木曜日, 6月 16, 2016

均斉成長経路: ジョン・フォン=ノイマン (John von Neumann), 1903-1957

                 ( 経済学リンク::::::::::
均斉成長経路(1937): ジョン・フォン=ノイマン (John von Neumann), 1903-1957
http://nam-students.blogspot.com/2016/06/john-von-neumann-1903-1957.html(本頁) 
NAMs出版プロジェクト: 産業連関表
http://nam-students.blogspot.jp/2014/06/wikipedia.html
NAMs出版プロジェクト: ドブリュー『価値の理論』(1959)
http://nam-students.blogspot.jp/2015/09/blog-post_48.html

NAMs出版プロジェクト: ジョン・ローマー

http://nam-students.blogspot.jp/2016/11/blog-post_15.html

フォン・ノイマン均斉成長解:

P生産手段、m労働力、G生産物
            _ー
         _ー ̄ |
      _ー ̄ |  |P
   _ー ̄ |  |  |
   ̄-_ →| →| →|m
      ̄-_  |  |
         ̄ー_  |G
            ̄ー_
      P:m:G
      常に比率一定
(資本ストックはKを使うことが多い)


フォン・ノイマン均斉成長解:

A生産手段、B労働力、C生産物
            _ー
         _ー ̄ |
      _ー ̄ |  |A
   _ー ̄ |  |  |
   ̄-_ →| →| →|B
      ̄-_  |  |
         ̄ー_  |C
            ̄ー_
      A:B:C
      常に比率一定

松尾匡 
08年7月29日 立命館大学経済学会セミナー(28日)番外編報告レジュメ p.1
 吉原直毅著『労働搾取の厚生理論序説』について
http://matsuo-tadasu.ptu.jp/academic.html

経済成長論入門序章 経済成長論とは何か?宮 崎 耕 一
《ノイマンは資本というものをマクロ的にひとつにまとめて捉える,という考え方をとらず,消費される財と形式上区別しないで定式化した。…変形・変換される財の範囲を生産財ないし資本財にまで拡張して,諸財を包括的に捉え,しかもひとつの集計値にまとめて扱うことを回避しながら,それら包括的な諸財全体が,一定の成長率で増加を続けていく,という描像を,数学的に描くことに成功したのが,フォン・ノイマンモデルの功績だった。
 このような,包括的に捉えられた諸財の一定率における成長の過程においては,それら諸財のうち,ひとつひとつの財が,まったく同率で増加していく,と考えられる。》  

《成長モデルが単なる空想(empty dream)モデルを脱脚するためには,多部門モデルで

なければならず,しかも結合生産を適切に取り扱わねばならない,このような要請を

満たす最初のモデルを提唱したのはフォン·ノイマンである.ノイマンは次のような

仮定をおいた.

(a)すべての財の生産について規模に関する収穫がー定である,

(b)労働の供給は際限なく拡大しうる,

(c)賃金は労働者が生存可能な生物学的に最小限の財を購入しうるに過ぎない水準に

固定されている,

(d)資本家の全所得は自動的に新たな資本財に投入される,

明らかにこのモデルは資本家の消費を無視し,また実質賃金率を決定する上での

労働供給の役割も考慮していない.労働者は農場の家畜と同等であり、資本家は資本の

セルフサービス·スタンドのようなものに過ぎない.》

森嶋通夫著作集3:118頁


1937
均斉成長経路(の定式化とブラウワーの定理の一般化)
"A Model of General Economic Equilibrium", 1937, in K. Menger, editor,Ergebnisse eines mathematischen Kolloquiums, 1935-36. (Translated and reprinted in RES, 1945).
→ http://piketty.pse.ens.fr/files/VonNeumann1945.pdf


ジョン・フォン=ノイマン (John von Neumann), 1903-1957

原ページ

 
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1903 年にハンガリーのブダペストで生まれる。ブダペスト大から数学の博士号と、チューリヒ大から科学の博士号を同時に授与されてから1927年にベルリン大学の教授陣に加わる。1932年にはプリンストンに移り、 IAS 最年少会員となる。この時期、かれは純粋数学や応用数学のみならず、物理や、一部は哲学(特に量子パラドックスに関連したもの)にも重要な貢献をしてい た。またマンハッタン計画(原爆開発)でも活発で、原子力委員会におけるトルーマン大統領の顧問の一人だった。後に並列処理とネットワークに関する業績を あげて、「現代コンピュータの父」の称号を受ける。ニコラス・カルドア が後に書くように「かれはわたしが出会った中でまちがいなく天才にいちばん近い存在だ」
驚異的にクリエイティブだった数学者ジョン・フォン=ノイマンは、戦後経済理論においてかなり重要な役割を果たした。その貢献は2つある。一つは1937 年の多セクター成長モデル についての論文と、1944 年の著書 (オスカール・モルゲンシュテルン と共著) の ゲーム理論不確実性 についての理論だ。
ジョン・フォン=ノイマンの有名な 1937 年論文は、最初は有名な「ウィーン学団」の支援を受けて書かれたもので、フォン=ノイマンが ヴィクセルカッセル を読んだ成果となっている。この論文は「数理経済学における史上最高の論文」 (E. Roy Weintraub, 1983) と呼ばれた。それは 森嶋道夫 が後に、一般均衡と資本、成長理論における「フォン=ノイマン革命」と呼んだものを産みだした。この1937年論文では、「数理経済学」再興のための新手法というすぐわかるもの以外にも、いくつか重要な概念が導入されていた。かれがもたらしたのは、(1) 「活動分析」生産集合 ("activity analysis" production sets) の概念を持ち込み、これは後に クープマンス や新ワルラス派によって大いに活用される; (2) 再生産の線形システム。これは後にレオンティエフスラッファ新リカード派 が活用して発展させる; (3) 価格-費用と需要-供給の不一致。これはワルラスの方程式体系に対する ウィーン派の批判 への説明となっていた; (4) ブラウアーの固定点理論(の一般化)、後に角谷の固定点定理として知られるようになるものを初めて使って、均衡の存在を証明; (5) ミニマックスとマックスミン解法と、サドルポイント特徴付け (saddelpoint characterizations); (6) early statements of duality theorems of mathematical programming and complementary slackness conditions; (7) a novel manner of incorporating fixed and circulating capital via joint production; (8) the elucidation of the concept of "balanced" or "steady-state" growth - これは後に ハロッドソロー, ヒックス 及びその後の成長モデルすべてがとびついた; (8) 「黄金律」の導出 - 金利は資本量よりは成長率と相関していることを示し、 アレー「最適成長理論」クープマンス, ラドナーたちの turnpike theorems の先駆けとなった。
ジョン・フォン=ノイマンが1944 年にオスカール・モルゲンシュテルン と共著した『ゲームと経済行動の理論』は 20 世紀社会科学の記念碑的存在となった。ゲーム理論 という領域を一気に作り出したのみならず (かれはこれを有名な 1928 年の論文で始めていた) この本は経済学の他の分野で使われる重要な要素を他にももたらしている。たとえば効用理論そのものの公理化 (後に アロードブリュー などが追求したもの) や 不確実性の下での選択の公理化、つまり期待効用仮説の定式化がそれにあたる。

http://cruel.org/econthought/profiles/neumann.html

ジョン・フォン=ノイマンの主要 (経済関連) 著作

  • "Zur Theorie der Gessellshaftspiele", Mathematische Annalen 1928.
  • "A Model of General Economic Equilibrium", 1937, in K. Menger, editor,Ergebnisse eines mathematischen Kolloquiums, 1935-36. (Translated and reprinted in RES, 1945). → http://piketty.pse.ens.fr/files/VonNeumann1945.pdf
  • Theory of Games and Economic Behavior, with O. Morgenstern, 1944.
  • "A Communications on the Borel Notes", 1953, Econometrica
  • "Solutions of Games by Differential Equations", with G.W. Brown, 1953, in Kuhn and Tucker, editors, Contributions to Theory of Games, Vol. I.
  • "Two Variants of Poker" with D.B. Gillies and J.P. Mayberry, 1953, in Kuhn and Tucker, editors, Contributions to Theory of Games, Vol. I.
  • "A Numerical Method to Determine Optimum Strategy", 1954, Naval Research Logistics Quarterly
  • The Computer and the Brain, 1958

フォン=ノイマンについてのリソース

1937
均斉成長経路(の定式化とブラウワーの定理の一般化)
"A Model of General Economic Equilibrium", 1937, in K. Menger, editor,Ergebnisse eines mathematischen Kolloquiums, 1935-36. (Translated and reprinted in RES, 1945).
http://piketty.pse.ens.fr/files/VonNeumann1945.pdf



http://matsuo-tadasu.ptu.jp/academic.html
08年7月29日 立命館大学経済学会セミナー(28日)番外編報告レジュメ
 吉原直毅著『労働搾取の厚生理論序説』について
  p.1 p.2 p.3 p.4 p.5 p.6 p.7 p.8 p.9 p.10 p.11

 _________

フォン・ノイマンの多部門成長モデル

フォン・ノイマンが1937年に発表した経済成長モデル。新古典派成長モデルの基となったラムゼイのモデルが1部門の経済成長モデルであるのに対し、各種の財の生産、投資がなされる現実の経済に即したモデルの構築が行われた。
多部門モデルは、第二次世界大戦後、サミュエルソン、森嶋らの努力によって改良が加えられた。サミュエルソンの見出したターンパイク定理はとりわけ有名な発見である。

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https://ja.wikipedia.org/wiki/ジョン・フォン・ノイマン

経済学


https://ja.wikipedia.org/wiki/不動点
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8D%E5%8B%95%E7%82%B9
数学において写像不動点(ふどうてん)あるいは固定点(こていてん、英語: fixed point, fixpoint)とは、その写像によって自分自身に写される点のことである。


http://mathsoc.jp/publication/tushin/1101/nishimura.pdf
『経済学と数学』
京都大学経済研究所
西村和雄

数学者の貢献
 経済学者には,数学や工学から転向してきた人が数多くいる.イギリス人で 20 世紀初頭を代表す る数学者兼哲学者であるラムゼー( 1903-30)は,数学基礎 論,確率論,哲学のみならず,経済学の 分野でも論文を発表し,26 才の若さでこの世を去った.ラムゼーの死後 2 ヵ月後に発表された Economic Journal において,ケインズが,ラムゼーの才能と論文の重要さに賛辞を述べている.ラム ゼーの論文は,その後の経済成長と財政学の分野の発展に大きな影響を与えた.
 やはり,20 世紀を代表する数学者フォン・ノイマン(1903-57)は,経済学者モルゲンシュテルン (1902-77)と共にゲームの理論を開発しているが,同時に,経済成長の多部門モデルにおける斉一成長経路の存在証明の論文を書いて,その後の経済学に大きな影響を与えていった.
...
 ノイマンは,1932 年にプリンストンの高等研究所の数学のセミナーで,数理経済学の講演をしたこ とがあった.1936 年,ウイーン大学の数学者カール・メンガー(Karl Menger)に依頼され,ノイマンは, ウィーンでの研究会で経済学の講演をする予定であった.ヨーロッパには行ったノイマンは,実際は, ウイーンには寄らず,ドイツ語の論文をパリからメンガーに送っただけであったが,その論文は,1937 年に出版されたカール・メンガーのセミナーの講演集の中に含まれることになった.
 カール・メンガーの父は,ウイーン大学の経済学教授をしていたカール・メンガー(Carl Menger) である.
 経済学における限界革命は,スイスのレオン・ワルラス(1834-1910),イギリスのウィリアム・ジェボ ンズ(1835-82),オーストリアのカール・メンガー(1840-1921)によって,1870 年代に行われた,限 界効用を基礎とする理論の発展のことである.限界効用は数学的には,偏微分と対応している.
  ウイーン大学には,1895 年に設立され,マッハ,ボルツマン,シュリックと引き継がれた哲学の講 座があり,その内容は,哲学でも次第に自然科学に 近づいていった.1928 年に,数学,物理,哲学, 経済学など,広い分野のメンバーが,マッハ協会を設立し,ウイーン学団を結成した.その思想が論 理実証主義である.中には,統計学者のワルドや経済学者のモルゲンシュテルンもいた.ワルドは, 経済の方程式体系に非負解があることを証明し,モルゲンシュテルンは,1944 年にノイマンとの共 著で『ゲーム理論と経済行動』を発表した.ちなみに,1938 年にオーストリアは,ナチスドイツに併合 され,モルゲンシュテルンやメンガーは,ウイーンを去って,アメリカに渡った.
 1932 年にプリンストンで講演をし,1936 年にメンガーに送ったドイツ語の論文は,1945年に英訳されて,「一般経済均衡モデル」という名で,経済学の学術誌レビュー・オブ・エコノミック・スタディーズ に掲載された.
 ノイマンの論文は,1928年のミニマックス定理の論文と同様,線形計画法,非線形計画法の発展の基礎となった.ノイマンの結果を整理し直すなら,線形計画法の鞍点定理となる.また,ノイマンの論文の中では,関数ではなく,対応について不動点が存在することをブラウアの不動点定理を用いて証明している.これは,今日,角谷の不動点定理として知られている結果である.ノイマンの論文 には,一般均衡というタイトルがつけられているが,それまでの静学的な一般均衡モデルを動学化しているという点で,画期的であった.ノイマンのこの論文は経済の生産技術面から,斉一成長経路と, 最大成長率の存在を証明している.この論文と,変分法を用いて社会的厚生の最大化条件を導出したラムゼーの論文が,その後の経済動学理論の発展に対する基礎を与えたのである.

