日曜日, 2月 24, 2019

経済学史の本:推薦書



改訂版:
この一冊だけでいいという本はないが、経済学史としては、まずはこの一冊、

『経済学の歴史 』根井雅弘 講談社学術文庫 電子書籍版あり 2014^2005(^1998筑摩)
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000151291

通史ではなく伝記の寄せ集めだが、アダム・スミスとマルクスとケインズだけでも読んでおくべきだ。
ゲゼルの名がないのは仕方ないがフィッシャーがいないのは疑問(~他書で補完すべき~後述)。
#5にカレツキ、#7でプルードンの名が出てくる。
カレツキに関しては同著者の、

『現代イギリス経済学の群像~正統から異端へ』(岩波書店 1989年,新版,1995年)
『ケインズ革命の群像~現代経済学の課題』(中公新書 1991年)KOBOあり
 https://books.rakuten.co.jp/rk/9453fb743e28353197cdfe080e962158/
『わかる現代経済学』根井 雅弘【編著】朝日新書 2007 (カレツキ関連の執筆は服部 茂幸)

のどれかで補完する必要がある。
ブローグやシュンペーターの経済学史の大著は調べるにはいいが読み物としては勧められない。
ブローグ↓は持っておくべきだが。

経済理論の歴史 1 - 3 ,1966 M.ブローグ (著)[ 新訳は全4巻]

フィッシャーに関しては、全然網羅的ではないが、

NAMs出版プロジェクト: 竹森俊平『経済論戦は甦る』日経ビジネス人文庫 2007
(第1、2章でフィッシャーに言及)

がおすすめ。

フィッシャーの伝記としては吉川洋『経済学をつくった巨人たち』(2001)の小文がいい。
これらは対デフレ理論的に再評価したもの。
(現代経済学は細分化したので大元の巨人の業績を振り返る必要がある。
 フィッシャーはスミス、マルクス、ケインズと並ぶ存在)

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マルクスに興味があれば以下もおすすめ、
越村 信三郎『四元的価値のパラダイム マルクス経済学と近代経済学の統一のために』1989
https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjcO8XuWC6qvQDP_8TY5X0n_K1tpW8OHUg1RlO9aM6eFsPwEo-N0TcBSij1VD-jNdmZEWin4s-ndpmm1DS8o_Z4TDpnzQ5HsB-e6LxUSG8ph8x4cuE2wp_0pPRjHwNIwsIKrrDaeQ/s640/blogger-image--788209631.jpg
(サミュエルソンの系譜図より優れている)

斎藤他マクロ、ブランシャール下巻付録、ここら辺の顔写真付きの経済学史の記述もおすすめ

限界革命についてはブローグを読むべきだが
(ブローグによるとジェボンズはフロイトとも親交のあったフェーヒナーから限界効用のアイデアを得たという。)
以下がわかりやすい

ライブ・経済学の歴史―“経済学の見取り図”をつくろう 』 小田中 直樹

マルサスについても補完すべきだが初心者向けの良書を知らない。

前述の越村『四元的価値のパラダイム マルクス経済学と近代経済学の統一のために』がマルサスの位置付け、見取り図としては正しいが。

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その他の推薦書に、
ブローグが編集にかかわった図解モデルで振り返った本(電子版はあるが邦訳なし)

Famous Figures and Diagrams in Economics Hardcover – December 29, 2010
by Mark Blaug (Author, Editor), Peter Lloyd (Author, Editor)
https://www.amazon.com/Famous-Figures-Diagrams-Economics-Blaug/dp/1848441606/

図解 使えるマクロ経済学 (中経出版) | 菅原 晃 ( kindleあり)は近年の経済学史に詳しい
https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhH6zPaYtUpRzey1vvoOomdADDAyFkNVolYclk9e0FVJvMaam5NxXgH7-aQUgpqqca91DkRq_MproTPfjIuTYoss34ESPoup3H9HRLnHkyy1GK5QbVbwizYzcVZhllV9hyoLIuv/s1600/blogger-image-1873491835.jpg

瀧澤弘和 現代経済学 中公新書 2018/8 のゲーム理論関連の系譜図
https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjPUs-EW65U_k_KPk3gwF3fq9RPqLjAU7MNo7v1Los1c4vwKD4Gf-pQVAqBSCCeMpgPRvIWl_uiePqqzOis6BRhzCDtBSiSrHbyuyjBnX5Qgz8fNHbtHZZOiAZpWNKC2teLkW-E/s640/blogger-image--1383236475.jpg
(ティロール『良き社会…』の該当部分#4-5を併読するとわかりやすい)

『経済学大図鑑』(ナイアル・キシテイニー ,2014^2012)などもいいがそもそも世界史を学ぶべきだ。

前述の根井2014kindleと似た趣向の本の映像版

ガルブレイス 不確実性の時代 字幕なし 1977 BBC
https://www.youtube.com/playlist?list=PL2UuZUPZA4vjnPDGBe6HMHzep0aeUbRbH

NHKのライブラリーからコンパクトな映像版経済学史を再編集してほいところだ。
ガルブレイスの番組は以下に対応
不確実性の時代 講談社学術文庫 
ジョン・K.ガルブレイス/〔著〕 斎藤精一郎/訳
出版年月 2009年4月
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000211425 

1 予言者たちと古典的資本主義の約束
2 資本主義最盛期の行動と紀律
3 カール・マルクスの異議申し立て
4 植民地の思想
5 レーニンと大いなる解体
6 貨幣の浮き沈み
7 ケインズ革命
8 致命的な競争
9 大企業
10 土地と住民
11 大都市圏(メトロポリス)
12 民主主義、リーダーシップ、責任






