効用関数と無差別曲線、および生産関数を立体図で説明している本は少ない。
西村和雄『経済数学早わかり』(1982)『まんがDE入門経済学』(1990,1999)、武隈慎一『ミクロ経済学』(1989,増補版1999)、奥野正寛『ミクロ経済学』2008、
神取道宏『ミクロ経済学の力』2014、と以下のサイトは数少ない例外。
特に西村『経済数学早わかり』は古い本なのに立派だ(1982年初版。ちなみに『まんが~』
は、1990年第一版、1999年改訂第二版)。
CG、グラフィック技術の向上で今後は立体的な説明が定番化するだろうが。
『らくらくミクロ経済学』2005,2011でも立体的に教えていた。イラストレーターでの作図に苦労したようだ。下記動画で著者自ら解説している。
「らくらくミクロ経済学入門」第1回(10)茂木喜久雄講師
http://youtu.be/dwonkG-jt9w
西村や八田達夫の採用した一般均衡図式入りフロー循環図が、サミュエルソン経由
であるように、立体図にもルーツがあるのだろう。*
*自己レス
西村が『経済数学早わかり』等で参考文献にあげているファーグスン『微視的経済理論』(上)1966-邦訳1968,1975-邦訳1978で
効用曲面(18~9,67~8頁)や生産曲面or生産関数(160~1頁)が立体的に図解されていた(確認したのは邦訳1978年改訂版)。これが
一般的には嚆矢となるだろう。数学解説で使っていただけの(同じく参考文献に挙げられた)ヘンダーソン『現代経済学』1971,
邦訳1973の付録:数学概説よりもわかりやすい図解だ。
ただし邦訳下巻(邦訳1978)は印象に残らない(472頁に図「経済活動の循環フロー」があるが円環デザインからしてサミュエルソン
よりフランク・ナイト『経済組織』からの受け売りだろう)。
効用関数と無差別曲線:
http://www.biwako.shiga-u.ac.jp/sensei/okawa/tool/hosoku(3).htm
ミクロ経済理論を理解することが出来ない人の中には無差別曲線が何のことか理解できないという人が多い。いや、効用関数のことさえよくわからないという人 もいるのではないだろうか?私も以前ミクロ経済学概論の講義を担当したことがあるが、ここの部分でつまづいている人が少なからずいた記憶がある。ミクロ経 済学における家計の行動目的は効用最大化であり、効用を表す効用関数・無差別曲線が理解できずにミクロ経済学を理解することは不可能だといえるだろう。こ こでは、少々越権行為にはなるが効用関数と無差別曲線について2変数関数のグラフの議論を使って解説したいと思う。
まず、効用関数とは財の消費量と、その財の消費によって得られる家計の満足度である効用との関係を示すものである。
これを数学的表現を用いて表すと
U=u(x1,x2)
Uは家計の満足度を表す指標である効用水準を表す変数であり、x1,x2はそれぞれ第1財と第2財の消費量を表している。この式が表していることは”第1財と第2財の消費量と効用水準にはなんらかの関係がある”ということはこれまでの講義を受けた学生ならわかるだろう。具体的な効用関数の例としてはU=x1x2やU=logx1+logx2などがある。
この効用関数で示される財の消費量と効用水準の関係をグラフで表したものが無差別曲線である。効用関数は式の形から見てもわかるように2変数関数であるから、グラフ化するためには立体である本来のグラフを断面図・等高線を用いて平面化する作業をしなければならない。
ここから先は具体的な数式を用いて説明しよう。講義でも取り上げたU=x1x2の数式である。講義でも説明したように、この数式によって示される各変数間の関係は立体のグラフになってしまい扱いにくく、U=1,2,3,・・・など様々なUの水準について等高線をx1-x2平面に描くことによって扱いやすい平面の図に書き直すほうが便利である。具体的な図を描くと下の図のようになる。
U
3| (
| o o
2| (
| o
1| ( o
|_____X2
\
\
X1
↓
平面化
(上記の立体図を上から見た平面図に変換すると、)
X2
|o
3|
2|_o (U=x1x2=3)
1| |_o o U=x1x2=2
|_|_|_____X1 (U=x1x2=1)
0 1 2 3
