実験経済学 川越敏司(&行動マルクス経済学?)
http://nam-students.blogspot.jp/2016/10/blog-post_9.html
https://nam-students.blogspot.com/2019/10/esther-duflo-19721025.html
[2019年ノーベル経済学賞 ランダム化比較試験]
川越論考報酬支払い方
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbef/12/0/12_15/_pdf/-char/ja
現代経済学のエッセンス 川越敏司 2013
https://www.amazon.co.jp/dp/4309624626
Experiments with Economic Principles: Microeconomics (英語) ペーパーバック – 1999/8/9 Theodore Bergstrom (著), John Miller (著)
ハーヴェイ『資本主義の終焉』
https://nam-students.blogspot.com/2018/12/2017harveydavidseventeen-contradictions.html
http://nam-students.blogspot.jp/2012/11/blog-post_28.html
神経経済学
https://nam-students.blogspot.com/2018/10/neuroeconomics.html
バーノン・スミス 実験経済学 2002年ノーベル経済学賞
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%8E%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%83%9F%E3%82%B9
ラインハルト・ゼルテン ゲーム理論、実験経済学 1994年ノーベル経済学賞
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%8F%E3%83%
AB%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%BC%E3%83%AB%E3%83%86%E3%83%B3
指名競争入札におけるランダムカット方式の実験的検討 川越敏司
2003年8月 03-J-010 (マーケット・デザイン関連)
https://www.rieti.go.jp/jp/publications/dp/03j010.pdf
実験経済学 単行本 – 2007/11/1
【主な内容】
第1章 経済学の原理
第2章 企業行動
第3章 市場均衡
第4章 市場構造1
第5章 市場構造2
第6章 消費者行動
第7章 不確実性
第8章 異時点間の選択
第9章 情報の経済学1(逆選抜とモラルハザード)
第10章 情報の経済学2(シグナリングとスクリーニング)
第11章 オークション
第12章 ファイナンス1
第13章 ファイナンス2
第14章 外部性
第15章 公共財と共有地の悲劇
内容(「BOOK」データベースより)
以下に、目次と取り上げられている実験の一覧を示します。
[目次]
第1章 一般均衡モデル
第2章 消費関数
第3章 リカードの中立命題
第4章 貨幣の発生
第5章 紙幣とインフレーション
第6章 貨幣錯覚
第7章 期待形成
第8章 サンスポット均衡
第9章 価格の粘着性
第10章 裁量とルール
第11章 金融政策の決定
第12 章 投資関数と企業の資金調達
第13章 R&Dとスピルオーバー
第14章 経済成長と貧困の罠
第15章 国際経済
[実験一覧]
1.A マクロ経済における消費と生産についての一般均衡に関する実験
1.B 複数市場における裁定取引と一物一価の法則に関する実験
2.A 消費と投資の異時点間資源配分に関する実験
2.B 行動ライフサイクル仮説に関する実験
3.A リカードの中立命題に関する実験
3.B 不確実性が存在する場合のリカードの中立命題に関する実験
4.A 交換手段としての貨幣の発生に関する実験
4.B 非耐久財は貨幣になりうるかに関する実験
5.A 価値貯蔵手段としての不換紙幣に関する実験
5.B 不換紙幣とハイパーインフレーションに関する実験
6.A 質問紙調査による個人レベルでの貨幣錯覚の実験
6.B 価格設定ゲームによる市場レベルでの貨幣錯覚の実験
7.A ルーカスのアイランド・モデルに関する実験
7.B 資産市場における合理的期待形成に関する実験
7.C クモの巣モデルに関する実験
8.A 価格のアナウンスとサンスポット均衡に関する実験
8.B 重複世代モデルにおけるサンスポット均衡に関する実験
9.A メニュー・コストと価格の粘着性に関する実験
9.B 超過供給のある労働市場における贈与交換に関する実験
10.A 農民と領主の生産?徴税関係に関する実験
10.B フィリップス曲線に関する実験
11.A 金融政策決定に関する実験:個人 vs. グループ
11.B 金融政策決定に関する実験:リーダーの存在
12.A 企業買収に関する実験
12.B 株式の一定割合を保有している場合の企業買収に関する実験
12.C モディリアーニ=ミラー定理に関する実験
13.A 特許とスピルオーバー効果の比較実験
13.B R&Dとスピルオーバー効果に関する実験
14.A 社会計画者の問題に関する実験
14.B 分権的意思決定の実験
15.A 購買力平価説に関する実験
15.B 為替レートの決定に関する実験
15.C 主観的幸福度に関する質問紙調査
はじめてのゲーム理論 2つのキーワードで本質がわかる (ブルーバックス) Kindle版
- ゲゼルマネーにつながる認識
価値を固定化する価値形態論よりも中期マルクスに可能性はある??
