火曜日, 8月 07, 2018

労働供給曲線 カレツキ、ラヴォア


正の傾きをもつ労働供給曲線,もしくは,後屈した労働供給曲線の場合,短期カンツキ゛モデルには, 2つの完全雇用均衡点が存在しうる(Seccareccia[1991])oたとえば'図4.2にあるとおり,実質賃金(ω/ク)ιでは,L点で労働市場は均衡する。労働供給と労働需要が等しい労働雇用量は,Aレοιである。すなわち,完全雇用均衡であるが,しかし,この完全雇用は,非常に低い実

:131頁

Seccareccia, M' [1991] ';;;tt minimum' emploi et productivite dansune perspectivt '"*;;;; e" L'Actualitd lconomique' 67 (2) 's"ttlif"lt, *' 

134:
カレツキ派複数均衡モデルは,市場の諸力が,経済を,低賃金,低産出量,低雇用となる低位均衡に押しやる可能性を明らかにするが,適切な規制や制度があると,高雇用,高実質賃金,高生活水準へと経済を押し上げる可能性がある点も明らかにしている。


複数均衡はミルが最初に指摘したはず。
ミル経済学原理3:18:6
その後ゲーム理論へ



複数均衡のアイデアは上記のミルからマーシャルが示唆を受けて以下で説明した


Early Economic Writings, 1867-90 - 149 ページ

John K. Whitaker, Alfred Marshall - 1975[1920]
外国貿易の純粋理論
マーシャル経済学選集邦訳1940より

マーシャルは複数均衡を認めない
邦訳(32~4頁)はミルの第3版該当箇所を脚注で引用していて親切


ミルの指摘はそもそも複数均衡ではなく
個別均衡と違い一般均衡はあくまで平均値であり統計上のランダム性は別ということだ
ただしマーシャルの図でゼロ地点は均衡を示しているのだから貿易は貿易額ゼロという均衡を常に潜在的に持つ
自給自足という均衡



邦訳32-5頁:
外國貿易の純粹理論
一つの例外の場合に關するミルの所論に對する覺書

 ミルは、〔經濟學原理〕第三編第十八章第六節[譯註]において、外國貿易論に關する諸困難を論じようと試みてゐるが、その一つの解決法については、本書においては、第一種の檢討として論じておいた。ミルのみるところによれば、一定の情況においては數個の異れる貿易均衡點があり得、したがってこれらの均衡點のどこで貿易が停止するか、といふことを決定する問題が生ずる。ミルは一例をあげて、この一般的なる問題を解くべき方法を例示しようと、試みた。しかし私のみるところによれば、ミルが選んだ特別の例は、當面の一般問題を例示してゐない。何となれば私の理解するところによれば、ミルの見解は次の如くであるからである。イギリスがリンネルの購買に費
す羅紗の量は、交換比率の如何にかかはらず一定の數量例へばOVであり、またドイツが羅紗購入のために喜んで費さんとするリンネルの量は、一定の數量例へばOWである。この假設によれば、貿易は唯一つの可能的均衡點をもつのみであり、それは卽ち羅紗OVがリンネルOWと交換される點である。貿易から生ずる全部利益が兩國の間に分配される仕方は、OV及びOWの相對量に依存する、といふことをミルは證明したがそれは勿論自明の理である。

