきっかけは、97年のアジア通貨危機だろう。貨幣が増発されたわけではなく、物価上昇は将来債務が増大するとの予想から起きたと解釈できた。

 ◇金融政策は先送りの手段

── FTPLでは物価を決めるのは金融政策ではないということか。

岩村 FTPLで財政運営への見方が決めるのは物価そのものでなく、あくまで物価の水準(Level)だ(図2)。その水準に基づき、現在から将来にかけて時間軸のなかで物価を位置づけるのが名目金利だと私たちは考えた。金利の上下により現在地点の物価が動いて、将来に向けた「坂」ができる(図3)。金融政策は名目金利に働きかけて、「坂」を生み出す。

 金融政策で名目金利を上げると、現在と将来を通じて見た物価の水準自体は一定なので、現在の物価には抑制効果が生じるが、反対に将来の物価にはインフレ圧力を生じさせてしまう。要するに金融引き締めはインフレ圧力の先送りというわけだ。

 ちなみに、流動性の罠にはまっている日本では、名目金利はゼロ限界に行き着いているので、物価の「坂」を生み出す金融政策は、金利を上げてインフレ圧力を先送りするのには使えても、肝心のデフレ圧力に対しては、もう金利は下げられないのだから先送りの効果すら発揮できないというのが私たちの結論だった。

── 金融政策をそのように捉えたのは、なぜか。

岩村 FTPLに名目金利の効果を組み合わせるのは、期待インフレ率を通じて名目金利が自然利子率と連動するという「フィッシャー等式」に基づく。

「名目金利≒自然利子率+期待インフレ率」というものだ。

 米国の経済学者、アーヴィング・フィッシャーは、名目金利は貨幣の現在と将来の交換比率、自然利子率は実質財の現在と将来の交換比率なので、両者の比率は期待インフレ率、すなわち貨幣と実質財との交換比率の現在から将来にかけた変動に一致するはずだと導き出した。

 ところが、この等式を単純に読むと、名目金利を下げると物価は下落するというようで、金融緩和でデフレに対応するという私たちの実感と矛盾する。

 そこで、物価の「水準」を上下させるのが財政への見方で(図2)、「坂」を動かすのが金融政策(図3)とすると矛盾は解消されるというのが私たちの整理だった。金融政策の役割とは、物価に加わる圧力を、現在から将来にかけて分散させることに過ぎないわけだ。

── それはFTPLを基に発展させた独自のモデルなのか。

岩村 財政への見方が物価の水準を上下させるというFTPLに、名目金利の効果を組み合わせたのは、私たちの貢献といえば貢献かもしれない。ただ、02年から出した論文はFTPLというだけで際物扱いされて良い反応は得られなかった。私はもっとわかりやすく説明したいと思い、一般書でこの話を書いてきた。

 ◇金利を上げてインフレに

── そのモデルに基づくと、13年以降の日銀の異次元金融緩和では物価がどう動いたと読み解けるのか。

岩村 金融緩和の影響はほとんどなかっただろう。今は流動性の罠に陥っているため、金融政策で現在の金利を下げて将来から物価上昇を前借りしてくることができない。緩やかなインフレ期待を作り出すという狙いは、まるで達成できていない。

 異次元緩和が始まった13年4月以降に物価が上がったのは、黒田東彦日銀総裁の就任直前に安倍晋三政権が発足し、財政出動に積極的な姿勢から赤字が拡大するとの見方が強まったことが影響したと考えられる。一種のFTPL効果だっただろう。起こったのは財政への予想が不連続に変化したことによる、物価のジャンプアップ(貨幣価値のスリップダウン)だったのではないか。

 物価の「坂」への予想は変化しなかったため、物価の持続的な軟調という意味でのデフレ期待には効果は及ばなかったように見える。

── 今、日本でFTPLが注目され始めたのはなぜだと思うか。

岩村 近年、米国も流動性の罠にはまり、米国の経済学者たちは米国の状況を分析するなかでFTPLに行き着いたのではないか。米国でFTPLの存在感が増すのを見て、日本でも注目されているように見える。

── FTPLに基づき、デフレ脱却のため、財政拡張を金融緩和と併用すべきだという意見があるが、どう見るか。

岩村 単に減税や政府支出の拡大で財政拡張したとしても、人々が政府はいずれ増税するはずだと考えてしまえば、財政への見方は変わらず、現在と将来を通じて見た物価の「水準」には影響がない。金融緩和も、流動性の罠のもとでは、物価の「坂」に働きかけることができない。

 多くの人は、政府が財政拡張する時には、金融政策は歩調を合わせて緩和すべきだと考える。しかし、緩やかな物価上昇、つまりインフレを取り戻したいのであれば、それに対して私たちのモデルが出している答えは、将来の増税を予想させない財政拡張と、金融引き締め(名目金利の引き上げ)との組み合わせだ(図4)。財政拡張と金融緩和との組み合わせでは、物価のジャンプアップは作り出せても、緩やかなインフレとはならないはずだ。

 ◇“無責任な政府”の難しさ

── 「増税を予想させない財政拡張」とは、政府に「無責任になれ」と言っているように聞こえるが。

岩村 単に「無責任」というよりは「コントロールされた無責任」とでも言うのだろうか。政府が文字通り「無責任」になったと見なされれば、物価は際限なく上昇してしまう。その先は、いわゆる「ハイパーインフレ」だろう。政府の信用あるいは貨幣価値のアンカーを失ってしまう。

 そうならないためには、起こっていることが「際限ない」ものではない、と誰にでも認識されていることが必須条件だ。それは簡単にできることではない。どうすれば貨幣価値のアンカーを失うことなく「無責任さ」をコントロールし、緩やかで持続的なインフレを作り出すことができるのか、その制度的デザインを具体的に示すのが財政拡張を唱える人の責任ではないだろうか。

── その「制度的デザイン」には、中央銀行が政府の財源を賄う「ヘリコプターマネー」は含まれるのか。

岩村 現状でも日銀が大量の国債を買い入れ、実質的にヘリコプターマネーの状況にある。責任ある状態とは言えないにもかかわらず、管理はなされていない。その意味では「コントロールされていない無責任」とも呼ぶべき状況だ。非常に危うい。

 このまま無責任が際限なく進むよりは、言葉の印象は悪いが、「コントロールされた無責任」つまりは「慎重にデザインされたヘリコプターマネー」の方が、ましかもしれない。ただ、そこまでして「緩やかなインフレ」を追求する意味はあるのだろうか。議論が必要だ。
………………………………………………………………………………………………………
 いわむら・みつる 1950年生まれ。東京大学経済学部卒業。74年日本銀行入行。98年より早稲田大学ビジネススクール教授。関連著書・共著に『新しい物価理論』『貨幣の経済学』『貨幣進化論』『中央銀行が終わる日』など。

*『週刊エコノミスト』2017年1月31日号「シムズ論を読み解く」掲載


★★★★★
石橋湛山は花見酒経済を肯定的に捉えたそうだ。


花見酒(はなみざけ) 落語: 落語あらすじ事典 千字寄席

senjiyose.cocolog-nifty.com/fullface/2005/05/post_63c4.html
1962年に出版され、話題になった笠信太郎著「"花見酒"の経済」は、 当時の高度経済 成長のただなか、 馴れ合いで銭が二人の間を行ったり来たりするだけのこの噺を一つの 寓話として、 当局の手厚い保護下で、資本が同じところをぐるぐる ...

