火曜日, 2月 05, 2019

契約と組織の経済学 Kindle版 柳川 範之 (著)

             (経済学リンク::::::::::) 
NAMs出版プロジェクト: ミルグロム『組織の経済学』1997*
http://nam-students.blogspot.jp/2016/10/blog-post_10.html
NAMs出版プロジェクト: ベン卜・ホルムストローム 2016ノーベル経済学賞
http://nam-students.blogspot.jp/2016/10/2016_32.html
NAMs出版プロジェクト: オリバー・ハート 2016ノーベル経済学賞
http://nam-students.blogspot.jp/2016/10/2016_39.html
NAMs出版プロジェクト: ジャン・ティロール2014年ノーベル経済学賞
http://nam-students.blogspot.jp/2016/10/2014.html
契約と組織の経済学 柳川 範之
https://nam-students.blogspot.com/2019/01/kindle.html@

同じ柳川姓でもこちらを先に読んだ方がいいかも
契約理論を紹介している数少ない入門書
2008年版でも問題ない

ミクロ経済学・入門--ビジネスと政策を読みとく 新版 (有斐閣アルマ) 単行本(ソフトカバー)– 2015/3/23

ミクロ経済学・入門 ービジネスと政策を読みとく 新版 (有斐閣アルマ)  2015/3/23 柳川 隆 , 町野 和夫 , 吉野 一郎 


改訂新版試作:
経済学説の系譜と論点:   
  19世紀   20世紀                    21世紀 

  リカード                      分析的マルクス主義      
   投下労働価値説━労働価値説・恐慌論━━┳正統派 数理的マルクス主義
     ┃┃マルクス(学派)┗━━┓   ┗宇野派    森嶋通夫       
     ┃┃  ┗━━カレツキ━┓┃    ┗━日本人経済学者     生産者費用
     ┃┗━━━━━スラッファ┃┃            宇沢弘文   マルクス
     ┃           ┃┣━━━━━━━━━━レギュラシオン学派
     ┃┏━━━━━━━━━━┛┃ ______________________
     ┃┃ドイツ歴史学派━━━━制度学派  新制度学派
     ┃┃エンゲル シュモラー ヴェブレン コース    ミルグロム
     ┃┃   ウェーバー ゾンバルト 
     ┃┗━━━━━━━━━━━━━┓                    D
     ┣プルードンゲゼル     ┃            岩村充 プルードン
     ┃              ┃                生産者効用
     ┃              ┃ ____________________
     ┃         リンダールレーン=メイドナー  岩井克人
     ┃(北欧ヴィクセル┳┛   ┃            清滝信宏
     ┃       ケインズ   ┃     ミンスキー スティグリッツ
     ┃        ケインズ学派┻ポスト・ケインジアン━ニュー・ケインジアン
17世紀 ┃        ┃ハロッド カルドア ロビンソン   ┃ マンキュー
ペティ  ┃      ケンブリッジ学派             ┃クルーグマン
 ┃   ┃        ┗━━━━━━━━┓サミュエルソン┏━┛
 ┗古典派┫          レオンチェフ ┣新古典派総合 ┣━━シムズ
A・スミスJ.S.ミル  ┏━━━━━━━━┛トービン   ┗━┓    
18世紀 ┃      マーシャル 部分均衡       奥野正寛┃ 
     ┃        ┃ピグー           ルイス ┃ピケティ
     ┃        ┣━ヒックス IS・LM マンデル  ┃    B
   シスモンディ     ┃                  ┃ 消費者費用
  マルサス        ┃ラムゼー 外生的 成長理論 ソロー━┫ マルサス
   支配労働価値説┓   ┃ ________┃ _______┃_______
          ┃  ┏┛ノイマン 内生的━┛  OLG   ┃ゲーム
          ┗新古典派経済学 シュンペーター   ローマー┃ 理論
           ワルラス 一般均衡        AKモデル┃    C
 テュルゴー  クールノーパレート  シカゴ学派 バロー    ┃ ワルラス
 コンディヤック  主流派┃ クズネッツ フリードマン ルーカス ┃ 消費者効用
ケネー          ┃    ┏マネタリズム━合理的期待学派┫
             ┃    ┃        サージェント
   (貨幣中立説)  フィッシャーRBC(リアル・ビジネス・サイクル)モデル
 機械的貨幣数量説━━━┳貨幣数量説┛     外生的  プレスコット
ヒューム        ┃       ハイエク     キドランド
 連続的影響説     エッジワース  ドラッカー        ┃
      シーニョア ┃オーストリア学派   内生的  ┏━━━┛
  平均効用 限界効用 メンガー バヴェルク       ┗DSGE
     セイ   ジェボンズ  転形論争
                                 消費者  生産者
                        四元的   費用  B    A
                        価値論   効用  C    D


瀧澤弘和『現代経済学』より[上下逆にして改変]: 
図2-4 ゲーム理論の影響を受けた諸分野とノーベル賞


        1988 モーリス・アレ 市場と資源の効率的利用に関する理論
        1991 ロナルド・コース 取引費用経済学


ゲーム理論_______________________________
1994                 人間行動・制度   I    I
ハーサニ/ナッシュ/ゼルテン              行動ゲーム理論 I
      \                     実験ゲーム理論 I 
       \インセンティブ・制度設計           I    I
        \                      I    I
        /\___情報の非対称性           I    I
       /  \  1996マーリーズ/ヴィックリー  I    I
      /    \ 2001アカロフスペンス/    I    I
     /      \    スティグリッツ I     I    I
    /        \           I 行動実験経済学 I
 対立と協力        \          I 2002     I
 2005         /\         I カーネマン/スミスI
 オーマン/シェリング  /  \        I I        I
            /    \       I I        I
  マーケット・デザイン  メカニズム・デザイン I I        I
       /  \     2007     I I経済ガバナンスの理論
      /    \  ハーヴィッツ/    I I 2009
サーチ理論       \ マスキン/      I I オストロム
 2010        \マイヤーソン     I I ウィリアムソン
 ダイアモンド/      \     \    I I
 モーテンセン/ピサリデス  \     \   I I
マッチング理論         \     \  I I 
 2012       オークション理論  契約理論 I
 ロス/シャープレイ            2014 
                     ティロール I
                      2016 行動経済学 ナッジ理論
              ハートホルムストローム 2017
                           リチャード・セイラー

