ジェームズ・ガルブレイス James.K.Galbraith(1952~)
http://econdays.net/?p=9196
2018/1/8
現代金融理論(MMT)ー 伝統的ではない経済運営提案
By Dylan Matthews February 18, 2012
(旧記事の翻訳です[2018/1/8])
The End of Normal: The Great Crisis and the Future of Growth
著者: James K. Galbraith
Epilogue
When Homer Returns
In the summer of 2009, I attended a seminar sponsored by the Gorbachev Foundation and held in a small hotel in the hills of Umbria, near the town of Perugia, Italy. I was the only American present. There was one Italian and the rest—about a dozen—were friends and colleagues from the Russian Academy of Sciences and the Moscow School of Economics. When the moment came for my remarks, I addressed President Mikhail Sergeyevich Gorbachev—the last president of a disappeared country—directly: “Mr. President, when Homer returns to write the history of our epoch, he will say that the Russian mathematicians swept out of Muscovy in 1991 and presented themselves before the gates of Wall Street, bearing the gift of quantitative risk management models. They were received with joy, set to work, and in twenty years had destroyed the place entirely. It was, he will say, the greatest Trojan horse operation since Troy.” Gorbachev responded: “I’ve been accused of worse.”
The collapse of the Union of Soviet Socialist Republics, now two decades back, is a distant event to most Americans. Most decided long ago that it was the inevitable failure of an inferior system, forgetting (if they ever knew) just how much fear that system had instilled in us only a few decades before. Or they remember it as the triumph of Reaganism: the great success of an arms race that somehow broke the Soviet bank. In either case, the moral of the episode is reassuring. To American minds, it demonstrates the superiority of capitalism as we know it. This is a fairy tale for children. In reality, at its peak, the real Soviet Union was a superpower like modern Europe and in some ways like the United States. It had been the world’s “first successful developmental dictatorship”—in the phrase of Adam Tooze, a premier scholar of the Nazi war economy—having built an entire industrial heartland beyond the reach of the German army in 1941. In the 1980s, the USSR was the world’s largest producer of (among other things) steel, nickel, wheat, cotton, and natural gas. It was (and its successor states remain) highly urbanized. It had its own aviation industry, space program, and a vast nuclear industry and arsenal with secret cities to support them, not to mention trains, subways, health care, universities, and high culture. “Upper Volta with nuclear weapons”—a common postcollapse gibe—it was not.
エピローグ
ホメーロスが帰還する時
2009年の夏、私はゴルバチョフ財団主催のセミナーに参加しました。場所はイタリアのペルージャという町の近く、ウンブリアの丘陵地帯にある小さなホテルでした。アメリカ人の参加者は私だけだった。イタリア人が1人、あとはロシア科学アカデミーやモスクワ経済大学の友人や同僚など約10人であった。発言の際、私は消滅した国の最後の大統領であるゴルバチョフ大統領に直接語りかけた。"大統領、ホメロスが私たちの時代の歴史を書くために戻ってきたら、1991年にロシアの数学者たちがモスクワ大公国を抜け出し、定量的リスク管理モデルを携えてウォール街の門前に現れたと言うでしょう。彼らは喜びをもって迎えられ、仕事に取り掛かり、20年後にはウォール街を完全に破壊してしまった。それは、トロイ以来最大のトロイの木馬作戦だったと、彼は言うだろう」。ゴルバチョフはこう答えた。"ゴルバチョフは、「私はもっと悪いことで非難されてきた」と答えた。
ソビエト社会主義共和国連邦の崩壊は、今から20年前のことであり、ほとんどのアメリカ人にとっては遠い出来事である。ほとんどのアメリカ人は、あれは劣悪なシステムの必然的な失敗であるとずっと前に判断し、そのシステムがわずか数十年前に我々にどれほどの恐怖を植え付けたかを忘れている(知っていたとしても)。あるいは、レーガニズムの勝利として記憶している。軍拡競争の大成功で、どうにかソ連の銀行を破綻させることができたのだ。いずれにしても、このエピソードの教訓は心強い。アメリカ人の心の中には、私たちが知っているような資本主義の優位性が示されている。これは子供のためのおとぎ話である。実際には、最盛期のソ連は、現代のヨーロッパのような、ある意味ではアメリカのような超大国であった。ナチスの戦争経済研究の第一人者であるAdam Tooze氏の言葉を借りれば、ソ連は「世界で初めて成功した開発型独裁国家」であり、1941年にはドイツ軍の手が届かない工業地帯を作り上げた。1980年代のソ連は、鉄鋼、ニッケル、小麦、綿花、天然ガスなどの世界最大の生産国であった。1980年代のソ連は、鉄鋼、ニッケル、小麦、綿花、天然ガスなどを生産する世界最大の国であり、高度に都市化されていました。鉄道、地下鉄、医療、大学、高度な文化はもちろんのこと、独自の航空産業、宇宙開発、広大な核産業と兵器、それらを支える秘密の都市を有していた。"崩壊後によく言われる「核兵器を持ったアッパーボルタ」ではありませんでした。
— luminous woman (@_luminous_woman) April 29, 2021ポッドキャストエピソード
1327: What do we do with MMT? / James K. Galbraith
This Is Hell!
