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Ⅰ.租税貨幣論(Tax-Driven Monetary View)
Ⅱ.機能的財政論(Functional Finance)
Ⅲ.信用貨幣論,及びMonetary Circuit Theory(貨幣循環理論)
Ⅳ.債務ヒエラルキー(債務ピラミッド)
Ⅴ.Stock-Flow Consistent Model(SFC)
Ⅵ.Job Guarantee Program(JGP)]
政府は租税を何によって納付させるかを
決定することができ、国内居住者に
強制力を持って租税債務を負わせることができる。
この債務の内容が、貨幣の起源とされる。
例えば古代国家で「どこの何某は、麦100㎏を
納めること」と指示があれば、この「麦100㎏」という
「債務の単位」が貨幣の起源である。(計算貨幣)
古代国家が大きくなり、常備軍や専従公務員が必要となるに
従い、あるいは緊急時に慣習を超える負担を
国内居住者に求める場合、しばしば国家は
軍人や負担を負うものに国家の「債務証書」つまり
「トークン」(金属や粘土製のコイン状のものが有名だが
木製や皮製のものもあった)を発行した。
政府は「麦100㎏」の代わりに、こうした
政府のトークンで納税することを認める(租税債務を
政府のトークンと相殺する)ようになる。
そうすると、「トークン1枚=○○㎏の麦」といった
交換比率が国家によって定められることが必要となる。
これが「支払手段」としての貨幣の起源となる。
中世ヨーロッパでは
納付しなければならないコインの枚数)が変更された
(コインには15世紀ごろまで額面に価額が記載されることは
なかった)。また、関税を支払うためには
ハシバミの木で作ったトークンを必要とする状態が
ロンドン大火災のころまで続いた(ロンドン大火災で
国会議事堂内に積みあがったハシバミの木のせいで
火災が大きくなったため、廃止された)。こうしたことは
トークンが流通するためには本来的に素材による価値は必要なかったことを
示している。
また、現代では政府中央銀行あるいは政府の認める
金融機関の無利子の負債は、いつ発行されたかにかかわらず
債権者(預金者)の意志でいつでも政府に対する支払い(主として
納税)に使えることを政府が保証している。
その結果、全国において政府あるいは銀行の発行する負債の
現在割引価値は、常に租税債務に対して1:1となり、
債務者である政府にとっては期間の利益なしに
額面価値が一定となる。この「政府債務(および
預金通貨)は、なぜ常に額面通りの名目価値を
持ちうるのか」ということが従来の経済学において
問われることのなかった問題であった。
・債務ヒエラルキー論
トークン(債務証書)は政府以外にも様々な地主、貴族、商人、
役人、軍人、、、、などによっても発行された。
歴史的には、中国のコインがヨーロッパで使われていたり、
ごちゃまぜの時代もあった。国家のトークンが
特に「貨幣」として常に排他的に用いられていたわけではなく、
単位もさまざまであった。そのため、
地域ごとにそれぞれのトークンの価値を統一する単位が
使われていたが、実際にその価値を指し示す
金属貨幣が存在していたとは限らず、
ただ各種トークンをまとめるためだけの計算貨幣でしかないことも
多かった。そしてその単位は、イギリスではポンドや
ペニー、フランスではリーブルなどが多く使われていたが
その価値も地域ごとに異なっていた。アメリカでは
シカゴのドルとニューヨークのドルが等価交換できない
といった状態が19世紀まで続いた。
現代のアメリカやイギリス、日本、カナダ、オーストラリアと
言った「貨幣主権国」では、
そして特に政府の指定した資格を有する金融機関の債務
(当座性預金)については、政府が払い戻しをほぼ保証しており、
各金融機関の債務が金融市場において
中央銀行を仲介とすることで常に等価として交換されることで
貨幣として機能している。そしてこうした金融機関(銀行)の
負債(預金通貨)を決済手段とする個人や企業の負債が
決済手段として企業間・個人間を流通することで