*ミルグロムはノーベル賞未受賞

岡田新版入門192頁参照




プリンシパルエージェント理論 - Wikipedia 依頼人、代理人

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%91%
E3%83%AB%EF%BC%9D%E3%82%A8%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%
82%A7%E3%83%B3%E3%83%88%E7%90%86%E8%AB%96
ja.wikipedia.org/wiki/プリンシパルエージェント理論
プリンシパルエージェント関係(-かんけい、principal-agent relationship)とは、行為主体Aが、自らの利益のための労務の ...
ボーナスb
  |    
  |       
  |           d
  |\経営者にとっての
  | \最適点の
  | a\集まり
  |_⬆︎_\__________
  |   |\↗︎c
  |   | \経営者の無差別曲線(左下ほど効用が高い)
  |___|__\_______
  0           固定賃金w
aインセンティブ両立条件 c参加条件 dインセンティブ両立条件と参加条件を満たす(w,b)の集合





(新用語・難解用語)プリンシパルエージェント問題 | 上場会社役員ガバナンスフ ...

govforum.jp/member/news/news-news/news.../12527/
自らの利益のための労務の実施を他の行為主体に委任する場合、依頼人を「 プリンシパル」、代理人を「エージェント」と呼ぶ。






プリンシパルエージェント理論とは - Weblio辞書

www.weblio.jp/content/プリンシパルエージェント理論
プリンシパルエージェント関係(-かんけい、principal-agent relationship)とは、行為主体Aが、自らの利益のための労務の ...


契約と組織の経済学
柳川 範之
東洋経済新報社
2000-03-01
https://www.amazon.co.jp/dp/B074MNMS2Y/ kindle

《一九八〇年代後半には、経済学者のベン卜・ホルムストロームとポール・ミルグロム
により、もう一つの重要な研究結果が示された。両氏は数々の仮説に基づく極めて理論的
な論文において、通常は売上高にかかわらず歩合をー定に保つのが、営業担当者の報酬制
度として最適であると結論づけた。さまざまな種類のボーナスを設けたり、一定期間内に
目標を達成した人に以後は別の報酬体系を適用したりするなど、仕組みを複雑にしすぎる
と、担当者たちはそれにうまく乗じる方法を見つけ出すだろう、というのだ。

 ホルムストロームとミルグロムが提案したようなシンプル極まりない報酬体系は、訴求
力がありそうに見えるが(理由のーつとして、運用しやすくコストもかさまない)、実際のと
ころ、多くの企業はもっと複雑な仕組みを選ぶ。「営業担当者はそれぞれ個性があり、モ
チべーションやニーズが異なるため、いくつもの要素から成る報酬体系のほうが幅広い層
にアピールするだろう」と考えるのだ。その理屈でいえば、個々の担当者から最高の成果
を引き出すには、個別に報酬体系を決めるべきだということになる。…》
(「営業を本気にさせる報酬制度とは」ダグ J.チュン ハーバード・ビジネス・スクール 助教授
DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー 2015年8/01号)

 新しい理論の特徴
  新しい契約理論の特徴のひとつは,経済問題を単なる市場取引と考えるのではなく,今まで経済学が(暗黙のうちに)所与とし,あまり分析の対象としてこなかった制度や慣習,法律といったものが経済に与える影響を分析していることです.その結果,ミクロ経済学の分析対象は大きく広がり,今まで以上にさまざまな興味深い分析ができるようになってきました.
  これまでの契約理論(完備契約理論)は,上で述べたように,モラルハザードや逆選択といった情報の非対称性から生じる問題を主に扱ってきました.そして,どのような契約を書けば,情報の非対称性から生じる損失を小さくできるか,というのが分析の中心でした.たとえば労働契約を考えた場合,労働者の努力水準が分からないならば,努力水準のシグナルである生産量に依存した賃金契約を書くことによって,努力水準を間接的にコントロールしようとしました.そして,生産量に依存した契約の中でどれが一番望ましいか,という形で最適な契約の問題が議論されてきました. ★ 1 
 しかし,現実にはこれまでの契約理論が想定しているようには契約は書かれていません.理論が要請する最適契約というのは複雑になっている場合が多いのですが,現実の契約はそれほど複雑ではありません.また,契約を書くこと自体,大きなコストがかかり,契約そのものが書かれていない場合も多いのです.新しい契約理論(不完備契約理論)はこの事実を踏まえ,契約が書かれていない,あるいは複雑な契約が書かれていない状況を出発点とします.そして契約がうまく書かれていない場合に,制度や法律,組織といったものが,どのように契約を補完しているのか,そしてどのように補完するべきか,というのが基本的テーマとなっています. ★ 2

〔注〕
 ★ 1  この点に関心のある読者はたとえば, Hart and Holmström( 1987)を参照してください.
 ★ 2  このような主張は,かなり以前から議論になってはいました.たとえば, Williamson( 1985)や, Klein et al.( 1978)を参照してください.

Williamson, O. (1985), The Economic Institutions of Capitalism, New York: Free Press.
Klein, B., R. Crawford and A. Alchian (1978), "Vertical Integration, Appropriable Rents and the Competitive Contracting Process," Journal of Law and Economics, 21: 297-326.