2021
4月26日
69 分
By Dylan Matthews February 18, 2012
(旧記事の翻訳です[2018/1/8])
フィッシャー交換方程式をどう捉えるか
VとQを古典派は一定と捉え
Mを増やせばPが決まると考える
ポストケインジアンは逆
~ガルブレイス『現代マクロ経済学』352頁
《 マネタリストの場合ではMV=Py という交換方程式は、V
(貨幣の流通速度)とy(実質産出量)を一定としているので、次のように因果関係の連鎖がM(貨幣
供給量)からP (物価) に向かうことがわかる。
→
MV'=Py'
それに対してポストケインジアンの場合は、 交換方程式は依然として有効であるが、 いかなる所
与の時点においても物価水準は慣性的な変数であり、次に示すように直前の期の費用(C)とマーク
アップ(μ)の関数である。
P t=(1+μ)Ct-1
したがって、貨幣の供給が主に実質産出量の変動に依存するとき、因果関係の方向は、次に示す
ようにほとんどの場合、yからMへ向かう。
←
MV'=Py'
中央銀行は、費用(特に賃金費用)の漸増に対して利子率を引き上げることにより反応するであ
ろう(現にそうである)。ところが、最初の効果は物価水準に対してではなく、必然的に産出量と
雇用量に対するものである。連邦準備制度は失業を創出することによってのみ、賃金を抑制でき、
それゆえ、物価水準の上昇を遅らせることができる。ポストケインジアンは、期待などを通じて機
能し、貨幣の増加率の縮小が直接にインフレの減速をもたらすような市場メカニズムは存在しない、
と主張する。》352頁
表記法について
Yは名目、yは実質
《われわれは経済変数の変化率を示すために、その変数の上に小さな丸い点(ドット)を付ける。》xiv
カルドア、ムーアに同様の認識。
http://nam-students.blogspot.com/2017/07/blog-post_29.html
ムーア1988
http://nam-students.blogspot.com/2019/05/basil-j-moore1933-2018.html
カレツキ:「投資と資本家消費が利潤と国民所得を決定する」という命題
http://nam-students.blogspot.jp/2012/01/blog-post_17.html
ミハウ・カレツキ (Michal Kalecki):マクロ経済学の知られざる英雄
http://nam-students.blogspot.jp/2015/10/michal-kalecki.html
参考
Jamie Galbraith
— luminous woman (@_luminous_woman) December 7, 2020
That's Debatable: Stop Worrying About National Deficits - Bloomberg
2020/12/05https://t.co/K51FcrQOj8 https://t.co/6tdOcZLDgt pic.twitter.com/5GgCmqHONJ
ガルブレイス:
心配するのが人間です 不必要に心配するのは神経症です 心配すべきことはたくさんあります 〈ケルトン教授と私〉と〈反対派〉を分断しているのは 赤字や国際債務ではありません 我々を分断している問題は 実際に我々が直面している 重要な問題に対処する能力があるかどうかです パンデミックに直面しても 経済を安定させる能力があるかどうか 健康問題 失業を減らす能力があるかどうか 気候変動に対処できるかどうか 不平等に対処できるかどうか 我が国の人種間格差の遺産に対処できるかどうか これらは目の前にある問題です 反対派の人たちは「できない」と言います なぜ不可能なのか 高額資金調達の謎の理由があります 彼らはジョン・メイナード・ケインズの言葉を 引用するべきでしょう アブラは立ち上がるだろう カダブラは来るだろう しかし、これは世界が実際にある方法ではありません。これまで何度も申し上げてきたように 今年の経験から 過去4年の経験から 過去40年の経験から これらの問題に対処することは可能です 反対派の立場ですが、反対派の立場はこれらの問題に対処したくないというのが本音です 私たちは対処したいと思っています もう一度言いますが、もし実際にこれを達成することができれば余裕があると思います 金融は我が国にとって簿記の問題です 重要な問題ですが、制約ではありません 人々は重要ではないことを心配するのをやめて、本当に重要なことに自分の意志と注意を集中させるべきです
Andrew Mazzone Interviews James K. Galbraith
— luminous woman (@_luminous_woman) November 28, 2020
2016https://t.co/6uAJy0jaoW
7:45 pic.twitter.com/oOouDIfJ4z
Economist James Galbraith on Democracy Now! part 2 of 2
— luminous woman (@_luminous_woman) November 28, 2020
2009https://t.co/dtrj3tgJAk
7:30〜 pic.twitter.com/4YLuRBTQsH
Economist James Galbraith on Democracy Now! part 2 of 2
2009
https://youtu.be/Sb4EM_AjBhY
7:30
well we hear this expression that credit flows are blocked and that there is a need to get credit flowing again and it really is it's a metaphor uh .
and i think it's a revealing metaphor.
if it in fact reflects the way in which uh high officials of the government are thinking about the problem.
the idea of a flow of course is something that comes from on high and goes down below a blockage is a kind of plumbing problem.
the difficulty is credit isn't like that credit is a bilateral contract.
it's a relationship between a lender and a borrower.
and the problem is not that the lenders don't have money to lend.
the problem is in very large part that there are no prospects or very few prospects for profit in the economy.
and therefore borrowers business borrowers aren't coming in to ask for loans for economic expansion.
信用の流れが遮断されているという表現を耳にすることがありますが、信用の流れを取り戻す必要があるということです。
私は、これは明快な比喩だと思っています。
実際に、政府高官がこの問題についてどのように考えているかを反映しているのであれば
流れというのは、もちろん、高いところから来て、閉塞しているところから下に降りていくものだという考えは、一種の配管の問題です。
難しいのは、信用というのは、二国間の契約ではなくて