花見酒 - Wikipedia

ja.wikipedia.org/wiki/花見酒
花見酒(はなみざけ)とは. 花見の際に飲む「酒」のこと。花見の中でも特に桜の花見で 飲む酒を指す。 俳句における晩春の季語。1を指す; 花札における役のこと。「菊に盃」と 「桜に幔幕」の二枚の札で完成する。 落語の噺のひとつ「花見酒 (落語)」。

花見酒(はなみざけ)  落語: 落語あらすじ事典 千字寄席  
http://senjiyose.cocolog-nifty.com/fullface/2005/05/post_63c4.html

花見酒(はなみざけ)  落語

酒のみは、どんなときでもしくじるもののようですな。
幼なじみの二人。
そろそろ向島の桜が満開という評判なので
「ひとつ花見に繰り出そうじゃねえか」
と、話がまとまった。
ところが、あいにく二人とも金がない。
そこで兄貴分がオツなことを考えた。
横丁の酒屋の番頭に
灘の生一本を三升借り込んで花見の場所に行き、
小びしゃく一杯十銭で売る。
酒のみは、酒がなくなるとすぐにのみたくなるものなので、
みんな花見でへべれけになっているところに売りに行けば必ずさばける。
もうけた金で改めて一杯やろう
という、何のことはないのみ代稼ぎである。
そうと決まれば桜の散らないうちに
と、二人は樽を差し担いで、向島までやって来る。
着いてみると、花見客で大にぎわい。
さあ商売だ
という矢先、弟分は後棒で風下だから、
樽の酒の匂いがプーンとしてきて、もうたまらなくなった。
そこで、お互いの商売物なのでタダでもらったら悪いから、
兄貴、一杯売ってくれ
と言いだして、十銭払ってグビリグビリ。
それを見ていた兄貴分ものみたくなり、
やっぱり十銭出してグイーッ。
俺ももう一杯、
じゃまた俺も、
それ一杯もう一杯
とやっているうちに、
三升の樽酒はきれいさっぱりなくなってしまった。
二人はもうグデングデン。
「感心だねえ。このごった返している中を酒を売りにくるとは。
けれど、二人とも酔っぱらってるのはどうしたわけだろう」
「なーに、このくらいいい酒だというのを見せているのさ」
なにしろ、
おもしろい趣向だから買ってみよう
ということで、客が寄ってくる。
ところが、肝心の酒が、
樽を斜めにしようが、どうしようが、まるっきり空。
「いけねえ兄貴、酒は全部売り切れちまった」
「えー、お気の毒さま。またどうぞ」
またどうぞも何もない。
客があきれて帰ってしまうと、
まだ酔っぱらっている二人、売り上げの勘定をしようと、
財布を樽の中にあけてみると、
チャリーンと音がして十銭銀貨一枚。
品物が三升売れちまって、
売り上げが十銭しかねえというのは? 
「馬鹿野郎、考えてみれば当たり前だ。
あすこでオレが一杯、ちょっと行っててめえが一杯。
またあすこでオレが一杯買って、
またあすこでてめえが一杯買った。
十銭の銭が行ったり来たりしているうちに、
三升の酒をみんな二人でのんじまったんだあ」
「あ、そうか。そりゃムダがねえや」
【うんちく】
経済破綻を予言?した「名作」
1962年に出版され、話題になった
笠信太郎著「"花見酒"の経済」は、
当時の高度経済成長のただなか、
馴れ合いで銭が二人の間を行ったり来たりするだけのこの噺を
一つの寓話として、
当局の手厚い保護下で、資本が同じところを
ぐるぐるまわるだけの日本経済のもろさを指摘。
のちに現実となった、オイルショックによる経済破綻を
見事に予見した名著でした。
つまりは、この噺をこしらえた不明の作者は、
遠く江戸時代から、はるか未来を見通していた
ダニエルのごとき大預言者だった……
ということになりますか。
向島の桜
八代将軍・吉宗公の肝いりで整備され、
文化年間(1804~18)には押しも押されもせぬ
江戸近郊有数の観光名所となりました。
元々、向島は浅草から見て、
隅田川の対岸一帯を指した名称で、
江戸の草創期には、文字通りいくつもの島でした。
花見は三囲(みめぐり)神社から、
桜餅で名高い長命寺までの堤が有名です。
明治期には、枕橋から千住まで、
約4キロに渡って、
ソメイヨシノのトンネルが見られました。
復活が待たれる噺
八代目林家正蔵(彦六)が手がけましたが、
面白く、皮肉なオチも含めてよくできた噺なのに、
とかく小ばなし、マクラ噺扱いされがちのせいか、
近年ではあまり演じられません。
どなたかに復活していただきたいのですが。
明治の古い速記では、名人・四代目橘家円喬や、
二代目三遊亭金馬のものが残ります。
明治41年の円喬の速記では、酒といっしょに
兄貴分がつり銭用に、強引に酒屋に
十銭借りていくやり方で、
二人は「辰」と「熊」のコンビです。


新しい物価理論199~200

5.2.2名目金利マイナスの効果と限界


ゲゼル型貨幣の導入で何ができるようになって何はできないのかを整理

重要なてみよう,最初に,第4章で展開した議論を簡単に復習しておこう,人

々の経済に対する予想が変化し,財政余剰に対する人々の予想が変化しな

いままで0期からj期の間の自然利子率に対する予想R,jが大きく低下

したとする,こうした変化の中で物価を安定させるために中央銀行ができ

ることは,人々の名目金利に対する予想に働きかけてRn0,jを自然利子率

と同様に大きく低下させることである.この効果は,すでに第4章で詳し

くみたとおりであり,


P0=M-1+Σ∞j=0 B-1,j/Rn0,1/Σ∞j=0‘sj/Rr0,j


 P_0=\dfrac {M_{-1}+\sum^\infty_{j=0}B_{-1,j}/R^n_{0,j}-\xi A}{\sum^\infty_{j=0}s_j/R^r_{0,j}}

[P0:現在の物価]



199頁



P0=M-1+Σ∞j=0 B-1,j/Rn0,1/Σ∞j=0‘sj/Rr0,j


と表現できる.ゲゼル型貨幣の良さは,この名目金利に対する予想をマイナスの領域にまで引き下げることを可能にすることで,従来型の貨幣が使用されている場合に比べて,より大きな力を金融政策に発揮させることができるようになることである。そうした力が十分強ければ,従来は流動性の罠の状況で手詰まりに陥っていた中央銀行でも,首尾良くショックを吸収し現在の物価P0への影響を遮断することができるようになる*5).だが,そうした金融政策には代償も伴う。それを示しているのが,(5.1)式の貨幣価値決定式を変形した



Σ∞j:0(‘sj/Rr0,j) =Σ∞j:0(B-1,jj/Rr0,j)(1/Pj)+(M-1)(1/P0)

[(1/Pj)は現在から将来にわたる貨幣価値。]


である。この式の右辺は現在から将来にわたる貨幣価値(1/Pj)を各期に支払期が到来する公的部門の金融債務B-1,j/Rr0,jでウエイト付けした加重平均であり,一方,左辺は財政余剰の予想流列を自然利子率で現在価値化したものである。したがって,この式は,財政余剰に対する予想が変化しないままで自然利子率が変化するというようなショックの下で,現在の物価を変化させないためには,何らかのかたちで将来の物価流列についての予想に変化を生じさせなければならない,つまり代償を払わねばならないということを示しているのだといえる。これはゲゼル型貨幣であろうとなかろうと効いている制約である。そこで,この制約の意味するところを,縦軸に物価水準(対数値)をとり横軸に時間の流れをとった図5.1**で考えてみよう.なお,前提として,このような自然利子率についての予想が低下するというショックの前には,名目金利と自然利子率とが等しくなるよう金融政策が実行されていて,物価は水準Pで変化せず,すなわち「物価の安定」が実現していたとする。》


《もっとも,この式は,もし私たちが貨幣をゲゼル型に「改造」することを考えるのならば,制度の移行に伴うデフレ効果にも注意しなければならないということを示すものである.貨幣をゲゼル型に改造すれば,人々は貨幣への課税(あるいは中央銀行の利益)分をも将来の財政余剰の流列に織り込むだろうから,そうした改造が適切な補償措置つまり減税とセットで行われるのでなければ,制度移行に伴うデフレ効果が発生してしまう。》(200頁)


22 Comments:

Blogger yoji said...


