木曜日, 7月 25, 2019

☆(80年代の米で、金利が上がったのに逆に不動産投資が過熱)「現代貨幣理論」と「リフレ政策」の違い 実は数式モデルは同じだが…そう言 え ない政治的 な事情 高橋洋一 日本の解き方 2019.7.25


「現代貨幣理論」と「リフレ政策」の違い 実は数式モデルは同じだが…そう言 え ない政治的な事情 高橋洋一  2019.7.25
参考:
転載:物価水準の貨幣理論の解説  スペックの持ち腐れ


朝日新聞2019/7/24

ときわ総合サービス研究所 (@tokiwa_soken)
「ケルトン氏は、通常のマクロ経済学の想定とは異なり、中央銀行による利上げは、1)借り入れコストの上昇をカバーするため企業が値上げする、2)国債保有者の利子収入上昇により支出が増える──ことから、物価を押し上げる可能性がある、とも説明した」
newsweekjapan.jp/stories/busine…

https://twitter.com/tokiwa_soken/status/1153327865267572736?s=21
にゅん オカシオコルテス (@erickqchan)
これは「利上げが自動的にインフレや景気を抑制する」などの、能天気な思考に対してのもので、短期も長期もそんな単純なわけないじゃんと、反対の効果の一つを強調しているだけで。 twitter.com/tokiwa_soken/s…

望月夜 → 望月慎 (@motidukinoyoru)
MMTの金融政策無効論がまとまったものとして、Fullwiler[&Wray]の "Quantitative Easing and Proposals for Reform of Monetary Policy Operations" levyinstitute.org/pubs/wp_645.pdf というWPが分かりやすそう。

MMT gang (@KF0612)
ケルトンが経済はパブロフの犬では有りません、利上げに対して反射的に反応したりしませんよ説明してたな。


貨幣の内生性を言うだけではなく中央銀行によるマクロ調整能力自体に否定的だから、そこがtwitter.com/yasudayasu_t/s… のカルドアさんのような利子率操作を通じた中央銀行の力は認める考え方と違ってる点だよね。

貨幣供給の変化によって誘発される利子率変化の結果として生じる変化を通じてのみ、貨幣供給の変化は財とサービスの貨幣的需要の水準に影響する。by カルドア(1989)
貨幣需要は所得とともに変動し、中央銀行の利子率が信用を制限したり拡張させることで変更させられうる。このことによって、常に貨幣ストックが需要によって決定される事実は変わらない。 by カルドア(1982)

MMT提唱のケルトン教授「インフレ抑制不要なら消費増税は意味ない」

財政拡大論である「現代貨幣理論(MMT)」で知られる米ニューヨーク州立大学のステファニー・ケルトン教授は16日都内で講演・会見し、消費税率引き上げは、インフレ圧力を減らすのが目的ならば適切だが、インフレ圧力を減らす必要がない場合は経済的意味をなさないと話した。

日本、MMTの多くが正しい点を証明

MMTは、自国通貨発行権を保有する政府は物価上昇率が過度に高まらない限り積極的な財政支出を重視する理論。通貨発行権を持つ国家は紙幣を印刷すれば借金を返せるため、財政赤字で国は破綻しないと説明する。
ケルトン教授は日本の経済政策に関し、「日本がMMTを実践していると述べたことはない」ものの、「財政赤字が金利上昇をもたらさないことや、量的緩和が急激な物価上昇をもたらさないことなど、MMTが正しい点を世界に証明した」と評価。よりMMTと整合的な形で「財政支出を拡大していれば、今よりも高い経済成長率を達成していた」と指摘した。
日本経済に必要な処方箋に関し「経済成長のけん引役は消費なので、消費者心理の安定化が最も重要」と強調した。
MMTに関し、財政赤字を問題視しない、紙幣の無限印刷を容認しているとの見方は誤りで、インフレにならない範囲で財政支出の規模を考える理論だと説明した。

利上げで物価上昇の可能性も

もっとも適正な物価上昇率の水準については、賃金の上昇率との相対的な関係で決まる、と述べ、日米欧が掲げている2%の物価目標は「恣意的に設定されたものかもしれない」と述べた。
ケルトン氏は、通常のマクロ経済学の想定とは異なり、中央銀行による利上げは、1)借り入れコストの上昇をカバーするため企業が値上げする、2)国債保有者の利子収入上昇により支出が増える──ことから、物価を押し上げる可能性がある、とも説明した。
講演に先立ちケルトン氏は、自民党の西田昌司参院議員、安藤裕衆院議員、公明党の竹内譲衆院議員らと衆議院議員会館内で会食した。
*内容を追加しました。
(竹本能文 編集:内田慎一)
[東京 16日 ロイター]
トムソンロイター・ジャパン
Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)


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※7月23日号(7月17日発売)は、「日本人が知るべきMMT」特集。世界が熱狂し、日本をモデルとする現代貨幣理論(MMT)。景気刺激のためどれだけ借金しても「通貨を発行できる国家は破綻しない」は本当か。世界経済の先行きが不安視されるなかで、景気を冷やしかねない消費増税を10月に控えた日本で今、注目の高まるMMTを徹底解説します。

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WARE_bluefield (@WARE_bluefield)
17日の講演の方で、80年代の米で、金利が上がったのに逆に不動産投資が過熱した例を挙げてたはず。日本でもバブル期に似たような現象が確認されてるわけだよね。
少し前のインタビューでも「日銀はゼロ金利を維持しろ」みたいなこと言ってたはず。

https://twitter.com/ware_bluefield/status/1152956009159069701?s=21
ケルトンの「利上げで物価押し上げ」って、PKルーツの、金利に対する民間投資の不確実性の話であって、「デフレ下で利上げすればインフレになる」なんて意味で言ってないでしょう。
記者会見の時なら、JGP導入時の完全雇用下なんかの仮定の話をしてたわけだよね。
twitter.com/WARE_bluefield…

これは通訳がきちんと訳しきれてなかったのだけど「JGPなんかが導入されて完全雇用期だと、金利が上がると実所得が増えてインフレになるかも?」みたいな強い仮定下の見解だったので、この言及方法はフェアじゃないと思う。

ケルトン会見。何と言っても、最後に中前理論(利上げ→国債の利回りや利息が増大→国債保有者や利息生活者の所得が増大→支出増大=インフレ)が飛び出したのは驚愕だった。

シラカワスキー (@shirakawa_love)
@hongokucho そこは一人歩きしそうで怖いんですが、あくまでも「状況次第」と捉えたほうが良いかもしれないです。こちらの知恵袋が面白いと思います。
detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_de…
https://twitter.com/shirakawa_love/status/1151597911441981440?s=21
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望月夜 → 望月慎 (@motidukinoyoru)
といっても、量的緩和無効論については、第一世代MMTer:ビル・ミッチェルの
『準備預金の積み上げは信用を拡張しない』[☆]
econ101.jp/%E3%83%93%E3%8…
『準備預金の積み上げはインフレ促進的ではない』[☆☆]
econ101.jp/%E3%83%93%E3%8…
で十分かと思われます。

https://twitter.com/motidukinoyoru/status/1154637761078415361?s=21

「増税が却ってインフレを齎すパターン」
「利上げが却ってインフレを齎すパターン」
は、オーバーラップする部分もあれば、違う部分もあるので、かなり慎重に議論しなくてはなりません。
最初に留保しておきますが結構込み入った話です。

まずは、増税が却ってインフレを齎し"得る"パターンについて。
ここでMMTer達が想定しているのは法人税。
簡潔に言うと、大企業等が一定の独占or寡占を実現しており、マークアップ原則に基づく価格付けをスムーズに行える場合は、法人税増税によるコスト上昇は、そのまま価格に転嫁され得る。
(続く)

(続き)
大企業等によるマークアップ原則に基づいた価格転嫁がそのままインフレを起こすかどうかは、物価上昇を許容するだけの信用拡張が経済全体で発生するかどうかにかかってきます。
仮に信用拡張が不十分な場合は、下請けや労働者・消費者にしわ寄せが行く形で不況化することになります。

増税(この場合は特に法人税増税)がインフレを起こし”得る”パターンとしては上記のような議論が想定されます。
ただし、基本的には増税は非政府部門の純金融資産の減少なので、それを相殺・超過するような民間信用拡張がある場合という条件があることに注意しましょう。

続いて、利上げがインフレを起こし”得る”パターンを議論します。
これも前半は増税がインフレを起こし”得る”パターンと似た構造です。つまり、利上げが天下り式に借入コスト増加にまで”転嫁”される場合、大企業等の寡占・独占の条件が整っている場合は、マークアップで財価格までコストが転嫁される。

増税と利上げでここからが違うのですが、増税は民間の純金融資産の減少を齎す一方で、利上げは(それが有利子国債売りオペによるものであれ、準備預金付利にあるものであれ)基本的に民間の利子収入を『増加』させてしまうというところです。このため、金利政策の効果は極めて不確実になります。

金利政策の「財政的」効果による不確実性、あるいは代替効果・所得効果による不確実性については、拙まとめ『金利政策の具体的効果の考察 / 自然金利に関する考察』 togetter.com/li/1379143 でも整理したところです。
利上げの効果は、法人税増税の効果より輪にかけて難しくなってしまう。(終)

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「ケルトン氏は、通常のマクロ経済学の想定とは異なり、中央銀行による利上げは、
1)借り入れコストの上昇をカバーするため企業が値上げする、
2)国債保有者の利子収入上昇により支出が増える──
ことから、物価を押し上げる可能性がある、とも説明した」

民間銀行の貸出金利が引き上げられると、企業が利潤率を維持するために、ケルトンが言うように価格に転嫁させるか、それとも費用(賃金)を抑制させるかは、その時の経済状況及び労働組合の組織率に左右されると思うが、ほぼ労働者=消費者なので、どちらのパターンでも分配は歪む事になるな。


金融政策は万能ではないということは日本の実例が証明したが、金利上昇=物価上昇という
事例には以下がある(google翻訳)、

The Impact of Rising Interest Rates and How to Prepare

…銀行、証券会社、保険会社、および住宅ローンのオリジネーターの収益は、金利が高くなる
につれて増加することがよくあります。これは、企業や個人に貸したお金に対して(金利の形で)
より多く請求できるためです。…

金利が上昇すると、商品を購入するための資本コスト(例えば銀行ローンの形で)が増加し、
したがってこれらの在庫品の保有(または保有)コストが上昇する。…

Additionally, rising interest rates tend to hurt corporate profitability. It costs more for companies to borrow money, buy inventory, expand facilities and pay salaries, all of which hurt corporate profitability and, accordingly, depress stock valuations. There is one noteworthy exception to this, namely stocks in financial services companies. Bank, brokerage, insurance company and mortgage originator earnings often increase as interest rates move higher, because they can charge more (in the form of interest) for the money they lend to companies and individuals.

さらに、金利の上昇は企業の収益性を悪化させる傾向があります。企業がお金を借りたり、在庫を購入したり、設備を拡張したり、給料を支払ったりすると、企業の収益性が低下し、それに応じて株価が下落します。これに対する1つの注目すべき例外、すなわち金融サービス会社の株があります。銀行、証券会社、保険会社、および住宅ローンのオリジネーターの収益は、金利が高くなるにつれて増加することがよくあります。これは、企業や個人に貸したお金に対して(金利の形で)より多く請求できるためです。
History has demonstrated that higher interest rates in the United States, and around the world, will negatively impact the price of commodities.
When interest rates rise, the cost of capital (e.g. in the form of bank loans) to purchase the commodities increases thus driving up the carrying (or holding) cost of these inventories. Since the cost of capital is higher, holding or warehousing large quantities of these commodities is no longer cost efficient. That encourages consumers of raw materials to buy these commodities only on an as-needed basis rather than holding large stockpiles.