貸し手と借り手の関係です。
問題は、貸し手が貸すお金を持っていないことではありません。
問題は、経済の中で利益を得るための見通しがない、または非常に少ないことが非常に大きな部分である。
そして、したがって、借り手ビジネスの借り手は、経済発展のための融資を求めるために来ていません。
フィッシャー交換方程式をどう捉えるか
VとQを古典派は一定と捉え
Mを増やせばPが決まると考える
ポストケインジアンは逆
~ガルブレイス『現代マクロ経済学』352頁
《 マネタリストの場合ではMV=Py という交換方程式は、V
(貨幣の流通速度)とy(実質産出量)を一定としているので、次のように因果関係の連鎖がM(貨幣
供給量)からP (物価) に向かうことがわかる。
→
MV'=Py'
それに対してポストケインジアンの場合は、 交換方程式は依然として有効であるが、 いかなる所
与の時点においても物価水準は慣性的な変数であり、次に示すように直前の期の費用(C)とマーク
アップ(μ)の関数である。
P t=(1+μ)Ct-1
したがって、貨幣の供給が主に実質産出量の変動に依存するとき、因果関係の方向は、次に示す
ようにほとんどの場合、yからMへ向かう。
←
MV'=Py'
中央銀行は、費用(特に賃金費用)の漸増に対して利子率を引き上げることにより反応するであ
ろう(現にそうである)。ところが、最初の効果は物価水準に対してではなく、必然的に産出量と
雇用量に対するものである。連邦準備制度は失業を創出することによってのみ、賃金を抑制でき、
それゆえ、物価水準の上昇を遅らせることができる。ポストケインジアンは、期待などを通じて機
能し、貨幣の増加率の縮小が直接にインフレの減速をもたらすような市場メカニズムは存在しない、
と主張する。》352頁
表記法について
Yは名目、yは実質
《われわれは経済変数の変化率を示すために、その変数の上に小さな丸い点(ドット)を付ける。》xiv
参考
コロナ関連
https://love-and-theft-2014.blogspot.com/2020/05/we-need-radically-different-model-to.html
![]() | 長谷川羽衣子🍀反緊縮グリーン・ニューディール (@uikohasegawa) |
米国がコロナに打ち勝つためにーガルブレイスの提言
あまりにグローバル化され消費主義・金融主義で動いている米国経済は、パンデミックに対応できる設計にはなっていない。 全ての問題は、米国政府とメディアに対する信頼が損なわれていることによって増幅されている。 economicpolicy.jp/2020/03/27/122… |
https://twitter.com/uikohasegawa/status/1243672791968251904?s=21
http://nam-students.blogspot.com/2018/10/john-kenneth-galbraith19082006.html
現代マクロ経済学 1998^1994
https://twitter.com/tagomago712/status/1153639906293366784?s=21
http://econdays.net/?p=9196
2018/1/8
現代金融理論(MMT)ー 伝統的ではない経済運営提案
By Dylan Matthews February 18, 2012
(旧記事の翻訳です[2018/1/8])
~社会科学の系譜とMMT~
1900年 世界恐慌 2000年 世界金融危機
人類学 ┏イネス ポランニー グレーバー
┃グリアソン インガム
社会学 ┃ジンメル
┃ ウェーバー
リスト ⬇︎ ⬆︎
ドイツ ┃ ┃
┏歴史学派┃クナップ(→ケインズ、ラーナー、コモンズ) [☆=MMT]
⬇︎ ┗━━┓
┃シュンペーター┃シュンペーター━━━━┓
┃ ┃ ⬇︎ ゴドリー
┃ケインズ ┗━━━➡︎ケインズ ➡︎ ミンスキー ➡︎ レイ☆、ケルトン☆
┃ポスト・ケインズ派┏━━┛┗➡︎ラーナー ⬆︎ ミッチェル☆、キーン
┃ ⬆︎ ┃ カルドア ムーア
┃マルクス ┃ カレツキ━━━━┛ ラヴォア
┃ ┃ (ケインズ➡︎┓)
┃ コモンズ (ジョン・ガルブレイス)➡︎ ジェームス・ガルブレイス☆
┗(旧)制度学派 ┏┛
⬆︎ エクルズ グッドハート
実務家 ホートリー モズラー☆
(ケインズ)
日本 西田昌司☆、藤井聡☆
三橋貴明☆、中野剛志☆
(リスト➡︎┛)
タイトル
現代マクロ経済学
ジェームス・K.ガルブレイス/〔著〕
ウィリアム・A.ダリティJr./〔著〕
塚原康博/ほか訳
TBSブリタニカ 1998.03
24cm 439p
Macroeconomics.1994
要旨
金融不安、財政赤字、債務危機へのアプローチ。ポストケインジアンの理論と展望を詳しく分析。経済諸学派間の多様な歴史上の“論争”を紹介。ダイナミックな構成とエピソード豊富なコラム。
目次
第1部 マクロ経済学の革命
1革命と反革命
2雇用と失業
3利子、貨幣および不確実性
第2部 ケインジアンの理論
4古典派とケインジアンのマクロ経済モデル
5IS‐LMモデルとフィリップス曲線
第3部 マネタリズムと新しい古典派経済学
6貨幣入門
7マネタリズム
8合理的期待
9新しい古典派経済学
第4部 ケインジアン経済学の新展開
10ニューケインジアンのマクロ経済学
11開放経済のマクロ経済学
12ポストケインジアンの理論
13Z-Dモデルと景気循環
内容
各章末:参考文献
名著だ
ポストケインズ経済学の教科書は
アイクナーとラヴォアとこれしかない
格差と不安定のグローバル経済学――ガルブレイスの現代資本主義論 単行本 – 2014/10/15
- http://econdays.net/?p=9406
ジェイムズ・K・ガルブレイス「命取りに無邪気な七つの嘘(ウォーレン・モズラー)」 への序文
MMT(Modern Monetary Therory)創始者のひとり、ウォーレン・モズラーがサイトで配布している
SEVEN DEADLY INNOCENT FRAUDS
OF ECONOMIC POLICY、
https://moslereconomics.com/wp-content/powerpoints/7DIF.pdf 2010
原文は平易な英語で書かれており、超おススメなのですが、前半(七つの嘘のパート)だけ日本語化してみたく。
嘘その1~6http://econdays.net/?p=9414 ①
http://econdays.net/?p=9488 ②
http://econdays.net/?p=9522 ③
http://econdays.net/?p=9619 ④
http://econdays.net/?p=9668 ⑤参考:
Soft Currency Economics II: The Origin of Modern Monetary Theory (英語) ペーパーバック – 2013/3/11 Warren Mosler (著)MMT SCOTLAND Warren Mosler 2019/539:19
現代金融理論(MMT)ー 伝統的ではない経済運営提案
Modern Monetary Theory is an unconventional take on economic strategy
By Dylan Matthews February 18, 2012ttps://www.washingtonpost.com/business/modern-monetary-theory-is-an-unconventional-take-on-economic-strategy/2012/02/15/gIQAR8uPMR_story.html?utm_term=.e970b3c85502
