英語版あとがき
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しかし起源への遡行をあまり遠くまでやってはならないと私は考える。たとえば、
反セミティズムの起源は一般に中世から古代に求められるが、ハンナ・アーレントは、
それを19世紀後半の国家的経済の確立の中に見た。その頃、ユダヤ的経済が強まっ
たからではなく、逆に無力化したがゆえに反ユダヤ主義が広がったのだと彼女は言う。
またニーチェは、あらゆるレベルで隠蔽された「起源」に遡行し、遠くプラトンや
キリスト教に「転倒」の起源を求めたが、彼が対峙していたのは実は、この時期に
確立されたネーションステートやそれに対応する文化、文学といった、彼の同時代に
進行していた「転倒」だった。またハイデガーはニーチェをまだ西洋の形而上学の
圏域にとどまっていると批判したが、彼の起源への遡行は結局、ニーチェの時代に
生じたナショナリズムと反ユダヤ主義をそっくり肯定することに帰着してしまった。
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生きてる感想 : あとがきおよび外国語版への序文・梗概~「定本 日本近代文学の起源」
http://blog.livedoor.jp/mineallmine/archives/52057155.html
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