(3)  伝統的契約理論
  情報の経済学と重複する部分も多いのですが,本書ではほとんど説明することができなかった伝統的な契約理論については, Salanie, B. (1997), The Economics of Contracts, MIT Press. Hart, O., and B. Holmström (1987), "The Theory of Contracts," in T. Bewley( ed.), Advances in Economic Theory, Cambridge University Press, pp. 71-155.といった文献が挙げられます.ともに英文ですが,前者は初学者向けのテキストで,後者は少し前に書かれたサーベイ論文です.
  また,組織の問題について具体例を豊富に交えたテキストとしては, Milgrom, P., and J. Roberts (1992), Economics, Organization and Management, Englewood Cliffs.(奥野他訳( 1997)『組織の経済学』 NTT出版)があります.
  ところで,本書は不完備契約理論に焦点を絞って解説していますが,参考文献には伝統的契約理論の文献もかなり挙げておきましたので,参考にしてください.その中でも基本的な論文としては以下のようなものが挙げられます.
  モラルハザードの問題を扱ったプリンシパル-エージェントモデルは, Holmström (1979) (1982), Shavell (1979), Lazear and Rosen (1981)といった論文が古典的論文です. Holmström (1982)はチーム生産の問題を, Lazear and Rosen (1981)はトーナメントの問題を扱っています.
  発展モデルとしては, Holmström and Milgrom (1990)はエージェントが複数の作業をする問題を扱っており, Hermalin and Katz (1991)は再交渉の問題を扱っています. Holmström (1999)は昇進などダイナミックな側面を扱っています. 
 逆選択といった情報の非対称性の問題については, Fudenberg and Tirole (1991)に詳しい解説があります. Baron and Myerson (1982), Maskin and Riley (1984), Laffont and Tirole (1986)といった論文が古典的な基本論文であり, Maskin and Tirole (1990) (1992), Dewatripont (1989), Tirole (1992), Bernheim and Whinston (1986)といった論文が著名な発展論文です. Tirole (1992)は組織内の共謀の可能性を考慮しており, Bernheim and Whinston (1986)は複数のプリンシパルが同じエージェントを使う問題を扱っているという特徴があります. 
   
Holmström, B. (1999), "Managerial Incentive Problems ─ ─ A Dynamic Perspective," Review of Economic Studies, 66: 169-82.
参考の参考:
山本論考
人的資源管理における非金銭的誘因の効果 (Adobe PDF)
豊福佐藤論考
〈日本知財学会誌〉Vol.5 No.2―2008 : 72―87

不完備契約理論に関する基本文献 
 今のところ不完備契約理論についての解説書は,英文の Hart, O. (1995), Firms, Contracts, and Financial Structure, Oxford University Press.がほぼ唯一のものです.この本はテキストとして書かれたものではないので,説明がやや専門的になっている部分がありますが,本書で扱った内容の多くをカバーしています.
  組織の問題を議論してきた古典的論文としては, Coase (1937), Alchian and Demsetz (1972), Klein et al. (1978), Williamson (1985)といった論文があります.サーベイ論文としては Holmström and Tirole (1989)が詳しく解説しています.
 第 1章から第 4章までで説明している不完備契約アプローチを明確に展開したのは, Grossman and Hart (1986), Hart and Moore (1988) (1990)といった論文です. 
 第 5章で説明しているような形式的権限と実質的権限の違いは, Aghion and Tirole (1997)によって明確にされました.
  その他の論文では, Holmström and Milgrom (1994), Stole and Zwiebel (1996), Rajan and Zingales (1998)といった論文が,本書で扱わなかった側面から組織の問題を検討しています. 
 第 6章で検討した法律との関係については, Edlin and Reichelstein (1996)が検討しています.(ただしこの論文についての解説は第 13章で行っています.)邦文文献としては,三輪・神田・柳川 (1998)があります.
  第 7章,第 8章で検討した公的組織の問題については, Schmidt (1996), Shleifer and Vishny (1994), Qian and Roland (1997),Hart et al. (1997)といった論文があります.
  第 9章,第 10章および第 14章で検討した金融契約への応用は多くの優れた論文がありますが, Aghion and Bolton (1992), Hart and Moore (1994) (1998), Dewatripont and Tirole (1994 a)といった論文が基本文献です.本書で扱えなかった多数の債権者がいるケースは, Bolton and Scharfstein (1996)で検討されています.また銀行規制については,Dewatripont and Triole (1994 b),(北村・渡辺訳)を参考にしています.
  第 12章で検討したマクロへの応用はまだ少ないのですが, Kiyotaki and Moore (1998), Holmström and Tirole (1997)といった論文が出てきています. 
 第 13章で議論した不完備契約の理論的基礎付けについては,最近になって多くの論文が出てきていますが,ここでは Tirole (1999), Segal (1999), Maskin and Tirole (1999 a) (1999 b), Hart and Moore (1999), Che and Hausch (1999), Segal and Whinston (1998)を挙げておきます.

Edlin, A. S., and S. Reichelstein (1996), "Holdups, Standard Breach Remedies, and Optimal Investment," American Economic Review, 86: 478-501.
三輪芳朗・神田秀樹・柳川範之編( 1998)『会社法の経済学』東京大学出版会.
Dewatripont, M. and J. Triole (1994 b), The Prudential Regulation of Banks, MIT Press.(北村行伸・渡辺努訳( 1996)『銀行規制の新潮流』東洋経済新報社)
Tirole, J. (1999), "Incomplete Contracts: Where Do We Stand?" Econometrica, 67: 741-81.
Maskin, E., and J. Tirole (1999 a), "Unforeseen Contingencies and Incomplete Contracts," Review of Economic Studies, 66: 83-114.
Hart, O., and J. Moore (1999), "Foundations of Incomplete Contracts," Review of Economic Studies, 66: 115-38.