マルクス『経済学批判』第一部 資本について 貴金属
http://web1.nazca.co.jp/hp/nzkchicagob/DME/KeiHi1.html#KEIHI1124
…
貴金属の高い価値比重、恒久力をもち、相対的意味では破壊されず、空気にふれても
酸化しないという性質、とくに金のばあいは王水以外の酸には溶解しないという性質、こうし
たいっさいの自然的属性が、貴金属を貨幣蓄蔵の自然的材料たらしめている。だからチョ
コレートが非常に好きであったらしいペテル・マルティルは、メキシコの貨幣の一種であった
袋入りのココアについて、つぎのようにのべている。「おお、いみじくもよき貨幣よ、おまえは
人類に甘美にして滋養のある飲物をあたえ、その罪のない所有者を、貪欲という業病から
まもってくれる。なぜならば、おまえは、地中に埋蔵されることも、長く保蔵されることもでき
ないのだから。」(『新世界について』《アルカラ、一五三〇年、第五編、第四章》。)
…
最後に、金銀が、鋳貨の形態から地金形態に、地金形態から奢侈品の形態に、またその
逆の方向に転化されうること、それゆえひとたびあたえられた一定の使用形態にしばられ
ないという、ほかの商品よりすぐれた点をもっていること、このことは、金銀を、貨幣という
たえずひとつの形態規定性から他の形態規定性に転じなければならないものの自然的な
材料たらしめるのである。…
(前半を『されどマルクス』2018,94頁で実験経済学の川越敏司が引用している)
_______
現代の金融と地域経済 下平尾勲退官記念論集
著者名等 下平尾勲/編著
出版者 新評論
出版年 2003.2
大きさ等 22cm 530p
NDC分類 330.4
件名 経済学 ≪再検索≫
要旨 現代のわが国の経済における長期不況の中で最も鋭く問題が露呈しているのは、貨幣・金
融現象と地域問題である。バブル経済の崩壊が生産過剰とともに極端な株価・地価暴落に
端を発してから、金融、不動産、建設業などの産業分野の不良債権が表面化した。これら
の主要産業の極端な経営縮小と合理化は、商業・サービス業、製造業、さらに地域経済へ
と波及し、景気が悪化した。またそれにより、企業赤字の拡大と銀行の不良債権の増加と
が悪循環に入っている。本書は、これら貨幣・金融および地域経済・産業に関する現代の
状況をどのように捉えるのかという問題意識を起点として、現状分析、基礎理論、学説、
政策などが「第1部 金融・貨幣の経済学」、「第2部 地域経済・産業の経済学」に大
別されて論じられ、それぞれの争点が網羅されている論文集である。
目次 第1部 金融・貨幣の経済学(現代の金融と貨幣;現代の国際金融);第2部 地域経済
・産業の経済学(現代の地域経済;現代の地域産業)
内容 内容: 金融・貨幣の経済学 現代の金融と貨幣 1990年代長期不況と金融 下
平尾勲著
内容 成長通貨の供給と金融仲介 小林真之著
内容 信用創造と「資金の先取り」 木村二郎著
内容 銀行信用の本質と諸機能について 真田哲也著
内容 現代貨幣と貨幣の起源 楊枝嗣朗著
内容 インフレーション・ターゲティング論の虚妄性 建部正義著
内容 金融機関の公共性 濱田康行著
内容 株価形成要因としてのガバナンス構造 高田敏文著
内容 信託銀行資産の成長:1980~2000年 一ノ瀬篤著
内容 オーストラリアにおける地域通貨の開花の基盤 佐藤俊幸著
内容 自己資本比率決定の銀行モデル 鴨池治著
内容 非耐久財は貨幣となりうるか?実験研究によるアプローチ 川越敏司著
内容 戦後恐慌論論争における富塚体系の位置 後藤康夫著
内容 現代の国際金融 ユーロ発足とドイツ金融市場 岩見昭三著
内容 アメリカの金融革新とファースト・アカウント 坂本正著
内容 起業金融とアメリカの投資銀行 川波洋一著
内容 アメリカの信用組合 数阪孝志著
内容 中国の資本取引自由化への道 毛利良一著
内容 中国における中小企業の発展と金融 汪志平著
内容 現在中国の信用リスクと対策 陳作章著
内容 地域経済・産業の経済学 現代の地域経済 地域経済の再生 下平尾勲著
内容 「地域振興」から「地域再生」へ 鈴木浩著
内容 日本的NPOの成長と自立の条件 星野〔キョウ〕二著
内容 〈共生〉社会に向けた主体性の再定位 片山善博著
内容 生産要素の差別的移動性と地域経済システム 山川充夫著
内容 ほか12編川越敏司の論考はほとんど地域通貨の基礎理論に読める。効用/生産コストなる指標はよくわからない。擬似貨幣を所持している間にいかに生産力を上げるかということだろう。《つまり、メキシコではココアのような耐久性のない財が貨幣として用いられていたのである。しかし、マルクスは、自分自身が挙げている貨幣となる財が備えるべき条件のうち、特に耐久性という側面について劣ったココアのような財がなぜ貨幣になりえたのか、そのための条件は何か、といった問題には深入りしていない。》151頁代替貨幣に関しては佐藤優などの証言がある。**《…私がモスクワに行った直後、一九八八年頃から、ルーブルはもうほとんど使えなくなっていました。価値がほとんどなくなり、本当に有り余っているものくらいしか買えませんでした。
…
赤いマルボロがおカネの代わりになっていました。タクシーでモスクワ市内を端から端まで走って、料金はマルボロ一箱です。ほとんど白タクですが、道端でマルボロを振って止めるんです。
…
こういうものを『資本論』では「一般的等価物」と呼んでいます。昔の日本のコメも、少し前のモスクワのマルボロも一般的等価物です。人と人との関係が生み出した、「これを持っていけば何でも手に入る」というものを指します。コメなんかを使うと嵩張るし時間がたつと劣化しますから、一般的等価物は最終的には金や銀などの貨幣になり、やがて紙幣になった、というのが『資本論』の考え方です。》
佐藤優