(旧記事の翻訳です)ジェームス・K・”ジェイミー”・ガルブレイスは約11年前のことを覚えている。数百人の同僚経済学者たちは彼を笑った。真正面から、ホワイトハウスで。2000年4月のことだった。ガルブレイスはビル・クリントン大統領の委員会で、財政黒字について招待講演を行った。ガルブレイスが選ばれたのは自然なことだった。テキサス大学の公共政策の教授、その前は両院合同経済委員会の主席エコノミストという経歴で、しょっちゅうマスコミに寄稿し、議会証言もしていた。さらに彼の父、ジョン・ケネス・ガルブレイスはその世代では最も有名な経済学者だった。ハーバード大学教授でベストセラーの著者、ケネディ一族の懐刀だった。ジャミーには父の伝説を発展継承する役割が期待されていた。委員会でガルブレイスは浮いていてたのは、彼のメッセージが型破りだったからだ。財政黒字とは、常識的な見方では好機だ。公債の返済、減税、給付金の強化、新支出計画の検討を行うチャンスだ。支出して経済を助けるべき時だというわけだ。彼の見方では、財政黒字は危機だ。政府が黒字を続けると、人々や企業によって支出されるべき貨幣が国の金庫に集まる。「私は”昔の経済学者は財政の黒字は財政的の(経済の)重荷と理解していた”、と言ったんだ」彼は言う。「250人の経済学者の前でね。クスクス笑われたよ。」ガルブレイスは、2001年の不況 — 数年の黒字の後に起こった — が自分の正しさを証明しているという。その十年後、連邦財政赤字が上昇するについてワシントンの見解は割れていた。ガルブレイスが心配したのは赤字を小さく抑え続けることの危険性だった。負債は重要なのか、またどのように重要なのかの経済学論争の主要人物に彼はなっていた。この問題は全米のトップ経済学者の間でも意見が分かれ、学者間の熱い議論を呼んだ。政策担当者がどの見解を採用するかが、雇用、物価、税制などすべてに影響するような状況だった。負債を減らすために支出を減らし税収を上げよと主張する財政タカ派に対し、経済が回復すまでは緊縮を避けるべきだとする財政ハト派だ。ガルブレイスはどちらでもない財政フクロウ派だ。フクロウも財政を急いで均衡させる必要は一切ないと考える。ただ、そもそも均衡させる必要を認めていないのだ。フクロウは好況時であっても経済成長のために赤字財政支出が不可欠なのだと考える。フクロウというのはガルブレイスの言葉ではない。そう言い始めたのはミズーリ大学カンザスシティ校の教授、ステファニー・ケルトンだ。彼女はガルブレイスとともに小さな経済学者グループのメンバーだ。そのグループの結論はこうだ。国会議員もシンクタンク員も主流経済学者も、皆、政府が経済とどのようにかかわりあっているかを間違えて理解している、と。もし彼らの理論— “Modern Monetary Theory(現代金融理論)” または MMT と呼ばれる— が正しければ、私たちが負債や税、連邦準備金について知っていると思っていたことはすべて間違いだったということになる。ルーツはケインズ”現代金融理論(Modern Monetary Theory)”はオーストラリアの経済学者ビル・ミッチェルによって確立され主導されているが、そのルーツはかなり古い。この呼び方は現代マクロ経済学の創始者である、ジョン・メイナード・ケインズにちなんでいる。「貨幣論」でケインズは次のように主張した。「すべての近代国家」は少なくとも向こう4000年の間、貨幣を何であり何がそうでないのかを決定する能力を持っている。貨幣は「国の創出物」であるというその主張はこの理論の中核になっている。米国ほかの信用紙幣制度の下にある地域においては、貨幣は政府によって無限にを創造され、印刷され、流通される。この考えをそのまま押し進めれば政府が貨幣を使い果たすことはありえないということになる。政府は常に貨幣を作ることができるのだ。だからと言って税が不要というわけではい。実は、システム全体を動かす鍵が税なのだ。税を払う必要があることによって人々は印刷紙幣を使う。また税は経済の加熱を防ぐためにも必要だ。入手できる財の供給より消費者需要が大きい場合、物価が上昇しインフレーション(物価が上昇するとともに購買力が落ちる)が起こる。また、もしこの理論が正しければ、政府が支出に合わせた額の税を集める理由はない、ということになる。実際、この理論の推進者たちは不況期における強力な減税と財政支出を求めている。ワレン・モズラーはヘッジファンドマネージャーで — 節税を兼ねて — バージン諸島のセント・クロイ島に住んでいる。彼も主導者の一人だ。おそらく彼のスポーツカー会社の方で有名だろう。またしょっちゅう選挙運動をやっている(2010コネチカット州上院選では1%弱の票を得た)。彼の主張は、社会保障年金信託基金の原資としての給与税を停止して、不況対策として政府は希望者全員に時給8ドルの職を提供せよ、というものだ。この理論の推進者は主として二つの組織が関係している。ミズーリ大学カンザスシティ校の経済学部と、バード大学のレビー・エコノミックス・インスティテュートで、どちらもモズラーの寄付を受けている。しかしこの運動が支持者を爆発的に増やしているのは主として経済系のブログを通してだ。Naked Capitalismは金融経済系の不遜で情熱的なブログだが、月に100万人に近い読者を集めているのだが、ケルトンや同僚のミズーリ大教授であるL・ランダル・レイ、ワートバーグ大学教授のスコット・フルワイラーを登場させている。New Deal 2.0,という、リベラル・ルーズベルト・インスティテュートを基盤とする経済「オタク」ブログも同様だ。支持者たちは、主流マクロ経済学者がMMT理論をブログで取り上げようものなら、コメント欄に熱狂的に殺到する。レイの仕事は主要なリベラルブログである影響を持つFiredoglake, やニューヨークタイムスop-ed page. でも取り上げられるようになった。「危機が後押しとはなったが、大きいのはブログ空間だった」、とレイは言う。「何しろ本を出版することができた。学会誌のメインストリームから外れていると思われるようなものを出版することはとてもむつかしいものだ。」。とりわけガルブレイス、はそのメッセージをthe Daily Beastから議会に至るまで広く広めてきた。彼が助言した議員には、例えば2008年の金融危機の時に下院議長だったNancy Pelosi (民主党、カリフォルニア選出)も含まれる。昨年夏、彼は債務シーリングの議論についての議員グループと意見交換を行った。彼はオバマ政権が財政刺激パッケージを設計する際に政策指南したわずかな人数の経済学者の一人だった。「失うものが一番多いのはジェイミーだ」ケルトンは言う。「本当に勇気があると思います。あれほどのビッグネームでとても尊敬されているのですから。」レイたちも同じことを言う。彼らも政策立案者への助言をしてきたが、この理論の時代が来たというはっきりとした手ごたえがあるという。「ウエブでの我々の存在感は数カ月ごとに一段階上がっている感じだ。」とフルワイラーは言う。対立理論赤字支出によって経済を不況から脱出させるという考えは古くからある。それはケインズの「雇用・利子および貨幣の一般理論」の核心だった。2009年の経済対策の主要な根拠であり、前ホワイトハウスアドバイザーのクリスティーナ・ローマーや経済学者のポール・クルーグマンら、ケインジアンを名乗る多くの専門家はもっと支出すべきだと主張した。もちろん、敵も多い。カギとなる分裂は1930年代に遡る。ノーベル賞受賞者のジョン・ヒックスやポール・サミュエルソンらの経済学者グループは、ケインズの洞察を古典的な経済学に導入する試みを推進した。ヒックスは、ケインズ理論を要約し数学的なモデルに落とし込んだ。サミュエルソンはケインズのマクロ経済学(経済の振る舞いを全体として捉える)を伝統的な経済学(人々や企業がどのように資源を配置するかに注目する)を統合しようとした。これがその後のマクロ経済理論の舞台を用意することになった。現在でもグレッグ・マンキュー(ハーバード大学の経済学者で、ジョージ・W・ブッシュの首席経済アドバイザー)やローマーの夫デイビッドといった「ニューケインジアン」たちは企業や消費者のミクロレベルの行動をケインジアンマクロ経済理論の土台に結びつけようと模索している。