歴史は、米国と世界中のより高い金利が商品の価格に悪影響を及ぼすことを示しました。

金利が上昇すると、商品を購入するための資本コスト(例えば銀行ローンの形で)が増加し、したがってこれらの在庫品の保有(または保有)コストが上昇する。資本コストが高いため、これらの商品を大量に保管または保管することは、もはやコスト効率が良くありません。それは、原材料の消費者が大量の備蓄をするのではなく、必要に応じてこれらの商品を購入することを奨励します。



The Impact of Rising Interest Rates and How to Prepare

金利上昇の影響とその準備方法

ビル・アディス著

金利、または金利の変動が、株式、債券、通貨、コモディティなど、ほぼすべての資産クラスに影響を与えると言っても過言ではありません。この1年間で金利はわずかに上昇しましたが、連邦準備制度理事会は現在、前例のない透明性を提供しており、短期金利を引き上げるという彼らの望みと意図を明確にしています。この記事では、金利とこれらの資産クラスの間の相関関係を強調し、金利の上昇による伝統的な影響に焦点を当てます。

ただし、金利は資産のパフォーマンスを決定するための唯一の要因ではなく、会社の収益が株式価値の唯一の決定要因であることを忘れないでくださいが、それは確かに非常に重要な決定要因です。

金利は株価に影響を及ぼします。
金利上昇率=ボンド価格の減少

まず第一に、金利の上昇は発行済債券の価格を引き下げます。これは、金利が上昇するにつれて、これらの新しい、より高い金利で新しい債券が提供されるためです。新しい債券はより高い金利を提供するので、より低い金利での既存の債券の魅力は低下します。価格と利回りの間のこの逆の関係は、債券を理解するために基本的かつ重要です。より高いリターンを提供する新しい債券はより低い金利を提供するより古い債券の価格を引き下げます。

金利上昇率=在庫価格の下落

金利の上昇は伝統的に2つの理由で株価の低下をもたらします。金利が上昇するにつれて、収益を生み出す投資は投資家にとってより魅力的になります。投資家は収入を生み出す投資(債券やCDなど)に資産を購入する可能性が高くなり、株式に投資する可能性が低くなります。上昇率の環境では、収入を生み出す投資への資金の流入と、株式からの資金の流出が見られます。株式に対する需要が少なければ、最終的には彼らに支払われる価格が低くなります。

さらに、金利の上昇は企業の収益性を悪化させる傾向があります。企業がお金を借りたり、在庫を購入したり、設備を拡張したり、給料を支払ったりすると、企業の収益性が低下し、それに応じて株価が下落します。これに対する1つの注目すべき例外、すなわち金融サービス会社の株があります。銀行、証券会社、保険会社、および住宅ローンのオリジネーターの収益は、金利が高くなるにつれて増加することがよくあります。これは、企業や個人に貸したお金に対して(金利の形で)より多く請求できるためです。

上昇金利=上昇通貨価値

より高い、または上昇する金利は伝統的にその国の通貨の価値を高めます。より高い金利は外国の投資と投資家を引き付ける傾向があり、その国の通貨に対する需要と価値を高めます。あるいは、低金利または低金利では外国人投資家が意欲を失い、通貨の価値が下がる傾向があります。

確かに、金利だけで通貨の価値が決まるわけではありません。経済の安定性とその国の商品やサービスに対する需要も重要です。大きな国内総生産(GDP)や貿易の水準収支(輸入対輸出)などの有利な経済数も、アナリストや投資家が特定の通貨を評価する際に考慮する重要な数値です。

米ドルを参照する場合、もう1つ重要な考慮事項があります。米ドルは準備通貨です。これは、多くの外国の中央銀行が相当量の米ドルを保有していることを意味します。これは、世界的には、金や石油などの商品が米ドルで取引されているためだけでなく、比較的経済的および政治的安定により、ドルが歴史的に不確実な世界における安全の世界的な安息地と見なされてきたためです。これらの考慮のために、過去10年間の米国の歴史的に低い金利にもかかわらず、ドルは他のほとんどの世界的な通貨に対して強さを示しました。

金利上昇率=商品価格の低下

歴史は、米国と世界中のより高い金利が商品の価格に悪影響を及ぼすことを示しました。

金利が上昇すると、商品を購入するための資本コスト(例えば銀行ローンの形で)が増加し、したがってこれらの在庫品の保有(または保有)コストが上昇する。資本コストが高いため、これらの商品を大量に保管または保管することは、もはやコスト効率が良くありません。それは、原材料の消費者が大量の備蓄をするのではなく、必要に応じてこれらの商品を購入することを奨励します。

金は時々この規則の例外であると考えられています、そして、確かに、金の価格は多くの異なった要因に反応します。金と他の商品との主な違いは、多くの投資家は金が安全の安息地であると感じているため、効果的なインフレヘッジであることを意味しています。
インフレや金利が上がると、金の価値も上がるでしょう)。しかし、歴史的にも、金利環境が下がると金価格が上がり、金利が上がると金価格が下がることがわかります。

1975年(金先物取引開始)以来、金と実質金利の間には逆の関係がありました。金は、実質金利が低下する期間中にプラスのリターンを生み出し、実質金利が上昇する期間中にマイナスのリターンを生み出しました。これに対する例外は、経済の不確実性がインフレの原因である場合です。この場合、金の価格は金利が上がっても上昇します。

繰り返しますが、株式、通貨、商品などの他の資産の価値に影響を与えるのは金利だけではありませんが、これまでのところ、金利の変動はこれらすべての資産の価格に影響を与えることがわかりました。これらの資産に長期間投資するか、積極的に売買するかにかかわらず、これらの変化が市場にどのような影響を与えるかを知ることが賢明です。

金利上昇への対応

債券投資家の方へ:短期金利が高いほど、1年前よりも魅力的になっています。つまり、安定した利回り曲線(長期金利が短期金利を大幅に上回っていない)は、所得重視の投資家が短期金融商品(国債、CD、短期の社債または地方債)に投資すべきであることを意味します。また、これらの投資が短期間で満期になるという事実は、あなたの債券が満期になったときに期待されるより高いレートで収益を再投資する機会を与えてくれます。別の提案された戦略は変動金利商品(TIPS、変動金利債券のような)に投資することです。予想される金利の上昇を考えると、投資家はこれから利益を得て、彼らの投資に対する上昇するクーポンと収入で報われるでしょう。

借りる人のために:お金を借りようとしている人たちのために、金利の上昇は行動を起こす呼びかけであるべきです。待つのはあなただけの費用がかかります。昨年が示したように、住宅ローン、住宅担保ローン、個人向けローンの金利はすべて上昇しています。これは今後も続くことが予想されるため、この状況では時は金なりです。あなたの決断を遅らせることはより高価な借り入れをもたらすだけです。

エクイティ投資家のために:ここアメリカで金利が非常に低かったという事実は、投資家が他の投資を求めていたので株式市場の浮力として働いていました。したがって、金利の上昇は、株価のさらなる上昇を妨げる要因となるはずです。

著者について
ビルアディス
アディス氏は、さまざまな主要金融機関、政府機関、および外国政府のための教育プログラムを開発および促進しています。


It is not an understatement to say that interest rates, or the change in interest rates, impacts virtually every asset class: equities, bonds, currencies and commodities. Although interest rates have risen slightly over the past year, the Federal Reserve is now offering unprecedented transparency, making clear their desire and intention to raise short term interest rates.  This article is intended to highlight the correlation between interest rates and these asset classes, focusing on the traditional impact that rising rates will have.
It is important to remember, however, that interest rates are not the ONLY factor for determining how assets will perform, any more than the earnings of a company are the ONLY determinant of a stock’s value, but it certainly is a very important determinant.


Interest rates affect stock value and a whole lot more.

RISING INTEREST RATES = DECLINING BOND PRICES

First and foremost, rising interest rates cause the price of outstanding bonds to decline. This is because, as interest rates rise new bonds are offered at these new, higher rates of interest. Since the new bonds offer higher interest rates, the attractiveness of existing bonds at lower rates declines. This inverse relationship between price and yield is fundamental and critical to understanding bonds. New bonds offering higher returns cause the price of older bonds offering lower interest rates to decline.

RISING INTEREST RATES = DECLINING STOCK PRICES

Rising interest rates traditionally result in lower stock prices for two reasons. As interest rates rise, income generating investments become more attractive to investors. Investors will be more likely to purchase assets into income generating investments (like bonds or CDs) and less likely to invest in stocks. In a rising rate environment, we see an inflow of money into income generating investments and an outflow of money from equities. Less demand for equities ultimately results in lower prices being paid for them.
Additionally, rising interest rates tend to hurt corporate profitability. It costs more for companies to borrow money, buy inventory, expand facilities and pay salaries, all of which hurt corporate profitability and, accordingly, depress stock valuations. There is one noteworthy exception to this, namely stocks in financial services companies. Bank, brokerage, insurance company and mortgage originator earnings often increase as interest rates move higher, because they can charge more (in the form of interest) for the money they lend to companies and individuals.

RISING INTEREST RATES = RISING CURRENCY VALUE

Higher, or rising, interest rates traditionally increases the value of a country's currency. Higher interest rates tend to attract foreign investments and investors, increasing the demand for and value of the country’s currency. Alternatively, low or declining interest rates tend to discourage foreign investors and therefore decrease the currency's value.
Certainly, interest rates alone do not determine a currency’s value. Economic stability and the demand for a country's goods and services are also of importance. Favorable economic numbers such as a large Gross Domestic Product (GDP) and level balances of trade (imports vs. exports) are also key figures that analysts and investors consider in assessing a given currency. 
When referring to the U.S. dollar there is another important consideration: the U.S. dollar is a reserve currency. This means that many foreign central banks hold substantial amounts of U.S. dollars. This is partly because globally, commodities like gold and oil are traded in U.S. dollars but also because, due to relative economic and political stability, the dollar has historically been considered a global haven of safety in an uncertain world. Due to these considerations, despite historically low interest rates here in the U.S. for the past 10 years, the dollar has shown strength relative to most other global currencies.

RISING INTEREST RATES = DECLINING COMMODITY PRICES

History has demonstrated that higher interest rates in the United States, and around the world, will negatively impact the price of commodities.
When interest rates rise, the cost of capital (e.g. in the form of bank loans) to purchase the commodities increases thus driving up the carrying (or holding) cost of these inventories. Since the cost of capital is higher, holding or warehousing large quantities of these commodities is no longer cost efficient. That encourages consumers of raw materials to buy these commodities only on an as-needed basis rather than holding large stockpiles.
Gold is sometimes thought to be an exception to this rule and, certainly, the price of gold responds to a number of different factors. The primary difference between gold and other commodities is that many investors feel gold is a haven of safety and is, therefore, an effective inflation hedge (meaning as inflation or interest rates rise, the value of gold would also rise). History also shows us, though, that a lowering interest rate environment results in rising gold prices, and higher interest rates reduces gold prices. 
Since 1975 (when gold futures began trading), there has been an inverse relationship between gold and real interest rates. Gold has generated positive returns during periods of falling real interest rates and negative returns during periods of rising real interest rates. The exception to this is when economic uncertainty is the cause of the inflation. In this case, gold prices will increase despite higher interest rates.
Again, interest rates are not the only factor that impacts the value of other assets like stocks, currency and commodities, but history has shown us that changes in interest rates do impact the prices of all these assets. Whether investing in these assets for long term or trading them actively, it is wise to know how these changes impact the market.