岩村充(1950~)FTPL関連資料:
http://www.f.waseda.jp/iwamuram/files.htm
http://www.nowcast.co.jp/news/2

参考記事:
週刊エコノミスト2016年8月2日号
ヘリコプターマネーは既に現実 予期せぬ“出口”への備えが必要=岩村充
2016/08/02
https://www.weekly-economist.com/2016/08/02/ヘリコプターマネーの正体-予期せぬ-出口-への備えが必要-2016年8月2日号/
週刊エコノミスト 2016年08月02日号 [雑誌] | 週刊エコノミスト編集部 | ビジネス・経済 | Kindleストア | Amazon
https://www.amazon.co.jp/dp/B01IVFVOGY/
国債永久債化プランの真意 岩村充


代表的著作、
新しい物価理論―物価水準の財政理論と金融政策の役割 (一橋大学経済研究叢書) – 2004/2/20
渡辺 努 (著), 岩村 充 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4000097288
ゲゼルの復活を準備する上記は重要文献だ。
(シムズ「物価水準の財政理論(FTPL)」に関する数少ない体系的解説を加えた邦語文献でもある)
残念ながら入手困難だが、以下の優れた書評で内容を把握できる。
http://necochan.com/2015/03/22/ほとんど理想的な貨幣システム/
読み物としては岩村充の以下の近著がやはりゲゼルに触れている。

岩村充 『中央銀行が終わる日―ビットコインと通貨の未来―』新潮社2016
https://www.amazon.co.jp/dp/B01L1DYU96/

以下書評。

近年の経済学者のなかでは珍しく(ケインズ、フィッシャー、クライン以来か)、早稲田大学教授の岩村充は
ゲゼル#4:3を真面目に取り上げている(同著者の前著ではゲゼルはコラム扱いだったが
本書では格上げされている)。
(本書は近未来的電子マネーに話題を特化しているが、岩村は翁邦雄『金利と経済』2017で紹介
されていた日本銀行改革案のような現実的な打開案を具体的に述べる学者だ。)
岩村は電子マネーにして(マイナスを視野に入れた)利子変動制を主張する。 インフレターゲット
論などと一線を隠したいのだろう。
ゲゼル案の過去の実例の場合小銭を徐々に回収する必要があったと思うが、電子マネーにすれば
簡単だ(とはいえデジタルとアナログで同じ課題は残る。実質と名目? それでいいというのが岩村の発想)。
租税と減価手数料の相乗りというアイデアを無視しているので、利子がいずれはプラスになる
ことを当然視している。 

ケインジアンの考え方が立体的に図解されているのが興味深いが、主になるのはハイエクの貨幣
自由発行論の文脈なので観念論で観念論を相殺する格好になりがちなのが難点ではある。
(ゲゼルを狭い地域通貨談義から切り離すことには成功している)

ちなみに著者はケインズのバンコールを評価しているが元々ゲゼルのアイデアだとは考えてい
ないようだ。またゲゼルの土地政策案にも触れていない。

全体としては「ゲゼルの魔法のオカネ」という言い方が気になるが、基本的にはゲゼルのア
イデアを最大限評価して、新たなテクノロジー(ビットコインの原理の解説が主だが)で蘇らせ
ようとしている。

索引がないのはわかるが、参考文献表がないのは不親切。
(当然ながらゲゼルのIVA=超国家通貨案には言及されていない。その代わり週刊エコノミス
トに転載され翁邦雄『金利と経済』2017で賞賛された先述の岩村の「国債永久債化プラン」はIVAを想起させる…)

6:39 午前  
Blogger yoji said...

この『中央…』は体系的ではないのでやはり『新しい物価理論』の改訂新版が待たれる。

6:42 午前  
Blogger yoji said...


岩村充(1950~)FTPL関連資料:
http://www.f.waseda.jp/iwamuram/files.htm
http://www.nowcast.co.jp/news/2

参考記事:
週刊エコノミスト2016年8月2日号
ヘリコプターマネーは既に現実 予期せぬ“出口”への備えが必要=岩村充
https://www.weekly-economist.com/2016/08/02/ヘリコプターマネーの正体-予期せぬ-出口-への備えが必要-2016年8月2日号/
https://www.amazon.co.jp/dp/B01IVFVOGY/ 30~33頁
国債永久債化プランの真意 岩村充

代表的著作、
新しい物価理論―物価水準の財政理論と金融政策の役割 (一橋大学経済研究叢書) – 2004/2/20
渡辺 努 (著), 岩村 充 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4000097288
ゲゼルの復活を準備する上記は重要文献だ。
(シムズ「物価水準の財政理論(FTPL)」に関する数少ない体系的解説を加えた邦語文献でもある)
残念ながら入手困難だが、以下の優れた書評で内容を把握できる。
http://necochan.com/2015/03/22/ほとんど理想的な貨幣システム/
読み物としては岩村充の以下の近著がやはりゲゼルに触れている。

岩村充 『中央銀行が終わる日―ビットコインと通貨の未来―』新潮社2016
https://www.amazon.co.jp/dp/B01L1DYU96/

以下書評。

近年の経済学者のなかでは珍しく(ケインズ、フィッシャー、クライン以来か)、早稲田大学教授の岩村充は
ゲゼル#4:3を真面目に取り上げている(前著ではゲゼルはコラム扱いだったが本書では格上げされている)。
岩村は電子マネーにして(マイナスを視野に入れた)利子変動制を主張する。 インフレターゲット
論などと一線を隠したいのだろう。
ゲゼル案の過去の実例の場合小銭を徐々に回収する必要があったと思うが、電子マネーにすれば
簡単だ(とはいえデジタルとアナログで同じ課題は残る。実質と名目? それでいいというのが岩村の発想)。
租税と減価手数料の相乗りというアイデアを無視しているので、利子がいずれはプラスになる
ことを当然視している。 

ケインジアンの考え方が立体的に図解されているのが興味深いが、主になるのはハイエクの貨幣
自由発行論の文脈なので観念論で観念論を相殺する格好になりがちなのが難点ではある。
(ゲゼルを狭い地域通貨談義から切り離すことには成功している)

ちなみに著者はケインズのバンコールを評価しているが元々ゲゼルのアイデアだとは考えてい
ないようだ。またゲゼルの土地政策案にも触れていない。

全体としては「ゲゼルの魔法のオカネ」という言い方が気になるが、基本的にはゲゼルのア
イデアを最大限評価して、新たなテクノロジー(ビットコインの原理の解説が主だが)で蘇らせ
ようとしている。

索引がないのはわかるが、参考文献表がないのは不親切。
(当然ながらゲゼルのIVA=超国家通貨案には言及されていない。その代わり週刊エコノミス
トに転載され翁邦雄『金利と経済』2017で賞賛された先述の岩村の「国債永久債化プラン」はIVAを想起させる…)

この『中央…』は体系的ではないのでやはり『新しい物価理論』の改訂新版が待たれる。

6:45 午前  
Blogger yoji said...