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2011-09-06
アロー=デブリュー破れたり?
|
TripleCrisisというブログで、アロー=デブリューを初めとする不動点定理(角谷のものにせよ、ブラウワーのものにせよ)を用いた均衡の証明は経済的な意味を持たない、という主張がなされている(Economist’s View経由)。書いたのはアレハンドロナダル(Alejandro Nadal)というメキシコ経済学者cf.近著)で、そのブログエントリはこの共著論文の内容紹介になっている。
http://d.hatena.ne.jp/himaginary/20110906/what_if_equilibrium_never_existed

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経済成長論入門序章 経済成長論とは何か?宮 崎 耕 一
 ノイマンは資本というものをマクロ的にひとつにまとめて捉える,という考え方をとらず,消費される財と形式上区別しないで定式化した。彼は生産過程を,沢山のステップに分けて,各々の生産ステップは,その活動レベル1単位当り,多くの種類の財の量から成る束(たば)(ベクトル)(これを「財の量の束(たば)」と呼ぶことにしよう)を,別の財の量の束に変換する,と仮定した。ひとつの生産ステップは,その活動レベル1単位当り,生産活動の前と後の財の量の束のペアから成る,と定式化される。沢山の生産ステップの構成要因となっている沢山の「財の量の束」を構成する諸財の中に,フォン・ノイマンは,消費される財だけでなく,生産設備,機械類,道具類,部品,原材料,半製品,仕しかかり掛品その他,いわゆる資本財ないし生産財に属すといわれる諸財も含めた。これらの資本財ないし生産財を含む生産ステップにおいては,労働の作用によって,それら資本財が変形または変換される。たとえば,ある機械は,労働によって生産に用いられることによって,多少,磨耗して,より古い機械に変形または変換される。その同じ生産ステップでは,原材料が,変形,変換されて,半製品に姿を変える。別の生産ステップでは,半製品が完成品に変形,変換される。しかし,変形・変換されるというのは,原材料から半製品,半製品から完成品,と言う変形・変換だけでなく,生産設備や機械類や道具が,生産過程の中で変形・変換されるということをも含む,というわけだ。
 このように,変形・変換される財の範囲を生産財ないし資本財にまで拡張して,諸財を包括的に捉え,しかもひとつの集計値にまとめて扱うことを回避しながら,それら包括的な諸財全体が,一定の成長率で増加を続けていく,という描像を,数学的に描くことに成功したのが,フォン・ノイマンモデルの功績だった。
 このような,包括的に捉えられた諸財の一定率における成長の過程においては,それら諸財のうち,ひとつひとつの財が,まったく同率で増加していく,と考えられる。
 フォン・ノイマンモデルは,資本の集計量や生産物の集計量という,高度に抽象的な概念を用いずに,経済成長の過程を分析できるということを示したので,そのユニークかつ有意味な着想が今日でも高く評価されているだけでなく,森嶋道夫のような,資本の集計量という概念に強い疑念を持つ経済学者に,高く評価され,より洗練された経済成長モデルに改良された。

経済成長論入門序章 経済成長論とは何か?宮 崎 耕 一
第7章 フォン・ノイマンの経済成長モデル
 日本の経済学者で国際的に有名な人としては,宇沢弘文とならんで森嶋道夫(故人)がいる。森嶋は経済成長に関する,有名な数学者フォン・ノイマンの論文[11]の着想を踏まえて,経済成長論を発展させた(1969年刊の書物[12]を見よ)。ここで,そのフォン・ノイマンの着想について簡単に説明しておこう。
 ノイマンは資本というものをマクロ的にひとつにまとめて捉える,という考え方をとらず,消費される財と形式上区別しないで定式化した。彼は生産過程を,沢山のステップに分けて,各々の生産ステップは,その活動レベル1単位当り,多くの種類の財の量から成る束たば(ベクトル)(これを「財の量の束たば」と呼ぶことにしよう)を,別の財の量の束に変換する,と仮定した。ひとつの生産ステップは,その活動レベル1単位当り,生産活動の前と後の財の量の束のペアから成る,と定式化される。沢山の生産ステップの構成要因となっている沢山の「財の量の束」を構成する諸財の中に,フォン・ノイマンは,消費される財だけでなく,生産設備,機械類,道具類,部品,原材料,半製品,仕掛(しかかり)品その他,いわゆる資本財ないし生産財に属すといわれる諸財も含めた。これらの資本財ないし生産財を含む生産ステップにおいては,労働の作用によって,それら資本財が変形または変換される。たとえば,ある機械は,労働によって生産に用いられることによって,多少,磨耗して,より古い機械に変形または変換される。その同じ生産ステップでは,原材料が,変形,変換されて,半製品に姿を変える。別の生産ステップでは,半製品が完成品に変形,変換される。しかし,変形・変換されるというのは,原材料から半製品,半製品から完成品,と言う変形・変換だけでなく,生産設備や機械類や道具が,生産過程の中で変形・変換されるということをも含む,というわけだ。
 このように,変形・変換される財の範囲を生産財ないし資本財にまで拡張して,諸財を包括的に捉え,しかもひとつの集計値にまとめて扱うことを回避しながら,それら包括的な諸財全体が,一定の成長率で増加を続けていく,という描像を,数学的に描くことに成功したのが,フォン・ノイマンモデルの功績だった。
 このような,包括的に捉えられた諸財の一定率における成長の過程においては,それら諸財のうち,ひとつひとつの財が,まったく同率で増加していく,と考えられる。
 フォン・ノイマンモデルは,資本の集計量や生産物の集計量という,高度に抽象的な概念を用いずに,経済成長の過程を分析できるということを示したので,そのユニークかつ有意味な着想が今日でも高く評価されているだけでなく,森嶋道夫のような,資本の集計量という概念に強い疑念を持つ経済学者に,高く評価され,より洗練された経済成長モデルに改良された。(資本の集計可能性に関する論争については,専門雑誌Quarterly Journal of Economicsの,森嶋の1966年論文[13]の掲載されたのと同じ号の特集を参照せよ。)

結 語
経済成長論は,戦前にケインズによって創始されたマクロ経済学のマクロ的貯蓄とマクロ的投資に関する概念に立脚して,戦後に創始され,微分方程式論などの比較的高度の数学の巧みな援用によって,発展してきた。その経済成長理論は,工業社会の生産規模や生産技術が年々増加していくという現実的現象を,科学的,数学的,計量的(実証的)に分析するという目的のために用いられてきており,経済学の中の重要な一部分をなすまでに発展してきた。

[11]John  von  Neumann, “A  Model  of  of  General  Equilibirium,” 1945-46,  The Review  of  Economic  Studies (Translation  of  an  original  paper  in  German  by J. von Neumann, 1936)[12]Michio  Morishima, “Theory  of  Economic  Growth,” 1969,  Oxford  University Press.[13]Michio  Morishima, “Refutation  of  the  Nonreswitching  Theorem,” 1966, The Quarterly Journal of Economics.

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森嶋通夫著作集 3 経済成長の理論
著者名等  森嶋通夫/著  
出版者   岩波書店
出版年   2005.3
大きさ等  22cm 404p
注記    Theory of economic growth./の翻訳
NDC分類 330.8
件名    経済学  
要旨    さまざまな成長理論を動学的なフォン・ノイマン・モデルの上に統合し、多部門一般均衡
成長理論の数理的な枠組を拡張した画期的な業績。森嶋経済学はこれ以降新古典派経済学
に別れを告げることとなる。


目次    

第1部 プロトタイプ(マッチ箱サイズのワルラス・モデル;持続的成長均衡の可能性 
ほか);

第2部 ノイマン革命(「革命」の経済的含意;均衡成長(カッセル=ノイマン
半直線;ヒックス=マランヴォー軌道;規範的特性));

第3部 革命のあと(遺産の最
大化:第一ターンパイク定理;消費者の選択による振動 ほか);

第4部 さらなる展開
(可変的な人口とマルサス的貧困の回避;代替アプローチ:修正と精緻化 ほか)


内容    様々な成長理論を動学的なフォン・ノイマン・モデルの上に統合し、多部門一般均衡成長
理論の数理的な枠組を拡張した画期的な業績。これ以降新古典派経済学に別れを告げる後
期森嶋経済学の出発点。本邦初訳。


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吉原直毅『労働搾取の厚生理論序説』

http://www.arsvi.com/b2000/0802yn.htm

『労働搾取の厚生理論序説』

吉原 直毅 20080228 岩波書店,298p.


吉原 直毅  20080228 『労働搾取の厚生理論序説』(一橋大学経済研究叢書 55), 岩波書店,298p. ISBN-10: 4000099140 ISBN-13: 978-4000099141 \5460 [amazon][kinokuniya] ※ w01

■出版社による紹介

「格差社会」化やワーキング・プア問題が焦眉の現代において,マルクス『資本論』の労働搾取概念は主流派経済学の理論体系にはない独自性を持つ厚生理論である.本書では,現代経済学の手法によって,労働搾取概念を厚生経済学における一つの非厚生主義的well-being指標として,その理論的再構成を探求するプレリュードである. 

■著者による紹介

吉原 直毅 「吉原直毅『労働搾取の厚生理論序説』(岩波書店, 2008年2月刊行予定)について」
吉原 直毅 『労働搾取の厚生理論序説』

■目次

第1章 今、なぜ労働搾取理論なのか?
  1.1 現代における貧富の格差問題
  1.2 労働搾取概念に基づく市場経済の厚生的特徴分析
  1.3 本書における方法論と各章の構成について
第2章 マルクス的一般均衡モデルと均衡解概念
  2.1 基本的生産経済モデル
  2.2 再生産可能解
  2.3 再生産可能解の存在定理
  2.4 一般凸錐生産経済の特殊ケース:フォン・ノイマン経済と均斉成長
  2.5 マルクス的均衡解に関する厚生経済学の基本定理
  2.6 労働者階級内の異なる消費選好の存在する経済での均衡解
第3章 レオンチェフ経済体系におけるマルクスの基本定理
  3.1 森嶋型「労働搾取率」及びマルクスの基本定理
  3.2 労働価値説と転化論
  3.3 数理マルクス経済学による,労働価値説の限界の露呈
  3.4 転化問題に関する“New Solution”アプローチ
  3.5 「マルクスの基本定理」の厚生的含意
第4章 一般的凸錘生産経済におけるマルクスの基本定理
  4.1 森嶋型労働搾取に基づくマルクスの基本定理
  4.2 代替的労働搾取の定式に基づくマルクスの基本定理の可能性:その1
  4.3 代替的労働搾取の定式に基づくマルクスの基本定理の可能性:その2
  4.4 労働者階級内の異なる消費選好の存在する経済でのマルクスの基本定理の可能性
  4.5 所得依存的労働搾取の定式の下でのマルクスの基本定理の可能性
  4.6 結論に代えて
第5章 搾取と階級の一般理論
  5.1 基本的生産経済モデルと再生産可能解
  5.2 階級-富対応関係
  5.3 富-搾取対応関係
  5.4 階級-搾取対応原理
  5.5 一般的凸錐生産経済における「階級-搾取対応原理」の成立の困難性
  5.6 新しい労働搾取の定式下での階級-搾取対応原理の成立
  5.7 所得と余暇に対する選好を持つ経済環境での搾取と階級の一般理論
  5.8 マルクス的労働搾取概念の意義――ジョン・ローマーの位置づけ
  5.9 マルクス的労働搾取論の限界?
第6章 搾取・富・労働規律の対応理論
  6.1 基本的生産経済モデルと再生産可能解
  6.2 再生産可能解の存在問題
  6.3 富-労働規律対応関係
  6.4 富-搾取-労働規律対応関係
  6.5 結論
第7章 労働搾取理論の公理的アプローチに向けて
  7.1 「マルクスの基本定理」問題における「労働搾取の公理」
  7.2 「階級搾取対応原理」問題における「労働搾取の公理」
  7.3 労働搾取の3つの代替的アプローチ――労働スキルの個人間格差の存在する生産経済への労働搾取理論の拡張可能性

■引用

第1章 今、なぜ労働搾取理論なのか?
  1.1 現代における貧富の格差問題
  1.2 労働搾取概念に基づく市場経済の厚生的特徴分析
 「1970年代における「マルクス・ルネッサンス」の影響下で、現代的な数理的分析手法を用いて、マルクスの経済理論を再構成する研究が活性化した。しかしそれらの研究成果は基本的に、古典的なマルクス主義の経済学体系の理論的土台の堅固性に疑問符を突きつける効果を持っていたのである。具体的には、例えば、古典的なマルクス主義の経済理論はいわゆる投下労働価値説(labor theory of value)」を理論的土台にして構築されたものであるが、この投下労働価値説の理論的頑健性に重大な問題があることが次第に明らかにされてきたのである。マルクスの労働搾取論もまた、投下労働価値説を理論社的土台として構築されたもの故、投下労働価値説への批判は、労働搾取論の学問的影響力低下へと波及する効果があった。」(吉原[2008:8])

第5章 搾取と階級の一般理論
 「剰余生産物が利潤として資本家に帰属するのは、いかなるメカニズムによって説明されるだろうか? それは、労働者からの剰余労働物の掠め取りではなく、むしろ生産手段の不均衡な私的所有と市場における資本の労働に対する相対的希少性ゆかに、その資本財の所有主体である資本家に帰属すべく発生するレント(rentr=賃料)が、正の利潤であるという説明で十分である。」(吉原[2008:171])

第7章 労働搾取理論の公理的アプローチに向けて
 「今や、労働価値説は市場の交換関係を説明する理論社とは成り得ない事が知られる様になり、さらに7.1節と7.2節の結論によって、労働搾取論もまた、資本主義経済の客観的運動法則に関する理論ではなく、むしろ特定の規範的評価基準に基づく、資本主義経済の規範的特徴付けの為の理論である事が明らかになったきたと思う。各労働者もしくは各個人の取得労働時間がどの様に確定されるかという問題は、客観的かつあたかも自然科学的に自ずから一つの数値に確定されるという類いの話ではなく、むしろ人々の納得と合意を以って確定されるべき数値であるという意味において、規範的評価の関わる問題と考えるべきなのである。」(吉原[2008:274])

