木曜日, 4月 14, 2016

情報の非対称性 スティグリッツ(屈折需要曲線関連)


        ( 経済学リンク::::::::::
NAMs出版プロジェクト: 情報の非対称性 スティグリッツ
http://nam-students.blogspot.jp/2016/04/blog-post_0.html(本頁)
スティグリッツ 公共経済学 Economics of the Public Sector by Joseph E. Stiglitz
NAMs出版プロジェクト: 奥野正寛『ミクロ経済学』:目次
http://nam-students.blogspot.jp/2015/04/blog-post_32.html(両書とも以下の図は出てこない)


非対称情報の経済学より

 ある企業が商品価格を上昇させたときには、現在その企業と取引を行っている買い手は、その情報をすぐさま入手し、他の企業の商品購入に向かうため、需要量は大きく減少することになる。 
 逆にその企業が価格を下げた場合には、現在他企業と取引を行っている買い手は、この情報をすぐさま入手することができないため、取引先をこの企業に変更しようとしない。したがって需要量はそれほど増加しない。
 このような非対称情報の結果、企業が直面する需要曲線は右下がりになるだけでなく、図6‒4に示されるように現行価格で屈折することになる。


 非対称情報と屈折需要曲線
  
   価|   
   格|    
    | ̄-_ 
    |\   ̄-_
現行価格|_\____ ̄-(屈折)需要曲線
    |  \    |\
    |   \   | \  
    |    \  |  \    
    |     \ |   \       
    |限界収入曲線\|    \
    |       |     \     
    |_______|______\____限界費用曲線
    |       |       \   
    |       |\       \ 
    |_______Q_\_______\____産出量
   0     限界収入曲線\
_____

身近な例で興味深い。

『わかる現代経済学』 (朝日新書 根井雅弘編)で類似例が紹介されている。  

ホールとヒッチ1939、スティグラー1947も参照。参考:クライスラー『カレツキと現代経済』23頁

R. L.ホール(R. L.Hall)とC. J. ヒッチ(C. J. Hitch)

4-4    屈折需要曲線屈折需要曲線とフルコスト原則
    少数の企業によって市場が占有されていると価格の変化が生じにくくなる。価格の硬直性は1920年代に現れはじめた新しい経済現象であった。アメリカの経済学者スウィージー(1910-2004)は論文「需要と寡占の状態」(1939年)において、たとえカルテルによる価格協定が存在しなくとも価格が硬直的になりうることを説明した。スウィージーもチェンバリン同様に2組の需要曲線を用いた。しかし、別々の2本の曲線としてではなく、途中で折れ曲がる1本の需要曲線にまとめ上げた。この曲線はその形状から「屈折需要曲線」と名づけられた。 
 スウィージーの議論はひとたび決定された価格が硬直的となる理由を説明しえたが、なぜその水準で現行価格が成立したのかを説明していなかった。この問題に一定の解答を与えたのが、オックスフォード調査から導出された「フル・コスト原則」である。 
 ロックフェラー財団の支援によって、オックスフォード大学の経済研究所は1935年から景気循環の調査を実施した。この調査から、投資の決定に利子率がほとんど影響を与えていないといった興味深い事実がいくつも明らかになった。価格決定方式の解明もその一つである。それはハロッド(1900-1978)らによって学会報告され、後にホールとヒッチによって論文発表された(「価格理論と企業行動」1939年)。新古典派経済学にとって、限界収入や限界費用は企業行動を決定するきわめて重要な役割を果たしているはずであった。しかし、製造業者や小売商へのインタビュー調査によれば、企業は需要弾力性を推定していないばかりか、限界費用も算出することなく生産量を決定していた。企業は利潤最大化行動をそもそもとっていなかったのである。彼らが採用していたのは、後に「フル・コスト原則」と呼ばれるやり方であった。調査対象38社のうち、この方式に厳格に従うとしたのは12社、例外的な場合を除いて原則として従うとしたのが18社となっていた。その要点を単純化して示せば、 平均費用に慣習的利潤率(しばしば10%)を上乗せした価格決定方式である。すなわち、pを価格、aを平均費用、rをマークアップ率とすれば、p=a(1+r) となる。ホールとヒッチは、企業は需要曲線を認識できないためにフル・コスト原則をとらざるをえないと考えた。 
 フル・コスト原則は現行の価格水準に一定の説明を与えたことになる。しかし、慣習的な利潤率がなぜ10%となるのかを説明していない。また、例えば当該産業の中である一社だけ生産費の削減に成功したとしても、屈折需要曲線が示しているように必ずしも価格を低下させる必要はない。むしろ寡占市場では価格の硬直性こそが特徴であった。その企業はマークアップ率を上昇させるという対応をとるであろう。したがって、慣習的な利潤率が安定しているとは限らないのである。その後の寡占理論は、企業とはそもそも何を目的に行動するのかという根本的な問題を投げかけながら展開していくことになる。 