RESPONDING TO RISING INTEREST RATES

For the Bond Investor: Higher short term rates now make them more attractive than a year ago. That, plus the flat yield curve (long term rates not being substantially higher than short term rates) means that income-oriented investors should invest in short term instruments (Treasury Bills, CDs, short maturity corporate or municipal bonds). Also, the fact that these investments will mature in the short term gives you the opportunity to reinvest the proceeds at the expected higher rates when your bonds mature. Another suggested strategy is to invest in floating rate instruments (like TIPS, floating rate bonds). Given the expected rise in rates, the investor will benefit from this and be rewarded with rising coupons and income on their investments.
For the Borrow: For individuals seeking to borrow money, the rise in rates should be a call to action. Waiting will only cost you. As the past year has shown, the interest rates on mortgages, home equity loans and personal loans have all risen. This is only expected to continue, so in this situation, time is money. Delaying your decisions will only result in more expensive borrowing.
For the Equity Investor: The fact that interest rates were so low here in the U.S. for so long acted as buoyancy for the stock market as investors sought other investments. Accordingly, the rise in rates should act as a hinderance to further stock appreciation.

About the Author
Bill Addiss

Mr. Addiss develops and facilitates educational programs for a variety of major financial institutions, government agencies and foreign governments.



「現代貨幣理論」と「リフレ政策」の違い 実は数式モデルは同じだが…そう言えない政治的な事情 (1/2ページ) 高橋洋一 日本の解き方

 MMT(現代貨幣理論)の提唱者の1人とされるステファニー・ケルトン教授が来日し、話題となった。
 筆者はMMTの「教科書」とされている書物を読んだが、モデルが数式で構成されていないので分かりづらかった。筆者の周りの経済学者にも似たような印象を持っている人は少なくない。
 数式モデルを勝手に想像してみると、おそらくリフレ政策と同じだろうという結論だった。そこで、日本でMMTを提唱している人たちに問い合わせると、予想通り、リフレ政策と同じという回答だった。
 リフレ政策は、(1)ワルラス式(2)統合政府(3)インフレ目標-が構成要素だ。読者の中には、モデル式なんてどうでもいい、過去の自然科学の歴史の中には式なしの発想も大発見になった例もあるという人もいるかもしれない。数学言語が未発達な昔にはそうした事例もなくはないが、今では科学で数式モデルは必須だ。アインシュタインの相対性理論もリーマン幾何学とテンソル解析で書かれている。
 何より、数式モデルがないと学者レベルだと相手に誤解を与えるので、この意味で数式モデルは今や必須だ。
 リフレ政策のモデルは統合政府なので、財政政策も金融政策もどちらも協力すれば有用だ。インフレ目標までは、国債買い入れの金融緩和と国債発行の積極財政の合わせ技、政府通貨発行による積極財政など、いくらでも多種多様な政策を考えることができる。その場合、一般的に統合政府のバランスシート(貸借対照表)は改善するので、財政赤字や財政破綻も考えなくてもいい。これは、MMTでも強調されている。

「現代貨幣理論」と「リフレ政策」の違い 実は数式モデルは同じだが…そう言えない政治的な事情 (2/2ページ) 高橋洋一 日本の解き方


 しばしば、リフレ政策は金融政策ばかりで財政政策を考えていないという批判者がいるが、それは間違いだ。筆者が20年ほど前に書いた書物では、上記の数式モデルとともに、財政政策と金融政策の同時発動、さらには政府通貨発行まで書いてある。
 米国の正統派経済学者からMMTは批判されるが、感情的なものを除けば、数式モデルが欠如しているわりに政治的な影響力を持っていることが原因なのだろう。
 筆者に「MMTの数式モデルはリフレ政策と同じ」と伝えた人についても、政治的意味合いから誰なのか明言できない。邪推するに、リフレ政策と同じだと、政治的に「新しい」と言えなくなる。まして安倍晋三政権と根っこが同じということでは、政治運動に不都合だからだろう。
 MMTとリフレが異なる点は、ケルトン氏が「利上げが物価上昇要因」としていることだ。そのロジックは、立憲民主党の枝野幸男代表が述べていた「利上げは経済成長要因」と似ており、利子所得者の購買力が増すからという。
 資金を借りて事業を行おうとする者と、資金がありそれで消費する者を比べると、前者のほうが社会に活力を与える。この考えから、ケルトン氏の意見は、枝野氏と同様におかしいといえる。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)


 https://twitter.com/tokiwa_soken/status/1153327865267572736?s=21
https://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2019/07/mmt.php
「ケルトン氏は、通常のマクロ経済学の想定とは異なり、中央銀行による利上げは、
1)借り入れコストの上昇をカバーするため企業が値上げする、
2)国債保有者の利子収入上昇により支出が増える──
ことから、物価を押し上げる可能性がある、とも説明した」

参考:
https://www.tradingacademy.com/financial-education-center/the-impact-of-rising-interest-rates-and-how-to-prepare.aspx
The Impact of Rising Interest Rates and How to Prepare
By Bill Addiss
Additionally, rising interest rates tend to hurt corporate profitability. It costs more for companies to 
borrow money, buy inventory, expand facilities and pay salaries, all of which hurt corporate profitability and, 
accordingly, depress stock valuations. There is one noteworthy exception to this, namely stocks in 
financial services companies. Bank, brokerage, insurance company and mortgage originator earnings 
often increase as interest rates move higher, because they can charge more (in the form of interest) 
for the money they lend to companies and individuals.
History has demonstrated that higher interest rates in the United States, and around the world, will 
negatively impact the price of commodities.
When interest rates rise, the cost of capital (e.g. in the form of bank loans) to purchase the commodities 
increases thus driving up the carrying (or holding) cost of these inventories. Since the cost of capital is 
higher, holding or warehousing large quantities of these commodities is no longer cost efficient. That 
encourages consumers of raw materials to buy these commodities only on an as-needed basis rather 
than holding large stockpiles.

公定歩合が上がったら、貨幣の量が減るので、物価は下がりま... - Yahoo!知恵袋
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10177509730

ベストアンサーに選ばれた回答

かつて高度成長の時期、
繰り返し公定歩合が引き上げられましたが
物価は一向に下がりませんでした。

大体、どうして公定歩合が上がったら
貨幣の量が減る、ということが
言われたのでしょうか。

これは昔から言われていたことではありますけれど、
実際には管理通貨制度のもとで
そのようなことはありません。

企業が事前に利益の最大化を計画し、
投資の限界収益と金利が
一致する点に投資量を決定する、
従って金利が上昇すれば
投資が減少する、
(投資が減れば
銀行借入が減り、貨幣の量が減る)
と、まあ、これはケインズという人の投資決定論ですが、

はっきり言えば、バカバカしいですね――
G.S.L.シャックルなど
ケインズを神格視している人の間でも
「ケインズが犯した最大の
誤り」などといわれています。


企業が銀行借入をするのは
預金通貨を手に入れる為ですが、
特に日本では預金通貨とは
さまざまな債務を決済する最後の段階で
必要とされるにすぎません。
それ以前に手形など
自分で債務を振出したり
他者が振出した手形を裏書譲渡することで
支払をします。
そして、とりわけ企業間の取引では
まず受け取るのはお金ではなく
手形などです。
しかし賃金や税金はこうしたものでは
支払えませんし、いつか自分が振出した手形は
決済期日が来ます。
銀行預金通貨が必要になるのは
こうした時です。つまり、
これから投資資金と投資収益を計画するのではなく、
それらがとっくに終わり、
最後の決済の局面で、
その時に必要となる資金を求めるのです。
手形や売掛金が十分ある、ということは
その会社は業績優良な企業です。
こうした企業からの融資要請を断っていたのでは
銀行は商売になりません。
そして企業が求める融資額は、
決済の必要上既に決まっているのであって、
金利が多少上下したからと言って
増やしたり減らしたりできるものではありません。
むしろ金利が上昇すれば
借り入れコストが上昇するわけですから
費用を売上に転化できるような経済情勢のもとであれば
むしろ物価引上げに作用するかもしれません。

ナニワ金融道』という漫画に
次のようなシーンがあります。
近所の信用金庫が倒産してしまい、
多くの自営業者や小規模事業主が
割引先を求めて、主人公の勤める
高利貸しの店舗に押し寄せます。
「今日中に手形を割り引いてもらえなかったら
わしは首をくくらなならんのや。
政府は大手は救済してもわしらのことなんか
見向きもせんのや。」と店先で口々にわめきます。
で、たまたま店舗に居合わせたへなちょこの新入社員が
先輩たちのまねをして凄んでみせます。
「あんたら貸せ貸せいうけど、
貸す貸さないはこっちが決めることでっせ」。
ところが、今日のお客さんは、いつもの
資産も何もない立場の弱い人たちと違って
ちゃんとした手形の割引依頼を持ち込んだ人たちです。
「何をあほ言ってるんだ、
借りてくれる客がおらなんだら
お前らも商売あがったりだろ、
ぐずぐず言ってないで、とっとと手続きを
進めんかい」というわけで、へなちょこ新入社員は
押し切られてしまいます。「わかりました、ホナ、
手続きしますけど、うちは金利は34%ですけど
それでよろしいですね」
というと、これまで散々やいのやいの言っていた
お客さんたちは、水を打ったようにシーンと
なってしまいます。

ここには確かに、ビジネスの
短期資金需要の一側面が描かれています。
必要なお金は何としてでも
調達しなければ首をくくるしかありません。
金利がちょっとばっかり高いからと言って
借入額を減らすわけにはいかないんですよ。
しかし、30%もの金利となると、
仮に120日の手形であれば
額面の約10%にもなります。これでは
利益が吹き飛んでしまう。
でも、金利が高いから融資額を減らす、
なんてことは不可能なのです。

そうであるから、
もしも可能であるなら、
この分を何とかして次回以降の取引で
取り戻さなければなりません。
もしも製品化価格を簡単に引き上げられるなら
そうやって必要な利益を確保するでしょう。
しかし費用を容易に価格に転嫁できない状況では
金利や上昇や仕入価格の上昇は
合理化や人員削減を進めることで
カバーしなければなりません。
70年代のような状況では
それよりむしろ価格を引き上げる方が
楽だったのです。この場合には
むしろ物価は上昇し続けるでしょう。

とはいえ、もしも金利が
突然年利20%にもなるようなら
上記のような人たちはみな倒産してしまうでしょう。
(なぜなら、手形の割引料があまりにも高ければ
結局、必要資金を調達しきれなくなるからです。
自分自身が手形を振り出している場合、
たとえ1円でも残高が不足すれば
手形は決済できません。)
そうなれば資金需要は縮小し、
インフレも終息するでしょう。
これが80年代前半に
アメリカで「ボルガ―の実験」と言われたことです。
アメリカでは公定歩合がいきなり
20%にまで上昇しました。
しかもこの上昇は、FRBが一切
ベースマネーの追加供給を行わなかったため
生じた事態です。当時、貯蓄貸付組合の
長期金利は5~6%と言われていましたので、
突然短期金利が20%になってしまえば
資金をつなぐことができず、倒産せざるを得ません。
アメリカ中で貯蓄貸付組合が倒産し、
個人事業や中小企業、農家が
破産しました。これにより
確かにインフレは終息しましたが
アメリカの80年代は
経済的には極めて厳しいことになりました。

さて、話を日本に戻しますが、
実は上記のような社会状況のもとでは
計画的な長期投資でさえ
金利の多少の上昇とは無関係に行われ、
その分が価格に転嫁されます。
例えば、大型設備を建設する場合、
その設備の建設が長期にわたると
(特に1年以上にわたる場合)
金利の原価化が生じます。
つまり、金利支払額が
設備の建設費用(取得原価)に加算され、
それも含めて減価償却が行われることに
なります。そうなると
当然、その設備を用いて行われる製品の
製造原価は高くなります。(「金利は
製造原価に影響しない」というのは
こうした実務処理に全く無知な人の言うことです。)
これは、当然、製品価格を引き上げ
そして物価上昇に貢献します。