■書評・紹介

◆立岩 真也 2009/02/01 「二〇〇八年読書アンケート」,『みすず』51-1(2009-1・2 no.569):-

 


第3章と内容が重なる
マルクス派搾取理論再検証 ―70 年代転化論争の帰結―吉原直毅



火曜日, 6月 14, 2016

ドーンブッシュ、マクロ上31頁:メモ


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貨幣市場
     ↖
    ↓            ーーーーーーーーーー所得
利子率↘  ↓         
            ↗総需要↘        ↑
財政政策             財市場→ 生産量、物価
            ↘総供給↗                、失業
                         ↖   賃金  ↙
                         インフレ期待

マクロ経済学の基本的な相互関係

邦訳1996(改定前)
財政政策が重要という図に見える。

マクロ経済学
廣松毅, R.ドーンブッシュ, S.フィッシャー著
シーエーピー出版, 1998.3-1999.1
改訂版

CiNii 図書 - マクロ経済学
http://ci.nii.ac.jp/ncid/BA35203110
目次
  • 1部 マクロ経済学の導入—現実と第1次近似モデル(イントロダクション;国民経済計算;所得と支出;貨幣、利子率および所得;財政・金融政策;開放経済のモデル)
  • 2部 総需要、総供給、および経済成長(総需要と総供給—基本モデル;総供給—賃金、物価および雇用;合理的期待均衡アプローチ;経済成長と生産性)
「BOOKデータベース」 より




タイトル別名
Macroeconomics
タイトル読み
マクロ ケイザイガク


http://ci.nii.ac.jp/ncid/BN09661947
ドーンブッシュ/フィッシャーマクロ経済学 : スタディガイド

        Startz, Richard
        廣松, 毅 ヒロマツ, タケシ

書誌事項

ドーンブッシュ/フィッシャーマクロ経済学 : スタディガイド

R.スターツ著 ; 廣松毅 [ほか] 訳

マグロウヒル出版, 1993.9

タイトル別名

    スタディガイド ドーンブッシュ/フィッシャー:マクロ経済学

    Study guide to accompany Dornbusch and Fischer macroeconomics


注記

R.ドーンブッシュ, S.フィッシャー著『マクロ経済学』の第5版に関するスタディガイド

用語解説: p315-329
内容説明・目次

内容説明
本書は、ドーンブッシュ・フィッシャー著『マクロ経済学』を学習するための工夫されたスタディガイドです。『マクロ経済学』に対応した本書の各章の説明を読み、各種の問題を解いていけば、マクロ経済学を確実に理解できます。

目次

    1章 イントロダクション
    2章 国民経済計算
    3章 所得と支出(総需要と均衡生産量、均衡所得)
    4章 貨幣、利子率および所得
    5章 財政政策、クラウディングアウトおよびポリシーミックス
    6章 開放経済のモデル
    7章 総需要と総供給—基本モデル
    8章 消費と貯蓄
    9章 投資支出
    10章 貨幣需要_
    11章 貨幣供給—中央銀行と金融政策
    12章 経済の安定化政策—可能性と問題点
    13章 総供給—賃金、物価および雇用
    14章 インフレーションと失業—基本モデル
    15章 インフレーションと失業のトレードオフ
    16章 財政赤字と国債
    17章 貨幣、財政赤字およびインフレーション
    18章 マクロ経済学—現実のマクロ経済と理論の相互作用
    19章 経済成長と生産性
    20章 貨幣、物価および為替レート(国際調整と相互依存)

3(総需要と均衡生産量、均衡所得) 以外は改定前を踏襲した目次。


_______________

比較用:

       財の需要 財・サービス 財の供給 
 お金の流れ------➡︎D市場S⬅︎--------- 
  |支出    均衡点E_\/    販売された財・|
  (=GDP)      /\       サービス|
  |  -------⬅︎S  D➡︎-------  |
  | |購入された    ⬇︎⬆︎       収入| |
  | |財・サービス 消費税|補助金 (=GDP) |
  | |         |政府購入    産出| |
  | | ⬅︎生活保護-- ||         | |

  ⬆︎ ⬇︎(⬅︎短期国債-➡︎)||(---助成金➡︎ ⬇︎ ⬆︎

  \ / ---所得税➡︎【政府】⬅︎保険・法人税)\ /
 【家\計】    公的貯蓄|⬆︎政府赤字    【企/業
  / \ ⬅︎利子・貸付け ⬇︎|(----融資➡︎ / \
  ⬇︎ ⬆︎ -預金・利息➡︎【銀行
⬅︎利息・取付け)⬆︎ ⬇︎
 
  | |         
金融         | |
  | | --民間貯蓄➡︎ 市場 ➡︎投資⬆︎    | |
  | |                 生産へ| |
  | (GDP=)所得 生産要素     の投入| |
  |  -------⬅︎D市場S➡︎-------  |
  |         E_\/均衡点   賃金・地代|
  |労働・土地・資本   /\   ・利潤(=GDP)
   ---------➡︎S  D⬅︎---------
      労働の供給        労働の需要


上図左右が
下図上下に対応。
左のマネーゲームは右の供給に行き着かない。

資産or
貨幣市場
     ↖
    ↓            ーーーーーーーーーー所得
利子率↘   ↓         
            ↗総需要↘        ↑
財政政策             財市場→ 生産量、物価
            ↘総供給↗                、失業
                         ↖   賃金  ↙
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マクロ経済学の基本的な相互関係

ガラスと液体:ガラスの「形」を数学的に解明 ~トポロジーで読み解く無秩序の中の秩序~

ガラスの「形」を数学的に解明
 ~トポロジーで読み解く無秩序の中の秩序~




 |           /
 |          /
 |         /
消|        /       重
滅|       /        複
 |      /         度
 |    。/  
 |  。。/
 |   /   液体
 |__/_______________
   0   発生


 |           /
 |          /
 |      BO /
消|CP     。/       重
滅|   CO。。/        複
 |      /         度
 |    。/  
 |CT。。/
 |   /   ガラス
 |__/_______________
   0   発生


CP  
    ●__●
   /   
 ー●    /
|     ●
●    / 
|_●_●

CT

    O__O
   /   
 ーO    /
|     O
   / 
|_●_O

CO

    O__O
   /   
 ー●    /
|/|   O
|  / 
|_●_O


BO 
    O__O
   /   
 ー●    /
|/   O
  \/ 
|_●_●

________________

CP  
    O__O
   /   
 ーO    /
|     O
O    / 
|_O_O

CT

    O__O
   /   
 ーO    /
|     O
   / 
|_O_O

CO

    O__O
   /   
 ーO    /
|/|   O
|  / 
|_O_O


BO 
    O__O
   /   
 ーO    /
|/   O
  \/ 
|_O_O



http://stat.scphys.kyoto-u.ac.jp/pub/jps07.pdf



【数理物理学/固体物理学】ガラスの「形」を数学的に解明 トポロジーで読み解く無秩序の中の秩序 [無断転載禁止]©2ch.net
1 :
2016/06/14(火) 12:23:18.75 ID:CAP_USER
共同発表:ガラスの「形」を数学的に解明~トポロジーで読み解く無秩序の中の秩序~
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20160614/index.html


ポイント
東北大学 原子分子材料科学高等研究機構(WPI-AIMR)の平岡 裕章 准教授、中村 壮伸 助教を中心とした研究グループは、統計数理研究所(ISM)および科学技術振興機構(JST)と共同で数学的手法を開発することで、ガラスに含まれ る階層的な幾何構造を解明することに成功しました。

周期性を持たないガラスの原子配置構造は非常に複雑であり、その構造を理解するために、適切な記述法を開発することが長年求められていました。本研究グ ループは、トポロジー注1)を応用することでこの問題を解決することに成功しました。さらに、ここで開発された数学手法は物質に特化しない普遍的なもので あることから、情報ストレージや太陽光パネルなどのガラス開発に加え、マテリアルズインフォマティックス注2)なども含めた幅広い材料開発への応用が期待 されます。

本成果は、平成28年6月13日の週(米国東部時間)に、米国科学アカデミー紀要(PNAS)「Proceedings of the National Academy of Sciences」オンライン速報版に掲載されます。


(以下略)
2 :
名無しのひみつ@無断転載は禁止
2016/06/14(火) 12:40:45.21 ID:20q5TdAn
無秩序にも「秩序」がある。それを数学的に記述するんだね。
3 :
名無しのひみつ@無断転載は禁止
2016/06/14(火) 12:41:22.81 ID:dxSRlr6i
全然分からんがや
4 :
名無しのひみつ@無断転載は禁止
2016/06/14(火) 12:48:43.97 ID:iKII4TRq
材料系は東北大学強いなぁ
5 :
名無しのひみつ@無断転載は禁止
2016/06/14(火) 12:52:15.54 ID:4nJtOAw1
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20160614/icons/zu1.jpg

意外に面白いな。

> 純粋に「データの形」を扱う今回の手法は、ガラスに限らないその他の材料やより一般のデータ解析への応用も可能とします。
> 膨大な原子配置データや実験画像データに対するマテリアルズインフォマティックスへの展開や、ビッグデータ解析へブレークスルーをもたらす手法に発展することが予想されます。

発展性もある。


_______________


平成28年6月14日
東北大学 原子分子材料科学高等研究機構(WPI-AIMR)
情報・システム研究機構 統計数理研究所(ISM)
科学技術振興機構(JST)

ガラスの「形」を数学的に解明

~トポロジーで読み解く無秩序の中の秩序~

東北大学 原子分子材料科学高等研究機構(WPI-AIMR)の平岡 裕章 准教授、中村 壮伸 助教を中心とした研究グループは、統計数理研究所(ISM)および科学技術振興機構(JST)と共同で数学的手法を開発することで、ガラスに含まれ る階層的な幾何構造を解明することに成功しました。
周期性を持たないガラスの原子配置構造は非常に複雑であり、その構造を理解するために、適切な記述法を開発することが長年求められていました。本研究グループは、トポロジー注1)を応用することでこの問題を解決することに成功しました。さらに、ここで開発された数学手法は物質に特化しない普遍的なものであることから、情報ストレージや太陽光パネルなどのガラス開発に加え、マテリアルズインフォマティックス注2)なども含めた幅広い材料開発への応用が期待されます。
本成果は、平成28年6月13日の週(米国東部時間)に、米国科学アカデミー紀要(PNAS)「Proceedings of the National Academy of Sciences」オンライン速報版に掲載されます。

<研究の背景>

ガラスは結晶とは異なり原子配列に周期性を持たないことから、構造を適切に表現する記述法としていまだ満足なものが得られていません。従来の手法では、各 原子の近傍に関する短距離構造について調べることは可能ですが、ガラスのように乱れた3次元原子配置をもつ系に対しては有効ではありません。特に近年の研 究では、ガラスの構造を理解するには、より広範囲の原子で構成される中距離構造を理解する必要性が報告されており、現在多くの研究者が実験的・理論的にガ ラス構造の解明に取り組んでいます。このような新たな記述法の開発は、基礎科学としては「ガラスとは何か」という長年の大問題への理解を深めるものであ り、また産業的には情報ストレージや太陽光パネルなどのガラス材料開発に直結する重要な意味を持ちます。中距離構造を記述する難しさは、(1)多くの原子 からなる多体系の特徴をどのように記述するか、および(2)短距離から中距離までのマルチスケール性をどのように扱うかにあり、このような困難を克服しか つ材料に依存しない普遍的な新手法の開発が強く望まれていました。

<研究の内容>

このたび、東北大学 原子分子材料科学高等研究機構を中心とした研究グループは、ガラスの原子配置に含まれる中距離秩序構造を記述できる数学的手法を開発し、それを用いてガラスの階層的な幾何構造を抽出することに成功しました。開発された数学的手法はパーシステントホモロジー注3)と呼ばれるトポロジーにおける概念を用いており、原子配置を空間内の点の集まりとみなし、そこに含まれるリングや空洞といった「穴」に着目するマルチスケールデータ解析を可能とします。これにより酸化物ガラスや金属ガラスの代表的な例(SiOやCuZr)に対して、分子動力学法注4)を用いて各物質の原子配置を構成しパーシステントホモロジーを適用することで、液体とガラス状態の内部構造の違いを幾何学的に特徴付けることに成功しました(図1図2)。特に、ガラス状態では原子配置のリング構造に階層性を持った秩序構造が存在することを見出しました。ここで得られた新たな知見をもとに、第一シャープ回折ピーク(FSDP)注5)の実空間幾何構造としての特徴づけや、ガラスの硬さの起源にあたる中距離秩序構造の記述にも成功しました。

<今後の展望>

今回の数学的手法を用いたガラスの構造解析に関する成果は、ガラスの基礎研究から応用研究までの広い分野に大きなインパクトを与えるものです。今後基礎研 究としては、パーシステントホモロジーを用いたガラス転移の特徴づけや、剛性や粘性をはじめとした物性と原子配置の相関について理解が進むことが予想され ます。また応用の立場からは、ガラス材料を用いた高機能な記録材料・記録媒体や太陽光パネルなどの開発へ適用されることが期待されます。さらに数学的手法 の最大の特徴はその普遍性であり、純粋に「データの形」を扱う今回の手法は、ガラスに限らないその他の材料やより一般のデータ解析への応用も可能としま す。膨大な原子配置データや実験画像データに対するマテリアルズインフォマティックスへの展開や、ビッグデータ解析へブレークスルーをもたらす手法に発展 することが予想されます。
なお、本成果は、文部科学省 世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)、JST CREST「ソフトマター記述言語の創造に向けた位相的データ解析理論の構築」(研究代表者:平岡 裕章)、JST さきがけ「トポロジカルデータ解析に基づくアモルファス構造の包括的記述と特徴抽出」(研究者:中村 壮伸)、JST SIP「マテリアルズインテグレーションへの数学的アプローチ技術開発」(研究責任者:西浦 廉政)などの援助によって得られました。