Holmström, B., and P. Milgrom (1987), "Aggregation and Linearity in the Provision of Intertemporal Incentives," Econometrica, 55: 303-28. 
Holmström, B., and P. Milgrom (1990), "Multi-Task Principal Agent Analyses," Journal of Law, Economics and Organization, Vol. 7. Sp., pp. 24-52. 
Image from Gyazo
Holmström, B., and P. Milgrom (1994), "The Firm as an Incentive System," American Economic Review, 84( 4): 972-91.


Hart and Holmström( 1987) の収録された論集 2013年電子化
Advances in Economic Theory Fifth World Congress  Advances in Economic Theory Get access Cited by 3

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契約と組織の経済学 ─ ─目次
はじめに
序章  契約理論の新展開
第 1章  不完備契約の考え方 
 1‐ 1  完備契約の世界:コースの定理 
 1‐ 2  不完備契約のケース
第 2章  不完備契約理論の基礎 
 2‐ 1  単純な理論モデル
  2‐ 2  複雑なモデル
第 3章  企業の境界と所有権の配分
  3‐ 1  企業の境界
  3‐ 2  モデル分析
  3‐ 3  所有権の配分
第 4章  権限配分への応用 4‐ 1  組織内の権限配分
  4‐ 2  簡単なモデル 4‐ 3  仮定のもつ意味
第 5章  形式的権限と実質的権限
  5‐ 1  形式的権限からの乖離
  5‐ 2  モデル分析
  5‐ 3  知識レベルが外生的な場合 
 5‐ 4  知識レベルが内生的な場合
第 6章  法律の役割 
 6‐ 1  会社法の規定 
 6‐ 2  法律の役割:完備契約の場合 
 6‐ 3  法律の役割:不完備契約の場合 
 6‐ 4  強行規定の必要性
第 7章  公的企業組織の問題 
 7‐ 1  公的企業の特徴
 7‐ 2  ソフトな予算制約問題 
 7‐ 3  官僚組織の問題
第 8章  民営化の問題 
 8‐ 1  国営か民営か 
 8‐ 2  完備契約の場合の民営化 
 8‐ 3  国営と民営の違い 
 8‐ 4  モデル 
 8‐ 5  ソフトな予算制約問題との関連
第 9章  金融契約への応用 
 9‐ 1  不完備契約と金融取引
  9‐ 2  ベンチャー企業の資金調達
第 10章  負債の役割 
 10‐ 1  負債と決定権限 
 10‐ 2  経営者のインセンティブとコーポレート・ガバナンス
第 11章  銀行規制問題への応用
  11‐ 1  銀行規制の議論 
 11‐ 2  銀行経営者のインセンティブ 
 11‐ 3  自己資本比率規制 
 11‐ 4  自己資本比率規制とマクロショック
第 12章  マクロモデルへの応用 
 12‐ 1  マクロ経済への応用の可能性 
 12‐ 2  金利の内生化 
 12‐ 3  景気変動への影響
第 13章  不完備契約モデル:理論編 
 13‐ 1  不完備契約理論モデル 
 13‐ 2  不完備契約の基礎づけ
第 14章  金融契約モデル:理論編 
 14‐ 1  非効率的交渉 
 14‐ 2  インセンティブへの影響
文献案内

6-1
…不完備契約の世界では単純に契約だけでは効率性が達成されません.そのため,図 6‐ 1にあるように,契約と法律や制度,それから組織といったものがそれぞれ補完し合って総合的に,効率性の実現やインセンティブのために機能することになります.これが,法律が果たしている重要な役割のひとつです.
  ただし,企業が決定する際には,法律や制度はすでに決まっている外生変数です.そのため,決められた法律を前提として,企業は最適な契約および組織形態を選択することになります。



完備契約の場合     不完備契約の場合
           
              (契約)
              ↗︎  ↖︎
(契約)→[効率性]   ↙︎ 補完 ↘︎   →[効率性]
           (法律)←→(組織)


14-2
 



   u
   | 
   |  
   |   
   |    
   | ̄-_      X=1
   |X=0 ̄-_
  ^|______ ̄-_________
  u|       |  ̄-_ X=1
   |       |     ̄-_
   |  X=0  |        ̄-
   |       |          
   |       |   
   |       |   
   |       |   
   |_______|_________y
           y1
 横軸に水平に書かれている直線は,事後的な効率性だけを考えた場合の最適な決定ルールを表しています.事後的な効率性だけを考えるのであれば, uだけを基準に判断すればよいため,水平になっています.したがって図の斜線の部分が,事後的な効率性と,事前の効率性とが乖離している,つまり意図的に事後的な非効率性をつくり出している部分ということになります. 
 しかし先にも述べたように, uは立証可能な変数ではないので,上で述べたような最適決定ルールを契約によって実行させることは困難です.そこで株式と社債という二つの金融商品を発行することによって,上の最適決定が行われるようにするのが,以下での課題です.

契約と組織の経済学 Kindle版

  • フォーマット: Kindle版
  • ファイルサイズ: 9881 KB
  • 紙の本の長さ: 246 ページ
  • 出版社: 東洋経済新報社 (2000/4/3)

ミクロ経済学の最新動向は価格メカニズムを中心とした分析から、契約、取引、組織に注目した分析に移っている。本書は、この最新テーマをやさしく解説。

【主な内容】
はじめに
序 章 契約理論の新展開
第1章 不完備契約の考え方
第2章 不完備契約理論の基礎
第3章 企業の境界と所有権の配分
第4章 権限配分への応用
第5章 形式的権限と実質的権限
第6章 法律の役割
第7章 公的企業組織の問題
第8章 民営化の問題
第9章 金融契約への応用
第10章 負債の役割
第11章 銀行規制問題への応用
第12章 マクロモデルへの応用
第13章 不完備契約モデル:理論編
第14章 金融契約モデル:理論編
文献案内

内容(「BOOK」データベースより)

最先端のテーマを、数式を用いずにやさしく解説。

2008年3月9日
形式: 単行本

最先端の経済理論を実態に近い例で示した本

14例の世の中によくありそうなモデルを設定し,最新の経済理論を
援用して解を求める方式で経済理論を説明しています.
最後の2章以外,ほとんど数式が出ず,数式で挫折していた
読者もわかりやすく書かれています.また数式も
基本的な微分程度ですので,そんなには敷居は高くないです.
 また,このような世の中にありそうなモデルを用いての
解説はこの本ぐらいしかないのでとてもありがたいです.

