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355 名無しさん@お腹いっぱい。[] 2019/02/25(月) 01:40:01.62 ID:LYaKGmBl
塩沢由典「現代資本主義分析のための原理論:現代古典派価値論と宇野理論」(2017.5.8)
http://www.unotheory.org/files/2-20-1.pdf ☆
これに対し、『宇野理論を現代にどう活かすか』Newletter第20号と第21号
http://www.unotheory.org/news_II_20
http://www.unotheory.org/news_II_21
で横川信治、小幡道昭、江原慶が反論を試みているが、中心となる国際価値論については、
だれも反論できていない。
宇野弘蔵が国際価値論など不可能と言ったのにたいし、宇野原論以上に緻密な理論が出て
きてしまったのだから、宇野派がどうにもならないのは当然だろう。
☆
36:
17. 消費飽和と社会保障
前節までに述べてきたことで、国際価値論を除く古典派価値論の概要が示せたと思う。本節では、それをもとにきわめて簡単で粗い現状分析を試みてみよう。本節の以下に述べる内容に異論をもつ方は多いであろうが、それに対する賛否は、古典派価値論の妥当性にはほとんど関係がない。以下の議論は、理論の枠組みというより、現状認識に大いに依存しており、その認識が異なれば処方箋はとうぜん異なってくる。
ケインズは、消費需要が所得と消費性向の積により決まると考えた。景気が低迷して最終需要が伸び悩みであるとすれば、生産も雇用も伸びないから、所得増大は期待できない。この状況の中で消費需要を増大させるには、消費性向を高める以外にない。しかし、低所得時代あるいは中所得時代とちがい、日本では一方に消費飽和という現象を抱えている。したがって、利子率を下げて消費者ローンを増大させるなどによる消費刺激も、あまり期待できない。消費飽和は、人口の成長停止・後退と高齢化をのぞけば、日本経済の低成長を規定する大きな要因と考えられる。
この問題があまり議論されてこなかったのは、新古典派の経済学の理論構による。第一に、一般均衡モデルでは、消費飽和(消費者の効用飽和)は、公理として排除されている。第二に、一財モデルを基本とするマクロ経済学では、新製品導入や製品多様化による需要喚起が想像の世界から排除されている。後者については、Dixit-Stiglitz 効用関数をもちいた独占競争モデルが存在し、Paul Krugman の新貿易理論の基礎ともなっているが、それが一般的な成長理論と結び付けられることは珍しい。たとえば、Paul Romer (1986)やRobert Lucas (1988)の内生的成長理論では、研究開発による生産性上昇効果は取り入れられているが、消費飽和は考慮されていない。第三の要因としては、効用関数にhomothetic(比例拡大的)なものに限定され、ひとつの財を取り上げても、効用が飽和しないことになっていることが挙げられる。これなどは経験的に明確な反証のある仮定であるが、理論構成の簡単さのために無視され続けている。
新古典派とちがい、異端派の経済学のいくつかでは、消費飽和ないし需要飽和は重要な議題となっている。日本では吉川洋(2000)がはやくから需要飽和に注目しているほか、進化経済学の一分野の進化成長理論では、Pasinetti (1981)、Saviotti (1996; 2001)などの議論がある。塩沢由典(2010)の内編第2章「経済発展とはいかなる過程か」は、吉川洋(2000)をベースにしている。一人あたりの所得増を経済成長と定義すれば、経済成長のためには、(1)生産性の上昇と(2)需要創の2つが不可欠である。このような簡明な事実も、これまでの経済成長論ではあまり考察されてこなかった。ローマーやルーカスの成長理論が生産性上昇という供給側面に偏っているのは、(2)の需要創面での考察がかけているためと思われる。
消費飽和ないし需要飽和について議論するには、消費の絶対額と消費性向とを分けて考えなければならない。消費性向が一定ならば、所得が増えれば、消費額は増大する。消費飽和は、このような消費増大を否定するものではない。消費飽和は、所得の増大につれて、消費性向が低下する現象を意味する。日本経済の高度成長期には、「三種の神器」とか「3C」といった消費財が多くの家庭に購入可能になり、それら耐久消費財の急 な需要拡大が日本経済の成長を牽引した。成長が生産性向上と消費拡大を刺激し、それが経済成長の原動力となるという好循環が形成された。これに対し、現在では、多くの家庭で、所得がすこしぐらい増えても、とくに買いたいものがないという状況が生まれている。この事態に加えて、社会保障や財政の持続可能性への懐疑から、所得低迷にもかかわらず、貯蓄せざるをえない状況にひとびとは追い込まれている。これをマクロで見ると、高齢化の影響を受けて、全般的な消費性向は上昇し、国民経済全体の貯蓄率は低下を続けている。しかし、これは稼得世代と退職後世代の消費・貯蓄行動を平均化して見ていることから起こっている事実誤認である。
塩沢由典(2010)『関西経済論/原理と議題』晃洋書房。
小幡道昭(2016)「マルクス経済学を組み立てる」東京大学最終講義原稿、http://www.cirje.e.u-tokyo.ac.jp/research/dp/2016/2016cj273.pdf
吉川洋(2000)『現代マクロ経済学』創文社。
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