<参考図>


図1 SiOの原子配置(左)とそのパーシステントホモロジー(右)

ガラスは液体と異なり3つの曲線のような帯状領域を持つ。数学解析を行うことでこれらの曲線がガラスの形を特徴づけていることがわかる。

図2 SiOガラスのパーシステントホモロジー(図1右上)に対応する典型的なリング構造

パーシステントホモロジーは緑色のリングを捉えている。ここで赤球はO原子、青球はSi原子を表す。

<用語解説>

注1) トポロジー
物の形を連続変形した際に保たれる性質に着目した数学の1分野です。例えば輪ゴムとコーヒーカップは、互いにリング形状を保ちながら移り合うので 同じものと見なされます。位相的データ解析に代表されるように、近年では数学的な研究に加えて、トポロジーを諸科学・産業へ応用する「応用トポロジー」と 呼ばれる新分野が開拓されています。
注2) マテリアルズインフォマティックス
計算機性能の飛躍的な発達にともない、これまで蓄積されてきた膨大な材料データに計算科学・数理的な手法を適用することで新物質・新材料を開発する取り組み。従来の試行錯誤的な材料開発とくらべて開発期間や資源の大幅な削減につながることが期待されています。
注3) パーシステントホモロジー
図形や画像、さらにはより一般の「データの形」をマルチスケールで特徴付ける数学的手法。位相的データ解析と呼ばれるトポロジーを応用したデータ 解析手法の1つです。その起源は19世紀フランスの数学者ポアンカレによって考案されたホモロジーにあり、21世紀になってデータ解析への応用の可能性を 指摘され新たな展開を迎えています。現在、数学研究のみならず諸科学への応用研究が急速に進められています。
注4) 分子動力学法
古典力学に基づいて、多数の原子の運動方程式を数値的に解き、材料物性を評価する方法。実験や量子力学に基づいて決められる原子間相互作用を与え る事で化学的性質を表現する事が出来ます。また、実験とつじつまがあうような妥当な原子配置を推定する際に役立ちます。本研究ではガラスの原子配置を求め る際に使用しています。
注5) 第一シャープ回折ピーク(FSDP)
ガラス構造から得られるX線あるいは中性子散乱プロファイルで低散乱角側(つまり1番目)に出現するシャープな回折ピーク。プロファイルの低散乱角側にあることから、実空間の構造としては比較的長い距離に対応し、ガラスの中距離構造と関係があると言われています。

<論文情報>

タイトル Hierarchical structures of amorphous solids characterized by persistent homology
著者名 Yasuaki Hiraoka, Takenobu Nakamura, Akihiko Hirata, Emerson G. Escolar, Kaname Matsue, and Yasumasa Nishiura
掲載誌 Proceedings of the National Academy of Sciences

日曜日, 6月 12, 2016

ヘーゲルの自己意識論:主人と奴隷(メモ)


「僕たることは、自己に押しもどされた意識として、
自己のうちに帰り、真の自立態に逆転するであろう。」ヘーゲル

精神現象学、自己意識の章に出てくるヘーゲルによる主人と奴隷の弁証法(意識から自己意識へ)は、私見では以下の構図を持つ。

 主人(死を以て支配)
 奴隷
  ↓
主人-奴隷(相互承認)
  ↓
 奴隷(労働の優位)
 主人

あるいは、

主人 物 奴隷
  ↓
 主人
 奴隷 物
  ↓
 奴隷 物
 主人

(主人は物を間接的に扱い、奴隷は直接的に扱う)

もしくは、

主人
奴隷
 ↓
主人-物a-奴隷-物b (*承認)
      ↓
     奴隷 (*労働は直接、物を形成)
     主人

正反合ならぬ正合反? エンチ#430〜5参照

マルクスはこれを資本家と労働者に置き換えた。3ではなくカント的4段階を論理の型にしているが、レトリックは3段階である。
価値形態論だと左右反転にもう一段階使う。
また、両者とも労働が物との関係性で捉えられる。

http://dameinsei.hatenadiary.jp/entry/2013/02/03/171600
「物を形成するなかで自分が自主・自立の存在であることが自覚され、こうして、自主・自立の過不足のない姿が意識にあらわれる。物の形は外界に打ち出されるが、といって、意識と別ものなのではなく、形こそが意識の自主・自立性の真の姿なのだ。かくして、一見他律的にしか見えない労働のなかでこそ、意識は、自分の力で自分を再発見するという主体的な力を発揮するのだ。」(同上、137頁)

https://www.nagaitoshiya.com/ja/1999/master-slave-dialectic-sadism-masochism/

主人と奴隷の弁証法は、『精神現象学』の「自己意識」の章に出てくる。ヘーゲルによれば、「自己意識は即かつ対自的に存在するが、それは、自己意識が小文字の他者に対して即かつ対自的である、つまりもっぱら承認されたものとして存在するかぎりにおいて、かつそのことによってである」[Hegel; Phaenomenologie des Geistes,S.141]。
ヘーゲルの表現は難解だから、分かりやすく説明しよう。
第1段階:例えば、ある人が、前人未到と思われる土地を発見し、「ここはオレの土地だ!」と宣言したとする。そう宣言することは誰にでもできるし、納得しているのは宣言している本人だけである。この真理の主観的段階は、即自的といえる。
第2段階:ところが後から「そこは、実は私が最初に見つけた土地だ」と言い出す男が現れたとする。するとさっきの即自的で主観的な真理は他者によって否定されることになる。これが弁証法の対自的段階である。
第3段階:当然その土地が誰のものかをめぐって、二人の間で争いが起きる。二人は、たんに主観的な真理ではなく、相互主観的(社会的)に承認された客観的真理を求めるようになる。相互承認された真理は、ヘーゲルの弁証法では、即かつ対自的であると言われる。
私と他者という二つの自己意識は、自立的であろうとして、存在を賭けた戦いを行う。それゆえ二つの自己意識の関係は、両者が生死を賭けた戦いを通して、自分自身とお互いの真を確かめるべく規定されている。両者は戦わなければならない。なぜなら両者は、それ自体で存在しているという自分の確信を他者において、そして自己自身において真理へと高めなければならないからである。
自己意識が自立的であり、自分の権利を全うしようとするならば、他者から承認されなければならないが、それが不可能なら相手を殺すしか他はない。だがこのように死によって真を確かめることは、そこから出てくるはずの相互承認された真理を、そしてそれゆえにまた自己自身の確信一般をも破棄してしまう。
意識は、自分の自立的存在を他者に認めさせようとして、他者と戦った。もし他者を死に至らしめてしまえば、自分を勝利者として認めてくれる他者をも失うことになってしまう。自己意識は自立的であろうとするならば、自立的であってはならないのであって、相手が「言うことは何でも聞くから殺さないでくれ」と哀願してきたときには、敵の命を救って、彼を奴隷にしなければならない。こうして自己意識は奴隷から主人として承認される存在となる。
奴隷は、主人の命令で労働し、主人は遊んで暮らす。奴隷の労働の果実は主人に取り上げられ、奴隷はそのおこぼれしか享受することができない。主人は自立的で、奴隷は非自立的である。しかし主人はやがて労働することを忘れるようになる。主人は奴隷がいなければ生きていけなくなる。ここにおいて主人と奴隷の関係が逆転し、主人が非自立的、奴隷が自立的存在となる。
「それゆえ、自立的意識の真理は奴隷の意識である。この自立的意識は、最初は確かに自己の外に現れ、自己意識の真理としては現れない。しかし、支配の本質が、支配がそうなろうと欲したところのものの逆であることを支配が示したように、おそらく隷従の方も、それが徹底して行われるならば、隷従が直接そうであるところのものの逆になるであろう。隷従は、自己内へと押し返された意識として自己へと立ち帰り、真の自立性へと逆転していくであろう」[Hegel; Phaenomenologie des Geistes,SS.147-148]。
以上はヘーゲルの説明である。今回は、かつてサルトルがやろうとしたこと、サドとマゾの間に、ヘーゲルの主人と奴隷の弁証法の関係を見出すことをしてみよう。そして前回分析した金属バット殺害事件にSM関係がなかったかどうかも考えてみよう。

ヘーゲルの自己意識論:主人と奴隷
http://philosophy.hix05.com/Hegel/hegel09.jiko.html
主人と奴隷の関係は、一見して一方的な関係に見える。しかしよく見るとそうではない。両者は互いに相手を前提として成り立つ。奴隷が存在しなければ主人はありえないように、両者は一体となって初めて意味を持つようになるのだ。

そこでヘーゲルは、主人―奴隷関係の中に潜んでいる弁証法的な契機を明らかにしていく。

まず、主人は死の威力をもって奴隷を支配する。奴隷は死の脅威に怯えて主人に服従する。つぎに主人は奴隷の労働を通して物を獲得する。奴隷は奴隷で、労働を通して直接物にかかわり合う。しかし、この過程から次のような事態が生じる。

主人は奴隷を支配することを通じて、自分の自立性を獲得できているように見えるが、このことは、いいかえれば、主人の自立性は奴隷との相対的な関係に依存していることを示している。主人は奴隷がいなくなれば主人であることをやめる、ということは、人間としての自立性を失うことを意味する。もはや主人でなくなったものは、物とのかかわりも失うからである。

ところが奴隷の方は、たとえ主人がいなくなったとしても、少なくとも人間としての自立性を失うことにはならない。何故なら、奴隷は労働を通じて直接物にかかわっているのであるし、そのことを通じて人間としての本質に即した生き方をなしえているからだ。人間というものは、労働の経験によって、自分(自己意識)の本質を実現する可能性をつかむのである。

労働について、ヘーゲルは次のように言う。

「労働とは欲望を抑制し、物の消滅にまで突き進まず、物の形成へと向かうものである・・・物を否定しつつ形をととのえる行為というこの中間項は、同時に、意識の個性と純粋な自主・自立性の発現の場でもあって、意識は労働する中で自分の外にある持続の場へと出ていくのだ。こうして労働する意識は、物の独立を自分自身の独立ととらえることになる・・・一見他律的にしか見えない労働の中でこそ、意識は、自分の力で自分を再発見するという主体的な力を発揮するのだ」

人間の本質実現は労働を通じてもたらされる、とするこの思想は、マルクスに多大な影響を与えた。マルクスもまた、労働こそが人間の本質を実現する過程だと考えたのである。そして資本主義社会においては、支配者たる資本家は他人の労働に依存している限り、ヘーゲルのいう「主人」と同じ立場にある。一方ヘーゲルのいう「奴隷」である労働者階級は、労働を通じて人間の本質実現をできる立場にある。それ故、資本主義社会が消滅して共産主義社会がやってくれば、労働するものは、労働を通じて、自己の人間性を全面的に開花させうる立場になる。そうした社会では、人間性は何物にも妨げられることなく、自由でのびのびと花開くことになるだろう。そうマルクスは考えたわけだが、その思想の芽が、ヘーゲルの主人―奴隷関係の議論の中にあったわけである。
 _____

マルクス『経済学・哲学草稿』(1844年)――第三草稿〔二〕私有財産と共産主義
http://web1.nazca.co.jp/hp/nzkchicagob/DME/KeitetuSoukou32.html
共産主義は否定の否定としての肯定であり、それゆえに人間的な解放と回復との、つぎの歴史的発展にとって必然的な、現実的契機である。共産主義はもっとも近い将来の必然的形態であり、エネルギッシュな原理〔das energische Prinzip〕である。しかし共産主義は、そのようなものとして、人間的発展の到達目標――人間的な社会の形姿――ではない(36)。  
マルクス『経済学・哲学草稿』――第三草稿〔五〕ヘーゲル弁証法と哲学一般との批判
http://web1.nazca.co.jp/hp/nzkchicagob/DME/KeitetuSoukou35.html  

それゆえ、一つの側面からすれば、ヘーゲルが哲学へと止揚する現存なるものは、現実的な宗教、国家、自然ではなくて、すでに知識の対象となった宗教そのもの、すなわち教義学であリ、おなじく法律学国家学自然学なのである。したがって一つの側面からいえば、ヘーゲルは現実的な存在と対立するとともに、直観的な非哲学的な学問とも、またはこの存在の非哲学的な概念とも対立しているわけだ。だからこそヘーゲルは、それらのよく通用する諸概念に反対するのである。

 他面では、宗教的等々の人間は、ヘーゲルにおいてその最後の確証を見いだすことができる。

 ところで、いまやヘーゲルの弁証法の積極的な諸契機――措定の規定の内部での――をとらえねばならない。

 (a) 外在態を自己のうちに取りもどす対象的な運動としての止揚。――(41)《これは対象的本質をその疎外の止揚によって獲得するということについての、疎外の内部で表現された洞察であり…