この本は,経済理論をわかりやすいモデルで解説していますが,
逆に経済理論を実際のモデルに当てはめて使えるかどうかは
別問題であると著者も述べています.特に不完備契約を中心に
扱っていますので,不完備契約とは別の解になりがちな
行動経済学なども理論を援用する際は注意が必要です.

学者が書いているので電車の中で斜め読みはさすがに難しいですが
よく難しい内容をここまでわかりやすく解説してくれたと思います.

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豊福佐藤論考より
本論文では,研究開発に伴うリスク要因が職務発明のあり方に与える影響を経済学的に分析する.その中で,研究開発の不確実性が大きかったり,従業員のリスク回避度が大きいときなどは,固定給を組み入れたり相対評価を用いるなどして従業員のリスク負担を減らす報酬体系を設計する必要があることを示す.次に,現行の相当の対価のあり方や権利配分のあり方が従業者のリスク負担を高めることになっていることを指摘する.その上で,事前の段階で発明の権利の帰属を職務発明規定で定めておき,従業者への報酬はリスク要因の大きさに応じて変化させ,努力インセンティブを引き出すような職務発明制度が望ましいことを示す.そしてその際,研究者の労働市場において流動性を高めておく必要があることと,裁判所の役割は事前の権利と報酬に関する契約が守られているかを確認する役割に限定されることを論じる.

2.モデル3
 使用者(企業)と従業者(研究者)からなるプリンシパル・エージェントモデルを考える.エージェントである従業者は,努力水準e∈[e¯,  e¯]を選択する.これは,研究開発をどれだけ熱心に行うかを表しており,高いeほど研究開発に熱心であることを表している.従業者は,努力水準の大きさに応じて,費用C(e)を負担する.この費用に関しては,C’>0,C”>0を仮定する.従業者は,研究開発後に使用者から賃金Wを受け取る.従業者の期待効用はu(W)で表され,u’>0,u”<0とする.すなわち,従業者はリスク回避的であるとする4.また,従業者が研究に従事しない時の留保効用をu¯とす

る.次に,プリンシパルである使用者の行動について説明する.まず,使用者はリスク中立的とする.企業の利潤はP(e)として表され,P’>0,P”<0を仮定する.使用者は,利潤から従業者に支払う賃金を引いた残余を自らの利得とすることができる.ここで使用者は,従業者がどの努力水準を選んだかは観察できず,ノイズxを含んだ指標Zのみを観察でき,Zとeの間には,Z=e+xという関係があるとする.すなわち,指標Zを発明の成果と解釈すると,発明の成果は従業者の努力水準と研究開発に伴う不確実性に依存して決まる.xは[x¯,  x¯]上に分布し,密度関数f(x)に従っている.研究開発に伴う不確実性としては,様々なものが考えられる5.例えば,有能な従業者を雇用し,使用者が十分な研究環境を整えても成果が出ない場合があるかもしれない.また,技術を開発しても,先行技術や競合技術の存在などにより,特許を取得できないかもしれないし,他社から特許権侵害で訴えられるかもしれない.よって,従業者が高い努力水準を投入しても,本人にはコントロールできない要因によって,低い発明水準しか達成できない場合がある.以下では研究開発とその権利化の際に起こる様々な不確実性の存在を考慮して,望ましい職務発明のあり方を考える.
 以上のモデルにおいて,意思決定のタイミングは以下のようである.まず,使用者が報酬契約Wを提示する.従業者が契約を拒否したならば,ゲームは終了し,両者はそれぞれ留保効用を得る.契約が結ばれると,次に従業者が研究開発への努力水準eを選択する.次の期になると,研究開発の成果としての指標Zが実現し,使用者と従業者双方に観察される.最後に,契約にしたがって支払いが行われる.3.契約が完備な時今節では,事前に決められた報酬契約が,研究開発の成果が実現した事後の段階でも履行される(すなわち契約が完備である)状況を考え,この時の最適な報酬契約を導出する.まず3.1節では,研究成果の大きさと従業者の報酬が比例的である線形の報酬関数を考える.ここでは,従業者はリスクとインセンティブのトレードオフに直面することを述べ,研究開発のリスクや従業者のリスク回避度が高まると,従業者がリスク負担に耐えられなくなり,研究活動に従事しなくなる可能性が生じることを示す.次に,3.2節,3.3節では,この問題は研究成果の大きさによらず固定給を支払うという非線形の報酬関数を設計することや,相対評価の導入によって解決できることを示す.