いま生きる「資本論」川越敏司が主に参照したのは以下、Nobuhiro Kiyotaki and Randall Wright,“On money as a medium of exchange,"Journal of Political Economy,Vol.97,1989,pp.927‐954第12章非耐久財は貨幣となりうるか?実験研究によるアプローチこれまでの歴史上、耐久的ではない財が貨幣として用いられた例が幾つか報告されている。例えば、ガテマラの卵、ノルウェーのバター、アメリカ合衆国のタバコ、米、肉、エンドウ豆などである(3)。こうした現象に果たして経済学な根拠があったのか否かを探求することは興味深いことであると思われる。本論では、サーチ・モデルによって交換手段としての貨幣の発生について研究したKiyotaki and Wrightのモデル(4)をもとに、耐久性のない財がどのような条件で貨幣になりうるのかを探求したCuadras-Moratoのモデル(5)について実験室実験を行い、耐久性のない財が実際に貨幣になりうるのか否かを実証した実験結果を報告する。(3)Paul Einzig,Primitiwe Money,Oxford:Pergamon Press,1966(4) Nobuhiro Kiyotaki and Randall Wright,“On money as a medium of exchange,"Journal of Political Economy,Vol.97,1989,pp.927‐954(5)Xavier Cuadras‐Morato,“Can ice cream be money?:perishable medium of exchange,''Journal of Economics,Vol.66,1997,pp 103‐125.(5)Kiyotaki and wrightモデルについては、 実験室実験による研究にはPaul M. Brown “Experimental evidence on money as a medium of exchange," Journal of Economic Dynamics and Control, 20, 1996, pp.583-600 および John Duffy and Jack Ochs,“Emergence of money as a medium of exchange: an experimental study,”American Economic Review, 89, 1999, pp.847-877がある。コンピュータ·シミュレーションによる研究にはRaymon Marimon, Ellen McGrattan, Thomas J. Sargent, "Maney as a medium of exchange in an economy with artificially intelligent agents," Journal of Economic Dynamics & Control, 14, 1990, pp.329-373やErdem Bacscci, "Learning by imitation," Journal of Economic Dynamics & Control, 23, 1999, pp.1569-1585などがある。…Cuadras-Moratoのモデルでは、永久に耐久的な財1および2と、2期間で劣化して使用できなくなる非耐久的な財3の三つの財を考える。生産されたばかりの1期目の財3を財3.1、2期目の財3を財3.2として区別しよう。経済主体は無限期間生存し、それぞれタイプ1、2、3に分かれていて、それぞれのタイプを代表する主体が無数に存在する。タイプじの主体は財i (これを消費財という)を手に入れることでUiの効用を得て、生産コストDiで財i+1を生産するものとする(ただし、 i+1が3を越える場合は3で割つた余りとする)。どの主体も一度に一つしか財を保有できないものとする。各主体は、経済全体に各タイプの主体がそれぞれどの財を保有しているか、その比率について知っているものとする。各主体は市場でランダムに取引相手と出会い、お互いに保有する財を交換するか否かの意思決定を行う。お互いに交換に合意したときのみ交換が成立する。相手と同じ財を保有している場合は交換を行わないものとする。交換が成立し消費財を手に入れた主体は新しい財を生産して次の交換に備える。消費財を手に入れられなかった主体は引き続き同じ財を保有したまま次の交換に備える。なお、財3.2を保有していて消費財を手に入れられなかった主体は、財3.2を廃棄して新たに財を生産しなければならない。割引率をβとして、主体iは生涯にわたる効用と生産コストの差額である純利益の割引現在価値の期待値を最大にするような交換戦略をもちいると考える。ここで、主体iが財jをもって交換に参加した時に得られる生涯効用の期待値を評価関数Vijとする。では、どのような条件があれば、非耐久的な財3が交換の媒介物として商品貨幣になるのだろうか。図1(a)では、タイプ1の主体とタイプ2の主体がはじめにそれぞれが生産した財2および財3.1を交換し、 続いてタイプ1の主体が手に入れた(すでに1期経過している)財3.2をタイプ3の主体の生産した財1と交換する様子を描いている。このように、財3が劣化してしまうまでの2期の間にタイプ2の主体からタイプ1の主体、そしてタイプ3の主体へと財3が流通することにより、すべての主体がそれぞれの消費財を手に入れることができる。すなわち、財3が交換の媒介物としての商品貨幣となったのである。なお、この交換プロセスにおいて、タイプ1の主体とタイプ3の主体との間の交換においてはお互いに相手が欲している財、すなわち消費財をもっているので交換が成立するのは自明であるが、タイプ1の主体とタイプ2の主体との間の交換は自明ではない。なぜなら、タイプ2の主体はタイプ1の主体がもっている財2が消費財なので交換を望むが、タイプ1の主体にとってはタイプ2の主体のもつ財3.1は消費財ではないので、交換を望むかどうかは自明ではないからである。では、タイプ1の主体が財2と財3.1を交換するための条件を考えてみよう。もしV13.2>V12ならば、タイプ1の主体にとって、財3.1を財2との交換によって手に入れた後、次期に財3.2をもって交換に参加する方が、財2を交換せずに保有したまま次期に交換に参加するよりも生涯効用の期待値が高いわけだから、このときタイプ1の主体は財2を財3.1と交換することになる。動的計画法によって計算すれば、V13.2>V12であるための必要十分条件U1/D1>5.2301であることがわかる。この条件が満たされていれば、非耐久的な財3が貨幣となりうるのである。…3 考察と展望本論では、耐久性のない財がどのような条件で貨幣になりうるのかを探求したCuadras‐Moratoのモデルにもとづいた経済モデルを用いて実験室実験を行い、耐久性のない財が実際に貨幣にな)りうるのか否かを実証した。実験結果によれば、唯一実験設定に依存するタイプ1の主体の行動が理論的予測と整合的であったので、耐久性のない財3が交換の媒介物としての商品貨幣となる場合が高い頻度で観察された。また、永久に耐久的な財1は実験設定に依存せずに常に商品貨幣になるのであるが、これも高い頻度で観察された。唯一理論的予測と異なる結果だったのが、タイプ3の主体の行動で、そのために、理論的予測と異なり、もう一つの永久に耐久的な財2も交換の媒介物となってしまっ本研究では、均衡Aが成り立つようにUとDを設定したが、均衡Bが成り立つ場合の実験結果と比較することがさらに必要であろう。