日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

屈折需要曲線
くっせつじゅようきょくせん
kinked demand curve

寡占価格の硬直性を説明するためにP・M・スウィージーにより提案された屈折点をもつ需要曲線。寡占企業は、つねにライバル企業がどのような態度に出るかを推測しながら、自己の利潤を最大にするように意思決定をする。いま、ある寡占企業の商品の現行価格をPとする。その企業がPより価格を引き上げると、ライバル企業はその値上げには追随しないであろうから顧客を失うことになり、その企業が想定する需要曲線はP以上の価格については傾きが緩やかとなる(つまり需要曲線は弾力的である)。逆に、現行価格Pよりの値下げに対しては、ライバル企業も報復のために値下げに追随するであろうから、その企業の販売量は思ったほどには増えない。したがって、需要曲線は非弾力的であり、その傾きは急激になる。これらのことより、現行価格Pにおいて需要曲線は屈折点Kをもつことになる。限界収入曲線MRは、この屈折点に対応する需要量において不連続となる。もし限界費用曲線MCが、この不連続な部分LMを通るならば、産出量はQに、価格はPに決定される。このときMCがMC′へとシフトしても、利潤最大化価格と生産量になんら影響を与えない。このようにして、寡占価格は硬直的であることが説明される。スウィージーの理論では、屈折点Kは歴史的に所与である出発点とされているが、一般には現に販売されている量と現行価格の組合せを示すものであり、AKとKBの屈折需要曲線は、企業のこれまでの販売経験から想定される主観的需要曲線である。この主観的需要曲線を屈折点をもった曲線と考えれば、スウィージーの屈折需要曲線の理論は、寡占価格の説明のみに限らず、賃金の下方硬直性や不況期の価格硬直性の説明にも有用であることが最近示唆されている。[内島敏之]
『根岸隆著『ケインズ経済学のミクロ理論』(1980・日本経済新聞社)』

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それぞれの解説は執筆時点のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。




世界大百科事典内の屈折需要曲線の言及

【スウィージー】より

…1949年以来,L.ヒューバーマン(彼の死後はH.マグドフ)とともに月刊誌《マンスリー・レビューMonthly Review:An Independent Socialist Magazine》の編集者として幅広い評論活動を続けている。近代経済学者としての彼の名を高めた論文《寡占状態における需要》(1939)において寡占価格の硬直性を説明した屈折需要曲線の理論を提示して寡占企業の行動の分析に一石を投じたが,彼の関心は,ミクロ的な静態論からマクロ的な動態分析へと進み,ケインズ経済学の内在的批判を通じてマルクス経済学に傾いていった。《資本主義発展の理論》(1942)およびP.A.バランとの共著《独占資本》(1966)がその成果であり,実証的で教条にとらわれない姿勢が示されている。…


