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スティーヴ・キーン『次なる金融危機』
https://nam-students.blogspot.com/2019/04/can-we-avoid-another-financial-crisis.html
塩沢由典 比較優位
https://nam-students.blogspot.com/2019/04/blog-post_20.html
アトラクター(英: attractor)は、ある力学系がそこに向かって時間発展をする集合のことである。
その力学系において、アトラクターに十分近い点から運動するとき、そのアトラクターに十分近いままであり続ける。アトラクターの形状は点や曲線、多様体、さらにフラクタル構造を持った複雑な集合であるストレンジアトラクターなどをとりうる。
カオスな力学系に対してアトラクターを描写することは、現在においてもカオス理論における一つの研究課題である。
アトラクターに含まれる軌道は、そのアトラクターの内部にとどまり続けること以外に制限はなく、周期的であったり、カオス的であったりする。☆
力学系は一般的にひとつあるいは複数の微分方程式あるいは差分方程式により表される。これらの方程式は短い時間区間における力学系の挙動を記述するので、より長い時間区間における力学系の挙動を決定するためには、その方程式を積分する必要がある。このためにしばしばコンピュータが効果的に用いられる。
実世界における力学系は散逸的であることが多いとされる。すなわち、もし力学系に運動の駆動力が無ければ、運動は停止するものと考えられている(そのような散逸は、様々な原因による内部摩擦や熱力学的損失、物質の損失などにより生じうる)。散逸と駆動力が組み合わさることにより、初期の摂動を鎮め、その力学系の振る舞いを典型的なものへと落ち着かせる傾向にある。そのような典型的な振る舞いに対応している力学系からなる位相空間の一部分はattracting section または attractee と呼ばれる。
アトラクターに似たような概念として、不変集合や極限集合が挙げられる。不変集合とは、ある力学系に対して、その集合自身に時間発展するような集合のことである。アトラクターは不変集合を含むことがある。極限集合とは、力学系の軌道の各点から、時間が無限大に向かうときに近づく点の集合である。アトラクターは極限集合であるが、アトラクターではない極限集合も存在する。ある種の力学系において、いくつかの点においては極限集合から外れる摂動を与えられた時にも収束するが、他のいくつかの点では「はねとばされて」二度とその極限集合の近くに戻らないことがあり得る。
減衰振子を例に考える。減衰振子は2つの不変集合(不動点)を持つ。最も低い位置にある と最も高い位置にある である。
軌道はに収束するので、は極限集合であるが、 は極限集合ではない。エネルギー散逸があるため、 はアトラクターでもある。振り子の振動が減衰せず、エネルギーの散逸がなければ、 はアトラクターにはならない。
f(t, •) を、力学系の運動状態を決定づける関数として、以下のように定義する。ある時間 t = 0 における系の状態を表す位相空間上の点を a とすると、f(0, a) = a である。また、正の値 t > 0 に対しては、f(t, a) はその状態 a が時間 t だけ経過して発展した状態を与える。例えば、一次元空間上で座標 x から速度 v で等速直線運動する粒子(t = 0 での位相空間上での座標が (x, v) )の力学系の f は
と表せる。
アトラクターは、位相空間の部分集合 A で以下の三つの条件を満たすようなものである。
吸引流域は集合 A を含むようなある開集合を含むため、A に十分近いすべての点は A に吸引されることとなる。アトラクターの定義では、考えられている位相空間上の距離を用いたが、基本的には定義の指す内容は距離関数のとり方によらず位相空間のトポロジーにのみ依存する。Rn の場合では、一般的にユークリッドノルムが用いられる。
アトラクターの定義に関しては、文献により多くの異なる定義がなされることがある。 例えば、点がアトラクターとなることを避けるためにアトラクターは正の測度を持つべきであると制限をかけたり、B(A)が近傍でなくてはならないという条件を緩めたりしている。
アトラクターは力学系の位相空間の部分集合である。1960年代頃の教科書によると、それまではアトラクターは位相空間の「幾何学的な」部分集合(点、直線、曲面、体積領域)であると考えられていた。観測されていた(位相幾何学的に)「悪い」集合(wild sets)は、取るに足らない例外であると考えられていた。スティーヴン・スメイルは彼の考案した蹄鉄型写像が構造安定であること、およびそのアトラクターがカントール集合の構造を持つことを示すことに成功した。
二つの簡単なアトラクターとしては、不動点とリミットサイクルが挙げられる。その他にも多くの幾何学的な集合がアトラクターであり得る。それらの集合(あるいは集合上での動き)を図示することが困難である場合、そのアトラクターはストレンジアトラクターと呼ばれる(後述)。
一般的に、不動点とは関数の点で変換に対して変化しないものである。
力学系の発展を一連の座標変換の過程の連続であると見做した時、その全ての過程の下で不動のものとして固定し続ける点が存在する可能性がある。一般的にはそのような点は存在しない場合が多いが、存在する場合もあり得る。
落下する小石や、減衰振子や、グラスの中の水などが最終的に落ち着くような状態である最終状態で、ある力学系がそこに向かうようなものは、その発展関数の不動点に対応し、そのような最終状態はアトラクターにおいても起こるであろうが、その二つの概念は同値であるとはいえない。あるボウルの周囲を回るビー玉は、たとえ物理学的な空間においては不動点を持たなくても、位相空間においては持つ可能性がある。そのビー玉が運動量を失い、そのボウルの底に落ち着いたなら、そのビー玉は物理空間および位相空間において一つの不動点を持ち、その力学系のアトラクターに位置することになる。
リミットサイクルは系の周期的軌道であり、孤立している。例えば振り子時計の振り子、ラジオのチューニング回路、安静時の心拍などがそれに当たる。理想的な振り子は軌道が孤立していないのでリミットサイクルではない。理想的な振り子の位相空間では、周期軌道の任意の点に対して別の周期軌道に属する点が存在する。
リミットサイクルの状態を通しての系の周期的軌道には複数の周期が存在する場合もある。それら周期のうち2つが無理数を形成するとき、その軌道はもはや閉じておらず、リミットサイクルはリミットトーラスとなる。 個の不整合周期があるとき、このようなアトラクターを -トーラスと呼ぶ。下図は2-トーラスの例である。 このアトラクターに対応する時系列(不整合周期を持つ周期関数の総和を離散標本化したもの。正弦波である必要はない)は「準周期的 (quasiperiodic)」である。そのような時系列は厳密には周期的ではないが、そのパワースペクトルは鋭い線からのみ成る。
非整数次元のアトラクターやカオス理論でしか振る舞いを説明できない力学系のアトラクターをストレンジであると(非形式的に)いう。元はカオスアトラクターと呼ばれていたが、ダヴィッド・ルエールと Floris Takens が流体の力学系における一連の分岐の結果として生じるアトラクターを指してストレンジアトラクターという造語を使用した。ストレンジアトラクターという場合、カントール集合と非可算無限集合の直積構造を持つことが多い。
ストレンジアトラクターの例として、エノンアトラクター、レスラーアトラクター、ローレンツアトラクター、Tamariアトラクターなどがある。