また、タイプ3の主体の理論から逸脱した行動が、全体の均衡の達成にどのような影響を与えるのかはまだ定かではないので、タイプ3の主体の行動が理論的予測と一致する場合と一致しない場合を、例えばコンピュータ・シミュレーションによって比較検討することも今後の課題となろう。いずれにせよ、理論的には非耐久財が商品貨幣となることはかなりデリケートな問題と考えられたが、本研究によれば多少他の主体の均衡からの逸脱が見られようとも、非耐久財が商品貨幣となりうるという実験結果が得られたことで、Cuadras-Moratoの理論的予測がかなり頑健なものであることが確かめられたといえるだろう。注(1) William S. Jevons, Money and the Mechanism of Exchange, London: Henry S. King and Co.,1875.(2) カール·マルクス著,武田隆夫ほか訳『経済学批判』岩波文庫、1859年、第2章4節貴金属、202~203ページ。(3)Paul Einzig,Primitiwe Money,Oxford:Pergamon Press,1966(4) Nobuhiro Kiyotaki and Randall Wright,“On money as a medium of exchange,"Journal of Political Economy,Vol.97,1989,pp.927‐954☆(5)Xavier Cuadras‐Morato,“Can ice cream be money?:perishable medium of exchange,''Journal of Economics,Vol.66,1997,pp 103‐125.☆☆(5)Kiyotaki and wrightモデルについては、 実験室実験による研究にはPaul M. Brown “Experimental evidence on money as a medium of exchange," Journal of Economic Dynamics and Control, 20, 1996, pp.583-600 および John Duffy and Jack Ochs,“Emergence of money as a medium of exchange: an experimental study,”American Economic Review, 89, 1999, pp.847-877がある。コンピュータ·シミュレーションによる研究にはRaymon Marimon, Ellen McGrattan, Thomas J. Sargent, "Maney as a medium of exchange in an economy with artificially intelligent agents," Journal of Economic Dynamics & Control, 14, 1990, pp.329-373やErdem Bacscci, "Learning by imitation," Journal of Economic Dynamics & Control, 23, 1999, pp.1569-1585などがある。(7)経済的実験において、なぜこうした金銭的動機付けが必要かについては、Daniel Friedman and Shyam Sunder, Experimental Methods: A Primer, Cambridge University Press, 1995 (川越敏司、内木哲也、森徹、秋永利明訳『実験経済学の原理と方法』同文舘出版、1999年)を参照。(8)この場合、タイプ3の主体は財3.1と財3.2のどちらでも交換を受け入れるので、これらを特に区別する必要はないので、財31と財32の場合の結果を合算した。(9)この場合も注8と同様の理由により、3.1と財3.2の場合の結果を合算した。☆☆☆
______川越敏司
- プロローグ
- 第1章 市場メカニズムと情報の問題
- 第2章 戦略的行動と市場──ゲーム理論による分析
- 第3章 オークションの基本原理
- 第4章 複数財オークションのケーススタディ
- 第5章 マッチング理論の諸問題
- エピローグ
- 読書案内
- あとがき
- 参考文献
- 注
_____経済学批判マルクス『経済学批判』
http://web1.nazca.co.jp/hp/nzkchicagob/DME/KeiHiJ.html
第一部 資本について
http://web1.nazca.co.jp/hp/nzkchicagob/DME/KeiHi1.html以下、ゲゼルマネーにつながる認識
価値を固定化する価値形態論よりも中期マルクスに可能性はある経済学批判 第一部 資本について 貴金属貴金属の高い価値比重、恒久力をもち、相対的意味では破壊されず、空気にふれても酸化しないという性質、とくに金のばあいは王水以外の酸には溶解しないという性質、こうしたいっさいの自然的属性が、貴金属を貨幣蓄蔵の自然的材料たらしめている。だからチョコレートが非常に好きであったらしいペテル・マルティルは、メキシコの貨幣の一種であった袋入りのココアについて、つぎのようにのべている。「おお、いみじくもよき貨幣よ、おまえは人類に甘美にして滋養のある飲物をあたえ、その罪のない所有者を、貪欲という業病からまもってくれる。なぜならば、おまえは、地中に埋蔵されることも、長く保蔵されることもできないのだから。」(『新世界について』《アルカラ、一五三〇年、第五編、第四章》。)
…
最後に、金銀が、鋳貨の形態から地金形態に、地金形態から奢侈品の形態に、またその逆の方向に転化されうること、それゆえひとたびあたえられた一定の使用形態にしばられないという、ほかの商品よりすぐれた点をもっていること、このことは、金銀を、貨幣というたえずひとつの形態規定性から他の形態規定性に転じなければならないものの自然的な材料たらしめるのである。…(『されどマルクス』2018,94頁で実験経済学の川越敏司が引用)川越94
(5)
Harvey(2014)は、その第二章において、シルビオ·ゲゼルの提唱する非耐久的
な性質をもつ貨幣の実践的可能性について言及し、それを資本主義的経済システム
