月曜日, 10月 19, 2015

『これからの経済学』日本評論社:書評(&クールノー、ビル・トッテン関連)

経済学リンク::::::::::
NAMs出版プロジェクト: 経済学日本人著者入門書
http://nam-students.blogspot.jp/2016/10/blog-post_9.html

『総力ガイド! これからの経済学』日本評論社:書評&目次
http://nam-students.blogspot.jp/2015/10/20150907-1600-httpwww.html (本頁)
NAMs出版プロジェクト: ピケティ関連:メモ
http://nam-students.blogspot.jp/2015/01/blog-post_30.html
クールノー『富の理論の数学的原理に関する研究』岩波文庫:目次
http://nam-students.blogspot.jp/2015/10/blog-post_29.html
   
『総力ガイド! これからの経済学』日本評論社 20150907
経済セミナー増刊 1,600円+税
http://www.nippyo.co.jp/book/6950.html

出版社宣伝文:
経済学はどこから来て、どこに向かうのか? 主流派・非主流派の枠を超え、豪華執筆陣が経済学を根本から問い直す、待望の増刊。

書評:
吉川洋☆の初期経済学者ペティとケネーが外科医だったという話は面白い。経済の循環を血液の循環★のアナロジーとして把握することが有効な時代が確かにあった(吉川「経済がないと経済学はない」は名言。図解された学説史の貧弱さがわかる)。
熱力学モデルは発散するから循環、再生産のヴィジョンがなくなる。
ピケティとの対談で述べていた二重経済モデル、ルイスモデルの重要性を説明していないのは残念だったが、かなり初心者向けに話していてわかりやすい(ワルラスとマルクスがともにプルードン批判から経済学者としての経歴を始めている点が指摘されればもっと良かった)。
中山智香子☆☆の世界システム論は射程が長くことなるアクターを考慮しているという指摘も重要だ。これでピケティと経済学が結びつく。
全体に前半のピケティ特集もピケティ色は薄い☆☆☆☆☆☆。ピケティは経済学と歴史学を統計でつないでいる点が画期的で、ストックよりフローを重視してきた経済学とは肝心のところで噛み合ない。
後半も一人一冊推薦図書を挙げており、全体的にはよく出来たブックガイドだ。
マルクス経済学を排除していないのもいい。
西部忠☆☆☆が進化経済学の項を執筆しているが、一応地域通貨に触れていて安心した。
岩井克人☆☆☆☆や鍋島直樹☆☆☆☆☆にはカレツキに言及してほしかった。出来ればゲゼルにも。
トービン税にすら届かないのだからピケティのグローバル課税はかなり先だろう。
そこに世界統一貨幣は必要か? それはカーボン取引などによって密かに準備されているが、ローカルな貨幣も必要だろう。

目次:
■第I部 経済学のいま

【鼎談】 Discussion経済学はどこから来て、どこに向かうのか? [岩井克人☆☆☆☆×橋本努×若田部昌澄]

【図解! 経済学説史】History of Economics学説からたどる経済学の歴史 [山崎好裕]

【経済学再考】 Re-examination of Economics経済学とはどのような学問か [伊藤元重]
なぜ「主流派経済学」は「主流派」になったのか [山崎聡]
マルクスから見える資本主義の問題点 [的場昭弘]
「経済学批判」はどのような歴史的系譜をもつのか:異端派と反経済学の展開 [佐藤方宣]
『21世紀の資本』は資本主義の失敗を物語るか [二宮厚美]
ある実証経済学研究者の、トマ・ピケティの著作への感想 [神林龍]

■第II部 挑戦する経済学
(1)歴史的大転換に挑む
【インタビュー】歴史の流れと経済学 [吉川洋☆]
【マルクス経済学】社会の地殻変動を把握するトータルな思考 [沖公祐]
【オーストリア学派】市場の機微への深淵な洞察を生み出し続ける独自の歴史と視点[尾近裕幸]
【制度経済学】一世紀の時を経て再生・復活、経済システムの多元性と進化の経済学へ  [磯谷明徳]
【ケインズ経済学】ケインズ経済学の生誕と興隆 [小峯敦]
【ポスト・ケインズ派】「有効需要の原理」を軸に代替理論の構築をめざす [鍋島直樹☆☆☆☆☆]
【レギュラシオン理論】比較制度分析と歴史分析にもとづく経済学の革新 [遠山弘徳]
【新自由主義】自由で、公正で、効率的な市場というスローガンは現実か [服部茂幸]
【政治経済学】資本主義と民主主義、あるいは資本主義と福祉国家の両立は可能か [若森章孝]