書評改訂版:

シムズ「物価水準の財政理論(FTPL)」はゲゼルの減価マネーと共鳴すると思っていたが、
すでに同じような指摘をする日本人学者がいた。しかも実際的である。現代経済学における
数少ない希望ではないか?経済学は80年かけてケインズ一般理論#23(ゲゼルへの賞賛がある)へと還ってきた…

岩村充(1950~)FTPL関連資料:
http://www.f.waseda.jp/iwamuram/files.htm http://www.nowcast.co.jp/news/2

参考記事:
週刊エコノミスト2016年8月2日号
ヘリコプターマネーは既に現実 予期せぬ“出口”への備えが必要=岩村充
https://www.weekly-economist.com/2016/08/02/ヘリコプターマネーの正体-予期せぬ-出口-への備えが必要-2016年8月2日号/
https://www.amazon.co.jp/dp/B01IVFVOGY/ 30~33頁
国債永久債化プランの真意 岩村充

代表的著作、
新しい物価理論―物価水準の財政理論と金融政策の役割 (一橋大学経済研究叢書) – 2004/2/20
渡辺 努 (著), 岩村 充 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4000097288
ゲゼルの復活を準備する上記は重要文献だ。
(シムズ「物価水準の財政理論(FTPL)」に関する数少ない体系的解説を加えた邦語文献でもある)
残念ながら入手困難だが、以下の優れた書評で内容を把握できる。

http://necochan.com/2015/03/22/ほとんど理想的な貨幣システム/
http://necochan.com/2015/03/22/%E3%81%BB%E3%81%A8%E3%82%93%E3%81%A9%E7%
90%86%E6%83%B3%E7%9A%84%E3%81%AA%E8%B2%A8%E5%B9%A3%E3%82%B7%E3
%82%B9%E3%83%86%E3%83%A0/

読み物としては岩村充の以下の近著がやはりゲゼルに触れている。

岩村充 『中央銀行が終わる日―ビットコインと通貨の未来―』新潮社2016
https://www.amazon.co.jp/dp/B01L1DYU96/

この『中央…』は体系的ではないのでやはり『新しい物価理論』の改訂新版が待たれる。

7:06 午前  
Blogger yoji said...

シムズ「物価水準の財政理論(FTPL)」はゲゼルの減価マネーと共鳴すると思っていたが、
すでに同じような指摘をする日本人学者がいた。しかも実際的である。現代経済学における
数少ない希望ではないか?経済学は80年かけてケインズ一般理論#23(ゲゼルへの賞賛がある)へと還ってきた…

岩村充(1950~)FTPL関連:
http://www.f.waseda.jp/iwamuram/files.htm (http://www.nowcast.co.jp/news/2)

参考記事:
週刊エコノミスト2016年8月2日号
ヘリコプターマネーは既に現実 予期せぬ“出口”への備えが必要=岩村充
https://www.weekly-economist.com/2016/08/02/ヘリコプターマネーの正体-予期せぬ-出口-への備えが必要-2016年8月2日号/
https://www.amazon.co.jp/dp/B01IVFVOGY/ 30~33頁 国債永久債化プランの真意 岩村充

代表的著作、
新しい物価理論―物価水準の財政理論と金融政策の役割 (一橋大学経済研究叢書) 2004/2/20
渡辺 努 (著), 岩村 充 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4000097288
ゲゼルの復活を準備する上記は重要文献だ。
(シムズ「物価水準の財政理論(FTPL)」に関する数少ない体系的解説を加えた邦語文献でもある)
残念ながら入手困難だが、以下の優れた書評(要約)で内容を把握できる。

http://necochan.com/2015/03/22/ほとんど理想的な貨幣システム/
http://necochan.com/2015/03/22/%E3%81%BB%E3%81%A8%E3%82%93%E3%81%A9%E7%90%86%E6%
83%B3%E7%9A%84%E3%81%AA%E8%B2%A8%E5%B9%A3%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A0/

ゲゼルの減価マネー関連:
岩村充 『中央銀行が終わる日―ビットコインと通貨の未来―』新潮社2016 #4:3
https://www.amazon.co.jp/dp/B01L1DYU96/
この『中央…』は体系的ではないのでやはり『新しい物価理論』の改訂新版が待たれる。

7:16 午前

3:25 午前  
Blogger yoji said...


本書は未来に光を照らす。具体的にはゲゼルの再評価を促し、新しい貨幣を準備する重要文献だ。
(シムズ「物価水準の財政理論(FTPL)」に関する数少ない体系的解説を加えた邦語文献でもある。計量経済学的には宮尾龍蔵『マクロ金融政策の時系列分析』も推薦できる)
残念ながら入手困難だが、物価理論検討に必要な数式を把握できる。ただ数式よりも重要な点は、

《交換手段としての貨幣から価値保蔵手段を切り離す》ことと(『新しい物価理論』195頁)、

《ゲゼル型貨幣を採用することで得られる効果が,その採用に伴って発生するであろうコストを十分に上回るといえるかどうか》(198頁)

であろう。後者は金融政策の代償として数式で紹介されるが(200頁)。
最新刊『中央銀が終わる日』ではさらに電子的減価マネーが検討されるが(本書では電子マネーを考えられてはいない)、体系的かつ基礎的な本書がまず読まれるべきだ。

『中央』では参考文献がちゃんと挙げられていないが『新しい物価理論』ではちゃんと挙げられている。

《交換手段としての貨幣から価値保蔵手段を切り離すという主張は,彼の代表的著作で
ある「自然的経済秩序」(Gesell 1916)第3.13章で“ I therefore propose a complete
separation of the medium of exchange from the medium of saving"として述られ
ている(1929年英訳版による,なお同版は[url 略]から入手できる),なお,ゲゼルに関連
する様々な資料は非営利団体である「ゲゼル研究会」によって提供されており([url略]),
本章の記述も同会の資料に多くを拠っている.》(195頁)

以下も参考文献に挙げられている。

《Onken, Werner (1983),"Ein vergessenes Kapital der Wirtschaftsgeschichte,"
Zeitschrift fur Sozialokonomie[宮坂英一訳「経済史の忘れられたー章(上)」
「自由経済研究」(ぱる出版),2000年5月]》(198,236頁)

私見では減価マネーによって唯一税金のない社会が可能であり、『中央…』でも著書が評
価していたケインズ世界通貨案のバンコールも、ゲゼルのアイデアであろう…

新版の刊行もしくは復刊が求められる。

1:19 午後  
Blogger yoji said...


新しい物価理論―物価水準の財政理論と金融政策の役割 (一橋大学経済研究叢書) – 2004/2/20

本書は未来に光を照らす。具体的にはゲゼルの再評価を促し、新しい貨幣を準備する重要文献だ。
(「物価水準の財政理論(FTPL)」に関する数少ない体系的解説を加えた邦語文献でもある。計量経済学的には宮尾龍蔵『マクロ金融政策の時系列分析』も推薦できるが)
残念ながら入手困難だが、物価理論検討に必要な数式を把握できる。ただ数式よりも重要な点は、

《交換手段としての貨幣から価値保蔵手段を切り離す》ことと(『新しい物価理論』195頁)、

《ゲゼル型貨幣を採用することで得られる効果が,その採用に伴って発生するであろうコストを十分に上回るといえるかどうか》(198頁)

であろう。後者は金融政策の代償として数式で紹介される(200頁)。
最新刊『中央銀が終わる日』ではさらに電子的減価マネーが検討されるが(本書では電子マネーを考えられてはいない)、体系的かつ基礎的な本書がまず読まれるべきだ。

『中央』では参考文献がちゃんと挙げられていないが『新しい物価理論』ではちゃんと挙げられている。

《交換手段としての貨幣から価値保蔵手段を切り離すという主張は,彼の代表的著作で
ある「自然的経済秩序」(Gesell 1916)第3.13章で“ I therefore propose a complete
separation of the medium of exchange from the medium of saving"として述られ
ている(1929年英訳版による,なお同版は[url 略]から入手できる),なお,ゲゼルに関連
する様々な資料は非営利団体である「ゲゼル研究会」によって提供されており([url略]),
本章の記述も同会の資料に多くを拠っている.》(195頁)

以下も参考文献に挙げられている。

《Onken, Werner (1983),"Ein vergessenes Kapital der Wirtschaftsgeschichte,"
Zeitschrift fur Sozialokonomie[宮坂英一訳「経済史の忘れられたー章(上)」
「自由経済研究」(ぱる出版),2000年5月]》(198,236頁)

私見では減価マネーによって唯一税金のない社会が可能であり、『中央…』でも著書が評
価していたケインズ世界通貨案のバンコールも、ゲゼルのアイデアであろう…

新版の刊行もしくは復刊が求められる。

1:21 午後  
Blogger yoji said...