を乗り越えるための政治的実践の一つに取り入れている。されどマルクス|日本評論社 Karl Marx still matters.定価:税込 1,296円(本体価格 1,200円)発刊年月 2018.05 判型 B5判 124ページボウルズ、両佐々木、川越、松井論考が個人的に興味深い。特に川越敏司の行動マルクス経済学=実験経済学=メカニズムデザインは刺激的だ。好意的に読めば西部は地域通貨の可能性を逆から浮き彫りにさせようとしていると思う。内容紹介2018年はマルクス生誕200周年の記念イヤー。いまマルクス経済学およびマルクス主義的なアプローチの魅力と有用性を問う。【日本評論社創業100年記念出版】目次1 対談:現代の経済学とマルクス佐々木宏夫(早稲田大学) × 吉原直毅(マサチューセッツ大学)2 総論:マルクスと現代1. 労働価値説讃歌 サイモン・モハン(ロンドン大学クイーン・メアリー名誉教授、訳:斎藤幸平(大阪市立大学)2. マルクスの経済成長及び所得分配に関する理論の重要性 アミタバ・K・ダット(ノートルダム大学政治学部)訳:村上弘毅(中央大学)3. マルクスと現代ミクロ経済学 サミュエル・ボウルズ(サンタフェ研究所)訳:金子創(大分大学)3 マルクスと現代的政治経済学4. 搾取理論 吉原直毅(マサチューセッツ大学)5. 資本理論と要素所得分配論 黒瀬一弘(東北大学)6. 景気循環論 大野隆(同志社大学)7. 経済成長と所得分配 新古典派成長理論とポスト・ケインズ派成長理論 佐々木 啓明(京都大学)8. MEGA研究から見える新たなマルクス象 佐々木隆治(立教大学)9. フェアトレードとマルクス経済学 大野敦(立命館大学)10. マルクス主義哲学における規範理論の展開 松井暁(専修大学)11. 行動マルクス経済学の可能性 川越敏司(公立はこだて未来大学)4 マルクスと現代資本主義論12. 金融資本主義論:西部忠(専修大学)13. レギュラシオン理論:マルクスとケインズを超えて 植村博恭(横浜国立大学)14. グローバル経済論:グローバル金融危機・経済危機と「グローバル恐慌」論 河村哲二(法政大学)15. 世界システム論:資本主義の脱問題化に抗して 山下範久(立命館大学)ボウルズ42頁現代資本主義経済の均衡競争におけるショート・サイド権力:資本市場 貸し手→借り手 I信用制約_(B)_(A)_ (C)↓管理職市場 オーナー→管理職 I信用制約_(B)_(A)_ (C)↓労働市場 雇用主→従業員 I信用制約(B) (A) (C)松井暁86,7頁史的唯物論:上部構造A 上部構造B↑ ↑③生産関係=土台A 生産関係=土台B生産様式{ ↑ ↑②生産力=A → 生産力=B①社会発展の過程:上部構造 F F F K K K C生産関係 F F K K K C C生産力 F K K K C C C社会構成体 mF lF eK mK lK S CF:封建主義、K:資本主義、S:社会主義、C:共産主義e:前期、m:中期、l:後期西部102頁表1市場の内部化における3つの商品化のモード:貨幣交換 市場の商品化モード 商品化の場所 生産の目的 の頻度 経済統合度1 外部商品化 コミュニティ・国家の外部 消費目的生産 偶発的 低2 内部商品化 コミュニティ・国家の内部 所得目的生産 頻発的 中3 一般商品化 コミュニティ・国家の消失 利潤目的生産 恒常的 高マルクスの有名な文句を元にした表。ただし共同体と国家の差異は明確にすべきだ。西部103頁表2労働力商品化のモード変化による資本主義の進化:1.一般財の外部商品化2.一般財の内部商品化3.一般財の一般商品化4.一般財の一般商品化+労働力の外部商品化=資本主義市場経済の成立i)労働力外部商品化型資本主義市場経済(Eモード)ii)労働力内部商品化型資本主義市場経済(Iモード)iii)労働力一般商品化型資本主義市場経済(Gモード)Gモードではじめて資本家以外にメリットが生じる。参考:カレツキ(カレッキ)「計量経済学モデルと史的唯物論」1964〔"Econometric Model and Historical Materialism"http://nam-students.blogspot.jp/2017/07/1964-econometric-model-and-historical.html経済計算論争 ランゲ、そしてカレツキhttps://nam-students.blogspot.jp/2017/05/blog-post_16.html「「根本的な改革」から「決定的な改革」へ ―カレツキにおける史的唯物論」山本英司 2001IV《「計量経済学モデルと史的唯物論とは,社会の発展にたいするふたつの相異なるアプローチをなす。前者は,考察される期間における計量経済学的変数相互の,およびこれらの変数と過去の諸期間における同一変数のあいだの関数関係を基礎としている。この関係は所与であり,また変化しないものと仮定される。かくして,特定の動態過程が措定されるが,それは,上記の関数関係の不変性という基本的な仮定が満足される場合にのみ現実の発展に対応する。史的唯物論は,社会の発展過程をすべての他の社会現象,たとえば政府,文化,科学,技術など(上部構造)をかたちづくる生産力と生産関係(土台)のそれとして考える。ここには上部構造もまた土台に影響をおよぼすというフィードバック効果が包合されている」(Kalecki[1965],邦訳*154ページ)。ここにおいて注目すべきなのは,カレッキは史的唯物論を,計量経済学モデルの「機械論的性格」(Ibid,邦訳155ページ)と対比させて,「上部構造もまた土台に影響をおよぼすというフィードバック効果」が包含されているものとして解釈しているということである。カレツキは同論文全体を通して,計量経済学モデルを,「現在および過去の経済変数相互の変化する関係を包摂する「一般化された計量経済学モデル」(lbid.,邦訳159ページ)としての史的唯物論に包摂されるものとして定式化しようとしている。マルクスの『経済学批判』(マルクス[1859])の「序言」における「唯物史観の公式」.はあまりにも有名であるが,「物質的生活の生産様式が,社会的,政治的および精神的生活過程一般を制約する。人間の意識が彼らの存在を規定するのではなく,彼らの社会的存在が彼らの意識を規定するのである」(同上書,6ページ)との記述は,土台から上部構造への規定性が強調されるあまり,上部構造から土台への反作用を無視ないし軽視する解釈を広範囲に生み出してきた。その中にあって,「上部構造もまた土台に影響をおよぼすというフィードバック効果」こそが史的唯物論を計量経済学モデルから分かつとのカレツキの解釈は実に新鮮である。》他のツイートでサービスし過ぎたと川越敏司は語る。確かにマルクスの名前無しでこうした分析は可能だ。https://twitter.com/toshijikawagoe/status/945164117182103552
ToshijiKawagoe (@ToshijiKawagoe)『経済セミナー』増刊号「されどマルクス(仮)」のための原稿「行動マルクス経済学の可能性」がついに完成しました! たぶん、実験・行動経済学の観点でマルクス経済学を考察した世界で初めての試みだと思います。来年は、この内容を敷衍して本にしたいところですね。岩波書店さんとかどうですか?