MMTの理論家たちはジョーン・ロビンソン、ニコラス・カルドア、ハイマン・ミンスキーらによって確立した”ポストケインジアン”の伝統の上にいる。彼らはサミュエルソンの理論は失敗だと主張する。ガルブレイスの言葉では、そのモデルは「あたかも金融部門が存在しない」からだ。個人の系譜もある。レイはミンスキーの指導で博士号をとり、ガルブレイスはケンブリッジ大学でロビンソンやカルドアに学んだ。ガルブレイスは言う。この理論は「ケインズから父、そしてミンスキーと流れてきたもう一つの伝統」の一部なのだと。そしてMMTの推進者たちは、その出発点は不況時の積極赤字財政を唱導したケインズだとしているが、いわゆるケインジアンとは異なる。主流の経済学者たちで財政支出の声を上げている経済学者たちも、MMT理論の中心的な主張はしぶしぶながら認めている。たとえばクルーグマンは横断的な経済学者の議論にしょっちゅう参加している。クルーグマンは好況時に巨大な財政赤字を目指したらハイパーインフレーションを招くかもしれないと論じた。マンキューは政府が支払い不能になることは決してないということは認めたものの、別の考え方をしている。技術的には正しい、と彼は言う。政府はいくらでも貨幣を印刷のでデフォルトすることはない。そのリスクは、それがインフレ率を大きく引き上げるきっかけになりうることだ。金融制度の大半を破産させてしまうだろう。デフォルトは大きな痛みではあるが、それよりはマシだと。マンキューの批評はMMTに関する議論の核心を突いている。今の赤字はいつどのように処理されるのか、また、消すべきものなのかという問題だ。赤字支出を実行する時、政府は公開市場に国債を売り出す。もし政府の債務が大きくなり過ぎたら、主流経済学者によれば、国際の買い手が高金利を要求するだろう。すると政府の利払いが膨れ上がりそれが借金に加算されていく。そのサイクルから脱するためにFED — 国の金融システムの中心で通貨供給と信用を管理する — は、より低金利で国債を買うことができる。民間市場をバイパスするのだ。ところがFEDが国債を直接購入することはできないそれはできない—法で禁じられているためだ。あるいはFEDは自分で印刷したマネーで国債を買うかもしれない。それはマネーサプライの増加を意味する。するとインフレ率が上昇し、その先にはハイパーインフレーションが待っているだろう。「赤字政府を運営し続けることは不可能だ。なぜならインフレーションが始まり、やがてその経済からリソースを吸い上げるよりも早くインフレ率が上昇してしまう。」と言うのはノースカロライナ大学の経済学者カール・スミスだ。「これが古典的なハイパーインフレーション問題で、ジンバブエとワイマール共和国で起こったことだ。」インフレーションのリスクについて、主流経済学者と政策担当者は大筋で同じ考え方を持っている。中期的には — 他の条件が同じであれば — 赤字を小さく保つことがとにかく重要だ。MMT陣営の経済学者も場合によっては財政赤字がインフレーションを引き起こすことを認めている。しかしそれが起こるのは完全雇用の時のみだという主張だ。職を望む人が全員雇用されており遊休資源(労働力、資本など)がない場合だ。ガルブレイスは言う。「それが問題になるような近代の事例は一つも思いつかない。」「いわゆる需要要因で深刻なインフレが問題に最後になったと言えるのはWWIにさかのぼる。」ガルブレイスは言う。「その恐れが実際に最後に観察されてから長い時間がたっているし、WWIの状況はもう決して再現されることがありえないものだ。」批判に対する反論
ガルブレイスたちによれば、現在FEDによって為されている金融政策は機能してない。FEDは成長と雇用を守るために通常一つまたは二つのレバーを使う。まず、公開市場で短期国債を購入することで短期金利を下げることができる。現在のように、短期金利がゼロに近い場合は、「量的緩和」または大規模な民間部門からの資産(たとえば債権。長期国さうも含まれる)購入することができる。FEDが2008年から2010にかけて行ったのがこれで、経済を再加速するための緊急的な努力だった。MMTによれば、FEDが国債を買い上げれば、ガルブレイスの表現では「帳簿操作」であり、家計の所得を増加させることはないのでインフレに誘導することはできない。「私には明らかなのだが、、、国債を買い上げることで経済にマネーを溢れさせる、、、それは人々の行動を変えはしない」、ガルブレイスは言う。「それは結局金融システム内部に積みあがるだけであるし、それはまさに実際に起こっていたことだ」。理論家ですら「量的緩和がどのように機能するか見当もついていない」、と言うのはジョー・ギャグノンだ。彼はピーターソン研究所のエコノミストで、2008年の量的緩和の第一ラウンドの際にFEDで重要な役割を果たした人物だ。仮にもし、準備預金に保持されていたマネーやFEDが国債を購入するために使ったマネーが準備預金口座にそのまま滞留するとしても、これらの準備預金の増大は貸出を増やし経済全体を刺激するはずというのだ。主流の反論はもう一つある。財政赤字はそれ自体経済にとって良くないのだと。MMT理論によれば、政府が黒字となると政府が貯蓄者となり、すなわち民間部門が負債を負うことを意味する。政府は事実上、「民間の財布からマネーを取り上げさらなる高負債に沈めさえることになるのだ。」これはホワイトハウスを去るときのガルブレイスのコメントだ。主流派はガルブレイスがクリントンにプレゼンを行ったときと同じようにこの議論を一笑に付す。「私の答えは単語二つ。オーストラリア、カナダ。」ギャグノンは言う。「ジェイミー・ガルブレイスもこの二国を調べれば直ちに自分が間違っている証拠を見るだろう。オーストラリアはずっと財政黒字を続けていて国家負債は事実上ないが、急成長しつつも世界一の健全財政だ。」カナダも同じように高成長を達成しつつ継続的な財政黒字を維持している。そのような質問に対し、ガルブレイスは彼を「あまりにも偏っている」と評する。彼が学位を取るためにケンブリッジからイエール大学に来た頃の経済学部はさらに保守的なケインズ経済学の牙城だった。
ガルブレイスによれば、サミュエルソンやその一派の成功は「経済思想のマスマーケティングの成果で、サミュエルソンはその巨匠だ。ケンブリッジ学派はそういうことができなかった。」主流の経済学者は負けを認めたがらない。1960年代のいわゆる「ケンブリッジ資本論争」のような事例でさえだ。サミュエルソンはポストケインジアンと論争し、本人が敗北を認めた。しかしそのような事例は、ガルブレイスが言うには経済史から「トロツキーのようにエアブラシで消された」のだ。ところで、MMT独特の現実世界との関係はちょっとしたギャンブルにもなり得る。モズラーはヘッジファンドマネージャーだが、1990年初頭のひらめきによりムーブメントにその名を刻んだ。その頃、イタリアはデフォルト寸前というのが市場の認識だった。モズラーは、当時イタリアは独自通貨リラを持っており、イタリアがリラを印刷できる限りデフォルトはないと判断した。彼はそちらに賭け、イタリアはデフォルトせず、大金を手にした。「デフォルトはできないという考えに近づいた人の周りには巨悪の金が落ちていたんだ」。十年後、彼は巨額の金を失うこともあると学んだ。ロシアにデフォルト懸念が生じたとき、彼は再度デフォルトはない方に賭けた。ロシアは自国通貨を持っていたがデフォルトを実行し、モズラーはファンドを一つ溶かし、8億5千万ドルの投資の大半を失うことになった。モズラーは、ロシアが固定相場制をとっていたためだとしている。独自通貨を持っているような振る舞いさえすればデフォルトは回避できたはずだと。しかしこのことは批判者の主張を証明したかもしれない。デフォルトは技術的には常に避けられるが、場合によっては最善の選択肢にかもしれない、との。関連として、「廣宮孝信の「国の借金」“新常識”」にもMMTに関するNYTの記事翻訳があります。
