行動経済学(経済心理学)は合理主義的経済学に対する対抗として、決して主流にはなり得ないが重要な潮流で無視出来ない。今日ではマクリーンなどに代表される脳研究と繋がっている。アダム ・スミスは 『国富論 』 (1776年 )の中で 、リスクや不確実性が人間の経済行動に及ぼす影響に言及しており 、 「だれもが利得の機会を多少とも過大評価し 、またたいていの人は損失の機会を多少とも過小評価する 」 (岩波書店版 190頁 )という合理性に反する心理的要因の重要性を指摘していた 。
《大部分の人々が自分たちの能力について有する過大な自負心は、あらゆる時代の哲学者と道徳家がのべている古来の悪徳である。かれら自身の好運についての、ばかげた推定は、前者よりも注意されることがすくなかった。しかしながらそれは、おそらく、もっと普遍的である。いきている人間で、一応の健康と活気をもっているときに、それをいくらかでももたぬものは、ないのである。もうけの機会は、各人によって、おおかれすくなかれ過大評価されるのであり、損失の機会は、たいていの人によって過小評価され、そして、一応の健康と活気をもつ人ならだれでも、その値うち以上に評価することはめったにないのである。》
(国富論、1:10:1、河出上95頁)
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