 (自己自身から疎外された人間は、また彼の本質から、すなわち自然的で人間的な本質から疎外された思想家でもある。それゆえ彼の諸々の思想は、自然と人間との外部に住んでいる固定した精霊どもである。ヘーゲルは彼の論理学のなかでこれらの固定した精霊をすべて集めて閉じこめ、それらの各精霊をまず否定として、すなわち人間的思惟の外在態としてとらえ、それから否定の否定として、すなわちこうした外在態の止揚として、人間的思惟の現実的な発現としてとらえたのである。しかし、それ自身なお疎外のうちにとらわれているので、――この否定の否定は、一方ではその疎外態において精霊どもを再興することであり、他方ではこれらの固定した精霊の真の現存としての究極の行為で満足すること、すなわち、そのような現存としての外在態のなかで自己を自己に関係させること〔das Sichaufsichbeziehen〕である。《すなわちヘーゲルは、あの固定した抽象の代りに抽象の自己内循環行為をおく。それによって彼はまず、そのもともとの日付からいえば個々の哲学に所属するこれらすべての怪しげな概念の誕生地を証明し、それらを総括し、特定の抽象態の代りに、それらの概念の全範囲を網羅しつくした抽象を批判の対象として創りだすという功績をあげたのである。)(なぜヘーゲルが思惟を主体から切りはなしたかということについてはあとで見ることにする。しかし、人間が存在しないとすれば、彼の本質の発現もまた人間的ではありえないこと、したがって思惟もまた、社会や世界や自然のなかで目、耳等々をそなえて生きている人間的で自然的な主体としての人間の、本質発現としてはとらえられなかったこと、こうしたことはすでにここでも明らかである。)》 さらにヘーゲルにあっては、この抽象が自己自身を把握し、自己自身について果てしない倦怠を感じているかぎりでは、目もなく耳もなくなにもかもない抽象的な思惟、思惟のなかでのみ運動する思惟を放棄することが、自然を実在として承認し直観にみずからを委ねようと決心することとして現われるのである。)…

以下は『経済学・哲学草稿』(光文社、長谷川訳)。

四.欲求と窮乏

…疎外の廃棄は、つねに、支配的な力としてある疎外の形式から生じてくるので、ドイツではそれが自己意識であり、政治的なフランスではそれが平等であり、イギリスでは現実的で、物質的で、独善的な実践的欲求だ。この点からプルードンを批判し、また承認しなければならない。

 わたしたちが共産主義をいまだ否定の否定として、私有財産の否定に媒介された人間的本質の獲得として特徴づけ、したがって、真の、自発的な肯定ではなく、私有財産に始まる肯定として特徴づけるとき、……〔以下、草稿の左側がちぎれて紛失しているので判読不可能〕……こうして、人間生活の現実的疎外は克服されずに残り、しかも、人がそれを疎外として意識すればするほど疎外は大きくなるから、疎外が克服されるとすれば、共産主義の実現によって克服されるほかはない。


(存在、本質、概念。一般性、特殊性、個別性。肯定、否定、否定の否定。単純な対立、決定的な対立、克服された対立。直接性、媒介、媒介の克服。自己のもとにある、外化、外化からの帰還。即自、対自、即自かつ対自。統一、区別、自己区別。同一性、否定、否定力。論理、自然、精神。純粋意識、意識、自己意識。概念、判断、推論。)

上は26歳のマルクスによる「『精神現象学』の最終章「絶対知」からの抜き書き」。(  )内の五行だけがマルクスの追加した箇所。


マルクス『1857-58年草稿』を読み始めてみる | Internet Zone::WordPressでBlog生活
http://ratio.sakura.ne.jp/archives/2008/06/07220400/
二つめのプラン。〔草稿集<1>、329ページ〕

資本。
 I、一般性
  (一)
   (a)貨幣からの資本の生成。
   (b)資本と労働(他人の労働によって媒介された)。
   (c)資本の諸要素、それが労働にたいしてもつ関係にしたがって分解されたもの(生産物。原料。労働用具)。
  (二)資本の特殊化。
   (a)流動資本。
   [(b)]固定資本。
   [(c)]資本の通流
  (三)資本の個別性。
   [(a)]資本と利潤。
   [(b)]資本と利子。
   [(c)]利子および利潤としてのそれ自身から区別された、価値としての資本。
 II、特殊性
  (一)諸資本の蓄積。
  (二)諸資本の競争。
  (三)諸資本の集積(同時に質的な区別でもあり、また資本の大きさと作用の尺度でもある、資本の量的な区別)。
 III、個別性
  (一)信用としての資本。
  (二)株式資本としての資本。
  (三)金融市場としての資本。  


               /\
              /  \
           金融市場としての資本
            /______\
           /\ <個別性>/\
          /  \    /__\
      信用としての資本\  /株式資本としての資本
        /______\/______\
       /\              /\
      /価値\ マルクス1857~8年/  \
     / 個別性\  『資本論草稿』 /諸資本の集積
    /利潤__利子\ ノート2より /______\
 労働用具<一般性> /\      /\ <特殊性>/\
生産物  原料   /通流\    /  \    /  \
 /=諸要素\  /特殊化 \ 諸資本の蓄積\  /諸資本の競争
/貨幣__労働\/流動__固定\/______\/______\
         資本  資本

左下で完結しているのが特徴だ。現行資本論も第一部で完結しているという見方もある。
ただし、ある種の円環が全体にあり、ヘーゲル流のトリアーデがそれを示唆する。


参考:
               /\
              /  \
             / 利子 \
            /______\
           /\ <分配論>/\
          /  \    /__\
         / 利潤 \  / 地代 \
        /______\/______\
       /\              /\
      /  \    宇野弘蔵    資本の\
     / 資本 \  『経済原論』  /再生産過程
    /______\        /______\
   /\<流通論> /\      /\ <生産論>/\
  /  \    /  \    /  \    /  \
 / 商品 \  / 貨幣 \  /資本の \  /資本の \
/______\/______\/_生産過程_\/_流通過程_\


追加:
資本論1:24
第二四章 いわゆる本源的蓄積
第七節 資本制的蓄積の歴史的傾向
《…資本独占は、それとともに──またそれのもとで──開花した生産様式の桎梏となる。生産手段の集中と労働の社会化は、それらの資本制的外被と調和しえなくなる時点に到達する。この外被は粉砕される。資本制的私有財産の葬鐘が鳴る。収奪者たちが収奪される。
 資本制的生産様式から発生する資本制的取得様式は、したがって資本制的な私的所有は、自分の労働を基礎とする個人的な私的所有の第一の否定である。だが、資本制的生産は、自然過程の必然性をもって、それじしんの否定を生みだす。これは否定の否定である。この否定は、私的所有を再建するわけではないが、しかも資本主義時代に達成されたもの──すなわち協業や、土地の・および労働そのものによって生産された生産手段の・共有──を基礎とする個人的所有を生みだす。》


土曜日, 6月 11, 2016

転形問題:メモ


         (マルクス経済学リンク::::::::::
転形問題:メモ
http://nam-students.blogspot.com/2016/06/blog-post_11.html(本頁)
マルクス『資本論』:メモ及び目次
http://nam-students.blogspot.jp/2011/10/blog-post_29.html?m=0
グルントリッセ1857~8...(+資本論草稿関連) 転形問題→再生産表式→グルントリセ
http://nam-students.blogspot.com/2016/07/blog-post.html

ピエロ・スラッファ (Piero SRAFFA)/ルイジ・パシネッティ(Luigi L. Pasinetti)
http://nam-students.blogspot.jp/2015/10/piero-sraffa.html
カレツキ:「投資と資本家消費が利潤と国民所得を決定する」という命題
http://nam-students.blogspot.jp/2012/01/blog-post_17.html
均斉成長経路(1937): ジョン・フォン=ノイマン (John von Neumann), 1903-1957
http://nam-students.blogspot.com/2016/06/john-von-neumann-1903-1957.html

NAMs出版プロジェクト: ジョン・ローマー

http://nam-students.blogspot.jp/2016/11/blog-post_15.html
NAMs出版プロジェクト: 信用創造
http://nam-students.blogspot.jp/2016/08/blog-post_5.html


転形問題とは?
価値の大きさが生産価格に転形されるのはいかにしてか(または転形されるか否か)
ハインリッヒ183頁


...このようなマルクスの結論が成り立つには,この例ではあらかじめ価値に等しいと仮定されている費用価格の生産価格化がさらに説かれなければならない。しかしマルクスは,価値からのこうした「修正」(K.Ⅲ.,S.174,邦訳⑥275頁)の意味に気付きながらも,それ以上の追究をしないまま,考察を次のように途中で打ち切るのである。

「費用価格のこのような修正された意味を頭に入れておくことが必要であり,したがって,ある特殊な生産部面で商品の費用価格がその商品の生産に消費される生産手段の価値に等しいとされる場合には,いつでも誤りが起こり得るということを注意しておくことが必要である。われわれの当面の研究にとっては,この点にこれ以上詳しく立ち入る必要はない」(K.Ⅲ.,S. 174,邦訳⑥275-276頁)
国民文庫
3:2:9
 第9章一般的利潤率(平均利潤率)の形成と商品価値の生産価格への転化    (転形問題)


《要約すれば、価値は直接価格を決定し,直接価格は生産価格に転形される。
そして市場価格は、それらの生産価格のまわりを変動することになる。転形問
題は、それゆえ、価値を価格に転形する問題でなくて、代わりに、それは直
接価格を生産価格に転形する問題である。》『価値と価格の理論』リヒテンシュタイン著202頁

需要関数と生産関数の違い――イタリア人経済学者ピエロ・スラッファは、「マーシャル・クロス」を「〈需要関数〉は、効用逓減という基本的かつ自然的なる仮定の上に立つ。これに反して、生産における関数関係は、これよりもずっと複雑な仮定を持った体系の結果である。限界効用に関する研究が、価格と(消費された)数量との関係に注意をひきつけたあとではじめて、類推によって費用と生産量との関係という均斉的な概念が生まれたというのが事実である」(『経済学における古典と近代』、菱山泉・田口芳弘訳、有斐閣、1956年)と評した。十分ではないが、極めて妥当な鑑定である。〕Ⅱ新古典派経済学の限界「風雅のブリキ缶」

転形問題における単一体系解釈
吉村信之信州大学経済学部
https://soar-ir.repo.nii.ac.jp/index.php?action=repository_action_common_download&item_id=2650&item_no=1&attribute_id=65&file_no=1&page_id=13&block_id=45

マルクス派搾取理論再検証 ―70 年代転化論争の帰結―吉原直毅

第二篇第九章
柴田敬と高田保馬の転化論論争
http://www.ronsyu.hannan-u.ac.jp/open/n001878.pdf


(浅田彰が逃走論(単行本188頁)で推奨するのが「転形手続きの数学的構造」 / 塩沢由典/basic数学1979年1月44~49頁)さらに、

I.スティードマン「スラッファ後のマルクス」(Ian Steedman;Marx after Sraffa,1977) 塩沢 由典 .

P381~383

経済研究 / 一橋大学経済研究所 編.. 東京 : 岩波書店, 1950-. .

 

著者名   塩沢 由典.

掲載ページ(巻号等)   30(4) 1979.10 P381~383

________



転形問題における単一体系解釈

 
(Adobe PDF)
 

soar-ir.repo.nii.ac.jp/index.php?...
吉村信之信州大学経済学部
2-2.論争の第二期. 日本における諸研究. と関連して. ⑴ ボルトキェヴィッチ= スウィージーの. 解法をめぐって. ⑵ 物量体系による価値論批判. 価値不. 要論と「負の 価値」論. ⑶ 「マルクスの基本定理」をめぐって. 3.転形論争の第三期. 3-1.「単一体系 」の台頭.

転形問題
ボルトキェヴィッチが三分割創始
(消費部門を二つにしたのでカレツキとは違うが、カレツキはここから影響を受けているに違いない。もともとこの三分割は、ボルトキェヴィッチによれば☆54頁、ツガン=バラノフスキー『マルクシズムの理論的基礎』1905年☆☆によるもの。)

 ☆132頁
  利潤なし 利潤あり
価値  1   2
価格  3   4

リカード1から4へ 
マルクス4から1へ* 

*マルクスの手順は2から3へ(剰余価値から共産社会へ)ではないか?

なお、 『資本主義発展の理論』を書いたスウィージーの指摘ではマルクスの貢献は価値と価格の平行関係を認めたことにある。表で言えば、

 価値
  |
 価格 

ではなく、

 価値ー価格

と表記すべきなのだろう。
デカルトの心身問題を読み替えたスピノザに似ている。

    価格 価値 
利潤なし 3  1
利潤あり 4  2

石垣博美・上野昌美編訳[1982]『転形論アンソロジー』法政大学出版局○
Bohm-Bawerk,E.[1896]Zum Abschluss des Marxschen Systems,in Sweezy[1949](P.,M.,スウィージー編,玉野井・石垣訳[1969]).
ボルトキェヴィッチ「マルクス体系における価値計算と価格計算」1906~7年所収。

玉野井芳郎・石垣博美訳[1969]ポール・スィージー編『論争・マルクス経済学』○
Bortkiewicz,L. [1907]‘Zur Berichtigung der grundlegenden theoretischen Konstruktion vonMarx im dritten Band des,,Kapital‘‘’,im Bortkiewicz[1976](玉野井・石垣訳[1969]). 
『資本論』第三巻 におけるマルクスの基本的理論構造の修正について(ラディスラウス・フォン・ボルトキェヴィッチ) 1907 所収。

○はボルトキェビッチ論考所収


☆☆
ツガン=バラノフスキー著、高畠素之訳『唯物史観の改造』(新潮社,大正13年12月)……Theoretische Grundlagen des Marxismus(『マルクス主義の理論的基礎』),1905年の部分訳。一応、三分割再生産表式(第六章 資本主義経済制度の崩壊 二 販路欠乏の學説 204頁#)も訳されている。ツガンは、カウツキーとの論争用に、 労働者の消費減つまり窮乏化は資本主義を崩壊させない例として表式を使った。


国立国会図書館デジタルコレクション - 唯物史観の改造
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1183857

唯物史観の改造 ツガン・バラノヴスキイ 著[他]

新潮社 大正13 社会哲学新学説大系 ; 第1巻

目次

唯物史観の改造 

標題

目次

序文

第一章 唯物史觀の根本觀念/3

一 生產力の槪念/3

二 經濟の物的因子/10

三 階級鬪爭說/25

第二章 唯物史觀の心理的起點/43

一 マルクスとヘーゲル/43

二 歷史の起動力としての意志と悟性/45

三 心理學上の主意的傾向/49

四 十八世紀啓蒙學派とマルクス/53

第三章 社會的發展の起動力としての欲望/56

一 自己保存慾/56

二 性的衝動/66

三 同情的衝動/72

四 優越的衝動/80

五 超利害的欲望/86

第四章 經濟及び社會生活/106

一 生物界竝びに人類史上における生存競爭/106

二 經濟の槪念/109

三 一切の活動の基礎としての經濟/115

四 多數人民の最重要なる活動部面としての經濟/124

五 經濟の物的要素/128

六 意識と社會的存在/139

第五章 社會階級及び階級鬪爭/146

一 現社會の階級組成/146

二 社會的鬪爭の働因/147

三 階級鬪爭と精神的活動/160

四 階級鬪爭竝びに近時の社會運動/170

第六章 資本主義經濟制度の崩壞/182

一 經濟的發達と社會主義/182

二 販路缺乏の學說/183 #

三 利潤率低減の法則/219

四 社會主義制度の實現/225



Tugan-Baranowskyの部門間比例説と高田=久留間論争 山内 清 
Tugan-Baranowsky’s Proportion Theory in Production Sections and Takada=Kuruma Dispute Kiyoshi YAMAUCHI  2012
http://www.tsuruoka-nct.ac.jp/wp-content/uploads/2013/04/kiyou47_01-10.pdf
理 論 的 基 礎 』( Theoretische Grundlagen des. Marxismus,1905,SS24-5)の中で 、「社会的消費の絶対的. 減少のもとでも拡大再生産が可能である」の証明として、. 次 のような表式を提出する。その条件とは、①全部門の資. 本構成が3:1→4:1→5.33:1  ...