こうしたことは、当時の経済学者や
エコノミストにはそれなりに知られていたようですが
近年の経済学者は
簡単に「そうしたことは相対価格の変化であって
物価水準には関係ない。物価に関係あるのは
マネーストックの上昇率だけだ」などと
割り切った言い方をします。しかし
実際には、こうした投資が
銀行借入で行われれば
マネーストックは増加せざるを得ません。
つまり製造原価の引き上げが
借入残高の増加を通じて
マネーストックの上昇につながり、
それが物価上昇となる一方で
所要準備率一定のもとでは
日銀当座預金の増加に結びつきます。
(日銀当座預金は、銀行の必要に応じて
いくらでも供給されます。)
公定歩合が高くなれば
当然、銀行も金利を引き上げ、
そしてそれは企業の費用を引き上げ
それが価格に転嫁され、
ますます物価上昇率を引き上げることになります。


ただし、実際に物価上昇につながるかどうかは
社会情勢に依ります。
海外からの輸入が制限され、
国内市場が寡占化され
プライス・リーダーシップが確立されており、
労働市場も組織化されているような状況で
さらに物価上昇に伴う仕入価格上昇を
補うため、銀行が柔軟に融資を増やす
姿勢である限り、
公定歩合や金利の引き上げは
物価のさらなる上昇に結びつきやすいでしょう。
しかしながら
海外から安価な製品がいくらでも輸入され、
国内で競争が激しく
労働市場で、解雇や整理、賃下げが
簡単にできるようなら、
金利の上昇をはじめとするコストの上昇は
むしろ合理化や人員整理を推し進め、
それが需要の減退と融資の減少をもたらすかも
知れません。
この場合には
公定歩合の引き上げは
マネーストックの減少と物価の低下と
雇用の悪化を引き起こすことでしょう。


公定歩合政策が頻繁に使われていた時代には
どちらかというと
公定歩合引き上げの効果は
物価上昇に結びついていた可能性が
あります。
望月夜 → 望月慎 (@motidukinoyoru)
といっても、量的緩和無効論については、第一世代MMTer:ビル・ミッチェルの
『準備預金の積み上げは信用を拡張しない』
econ101.jp/%E3%83%93%E3%8…
『準備預金の積み上げはインフレ促進的ではない』
econ101.jp/%E3%83%93%E3%8…
で十分かと思われます。

https://twitter.com/motidukinoyoru/status/1154637761078415361?s=21

ビル・ミッチェル「準備預金の積み上げは信用を拡張しない」(2009年12月13日)