3.1.線形の報酬関数の場合
 まず,Holmstrom  and  Milgrom(1987)に従って,線形の報酬関数の下での従業者のリスク回避度と努力インセンティブの関係を概観する.使用者は,従業者に次のような線形の報酬関数を提示する.WL=aL+bLZL=aL+bL(eL+x)(1)ただしaL,bLとも定数である6.(1)は,従業者の賃金は,基本給aLと従業者の業績に連動して支払われる部分に分けることが出来ることを表している.bLは,従業者が一単位努力を増やすことで増える報酬を表しており,以下ではインセンティブ強度と呼ぶ.この時,従業者は次の問題(A1a)を解く.(A1a) Max E[u(WL)]-C(eL)(2a)eL s.t E[u(WL)(e*L))]-C(e*L)≥ u¯(3a)ただしe*Lは,(2a)を最大にする努力水準である.また(3a)は,従業者の参加制約である.ここでuが

凹関数であることと,xが確率変数であることに留意すると,(A1a)は次のように書き換えることができる7.1(A1b) Max E[WL]-―gb2LVar(x)-C(eL)(2b)eL s.t 2 1 E[WL(e*L)]-―gb2LVar(x)-C(e*L)≥ u¯ 2(3b)ただし,gは従業者のリスク回避度を表しており,gが大きいほどリスク回避的である.(3b)の左辺第二項はリスクプレミアムと呼ばれ,従業員のリスク回避度が高まるほど,また研究開発の不確実性が高まるほど,リスクプレミアムは大きくなることがわかる.ここで(A1b)を解くと,次の補題を導くことができる.
補題1(Holmstrom and Milgrom,1987)
 従業員が選択する努力水準e*Lは,bL=C’(e*L)を満たす.補題1は,線形の報酬関数の下では,従業者の努力水準はbLの大きさによって変化することを示している.よって,高い努力水準を引き出すためには,bLを高く設定する必要があることがわかる.ただしbLを高く設定すると,従業者の報酬は研究開発の成果に依存し,研究開発の不確実性の影響を受けるようになるので,事後的に受け取る報酬額は大きく変動することになる.こうした不確実性は,リスク回避的な従業者にとっては望ましいことではない.この効果は,(2b)において,bLが大きくなるとリスクプレミアムが大きくなることで,従業員の期待収益が低下することを表している.この関係は,リスクとインセンティブのトレードオフと呼ばれている.次に,使用者の解く問題について考える.使用者は,報酬関数を適切に設計することで,従業者の努力インセンティブを引き出し,利潤を最大化することを目的としている.よって,使用者の問題は次のように定式化できる.(P1) Max P(e*L)-WL aL,  bL s.t. bL=C’(e*L)(3b)この問題を解くと,次の命題を導くことができる.
命題1(Holmstrom and Milgrom,1987)
 線形の報酬関数の下では,使用者は,1e*L(P’(e*L)-C’(e*L))―=gbLVar(x)(1bLとなるようにbL=b*Lを設定する.4)命題1は,使用者は,努力による限界便益と限界費用だけでなく,従業者のリスクプレミアムの大きさに依存して従業者への報酬契約を提示しなければならないことを示している.このことについての直感的な説明は次のようである.仮に従業員の努力水準eを使用者が観察可能で,かつ立証可能な状況を想定すると,その時の使用者の最大化問題は,Max P(e)-C(e)eとなるので,使用者にとっての最善な契約(すなわち使用者の利潤が最大になる契約)は,従業者の努力による限界便益と限界費用が一致する努力水準を選択させるような報酬契約である.この時のインセンティブ強度をbLFBとし,この時の努力水準をeLFBとする.しかしこの契約は,従業者にとってはインセンティブ強度が大きく,リスク負担にさらされてしまうことになっている.よって,このような従業者のリスクとインセンティブのトレードオフを考慮すると,次善の契約ではインセンティブ強度b*LがbLFBより小さく,従業者の努力水準e*LもeLFBより小さくなる8.以上の議論を応用すると,リスク回避度が大きい従業者の場合や不確実性が大きい研究の場合,次の系が成立する.系 リスク回避度が大きい従業者の場合や研究の不確実性が大きい場合,線形の報酬関数の下では参加制約を満たさない可能性がある.(証明)リスクプレミアムがgの増加関数であり,Var(x)の増加関数であることより明らか.




こで(P2)を解くと,次の命題を導くことができる.補題2の前半部分は,報酬関数WNのように,ある領域において業績によって報酬が変動しないスキームの下では,従業者の努力インセンティブを引き出すために,高いインセンティブ強度を持つ報酬関数を設計する必要があることを示している.また補題2の後半部分は,報酬関数WNによって,よりリスク回避的な従業者であったり,より不確実性の高い研究開発であっても,使用者は従業者を雇うことができることを表している.これは,報酬関数WNは準凸関数になっているので,図2や図3が示すように,線形の報酬関数の場合よりも,従業者のリスクプレミアムが小さくなっているからである.このように,従業者がリスク回避的であっても,(5)のような準凸関数となる報酬関数を設計することで,従業者のリスク負担を軽減することができる.次に,使用者が解く問題について考える.前節と同様に考えると,使用者の最大化問題(これを(P2)と呼ぶ)は次のようになる.(P2) Max P(e)-E[WN]aN,  bN, Z*N s.t. (7b)
命題2 
従業者のリスク回避度が大きい時や研究開発の不確実性が大きい時,使用者は報酬関数WNのほうが報酬関数WLよりも従業員の努力インセンティブを引き出すことができる.
(証明)補論2を参照.



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不完備契約理論
サーベイ論文としては Holmström and Tirole (1989)が詳しく解説しています.  

第 12章で検討したマクロへの応用はまだ少ないのですが, Kiyotaki and Moore (1998), Holmström and Tirole (1997)といった論文が出てきています.

by柳川

Holmström, B., and J. Tirole
Holmström, B., and J. Tirole (1989), "The Theory of the Firm," in The Handbook of Industridl Organization, R. Schmalensee and R. Willig (eds.), Amsterdam: North Holland.

Holmström, B., and J. Tirole (1997), "Financial Intermediation, Loanable Funds, and the Real Sector," Quarterly Journal of Economics, 52, 663-692.