は じめに――ツガン部門比例説論争と考察の限定 M・ツガンーバラノフスキー(以後ツガンと略記する)は『英国恐慌史論』(注1)他で、マルクスの再生産表式を独自に拡張して、蓄積が社会的消費から独立 して無限に進行しうる、あるいは恐慌は部門間の不比例で起こるなどの説を展開したことで有名である。従来、彼の恐慌論は過少消費説の対極にあるものとし て、日本のどの恐慌論の研究者も言及しているが、彼の説のもとになった3部門拡大再生産表式そのものの検討は少ない。その批判の際も、その設定の矛盾や ルール違反を指摘するだけで、拡大再生産条件に「部門間比例(比率)の維持」を付け加えるツガン説への根本的な批判はなされていない。 
日 本でツガン説を採用し、マルクス批判をしたのは高田保馬(注2)である。1932年、高田は単なるツガンエピゴーネンとしてではなく、ツガンではなしえな かった部門間で資本構成が不均等な場合をとりあげ、蓄積率(剰余価値のうち追加資本に回る比率)の概念を用い、拡大再生産条件(以後Ⅰv+mk+mv=Ⅱ c+mcの意味で使う)に、「二部門のあいだには一定の釣合いがあるはず」(355頁)、つまり「部門間比率の維持」を付け加えるべきだと主張し、マルク スには「見落としがある」と攻めた。当然マルクス擁護の久留間鮫造(注3)から反批判があり、Ⅰ部門蓄積率の主導により部門間比率は従属的に変化するとさ れた。両者の応酬は昭和ひとけた時代の高田=久留間論争として有名である。
し かし、戦後日本では高田説は影響力をなくし、久留間説が有力な恐慌論の一つとなったため、論争は久留間説で片が付いたと見なされていた。 しかし1970年代論争は別の形で再燃した。久留間編『マルクス経済学レキシコン』の「栞№6」で、大谷禎之介は富塚良三恐慌論らにある「均衡蓄積率」の 考え方は、「蓄…
(注 1)Tugan-Baranowsky,Studien zur Theorie und  Geschichte der Handelskrisen in England,1901.救仁郷繁訳『英国恐慌史論』ぺりかん社、1972年。初版は露語版(1894年)。 
(注2) 高田保馬の1932年から1934年までの初出の雑誌、新聞論文は高田保馬『マルクス経済学論評』改造社、1934年に部分修正を経て再録されている。以下、高田の文章は改造社版で示す。
1頁より

ツ ガンは、カウツキーらのツガン表式は「めったに起こりえないケース」だとの批判を受けて、『マルクス主義の理論的基礎』(Theoretische Grundlagen des Marxismus,1905,SS24-5)の中で、「社会的消費の絶対的減少のもとでも拡大再生産が可能である」の証明として、次のような表式を提出 する。その条件とは、①全部門の資本構成が3:1→4:1→5.33:1のように年々高度化する。②賃金は年々減少する。③したがって剰余価値率もまた、 100%→166.7%→255.6%と上昇する。③第1年度はⅠ、Ⅱ、Ⅲ部門の剰余価値総額800のうち200つまり25%が蓄積に回る。しかし、Ⅲ部 門は全く蓄積せず生産物価値的には成長しないと想定する。Ⅲ部門はその代償として、先のように賃金が25%下げられ、剰余価値額は25%上昇する。ツガン は拡大再生産の資本家的典型像をこのように描くのである。それで、彼は3部門とも資本構成が3:1で均等な表式を提出した。 
【表式4-1】 
第1年度 
Ⅰ1632c+544v+544m=2720 
Ⅱ408c+136v+136m=680 
Ⅲ360c+120v+120m=600 
Ⅲ 部門の不変資本cと総生産額c+v+mは変わらないとする想定であるから、vが120から90になれば、第2年度の価値生産物v+mは90v+150mと なる。ここから剰余価値率166.7%が計算され、それに等しくなるようにⅠ、Ⅱ部門の剰余価値率も決まる。しかし、蓄積率は3…
5頁より

ミハイル・トゥガン=バラノフスキー - Wikipedia 
ミハイル・トゥガン=バラノフスキー(Mikhail Ivanovich Tugan-Baranovsky、1865年1月8日 - 1919年1月21日)は、ウクライナ出身、ロシア経済学者
(ツガン=バラノフスキーと呼ぶひとも多い。)
高畠素之『唯物史観の改造』(新潮社,大正13年12月)……Theoretische Grundlagen des Marxismus(『マルクス主義の理論的基礎』),1905年の部分訳である。 

ミハイル・トゥガン=バラノフスキー (Mikhail I. Tugan-Baranovsky)
http://cruel.org/econthought/profiles/tugan.html

ミハイル・イワノヴィッチ・トゥガン=バラノフスキー (Mikhail Ivanovich Tugan-Baranovsky), 1865-1919.


原ページ

 
Google
WWW 検索 cruel.org 検索

 ウクライナの経済学者ミハイル・トゥガン=バラノフスキーの貢献は、二つの関連する分野でのものだ:景気循環論マルクス派危機理論だ。
 景気循環をめぐるトゥガン=バラノフスキーの理論は 1894 年著書で解説されており、初めて一貫性のある完全に「経済学的」な景気循環の理論として有名だ。この理論は、セイの法則を否定する信用理論と、ケインズ的な乗数理論の原始的なものに基づいており、景気循環は独立した投資関数によるもので、最終的には不景気の原因は「過剰投資」であると論じた。この画期的な研究のおかげで、ヨーロッパでは多種多様な景気循環論、たとえばシュピートホフ から カッセル やロバートソン、果てはキール学派 や ハイエクまでが登場した。
 この景気循環理論を基盤として、 1905 年には マルクスの 資本主義危機理論に対する批判が生まれた。景気循環論で、すでに資本主義においては「破壊/崩壊」に向かう動きが必ずしもあるわけではなく、単に波となる パターンがあるだけなのだ、ということは示された。1905 年の著作では、この議論を拡張し、資本主義経済は条件次第で「定常状態」に達して崩壊への動きが止まることもあり得ることが示された。
 トゥガン=バラノフスキーの批判は、 マルクス派の中で、支持者 (e.g. ヒルファディング) と、崩壊必然という古い協議の信奉者 (e.g. カウツキー や アードラー) との大論争を巻き起こした。これは後に、帝国主義に関する論争にまで発展した。やがてトゥガン=バラノフスキーはルーツであるマルクス主義を放棄して、かつての論敵だったナロードニキたちの社会主義的な見方である協同主義的経済を支持するようになった。

ミハイル・トゥガン=バラノフスキーの主要著作

  • The Industrial Crises in England, 1894.
  • The Russian Factory, 1898.
  • Theoretical Groundwork of Marxism, 1905.
  • Modern Socialism in its Historical Development, 1906.

ミハイル・トゥガン=バラノフスキーに関するリソース




ホーム学者一覧 (ABC)学派あれこれ参考文献原サイト (英語)





経済学と数学利用 (1979年) 
関 恒義; でツガンは批判されている。

id=2650&item_no=1&attribute_id=65&file_no=1&page_id=13&block_id=45

Bohm-Bawerk,E.[1896]Zum Abschluss des Marxschen Systems,in Sweezy[1949](P.,M.,スウィージー編,玉野井・石垣訳[1969]).
Bortkiewicz,L.[1906]Wertrechnung und Preisrechnung im Marxschen System,im Bortkiewicz[1976](石垣・上野編訳[1982]). 
Bortkiewicz,L. [1907]‘Zur Berichtigung der grundlegenden theoretischen Konstruktion vonMarx im dritten Band des,,Kapital‘‘’,im Bortkiewicz[1976](玉野井・石垣訳[1969]). 
Bortkiewicz,L.[1976]Wert
カレツキはここから影響を受けたに違いない。
以下の222頁参照。

「『資本論』の第三巻でマルクスは、商品の範疇に何らの区別を設けていないが、別のところで彼は、生産手段産業と消費対象間の区別を行っている。しかしながら、1907年にボルトキェヴィッチが転形問題の公式化を始めるようになって以来、代わって三部門モデルを提供することが、標準的になってきた。  
(リヒテンシュタイン『価値と価格の理論 』邦訳222頁)☆

価値と価格の理論 叢書名   ポスト・ケインジアン叢書 
著者名等  P.M.リヒテンシュタイン/著  
著者名等  川島章/訳 
出版者   日本経済評論社 出版年   1986.6 大きさ等  22cm 254p 

注記    
 An Introduction to Post-Keynesian and Marxian Theories of Value and Price: Peter Lichtenstein (原著1983): 洋書./の翻訳 
NDC分類 331.84 件名    価値論(経済学上)  ≪再検索≫ 件名    価格  

目次
第1編 競合する伝統
 1 方法論入門
 2 代替論ポスト・ケインジアンとマルクス学派
第2編 2つの価値論の伝統
 3 客観的価値論
 4 主観的価値論
第3編 経済的余剰の構成原理
 5 経済的余剰の歴史的考察
 6 現代的な余剰の概念
第4編 ポスト・ケインジアンの価値と価格の理論
 7 ポスト・ケインジアン―新リカードウ派の価値と価格の理論
 8 賃金,利潤及び価格
 9 リカードウ派不変価値尺度の問題
 10 基礎モデルの拡張
第5編 マルクス派の価値と価格の理論
 11 マルクスの価値と価格概論
 12 価値から価格へ
第6編 総括及び比較
 13 マルクス派対ポスト・ケインジアン―新リカードウ派)☆

内容    参考文献:p228~234 ISBN等 4-8188-0102-X
上記書籍では、転形問題とスラッファの定式の類似性が説明される。 


24頁

マルクスやスラッファと違い、新古典派は階級の問題を見ていない。  


32頁

《要約すれば、価値は直接価格を決定し,直接価格は生産価格に転形される。
そして市場価格は、それらの生産価格のまわりを変動することになる。転形問
題は、それゆえ、価値を価格に転形する問題でなくて、代わりに、それは直
接価格を生産価格に転形する問題である。》『価値と価格の理論』
リヒテンシュタイン著202頁
219頁

223頁

《著者は、「スラッファの定理」と呼ばれているもの——実質賃金と生産条件が、現実の物量
タームで規定されている時には生産価格と利潤率を決定するのに、十分なもの
となり、何らの需要の理論も要求されない——との立場をとる「ポスト・ケイ
ンジアン」あるいは新リカードウ派の経済分析を開陳している。》訳者解説248頁

スラッファとマルクスの類似の問題は熊野2013も提示している。

需要関数と生産関数の違い――イタリア人経済学者ピエロ・スラッファは、「マーシャル・クロス」を「〈需要関数〉は、効用逓減という基本的かつ自然的なる仮定の上に立つ。これに反して、生産における関数関係は、これよりもずっと複雑な仮定を持った体系の結果である。限界効用に関する研究が、価格と(消費された)数量との関係に注意をひきつけたあとではじめて、類推によって費用と生産量との関係という均斉的な概念が生まれたというのが事実である」(『経済学における古典と近代』、菱山泉・田口芳弘訳、有斐閣、1956年)と評した。十分ではないが、極めて妥当な鑑定である。〕

http://chikyuza.net/xoops/modules/news2/article.php?storyid=67
石垣博美・上野昌美編訳[1982]『転形論アンソロジー』法政大学出版局○

伊藤誠・桜井毅・山口重克編訳[1978]『論争・転形問題』東京大学出版会

置塩信雄[1978]『資本制経済の基礎理論増補版』創文社(初版1965)

置塩信雄[1977]『マルクス経済学』筑摩書房

玉野井芳郎・石垣博美訳[1969]ポール・スィージー編『論争・マルクス経済学』○

○はボルトキェビッチ論考所収

ラディスラウス・フォン・ボルトキェヴィツ、 石垣博美
価値 計算と価格計算 1906

論争・マルクス経済学  
著者名等   P.M.スウィージー/編  ≪再検索≫  
著者名等   玉野井芳郎,石垣博美/訳  ≪再検索≫  出版者    法政大学出版局  出版年   1969.6  大きさ等   22cm 257,3p  NDC分類  331.6  件名     Marx Karl Heinrich.  内容   
内容:
カール・マルクスとその体系の終結(オイゲン・フォン・ベーム=バウェルク)  
ベーム=バウェルクのマルクス批判(ルドルフ・ヒルファディング) 
『資本論』第三巻 におけるマルクスの基本的理論構造の修正について(ラディスラウス・フォン・ボルトキェヴィッチ) 1907