Bill Mitchell, “Building bank reserves will not expand credit“, Bill Mitchell – billy blog, December 13, 2009.
ポール・クルーグマンは、彼の最新のニューヨークタイムズの記事(2009年12月10日) Bernanke’s Unfinished Missionで、マクロ経済学について本当はあまり理解していないということを露呈した。時折、誰かコラムニスト(の書いたもの)を読むときに、疑わしきは罰せずの精神で、書かれていない背後の意味を見つけようとすることが誰にでもあるだろう。クルーグマンは、他のコラムニスト同様、時々は明らかに正しいことを言ったり、現代金融理論(MMT)に整合的な議論を行ったりしてはいる。しかしそれでも、馬脚を現すような記事がいつも現れ、それによって結局「このアナリストは本当は分かってない」ということが明らかになってしまう。クルーグマンの場合、日本の”失われた10年”の政策論議に対して彼が行った悲惨な介入から何も学ばなかったようである。
1990年代後半、ポール・クルーグマンは多くのアカデミックな経済学者に混じって、「大規模量的緩和を導入して経済を復活させるべきだ」と日本銀行を責めたてた。日本銀行は不承不承に彼らの助言を聞き入れ、2001年に準備預金を5兆円から30兆円に拡大した。この行動はほとんど全く影響がなかった。実質経済活動と資産価格は負のスパイラルに嵌ったままで、インフレ率は0以下だった。
多数の経済学者は、準備預金の莫大な増加がインフレを引き起こすだろうとも主張していた。彼らもまた間違いだった。この点についてのさらなる議論については、私のブログのBalance sheet recessions and democracy (邦訳) を読んでほしい。
この日本のはまった罠についての1998年の記事で、クルーグマンは ”日本は恐るべき”流動性の罠”にはまっており、金利をゼロ以下に下げることが出来ないので、金融政策は無効になる” と主張している。これは彼が現在アメリカに対して行っている議論と似ている。
彼は、名目金利がゼロであるとき、経済を刺激できる金利に調節することがもはやできず、貯蓄と投資をマッチさせるために要求される実質金利はマイナスになるだろう、と主張している。(余談だが――このタイプの論法は、大いに欠陥のある貸付資金仮説から導かれている)
ケインジアンとして、クルーグマンは、日本は当時、財政赤字を抱えており、財政政策は有効かもしれないが”財政制約”に縛られていて、その上(訳注:財政を出すとしても)日本の政府は”どこにも繋がらない道路”のような無駄な支出ばかりするだろう、という風に認識していた。
そのため彼は金融政策こそ目指すべき最善の方法だと考えている。クルーグマンは、日本は、実質金利をマイナスに(およびフレキシブルに)するために、いくらかの期待インフレを必要としていると主張している。彼は、金融政策がそれまで無効だった理由を以下のように結論付けている:
…民間主体は…[日本銀行の]…行動が一時的であると見做している。なぜなら、民間主体は、中央銀行が長期的には物価安定にコミットすると確信しているからである。それが金融政策が無効になる理由なのだ! 日本が経済を起動させることがこれまでできなかったのは、まさに中央銀行が責任ある行動をとると市場が見做していたからであり、物価水準が上昇を始めたら中央銀行がマネーサプライを抑制するだろうと期待されていたからである。
したがって、金融政策を有効にする方法は、中央銀行が無責任になるという約束を信用できる形で行うことだ。――説得力にある形でインフレの発生の容認を行えば、それによって経済の望むマイナスの実質金利を実現できる。
このことは、奇妙かつひねくれたように聞こえるかもしれない。…[しかし]…経済を拡張する唯一の方法は、実質金利を下げることだ;そして、それを行う唯一の方法は、インフレ期待を創り出すことなのである。
このように、彼はこの分析において完全な間違いを犯している。今世紀の初期において、日本経済を再起動させた唯一の事物は、劇的な財政政策の拡張だけだったのだ。
クルーグマンは量的緩和について詳説した他の関連記事では、彼はこう言っている:
日本銀行は、このような緩和に対して繰り返し反論してきた。量的緩和は――超過的な流動性は単に銀行か、あるいは個人に保有されたままで、支出には何の影響も与えないために――無効だろうと論じてきたのである。また、日本銀行はしばしば、この論理をすべての金融政策的解決策に対する反論として印象付けてきたように見える。
我々の分析から即座に明らかになることであるが、日本銀行の議論は、直接的な意味では極めて正しい。どれだけマネタリーベースが増えても、単にゼロ金利資産同士の交換をするだけである限り、期待は何の影響も受けず、実質的な効果もない。この分析のA面の含意としては…中央銀行は広義の貨幣総量に対して文字通り何の影響力も持たないだろう: なぜなら、信用の量はとても不安定で、外部による期待を変化させない資産交換には影響されず、信用の対応物として存在するインサイドマネーによって主に構成される貨幣総量は、外部による金融拡張の影響を受けないからである。
しかし、量的緩和の効果に関するこうした議論は、金融政策の期待的側面にフォーカスした議論とは全く無関係だ。そして量的緩和は、期待の変化において重要な役割を果たす; 将来のインフレーションを約束しようとする中央銀行は、実際に(新規に印刷された)貨幣を投入することで、より信頼を得るのである。
そしてもういちど彼は「準備預金の拡張は銀行の貸出を増やす」と主張するのである。なぜかといえば、準備預金の拡張がインフレ促進的であり、実質金利をマイナスの域へと導くからなのだという。
もっと最近に、クルーグマンはIt’s the stupidity economyという記事を書いた。あなたがもう一度これを読めば、クルーグマンがどれだけ現代金融理論(MMT)の理解から遠いのかがわかる。というのは、彼は不換紙幣金融システムがどのような働きをしているのか、全く分かっていないからである。
金融政策が無効な状態に対処する方法についての彼の選択肢を、日本に関する初期の仕事を単になぞるという形で、彼の好みの順に示そう:
・First best:  “…実質金利を引き下げるために、より高いインフレーションに確実にコミットする” 。したがって彼はいまだに金融政策を続行すべき最善の方法だと考えているのである。
・Second best:  “生産ギャップに大部分到達するのに十分な、本当に大規模な財政拡張。それを行うべき経済学的な状況というのは極めて明瞭だ。しかしワシントンは財政赤字恐怖症に飲み込まれており、十分に大きい拡張を行えるチャンスは全くないように見える。”
・Third best:  “…雇用への助成金と、ワークシェアリングの推進。”
クルーグマンは、金融政策がどちらかといえば無効であるという証拠があるにも関わらず、金融政策がより好ましい経済安定化手段であると未だに明確に信じており、貸主と借主の支出性向に関する判定困難な分配上の仮定に依拠している。
彼はまた量的緩和が、実質金利に対するインフレ促進的調整の実現を通じて、借入者の借入資金を拡張するだろうと考えている。したがってこの度、インフレを起こすことによって金融政策を始動させたがっている―それは、実質金利をゼロ以下にするためだ。
さて、直近の記事に移ろう。クルーグマンは同じ話を繰り返しているようだ。(Krugman’s record is stuck in the groove it seems)
FRB議長バーナンキの ”来年は控えめな経済成長になるだろう。――失業率を下げるのには十分だが、我々が望むよりも遅いペースになるだろう” というアメリカ経済の予測に関して、クルーグマンは成長加速を刺激する政策手段を模索している。
彼はバーナンキよりいっそう悲観的で、実際には失業率は上昇するだろうと考えている。以下の言い分については、彼は正しい:
我々が嵌りこんでいる穴から抜け出すのに、どれだけの数の雇用創造が必要なのかについて、多くの人は分かっていないと思う。あなたがたは、不況が始まってからアメリカで800万人の雇用が失われてきたのを目撃できなかっただろう。なぜなら、増加する人口についていくために、国が雇用の追加を――1か月に10万人以上の雇用の追加を――継続的に需要していたからである。そしてそのことは、もしアメリカが完全雇用に近い状態に復帰する状態を見たければ、本当に大規模な雇用の獲得が毎月必要になるということを意味している。
こうした挑戦的な分析から、彼は以下のように主張する。 ”政治的現実として、大統領――共和党からの総力を挙げた妨害に直面し、かたや自分の政党からはささやかな支援しか受けられない――は、おそらく雇用問題の表面をごまかす以上のことをするための十分な票を議会で集めることは出来ないだろう”
このため彼は、アメリカにおいて、財政政策は限界に達してしまったと主張している。「アメリカはお金を使い果たしてしまった」というのが、大統領による一貫した主張である。このことについてのより詳しい議論は、私のThe US government has run short of moneyという記事を読んでほしい。
このような文脈から、クルーグマンはFRBに”もっとできることがある”と主張している。彼が言うには:
FRBの行動についての言説の中で私のこれまで見た限り最も明確で説得的なものは、Joseph Gagnonによるものだ。彼は元はFRB職員で、今はピーターソン国際経済研究所(PIIE)に所属している。他ならぬバーナンキその人が経済学研究者としてこれまでに結実させた先行研究についての分析に基づき、Gagnonはさらに2兆ドルの資産購入を行って信用を拡張するようFRBに促している。そのようなプログラムは、景気下降のほとんどない成長加速を大いに促すはずだ。
さて、量的緩和の話に戻ろう。量的緩和は、例を挙げると、日本において投融資刺激に失敗したし、現在のイギリスにおいても投融資刺激に失敗している。この点についての詳しい話は、私の記事であるQuantitative easing 101邦訳)をお読みいただきたい。
ポイントは、量的緩和には実際には投融資を刺激する機能などないということである。クルーグマンは明らかに、金融政策と準備預金をリンクさせる銀行業務について理解していない。このことについての理解を深めるというのが、MMTの際立った特徴である。
ただし、銀行業務の専門家はその点を理解している。BISの最近のワーキングペーパーであるUnconventional monetary policies: an appraisalは、この点の理解を進めるにあたって極めて有用だ。
その記事で議論されているのは、今回の景気下降の中で中央銀行によって用いられた非伝統的金融政策について、主流派経済学者は本当のところはきちんと考察できていないということである。
こうした政策に関して、それらの:
…特異的な性質は、中央銀行が自身のバランスシートを積極的に用いて、市場価格や市況を、短期金利(典型的には、オーバーナイト金利)を飛び越えて直接に影響を与えるところである。したがって我々は、そうした政策を”バランスシート政策”と呼称し、”金利政策”からは区別している。
こうした特徴により、これらの政策では”民間部門のバランスシートの構造”を変化させることと”特定の”市場を対象にすることによって機能するよう意図されていることをBISは示している。BISが示すこの政策の主要なポイントは以下の通りである:
最初にBISが言うには:
…やや逆説的だが、これらの政策の一部は、1960年代から1970年代にかけて行われていた金融政策の波及メカニズムについての学術的研究の中でなら、”標準的”と見なされただろう。そうした研究は、民間部門のバランスシート構造の変化を重要視していた。
このことが示しているのは、「”ケインジアン”時代においてはよく理解されていた識見」を抹消しようとしてきたマクロ経済学の近年の歴史である。例えば、もしあなたが最近のマクロ経済学の教科書を読んだなら、流動性の罠に関するいかなる言及も発見困難であろう。(私が調べたのはバロー、マンキュー、ブランシャールの教科書だ)
1980年代に始まり、近年激化した ”新しい” マクロ経済学教科書の時代の特徴は、極めてスタイリッシュな一つの “モデル” を、既存の観点と競争させることなく、学生たちに取り組ませるところにある。(ケインズとピグーの、いわゆる ”ケインズと古典派” 論争のような)歴史的な論争は、未だ今日的意義を持っているにも関わらず、首尾一貫した形で教科書に記述されることはほぼない。
学生たちは、これらの教科書の中では、教科書で示されているパラダイムを批判する何の観点も得られない。無条件で受け入れるか、完全に放棄するかしかない。問題なのは、(訳注:教科書の中で)示されているその洗練されたモデルは、学生たちが学びたがっているマクロ経済の現象とはほとんど関係がないということである。
これらすべての教科書は、現代金融システムの正確な解説に失敗しており、そのため学生たちは、金融システムがどのように運用されているか及び金融システムが現実の経済にどういう風に相互作用しているかについて間違った理解を持ったまま卒業してしまう。
そしてBISはこう言う:
バランスシート政策の重要な特徴は、金利水準から完全に分離独立できるというところだ。テクニカルに言うと、これらの政策が準備預金(中央銀行に対して銀行が保有する資産)の拡張を通じて金利に齎す影響に対し、それを中和するのに十分な政策手段を中央銀行は必要としている。一般的に、中央銀行はそのような手段を既に保有しているか、あるいは必要な手段を獲得可能だ。この”分離主義”が他にも含意することは、バランスシート政策とは独立に、現在のとても低い、ないしゼロの金利政策から脱却することができるということである。
“分離主義”は、中央銀行が(中央銀行による金融政策ステートメントとしてアナウンスされる)政策金利に応じて準備預金に報酬を与えるという手法に基礎づけられている。
MMTの議論に従えば、中央銀行が目標金利の管理を維持するために準備預金を利用する方法には、大きく分けて二つの方法がある。一つ目についてだが、中央銀行は政府債券を売買することで、”望む短期金利水準を実現するように準備預金量を調節する”ことができる。この手法は ”長きにわたって実務家によく知られて” きたものである。(page 3)
MMTは同じ説明をそのまま政府債券発行にあてはめる――政府債券発行は、政府純支出(税収を越える支出)の資金調達ではない。国家政府は支出の際に税収を引き上げる必要がないからだ。実際には、債券発行は、財政赤字が追加した準備預金を操作し、中央銀行の目標金利維持を可能にするための金融政策手段なのである。
マクロ経済学の教科書で、公的部門の債券に関するこうした説明を探してみると良い。(訳注:見つからないだろう、という皮肉)
二つ目についてだが、 ”中央銀行は超過準備保持に対して政策金利と同額の報酬を支払うことを決定し得る” し、そうすると ”銀行にとっての準備預金保有の機会損失がゼロになる” 。 ”中央銀行は、その政策金利において好きなだけ準備預金を供給できる” 。重要なポイントは、そのとき中央銀行によって設定されている金利水準は、最初のケース…中央銀行が政府債券の発行によって準備預金を吸収しているケースと同様に、”金融システム内の準備預金の量から分断されている”。
したがって、積み上がった準備預金は、中央銀行が明確に単独に設定している金利に対して何の含意も持たない。「財政赤字は金利を引き上げるだろう」と主張している全ての主流派は、財政赤字が準備預金に与える影響と、中央銀行が準備預金を(訳注:目標金利から)”分離された”状態で操作していることに関して誤解している。
さて、BISの論文では次に、現在積み上がっている準備預金の含意という論点に移っている。彼らが言うには:
…我々は、非伝統的金融政策の議論における準備預金拡張の役割への典型的な強い重視は見当違いであると論じている。我々の見解では、非伝統的金融政策の効果は、中央銀行短期債のような準備預金に近しい代替資産との交換で得られた準備預金に依る限りは、大したものにはならない。とりわけ、非伝統的金融政策に関係する準備預金の変動は、銀行融資制約を有意に緩めることもないし、インフレの触媒として機能することもない。
というわけで、準備預金の積み上げがインフレ促進的であると主張しているオーストリア学派信者や主流派経済学者たちは――少し休憩して、内部関係者があなたがたに何を伝えようとしているのか、読んでみると良い。
より大きい準備預金が銀行融資を容易にすると主張しているマーク・ソーマその他を含む主流派経済学者全員は――少し休憩して、内部関係者があなたがたに何を伝えようとしているのか、読んでみると良い。
このペーパーでBIS研究員が発展させた議論は、MMTの中核的部分だが、主流派の教育プログラムを受けているであろうマクロ経済学徒は全く理解していないだろう。それどころか、あなたがたはトップレベルのジャーナルで研究者が出版しているいかなる主流派金融研究論説においてもこのタイプの分析は読んだことがないだろう。主流派経済学者たちはこうした識見をすっかり理解し損ねている。なぜなら、彼らは間違ったモデルから研究し始めてしまっているからである。
BISのペーパーの16ページから始まるセクション―Are bank reserves special?―は、主流派のコンセプトに毒された読者によって誤解されたミスリーディングな言葉(たとえば、クラウディングアウトのような)をところどころ用いてしまってはいるけれども、それでもなお読む価値のとても高い部分だ。
BISの著者たちはおもむろにこう始めている。 ”(準備預金は)特別だとみなされているようだ…銀行融資の触媒として機能するか、あるいは市場の安定と確信に貢献するという能力によって” 。この文脈について、BISはこう結論付けている。 ”そうした見解に尤もらしい理由があったとしても、その根底にある論理は時折疑わしい根拠に基礎づけられている” 。
彼らは以下のように論じている:
…準備預金は、金融制度によって独自に価値が与えられている。というのは、準備預金は、全ての取引の最終的な決済を達成するにあたって、唯一受容される手段であるからだ。このような観点から、準備預金は金融ストレス時に特別な役割があり、そのときはシステム内での準備預金の円滑な分配が妨げられ得る。そのようなとき、金融制度は、高まる流動性リスクを制御するためにより大きい準備預金の保持を必要とするだろう。実際、こうした事態は現在の初期段階で生じ、そのとき準備預金に対する予防的需要が大いに増大した。…
金融安定の維持の必要性は、日本銀行が2001-2006年に準備預金を拡張した理由の一つだと彼らは述べている。
しかしながら、中央銀行が需要に合わせて(政府短期証券のような準備預金に似た同価値資産との交換を通じて)柔軟な準備預金供給を行えば、流動性の役割は明らかに達成される。
言い換えれば、この点において準備預金に特別なことは特にないということだ。
彼らが準備預金を”特別”と考える理由は、金融政策における準備預金の運用上の意義に依っている。中央銀行は金利を明確に設定し、一般的にはオーバーナイト金利(インターバンク金利)がそれに確実に等しくなるのを目標とする。この点において、準備預金は:
…強力で、かつユニークだ…[そして],,,金利の不当で激しい変動を回避するために、中央銀行に対して、小さい(超過)準備需要に正確に対応することを要求する…しかし、バランスシート政策の中でそのような巨大なバランスシート拡張を受け入れさせるためには、銀行にとって準備預金を他の資産より魅力的なものにしなくてはならない…実際、中央銀行は、銀行に対して、政府短期証券に対するほぼ完璧な代替物を与えている。というのは、(訳注:与えた準備預金に)同等の金利を払っているのである。そのプロセスにより、準備預金の特別性は失われている。準備預金は単に、公的部門から発行された請求物にすぎなくなる。準備預金は主としてオーバーナイトの満期があることと、参加者が限定的であることにより他の資産から区別される。
こうした記述は、我々(MMT研究者)の一員が書いたのではない――そうではなく、BISによって公式に記述されたものである。このペーパーは、準備預金の動態がどのように金融オペレーションに影響を与えるのか、及び金融政策目標金利を逸脱しつつ準備預金を維持する際にどうして中央銀行が「債務発行」か「準備預金に対する利子の支払い」のいずれかを行う必要が出てくるのかについて極めて明快に示している。
このペーパーはさらに、主流派経済学者の中で見失われているポイントとして、準備預金と公的債務発行はほとんど同じものだということを示している。
最後に、BISのペーパーは準備預金―銀行融資―インフレ率の連鎖関係について考察している。著者たちが言うには:
これまで行ってきた議論は、準備預金の特殊性の含意に関して幾度となく聞かされてきた2つの主張に疑問を呈するものである。1つ目は、準備預金の拡張が融資拡張のための追加資金を与え、バランスシート政策を強化するというものである。2つ目は、準備預金調達に特別にインフレ促進的な機能があるというものである
彼らが的確に指摘する通り、準備預金の拡張が融資を拡大するための追加的な資金を銀行に与えると考えている人々は ”準備預金が銀行融資に必要だ” と信じ込んでいる。そのため、(マーク・ソーマのような)主流派経済学者は、 ”銀行融資は準備預金への不十分なアクセスによって制約されており、より多い準備預金がとにかく銀行の貸出意思を押し上げることが出来るのだ” と考えている。
BISの著者たちは続けて以下のように述べている:
こうした見解の極端なバージョンは、安定した貨幣乗数という教科書的概念だ: そうした考えでは、中央銀行は、準備預金供給の外的な変化を通じて、銀行システムの融資と銀行預金の量に直接の影響を与えることができるということになっている。
MMTは「そうした考え」を完全に否定する。準備預金は融資には必要とはされず、教科書に描写されているような貨幣乗数メカニズムは働いていない。
BISの著者たちもMMTと同意見であり以下のように述べている:
実際の処、準備預金の水準は銀行融資決定にほとんど影響を与えていない。信用残高は銀行の融資供給意思によって決定している。融資供給意思は、認知されているリスクリターンのトレードオフと、ローンへの需要に基づいている。準備預金の利用可能総額は、信用拡大を直接制約しているわけではない。
なぜこれが重要なのかは明らかだろう。融資は銀行預金を創造し、それは借入者によって牽引される。融資による銀行預金創造の段階では、準備預金は必要ない。その後、BISのペーパーが言うように、 ”金利の過剰な変動を避けるために、中央銀行はシステムの需要に応じた準備預金を供給する” 。
商業銀行の融資担当部署は、彼らの日々の業務において、金融システムにおける準備預金のオペレーションとは何の関係も持たない。彼らは融資を求めており、かつ信用力のある顧客から融資申し込みを受け取り、そしてその融資を認可するか拒否するか選択するだけである。融資を認可するとき、即座に銀行預金が創造される。(金融資産取引は全体では相殺されてゼロとなっている)
銀行の融資部署が信用拡大を制約されてしまう唯一の理由は、信用力のある顧客の欠如だ。信用力のある顧客の欠如は、「銀行が悲観的な審査法を採用している」という供給要因か、「信用力のある顧客が融資希求を避けている」という需要要因のどちらかに原因があるだろう。
そしてBISの著者たちは以下のように論じている:
超過準備と銀行融資の間の関係の希薄さについての最近の顕著な事例としては、日本銀行の2001-2006年の”量的緩和”政策の間の経験があるだろう。超過準備の顕著な拡張、それに伴うベースマネーの増加にも拘わらず、ゼロ金利政策下において、日本の銀行システムにおける融資は明らかに増加しなかった。
そして当時、ポール・クルーグマンは日本銀行に対して銀行に対してより多い資金を供給するために量的緩和を実行するよう促していた。彼が言うには、そうしたより多い資金の供給によって、銀行はより容易に融資できるようになるとのことだった。明らかに彼は当時、基礎的な銀行オペレーションを理解していなかったし、今でもまだ理解できずにいる。
私はまた他のブログ記事で、準備預金とインフレーションについてのBISの議論を検討したいと思う。(訳注:続きはこちら
量的緩和が機能しないであろう理由は極めてシンプルだ――信用は、民間部門からの資金需要があれば拡張するだろう。日本には、そうした資金需要を欠いていたのだ。この点についての詳しい議論を知りたければ、Balance sheet recessions and democracy (邦訳) という私の記事を読んでほしい。
リチャード・クーは2003年出版の彼の著書 Balance Sheet Recession: Japan’s Struggle with Uncharted Economics and its Global Implications(John Wiley & Sons) (邦題:デフレとバランスシート不況の経済学) でこう述べている:
量的緩和が日本で機能しなかった理由は極めてシンプルで、それはBOJの職員や地方市場の観測者から頻回に指摘されてきた:日本の民間部門には、資金需要がなかったのだ。
中央銀行から供給された資金がインフレを起こすには、それらが借り入れられて支出されなくてはならない(訳注:この表現はここまでのミッチェルの趣旨的にはやや間違っている表現だ。おそらくミッチェルに言わせれば、これこそ「主流派のコンセプトに毒された読者によって誤解されたミスリーディングな言葉」ということになるのだろう)。それが経済に貨幣が循環して需要を増加させるための唯一の方法だ。しかし日本の長期不況においては、バブル崩壊の後に債務過剰となったバランスシートが残された企業家たちは、彼らの金融的健全度を回復することに集中せざるを得なかった。過剰な債務を保持する企業は、ゼロ金利であっても借入を拒絶した。それが、バブル崩壊後の15年に渡ってゼロ金利だけでなく量的緩和も経済を刺激できなかった理由なのである。
アメリカの政治は破滅的であり、統治政府による公共目的推進のための財政的手段の使用は制約されることになるだろう。
私の見方では――現代金融経済のオペレーションの本質への理解の上では――政府に対してイデオロギー的な制約が課され、数百万人の不幸な労働者たちを失業させ、彼らとその家族に貧困生活を強いるよう意図されているのを、我々国民が看過している、という状況は異常事態である。
十分な雇用が存在しないときの答えは簡単だ。より多くの雇用を作ればよい。国家政府はいつでも公的純支出を拡張することによって十分な雇用を創造することが出来る。雇用創造を確実にする最も直接的な方法は、公的部門自身の中に雇用を創出することだ。
しかしポール・クルーグマンのような影響力のある経済学者たちがこのような現実を避け、その代わりに、「金融システムオペレーションへの誤解に基き、政策的主導権の転換において何度も何度も無意味だと証明され続けてきた経済学的観念」を推進するようなら、そうした事態への不信感を隠せない。
もう一つ重要なポイントは、国家政府が不換紙幣金融システムの中で保有する雇用機会を、政治システム上に一層反映させる行動主義が必要である、ということである。