http://grandpalais1975.blog104.fc2.com/blog-entry-590.html参考:ポスト・ケインジアンへようこそ
以下はUnlearning Economics “Introducing Post-Keynesian Economics“(Pieria September 17, 2013)の訳異端の経済学に対してよくある批判は、その本質が批判することにあって、主流の経済学の代替となるものを用意するということがほとんどないというものだ(少なくとも、オーストリアンやマル経の”過激派”を除けば)。確かに、僕を含め異端派の経済学者は、代替となる理論を論じるよりも多くの時間を主流派経済学の批判に費やしている。それでも、実際には価格、分配、金融、貿易の代替理論に関する膨大な量の研究がある。以下では、経済理論に対する「ポスト・ケインジアン(PK)」流のアプローチとして知られているものをざっと書いてみようと思う。このエントリはPK理論の擁護ではなく、その紹介を願うものであって、批判は基本控えているということを覚えておいてほしい。消費者理論PKはマクロ経済学に主軸をおいているから、消費者理論についてたくさんの研究があるわけではないけれど、それでも特定の理論的枠組みについての合意がある。この枠組みを最初に示したのはマーク・ラヴォイで、彼は既存の研究を取りまとめて、そこにかなりの整合性があることを発見した。つまり、異なるPK学者間や、PK消費理論とPKマクロ理論、そしてPK理論と実証済みの精神・行動上の特性の間の整合性だ。PK理論では、財のバスケットから最適効用を計算するというコンピューターでも不可能なことの代わりに、消費者は単純で大雑把な決まりに従う。他人をまねることと、強く(自ら)制限した選択肢に基づいて決定を行うことだ。人々の消費は大部分は所定のものの繰り返しであって、新古典派的な言葉の意味においての「決定」を行うことは稀だ。消費者は実際には何も「最適化」しておらず、せいぜい「満足化」といったところだ。消費者はまず、自分の消費を特定の分類の財とサービスに分け、それらの分類を階層的なやり方で選択する。食べ物や住居費のような基本的な必需品は、何よりもまず第一に充足されるだろう。そして消費者が一つの分類に関しては満足すると、彼らは次の分類に移ることになる。こうした階層的な並びは、「代替効果」よりも「所得効果」が優勢だということを意味し、所得は需要の水準と種類の双方について相対価格よりも重要な決定要因だ。このことは、経済は一般的に需要主導型で、賃金はその需要の鍵となる要素であるというポスト・ケインジアンのマクロ経済学と整合的だ。一つの財が他の財によって代替される水準の価格が常に存在すると仮定する新古典派の効用関数と異なり、このモデルにおいては消費者はそれぞれの分類を大部分独立した形で考える。消費者は、スカーフの価格のせいで部屋の賃貸をより好むようになるということはない。それでも基本的な「必需品」が満たされると、それに引き続く「欲求(want)」、これは大部分社会的に創り出されるけれど、そうしたものはよりさっくりと代替可能だ。例えば、洋服とiPodスピーカーとか。生産者理論ポスト・ケインジアンには新古典派生産者理論の欠陥について言うことが山ほどある。特に、ほとんどの企業が限界主義の価格決定理論(marginalist theories of pricing)によって、どうやら完全に当惑してしまっているのだから。そういうことから、PKのアプローチはずっと単純で、実際に観察されるビジネス慣行ともより調和的だ。(以前に書いたように、限界主義的な見方は農業とはより親和的かもしれないけれど、工業とはかけ離れている。)研究によれば企業は「コストプラス」ルールを価格決定に使っていて、生産物の平均費用に特定のパーセントをマークアップ(上乗せ)として追加している。このマークアップは色んな要因によって左右される。市場の支配力だったり、規範や企業の歴史、株主の要求、そして気分のようなものにすら左右されたりする(例:多くの場合、価格は端数のない区切りのよい数字になっている)。企業がこうしたやり方をするのには、いくつかの理由がある。つまり、これが簡単で計算費用を節約できるというもの、限界費用と限界収入に関する知識は学ぶのが難しかったり不可能だったりするというもの、特定の利益率を確保でき、事業計画と予測を立てるのに役立つというものがそれだ。(企業が十分に大きくない場合は大概において市場価格に追従するだろうけど、これは大抵の場合完全競争的なシナリオとは関連性が薄く、支配的企業による特定の価格と費用の決定ということと関連性が高い。新聞の売店やコカコーラ/ペプシを思い浮かべてほしい。)これは、価格が「粘着」的なのは何らかの精神的障壁や市場の失敗によってではなく、企業が将来の相当の期間に渡って受け取る収入のフローを、確実にしたいと思っているからだということを意味する。価格はめったに市場を均衡させず、それを目的ともしていない。企業は一定程度の柔軟性を確保して、需要の変化への対応力を残しておきたいと考えているんだ。さらに、企業は一般的に規模に対して収穫一定(実際のところはおそらく逓増)で、だから数量は価格よりもすんなり変化する(消費者も頻繁な価格変更を嫌う)。最後に、キャメロン・マレイが理論化したように、企業は投資の最後の一滴まで搾り取るよりは、一般的には収益(returns)(利益(profit)/費用)を求める。大概において、企業内部の仕組みや経営上の意思決定を理解することは、「需要ー供給」の仕組みを理解することよりもしばしば重要なのだ。内生的貨幣内生的貨幣はブロゴスフィアにいるものにとっては目新しいものじゃないから、この点に多くは割かない。主要な原理は、現代資本主義経済は何よりもまず信用に基づいているというものだ。複式簿記を通じて銀行は信用という形で貨幣を創りだし、ほとんどの取引は単に人々の口座間の送金という形で行われる。貸し出しが行われるとM1が拡大し、それが返済されると同額分だけM1が縮小する。これはマネーサプライが経済活動の水準と対応しているということを意味し、その逆(もしくは「ホットポテト」効果)じゃない。銀行は準備預金を用意する前に信用を拡大するから、貨幣の因果関係は主流派経済学と比べると「逆向き」になっている。広義のマネーサプライが狭義のものに先行して上昇するんだ。中央銀行の役割は大部分受動的だ。公開市場操作を通じて準備預金の価格に影響を与えることができるけれど、量については限定的なコントロールしか持たない。緊縮的になりすぎると銀行システム、ひいては経済全体にまで多大な問題を起こしてしまうからだ。中央銀行は、理論上は準備預金の量を好きなだけ引き上げることが出来るけれど、より広義のマネーサプライ(もしくは所得)をコントロールすることは出来ないから、これは大部分的外れの行動だ。国際貿易ポスト・ケインジアンの貿易理論は、その名前に違わずケインズ自身の有効需要と貿易に関する研究から強く影響を受けている。主流派経済学の比較優位によれば、生産条件は技術や選好、資源賦存量といった固有の「供給側」要因によって決定され、「貿易障壁」が全くなければ価格によって完全雇用が作り出される。一方ケインズは、雇用と生産の水準は有効需要もしくは独立支出(autonomous expenditure)の水準によって決定されると考えた。ケインズの枠組みでは、相対価格と賃金が別々に決定されるために、名目賃金と価格の減少のどちらか一方もしくはその双方ともに、実質賃金の減少につながるとは限らない。さらに、労働者は資本家よりも高い限界消費性向(MPC)を持つために、どんな実質賃金の減少も需要を減少させうる。そして最後に、全体的なデフレは現金の価値を上昇させ、人々を支出よりも貯蓄に走らせる。貿易相手国よりも生産性の低い「自由貿易」国家は、より少ない量の需要にそのまま直面するということをこれは意味する。非生産的な産業から追い出された労働者は、新しい分野に移動するのではなく原則として失業し、この不均衡を「正す(correct)」長期傾向は存在しない。