(2)経済学のフロンティアに挑む
【インタビュー】サイエンスとしての経済学を始めよう:フューチャー・デザインを目指して [西條辰義]
【進化経済学】生物進化の視点からリアルな市場経済を理解する [西部忠☆☆☆]
【経済物理学】経済物理学の誕生・発展、そして、収穫期 [高安秀樹]
【ファイナンス】ファイナンスはどういう分野か [大橋和彦]
【空間経済学】立地と貿易、そして脱「国境」 [佐藤泰裕]
【行動経済学】伝統的経済学の枠組みを広げて現実の人間行動を描写する [大竹文雄]
【神経経済学】経済行動の意思決定メカニズムを解明する新分野 [田中沙織]
【実験経済学】人間の認知・思考過程を明らかにする [川越敏司]
【マーケットデザイン】制度設計の科学への招待 [小島武仁]
【家族の経済学】家族の役割という古くて新しい問題に取り組む [宮澤和俊]
【教育経済学】教育政策の効果測定に向けて [中室牧子]
【医療経済学】人々の「健康」のために、発展し続ける経済学 [野口晴子]

(3)政策運営に挑む
【インタビュー】経済学と政策をつなぐ [安田洋祐]
【ミクロ経済学】市場と価格の役割に対する理解を深める [林貴志]
【マクロ経済学】賃上げが救う世界のマクロ経済 [脇田成]
【計量経済学】経済行動の数式表現と数値計算 [森棟公夫]
【ゲーム理論】経済学とゲーム理論:歴史と展望 [小原一郎]
【産業組織論】今日の技術と市場を考える [青木玲子]
【厚生経済学】個人の厚生と規範に光を当てる経済学 [後藤玲子]
【公共経済学】市場メカニズムを「補い」、「正す」政府の活動を分析する [村瀬英彰]
【国際経済学】グローバル化でわれわれの生活は悪化するのか [友原章典]
【労働経済学】労働経済学では格差をどう捉えてきたか [黒田祥子]
【環境経済学】多種多様な環境問題を分析する [馬奈木俊介]
【開発経済学】理論と現実に根差した発展メカニズムの探求 [鈴木綾]
【法と経済学】法は希少な資源を配分する [常木淳]
【経済史】歴史学の方法と経済学の知見を統合 [岡崎哲二]

(4)ピケティの問題提起に挑む
【インタビュー】経済学に懐の深さを [中山智香子☆☆]
【グローバル税制】資産格差縮小のための有効な政策手段 [諸富徹]
【所得格差】 格差是正策がなければ経済成長は見込めない [橘木俊詔]【フランスの経済思想】共生のための経済思想:MAUSS(モース) [藤岡俊博]
【対抗的グローバリズム】グローバリゼーションに伴う諸問題の批判的検討 [大屋定晴]

■書評コラム
アダム・スミス 『国富論』 [野原慎司]
リカードウ『経済学および課税の原理』 [佐藤有史]
マルクス 『資本論』 [田中英明]
マーシャル『経済学原理』 [松山直樹]
ピグー『厚生経済学』 [高見典和]
ケインズ 『雇用・利子および貨幣の一般理論』 [伊藤宣広]
シュムペーター 『資本主義・社会主義・民主主義』[酒井弘格]
ポラニー『大転換』 [若森みどり]
ハイエク『個人主義と経済秩序』 [吉野裕介]
フリードマン『資本主義と自由』 [原谷直樹]
ピケティ『21世紀の資本』 [山田知明]