ビル・ミッチェル「準備預金の積み上げはインフレ促進的ではない」(2009年12月14日)

Bill Mitchell, “Building bank reserves is not inflationary“, Bill Mitchell – billy blog, December 14, 2009.
今日私は仕事でDubboにいる。Dubboはニューサウスウェールズ州の西部で、州の中でも外れた辺鄙なところにある。普通の人々はしばしば通り過ぎてしまうこのオーストラリアの田舎では、美しい景観が楽しめる。私のこの実地見学は、この地域の土着のコミュニティについて私が継続的に行っている研究と関係がある。この研究についてはいつか報告しよう。さて、今日の記事は、私が昨日に準備預金について展開したテーマの続きだ。昨日の記事―Building bank reserves will not expand credit邦訳)では、準備預金の動態について検討したが、時間が無かったので、いくつかの論点を残してしまっている。一つの論点は、準備預金拡張がインフレーションに与える影響の可能性についてだ。これは、危機に対する金融政策の効果に関する時代遅れな考えについての主流派たちの病的熱狂の核心的部分だ。結論については安心してほしい――金融政策についての唯一の問題は、それが無効であり、より大きい財政政策の努力が必要だというところだ。
この記事の目的は、昨日からスタートさせた準備預金についての2パートに渡る記事のシリーズの結論を下すことだ。この記事は――他の表現法によって――現代金融理論(MMT)の重要な原則の一部をよりいっそう明らかにするだろう。MMTの原則については、Deficit spending 101  Part 1 (邦訳|Deficit spending 101  Part 2邦訳)|Deficit spending 101  Part 3邦訳) および他の記事にて展開している。MMTの最重要原則を網羅した記事の総集編が見たければ、Debriefing 101をご覧いただきたい。
昨日の記事―Building bank reserves will not expand credit (邦訳) では、BISの最近のワーキングペーパーであるUnconventional monetary policies: an appraisalを、金融システムのオペレーションの各側面を説明するために利用した。金融システムオペレーションは、MMTの核の部分であり、主流派マクロ経済学が首尾一貫した形で描写できていないものでもある。
具体的な論点は、ポール・クルーグマンが現在実行している「量的緩和が融資刺激に必要だ」という政策提案についてだった。私は量的緩和が融資刺激に関しておおよそ不能であるということと、融資は準備預金に制約されていないが故にそれが驚くべくもない当然のことであるということを示した。クルーグマンは、金融政策と準備預金を関連付ける銀行オペレーションについて明らかに理解していない、という結論が得られた。こうした理解を発展させていくのがMMTの際立った核心的特徴である。
このBIS研究ペーパーを用いるのにはわけがあって、というのは、このペーパーは、銀行の専門家たちもまた、(主流派の論説に出てくる言語慣習を利用してはいるものの)MMTの重要部分を理解していることを示しているからだ。このことをさらに示すために、準備預金が金利政策とインフレ実現可能性に与える影響について、このBISワーキングペーパーをさらに検討していくつもりだ。
通常(現在のような顕著な経済危機でない間)は、金融政策は”短期金利に関するものだけだと定義される”。その場合、中央銀行は”政策金利”を設定するというシグナルを出す―この政策金利は、中央銀行の政策目標を達成するよう計算された金利である。しかし、同時に中央銀行は流動性管理オペレーションに従事しなくてはならない:
…金利が有効なものになるのを手助けするために: 中央銀行は、市場の”参照金利”、典型的にはオーバーナイト金利が、望ましい金利水準の近傍を確実に至るようにする。そのために、流動性管理オペレーションは、純粋に技術的で支持的な役割を果たすことになる
MMTを理解するためには、金融政策領域における流動性管理オペレーションのアイデアと、財政政策分野における政府支出と税収発生の影響とを結び付けることが重要だ。主流派経済学のいかなる教科書を読んでも、これら二つの領域を首尾一貫した形で結び付けているものはないだろう。実際、主流派経済学のパラダイムはこの二つの領域に対して誤った説明を行っているため、間違った結論を導いている。(例えば、主流派経済学者は財政赤字が金利を引き上げると主張している)
政府が支出を行うとき、銀行の準備預金口座への記帳が行われる(あるいは、銀行間決済システムに対する小切手を発行する)。そして、全ての取引が完了されたのちには、準備預金は拡張しているのである。逆に、政府が徴税を行うときは、銀行の準備預金口座が引き落とされ(あるいは現金or小切手を受け取って)、結果的に同額の準備預金が減少する。
こうした取引は政府と非政府部門との間の垂直取引 (邦訳) であり、上記のように準備預金の創造と破壊を生ずるのである。必然的に、政府が財政赤字(徴税を越える支出)を計上したら、準備預金に与える影響は全体では正になる――全体では準備預金は拡張するのである。逆に、政府が財政黒字(徴税未満の支出)を計上したとき、準備預金に与える影響は全体では負になる――全体では準備預金は縮小するのである。
こうした財政的影響を理解することは重要だ。なぜなら、中央銀行による流動性管理オペレーションがどのような方法で行われているかを理解する手助けになるからだ。そうしたオペレーションは財政政策からは分離されているが、本質的に財政的影響とリンクしている。
そのリンクが形成される理由は、支出する際に”資金調達する必要がある”からではない。それは主流派経済学の教科書が作り上げているよくある誤解だ。自国通貨(own currency)を発行できる統治政府は、自身の支出に対する資金調達を必要としない。こうしたことは明白な事実なので、コメンテーターたちが逆の主張に固執しているという現実は私を絶えず驚かせている。
(政府債務発行や、租税といった)全ての財政的企図は、表面的には”資金調達オペレーション”だとみられているかもしれないが、実際にはそうした類のものではない。以下に続く議論で、政府債務発行が金融システムの中で果たす役割を明らかにするつもりだ。政府のレトリックに従えば(政府債務発行は資金調達オペレーションであるという)違う結論を出してしまうかもしれないが、日常的な流動性管理オペレーションの厳密な現実は(理解できれば)真実を明らかにする――政治的スタンスを現実から引き剥がすのである。
BISが言うには:
準備預金を通じて金利政策を実行する際の支点は市場だ。しかも特定の市場である。準備預金に対する支配力を通じて、中央銀行は準備預金の量とその(マージナルな)供給期間を設定できる。そうして、中央銀行は準備預金の機会費用(”価格”)であるオーバーナイト金利を自由な水準で設定できる。その唯一の理由は、中央銀行は自ら望めば、選択した価格で無制限に売買する用意があるからである。この事実は、中央銀行の出すシグナルの信頼性の源となっている。
重要なことだが、このシステムの中では金利は準備預金量から完全に独立して設定することができる。同じ準備預金量であっても、全く違う金利水準との共存があり得る。裏を返せば、同じ金利であっても、全く違う準備預金量との共存があり得るのである。重要なのは、政策金利に応じて準備預金に報酬を発生させる手法である。我々はこの手法を”分離主義”と呼称している。これは残りの分析において広範に渡る含意を持つものである。
彼らが参照している「シグナル」とは、アナウンスされた政策金利・ターゲット金利のことである。あなたがたもご存知の通り、中央銀行(財務省と合同で統合政府部門を構成する不可分要素)もまた収入制約を持たない――中央銀行は、準備預金を好きな価格で無制限に売買できる。
分離主義については昨日のブログ記事―Building bank reserves will not expand credit (邦訳) にて検討した。以下の議論では、”重要なのは、政策金利に応じて準備預金に報酬を発生させる手法である”という文言について明らかにしていく。
BISはこの議論を進めるために以下の図を用いている。この図は彼らのペーパーの4ページにあり、金融政策と商業銀行の利益追求目標との関係の中でどのような異なる準備預金付利スキームが運用されるかを理解するのに役に立つ。
図の中の様々なパラメータについては以下の通りに定義されている:
・rp=中央銀行の金融政策金利――中央銀行が自らの政策目標に近づくと信じている金利
・ro=インターバンク市場における準備預金の需給で決定されるオーバーナイト金利。インターバンク市場では、商業銀行がオーバーナイトで準備預金を貸し出したり獲得したりすることができる。システム全体で準備預金の超過がある場合は、インターバンク市場の取引は準備預金超過を解消することが出来ない。こうした場合は、中央銀行による吸収オペ(政府債務売却)のみが超過準備を解消する唯一の手段となるだろう。同様に、システム全体で準備預金の不足がある場合は、個別の商業銀行の保有量に関係なく、中央銀行による準備預金注入だけが不足を埋め合わせることが出来る。
・rE=オーバーナイトでシステムに残存する超過準備に対して、中央銀行から商業銀行へと支払われる金利(訳注:超過準備付利のこと)
・Rmin=決済目的に必要な準備預金の最小量。準備預金の移動を必要とする全ての日常的取引の決済を整然と実行するために、銀行はその量を保持する。
・R*=準備預金の均衡量。この均衡量は、銀行が決済目的に必要な最小量の準備預金と、競争的金利で所得を得られる超過準備を保有するときに達成される。均衡は、インターバンク市場でそれ以上の取引が無いという事を含意する。
この図をどう理解したらよいだろう?
ここでは2つのスキーム(Scheme1とScheme2)が示されている。Scheme1では、中央銀行が、政策金利を下回るサポート金利(rE)をオーバーナイト準備預金に支払うという通常の状況が示されている。オーストラリアでは、サポート金利は基本的に目標金利を25ベーシスポイント下回る。ニュージーランドでは、ニュージーランド準備銀行がrE=rEと設定してきた。(訳注:おそらく誤記? 政策金利=サポート金利ということが言いたいのではないかと) 最近まで、日本銀行とFRBはrE0として設定していた。
Figure1で記述されている金融システムでは、平均残高でみた必要準備が課されていない。(訳注:法定準備は普遍的な制度ではなく、カナダ、イギリス、オーストラリアなど、法定準備の存在しない国は多い。参照)したがって、BISの著者によれば:
…銀行がオーバーナイトで保有する必要のある準備預金量、すなわちRminは、完全に銀行の決済ニーズで決まる。決済ニーズには、予備的なものも含む。こうした決済需要は実施された全ての決済取り決めに依存し、事実上金利からは独立である
ペーパーによれば、銀行の超過準備需要(DD)は垂直(短期金利(オーバーナイト金利)とは無関係)である。なぜなら、銀行は確実の決済需要を確実に満たすだけの最小の準備預金(Rmin)だけを保持しようと望むからである。その水準は金利によって決定するものではない。中央銀行は、超過準備に適用される付利アプローチとは関係なく、上記の必要最小量の準備預金が常に利用可能な状態を確保しなくてはならない。もし中央銀行がその水準の準備預金の供給に失敗したなら、”オーバーナイト金利の著しい変動”が結果的に生じてしまうだろう。
BISは以下のように詳説している:
あらゆる超過準備は、オーバーナイト金利を、超過準備付利(ゼロ、あるいはスタンディング・ファシリティの金利)(訳注:スタンディング・ファシリティについて)が設定する底辺にまで導くだろう。というのは、銀行は不必要な準備預金をオーバーナイト・インターバンク市場に貸し出して処分しようとするからである。あらゆる準備預金不足は潜在的な決済困難につながり、オーバーナイト金利は許容不能なレベルまで上昇するか、一日貸出ファシリティが設定する天井にまで到達するだろう。ひとたび準備預金需要が満たされれば、中央銀行は、望む金利水準を示すことによってあらゆる水準のオーバーナイト金利を設定することができる。
さて、付利スキームはどのように重要なのだろうか? Scheme1では、利潤追求型の銀行は、決済用の最小量を超える超過準備を縮減しようとするだろう。なぜなら、”サポート金利”がオーバーナイト金利より低いからである。
もし(Rminを越える)準備預金がある場合:
準備預金保持による機会費用(ro– rE)の存在は、Rminを越える超過準備が存在するとき、銀行がこの超過分を貸し出そうとするだろうという事を含意する。そうすると、銀行はオーバーナイト金利をrEまで押し下げてしまうだろう。そうして機会費用は除去される。
したがって、決済用に必要な最小量を超える準備預金が存在するときはいつでも、銀行はrE(中央銀行から付与されるサポート金利)を越えるリターンを求めてインターバンク市場に準備預金を貸し出そうとするのである。もしrE=0なら、中央銀行が野放しにする限りは、オーバーナイト金利はインターバンク市場の融資競争によってゼロまで下がるだろう。
こうして得られる明白な含意は、中央銀行はそのとき目標短期金利のコントロールを失うという事である(rp>ro)。こうしたケースでは、中央銀行はインターバンク市場の動きを締め付けるために介入しなければならないし、そのために中央銀行は、商業銀行に対してrpに見合うリターンの代替的類似資産を準備預金の代わりに提示する。それは政府債券である。故に、政府債務発行は、正しくは、中央銀行が政策目標金利をコントロールするための手段であると理解されるのである。
Scheme2では、中央銀行は商業銀行の超過準備(決済用に必要な最小量を超える分)に対して政策金利に等しい付利を支払っている。この場合では:
…超過準備保持による機会費用は存在せず、決済用の最小量が満たされている限り、銀行は準備預金量を気にしなくなるだろう
したがってこの場合は商業銀行に対して公的債務を売りつける必要はない。サポート金利を政策金利に等しい値に設定することによって、中央銀行は政府債務に等しいものを商業銀行に提示しているのである。そうした支払い(訳注:中央銀行による超過準備付利)は、商業銀行が超過準備保有を削減する必要性を完全に解消し、銀行は代替有利子資産(例えば公的債務)を求めることなく巨大な準備預金を喜んで放置するだろう。
関連付けられるその他の重要ポイントは、準備預金における財政政策の影響についてである。我々が知っているように、財政赤字は超過準備を創造する。このケースでは、財政赤字は流動性システム(あるいは現金システム)にダイナミクスをもたらし、それによって金利は(上述のように)インターバンク市場の競争を通じて大いに低下してしまう。これにより中央銀行は、もしその特定の金融政策スタンスを維持するのであれば(訳注:政策金利を維持するならば)、(準備預金を吸収するために)債務を発行して商業銀行に売るか、政策金利に見合うサポート金利を支払うかのどちらかを行わなくてはならなくなる。
こうした状況では、政府債務発行は財政赤字によって生じる金利の(サポート金利への)下落を防ぐ。財政赤字それ自体は金利に対する上昇圧力を齎さない。流動性管理オペレーションに関する金融オペレーションが金利の下落を防ぐのであって、それは全く別物なのである。