〔譯註〕
〔この第六節は『經濟學原理』第三版一八五二年刊に至って補入された。本文においてマーシアルにより『ミルが選んだ特別の例は當而の一般問題を例示してゐない』と批評された『特別の例』とは、次の如きものである。
 『以上の國際價值論は、本書の第一版ならびに第二版において述べたところのものである。しかるに頴敏なる諸の批評(主として友人ウヰリアム·ソーントン氏の批評)を受けかつその後さらに檢討を加へた結果、上段に述べた學說は、その所說のかぎりにおいては正當ではあるが、本問題の理論としては未だ完璧ではない、といふことが明かとなった。
 『卽ち次のことが明かとなったのである。二國間の(あるひは二國以上を想定すれば、各一國と世界との間の)輸出と輸入とは、全體として相償はねばならず、したがって兩者は國際需要の均等と兩立し得べき價值において相交換されねばならない。しかしこのことは、現象の法則として完全なものでないことは、次の考察によって知られるであらう。卽ち、この法則の諸條件をいづれも同等に滿足すべき國際價値の割合は、幾通りもあり得るのである。 
 『これまでの想定は、次の如くであった。羅紗十ヤールを生産するに、イギリスはリンネル十五ヤールにあたる勞働を、ドイツはリンネル二十ヤールにあたる勞働を必要とする。兩國の間に貿易が開かれる。爾來、イギリスは羅紗の生産のみに、ドイツはリンネルの生産のみに沒頭する。そこでもし爾來羅紗十ヤールとリンネル十七ヤールとが交換さるべきものとすれば、イギリスとドイツとは正にその需要を相充たすであらう。例へばこの價格においてイギリスが一萬七千ヤールのリンネルを求めるとすれば、ドイツは丁度羅紗一萬ヤールを求め、イギリスはこの羅紗をこの價格においてリンネルの代りに與へ へなければならないであらう。これらの想定の下において、十ヤールの羅紗對十七ヤールのリンネルは、事實上、國際價值たるべきことが判明するのである。
 『しかしある他の比率、たとへば十ヤールの羅紗對十八ヤールのリンネルの如きも、同じく國際需要の均等といふ條件を滿足すべきことも充分可能である。例へば次の如く假定せよ。この後の比率においてイギリスは十對十七の比率におけるときよりもより多くのリンネルを求め、しかもその增加率が價格低下率に比例しないものとする。卽ちイギリスはいまや一萬ヤールの羅紗をもって一萬八千ヤールのリンネルを購買し得るにもかかはらず、これだけを求めずして一萬七千五百ヤールをもって滿足し、その代りとして九千七百二十二ヤールの羅紗(新しき比率たる十對十八において)を支拂ふのである。なほまたドイツは、十對十七において購買し得た場合よりも羅紗に對しより高價を支拂はねばならないから恐らくはその消費を一萬ヤール以下の分量に減少せしめる、自ち多分丁度上にあげた數量九千七百二十二ヤールとするであらう。これらの條件の下においても、國際需要の均等はやはり存在するであらう。かくて十對十七の比率及び十對十八の比率が同等に需要の均等を滿足するのである。そしてその他の交換比率にして同樣にこれを滿足するものも數多くあるであらう。およそ想定し得べきあらゆる數字上の比率が同等に上の條件を滿足すべきことさへ、考へることもできる。したがって國際價値がみづから調整して定まるべき比率には、いまだなほ不確定なる部分が存在し、問題に影響する諸事情の全部が必ずしもすべて考慮に入れられてゐなかったことを、示すのである.〕

 ミルの例解は、圖形で示せば次の如くとなるであらう。Ox及びOyと直角にそれぞれびPQ及びW
RSを描き、Aにおいて交はらしめよ(第六圖)。イギリスが、羅紗OVを生産し輸出するために費すべ
失費をもって、みづから生産し得べきリンネルの量を、VPとする。しからばPQはイギリスの需要
曲線の一部であり、この場合には(數學上の言葉でいへば)『高等な曲線が特に直線こなってゐる』のである。同樣にして、もしドイツが、リンネル品を生産し輸出するために費すべき失費をもって、みづから生産し得べき,羅紗〔譯註〕の分量を、WRとすれば、その場合RSはドイツの需要曲線の一部である。これら二つの直線PQ及びRSは、一つ以上の點において交はることはできない。したがってミルの例は、第四圖における兩曲線の諸交點によって暗示せられてゐるかの種の問題の解決には、何等の助けをも與へない。兩國間の貿易から生ずる利益の分配に關しては、AとPとが合致すれば、イギリスは輸入リンネルに對しみづから生産するとき用費せらるべき額と全く同額を支拂はねばならず、したがってイギリスは貿易から何の利益をも得ないことを、注意すべきである。同様にしてAがRと合致すれば、ドイツは貿易から何の利益をも得ないであらう。AがPの上方にあればあるほど、イギリスが貿易から得べき利益は大となり、AがRの右方にあればあるほどドイツが貿易から得べき利益は大となる。勿論この問題の條件からいって、AがPの下方に橫はり、またはRの左方に橫はることは、あり得ないのである。

外國貿易の純粹理論