http://www.nippyo.co.jp/book/6950.html
(出版社公式サイトの目次は後出のアマゾンサイトの目次より詳しい。)
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http://www.amazon.co.jp/dp/B0147C9RW8/
Amazonレビュー:
本格的に学ぼうという人の導入に
投稿者 BT_BOMBER トップ500レビュアー 投稿日 2015/9/20
おおまかに言ってピケティ「21世紀の資本」に関する議論と、経済学のサブカテゴリ的な分野紹介を1冊にまとめた内容になっています。ページ数はそれほど多くないですが情報の密度は高いです。
第1部「経済学のいま」は経済学者3名による鼎談と、歴史的な視点が強調された経済学再考のコラム。第2部「挑戦する経済学」は以下の4つのパートに分けて各種分野を紹介しているほか、各パート一人ずつインタビューが掲載されています。ジャンル1:歴史的大転換に挑むジャンル2:経済学のフロンティアに挑むジャンル3:政策運営に挑むジャンル4:ピケティの問題提起に挑む書名にピケティの名前がありますが、彼を大きく扱っているのは主に第1部と第2部のジャンル4になります。あと主に古典を中心に11の経済書に対する書評も掲載。
各分野の紹介は全て2ページ構成、おすすめ文献のコーナーもあるので初めて興味を持った分野についても、とっかかりが得られるはずです。それ以外のコラムでも多数の参考文献が紹介されているので、勉強になると思います。全体的に経済学の基本的なところは押さえてないと辛いと思いますが、学生の人で本格的に研究の道に入りたい人には分野紹介もありますし、導入として良いのではないでしょうか。
一つ気になったのは執筆者がほぼ全員大学に籍を置く人だったこと。多分肩書きに大学名がなかったのは一人だけだったと思います。理工学系だと企業在籍の研究者にも優秀な人がいると思うのですが、経済学ではあまり優秀な人がいないのか、特定分野に偏ってるのか、あるいはただの編集方針なのか。確かに豪華ではあるのですが、企業在籍の人の方が実務寄りの応用話や理論と現実のズレを聞けそうなので、もし編集方針で排除してるのであれば、もったない気がします。

10 人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
玉石混淆(だがそれが良い)。
投稿者 トップレビュアー 投稿日 2015/9/21
書名に「マルクス、ピケティ」とありますが、彼らにスポットを当てているのは「第1部 経済学のいま」のみであり、本書の大半は、現代経済学の各学派・各分野についてそれぞれの専門家が見開き1頁で簡潔に説明する企画(第2、3、4部)となっています。扱われているトピック及び執筆者についてはAmazonの商品ページ「目次を見る」に詳しく書いてあるのでそちらをご覧ください。
通読してみて私が最も印象に残ったのは林貴志教授(グラスゴー大学)の「ミクロ経済学」の頁です。「20世紀初頭から中盤に成立した新古典派ミクロ経済学」についての記述で、「それ以前の経済学者は、自分で何を言っているのかわかっていなかったのである」(p.112)とバッサリ斬った後、淡々と今日のミクロ経済学の枠組みを簡潔(だが明解)に説明した記述は、経済学とは無縁の一市民であっても一読の価値があると思います。本書は、先の林教授とは異なる反主流派(異端派)経済学についても公平に紙面を割いていますが、彼らの記述は林教授らのそれとは対照的に感じられました。異端派経済学――「マルクス経済学」(沖公祐香川大学教授)、「レギュラシオン理論」(遠山弘徳静岡大学教授)、「政治経済学」(若森章孝関西大学名誉教授)――の記述は文学的修辞に満ちていて、何を言いたいのかよくわからない、という印象を受けました。良い意味でも悪い意味でも彼らは林教授の言う所の「それ以前の経済学者」なのだと思います。
もちろん感想は読者それぞれによって異なるのでしょうが、本書が現代経済学における多様なトピックを扱っているおかげで、経済学の様々な立場の好対照が何らかの形で鮮明に感じることができるでしょう。実務家視点ではなく研究者(もちろん理論屋だけでなく実証屋も多く執筆者に加わっています)の視点から書かれているというのも新鮮でした。そういった意味で本書は今までに類書のない、非常に興味深い文献であると断言できましょう。