Paul M. Sweezy, “Demand Under Conditions of Oligopoly,” Journal of Political Economy (1939)

https://msuweb.montclair.edu/~lebelp/SweezyOligopolyJPE1939.pdf


NAMs出版プロジェクト: 屈折需要曲線、スウィージー、スティグリッツ

http://nam-students.blogspot.jp/2015/09/blog-post_20.html

屈折需要曲線、スウィージー、スティグリッツ

水とダイヤモンドのパラドックス:

価格
 | -_    /ダイヤモンドの供給曲線
 | \  ̄-_/
ダイヤの\  / ̄-_
価格___\/E1   ̄-_        _- ̄ 水の供給曲線
 |   /\        ̄-_  _- ̄
水の__/__\_______ _- ̄_E2
価格 /    \    _- ̄     ̄-_
 |       \_- ̄           ̄-_水の需要曲線
 |     _- ̄\                ̄-_
 |  _- ̄    ダイヤモンドの需要曲線
 |___________________________
                          数量
(供給量を固定=供給線を垂直にした場合)一般に水の需要の方がダイヤモンドより価格弾力性が大きい。
http://nam-students.blogspot.jp/2015/06/blog-post_2.html
(ただし、水とダイヤモンドのパラドックスは需給曲線ではなく、限界効用・効用関数で説明した方がいい。)
参考:八田達夫『ミクロ経済学 Expressway』
http://nam-students.blogspot.jp/2015/04/expressway.html 

後述の屈折需要曲線はスウィージーの提案。

スティグリッツは、非対称情報によってそれを説明している。

以下、スティグリッツ藪下(『非対称情報の経済学』2002)より
非対称情報と屈折需要曲線
買い手は値上げには敏感、値下げには鈍感。十分な情報を持たず売り手と非対称的な関係にあるためだ。賃金の硬直性も似ている(屈折供給曲線)。


以下、スティグリッツ藪下2002より
非対称情報と屈折需要曲線

価格
  |      
  |     ̄-_
  |        ̄-_需要曲線
現行|_______\_ ̄-_   
価格|        \  |\      
  |         \ | \
  |         ☆\|  \    
  |___________|___\____限界費用曲線
  |  限界収入曲線☆  |    \            
  |(不連続、断絶がある)|\☆
  |___________|_\______________
  0           Q*           産出量

屈折需要曲線(くっせつじゅようきょくせん)とは - コトバンク

kotobank.jp/word/屈折需要曲線-1305103

寡占価格の硬直性を説明するためにP・M・スウィージーにより提案された屈折点をもつ 需要曲線。寡占企業は、つねにライバル企業がどのような態度に出るかを推測しながら 、自己の利潤を最大にするように意思決定をする。いま、ある寡占企業の商品の現行 ...

ポール・スウィージー - WIKIPEDIA

ja.wikipedia.org/wiki/ポールスウィージー

ポール・スウィージー(Paul Marlor Sweezy, 1910年4月10日 - 2004年2月27日)は、 アメリカの経済学者。 ... 特にシュンペーターに強く期待された一流の理論経済学者 として目され、ミクロ経済学の複占・寡占における屈折需要曲線の命名などの業績を あげた。

略歴-著書-単著-共著

いまさら聞けない経済学 その11 「屈折需要曲線」|TRAVELINGMAN PT2

それでは需要曲線を、値下げの場合は他企業が同調した場合、値上げの場合は同調 しない場合を合成してやる必要がある。これが屈折需要曲線である。 屈折需要曲線は P.M スウィージーにより1939年に提唱された理論である。

第4章 1930 年代の経済学

 

(Adobe PDF)

 

-htmlで見る

ところで、完全競争ならば個別の企業が直面する需要曲線は水平となるが、それは e=. ∞ を意味する。e=∞ を(3)に代入 .... お、スウィージーによれば、企業は実際のデータ から屈折需要曲線を導出するのではなく、あくまで企業. の推測にもとづく想像上の曲線  ...