新しい物価理論―物価水準の財政理論と金融政策の役割 (一橋大学経済研究叢書) – 2004/2/20
渡辺 努 (著), 岩村 充 (著)

本書は未来に光を照らす。具体的にはゲゼルの再評価を促し、新しい貨幣を準備する重要文献だ。
(「物価水準の財政理論(FTPL)」に関する数少ない体系的解説を加えた邦語文献でもある。計量経済学的には宮尾龍蔵『マクロ金融政策の時系列分析』も推薦できるが)
残念ながら入手困難だが、物価理論検討に必要な数式を把握できる。ただ数式よりも重要な点は、

《交換手段としての貨幣から価値保蔵手段を切り離す》ことと(『新しい物価理論』195頁)、

《ゲゼル型貨幣を採用することで得られる効果が,その採用に伴って発生するであろうコストを十分に上回るといえるかどうか》(198頁)

であろう。後者は金融政策の代償として数式で紹介される(200頁)。
本書執筆者岩村充の最新刊『中央銀が終わる日』ではさらに電子的減価マネーが検討されるが(本書では電子マネーを考えられてはいない)、体系的かつ基礎的な本書こそがまず読まれるべきだ。

『中央』では参考文献がちゃんと挙げられていないが『新しい物価理論』ではちゃんと挙げられている。

《交換手段としての貨幣から価値保蔵手段を切り離すという主張は,彼の代表的著作で
ある「自然的経済秩序」(Gesell 1916)第3.13章で“ I therefore propose a complete
separation of the medium of exchange from the medium of saving"として述られ
ている(1929年英訳版による,なお同版は[url 略]から入手できる),なお,ゲゼルに関連
する様々な資料は非営利団体である「ゲゼル研究会」によって提供されており([url略]),
本章の記述も同会の資料に多くを拠っている.》(195頁)

以下も参考文献に挙げられている。

《Onken, Werner (1983),"Ein vergessenes Kapital der Wirtschaftsgeschichte,"
Zeitschrift fur Sozialokonomie[宮坂英一訳「経済史の忘れられたー章(上)」
「自由経済研究」(ぱる出版),2000年5月]》(198,236頁)

私見では減価マネーによって唯一税金のない社会が可能であり、『中央…』でも著書が評
価していたケインズ世界通貨案のバンコールも、ゲゼルのアイデアであろう…

新版の刊行もしくは復刊が求められる。

1:26 午後  
Blogger yoji said...


新しい物価理論―物価水準の財政理論と金融政策の役割 (一橋大学経済研究叢書) – 2004/2/20
渡辺 努 (著), 岩村 充 (著)

本書は未来に光を照らす。具体的にはゲゼルの再評価を促し、新しい貨幣を準備する重要文献だ。
(「物価水準の財政理論(Fiscal Theory of the Price Level=FTPL)」に関する数少ない体系的解説を加えた邦語文献でもある。計量経済学的には宮尾龍蔵『マクロ金融政策の時系列分析』も推薦できるが…)

残念ながら入手困難だが、物価理論検討に必要な数式を把握できる。ただ数式よりも重要な点は、

《交換手段としての貨幣から価値保蔵手段を切り離す》ことと(『新しい物価理論』195頁)、

《ゲゼル型貨幣を採用することで得られる効果が,その採用に伴って発生するであろうコストを十分に上回るといえるかどうか》(198頁)

であろう。後者は金融政策の代償として数式でも説明される(200頁)。
本書執筆者岩村充の最新刊『中央銀が終わる日』ではさらに電子的減価マネーが検討されるが(本書では電子マネーを考えられてはいない)、体系的かつ基礎的な本書こそがまず読まれるべきだ。

『中央』では参考文献がちゃんと挙げられていないが『新しい物価理論』ではちゃんと挙げられている。

《交換手段としての貨幣から価値保蔵手段を切り離すという主張は,彼の代表的著作で
ある「自然的経済秩序」(Gesell 1916)第3.13章で“ I therefore propose a complete
separation of the medium of exchange from the medium of saving"として述られ
ている(1929年英訳版による,なお同版は[url 略]から入手できる),なお,ゲゼルに関連
する様々な資料は非営利団体である「ゲゼル研究会」によって提供されており([url略]),
本章の記述も同会の資料に多くを拠っている.》(195頁)

以下も参考文献に挙げられている。

《Onken, Werner (1983),"Ein vergessenes Kapital der Wirtschaftsgeschichte,"
Zeitschrift fur Sozialokonomie[宮坂英一訳「経済史の忘れられたー章(上)」
「自由経済研究」(ぱる出版),2000年5月]》(198,236頁)

私見では減価マネーによって唯一税金のない社会が可能であり、『中央…』でも著書が評
価していたケインズ世界通貨案のバンコールも、ゲゼルのアイデアであろう…

新版の刊行もしくは復刊が求められる。

1:32 午後  
Blogger yoji said...


新しい物価理論―物価水準の財政理論と金融政策の役割 (一橋大学経済研究叢書) – 2004/2/20
渡辺 努 (著), 岩村 充 (著)

本書は未来に光を照らす。具体的にはゲゼルの再評価を促し、新しい貨幣を準備する重要文献だ。
(「物価水準の財政理論(Fiscal Theory of the Price Level=FTPL)」に関する数少ない体系的解説を加えた邦語文献でもある。計量経済学的には宮尾龍蔵『マクロ金融政策の時系列分析』も推薦できるが…)

残念ながら入手困難だが、物価理論検討に必要な数式を把握できる。ただ数式よりも重要な点は、

《交換手段としての貨幣から価値保蔵手段を切り離す》ことと(『新しい物価理論』195頁)、

《ゲゼル型貨幣を採用することで得られる効果が,その採用に伴って発生するであろうコストを十分に上回るといえるかどうか》(198頁)、

であろう。後者は金融政策の代償として数式でも説明される(200頁)。
本書執筆者岩村充の最新刊『中央銀が終わる日』ではさらに電子的減価マネーが検討されるが(本書では電子マネーを考えられてはいない)、体系的かつ基礎的な本書こそがまず読まれるべきだ。

『中央』では参考文献がちゃんと挙げられていないが『新しい物価理論』ではちゃんと挙げられている。

《交換手段としての貨幣から価値保蔵手段を切り離すという主張は,彼の代表的著作で
ある「自然的経済秩序」(Gesell 1916)第3.13章で“ I therefore propose a complete
separation of the medium of exchange from the medium of saving"として述られ
ている(1929年英訳版による,なお同版は[url 略]から入手できる),なお,ゲゼルに関連
する様々な資料は非営利団体である「ゲゼル研究会」によって提供されており([url略]),
本章の記述も同会の資料に多くを拠っている.》(195頁)

以下も参考文献に挙げられている。

《Onken, Werner (1983),"Ein vergessenes Kapital der Wirtschaftsgeschichte,"
Zeitschrift fur Sozialokonomie[宮坂英一訳「経済史の忘れられたー章(上)」
「自由経済研究」(ぱる出版),2000年5月]》(198,236頁)

私見では減価マネーによって唯一税金のない社会が可能であり、『中央…』でも著書が評
価していたケインズ世界通貨案のバンコールも、ゲゼルのアイデアであろうが…

新版の刊行もしくは復刊が求められる。

1:33 午後  
Blogger yoji said...