7 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
蛸壺からの脱却はなるか?経済学の岐路
投稿者 ぺろぺろさん 投稿日 2015/9/22
他のレビュアーの方が述べられているように、経済学の知識をある程度お持ちの方にとっては「良書」です。「マルクス、ピケティ、その先へ」とありますが、第一部では少なくともマルクスと古典派の関係、そして新古典派とケインズ経済学(または新古典派総合)に関して多少なりともご存知ならば、第一部の目玉である岩井克人、橋本努、若田部昌澄の「経済学はどこからきて、どこに向かうのか」と題された対話の妙味が味わえるかと思われます(岩井克人さんはマルクス経済学の影響を受けられたと述べられていますし、若田部先生はどちらかというと新古典派寄りの考え方でしょう)。
ただ、本書の位置づけとしてピケティをマイルストーンにしたかったという編集部の思惑も分らないではないですが、第一部の対談と第二部のインタビュー含め、全体を通して「ピケティ」の限界を指摘するものが多く(もしくは吉川さんのマクロ経済学の課題についての言及)、経済学という分野においては個別事象に関して、分析できる範囲で応用系のミクロ経済学や自然科学をとりいれた経済学分野での研究が主流となっており、マルクス、ピケティのような「一般理論」が各分野の研究者の中で支持されているかというと、そうでもない気がします。
その中で、実は本当に注目すべきは第三部なのではないでしょうか?第三部ではまさに蛸壺化した経済学の各分野で研究されている方たちがその分野に関して簡単に説明し、入門書を紹介するという形をとっており、経済学を学ぶ学生はもちろん一般読者にとっても興味のある分野を探し出すためのロードマップとなっています。特に実験経済学、生物経済学、医療経済学などの応用分野ではまさにいま次々と学問が発展し、現在の学問的問題を各研究者が紹介してくれるため、その分野に入っていくワクワク感があります。
しかし、数理化と自然科学の知見を取り入れ応用社会科学となった現在の経済学の中で際立ってしまうのはやはり、伝統的なポリティカルエコノミーの枠組みを抜け出せなかったマルクス経済学や政治経済学、異端派経済学などの分野でないでしょうか?先の方が述べられているように、修辞的な言葉が多く、彼らが述べている内容と我々が生きる現実との間には埋めがたい軋轢があり、彼らがたびたび新古典派に向ける批判(あまりにも現実を直視していないなど)の批判がブーメランとなっている印象を受けます。
やや批判めいた内容となってしまいましたが、全体として蛸壺化した「経済学」の幅の広さと、「経済学」発展の歴史の中でピケティをどう位置づけるのかを考える上で、もしくはピケティを一蹴してしまうために利用する価値はあると思います。

53頁吉川参照
Amazon.co.jp: 富の理論の数学的原理に関する研究 (岩波文庫 白 110-1): クールノー, 中山 伊知郎
文庫: 251ページ 出版社: 岩波書店 (1936/6/30) 1994復刊
http://www.amazon.co.jp/dp/4003411013
 ゲーム理論にもそのアイディアが活用されている経済学者、クールノーが1838年に刊行した著書。リカードウとマルサスそれぞれの「経済学原理」から20年弱あと、限界効用学派に先立つこと30年弱の著書としてはそのレヴェルの高さに一読して驚く。いま経済学のテキストを開けば出来合いの数学的分析がわかりやすく要約されてまとまっているが、先立つ著書がおしなべて記述的分析に終始して、数学的な操作も四則演算程度だった現状において、しっかり事前に諸前提を手早く提示した上で、代数的な処理や微積分を中心とした解析手法を用い、経済学的な意味づけをそのあとに言葉で解釈してみせるという、リカードウやマルサスの著書の記述から見れば抜群に話が早いまとめ方は、本格的な数理分析の創始者としてのクールノーの明晰さを遺憾なく示している。その質の高さを考えると、数十年後にワルラスやジェヴォンズが再評価するまで理解されなかったのもよくわかる。

 内容を見ていくと、データベースのコメントにあるように独占(monopoly),複占(duopoly),寡占(oligapoly)と進んでその極限として完全競争の場合にまで利潤最大化の議論を進めていく様子が醍醐味になっていて、複占のときの議論、反応曲線やクールノー均衡については昔授業で聞いてぼんやりしていたのが、本人の説明をたどっていくとわかりやすい。
 巻末にはフィッシャーによる数学的注もついて理解を助けてくれる。ただ、漢字が旧字体で文章も旧仮名遣いなのが、読む人にとっては難解に感じるかもしれない。経済分析に数学的手法をどうやって当てはめるかという例として参考になることもあるのではないか。