実際のところ、ベルドーンの法則に従い、長期の生産性成長率は産出の成長の関数として見なされる。ポスト・ケインジアンの考え方では、しばしば投機的である資本フローが「実物」貿易を支配する。投資家は可能な限り高い収益を求めるから、資本は比較優位ではなく絶対優位にしたがって移動することになる。だから資本規制がない場合、外国からの資本の流出入が断続的な影響をもたらすために、金融政策当局は金利を完全にコントロールすることはできない。そして中央銀行は原則として「完全雇用」水準よりも高い水準に金利を設定しなければ、その国はキャピタルフライトを被ることになる。(過去50年をぱっと見るに、これは幾分正しいように思える。資本規制と為替レート管理が行われていたブレトンウッズ時代とその後の「自由化」時代を比べると、前者は後者よりも金利と失業率がともに低い。)まとめ上に挙げたアプローチ全ての間にはいくつか特筆すべき類似性がある。第一に、ポスト・ケインジアンは鍵となる変数(賃金、金利)は貨幣的なものであり、実体的な現象ではないと強調する傾向にある。これは実物的な概念が重要ではないということを意味するのではなく(むしろそうしたところからは程遠い)、実物的な概念は分析の出発点としては不適切なことが多いということを意味する。第二に、原則として特定の変数が特別な地位を与えられていることはない。消費者と生産者は「最適化」をしないし、国家間の貿易は長期にわたって不均衡を続けうる。そして経済は需要が沈滞した状態に置かれ続ける可能性があり、それが価格調整によって解決されることはない。第三に、制度的なものが強く重要視されている。価格や需要、貿易が社会規範や合意というようなものに依存し、経済主体は確実性の程度を長期間維持するために意思決定を固定化しがちであるために、歴史的な経路依存に基づく異なった経済動向が継続しうるのであって、「すべてに当てはまる」モデルは存在しない。___[pkと略すとサッカーファンが誤解する。varもそうだ。]__参考:JGPとフィリップス曲線
https://nam-students.blogspot.com/2019/07/jgp.html
JGPを説明するにはミッチェル#19:309の図よりも#16:242の図の方が良い
(#16ではまだJGPは出てこない)
フィリップス曲線はまず#18で解説される
___
price anchon19。6 1rnpact on the Phillips CurveWewillnowexaminetheimpactoftheintrOductionOfajGonthetraditionalPh‖lips curve trade´o「Consider Figure 19.3.ln a Ph‖lips curve、vorld,imagine that the unemployment rate vvas at υRA and theinЯa‐tion rate was IA・The fu‖emp10yment unemployment rate is tJRFtlと['WhiCh denotes frictiOnal unemploymentThe governmentis under pressure to reduce the excessive unennploソment・lfit increased aggregate demand′wage´wage and wage´price pressures would d面ve the innation rate up to lB(a movement along the Phillips curvefrom Point A to Point 3)and aChieve fu‖employment.Hovrevet there is no guarantee that the inttatiOn rate would remain stable at lB.Certainl"the NAIR∪modelwould predict that bargaining agents would incorporate the new higherinlation rate into their expectations and
6フィリップス曲線上の1npactウェストノウハミンアミノハイムパクトのためのスリップ曲線トレード曲線図19.3.lnを考慮して、フィリップス曲線、vorldを考えると、失業率vvasは「失」率となります。 総失業率を減らすために政府は圧力をかけられている。総需要の賃金と賃金の圧力の圧力を増加させることができれば、金利上昇はポンド(フィリップスに沿った動き)になる ポイントAからポイント3)への曲線とa a a h ave fuloyの雇用。インタビュー率が1 Bで安定したままであるという保証はない。the Phillips curve would start moving out.VVhether that happens in reality is nOt re!evant here(we cOnsideredthose issuesin Chapter 18).lf the government initia‖y responded to the excessive unemployment at Point/ヽby intiOduCing aりG it couldabsorb workers in iobs cOmmensurate with the difFerence between υRA and υRFυιし'although in reality as morework became available,workers from outJde the labour force(the hidden unemployed)would also takeりG jobsin preference tO remaining withoutincOme.But、へ/hatever the quantum of workers that would initia‖y be absorbed in thejG pooしthe ecOnomy wouldmovefrom A to A,G ratherthan from A to B.in other words,the introduction of the jG elinlinates the Ph‖‖ps curve.The macroeconomic opportun´ities facing the government are not dictated by a perceived unemployment and inЯatiOn trade´ofF whichmight be unstable(asin a NAIRU world).Ratheらfu‖ennployment and price stab‖ity go hand in hand.Beniamin Graham wrote in the 1930s about the idea of stabilising pttces and standards ofliving by surplusstorage.He documents how a government might deal with surplus production in the economy:″[The]State maydeal with actual or threatened surplusin one offour ways(a)by preVendngit(b)by deStroying it(c)by dump´ing it or(d)by conserving itr′Graham(193フ:18)Jn the COntext ofan excess supply oflabouらgovernments nowtend to choose the dumping