新しい物価理論―物価水準の財政理論と金融政策の役割 (一橋大学経済研究叢書) – 2004/2/20
渡辺 努 (著), 岩村 充 (著)

本書は未来に光を照らす。具体的にはゲゼルの再評価を促し、新しい貨幣を準備する重要文献だ。
(「物価水準の財政理論(Fiscal Theory of the Price Level=FTPL)」に関する数少ない体系的解説を加えた邦語文献でもある。計量経済学的には宮尾龍蔵『マクロ金融政策の時系列分析』も推薦できるが…)

残念ながら入手困難だが、物価理論検討に必要な数式を把握できる。ただ数式よりも重要な点は、

《交換手段としての貨幣から価値保蔵手段を切り離す》ことと(『新しい物価理論』195頁)、

《ゲゼル型貨幣を採用することで得られる効果が,その採用に伴って発生するであろうコストを十分に上回るといえるかどうか》(198頁)、

であろう。後者は「金融政策の代償」という概念として数式と図解で説明される(200頁)。
本書執筆者岩村充の最新刊『中央銀が終わる日』ではさらに電子的減価マネーが検討されるが(本書では電子マネーを考えられてはいない)、体系的かつ基礎的な本書こそがまず読まれるべきだ。

『中央』では参考文献がちゃんと挙げられていないが『新しい物価理論』ではちゃんと挙げられている。

《交換手段としての貨幣から価値保蔵手段を切り離すという主張は,彼の代表的著作で
ある「自然的経済秩序」(Gesell 1916)第3.13章で“ I therefore propose a complete
separation of the medium of exchange from the medium of saving"として述られ
ている(1929年英訳版による,なお同版は[url 略]から入手できる),なお,ゲゼルに関連
する様々な資料は非営利団体である「ゲゼル研究会」によって提供されており([url略]),
本章の記述も同会の資料に多くを拠っている.》(195頁)

以下も参考文献に挙げられている。

《Onken, Werner (1983),"Ein vergessenes Kapital der Wirtschaftsgeschichte,"
Zeitschrift fur Sozialokonomie[宮坂英一訳「経済史の忘れられたー章(上)」
「自由経済研究」(ぱる出版),2000年5月]》(198,236頁)

私見では減価マネーによって唯一税金のない社会が可能であり、『中央…』でも著書が評
価していたケインズ世界通貨案のバンコールも、ゲゼルのアイデアであろうが…

新版の刊行もしくは復刊が求められる。

1:34 午後  
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新しい物価理論―物価水準の財政理論と金融政策の役割 (一橋大学経済研究叢書) – 2004/2/20
渡辺 努 (著), 岩村 充 (著)

本書は未来に光を照らす。具体的にはゲゼルの再評価を促し、新しい貨幣を準備する重要文献だ。
(「物価水準の財政理論(Fiscal Theory of the Price Level=FTPL)」に関する数少ない体系的解説を加えた邦語文献でもある。計量経済学的には宮尾龍蔵『マクロ金融政策の時系列分析』も推薦できるが…)

残念ながら入手困難だが、物価理論検討に必要な数式を把握できる。ただ数式よりも重要な点は、

《交換手段としての貨幣から価値保蔵手段を切り離す》こと(『新しい物価理論』195頁)と、

《ゲゼル型貨幣を採用することで得られる効果が,その採用に伴って発生するであろうコストを十分に上回るといえるかどうか》(198頁)、

であろう。後者は「金融政策の代償」という概念として数式と図解で説明される(200頁)。
本書執筆者岩村充の最新刊『中央銀が終わる日』ではさらに電子的減価マネーが検討されるが(本書では電子マネーを考えられてはいない)、体系的かつ基礎的な本書こそがまず読まれるべきだ。

『中央』では参考文献がちゃんと挙げられていないが『新しい物価理論』ではちゃんと挙げられている。

《交換手段としての貨幣から価値保蔵手段を切り離すという主張は,彼の代表的著作で
ある「自然的経済秩序」(Gesell 1916)第3.13章で“ I therefore propose a complete
separation of the medium of exchange from the medium of saving"として述られ
ている(1929年英訳版による,なお同版は[url 略]から入手できる),なお,ゲゼルに関連
する様々な資料は非営利団体である「ゲゼル研究会」によって提供されており([url略]),
本章の記述も同会の資料に多くを拠っている.》(195頁)

以下も参考文献に挙げられている。

《Onken, Werner (1983),"Ein vergessenes Kapital der Wirtschaftsgeschichte,"
Zeitschrift fur Sozialokonomie[宮坂英一訳「経済史の忘れられたー章(上)」
「自由経済研究」(ぱる出版),2000年5月]》(198,236頁)

私見では減価マネーによって唯一税金のない社会が可能であり、『中央…』でも著書が評
価していたケインズ世界通貨案のバンコールも、ゲゼルのアイデアであろうが…

新版の刊行もしくは復刊が求められる。

1:35 午後  
Blogger yoji said...

貨幣の経済学―インフレ、デフレ、そして貨幣の未来 | 岩村 充 集英社2008
https://www.amazon.co.jp/dp/toc/4087805069
目次
第1章 貨幣の経済史―金貨から金本位制へ
第2章 貨幣は漂うか―貨幣価値を支える仕組み
第3章 アンカーを探せ―国債の意外な役割
第4章 貨幣価値の坂と水準―金融政策の理論
第5章 明日はデジタルで―競争的貨幣供給論と電子マネー

フィッシャーの利子率物価均衡条件:

  1+名目金利
___________ = 1+物価上昇率
  1+自然利子率
(#4,182頁)

①来年の物価水準(P1)は、

[B0:今期国債の金額、B1:来期国債の金額]

P1=__B0(1+i)+B1__
      s

[s:国債償還財源の実質額、i:名目金利]

②今年の物価水準(P0)は、

1+i/1+r=P1/P0

_1+i_ = _P1_
 1+r   P0

[r:自然利子率]

P0=__B0+B1/(1+i)__
     s/(1+r)

(#4,191頁)

(ただし224頁の記述を見ると、著者は循環型社会の重要性をわかっていないと思う。)


やはりゲゼルが言及されている。

5:19 午前  
Blogger yoji said...

【マネー】Amazonで最も得する方法は、クレジットカードでチャージしたnanacoでアマゾンギフト券を買うこと! [無断転載禁止]©2ch.net

1 : ののの ★2017/05/16(火) 02:55:51.34 ID:CAP_USER>>6
「Amazon MasterCard」より得する裏ワザを解説!
2017年5月14日公開(2017年5月14日更新) ポイ探ニュース(菊地崇仁)

「Amazon」で得するクレジットカードといえば「Amazon Mastercard」だろう。
Amazonで「Amazon Mastercardクラシック」を利用すると、非プライム会員の場合は1.5%分、
プライム会員の場合は2.0%分のAmazonポイントをそれぞれ獲得でき、
「Amazon Mastercardゴールド」を利用すると2.5%分のAmazonポイントを獲得できるからだ。…

(ソースに長文記事あり)
http://diamond.jp/articles/-/126331

6:01 午後  
Blogger yoji said...