効用関数を正確にグラフ化すると上図左のように立体のグラフとなり非常に扱いにくい。このため、ある一定の効用水準Uにおける等高線を描くことによって上図右のような平面図に直すことによってより扱いやすい図へと書き直すことが出来るのである。そして、上図右の各曲線が一定の効用水準を与える財の消費量の組み合わせを表す曲線、すなわち無差別曲線なのである。なぜ、”無差別”曲線というのかは次のように考えると良い。上図右における(x1,x2)=(1,1)と(x1,x2)=(2,1)という二つの消費量の組み合わせについて、高い効用水準を求める家計は必ず(x1,x2)=(2,1)の組み合わせを選ぶだろう。なぜなら(x1,x2)=(1,1)の場合は効用水準U=1であるのに対し、(x1,x2)=(2,1)はそれよりも高い効用水準U=2をもたらすからだ。この場合、家計にとって(x1,x2)=(1,1)と(x1,x2)=(2,1)は与えられる効用水準の意味において差別(区別)されるものなのである。しかし、(x1,x2)=(1,2)と(x1,x2)=(2,1)の比較についてはどうだろうか?この両者の組み合わせは共に家計に対して効用水準U=2を与えるため、高い効用水準を求める家計にとってはどちらかを選ぶことは出来ないだろう。どっちでも同じなのだから。つまり、家計にとっては(x1,x2)=(1,2)と(x1,x2)=(2,1)は差別(区別)することが出来ないものなのだ。このような状態のことを(x1,x2)=(1,2)と(x1,x2)=(2,1)は無差別であるというのだ。つまり、高い効用水準を求める家計にとっては(x1,x2)=(1,2)と(x1,x2)=(2,1)、いや上図右のU=2を表す曲線上のすべての点によって表される財の組み合わせが家計にとっては同じ効用水準を与えるためにどれでも同じ、つまり無差別なのだ。このため、同じ効用水準を与える財消費量を表す曲線のことを無差別曲線というのである。
///////
西村
効用曲面26頁
同、限界効用27頁
同、生産の理論60頁
同、規模に関する収穫逓増 81頁
以下、奧野ミクロ書籍版初版1.2.4、34頁より
2:2:1,83頁:
図表集 - 奥野『ミクロ経済学』
図表集:
2.31
116頁
神取はさらに生産関数関連を立体図で展開、説明している。
/////////
奥野ミクロのように生産関数も立体化するべきだ。
両サイドが似た構造を持つ。さらに財市場と雇用市場が上下で対になる。
以下、参考メモ: ⬅︎輸出 輸入➡︎
➡︎ \/ ⬅︎
\ /\ /
財の需要 財・サービス 財の供給O
お金の流れ------➡︎d市場s⬅︎---------
輸入|支出C 均衡点E_\/ 販売された財・|
へ (=GDP) /\ サービス|
| -------⬅︎s d➡︎------- |
| |購入された ⬇︎⬆︎ 収入| |
| |財・サービス 消費税|補助金 (=GDP) |
| | |政府購入G 産出| |輸出
| | ⬅︎生活保護-- || | | へ
⬆︎ ⬇︎(⬅︎短期国債-➡︎)||(---助成金➡︎ ⬇︎ ⬆︎
\ / ---所得税➡︎【政府】⬅︎保険・法人税)\ /
【家\計】 政府、公的貯蓄|⬆︎政府赤字 【企/業】
/ \ ⬅︎利子・貸付け ⬇︎|(----融資➡︎ / \
⬇︎ ⬆︎ S預金・利息➡︎【銀行】⬅︎利息・取付け)⬆︎ ⬇︎
| | 金融 | |
| | -S民間貯蓄➡︎ 市場 ➡︎投資⬆︎I | |
| |所得Y ➡︎ 直接金融 生産へ| |
| (=GDP) 生産要素 の投入| |
| -------⬅︎d市場s➡︎------- |
| E_\/均衡点 賃金・地代|
|労働・土地・資本 /\ ・利潤(=GDP)
---------➡︎s d⬅︎---------
労働の供給 労働の需要
⬅︎輸出 輸入➡︎
➡︎ \/ ⬅︎
\ /\ /
財の需要 財・サービス 財の供給
お金の流れ-➡︎d市場s⬅︎----
|支出 E_\/販売された財|
|=GDP /\ ・サービス|
| --⬅︎s d➡︎--* |(*産出
| | 消費税⬇︎⬆︎補助金 | | 収入=
| | ⬅︎生保|政府購入 | | GDP)
⬆︎ ⬇︎ 税➡︎【政府】⬅︎税 ⬇︎ ⬆︎
\ /⬅︎国債➡︎||助成金➡︎\ /
家\計 公的貯蓄 企/業
/ \預金➡︎ ⬇︎ 投融資➡︎/ \
⬇︎ ⬆︎⬅︎貸付【銀行】⬅︎利息⬆︎ ⬇︎
| |所得= 金融 生産へ| |
| |GDP 市場 の投入| |
| --⬅︎d s➡︎-- |
|労働・ \/ 賃金・地代|
|土地・資本 /\・利潤=GDP
----➡︎s生産d⬅︎----
労働の供給 要素市場 労働の需要
フロー循環図(マンキュー)、循環的流れの図(サミュエルソン)などが活用している。ケネーなども考慮すべきだが、一般均衡と繋げたのはサミュエルソンが元祖だろうか?
書評メモ:
茂木喜久雄『らくらくミクロ経済学』は効用曲面を立体的に扱っている。
同マクロは45度線を丁寧に扱っている。
簡便4象限法でISLM曲線を導出しているのはマンキュー譲りだろうが、もっとエクセル、イラストレーターの図解機能を駆使していて精緻だ。
クラウディングアウトの説明もわかりやすい。
公務員試験向きなので面白くないが…