アントワーヌ・オーギュスタン・クールノー(Antoine Augustin Cournot, 1801年8月28日 - 1877年3月31日)はフランスの哲学者、数学者、経済学者。彼は「限界革命」より半世紀も前に数学的モデルを用いて複占の理論を展開した数理経済学の始祖と評される。 
1838年 『富の理論の数学的原理に関する研究』("Recherches sur les principes mathématiques de la théorie des richesses")を出版する(この本は今日でも経済学に影響を保っている。この本の中で彼は、経済分析において数学の公式や記号の適用を行い、強く非難された。この本はクールノーの存命中はあまり成功したとは言えず、彼は二度も書き直そうとした)。 

一般的評価編集

  • クールノーは主として数学者だったが、経済学に対して重要な貢献を行なった。彼の独占複占に関する理論は今なお有名であるが、今日では多くの経済学者がこの本を近代経済分析の出発点であると信じている。クールノーは関数確率の考えを経済分析に導入した。彼は価格の関数としての需要と供給の一階の条件を導出した。
  • クールノーは、経済学者は数学の道具を、理論がもっともらしい範囲を確定し、より絶対的な条件の中に不確かな事実を表現することにのみ活用しなければならないと信じていた。彼はさらに、経済学における数学の実用的使用が必ずしも正確な数字による精密さと関係しないとの立場を保った。
  • 今日では、クールノーの研究は、計量経済学(エコノメトリクス)の中でも認知されている。また、「クールノーの複占モデル」では、競争的立場にいる両企業がお互いの存在を無視して自企業の行動が相手の反応をあらかじめ計算に入れていなかったが、相手の反応を十分考慮して行こうとする人々の試みがゲーム理論の発展につながっていった。

クールノー均衡編集

  • 2つの企業しかない複占産業で、各企業がライバル企業の供給量(産出量)が変わらないという仮定のもとで、自企業の供給量(産出量)を決定するモデルを「クールノーの複占モデル」という。すなわち、複占状態の場合、1つの企業が選ぼうとする産出量に応じて、他企業が産出量を変えてくるといった戦略上の相互依存関係がありうる。しかし、企業1の産出量の変化によって企業2の産出量が変わらない推測があるという仮定をすると、どの企業にも産出量を変更しようとする誘因は存在しない。このような点を「クールノー均衡」と呼ぶ。
  • 独占企業の最大利潤になる産出量と価格の点を、「クールノーの点」と呼ぶ。
  • 経済学の分野において、彼は寡占理論の分野での研究(クールノーの競争)で最もよく知られている。