ガルブレイス
http://nam-students.blogspot.com/2018/10/john-kenneth-galbraith19082006.html


355 名無しさん@お腹いっぱい。[] 2019/02/25(月) 01:40:01.62  ID:LYaKGmBl 

塩沢由典「現代資本主義分析のための原理論:現代古典派価値論と宇野理論」(2017.5.8)

http://www.unotheory.org/files/2-20-1.pdf ☆


これに対し、『宇野理論を現代にどう活かすか』Newletter第20号と第21号

http://www.unotheory.org/news_II_20

http://www.unotheory.org/news_II_21

で横川信治、小幡道昭、江原慶が反論を試みているが、中心となる国際価値論については、

だれも反論できていない。


宇野弘蔵が国際価値論など不可能と言ったのにたいし、宇野原論以上に緻密な理論が出て

きてしまったのだから、宇野派がどうにもならないのは当然だろう。


36:

17. 消費飽和と社会保障

前節までに述べてきたことで、国際価値論を除く古典派価値論の概要が示せたと思う。本節では、それをもとにきわめて簡単で粗い現状分析を試みてみよう。本節の以下に述べる内容に異論をもつ方は多いであろうが、それに対する賛否は、古典派価値論の妥当性にはほとんど関係がない。以下の議論は、理論の枠組みというより、現状認識に大いに依存しており、その認識が異なれば処方箋はとうぜん異なってくる。 

ケインズは、消費需要が所得と消費性向の積により決まると考えた。景気が低迷して最終需要が伸び悩みであるとすれば、生産も雇用も伸びないから、所得増大は期待できない。この状況の中で消費需要を増大させるには、消費性向を高める以外にない。しかし、低所得時代あるいは中所得時代とちがい、日本では一方に消費飽和という現象を抱えている。したがって、利子率を下げて消費者ローンを増大させるなどによる消費刺激も、あまり期待できない。消費飽和は、人口の成長停止・後退と高齢化をのぞけば、日本経済の低成長を規定する大きな要因と考えられる。


 この問題があまり議論されてこなかったのは、新古典派の経済学の理論構による。第一に、一般均衡モデルでは、消費飽和(消費者の効用飽和)は、公理として排除されている。第二に、一財モデルを基本とするマクロ経済学では、新製品導入や製品多様化による需要喚起が想像の世界から排除されている。後者については、Dixit-Stiglitz 効用関数をもちいた独占競争モデルが存在し、Paul  Krugman の新貿易理論の基礎ともなっているが、それが一般的な成長理論と結び付けられることは珍しい。たとえば、Paul Romer (1986)やRobert Lucas  (1988)の内生的成長理論では、研究開発による生産性上昇効果は取り入れられているが、消費飽和は考慮されていない。第三の要因としては、効用関数にhomothetic(比例拡大的)なものに限定され、ひとつの財を取り上げても、効用が飽和しないことになっていることが挙げられる。これなどは経験的に明確な反証のある仮定であるが、理論構成の簡単さのために無視され続けている。


 新古典派とちがい、異端派の経済学のいくつかでは、消費飽和ないし需要飽和は重要な議題となっている。日本では吉川洋(2000)がはやくから需要飽和に注目しているほか、進化経済学の一分野の進化成長理論では、Pasinetti (1981)、Saviotti (1996; 2001)などの議論がある。塩沢由典(2010)の内編第2章「経済発展とはいかなる過程か」は、吉川洋(2000)をベースにしている。一人あたりの所得増を経済成長と定義すれば、経済成長のためには、(1)生産性の上昇と(2)需要創の2つが不可欠である。このような簡明な事実も、これまでの経済成長論ではあまり考察されてこなかった。ローマーやルーカスの成長理論が生産性上昇という供給側面に偏っているのは、(2)の需要創面での考察がかけているためと思われる。 

消費飽和ないし需要飽和について議論するには、消費の絶対額と消費性向とを分けて考えなければならない。消費性向が一定ならば、所得が増えれば、消費額は増大する。消費飽和は、このような消費増大を否定するものではない。消費飽和は、所得の増大につれて、消費性向が低下する現象を意味する。日本経済の高度成長期には、「三種の神器」とか「3C」といった消費財が多くの家庭に購入可能になり、それら耐久消費財の急 な需要拡大が日本経済の成長を牽引した。成長が生産性向上と消費拡大を刺激し、それが経済成長の原動力となるという好循環が形成された。これに対し、現在では、多くの家庭で、所得がすこしぐらい増えても、とくに買いたいものがないという状況が生まれている。この事態に加えて、社会保障や財政の持続可能性への懐疑から、所得低迷にもかかわらず、貯蓄せざるをえない状況にひとびとは追い込まれている。これをマクロで見ると、高齢化の影響を受けて、全般的な消費性向は上昇し、国民経済全体の貯蓄率は低下を続けている。しかし、これは稼得世代と退職後世代の消費・貯蓄行動を平均化して見ていることから起こっている事実誤認である。 



塩沢由典(2010)『関西経済論/原理と議題』晃洋書房。 

小幡道昭(2016)「マルクス経済学を組み立てる」東京大学最終講義原稿、http://www.cirje.e.u-tokyo.ac.jp/research/dp/2016/2016cj273.pdf 

吉川洋(2000)『現代マクロ経済学』創文社。