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NAMs出版プロジェクト: 竹森俊平『経済論戦は甦る』日経ビジネス人文庫 2007
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竹森は1927年のムッソリーニ、1932年のフーヴァー大統領との会談も紹介している。フィッシャーとシュンペーターの理論上の対立はケインズとハイエクの対立と同じだ。竹森は主にフィッシャーの以下を参照している。
"The Debt-Deflation Theory of Great Depressions", 1933, Econometrica.https://campus.fsu.edu/bbcswebdav/users/jcalhoun/Courses/Growth_of_American_Economy/Chapter_Supplemental_Readings/Chapter_23/Fisher-The_Debt_Deflation_Theory.pdf 全22p
以下、竹森本エピグラフ(&109頁):
つぎのような一つの均衡があるかもしれない。それは安定ではあるが、あまりにも微妙なバランスの上に成立しているので、そこから大きくはずれた場合には「不安定」が生じるのである。それはあたかも力を加えられた鞭がしなり、いつでも跳ね返ろうとするものの、限界がくればポッキリ折れてしまうのに似ている。このたとえは、一人の債務者が「破産」に陥る場合、あるいは多くの債務者が破産して「経済危機」が起こる場合にあてはまるだろう。こうした出来事が起こったあとでは、もはやもとの均衡に戻ることは不可能になるからだ。もう一つのたとえを用いるなら、このような災害は、船の「転覆」にも似ている。通常は安定な均衡にいる船でも、ひとたびある角度以上に傾いたならば、もはや均衡へと戻る力を失い、かえってますます均衡から遠ざかる傾向を持つからである。
経済論争の正しい愉しみ方
「今日の日本の経済学者は、1930年代の大恐慌の時と同じくらい、経済学の進路にとって重要な状況に立たされている」。著者である竹森俊平・慶応義塾大学経済学部教授は、構造改革の是非に揺れ動く我が国にあって、マクロ経済学的視点に基づく意思決定こそが国の命運を左右すると論じる。
とはいえ、理論と現実の狭間で意見を180度転換させる経済学者に対しては風当たりも強い。大恐慌の際、「財政金融政策を講じなければ経済は『デフレ・スパイラル』に陥って崩壊する」と説いたのは米国の経済学者アービング・フィッシャーであった。一方、世に言う「フィッシャー効果」とは「インフレ対策が無効になる可能性を示唆したもの」である。著者はこれを「矛盾」とは解さず、常に新たな難問に対峙する経済学者の宿命であり、真摯な姿勢であると位置づける。
フィッシャー理論の対極には、オーストリアの経済学者シュンペーターが説いた「創造的破壊」、すなわち不況の破壊力で企業、雇用、資産の非効率なものを一掃してしまえという「清算主義」がある。著者は、小泉純一郎内閣による構造改革の思想をそれに重ね合わせることで、マクロ経済の視点から改革の落とし穴を検証し日本経済の行く末に警鐘を鳴らす。
-- 日経BP企画 --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。
日本経済の低迷からの脱出策をめぐって、百家争鳴・甲論乙駁の論争が行われている。本書は、まるで小説を読むように、楽しみながら経済論争の論点を学べる。 --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。
不況の最中に、緊縮的な政策をスローガンにするとはどういう神経か―。日本経済の「失われた15年」をもたらした経済政策の失敗を完璧に解説した名著。フィッシャー、シュムペーターという二大経済学者の理論的対立とからめて、昭和恐慌、世界恐慌からの歴史的教訓を引き出している。第4回読売・吉野作造賞受賞。
日本経済の低迷からの脱出策をめぐって、百家争鳴・甲論乙駁の論争が行われている。アービング・フィッシャーの経済思想と人生のストーリーを織り込みながら、経済学者にも焦点を当て、日本経済の現状を分析・検討。
--このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。
竹森/俊平
慶應義塾大学経済学部教授。1956年東京生まれ。81年慶應義塾大学経済学部卒業。86年同大学院経済学研究科修了。同年同大学経済学部助手。86年7月米国ロチェスター大学に留学、89年同大学経済学博士号取得。著書『経済論戦は甦る』で、第4回読売・吉野作造賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1 Comments:
竹森俊平『経済論戦は甦る』(2002,2007)ではコラム的に簡潔に清滝・ムーアモデルに先行するフィッシャーを伝える。
本書の文庫版は表紙がいい。シュンペーターとフィッシャーを使っている。
ハイエクとケインズで語られる問題をさらに金融問題として具体的に展開している。執筆動機的には対小泉経済改革路線の時事的な意味が大きかっただろうが、普遍的に読める。
竹森(というよりフィッシャー)はリーマンショック以前に、過去の恐慌の検証からリーマンショックを予見していると言える。
リーマンショック以降に出た本で私はそれを予見していたという本はあるが、本書は違う。
アーヴィング・フィッシャーは再評価されるべきだ。
例えばフィリップス曲線はフィッシャーが発見している。
フィッシャー・フィリップス曲線と呼ぶべきだ。
恐慌で財産をなくした事が喜劇的に語られる事が多いが、当時の映像を見るとパニックを止めるために率先して投資し続けたのかもしれないと思わせる。
https://youtu.be/e_Im69cn1tw
伝記としては吉川洋『経済学をつくった巨人たち』(2001)の小文がいい。
これらは対デフレ理論的に再評価したものだ。
なおフィッシャーは実体経済を見ているのでマネタリストではない。フリードマンはフィッシャーの一部しか見ていない。
リチャード・セイラー『行動経済学の逆襲』では行動経済学的にフィッシャーが再評価されている。
フィッシャー邦訳は『価値と価格の理論の数学的研究(1892,訳1981)』『貨幣の購買力(1911,訳1936)』『貨幣錯覚(1928,訳1930)』『利子論(1930,訳2011)』等。『スタンプ通貨(1933,訳2018?)』(一部邦訳は雑誌に既出)の邦訳が待たれる。
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