西洋経済古書収集ークールノー,『富の理論の原理』
http://www.eonet.ne.jp/~bookman/gennkaisyugi/cournot.htm
 まず、本書の前提となる主著『研究』の功績を丸山徹氏に従って5つ挙げる。1.需要函数概念を初めて明示的に表現したこと。2.ワルラスの一般均衡体系を予示したこと。3.独占生産者の均衡条件を示したこと。4.寡占市場のクールノー均衡(今日的には、非協力ゲームとされるナッシュ=クールノー均衡解)を求めたこと。5.独占、複占から初めて、企業の数が増えるに従って企業は市場支配力を失い、極限には完全競争に至るクールノーの極限定理の証明。である(丸山徹,2008,p.79)。
 「これを出版した年がリカードゥの死からわずか15年後であり、ミルの『経済学原理』(1848)が現れる10年も前であるとはおよそ信じがたい。」(ブローグ,1989,p.67-68)とされるほど時代から屹立した『研究』であるが、その独創性の故か世には受け入れられなかった。そして、『研究』出版の25年後にその第二版とも称すべき『原理』、さらにその13年後に第三版ともすべき『概説』を上梓している。いずれも、『研究』から数学を除く無駄な努力をなしたとして後世の評価は低い。『研究』とは比べようもない書物とされている。
 それでは、なぜ、クールノーは、これらの本から数学を排除しようとしたのか。晩年盲目となってから、数学を使えなくなったためとする論文も見たことがある。これは、盲目の数学者コルモロゴフなどを見ても眉唾である。一般には、『研究』が世間の注目を引かず、出版物としての失敗したことにその理由を求める。クールノー自身『概説』の序文に書いている。「基礎的な思考かあるいは単にその形式か、どちらに誤りがあったかを、1863年の時点で、知りたいと思った。そのため、1838年の仕事に戻り、必要な箇所を拡張し、とりわけ、これらの主題において、こけ脅しの代数的用具を完全に削除した。こうして、その本は「富の理論の原理」と名付けられた。その(『原理』のこと:記者)序文で述べたように、「元の文章を知らしめるのに25年を要したから、何が起ころうとも、他の方法に助けを求めるつもりはない。再度の試みに失敗するならば、不名誉な著者をも見捨てることのない慰めだけが残るだろう。」」(Corot,1877,p.ii)。
 後述するように、もとより『原理』、『概説』は『研究』よりも広範な問題を扱っている。しかし、共通する領域である「交換価値の理論」においても、後の二著が数学を使用しなかった理由として、中山は上記の理由だけで満足しない。さらに具体的に次の二理由をあげる。第一は数学的方法の不毛性である。よく指摘されるように、クールノーの需要曲線は、ゴッセン・ジェヴォンズの如く効用函数を基礎にして導出されたものではない。ただ価格と需要量をグラフでいえば右下がりの連続的な函数関係として捕らえたのみである(クールノーにおいては、横軸が価格)。観察不可能な理論には、基づかない、事実としての「需要の法則」なのである。逆にいえば、客観的事実に集中し、その需要者を考察外とすることは、理論を正確にはするが著しく一面的にもする。価格論が所得分配論と結びつかず、その適用には限界がある。これが中山の云う不毛性である。第二は、部分均衡理論であることの限界の自覚である。「需要の法則」はマーシャル流の部分均衡を表現したものである。一方、クールノーは、全経済組織の相互依存関係を充分に認識していた。他の商品を切り離した数学的な表現方法では、全体観察が不可能であると自認していた。

 次に、具体的に本書全四編の内容を、編をおって見てゆく。主として中山に従って記述するものである。
 第一編は「富」である。この編が主として『研究』に該当する部分である。まず富の概念を明らかにするために、歴史的に法律学と経済学を比較する。法律学は、経済学よりはるかに古からある。人は富なる抽象的概念を有する以前に(私有)財産なる概念を有すること。および、法律学が個人的利害に関係するのに対し、経済学は個人ではなく全体、総量を問題とするからである。経済学の対象は法律学との関係で確立される。広義の経済学は「統計学」、「貨殖学あるいは富の理論」、および「警察・財政・行政」なる三つの部門から構成される。狭義の経済学はこの中、第二の富の理論である。富の理論は数学的法則の概念を適用できる場合にのみ、科学的理論となりうる。しかしそのためには、社会が自由な生産と流通が行われる産業的・市場的段階に達する必要がある。こうして後、生産は力学と比較可能となるのである。
 次いで生産の意義を問う。生産は蒸気機関になぞらえられる。ただし、機械はその能力の最大化を図るに対し、生産は費用の最少化を図る違いがある。生産面から考えると、価格は賃金・利子・原料費等からなる生産費によって構成されるとされるものの、実際流通する商品の価格は、別に消費側の要素にも影響される。こうして、クールノーは需要の法則に辿り着く。
 需要の法則は、前述のごとく、列挙することも測定することもできない多数の精神的原因を排除した、単なる価格と需要量の関係である。『研究』では、「一般に、商品が安価になるほどそれに対する需要は大いになる。…販売量あるいは需要量は一般に、価格の減少に応じて増加する」(クールノー,1936,p.71)函数関係D = F (p) あるいは幾何学的図形で表現したものである。しかし、数学的方法を使用しない本書では、それは価格と需要の相関を表す「表」の形で示される。といっても、この需要表には具体的な数字が書かれているのではない。第一列が価格、第二列が対応する需要、第三列が第一列と第二列を乗じた価値額、よりなる所与の商品の需要表を考える。そうすれば、第三列における需要額が最大となる第一列の価格が存在するであろう…との抽象的な表で論じているのである(本書、p.103)。数学的に最大収益を求めた『研究』に比すべきもない(注3)。
 第二編が「貨幣」である。交換価値の概念、価値標準及び貨幣の経済的機能を論じることは『研究』の第二章・三章に同じ。ただし、『研究』では、進歩した文明状態における理論の理解には不要として歴史的研究の記載はなかった。本書では、古代の貨幣の歴史とフランスの貨幣発達史の記述に第二編の1/3の分量を割いている。歴史が理論を補うものとして、拡充されているのである。
 第三篇「経済体系」は、所得論である。価格論では当該商品以外の商品価格一定とする部分均衡が仮定されている。しかし、実際はすべての商品価格は相互依存し連動している。そして、これら価格は生産者の所得となる。相互依存の経済体系の中での、所得とその変動が論じられている。価格は需要の法則と生産費で決定するので、価格騰落が何れの原因かによって所得に及ぼす影響も異なる。そして、所得の変動を名目的所得変動と実際所得の変動に区分してみている。本編のその後には、内国市場間の流通、国際貿易、課税、人口、労賃と題されている章が続くが、内容に緊密な関連はないとのことである。この第三編は、『研究』の最後の二章(第11,12章)に該当する部分であると思われる。
 第四編は「経済的楽観論」である。内容は国民性から見た経済政策及び自由貿易・保護貿易論の批評で、中山によると形而上学に類するとの評価であるので略する。