新しい物価理論 - 岩波書店
https://www.iwanami.co.jp/book/b257809.html
1990年代後半の新興市場における通貨危機とインフレーションの関係を明らかにして脚光を浴びた「物価水準の財政理論」(FTPL)は,物価水準と財政との関係に注目する新しい考え方である.本書は,この理論をデフレーション下の日本経済の分析に援用し,管理通貨制における政府と中央銀行の物価に対する役割を考察する.
書評情報
ESP 2004年7月号
日本経済研究センター会報 2004年6月号
経済セミナー 2004年5月号

8:40 午前  
Blogger yoji said...


t日前に発行した貨幣1単位を中央銀行に持ち込んでも、それは(1-i)^t単位の新たに発行される貨幣にしか交換することはできないとするわけだ。




198~9頁
もっとも,こうした負担を軽減するような貨幣を設計する方法は,いくつか考えることができる。例えば,スタンプを貼り付けなければ使えないというような規則の強制はやめて,代わりに貨幣には発行日を表示することにし,中央銀行は発行した貨幣を新たに発行する貨幣と交換する際,同額面同士の貨幣と交換するのではなく,発行日からの日数に応じ,マイナスの日歩をつけて額面より少ない金額の貨幣としか交換しないようにすることなどが考えられるだろう。マイナスの日歩をづとすると(すなわち0<_i<1),t日前に発行した貨幣1単位を中央銀行に持ち込んでも、それは(1-i)^t単位の新たに発行される貨幣にしか交換することはできないとするわけだ。このような貨幣が採用されれば,人々は貨幣を発行日ごとに異なる価値の債務だと認識できるようになり,毎日i/1の割合で減価する交換レートで発行日の異なる貨幣を交換するようになる.これで,交換レートを計算する煩わしさは残るがスタンプの購入や貼り付けは不要になる。さらに貨幣を紙に印刷するのをやめてIC力~ドのような電子媒体に収容するようにすれば,交換レートの計算も自動的に行えるようになって,これなら人々に大きな負担を強いなくてもゲゼル型貨幣を実用化できるだろぅ4).
 こぅしてみると,価値が減価する貨幣というゲゼルのアイデイアは,彼がそうしたアイデイアを持ち出した理由に問題はあるものの,自然利子率がマイナスになるほどのデフレシヨツクに悩む経済にとつては,名目金利をマイナスにする方法を与えるという点で一定の処方箋にはなりそうである.だが,私たちがゲゼルのアイデイアを取り入れることを考えるのであれば,それで解決できることについてだけでなく,ゲゼル型貨幣を採用しても解決できないことはないのか,そこを検討しておかなければならない.5。


2.2 名目金利マイナスの効果と限界

5:34 午前  
Blogger yoji said...

新しい物価理論



5.2.2名目金利マイナスの効果と限界
ゲゼル型貨幣の導入で何ができるようになって何はできないのかを整理
重要なてみよう,最初に,第4章で展開した議論を簡単に復習しておこう,人
々の経済に対する予想が変化し,財政余剰に対する人々の予想が変化しな
いままで0期からj期の間の自然利子率に対する予想R,jが大きく低下
したとする,こうした変化の中で物価を安定させるために中央銀行ができ
ることは,人々の名目金利に対する予想に働きかけてRn0,jを自然利子率
と同様に大きく低下させることである.この効果は,すでに第4章で詳し
くみたとおりであり,

P0=M-1+Σ∞j=0 B-1,j/Rn0,1/Σ∞j=0‘sj/Rr0,j

P_0=\dfrac {M_{-1}+\sum^\infty_{j=0}B_{-1,j}/R^n_{0,j}-\xi A}{\sum^\infty_{j=0}s_j/R^r_{0,j}}
[P0:現在の物価]


199頁



P0=M-1+Σ∞j=0 B-1,j/Rn0,1/Σ∞j=0‘sj/Rr0,j


と表現できる.ゲゼル型貨幣の良さは,この名目金利に対する予想をマイナスの領域にまで引き下げることを可能にすることで,従来型の貨幣が使用されている場合に比べて,より大きな力を金融政策に発揮させることができるようになることである。そうした力が十分強ければ,従来は流動性の罠の状況で手詰まりに陥っていた中央銀行でも,首尾良くショックを吸収し現在の物価P0への影響を遮断することができるようになる5).だが,そうした金融政策には代償も伴う。それを示しているのが,(5.1)式の貨幣価値決定式を変形した




Σ∞j:0(‘sj/Rr0,j) =Σ∞j:0(B-1,jj/Rr0,j)(1/Pj)+(M-1)(1/P0)
(1/Pj)は現在から将来にわたる貨幣価値。
新しい物価理論(200頁)

である。
《この式の右辺は現在から将来にわたる貨幣価値(1/Pj)を各期に支払期が到来する公的部門の金融債務B-1,j/Rr0,jでウエイト付けした加重平均であり,一方,左辺は財政余剰の予想流列を自然利子率で現在価値化したものである。したがって,この式は,財政余剰に対する予想が変化しないままで自然利子率が変化するというようなショックの下で,現在の物価を変化させないためには,何らかのかたちで将来の物価流列についての予想に変化を生じさせなければならない,つまり代償を払わねばならないということを示しているのだといえる。これはゲゼル型貨幣であろうとなかろうと効いている制約である。そこで,この制約の意味するところを,縦軸に物価水準(対数値)をとり横軸に時間の流れをとった図5.1**で考えてみよう.なお,前提として,このような自然利子率についての予想が低下するというショックの前には,名目金利と自然利子率とが等しくなるよう金融政策が実行されていて,物価は水準Pで変化せず,すなわち「物価の安定」が実現していたとする。》


《もっとも,この式は,もし私たちが貨幣をゲゼル型に「改造」することを考えるのならば,制度の移行に伴うデフレ効果にも注意しなければならないということを示すものである.貨幣をゲゼル型に改造すれば,人々は貨幣への課税(あるいは中央銀行の利益)分をも将来の財政余剰の流列に織り込むだろうから,そうした改造が適切な補償措置つまり減税とセットで行われるのでなければ,制度移行に伴うデフレ効果が発生してしまう。》(200頁)

7:15 午後  
Blogger yoji said...



新しい物価理論199~200


5.2.2名目金利マイナスの効果と限界

ゲゼル型貨幣の導入で何ができるようになって何はできないのかを整理
重要なてみよう,最初に,第4章で展開した議論を簡単に復習しておこう,人
々の経済に対する予想が変化し,財政余剰に対する人々の予想が変化しな
いままで0期からj期の間の自然利子率に対する予想R,jが大きく低下
したとする,こうした変化の中で物価を安定させるために中央銀行ができ
ることは,人々の名目金利に対する予想に働きかけてRn0,jを自然利子率
と同様に大きく低下させることである.この効果は,すでに第4章で詳し
くみたとおりであり,

P0=M-1+Σ∞j=0 B-1,j/Rn0,1/Σ∞j=0‘sj/Rr0,j

P_0=\dfrac {M_{-1}+\sum^\infty_{j=0}B_{-1,j}/R^n_{0,j}-\xi A}{\sum^\infty_{j=0}s_j/R^r_{0,j}}
[P0:現在の物価]

P0=M-1+Σ∞j=0 B-1,j/Rn0,1/Σ∞j=0‘sj/Rr0,j

と表現できる.ゲゼル型貨幣の良さは,この名目金利に対する予想をマイナスの領域にまで引き下げることを可能にすることで,従来型の貨幣が使用されている場合に比べて,より大きな力を金融政策に発揮させることができるようになることである。そうした力が十分強ければ,従来は流動性の罠の状況で手詰まりに陥っていた中央銀行でも,首尾良くショックを吸収し現在の物価P0への影響を遮断することができるようになる*.だが,そうした金融政策には代償も伴う。それを示しているのが,(5.1)式の貨幣価値決定式を変形した