全てを理解すれば、主流派経済学の教科書の関連チャプターや金融財政政策について精通しているとされている解説のほとんどが何故甚だ間違っているのかについても把握できるだろう。
準備預金とインフレーション
BISペーパーの後半で、著者たちは次の疑問を検討している: ”準備預金によるファイナンスは特別にインフレ促進的なのか?” 昨日の記事――Building bank reserves will not expand credit (邦訳) を思い出してほしい。ポール・クルーグマンは、現時点において再び量的緩和が望ましい政策であると提唱した。量的緩和が民間部門に将来的なインフレーションを予想させるからだという。彼はQEを準備預金の拡張と定義づけた。
次に、インフレ予想は、(ゼロ金利、あるいは非常に低い名目金利になっている状況下において)実質金利がマイナスになると”貯蓄者と投資者”に判断させるだろう。クルーグマンによれば、このことは銀行融資需要を刺激して経済を始動させるのだという。
したがって、この議論の重要な部分は、「準備預金の積み上げがインフレ促進的である」というところなのである。
BISの著者たちが言うには:
準備預金を通じたファイナンスによるインフレ促進を強調する主張は、最初の疑問に極めて密接に関係している。もし準備預金が融資追加に貢献せず、短期政府債務の近似代替物であるなら、インフレ加速効果の発端を見ることは困難だ。総需要、およびそれによるインフレに対する効果は、中央銀行がどのようなバランスシート政策を選択するかに関わらず、極めて似通っている。例えば、銀行システムにおいて、銀行が一週間満期の中央銀行債あるいは財務省証券を保有する場合に比して、オーバーナイト準備預金という形で中央銀行に流動性資産を保持することがどのようにしてより一層インフレ圧力を高めるかは明らかではないのである。
同じ議論が政府債務の”マネタイゼーション”に関しても適用できる。マネタイゼーションというのは、中央銀行が政府債券をプライマリーマーケットあるいはセカンダリーマーケットで購入することだ。ここでの問題は、準備預金創造を通じた政府支出のファイナンスが、(財政拡張による総需要のブーストはさておいて)インフレーションを齎すか否か、というところである。
第一に、BISの著者たちは銀行システムにおけるオペレーションは理解しているが、MMTのパラダイムには則していないことがわかるだろう。”資金調達手段”(financing medium)といった用語法からそれがわかる。こうした用語法は、このペーパーに見るように銀行家たちにとっては通例ではあるものの、極めてミスリーディングだ。中央銀行は、準備預金の創造によって政府支出の”資金調達”を行ったりはしない。準備預金は政府支出によって創造されるのであり、既に論じたように、中央銀行の金融政策スタンスに応じていくつかの選択肢を中央銀行に与える。中央銀行によって遂行される金融オペレーションは、”資金調達”オペレーションではなく、正しくは流動性管理オペレーションであると理解される。
その上、中央銀行が公共支出をマネタイズしつつプラスの目標金利を維持する(そして政策金利を下回るサポート金利を支払う)という考えは不可能である。もし中央銀行はそれを実行しようとしたら、銀行は超過準備を削減しようとし、そうして生じるインターバンク市場の競争によって中央銀行は政策金利のコントロールを失うだろう。中央銀行は、超過準備を吸収するために公的債務を売却するか、超過準備に支払うサポート金利を政策金利と同じ水準まで引き上げなければならなくなる。主流派経済学の教科書や研究記事ではこのような論理への理解を得ることはできないだろう。
第二に、Building bank reserves will not expand credit (邦訳) において、我々は準備預金の拡張が銀行融資を増加させないことを示した。準備預金の拡張が銀行融資を増加させるというアイデアは、銀行が融資の前に準備預金を必要とするという誤った理解に基づいている。そんなことは疑いなく絶対にないのだ。この点において、主流派マクロ経済学の教科書は完全に間違っている。
この論点について、インフレーションの分析は生産キャパシティに対する総需要の状態と関係しているということを理解するのが肝心だ。信用拡張は支出増加を示すが、それ自体はインフレ促進的ではない。名目支出成長は、もし企業が利用可能な生産キャパシティを保持しているなら、企業からの実物的反応――生産と雇用の拡大――を刺激するだろう。企業は、彼らの製品やサービスの需要増大に対して、値上げで反応することには消極的だろう。なぜなら、そうした反応は企業にとって高コストである(カタログを改訂しなくてはならないetc)し、企業は市場シェアを保持したいし、競争相手が値上げに追随しないことを恐れるからである。
したがって、(特定の資産区分に生じる価格バブルではなく)普通のインフレーションは、利用可能な生産キャパシティがある間は問題にはなりにくい。高い需要があるときでさえ、企業は通常、需要急騰に対応可能にするために予備の生産キャパシティを持っている。経済がかなりの期間の高い需要圧力を受けたときにのみ、インフレ圧力は明確になり、需要を引き下げるような政策が必要になる。(例えば、支出カットや増税など)
その上、支出成長は、名目需要成長の前に生産キャパシティ拡張を後押しする。生産キャパシティに対する企業の投資はその例であり、政府による生産的インフラ(人的資本育成も含む)への支出も同様である。したがって、全ての支出が名目支出成長と利用可能な生産キャパシティの間のギャップを縮めるわけではない。
さて、BISの著者たちは、インフレーションの問題を、中央銀行が商業銀行に提示している付利の点から考察している。
超過準備付利が政策金利を下回っているケースでは、準備預金注入は預金ファシリティ付利によって出来た底辺にまでオーバーナイト金利を引き下げるだろう。ゼロにもなり得る(Scheme1)。これは金利政策の緩和と同等だ。結果として、発生するあらゆるインフレ圧力は、金利変動に伴う通常の総需要拡張におおよそ起因するだろう。
したがって、金融政策設定ではなく生産キャパシティを越える最終的な支出がインフレーションを起こすのである。しかし、こうした議論はどれだけ総需要が金利の動きによく反応するかに依存している。主流派経済学では、支出が金利に対して比較的敏感に変化すると想定されており、彼らがインフレーション・プロセスを実現するためにインフレ目標を提唱する理由はそれである。
MMTにおいては、通常の範囲での政策金利変化が劇的に支出を変動させるという確信はあまりない。理解しておかなくてはならないことは、そこに二つの考慮すべき側面があるということである。資金調達のコストの側面――この側面においては、金利の上昇は(所与の投資収益期待において)おそらく資金調達需要を引き下げるだろう。そして所得の側面――この側面においては、金利の上昇は債券保有者の所得を上昇させ、次に支出を上昇させるだろう。この影響は投資にも帰ってくるだろう。なぜなら、投資家は、借入コストの上昇に直面しているだけでなく、将来の所得への信頼の強化も感じ取るからである。
したがって、そうした分配上の複雑性は、金利の変化が総需要を操作する効果的な方法であるかどうかを明確に結論付けるのを難しくしている。金利変化はまた、とにかくもっとゆっくりと間接的に働くのであり、需要における他の影響の中から金利変化の影響を抽出してくるのは極めて難しい。
Scheme1において、公的債務の売却が超過準備を吸収しオーバーナイト金利が政策金利以下に下がるのを防ぐというのは重要なポイントだ。この意味では、(どれだけ総需要が金利変化に敏感であっても)何のインフレ促進効果もないだろう。
Scheme2(サポート金利=政策金利)について、BISは以下のように述べている:
超過準備が政策金利分の付利を受けているか、あるいは金利が既にゼロ制約に嵌っている場合は、超過準備の機会費用がゼロなので、超過準備の拡張はオーバーナイト金利に何の影響も与えない(scheme2)。インフレに対する何かしらの追加的な影響が存在した場合は、それは主に、擬制債務管理オペレーションが誘発するであろうイールドカーブ平坦化による総需要への影響に起因するだろう。例えば、もし仮に中央銀行が長期国債購入によって準備預金を注入したとすると、イールドとインフレに与える全体の影響は政府の資金調達を長期から超短期にリバランスしたのと全く同じになるだろう。実際、そうした”オペレーション・ツイスト”は財政当局それ自体で達成可能である。
これは複雑に聞こえるかもしれないが、要するに長期金利の変化が投資を刺激し、実物キャパシティの吸収力を越えて迅速な名目支出成長を導くだろう、ということだ。
言い換えると、起こりうるインフレ効果は支出サイドから生じるのであり、中央銀行が行う流動性管理オペレーションに起因するものではないということである。
BISはいわゆるマネタイゼーションについても考察している:
より一般的に言って、マネタイゼーションによるインフレの可能性は、大部分は、金融当局によって対応される財政政策(=利上げの手控えを伴う財政政策)を通じた総需要的影響に起因する。中央銀行の対応というのは、インフレ促進的な政府支出の資金調達(準備預金という形であれ、短期政府証券という形であれ)それ自体ではなく、長期にわたる不適切に低い金利設定である。批判的に言えば、これらの二つの側面は政策論議において一般的に区別されていない。なぜなら、一般のパラダイムは金利とバランスシート政策の区別に失敗しているからだ。通常の準備預金需要に関して普及している想定では、一方が見られたらその片割れも見られる:より多い準備預金はより低い金利を含意する。しかし、我々がずっと強調してきたように、これは事実とは異なる。そして今回の危機における金利とバランスシート政策の分離は、そのことを再び分かりやすく裏付けた。
マネタイゼーションに関する既述の私のコメントを見てほしい。このことは、政策金利が既にゼロであるか、サポート金利が政策金利と一致しているときにのみ起こり得るだろう。その場合、準備預金の積み上げは全体での純粋な財政的注入に伴うだろうが、既に論じた通り――経済の実物キャパシティに対する支出成長が起こす事象とは本質的に無関係だ。
もし総需要が金利設定に対して比較的非感応的であるなら、このポイントはいずれにせよ無関係になる。しかし、仮に金利の変化が、「低金利が高い金利より拡張的である」という風に支出に対する影響を持つなら、そのときゼロ金利政策を伴う財政拡張は経済刺激的なものになるだろう。重要なのは、マネタイゼーションが(主流派が主張するような)本質的にインフレ促進的な代物であるというわけではないということだ。
そうしたマネタイゼーションは生産キャパシティのフル活用を達成するために必要な財政注入の程度が小さくなることを意味するに過ぎない。(訳注:つまり、マネタイゼーションを行えば、基本的にその分だけ低金利になるので、需給ギャップを埋めるために必要な追加的財政政策の量が少なくて済む、という意味) 政府はいかなるときでも、総支出を経済キャパシティにマッチさせる能力を持つのである。
私がこの記事と昨日の記事を書いたのは、MMTのメインの考えのいくつかについてより深い議論を提供するためだ。BISのワーキングペーパーを用いることで、”彼らの言語”を利用しつつMMTの重要な支柱を表現することが出来た。違う言語を用いることは、時には、思い込みを克服して複雑な事例に対する理解を広めるのに役に立つ。
しかし、誰にとっても明らかであるだろうが、主流派経済学の教科書の金融システムの描写、及び財政政策による金融システムの利用法と金融システムにおける影響の描写は完全に間違っている。これらの教科書およびこれらの教科書を使った授業だけで勉強している学生は、自身の学識の中に金融システム機能の間違った印象を残すことになってしまうだろう。
彼らのうちの一部は政府の政策決定部門に職を得て、そこで金融システムに関する間違った見方を採用することになるだろう。乏しい政策成果に甘んじ、政治的リーダー用にばかげたスピーチが書かれたとしても、何の不思議もない。
主流派経済学を修めた他の人々はジャーナリストになり、それによって生じる問題をあなたがたは目の当たりにしている。
追伸
一夜明けて、我が友人のMarshall Auerbackからメールを受け取った。彼は最近ニューカッスル大学にて訪問講義を行っており、執筆しているNew Deal blogがRoosevelt Instituteから出版された。彼はこのBIS研究ペーパーが重要な寄稿だと考えている。なぜなら、それがMMTでない経済学者たちによって書かれたものであり、彼らは(金融用語の利用法から見て)明らかに主流派経済学のパラダイムの中で議論を行っているにもかかわらず、現実世界の金融システムを統治する金融オペレーションを理解しているからである。
Marshallは私がBISレポートから行った以下の引用部分に言及していた:
資金(銀行が保有する準備預金)がインフレ促進的になるためには、それが借り入れられ、支出されなくてはならない。
以下に示す彼の反応は、全て引用するに足る価値があると私は思う。私がほんとうに興味深いメールを受けたことがこれを見れば分かるだろう。(-:
Marshallは以下のように書いている:
これは、私がオーストリア学派、財政ハト派、それ以外の人々に対して明らかにしようとしてきたポイントである。財やサービスがマネーストックの変動によって価格改定される、という風ないかなる魔術的メカニズムも存在しない。貨幣(money)は財に追随するものではない。それはごまかしだ――貨幣はそれ自体で機能する代物ではない。そこには(訳注:貨幣の)”市場”は存在しない――そこにいるのは市場メカニズムの制約の中でふるまい、活動する人々だ。貨幣を借り入れ支出する人々は、財やサービス(及び金融資産や有形資産)に代価を支払う。もし(準備預金としての)貨幣が借入・支出されるのではなく、創造されるのであれば、そこにはすべての価格を自動的かつ神秘的に変化させる市場メカニズムなど明らかに存在しない。貨幣の相対供給量変化はあるかもしれないが、それが生産市場自体と無関係に自動的に相対価格の変動を起こすような市場は存在しない。市場では、売り手が財やサービスの価格を提示し、買い手が入札するのである。
BISは、金融バランスおよび金融安定性について明確に思索し、著述し、提案を行おうとしている数少ない公式組織の一つであり続けている。このことは、私の同僚であるカナダ人William Whiteの遺産であり、Claudio Bolioその他によって運営されていることと大いに関係がある。この文書を見ての通り、BISは現在主流派マクロの幻想を公然と粉砕している。とても大きな一歩だ…しかし、クルーグマンの「不発」を止めることは出来ないだろうし、BISがMMTに既に賛同しているというわけでもない…しかしBISは真実にかなり近づいてきている。
ここで終わらせて、Dubboへ向かう飛行機を捕まえに行くとしよう。Dubboはニューカッスルからいくには辛い場所だ。シドニー空港に向かう片道三時間の電車にのってから、西へ飛ぶ飛行機に乗らなくてはいけない。
スプリンクラーの穴が壊れているのに水の量を増やしても
そりゃ水は行くだろうが効率が悪い
ちゃんと個別に直してから給水した方がいい
リフレと財政出動の関係も同じ