  1. クールーノ 中山伊知郎訳 『富の理論の数学的原理に関する研究』 岩波文庫 1936年
  2. 中山伊知郎 『数理経済学研究』 日本評論社、1937年(引用は、『中山伊知郎全集 第二集 数理経済学研究 Ⅰ』 講談社、1973年 で示した)
  3. 根岸隆 『経済学の理論と発展』 ミネルヴァ書房、2008年
  4. マーク・ブローグ 中矢俊博訳 『ケインズ以前の100第経済学者』 同文館、1989年
  5. 丸山徹 『ワルラスの肖像』 勁草書房、2008年
  6. ヘンリ・エル・ムーア 山田雄三訳 「アントアヌ・オギュスタン・クールノーの人物」
    (クールーノ 中山伊知郎訳 『富の理論の数学的原理に関する研究』 同文館 1927年所収)
  7. Cournot, A Revue sommaire des doctrines economiques, Paris: hachette, 1877
  8. Shubik, Martin “Cournot, Antoine Augustin (1801-1877)” in The New Palgrave Dictionary of Economics, Macmillan, 1998


日本経済評論社 - 富の理論の数学的原理に関する研究〔オンデマンド版〕
http://www.nikkeihyo.co.jp/books/view/1625

1838年 『富の理論の数学的原理に関する研究』("Recherches sur les principes mathématiques de la théorie des richesses")
Recherches sur les principes mathématiques de la théorie des richesses, par Augustin Cournot,...
http://gallica.bnf.fr/ark:/12148/bpt6k6117257c/f17.image
Table des matières
Aller à la page de la table des matières
Préface. V
CHAPITRE I. De la valeur d'échange ou de la richesse en général. 1
CHAPITRE II. Des changements de valeur, absolus et relatifs.15
CHAPITRE III. Du change.28
CHAPITRE IV. De la loi du débit.46
CHAPITRE V. Du monopole.61
CHAPITRE VI. De l'influence de l'impôt sur les denrées dont la production est en monopole.74
CHAPITRE VII. De la concurrence des producteurs.88
CHAPITRE VIII. De la concurrence indéfinie.101
CHAPITRE IX. Du concours des producteurs.112
CHAPITRE X. De la communication des marchés.134
CHAPITRE XI. Du revenu social.146
CHAPITRE XII. Des variations du revenu social, résultant de la communication des marchés.173
FIN.