経済が円滑に運営されている。これを「債務ヒエラルキー」
(あるいは「貨幣ピラミッド」「フォーリー・ミンスキーピラミッド」)
という。金本位制や外貨ペッグ制などをとっていない限り、
このピラミッドの頂点に政府・中央銀行が位置することで
政府・中央銀行はいくら負債を発行しても
理論上、破綻することはないことになる。
これが安定している間は
貨幣体制は比較的穏当に運営されるが、
金融機関も営利企業である以上、常により多くの利潤を求めて
この債務ヒエラルキーによる制約を打ち破るための
イノベーションを絶えず行っている。その結果、
こうしたヒエラルキーの秩序を破壊する金融危機が
引き起こされる。
・中央政府と中央銀行の連結
ユーロ圏を除く多くの近代工業国家では
中央政府と中央銀行は法制度上、独立した形をとっており、
しばしば政府は通貨の発行を禁止されているほか、
中央銀行が直接、政府に融資することも禁止されている。
しかしながら、金本位制や外貨ペッグ制などといった制度を
採用しておらず、通貨防衛も行っていない「通貨主権国」の場合、
この様な法制度上の区別は、経済的には無意味である。
政府・中央銀行は、常に上記の様な全国を通じていつでも「1円=1円」を
保証するためのオペレーションを行っている。
これを維持するため、両者は常に密接な連携を
取っていなければならないのであり、両者の独立も
金融政策・財政政策も、これを侵さない限りで実行可能で
あるにすぎない。法制度上、政府は赤字財政を補填するために
国債を発行せざるを得ないが、実際には
新規国債を発行しようと、連銀から直接融資を受けようと
民間金融機関の財務ポジションにも
政府・中央銀行の財務ポジションにも、実質的な違いは
生じない。特に民間の場合、
資金国債の発行によっても実質的な財務ポジションには
何の変化も起こらない。これは政府が
貨幣を民間からの借り入れに全く依存していないことを意味する。
他方で、政府の支出が行われたときには
民間金融機関に過剰な準備が発生し
インターバンク市場の金利が低下する。
もし連銀の目標金利を下回っているようなら
連銀は、手持ちの国債を発行するか、それで十分でなければ
政府に依頼して政府自身は支出するあてのない新規国債を
発行してもらうことで、過剰準備を回収し、
インターバンク金利を目標範囲内に抑えこむ。
従って、国債はインターバンク市場の金利を
連銀がコントロールするための手段であって、
政府の資金調達の手段ではない。こうしたことから、
連銀と連邦政府を会計的に連結することを
主張する。そして両者を会計的に連結した場合、
政府の連銀に対する債権である政府預金、
連銀の政府に対する債権である国債等は、
すべて相殺消去されることになり、
民間保有の国債と準備預金がそれぞれ
連結政府の民間に対する負債となる。
これが意味しているのは、古代社会も現代政府も
会計的には似たような構造になっている、ということだ。
つまり政府は支出をするたびに新たな負債(準備預金)を
発行しているのであり、民間から貨幣を借り入れている、
という事実はない。国債と準備預金の差は
単に前者が有利子負債であり、後者が無利子だ、というだけのことで
さらに現在では超過準備には国債と同等の金利が支払われているので
実質的には両者の区別は全く無意味になる。
従って、MMTでは、政府預金口座に「当座借越し」(預金残高が
マイナスになり、銀行がマイナス分を立て替え払いする
システム)ファシリティーを設定し、国債を廃止し、
インターバンク市場における金利コントロールは
(超過)準備に対する付利で行う(あるいは
インターバンク市場の翌日物金利は
恒常的にゼロにして、連結政府は有利子負債を一切
提供しない)ことを主張している。もっとも、
実際には、連銀の場合、金融危機に際しては
連銀に口座を持たない外国銀行やノンバンクに対する
支援も行わなければならない必要上、
理論的には準備に対する付利だけでもいいのだが、
実務的には困難があることも認めている。
なお、租税貨幣論からもわかることだが
民間の納付する租税債務が政府のトークンで行われる以上、