https://twitter.com/toshijikawagoe/status/998773474616262658
ToshijiKawagoe (@ToshijiKawagoe)経済セミナー増刊「されどマルクス」に寄稿した「行動マルクス経済学の可能性」は、ちょっとサービス精神旺盛に書きすぎた気がする。
- 川越敏司 図でわかる経済学
2017https://www.amazon.co.jp/dp/4532119340/
130-1頁
マルサス的な人口問題(絶対的過剰人口)が発生するよる前の段階で、別種の人口問題が発生すると論じたのは、カール・マルクスです。マルクスは技術が進歩すると以前よりも少ない人数で生産が可能になるので、経済成長に伴い失業者が増え、貧困にあえぐようになると論じました。マルクスはこれを、相対的過剰人口の問題と呼びました。参考文献:
Who Gets What(フー・ゲッツ・ホワット) ―マッチメイキングとマーケットデザインの新しい経済学 Kindle版
マッチメイキングユダヤ教の口伝律法 『タルム ード 』のなかに 、こんな物語がある 。万物の創造主は天地を創造されたあと 、いったい何をなさっているのですかと 、誰かがラビ (ユダヤ教の宗教指導者 )に尋ねる 。ラビはこう答える 、 「縁結びを続けているのだ 」と 。物語では続けてマッチメイキング ─ ─この場合は円満な結婚 ─ ─をとりもつことがいかに重要であり 、かつ難しいかが語られる 。それは 「紅海を割るのと同じくらい難しい 」のだという 。アルヴィン・ロス(Alvin Elliot Roth、1951年12月18日 - )は、アメリカの経済学者。ハーバード・ビジネス・スクールのジョージ・ガンド経済学・経営学講座教授(George GundProfessor of Economics and Business Administration)であった。この間、スタンフォード大学客員教授を兼ねていたが、2013年より専任のスタンフォード大学教授となる[1]。2012年、ロスはロイド・シャープレーとともに、「安定配分理論と市場設計の実践」の功績についてノーベル経済学賞を受けた[4]。略歴
- 1951年 学校教師の夫婦の間に生まれる。
- 1960年代後期 ニューヨーク市クイーンズの中学のとき中退する。
- 後にコロンビア大学の週末クラスの学生となり、その後、フルタイムの学生となる。
- 1971年 コロンビア大学からオペレーションズ・リサーチの学位をえて卒業する。
- 1973年 スタンフォード大学よりオペレーションズ・リサーチのM.S.(修士号)をえる。
- 1974年 スタンフォード大学よりオペレーションズ・リサーチのPh.D.をえる。
- 1974年~1977年 イリノイ大学の助教となる。
- 1977年~1979年 イリノイ大学の准教授となる。
- 1979年~1982年 イリノイ大学の教授となる。
- 1982年~1998年 ピッツバーグ大学の教授(the Andrew W. Mellon Professor of Economics)となる。
- 1998年~2013年 ハーバード大学経済学部の教授(the George Gund Professor of Economics and Business Administration)となる。
- 2012年 ノーベル経済学賞を受ける。
- 2013年~ スタンフォード大学の教授。
参加・栄誉
- 1983年~現在 計量経済学会のメンバー
- 1983年~1984年 グッゲンハイム財団のフェロー(助成金)
- 1984年~1986年 アルフレッド・P・スローン財団のフェロー(助成金)
- 1998年~現在 アメリカ芸術科学アカデミーのフェロー
- 1998年~現在 全米経済研究所(NBER)のリサーチ・アソシエイト
- 2012年 NKR Terasaki Medical Innovation Award(shared with Itai Ashlagi), American Transplant Congress, Boston
ノーベル経済学賞
- アルヴィン・ロスは、2012年に(ロイド・シャープレーとともに)ノーベル経済学賞を受けた(「安定配分理論と市場設計の実践に関する功績を称えて」)。
- ロイド・シャープレーは、とくに結婚の組み合わせの相関的安定性を研究し、ゲール=シャープレー・アルゴリズムを明らかにした。
業績
主要業績
- アルヴィン・ロスの専門は、ゲーム理論、実験経済学、マッチング理論、マーケットデザインである。特に実験経済学が専門で、具体的には医学生と病院のマッチング、公立学校選択システム、腎臓交換などが有名である。
- 理論だけでなく、経済制度自体の設計を目指しているのが特徴である。彼は、何が可能かを示すだけでなく、「これは大半のケースでうまくいくか?」、「これが、いったい最善なのか?」という問いをたている。
研修医の問題
- 医学生の研修先病院を割り振る際の問題を指摘し、解消した。例えば、結婚している医学生がいて同じ都市で暮らしたがっているといった場合の問題を解決してきた。
- ロスが1984年に書いた全国医学実習生マッチングプログラム(NRMP)の論文は、1952年にJohn StalknakerとF. J. Mullenによって設計されたシステムを際だたせたものであり、1962年のデイビッド・ゲールとロイド・シャープレーによる独立理論の基礎の上に導入されたものである。ロスは、全国医学実習生マッチングプログラムは未婚の医学実習生にとっては安定的で戦略保証つきであるかもしれないが、既婚カップルの場合はいかにすれば有効なマッチングが可能かといった問題に取り組み、将来にわたって拡張した。1999年、ロスは既婚医学生のカップルに安定したマッチングを確実にするマッチングプログラムを設計し直した。
- これは日本の研修医マッチングでも導入されている。
公立学校選択システム
ニューヨークシティ公立学校システム
- ロスはニューヨーク市立学校の生徒とハイスクールとをマッチングする市場設計を支援した。従来は、学校地区ごとに生徒に5つの志望校のリストを出させていた。しかし、生徒は5校というより1校を選ぶことが多いという傾向があった。そこで、ロスとその同僚は、インセンティブと両立できるメカニズムを設計した。2003年、学校局は志望校の選択方法としてニューヨーク市ハイスクール・アプリケーション・システムを採用した。
ボストン公立学校システム
- 2004年、Tayfun Sonmezと共同で作業した。
腎臓交換
- Tayfun SonmezとUtku Unverとともに、'ニューイングランド腎臓提供プログラム'の創設者である。
- 腎不全患者に対して臓器供与の意思があるドナーがいても、臓器が適合しない場合がある。この場合、同様な状況にある他の組み合わせを探すことによって、患者とドナーの適切な組み合わせを探しだすことが出来るかもしれない。患者全員に適合する必要な臓器を提供できるドナーを探すことも不可能ではない。
著書
- Axiomatic Models of Bargaining, Lecture Notes in Economics and Mathematical Systems, Springer Verlag, 1979.
- Game-Theoretic Models of Bargaining, (editor), Cambridge University Press, 1985.
- Laboratory Experimentation in Economics: Six Points of View, (editor) Cambridge University Press, 1997 (Chinese translation, 2008).
- The Shapley Value: Essays in Honor of Lloyd S. Shapley, (editor), Cambridge University Press, 1988.
- Two-Sided Matching: A Study in Game-Theoretic Modeling and Analysis, With Marilda Sotomayor, Cambridge University Press, 1990.
- Handbook of Experimental Economics, Edited with J.H. Kagel, Princeton University Press, 1995.
- Game Theory in the Tradition of Bob Wilson, Edited with Bengt Holmstrom and Paul Milgrom, 2001.