富の理論の数学的原理に関する研究
クールノー著 中山伊知郎訳 岩波文庫1936,1994
目次
訳者小引
原著序文
第一章 交摸価値或は富一般に就いて
第二章 価値の絶対的及び相対的受動に就いて
第三章 為替に就いて
第四章 需要の法則に就いて
第五章 独占に就いて 
第六章 独占生産商品に對する租税の影響に就いて
第七章 生産者の競争に就いて
第八章 無制限の競争に就いて
第九章 生産者の相補闘係に就いて
第十章 諸市場の連絡に就いて
第十一章 社会所得に就いて
第十二章 通商より生ずる社会所得の変動に就いて
附 録 数學に對する註解


☆☆☆☆☆☆:
例えば以下のビル・トッテンの著作の方がピケティに近い。

『アングロサクソン資本主義の正体 ―「100%マネー」で日本経済は復活する』ビル・トッテン 2010
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4492395350
各章冒頭の名言集も興味深い。
信用創造を禁止する100%マネーには賛否両論あるだろうが、陰謀論ではなくちゃんと数値を出している。
特に日本のGDP分析などは有益だ。
ラビ・バトラのような長期的な視野はないが、より具体的だ。

『課税による略奪が日本経済を殺した 「20年デフレ」の真犯人がついにわかった! 』– 2013/2/27 ビル・トッテン (著)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4864710988
こちらの方が上よりも読みやすい。トービン税を主張しつつも政府に頼らず自分で出来ることをやろうというアナーキズムが著者の立場だ。
所得ごとの累進性に基づいた消費税案も興味深い。
また、戦後の日本は裕福な立場の人間が貧困層に階級闘争をしかけているという。これは階級闘争の新しい見方だ。上位30社が政治家への献金によって自分たちの会社に有利な社会にしようとしているというのは正確な指摘だ。法人中心社会への警鐘においてピケティより日本の問題としては的を射た指摘だ。搾取される系列中小会社などの分析も必要だろう。
ウォルフレンと合わせて読みたい。


 血液循環説 - Wikipedia

血液循環説(けつえきじゅんかんせつ、theory of the circulation of the blood)とは「血液心臓から出て、動脈経由で身体の各部を経て、静脈経由で再び心臓へ戻る」という説。1628年ウイリアム・ハーベーによって唱えられた。

概要編集

当説は現代医学では循環器学の事実として知られているが、この仕組みは長きにわたって人類に知られていなかった。

かつて古代ギリシアガレノスが、現在とは異なる内容の生理学理論を纏め上げた。その影響で1600年代初頭の段階でも

  • 通気系 - 空気由来の動脈血を全身に運ぶ血管
  • 栄養配分系 - 栄養を運ぶ血管系

と2系統に分けて考えられていた。肝臓で発生した血液は人体各部まで移動し、そこで消費されるとされ、循環は想定されていなかった。

ウイリアム・ハーベー(William Harvey1578年-1657年)は、血管を流れる大量の血液が肝臓で作られてはいないだろうと睨み「血液の系統は一つで、血液は循環している」との仮説を立てた。この仮説が正しければ、血管のある部分では血液は専ら一方向に流れるはずであり、ハーベーは腕を固く縛る実験でそれを確認した。

1628年、ハーベーは『動物における血液と心臓の運動について』 (Exercitatio anatomica de motu cordis et sanguinis in animalibus) において血液循環説を発表した。発表当時これは激しい論争の的となり、1649年に反論に対する再反論の冊子をハーベーが発行した。その後血液循環説は多くの人々によって様々に実験・検証され、その正しさは次第に受け入れられていく。また、この血液循環説が後に心臓血圧の正しい理解へと繋がった。

関連項目編集


2 Comments:

Blogger yoji said...

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4:57 午前  
Blogger yoji said...

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本書は、第一線で活躍する22人の研究者が、経済学における実証分析がどのような進化を遂げ、
経済学の発展や現実社会にどのような貢献をしてきたかを詳しく解説する。


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第I部 基本をおさえる
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計量経済学者×応用計量経済学者×応用理論経済学者で議論する。
【実証分析手法の現在】は、経済学における実証分析の進化をサーベイすると共に、
現在の代表的な手法である応用ミクロ計量経済学と、実験的アプローチについて概説する。
【実証分析をめぐるさまざまな論点】では、カリブレーションや識別といった近年の重要トピックスを紹介すると共に、
「ルーカス批判」や、構造型推定派と誘導型推定派の間で繰り広げられた「信頼性革命」、
開発経済学における計量的アプローチと実験的アプローチの比較など、実証分析をめぐるさまざまな論争を紹介する。

第II部 最先端を知る
経済学の諸分野では、それぞれどのような実証分析が行われているのか、分野別に詳しく解説。
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