Σ∞j:0(‘sj/Rr0,j) =Σ∞j:0(B-1,jj/Rr0,j)(1/Pj)+(M-1)(1/P0)
[(1/Pj)は現在から将来にわたる貨幣価値]

である。この式の右辺は現在から将来にわたる貨幣価値(1/Pj)を各期に支払期が到来する公的部門の金融債務B-1,j/Rr0,jでウエイト付けした加重平均であり,一方,左辺は財政余剰の予想流列を自然利子率で現在価値化したものである。したがって,この式は,財政余剰に対する予想が変化しないままで自然利子率が変化するというようなショックの下で,現在の物価を変化させないためには,何らかのかたちで将来の物価流列についての予想に変化を生じさせなければならない,つまり代償を払わねばならないということを示しているのだといえる。これはゲゼル型貨幣であろうとなかろうと効いている制約である。そこで,この制約の意味するところを,縦軸に物価水準(対数値)をとり横軸に時間の流れをとった図5.1**で考えてみよう.なお,前提として,このような自然利子率についての予想が低下するというショックの前には,名目金利と自然利子率とが等しくなるよう金融政策が実行されていて,物価は水準Pで変化せず,すなわち「物価の安定」が実現していたとする。》


《もっとも,この式は,もし私たちが貨幣をゲゼル型に「改造」することを考えるのならば,制度の移行に伴うデフレ効果にも注意しなければならないということを示すものである.貨幣をゲゼル型に改造すれば,人々は貨幣への課税(あるいは中央銀行の利益)分をも将来の財政余剰の流列に織り込むだろうから,そうした改造が適切な補償措置つまり減税とセットで行われるのでなければ,制度移行に伴うデフレ効果が発生してしまう。》(200頁)

7:17 午後  
Blogger yoji said...

リアルビジネスサイクルも
その前提となる貨幣中立説も
あらゆる学説が成長理論に飲み込まれてしまった

そろそろ成長を前提としない経済学が必要で
岩村充が『新しい物価理論』以降言及しているゲゼル型(減価)貨幣が
現実的に検討されるべき時期に来ている

9:49 午前  
Blogger yoji said...



現金の呪いーー紙幣をいつ廃止するか? | ケネス・S・ロゴフ, 村井 章子 2017
https://www.amazon.co.jp/dp/4822255077/

第10章 紙幣廃止以外の方法でマイナス金利は可能か?
2 ゲゼルのスタンプ紙幣

現金の呪いーー紙幣をいつ廃止するか? 単行本– 2017/4/6
ケネス・S・ロゴフ (著), 村井 章子 (翻訳)
5つ星のうち 4.5 2件のカスタマーレビュー
5つ星のうち 5.0「レスキャッシュ」社会への誘い
投稿者 hbspmd トップ500レビュアー 投稿日 2017/4/9
形式: 単行本
邦題はややおどろおどろしいが、副題である「紙幣をいつ廃止するか?」が筆者の主張するテーマであり、完全なキャッシュレス社会を目指すものではなく、高額紙幣をなくすことで、地下経済に打撃を与え、税の公平性・効率化を向上させると共に、マイナス金利を含めた金融政策の幅を拡げ、実効性をもたらすこととなり、デメリットはあるもののメリットがそれを上回る、考慮すべき政策の一つというものである。

本書でいう(高額)紙幣の段階的廃止の具体的実行に当たっては3つの柱がある。一つは最終目的が、追跡不能な匿名取引の実行を困難にすること(地下経済の縮小)、二つ目は、移行には10~15年以上の時間を掛けること、三つ目は銀行口座を持たない貧困層へのデビットカード提供などの救済策を講じることである。

本書ではビットコインなどの仮想通貨についても触れられているが、本書における「本論」ではない。貨幣の歴史を俯瞰すれば、仮想通貨を含めていずれ現状が大きく変化することはある程度想像出来るが、(高額)紙幣の発行・流通にはどのようなメリットがあり、社会的課題が潜んでいるのか、ということを知る機会は少なく、また、政府は(仮想通貨を含めた)「貨幣」というものを通して、何を重視しているのか、ということも含め、気づかされるものが多い一冊である。
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5つ星のうち 4.0日本語の副題「紙幣をいつ廃止するか?」の方が本の中身をあらわしている
投稿者 Mkengar 投稿日 2017/6/23
形式: Kindle版
表紙を見て面白そう、というだけで購入しましたが、正直本の意図を読み間違えて購入していました。タイトルが「現金の呪い」ということで、てっきりロゴフ氏が電子通貨、ビットコイン系統の話をするのかと思いましたが(それはそれで非常に興味深いのですが)、そうではなく、副題にもあるように「紙幣をいつ廃止するか?」がむしろ重要な主題です。高額紙幣の多くがその匿名性をもとに地下経済や犯罪に使われていること、よって高額紙幣をなくすことで、かなりの地下経済、犯罪抑制効果があり、納税額も増えるので、紙幣発行から得られるシニョレッジを補って余るだろうということが書かれています。さらに論を進めて、高額紙幣をなくすことで、中央銀行がマイナス金利を導入しやすくなる利点についても記載されています。つまり高額紙幣がたくさん流通しているのに大きなマイナス金利を導入しようものなら、預金を引き出して高額紙幣で貯蔵するという方法をとられる可能性が高いので、マイナス金利の効果が発揮できなくなるというわけです。ロゴフ氏はマイナス金利が万能だとは言っていませんが、中央銀行ができることを拡大し不況からの脱出を短期間で達成できるだという理由から非常に前向きなトーンで語られています。私は金融は素人なので、彼の意見が正しいかどうかはまったくわかりませんが、世間にはこういう議論があるのか、という意味ではとても勉強になりました。ただ素人にはなかなか難解な本だとは思います。

8:23 午前  
Blogger yoji said...

【金融】1万円札廃止論、ハーバード大教授が提言 [無断転載禁止]©2ch.net

413コメント117KB
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1ノチラ ★2017/09/02(土) 21:47:01.65ID:CAP_USER>>26>>76>>100
1万円札を廃止すべきだ──。こんな議論が突如浮上してきた。米ハーバード大学の経済学者、ケネス・ロゴフ教授が著書『現金の呪い』の冒頭で提言したのがきっかけである。高額紙幣が存在するからマネーロンダリング(資金洗浄)や脱税などが蔓延するし、タンス預金を助長して、消費や投資を促すマイナス金利政策の効果を弱めるというのが主張の根拠だ。

すでにECB(欧州中央銀行)は500ユーロ(約6万1500円)紙幣の発行を2018年末で停止することを決めている。テロや犯罪の資金源を絶つのが目的で、ニッセイ基礎研究所専務理事の櫨浩一氏はさらにこう語る。「高額紙幣から段階的に現金を廃止するというのがロゴフ教授の提言で、ECBもその意向だと言われています。すべて電子データ上での決済になれば、架空口座経由でも最終的に犯罪者は自分名義の口座でお金を受け取るので、簡単に足がつくわけです」。

ただし、マイナス金利への効用について、櫨氏の見解は懐疑的だ。「高額紙幣がないとかさばるのでタンス預金は大変ですが、預貯金で逆に利息を徴収されるくらいなら人々は現金保有を選びがち。さらに、マイナス金利下では所得も増えづらく、将来も気掛かりで財布の紐は緩みにくいはず」。
http://president.jp/articles/-/22591

3:52 午後  
Blogger yoji said...

ベーシックインカム=ヘリコプターマネー

10:18 午後  

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