- アルビン・ロス著『Who Gets What(フー・ゲッツ・ホワット)---- マッチメイキングとマーケットデザインの新しい経済学』(日本経済新聞出版社、2016年;原著は2014年)ISBN: 978-4-532-35688-0
出典・脚注
- ^ “Curriculum vitae, and consulting services Alvin E. Roth”. Alvin E. Roth. 2012年10月15日閲覧。
- ^ Adams, Susan (2010年8月9日). “Un-Freakonomics: A Harvard professor uses economics to save lives, assign doctors and get kids into the right high school”. Forbes2012年10月26日閲覧。
- ^ Neyfakh, Leon (2011年4月3日). “The Matchmaker: The Harvard economist who stopped just studying the world and began trying to fix it”. Boston Globe 2012年10月26日閲覧。
- ^ “The Sveriges Riksbank Prize in Economic Sciences in Memory of Alfred Nobel 2012”. Nobel Media AB (2012年10月26日). 2012年10月15日閲覧。
- 一橋ビジネスレビュー:ノーベル賞特集号 : ECONO斬り!!
http://blog.livedoor.jp/yagena/archives/50965553.html
経済学賞の歴代最年長受賞者はレオニード・ハーヴィッツで、「メカニズムデザインの理論の基礎を確立した功績」によって、2007年になんと90歳で受賞している[1]。ノーベル賞全分野を通じて、今のところ最高齢の受賞者であるハーヴィッツは、いったいどのような業績によって選ばれたのだろうか。彼の仕事を少し詳しく見てみよう。
インセンティブと制度設計
経済学は、市場を中心とした狭い意味での経済問題を越えて、今日では人々のインセンティブに関する様々な問題を扱っている。このインセンティブの重要性を、制度設計の文脈で初めてきちんと示したのがハーヴィッツなのである。彼は1972年の論文(Hurwicz, 1972)で、与えられた制度や環境において、人々が(全体ではなく)個々のインセンティブに従って行動することを保証する条件として「誘因整合性」(Incentive Compatibility)という考え方を提示した。この概念は、直感的には次のように説明することができる。
社会にとって望ましい制度や仕組みの設計を検討する際に、ひとりひとりのメンバーのインセンティブを無視してはならない。なぜなら、彼らが自らのインセンティブに従って行動した上で、同時に社会にとっても望ましい結果が得られるのでなければ意味がないからだ。現実を見ても、旧東欧社会主義国家による計画経済の失敗が物語るように、人々の行動を強制できる、思った通りに動かせる、という想定のもとで制度をナイーブに設計するのは危険を伴う。参加者のインセンティブを無視した制度というのは、絵に描いた餅に過ぎないのだ。
ハーヴィッツが生み出した誘因整合性は、制度設計者の思惑通りに各個人が意思決定を行うことが、当人にとっても最適となる、つまり社会の目的と個人のインセンティブが整合的であることを保証する条件である。これは社会におけるルール・仕組み作りを考える上で決定的に重要な概念であり、ハーヴィッツの貢献が土台となって、経済学における制度設計に関する研究が後に花開くことになった。制度設計に関する基礎理論を、経済学ではメカニズムデザインと呼んでいるが、彼こそがその生みの親なのである[2]。
リバース・エンジニアリング
ハーヴィッツと同時受賞したエリック・マスキン[3]とロジャー・マイヤーソンは、各人の誘因整合性を満たした上で、理論上達成できる社会の目的はどのようなものか、という問題に取り組み、メカニズムデザイン分野の射程を一気に広げた。与えられたメカニズムが誘因整合性を満たしたときにどんな社会目的を達成するのか、という「仕組み→結果」の流れを考えるのではなく、どんな社会目的であればそれを達成するメカニズムの存在が保証されるのか、という「結果→仕組み」の分析を行ったのがポイントである。成果物である製品からその製造方法や動作原理を探る作業は、工学ではリバース・エンジニアリングと呼ばれる。メカニズムデザインは、マスキンとマイヤーソンの貢献によって社会科学独自のリバース・エンジニアリングとして確立された、と言えるかもしれない。
やや専門的になるが、彼ら2人の具体的な業績についても言及しておきたい。マスキンは、ある社会目的が理論的にそもそも達成可能かどうかを判定することができる革新的な条件「単調性」を導出した[4]。これは、彼の名前をとって「マスキン単調性」とも呼ばれている。ある社会目的が単調性を満たさなければ、それを誘因性的な形で達成することができるメカニズムは絶対に存在しないこと、逆に社会目的が単調性さえ満たせば、その目的を達成することができるメカニズムを理論上は必ず作ることができることを示したのである。マスキン単調性を満たさないような社会目的は、人々のインセンティブを無視した実現不可能な目的、つまり絵に描いた餅なのである[5]。
一方のマイヤーソンは、具体的なメカニズムの分析を進める際に、膨大な選択肢の中から直接メカニズムという特定のメカニズムを調べるだけで十分であることを示した「顕示原理」(Revelation Principle)の発見者の一人である[6]。彼は、顕示原理をMyerson (1981)で入札の制度設計に応用して、オークション理論の金字塔である収入同値定理を導出した。これは、一定の条件のもとで、異なる入札ルールが完全に同額の期待収入を売り手にもたらすことを示した定理である。例えば、封印入札と競り上げ入札ではルールが異なるため、仮に同じ商品が売られていたとしても参加者たちの入札戦略に違いが生じるだろう。しかし、お互いに相手の入札戦略に対して最適に反応し合っている「ナッシュ均衡」[7]と呼ばれる理論予測に注目すると、両者で最終的に決定される落札価格は平均的には全く同じになるのである。マイヤーソンはさらに収入同値定理を土台にして、期待収入を最大化する入札ルールも同論文の中で導出している[8]。
制度設計を考える際に、(想像上のものを含めて)ありとあらゆるメカニズムを一つずつチェックしていくのは原理的に不可能だろう。マスキン単調性やマイヤーソンらの顕示原理は、参加者のインセンティブを考慮しながら社会目的を達成するメカニズムを見つけ出す作業を劇的に簡略化する、画期的な貢献だったのである。
________________________________
[1] 高齢のため、ハーヴィッツはスウェーデンで行われる授賞式には参加できなかった。
[2] ハーヴィッツはその先駆的な研究(Hurwicz, 1960)において、一見すると抽象的で捉えどころが無いように見える「制度」という対象を、参加者どうしの「コミュニケーション・システム」という具体的な形で定式化し、経済理論による制度分析の端緒を開いた。
[3] 完全に余談ではあるが、マスキンは筆者の大学院時代の指導教員でもある。彼が当時プリンストンで住んでいた家は、大物理学者アルベルト・アインシュタインのかつての住まいで、マスキン以前にここで暮らしていた物理学者フランク・ウィルチェックも2004年にノーベル物理学賞を受賞している。偶然にもノーベル賞受賞者が3人も住んだ「アインシュタインの家」の詳細については、米国版のwikipedia項目などをご参考頂きたい。
[4] この結果を示した論文は1977年に書かれ、長らく未刊行のワーキング・ペーパーであったが、最終的にMaskin (1999)として出版された。
[5] メカニズムデザインやマスキン単調性などについてより詳しく知りたい読者は、この分野の優れた専門書である坂井他 (2008)をぜひ参照して欲しい。
[6] Myerson (1979)は顕示原理に関する最初期の研究の一つである。
[7] ナッシュ均衡は、戦略的な状況を分析するゲーム理論における最も重要な概念である。その生みの親であるジョン・ナッシュは「非協力ゲームにおける均衡分析に関する理論の開拓」への貢献によって、ラインハルト・ゼルテン、ジョン・ハーサニと共に1994年にノーベル経済学賞を受賞している。筆者は、プリンストン大学留学時代に何度かナッシュの生の声に触れる機会があったが、自身の理論が入札設計という実務で役立てられていることへの意外性と重要性を強調されていたことが、強く印象に残っている。
[8] 標準的な仮定のもとで、収入最大化は「この価格以下では売らない」ことを約束する最低落札価格を適切に設定することで実現できる。オークション理論の知見は、ネットオークションや電波オークションなど、現実の様々な入札の制度設計に既に応用されている。関心のある読者は、数式を一切用いずに理論のエッセンスと豊富な実践例を解説したハバード・パーシュ (2017)をお勧めしたい。
<参考文献>
・坂井豊貴, 藤中裕二, 若山琢磨, メカニズムデザイン―資源配分制度の設計とインセンティブ, ミネルヴァ書房, 2008.