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       インセンティブ契約の実現可能性

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■線型報酬関数を支える論理
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 従業員に与えるインセンティブ報酬のモデルは eを努力水準、
xを需要水準(確率変数)、yをその産業全体に対する需要水準と
したとき

 w(賃金)=α(基本給)+β・(e+x+γy)

であった。

 もちろんこのような線型の式で表されるような報酬体系以外にも、
世の中には様々な形のインセンティブ契約が存在する。

 たとえばセールスマンが一定以上の業績を挙げたときのみに支払
われる「成功報酬」である。

 商品やサービスを売った分だけ歩合を与えるというやり方で、モ
ノを仕入れて売るだけの販社によくあるパターンである。

 だがしかしこういう形式の契約には、大きな欠点がある。

 それは
「最初につまづいて、その成功報酬をもらうための規準となる業績
に達しない見込みになるや否や、従業員のインセンティブが急激に
落ちる」
ということである。

 与えられたノルマや達成水準に達しなければボーナス無し、とい
う条件下では、達成率30%も達成率99%も同じであるから、期
末に達成率が100%を越えなさそうだとわかった時点で従業員は
努力を止めて転職先を探し出し始めてしまう。

 だからそういう契約ではなく、線型の歩合給の形でインセンティ
ブ契約を結ぶというのは、売り上げを伸ばすために一様なインセン
ティブを与えるために有効なのである。

 線型の歩合給形式のインセンティブなら、期末に達成水準に達し
ないと分かった状態でも、次に一つ商品を売ったときに成功報酬を
受け取れるならセールスマンは商品を売ろうとするからである。

線型報酬関数に基づくインセンティブ契約は、そういうわけで従
業員に一様なインセンティブ・プレッシャーを与えることができ、
インセンティブ契約の最も良いモノの一つであると考えられる。

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■線型契約の下での総所得
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 雇用主が中規模以上の企業の場合、従業員一人が担えるリスク負
担能力は、雇用主と比べて取るに足らないくらい小さい。

 このため、インセンティブの問題を考えないとすれば、従業員の
給与に変動をもたらす全てのリスク発生源に対して保険を掛け、雇
用主が金銭的リスクを全部負担するのが最適であろう。

 だがしかし、報酬中の全てのリスクを取り除いてしまうと、努力
水準を高めて利潤を増大させるインセンティブが、同時に従業員か
ら失われてしまう。

 だから問題は(何度も書くが)リスク・シェアリングとインセン
ティブを与えバランスなのである。

 さてここで、努力水準eと雇用主から与えられたインセンティブ
契約の規準となるパラメータα(固定給)、β(インセンティブ強
度)、γを考えてみる。

 つまりベクトル(e、α、β、γ)によって、従業員の報酬が決
定されるようなインセンティブ契約を考えるわけである。

 このとき従業員の確実同値額は、

「報酬の期待値」-「努力に要する費用」-「リスク・プレミアム」

となり、ゴチャゴチャ計算して簡素化すると、

 α+βe-C(e)-(1/2)rβ^2・Var(x+γy)

となる。

 そしてまた、同時に雇用主の確実同値額は、
「粗利潤の期待値」-「報酬支払い額の期待値」、つまり

 P(e)-(α+βe)

である。

 そういうわけで、従業員と雇用主の式を足しあわすと
「線型契約下における総所得」
が計算でき、それはつまり

P(e)-C(e)-(1/2)rβ^2・Var(x+γy)

ということになる。

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■努力インセンティブと、契約の実現可能性
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 さて今、従業員の確実同値額は、
α+βe-C(e)-(1/2)rβ^2・Var(x+γy)
であった。

 これはつまり従業員にとって収入が大きく変動すると困るから、
リスク・プレミアム分だけ安くていいから給料の基幹部分を固定給
にして、後はインセンティブ契約(つまり一部歩合給)で給与をも
らおうという仕組みである。

 だからもし従業員に上手くインセンティブを与えて業績を伸ばそ
うと雇用主が考えるなら、従業員の努力水準eが、他のパラメータ
とどういう関係にあるか、確かめておかねばならない。

 努力しても見返りがないなら、インセンティブ契約にはならない
から、βe-C(e)≧0は明らかであろう。がそれだけでは、適当な
インセンティブ・プレッシャーを与えているかどうかはわからない。

 そういうわけでこの式をeの関数であると見なしてeで微分する。
 するとβ-C'(e)となる。

 努力水準をe上げるのは、最初はたやすいかも知れないが、どん
どん難しくなっていく。だから努力の費用C(e)はeが大きくなるに
つれ増加していく。

 それに対してβが小さくなったり大きくなったりすると一様なイ
ンセンティブを与えることができなくなるから、βの値は常に、

  β-C'(e)=0

を満たすように決めなければならない。

 これを「インセンティブ制約式」と呼び、実現可能なインセンテ
ィブ雇用契約は、必ずこの式を満たさねばならないのである。


(つづく)
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          今週の・・・

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 計算式はややこしいけど、要するに常に努力するための費用の増
分とインセンティブ強度βが常に等しくなるように設定しなければ、
効率的な結果は得られないと言うことです。

 たとえばものすごく努力しなければ結果がでないような場合、イ
ンセンティブ強度βはかなり大きくないと誰も努力しない。

 これは激烈な競争をしているIT業界でストック・オプションが
多用される一つの原因である。

 しかし少しの努力で結果がでるような場合、βを大きくすると企
業は利益を従業員に還元しすぎてしまう。

、、、ということです。

NEXT:インセンティブ契約のおさらい

インセンティブ契約のおさらい
http://hakase-jyuku.com/mare/category3-3/entry56.html

■努力水準とインセンティブ報酬制度
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 さて、努力するにも何らかのコストがかかる。

 業績アップのために本を読んだり英会話学校に通ったり、、或い
はその他の様々なトレーニングを行ったり、、、、

 これらの費用をC(e)で表し、そしてIに
α(基本給)+β・(e+x+γy)
を代入して計算すると、インセンティブ契約における従業員の給料
(確実同値額)は、結局下のようになる。

 w=α+βe-C(e)-(1/2)rβ^2・Var(x+γy)
           (※ここでβ^2はβの二乗である。)

 wは努力水準eの関数である(つまり従業員の努力いかんによっ
て給料が変化するわけだから)から、これをeで微分すると努力水
準と支払われる給料の上昇速度関係がはっきりする。