2 Comments:

Blogger yoji said...

招き猫 (@kyounoowari)
2019/07/28 5:07
ノーベル賞受賞のシムズ
「マイナス金利の深掘りはデフレ的に働く」
本来なら国債の利払いを通じて
政府→民間
への所得移転を逆転させること

0金利の長期化も同様で
政府→民間
への所得移転を無しにすること

ケルトンさんの量的緩和等の金融政策の問題点で言いたいことはこのポイントでしょう

Twitterアプリをダウンロード

1:12 午後  
Blogger yoji said...

以下まとめサイトより

・7月17日の講演の方で、80年代の米で、金利が上がったのに逆に不動産投資が過熱した例を挙げてたはず。
日本でもバブル期に似たような現象が確認されてるわけだよね。
少し前のインタビューでも「日銀はゼロ金利を維持しろ」みたいなこと言ってたはず。

・これは「利上げが自動的にインフレや景気を抑制する」などの、能天気な思考に対してのもので、
短期も長期もそんな単純なわけないじゃんと、反対の効果の一つを強調しているだけで。

・MMTの金融政策無効論がまとまったものとして、Fullwiler[&Wray]の "Quantitative Easing and Proposals
for Reform of Monetary Policy Operations" levyinstitute.org/pubs/wp_645.pdf というWPが分かりやすそう。

・ケルトンが経済はパブロフの犬では有りません、利上げに対して反射的に反応したりしませんよ説明してたな。

11:49 午後  

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