1 COMMENTS:

屈折需要曲線(くっせつじゅようきょくせん)とは - コトバンク
kotobank.jp/word/屈折需要曲線-1305103
寡占価格の硬直性を説明するためにP・M・スウィージーにより提案された屈折点をもつ 需要曲線。寡占企業は、つねにライバル企業がどのような態度に出るかを推測しながら 、自己の利潤を最大にするように意思決定をする。いま、ある寡占企業の商品の現行 ...
ポール・スウィージー - Wikipedia
ja.wikipedia.org/wiki/ポール・スウィージー
ポール・スウィージー(Paul Marlor Sweezy, 1910年4月10日 - 2004年2月27日)は、 アメリカの経済学者。 ... 特にシュンペーターに強く期待された一流の理論経済学者 として目され、ミクロ経済学の複占・寡占における屈折需要曲線の命名などの業績を あげた。
略歴-著書-単著-共著
いまさら聞けない経済学 その11 「屈折需要曲線」|travelingman pt2
ameblo.jp/travel-777/entry-11480526734.html
それでは需要曲線を、値下げの場合は他企業が同調した場合、値上げの場合は同調 しない場合を合成してやる必要がある。これが屈折需要曲線である。 屈折需要曲線は P.M スウィージーにより1939年に提唱された理論である。
第4章 1930 年代の経済学 (Adobe PDF) -htmlで見る
park.saitama-u.ac.jp/~yanagisawa/het10/36-43.pdf
ところで、完全競争ならば個別の企業が直面する需要曲線は水平となるが、それは e=. ∞ を意味する。e=∞ を(3)に代入 .... お、スウィージーによれば、企業は実際のデータ から屈折需要曲線を導出するのではなく、あくまで企業. の推測にもとづく想像上の曲線 ...



以下、スティグリッツ藪下2002より
非対称情報と屈折需要曲線

価格
  |      
  |     ̄-_
  |        ̄-_需要曲線
現行|_______\_ ̄-_   
価格|        \  |\      
  |         \ | \
  |         ☆\|  \    
  |___________|___\____限界費用曲線
  |  限界収入曲線☆  |    \            
  |(不連続、断絶がある)|\☆
  |___________|_\______________
  0           Q*           産出量


1 Comments:

Blogger yoji said...


        ( 経済学、リンク::::::::::)

スティグリッツ 公共経済学 Economics of the Public Sector by Joseph E. Stiglitz
http://nam-students.blogspot.jp/2016/02/economics-of-public-sector-by-joseph-e_65.html
NAMs出版プロジェクト: 奥野正寛『ミクロ経済学』:目次
http://nam-students.blogspot.jp/2015/04/blog-post_32.html(両書とも以下の図は出てこない)


非対称情報の経済学より

 ある企業が商品価格を上昇させたときには、現在その企業と取引を行っている買い手は、その情報をすぐさま入手し、他の企業の商品購入に向かうため、需要量は大きく減少することになる。
 逆にその企業が価格を下げた場合には、現在他企業と取引を行っている買い手は、この情報をすぐさま入手することができないため、取引先をこの企業に変更しようとしない。したがって需要量はそれほど増加しない。
 このような非対称情報の結果、企業が直面する需要曲線は右下がりになるだけでなく、図6‒4に示されるように現行価格で屈折することになる。




 非対称情報と屈折需要曲線
  
   価|   
   格|    
    | ̄-_ 
    |\   ̄-_
現行価格|_\____ ̄-(屈折)需要曲線
    |  \    |\
    |   \   | \  
    |    \  |  \    
    |     \ |   \       
    |限界収入曲線\|    \
    |       |     \     
    |_______|______\____限界費用曲線
    |       |       \   
    |       |\       \ 
    |_______Q_\_______\____産出量
   0     限界収入曲線\

_____

身近な例で興味深い。

7:42 午前  

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