_____

学習会 転形問題論争について
http://www10.plala.or.jp/mcg-nagn/report/transform.htm

1.転形問題論争とは

マ ルクスは『資本論』第三部第二編「利潤の平均利潤への転形」、とりわけ第九章「平均利潤と生産価格」で、一般的利潤率の形成にともない価値が生産価格に転 形し、また剰余価値が平均利潤に転形することを説いた。しかし、総価値=総生産価格であり、総剰余価値=総利潤の関係は保たれるとした「総計一致の二命 題」に対し、それは成り立たない、あるいは価値と生産価格との関係についての論証は十分に為されていない、論証に失敗しているとして、マルクス経済学の虚 構性や崩壊を主張したり、その修正を図ろうとしたりする主張が現れた。それに対する反批判、等々の論争。

2.転形問題論争の歴史

・1894年 『資本論』第三巻の刊行
・1896年 ベェーム=バヴェルク「マルクスの体系の終結に寄せて」を発表
・1904年 ヒルファディング「ベェーム=バヴェルクのマルクス批判」を発表
・1906-07年 ボルトキェヴィッチ「価値計算と価格計算」を発表
・1907年 ボルトキェヴィッチ「資本論第三巻におけるマルクスの基本的理論構造
       の修正について」を発表    
・1949年 スウィージーによる上記論争の紹介
(日本語訳、『論争・マルクス経済学』1969年、法政大学出版会)
・1960年 ピエロ=スラッファ『商品による商品の生産』出版

● ベェーム=バヴェルク(1851-1914、オーストリア)
 メンガーらと並びオーストリア学派の創始者の一人。『資本論』第一巻と第三巻の間
 には矛盾がある(価値と生産価格の「二つの価値理論」)と主張し、そしてその原因
 は労働価値説そのものの不可能性にあると、主観的価値論(限界効用学説)の立場
 からマルクスを批判。

● ヒルファディング(1877-1941、ドイツ)
 ベェーム=バヴェルクらの主観的価値論の立場は、経済学の出発点を個人(の欲望、
 等々)におき経済現象を非歴史的・非社会的にとらえている。これにたいしてマルクス
 は社会から出発する。労働は人と人とを結びつける「人間社会の本質的要素」である。
 それは、単に商品交換の基準(価値決定の基準)であるだけではなく、「労働の生産
 性の程度および労働の組織上の様式は、社会生活の性格を決定するものである。」 
 <生産価格はたんに価値の「修正」にすぎず、したがって二つの理論は論理的に関連
 していて、どんな意味でも矛盾するものではない>と反批判。(<>内はスウィージー
 からの引用。以下のボルトキェヴィッチについての部分も同様)

● ボルトキェヴィッチ(1868-1931、ロシア生まれ。ドイツで統計学者として活躍)
 ベェーム=バヴェルクは<価値の生産価格への転嫁という全操作を無意味なものと見
 なした・・・ヒルファディングのほうはどうかというと、一度もマルクスの手続き上の確か
 さを疑ってみたことがない・・・ボルトキェヴィッチにのこされた仕事は、この問題をとり
 あげて、マルクスの価値論および剰余価値論のワク組のなかでこれを解決しようと企
 てることであった。><近代的リカードウ主義者>

● ピエロ=スラッファ(1898-1983、イタリア生まれ。ケンブリッジ大学の経済学者)
 新リカードウ学派的な立場から、マーシャルを代表とする新古典学派と論争。筑波大学
 の藤田晋吾は『スラッファの沈黙』(2001年、東海大学出版会)で置塩信雄の経済学等
 とも関連させて転形問題論争についてのスラッファのアプローチについて論考している。

スラッファの沈黙 転形問題論争史論   藤田晋吾/著   東海大学出版会  2001.12  179p  目次 第1章 ボルトキェヴィッチの仕掛けた罠;第2章 スラッファの沈黙;第3章 転形問題の終わり;第4章 置塩理論の再検討;付論 ウィトゲンシュタインとスラッファ  内容  索引あり

3.現代日本のマルクス経済学内における二つの傾向

(1)松石勝彦、見田石介、等の正統マルクス学派
    松石勝彦は『マルクス経済学』(1990年、青木書店)で、マルクスの叙述に即
    しながら『資本論』の生産価格論を分析し、それを「二段階転化論」として整
    理することによって、この問題は既にマルクスによって解決されていると主張。
    したがって、価値と生産価格との間には矛盾があるとか、総計一致二命題は成
    立しないというような議論そのものが間違っていると主張している。
    確かに、マルクスは「二段階転化論」(価値の生産価格への転化→生産価格の
    費用価格への繰り込み)的に問題を処理しているといってよいと思うが、はたし
    て「二段階」だけで済む問題なのか疑問は残る。また、マルクス自身「一般的法
    則が支配的傾向として自己を貫徹するのは、つねにただ、極めて複雑で近似的
    な仕方でのみであり、永遠の動揺のけっして確定されえない平均としてのみであ
    る。」(角川文庫版、第六分冊P.258)ともいっている。

(2)置塩信雄、関恒義、等の数理マルクス学派
    置塩信雄は『資本制経済の基礎理論』(1965年、創文社)において、総計一致
    二命題は成立しないが、「正の剰余価値が存在することが、正の利潤が存在す
    る必要十分条件である」として、数理経済学的立場から労働の搾取の存在を「証
    明」した。関恒義も『経済学と数学利用』(1979年、大月書店)において、置塩に言
    及し、同様の立場を取っている。また上記の藤田晋吾も、数理経済学的な手法そ
    のものについてはそれを前提して考えている。
    しかし、この手法は「価値決定方程式」の正当性・正しさを大前提としている。

【資 料】

<マ ルクスに対するこのベーム・バベルクの批判が、その後、労働価値を否定するブルジョア的批判の基本となるだけに、総価値=総価格の命題は、マルクス主義経 済学の根幹としてはっきりと確認しておく必要がある。ところで、マルクスの示す総剰余価値=総利潤は、マルクスが転形問題を途中で打ち切ることなく、いっ そうくわしく展開していれば、一般に成立しないことを確認できた命題である。なぜなら、剰余価値部分を構成する諸商品それ自体が生産価格で表示されなけれ ばならず、あとでみるように、生産価格で表示された総利潤が価値表示の総剰余価値に一致しなけれbならない必然性は存在しないからである。ここでは、置塩 信雄『マルクス経済学』(1977年)が示すように、「利潤が存在するための条件は剰余労働が存在すること」という命題が確認ないし論証されていれば、そ れで十分なのである。> (関恒義『経済学と数学利用』p.74)

____


(1950年代のカレツキ。邦訳1958より)

カレツキは以下の邦訳もされている論考のなかでトゥガンに批判的に言及しているが(資本主義搾取に外部が必要というローザと対比的に扱っている)、カレツキによる有効需要の発見にトゥガンが関わっているのは確かだ。

『資本主義経済の動態理論』M・カレツキ 日本経済新聞評論社 1984年

自分が購入したのはオンデマンド版ではないが、この名著は電子書籍版(既にあるらしいが)などで入手しやすくしておいて欲しい。 1930年代の初期オリジナル論考を集めた第I部冒頭の「景気循環理論概説」(1933年)がケインズに先駆けて有効需要の理論を打ち立てたとされる画期 的論文。
ちなみに、同じ「利潤の決定要因」(1935年初稿、これもケインズに先駆ける重要論考)や「費用と価格」が所収されていて、本人が改訂 した版を生前翻訳した1958年の新評論版邦訳『経済変動の理論』とは間違い易いが、内容が違う。新評論版は本書第II部がその抜粋に当てられているが、 1933年版「景気循環理論概説」は所収されていない。新評論版との重複のない第I部が本書の価値を高めている。第III部はアクチュアルなその他の論考 ということになろうか。

以下、目次

『資本主義経済の動態理論』M・カレツキ 日本経済新聞評論社 1984年

目次
序文
第 I 部
第1章 景気循環理論概説 3
第2章 外国貿易と「国内輸出」について 16
第3章 景気上昇のメカニズム  26
第4章 商品税,所得税および資本税の理論  34

第II部
第5章 費用と価恪  45
第6章 国民所得の分配 64
第7章 利潤の决定要因  79
第8章 国民所得の決定と消費の決定 94
第9章 企業者資本と投資 106
第10章 投資の決定要因 111
第11章 景気循環  125

第lll部
第12章 完全雇用の政治的側面  141
第13章 ツガン-パラノフスキーとローザ・ルクセンブルグにおける有効需要の問題 148
第14章 階級闘争と国民所得の分配 158
第15章 趨勢と景気循環 167
統計付録 186
訳註 195
カレツキからポスト・ケインジアンへのマクロ分配理論の系譜
--訳者解説に代えて-- 209
索引 227
もうひとつの訳書のあとがきのカレツキの投資に関して言葉が転形問題にそのまま当てはまる。

「投資は, 支 出 としてみると,繁栄の源泉であり,投資の増加は景気を好転させ,投資を刺激して,さらにそれを増大せしめる.しかし投資は同時に,資 本 設 備 の 増 加 であり,したがって,生れたときから,この設備の旧式のものと競争する.投資の悲劇はそれが有用であるという理由から恐慌を生ぜしめる点にある.多くの人たちは,この理論をたしかにパラドクシカルと考えるであろう.しかしパラドタシカルなのは,理論ではない,その主題一資本主義経済一そのものである.」(Essays in the Theory of Economic Fluctuations pp189-9,傍 点 筆者)

正確には、

《...カレツキーの投資観はつぎのよく引用される1節にきわめて明瞭である.「投資は,支出としてみると,繁栄の源泉であり,投資の増加は景気を好転させ,投資を刺激して,さらにそれを増大せしめる.しかし投資は同時に,資本設備の増加であり,したがって,生れたときから,この設備の旧式のものと競争する.投資の悲劇はそれが有用であるという理由から恐慌を生ぜしめる点にある.多くの人たちは,この理論をたしかにパラドクシカルと考えるであろう.しかしパラドタシカルなのは,理論ではない,その主題一資本主義経済一そのものである.」(Essays in the Theory of Economic Fluctuations pp189-9,傍点筆者)これは,明らかに,カレツキーが投資をたんに有効需要の両面から把握するにとどまらず,資本設備の増加として理解し,この投資のパラドタタカルな2面性の中に恐慌の原因を見出だしていることを物語っている.だから,かれは,J.E.Meade,J.R.Hicks,0.Langeの組立てたケインズ・モデルを批判して,「かれらは,投資決意と投資の区別を無視し,」(op.cit.,p.139)「資本設備の変動の影響を考慮に入れなかった.](op.dt.p.140)と述べることができたのである.》

邦訳経済変動の理論
訳者あとがき 248-9頁

Essays in the Theory of Economic Fluctuations 1939自体は未邦訳

上記あとがき執筆者は宮崎か伊東か不明。
宮崎は『近代経済学の史的展開—「ケインズ革命」以後の現代資本主義像』で同箇所を引用。
否定的引用なのであとがき執筆は伊東かも知れない。

マルクスは3:2:9で部門を5,3つに分けている。転形問題発端の文の直前は3分割だ。これが源流にある。ケネーに戻ったとも言える。

____
  
ポスト・ケインジアンとマルクス派の循環的流れ(新古典派モデルの限界):
転形問題:メモ
                ______
 ←_____________|      |___________→
|  ___________→|      |            |
| ⇧  ←_________|消費財市場 |            |  
| | |  _______→|      |←_______    |
|必|労|必⇧所       |______|        ⇧消  |収
| |働|需|有                       |費  |
|需|者|品|者                       |財  |入
| |の|や|の                       |や  |
|品|支|贅|支        ______         |サ  |
| |出|沢|出       |      |        |l  |
| | |品|     蓄 →| 金融市場 |_ 投     |ビ  |
| | | |_/\ 貯_/ |______|  \_資   |ス  ⇩
| | ⇩  /  \/              _↘︎_________
| |  _/所有者 \←_____利潤_____|           |
| |  /_⇧_⇩__\            |           |
| |_/        \←___賃金_____|           |
|_→/  労 働 者   \__労働(時間)_→|    企 業    |
  /____⇧_⇩_____\         |           |
 /    失業労働者     \        |           |
/________________\       |___________|
        図:ポスト・ケインジアンとマルクス派の循環的流れ

『価値と価格の理論』P.M.リヒテンシュタイン 1986年(原著1983年)32頁より
上記書籍では、転形問題とスラッファの定式の類似性が説明される。 
マルクスやスラッファと違い、新古典派は階級の問題を見ていない。  
《要約すれば、価値は直接価格を決定し,直接価格は生産価格に転形される。
そして市場価格は、それらの生産価格のまわりを変動することになる。転形問
題は、それゆえ、価値を価格に転形する問題でなくて、代わりに、それは直
接価格を生産価格に転形する問題である。》同202頁


NAMs出版プロジェクト: ドブリュー『価値の理論』(1959)
http://nam-students.blogspot.jp/2015/09/blog-post_48.html
均斉成長経路(1937): ジョン・フォン=ノイマン (John von Neumann), 1903-1957
http://nam-students.blogspot.com/2016/06/john-von-neumann-1903-1957.html(本頁) 

フォン・ノイマン均斉成長解:

A生産手段、B労働力、C生産物
            _ー
         _ー ̄ |
      _ー ̄ |  |A
   _ー ̄ |  |  |
   ̄-_ →| →| →|B
      ̄-_  |  |
         ̄ー_  |C
            ̄ー_
      A:B:C
      常に比率一定

1937
均斉成長経路(の定式化とブラウワーの定理の一般化)
"A Model of General Economic Equilibrium", 1937, in K. Menger, editor,Ergebnisse eines mathematischen Kolloquiums, 1935-36. (Translated and reprinted in RES, 1945).
→ http://piketty.pse.ens.fr/files/VonNeumann1945.pdf


08年7月29日 立命館大学経済学会セミナー(28日)番外編報告レジュメ
 吉原直毅著『労働搾取の厚生理論序説』について
  p.1 p.2 p.3 p.4 p.5 p.6 p.7 p.8 p.9 p.10 p.11


転形問題(てんけいもんだい、Transformation problem)は、マルクス経済学における価値の規定と価格の規定の間には矛盾が存在するのか否かを問題とした一連の論争を指す。訳語としては転化問題という用語が使われることもある。

高須賀義博は、転形問題に対する論説は、大きくは歴史説と論理説に分けられると注意している[1]

歴史説[ソースを編集]

歴史=論理説とも呼ばれる。この説は、価値の生産価格への転形は、じっさいに歴史的に生じた過程を論理的に抽象したものであると解釈する。この考えは、最初、エンゲルスにより提唱され、ヒルファーディングがこの立場をとった。20世紀では、、ミークとネルがこの立場をとった。[2]。日本では、小泉信三との論争において櫛田民蔵がこの立場をとった[3]

エンゲルスは、みずから編集した『資本論』第Ⅲ巻への「補遺」において、ゾンバルトとシュミットの考えを批判し、「問題は、ここでは単に純粋な論理的過程に関するのみでなく、一つの歴史的過程に、またその思想における説明的反映に、すなわち歴史的過程の内的連関の論理的追及にかんする」ことを二人が理解していないとした[4]。この主張を裏付けるものとして、エンゲルスはマルクスの遺稿「価値どおりの、または近似的に価値どおりの、諸商品の交換は、資本主義的発展の一定の高さを必要とする生産価格での交換よりも、はるかに低い一段階必要とする」を引いた[5]

論理説[ソースを編集]

論理説は、最初に、ヴェルナー・ゾンバルトとコンラッド・シュミットにより提起された。『資本論』第Ⅲ巻の発表後であったから、かれらは「価値の概念的位相」を問題とし、「価値」概念は思想的・論理的にな事実であるとした。ゾンバルトは、「価値」は純粋な仮説であるとし、シュミットはそれは仮説ではあるが「論理的に必要な仮説」であると主張した。シュミットは、エンゲルスと親しい関係にあったが、エンゲルスは、この主張を却下した[6]

20世紀のマルクス経済学者の大部分は、論理説を取り、なんらかの意味でより基本的な概念である価値から生産価格の成立を説明しようとした。その根拠として多くの変種が現れたが、以下のものなどがある。

量的転化説
マルクスが『資本論』第Ⅲ巻で説いたもので、総価値は総生産価格に等しく、総剰余価値は利潤の総額に等しいという総計一致の二命題に依拠する。
総計一致の命題は、転形計算の仕方により、一命題はつねに成立するようにできる。そのとき、なにを一致させるかについて主張が分かれた。また両者ともに成立ないならば、総計一致命題は棄却されるべきであるという意見もある。[7]
反復計算論
マルクスの転化計算を一度だけに止めず、多数回繰り返すと、生産価格に収束することに依拠する。置塩信雄、A.シャイク[8]
単純な価値形成過程説
「単純な価値形成過程」とは、「資本によって支払われた労働力の価値が新たな等価物によって補填されるま転までしか継続しない」(『資本論』第Ⅰ巻国民文庫版訳pp.340-41)価値形成、すなわち労働者が必要労働時間のみ働く経済をいう。このような経済においては、価値法則が厳密に成立することを主張する。宇野弘蔵が「労働価値説の論証」は「資本の生産過程において行なわれなければならない」として、考えたものはこの事態であると考えられる[9]
なお、単純単純な価値形成過程のみからなる経済は剰余のない生産体系となる。この体系は、P.スラッファの『商品による商品の生産』第1章「生存のための生産」(あるいは自己補填)と基本的に同型と考えられる[10]
転化不要説
置塩信雄は、(上記反復計算論などを唱えたことがあるが)総計一致二命題が維持しがたいことを認めて、価値から生産価格への転形を意義のないこととし、各産業が正の利潤率をもつとき、労働価値で計算すれば搾取率が正となることを示す(置塩によるマルクスの基本定理)だけで、転形にこだわる必要はないとした。
標準体系転化説
高須賀義博が唱えた。経済がフォンノイマン成長径路あるいはスラッファの標準体系にあると考えると、総計一致の二命題が成立する。マルクスは、暗にこうした経済での転化を考えていたと主張した[11]

  1. ^ 高須賀義博「転化論の展望」高須賀義博『マルクス経済学研究』新評論、1979年、第4章。
  2. ^ 森嶋通夫・カテフォレス『価値・搾取・成長』高須賀義博・池尾和人訳、創文社、1980年、p.234。
  3. ^ 櫛田民蔵『社会問題講座: 商品価値の批判序説』新潮社、1926-27年。Googleによりデジタル化されている。http://books.google.co.jp/books?id=F8fTeMtLlDcC&printsec=frontcover&hl=ja&source=gbs_ge_summary_r&cad=0#v=onepage&q&f=false
  4. ^ マルクス『資本論』第三巻、向坂逸郎訳、岩波書店、1967年、p.1114。
  5. ^ マルクス『資本論』第三巻、向坂逸郎訳、岩波書店、1967年、p.1115。
  6. ^ マルクス『資本論』第三巻、向坂逸郎訳、岩波書店、1967年、p.1113-5。森嶋通夫・カテフォレス『価値・搾取・成長』高須賀義博・池尾和人訳、創文社、1980年、p.233。
  7. ^ この点について、梅沢直樹『価値論のポテンシャル』昭和堂、1991年、第1章を見よ。
  8. ^ 置塩信雄「マルクスの生産価格について」『経済学研究』(神戸大学)、1972年。A. Shaikh, "The So-called Transoformation Pribelm: Marx vindicated,"(mimeo) New School for Social Research。森嶋通夫・カテフォレス『価値・搾取・成長』高須賀義博・池尾和人訳、創文社、1980年、第6章「転化問題:マルコフ過程」にも収束の証明がある。
  9. ^ 宇野弘蔵『経済原論』岩波書店、1964年、p.59。小幡道昭『価値論の展開』東京大学出版会、1988年、第2章第3節。
  10. ^ 小幡道昭『価値論の展開』東京大学出版会、1988年、第2章注24(p.187)。
  11. ^ 高須賀義博「転化論の展望」高須賀義博『マルクス経済学研究』新評論、1979年、第4章。高須賀義博『マルクス経済学の解体と再生 』御茶の水書房1985年。
_________________________________
カレツキ有効需要←転形問題←再生産表式←グルントリセ
(再生産表式発見の陰にはプルードンがいた)

1863~5年

『資本論第一巻草稿──直接的生産過程の諸結果』(マルクス/森田成也・訳)

『資本論』入門シリーズ第2弾。経済学史上もっとも革新的な理論を打ち立てたマルクスが、自らの剰余価値論を総括し、資本の再生産と蓄積、資本の生産物としての商品生産について考察する。『資本論』全体を理解するうえでの最重要論考。
別訳:
『直接的生産過程の諸結果』1863~5 向坂逸郎訳、岩波文庫、1953
『直接的生産過程の諸結果』、岡崎次郎訳、国民文庫、大月書店、1970
Fwd: 直接的生産過程の諸結果 - 株式会社 大月書店直接的生産過程の諸結果 29
直接的生産過程の諸結果
著者 カール・マルクス 著
岡崎 次郎 訳
ジャンル 文庫
出版年月日 1970/08/18
ISBN 9784272802906
判型・ページ数 文庫・224ページ

内容説明

『資本論』第一巻から第二・三巻への橋渡しとして予定された未定稿.剰余価値論の総括,蓄積論,資本の生産物としての商品についての考察を主な内容としている.資本論成立史にも欠くことのできない著作.


1863~5年
http://blog.goo.ne.jp/sekiseima/e/a863e997550323e25014394ead35d777
 第一に、“マルクス経済学者”が理解しなければならないのは、「古典派経済学の欠陥はここではただ次の点にあるだけである。すなわち、第一には、このようなより多くの生きている労働とより少ない対象化された労働(貨幣のこと)との交換が、どのようにして商品交換の法則に、つまり労働時間による商品価値の規定に、合致するのかということを論証することができなかったということであり、したがってまた、第二には、流通過程における一定量の対象化された労働(貨幣のこと)と労働能力との交換と、生産過程で行われるところの生産手段の姿で存在する対象化された労働による生きている労働の吸収とを、直接に混同していることである。可変資本と労働能力との交換過程を、古典派経済学は不変資本による生きている労働の吸収過程(価値増殖過程のこと)と混同しているのである。」(1863~5『直接的生産過程の諸結果』、国民文庫、P62)というマルクスの言葉である。 

 同じ『直接的生産過程の諸結果』にはマルクスはプルードンについて次のように述べている。
 
 「プルードンを困惑させるのも、やはりこれ(労働の生産性の増大は個々の商品の価格を低下させるにもかかわらず全体の剰余価値量は増大すること)に似たパズルである。というのは、彼はただ個々の独立な商品の価格を見るだけで、総資本の生産物としての商品を見ず、したがってまた、総生産物がその各個の成分の価格によって概念的に分けられる割合を考察しないからである。
 
 「商品の価格を構成するために、商業において労働者の賃金に資本の利子(これは剰余価値中の特別に命名された一部分でしかない)がつけ加えられるので、労働者が自分の生産したものを買いもどしうるということはありえない。労働によって生活するということは、利子制度のもとでは、矛盾を含んでいる原則である。」(『信用の無償性。フレデリック・バスティア氏とプルードン氏との論争』*、パリ、1850年、P105) 光文社新訳2016年では166頁。**

プルードンは貨幣という商品に絞って改善策を出した。マルクスは利子の問題をそこまで深刻に捉えていない。地代の方を重視している。

Gratuité du crédit - Quatorzième lettre - Frédéric Bastiat à P. J. Proudhon
http://bastiat.org/fr/lettre14.html


Gratuité du crédit - Quatorzième lettre - Frédéric Bastiatà PJ Proudhon


7 mars 1850. La cause est entendue et le débat est clos, dit M. Proudhon, de partie se faisant juge. M. Bastiat est ... Il avait compromis la cause du crédit gratuit , voici que le pouvoir la relève en la plaçant sur le piédestal de la persécution.

《SEPTIÈME LETTRE. P. J. PROUDHON À F. BASTIAT.
17 décembre 1849.

Il est impossible, dis-je, que, l’intérêt du capital s’ajoutant, dans le commerce, au salaire de l’ouvrier pour composer le prix de la marchandise, l’ouvrier puisse racheter ce qu’il a lui-même produit. Vivre en travaillant est un principe qui, sous le régime de l’intérêt, implique contradiction. 》

これらは信用の問題というよりも後の転形問題、有効需要の問題に繋がるだろう。

**
訳者は解説(光文社新訳解説421頁~)で草稿集邦訳2(大月書店45頁~%)の説明を図入りで再現するが、プルードンの真意を理解していない。
プルードンが総生産を無視しているというのは間違いだ。マルクスが引用した箇所のすぐ後でプルードンはフランスの労働者の日当の年間総量を二千億フランと仮定している。さらに要素として「所有権」「利子」「地代」等を挙げている(『プルードン3 所有とは何か』三一書房208頁)。
プルードンは集合力を重視する。だから剰余価値もそこから生まれるし、剰余価値内に生産した分が換算されるのは当然だ。
所有権に不変資本は入るだろう(マルクスがプルードン批判の為に展開した再生産表式自体がプルードンのテキストに内在する)。
だから労働者は自分が生産した分全てを買い戻せないというのは間違いではない。そもそも引用が恣意的だ。  
(v+mのドグマ=スミス批判では明確でない再生産における持続性のテーマが重要だろう。ここでマルクスの論理は、後のツガン=カウツキー論争におけるツガンの論理に似ているが、ツガンの方はは価格論に留まることなくカレツキに有効需要の論理の発見を促した。)

ちなみに資本論第一部フランス語版(1872年)にはプルードンの名前が一つもない。マルクスが削除した。
マルクスはプルードンからアイデアを得て1850年以降経済学を勉強してリカード流価値論で体裁を整えたにすぎない。アイデアを得てその後で隠蔽したのだ。
その再生産表式はレオンチェフ、より本質的にはカレツキによる読解を待つ必要があった(カレツキは転形論争からヒントを得ている)。

追記:
サミュエルソンが「マルクス搾取概念の理解」(邦訳『論争・転形問題』1978年所収104頁)で指摘したように、スミスのドグマを強調する文脈から『資本論』第3部でマルクスは不変資本(というより費用)を固定して論理を展開した。不変資本にも利子はかかり得ることを考えれば利子の問題は大きい。
3:2:9
1:
2:
2:サミュエルソン1971図解:(吉原2008はドブリュー1959と以下の図を発展させた)
3:サミュエルソンが解説:

参考:
グルントリッセ1857~8...(+資本論草稿関連) 転形問題→再生産表式→グルントリセ
http://nam-students.blogspot.com/2016/07/blog-post.html

1890年代論争にあらわれたロシア資本主義論の類型(2) -トゥガン - バラノフスキー -Author(s)田中, 真晴
http://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/133090/1/eca0965_331.pdf