・ティモシー・P・ハバード, ハリー・J・パーシュ, 入門 オークション:市場をデザインする経済学, 2017.
・Hurwicz, Leonid. Optimality and informational efficiency in resource allocation processes. Stanford University Press, 1960.
・Hurwicz, Leonid. On informationally decentralized systems, in Radner and McGuire, Decision and Organization. North-Holland, Amsterdam, 1972.
・Maskin, Eric. Nash equilibrium and welfare optimality. Review of Economic Studies, 66.1: 23-38, 1999.
・Myerson, Roger B. "Incentive compatibility and the bargaining problem." Econometrica, 61-73, 1979.
・Myerson, Roger B. "Optimal auction design." Mathematics of Operations Research, 6.1: 58-73, 1981.
川越 敏司 (著) kindleあり
https://ysk24ok.github.io/2018/03/10/market_design_for_auction_and_matching.html
第一章 市場メカニズムと情報の問題
市場メカニズムでは、家計や企業が各自で需要曲線や供給曲線を元に判断して取引することで
効率的な資源配分が実現できる。
つまり市場メカニズムは資源配分上も情報処理上も効率的なメカニズムである。
市場メカニズムのように各プレーヤーが分権的に意思決定することで
社会的に望ましい結果に自然と導かれていくような方式をデザインすることである。
そもそもいつでも存在するものなのか(均衡の存在の問題)について述べている。
結論から言うと、市場で取引される材の間に粗代替性が成り立っていれば、
市場均衡は必ず存在し、かつ安定である。
第二章 戦略的行動と市場 - ゲーム理論による分析
第二章では不完全競争の場合について述べる。
不完全競争のうちの協力ゲームにおいて、
誰と協力すべきかという望ましさの指標として個人合理性とパレート効率性の2つがあり、
その2つを同時に満たしているときその配分はコアであるという。
コアな配分は他のどの配分からもブロックされないため、安定性を満たしていると言える。
市場均衡はコアの部分集合であるが、
参加する経済主体が十分多くなるとコアは市場均衡と完全に一致する(コアの極限定理)。
耐戦略性、個人合理性、パレート効率性を同時に満たすような方式は存在しないことが
不可能性定理によって証明されている。
マーケット・デザインでは不可能性定理のために理想的な解決ではないものの、
現実問題に対してある程度ワークするようなメカニズムを考える。
そしてこれが理論上ワークする方式を考えるメカニズム・デザインと大きく異なる点である。
ダブル・オークションは現実ではうまくワークすることが示されている。
第三章 オークションの基本原理
配分の効率性と耐戦略性が満たされるが、
オークショニアの不正、情報漏洩、情報収集のコスト、予算制約など様々な理由で
現実ではあまり使用されない。
売り手の期待収入はどれも等しいことが示されているが、
実験室実験・フィールド実験では収益同値定理は必ずしも成り立つとは言えない。
第四章 複数財オークションのケーススタディ
異質材の同時オークションとなる。
異質材の同時オークションにおいて、
全プレーヤーが評価値を正直に入札することが支配戦略になるような方式をVCGメカニズムと呼ぶ。
しかしVCGメカニズムが実際に使用されることは少なく、
二位価格オークションが現実で使用されることが少ない理由と重複するものを除けば、
NP困難、架空名義入札が可能であるという問題点があるためである。
実際、周波数オークションではVCGオークションでも二位価格オークションでもなく
同時競り上げ式が使用された。
VCGメカニズムでは評価値より低い入札が多く観測された。
耐戦略性は現実ではあまり満たされないのかも?
第五章 マッチング理論の諸問題
その順位に基づいて双方の組み合わせを効果的におこなう方式を研究する分野を
マッチング理論と呼ぶ。
参加者全員にとってこれ以上希望順位が上の相手と組になれないようなマッチングを効率的、
ある方式の下で決まったマッチングをブロックする提携が生まれないようなマッチングを安定的、
参加者全員にとって自分の選好を正直に提出することが最善になるマッチングを対戦略性を満たすと言う。
片方のグループについてのみ耐戦略性を満たすマッチングが可能になる
(不可能性定理によって両方のグループについて耐戦略性を満たす方式は存在しない)。
受入保留方式はカップリングパーティーのような一対一マッチングだけでなく、
研究室配属問題や大学入学問題のような一対多マッチングでも有効である。
カップルの存在や選好の地域偏在、スキッピングダウン戦略などの
現実世界の制約条件を克服するために改良を加えることが必要である。
エピローグ
また、オークション・マーケットデザイン・フォーラムが2012年に設立され、
制度設計について数々の提案をおこなっている。
現場の人々の意見を取り入れつつ改良していくという工学的アプローチが必要である。