政府は常に赤字にならなければ、民間は
租税債務を償還すると同時に
政府のトークンによって経済活動を行うことはできない。
民間に十分な政府トークンを提供し、
民間の債務ヒエラルキーの決済が常に安定的に
行なわれるようにするためには、
政府は必然的に「収入<支出」とならざるを得ない。
・民間部門単独での純資産の不可能性
資本制経済は、貿易による経常黒字を確保するか、
海外へ侵略を実行し植民地を獲得しようとする。
これはなぜか。国内市場だけでは必要な利潤を
挙げられないからに他ならない。ただしそれは
国内の市場が狭隘だから、というようなことではない。
会計上、不可能なのだ。
基本的にすべての金融資産は必ず他の誰かの金融負債である。
つまり、いくら商売をやって利益を上げても
それが金融資産の蓄積という構造をとる以上、
個々の企業にとってはともかく、民間部門全体で
見た場合、必ず誰かの負債であり、国全体としては
利益を上げることはできない。
設備投資や棚卸資産を積み上げることによって
純資産を増やすことは名目上、可能であるが、
減価償却を考えるなら、最終的には
利潤はゼロにならざるを得ず、そしてそれを回避するためには
常に減価償却を上回る投資が行われ続けなければ
ならないが、そうした投資の収益性は
国内市場つまり、国内の民間が得られる所得だけを考慮すれば
おのずと企業部門自身の「将来の費用の支払い」が
その上限になる。従って、民間部門が単独で
蓄積を続けることは不可能なのであり、
政府部門か海外部門が赤字(海外部門の赤字とは
経常黒字を意味する)にならなければならない。
従って、海外輸出や植民地侵略によって
民間の必要とする利潤が得られるのであればそれでもいいが
《…何が貨幣であるかは経済の作用によって決定されるのである。そして通常,貨幣は階層構造を成しており、異なった諸
目的に各々特定の貨幣手段が対応している。貨幣は単にファイナンスの過程の中から生起するというだけではない。
相異なる多数の種類の貨幣が経済には存在する。つまり、誰でも貨幣を創造することができる.問題は、それを受け入れ
させることである。》ミンスキー『金融不安定性の経済学』1989^1986、284頁
通貨のピラミッド構造 (訳語は三橋TV参照 https://youtu.be/SXLftIb5Vg8 )
貨幣ピラミッド
/\統合政府の負債
/ \
/ \市中銀行の負債
/ \
/ \銀行以外の主体の負債
/ \
/____________\
R.レイのMMT入門 第三章第二節 決済と債務ビラミッド
http://econdays.net/?p=9759
より引用。(IOUは借用証書の意味)
租税による最終需要付与により、政府のIOU=通貨(currency)をトップとした信用のヒエラル
キー構造が形成される。下位の信用は、上位の信用によって決済することができる。(例:負
債である買掛金を、銀行預金=銀行負債で支払う。銀行預金の引き出し請求に対して、現金
を支払う。)
https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEh0fkALgGFMNZfh10nrVDaBTV5hTbGI34iZFfVNwHzQO_STAmHoOLVVH66skh-3zqDjUUy-NfrGufSNWmsMGfUdGfZl7mAUO8-RZxITTMYQ_6zB0cI4U3AqEEfCwWIoDKeSyzDU/s1600/IMG_4338.PNG
レイはミンスキーを援用している。ミッチェル2019,p.145も参照
ケルトンは家計を入れて四分割
https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEj855eQOu8HqtqnCL3qGRxQC05mDuMsllbYa05NoAd2ATnqmWla1z3-bYeU1IWIG_zr4Ahh6LqaZCC6vPAtMtUxdJ5OrCiSu_bYPMxOa9zpwskxhJCnoIiBnKooAUCN_vYPfvvy/s1600/IMG_6466.PNG