strategy via the unemployment bufFer stOck approach(the NAIRU).HoWeveぅit isless wasteful to use the conservation approach,which is renected in the lG framework.ThejG approach is alsobased on the maintenance ofa variable bufer stOck ofjobsin‖ne with Яuctuationsin private demand.Howevetthe weaknesses ofthe ag百cultural scheme do not apply to ajG First,if there is a price guarantee(theりG wage)below the prevailing market price,and a bufFer stock of working hours which is designed to absorb the excesssupply oflabour at the jG wage,then a form offu‖employment can be generated Without tinkering with theprlce structure.Second′the incentives to overproduce in commodity bufFer stock systems do not apply to maintenance ofalabour bufFer stOck because no one is concerned that ennployed、vorkers wou!d have more children than unem´ployed vvorkers.実際に起こることは、ここでは関係ありません(私たちは第18章のこの問題を考慮しています)。政府のイニシアチブのために、労働者を吸収することによって、ポイントでの過度の失業に対応しました。実際にはより多くの仕事が利用可能になるにつれて、労働力(隠れた失業者)の外からの労働者もまたGの仕事を優先的に受けとることになるだろうが、失業者数の増加を嫌っている。経済がAからAへ、GからAからBへと移動することになり、言い換えれば、jGの導入はPh-p曲線を廃止することになるだろう。 (NAIRUの世界のように)不安定なこともあると思われる失業率の高さと情報交換によって政府は決定的に左右されない。ラオスの雇用と価格の安定は密接に関連している。政府はどのようにして経済における余剰生産に対処することができるのかを文書化している。」「国家は実際のまたは脅迫された余剰を1つの方法で却下する可能性がある(a)by preVendngit(b) (c)それを捨てることによって、または(d)それを保護することによって(193 f:18)過激な政府の過剰供給の文脈の中で、失業者バッファ・アプローチアプローチ(NAIRU)を介して捨てる戦略を選ぶ傾向があります。 lGの枠組みの中で再考されている保全アプローチを使用することは無駄ではありません。JGアプローチは、個人の需要の変動に対応するための変動的なバッファストックの維持にも基づいています。一般的な市場価格を下回る価格保証(りG賃金)と、jG賃金での過剰な供給過剰を吸収するように設計されたより多くの労働時間の在庫がある場合、それから別の形態の不要雇用を生み出すことができる。商品バッファシステムの過剰生産に対するインセンティブは、従業員を雇用していない従業員以上の子供がいるのではないかと心配する人がいないためです。
以下も参照
MMT(現代貨幣理論)で解ける財政問題: 目からウロコの解決策 Kindle版
ガルブレイスによる教科書はポストケインジアン入門として必携
ケインズ一般理論におけるニュートンとアインシュタインの含意を真面目に扱っている
通常は自明のものにしてしまうが
ミッチェル2019より先に読むべきだ
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I S / L M図表は 、 G N P (国民総生産 )と利子率が I S曲線 (財市場の均衡を示す )と L M曲線 (貨幣市場の均衡を示す )の交点によって同時に決定されることを教えてくれるが 、ケインジアンとマネタリストの違いは 、 I S曲線と L M曲線の形状にかかわっているという 。すなわち 、マネタリスト (古典派も同様 )が 、 L M曲線がほとんど垂直であるようなケース (貨幣の流通速度がほとんど限界に達しており 、投機的動機に基づく貨幣需要がほとんど存在しない )を想定しているのに対して 、ケインズやケインジアンは 、 L M曲線がほとんど水平 (いわゆる 「流動性の罠 」の状態 ) 、かつ I S曲線がほとんど垂直であるようなケ ースを想定しているというのである 。サムエルソンは 、次のように解説している ( * 2 5 ) 。
「ヒックス=ハンセン図は 、財政政策と金融政策 、所得決定の理論 、それに貨幣理論の全部を総合することに成功している 。それはさらに 、貨幣の流通速度についての明確な一般理論を提供することにより 、マネタリストとケインジアンのマクロ経済理論を総合するのにも役立っている 。すなわち重要な意味において 、マネタリストの反革命は 、 L Mおよび I Sの形についての論争に帰してしまうのである 。 」
* 2 4 … …出典は 、ポ ール ・ A ・サムエルソン 『経済学 (第十一版 ) 』都留重人訳 、上巻 (岩波書店 、一九八一年 )三七二ペ ージ 。
* 2 5 … …前同 。
参考:
Kelton and Krugman on IS-LM and MMT Jo MichellMarch 6, 2019
https://nam-students.blogspot.com/2019/06/kelton-and-krugman-on-is-lm-and-mmt-jo.html
MP曲線の方がポストケインジアン的には重要だ
ガルブレイス
1998年351頁
第7章
利潤の決定要因
[(1933) 1954]
単純化されたモデルにおける利潤の理論
まず最初に,政府支出と課税を無視することができる封鎖経済における利潤
の決定要因について考察しよう。そうすると,粗国民生産物は,(固定資本と
在庫への)粗投資と消費の合計に等しいであろう。事実上税金は支払われてい
ないので,粗国民生産物の価値は労働者と資本家の間で分割されるであろう。
労働者の所得は賃金と俸給から成る。資本家の所得,すなわち粗利潤は,減価
償却費,留保利潤, 配当,非法人企業からの収益の回収,地代および利子を含
んでいる。かくしてわれわれは, 資本家消費と労働者消費を区別して示した次
のような粗国民生産物の貸借対照表を得る。
粗利潤 粗投資
賃金と俸給 資本家消費
労働者消費
粗国民生産物 粗国民生産物
労働者は貯著しないという仮定を追加すれば, 労働者消費は彼らの所得に等し
くなる。このことから直接的に,次式を得る。
粗利潤 = 粗投資+資本家消費
この方程式は何を意味しているのであろうか。それは,ある期間の利潤が資
本家消費と投資を決定するということを意味しているのであろうか,あるいは
その逆のことを意味しているのであろうか。この疑問に対する回答は, これら
の項目のうちどの項目が直接的に資本家の決意によって決定されるのかという
ことに依存している。ところで,資本家はある期間に前期より多く消費したり
投資したりすることを決意することはできるであろうが, より多くの利潤を獲
得しようと決意することができないことは明らかである。したがって,利潤を
決定するのは彼らの消費決意と投資決意であって,その逆ではない。
カレツキ
資本主義経済の動態理論
79~80頁1984