 ∂w/∂e=β-C'(e) 
         ※C'(e)は努力一単位に必要な限界費用になる。

 ここでβ-C'(e)>0だと、努力が大きい人はもの凄くたくさん
歩合をもらえることになり、小さい努力しかしない人はまるで実入
りが増えないことになってしまう。そしてまら企業は報酬を払いす
ぎることになる。

 逆にβ-C'(e)<0だと、1努力した人は1もらえるが、10努力
したひとは7くらいしかもらえない事になる。

 そう言うわけだから効率的なインセンティブ契約となるのは、
β-C'(e)=0となる場合である。

 だからもし企業が従業員の努力水準を引き上げようと思うなら、
インセンティブ契約を結んだ上でβを引き上げなければならない。

 この式を特に「インセンティブ制約」と呼び、実現可能な雇用契
約は必ずこの式を満たさねばならない。「インセンティブ両立的」
な契約は「インセンティブ制約」を満たす。


NEXT:インフォーマティブ原理

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ベン卜・ホルムストローム 2016ノーベル経済学賞

BREAKING 2016 Prize in Economic Sci. to Oliver Hart @Harvard & Bengt Holmström
@MIT “for their contributions to contract theory” #NobelPrize

Bengt Holmstrom, born 1949 in Helsinki, Finland.
Ph.D. 1978 from Stanford University, CA, USA.
Paul A. Samuelson Professor of Economics,
and Professor of Economics and Management at Massachusetts Institute of Technology, Cambridge, MA, USA.


《一九八〇年代後半には、経済学者のベン卜・ホルムストロームとポール・ミルグロム
により、もう一つの重要な研究結果が示された。両氏は数々の仮説に基づく極めて理論的
な論文において、通常は売上高にかかわらず歩合をー定に保つのが、営業担当者の報酬制
度として最適であると結論づけた。さまざまな種類のボーナスを設けたり、一定期間内に
目標を達成した人に以後は別の報酬体系を適用したりするなど、仕組みを複雑にしすぎる
と、担当者たちはそれにうまく乗じる方法を見つけ出すだろう、というのだ。

 ホルムストロームとミルグロムが提案したようなシンプル極まりない報酬体系は、訴求
力がありそうに見えるが(理由のーつとして、運用しやすくコストもかさまない)、実際のと
ころ、多くの企業はもっと複雑な仕組みを選ぶ。「営業担当者はそれぞれ個性があり、モ
チべーションやニーズが異なるため、いくつもの要素から成る報酬体系のほうが幅広い層
にアピールするだろう」と考えるのだ。その理屈でいえば、個々の担当者から最高の成果
を引き出すには、個別に報酬体系を決めるべきだということになる。…》
(「営業を本気にさせる報酬制度とは」ダグ J.チュン ハーバード・ビジネス・スクール 助教授
DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー 2015年8/01号)

How to Really Motivate Salespeople
https://hbr.org/2015/04/how-to-really-motivate-salespeople
Another important study, from the late 1980s, came from the economists Bengt Holmstrom
and Paul Milgrom☆. In their very theoretical paper, which relies on a lot of assumptions, they
found that a formula of straight-line commissions (in which salespeople earn commissions
at the same rate no matter how much they sell) is generally the optimal way to pay reps.
They argue that if you make a sales comp formula too complicated—with lots of bonuses or
changes in commission structure triggered by hitting goals within a certain period—reps will
find ways to game it. The most common method of doing that is to play with the timing of
sales. If a salesperson needs to make a yearly quota, for instance, she might ask a friendly
client to allow her to book a sale that would ordinarily be made in January during the final
days of December instead (this is known as “pulling”); a rep who’s already hit quota, in contrast,
might be tempted to “push” December sales into January to get a head start on the next year’s goal.


Aggregation and Linearity in the Provision of Intertemporal Incentives.(Adobe PDF)1987
Bengt Holmstrom Yale University Paul Milgrom Stanford University
https://faculty.fuqua.duke.edu/~qc2/BA532/1987%20EMA%20Holmstrom%20Milgrom.pdf 全27頁
邦訳組織の経済学267頁#7参照

Multitask Principal-Agent Analyses: Incentive Contracts, Asset Ownership, and Job Design 1991
Bengt Holmstrom Yale University Paul Milgrom Stanford University
https://faculty.fuqua.duke.edu/~qc2/BA532/1991%20JLEO%20Holmstrom%20Milgrom.pdf 全30頁

6章付録:インセンティブ契約の数学モデル より
表6.5 努力水準に対応した結果の確率
         収入
行動      R=10     R=30
e=1     P=2/3    P=1/3
e=2     P=1/3    P=2/3




√Z______
 |     / 
5|    /            
 |   /1/3√z-1=1/3√y
4|  /誘因制約
 | /        
3|/          
 |-_   参加制約
2|   ̄-_ 1/3(√y-1)+2/3(√z-1)=1
 |      ̄-_ 
1|         ̄-_
 |___________ ̄-__  
 0 1 2 3 4 5 6 √y
図6.1:この例では,点(0,3)はインセンテイブ制約と参加制約の両方を満たす範囲で,プリンシパルに最小のコ
ストをもたらす,このグラフは√yおよび√Zで表されている点に注意してほしい.

組織の経済学222頁

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インセンティブ両立条件と参加条件
ボーナスb
  |    
  |       
  |           d
  |\経営者にとっての
  | \最適点の
  | a\集まり
  |_⬆︎_\__________
  |   |\↗︎c
  |   | \経営者の無差別曲線(左下ほど効用が高い)
  |___|__\_______
  0           固定賃金w
aインセンティブ両立条件 c参加条件 dインセンティブ両立条件と参加条件を満たす(w,b)の集合