均斉成長経路: ジョン・フォン=ノイマン (John von Neumann), 1903-1957
http://nam-students.blogspot.com/2016/06/john-von-neumann-1903-1957.html(本頁)
http://nam-students.blogspot.jp/2012/11/blog-post_28.html
ヴォルテラ
http://nam-students.blogspot.com/2018/09/theory-of-oscillations-aleksandr.html
http://nam-students.blogspot.jp/2014/06/wikipedia.html
http://matsuo-tadasu.ptu.jp/academic.html
08年7月29日 立命館大学経済学会セミナー(28日)番外編報告レジュメ
吉原直毅著『労働搾取の厚生理論序説』について
http://matsuo-tadasu.ptu.jp/YosiharaSemi0801.jpg
P生産手段、m労働力、G生産物
_ー
_ー ̄ |
_ー ̄ | |P
_ー ̄ | | |
 ̄-_ →| →| →|m
 ̄-_ | |
 ̄ー_ |G
 ̄ー_
P:m:G
常に比率一定
フォン・ノイマン均斉成長解:
A生産手段、B労働力、C生産物
_ー
_ー ̄ |
_ー ̄ | |A
_ー ̄ | | |
 ̄-_ →| →| →|B
 ̄-_ | |
 ̄ー_ |C
 ̄ー_
A:B:C
常に比率一定
松尾匡 08年7月29日 立命館大学経済学会セミナー(28日)番外編報告レジュメ p.1
http://matsuo-tadasu.ptu.jp/academic.html
資本財にまで拡張して,諸財を包括的に捉え,しかもひとつの集計値にまとめて扱うことを
回避しながら,それら包括的な諸財全体が,一定の成長率で増加を続けていく,という描像を,
数学的に描くことに成功したのが,フォン・ノイマンモデルの功績だった。
このような,包括的に捉えられた諸財の一定率における成長の過程においては,それら諸財
のうち,ひとつひとつの財が,まったく同率で増加していく,と考えられる。》
《成長モデルが単なる空想(empty dream)モデルを脱脚するためには,多部門モデルで
なければならず,しかも結合生産を適切に取り扱わねばならない,このような要請を
満たす最初のモデルを提唱したのはフォン·ノイマンである.ノイマンは次のような
仮定をおいた.
(a)すべての財の生産について規模に関する収穫がー定である,
(b)労働の供給は際限なく拡大しうる,
(c)賃金は労働者が生存可能な生物学的に最小限の財を購入しうるに過ぎない水準に
固定されている,
(d)資本家の全所得は自動的に新たな資本財に投入される,
明らかにこのモデルは資本家の消費を無視し,また実質賃金率を決定する上での
労働供給の役割も考慮していない.労働者は農場の家畜と同等であり、資本家は資本の
セルフサービス・スタンドのようなものに過ぎない.》
森嶋通夫著作集3:118頁
1937
均斉成長経路(の定式化とブラウワーの定理の一般化)
"A Model of General Economic Equilibrium", 1937, in K. Menger, editor,Ergebnisse eines mathematischen Kolloquiums, 1935-36. (Translated and reprinted in RES, 1945).
→ http://piketty.pse.ens.fr/files/VonNeumann1945.pdf 全9頁
ジョン・フォン=ノイマン (John von Neumann), 1903-1957
1903 年にハンガリーのブダペストで生まれる。ブダペスト大から数学の博士号と、チューリヒ大から科学の博士号を同時に授与されてから1927年にベルリン大学の教授陣に加わる。1932年にはプリンストンに移り、 IAS 最年少会員となる。この時期、かれは純粋数学や応用数学のみならず、物理や、一部は哲学(特に量子パラドックスに関連したもの)にも重要な貢献をしてい た。またマンハッタン計画(原爆開発)でも活発で、原子力委員会におけるトルーマン大統領の顧問の一人だった。後に並列処理とネットワークに関する業績を あげて、「現代コンピュータの父」の称号を受ける。ニコラス・カルドア が後に書くように「かれはわたしが出会った中でまちがいなく天才にいちばん近い存在だ」
驚異的にクリエイティブだった数学者ジョン・フォン=ノイマンは、戦後経済理論においてかなり重要な役割を果たした。その貢献は2つある。一つは1937 年の多セクター成長モデル についての論文と、1944 年の著書 (オスカール・モルゲンシュテルン と共著) の ゲーム理論 と 不確実性 についての理論だ。
ジョン・フォン=ノイマンの有名な 1937 年論文は、最初は有名な「ウィーン学団」の支援を受けて書かれたもので、フォン=ノイマンが ヴィクセル と カッセル を読んだ成果となっている。この論文は「数理経済学における史上最高の論文」 (E. Roy Weintraub, 1983) と呼ばれた。それは 森嶋道夫 が後に、一般均衡と資本、成長理論における「フォン=ノイマン革命」と呼んだものを産みだした。この1937年論文では、「数理経済学」再興のための新手法というすぐわかるもの以外にも、いくつか重要な概念が導入されていた。かれがもたらしたのは、(1) 「活動分析」生産集合 ("activity analysis" production sets) の概念を持ち込み、これは後に クープマンス や新ワルラス派によって大いに活用される; (2) 再生産の線形システム。これは後にレオンティエフ や スラッファ、 新リカード派 が活用して発展させる; (3) 価格-費用と需要-供給の不一致。これはワルラスの方程式体系に対する ウィーン派の批判 への説明となっていた; (4) ブラウアーの固定点理論(の一般化)、後に角谷の固定点定理として知られるようになるものを初めて使って、均衡の存在を証明; (5) ミニマックスとマックスミン解法と、サドルポイント特徴付け (saddelpoint characterizations); (6) early statements of duality theorems of mathematical programming and complementary slackness conditions; (7) a novel manner of incorporating fixed and circulating capital via joint production; (8) the elucidation of the concept of "balanced" or "steady-state" growth - これは後に ハロッド や ソロー, ヒックス 及びその後の成長モデルすべてがとびついた; (8) 「黄金律」の導出 - 金利は資本量よりは成長率と相関していることを示し、 アレー と 「最適成長理論」 やクープマンス, ラドナーたちの turnpike theorems の先駆けとなった。
ジョン・フォン=ノイマンが1944 年にオスカール・モルゲンシュテルン と共著した『ゲームと経済行動の理論』は 20 世紀社会科学の記念碑的存在となった。ゲーム理論 という領域を一気に作り出したのみならず (かれはこれを有名な 1928 年の論文で始めていた) この本は経済学の他の分野で使われる重要な要素を他にももたらしている。たとえば効用理論そのものの公理化 (後に アロー や ドブリュー などが追求したもの) や 不確実性の下での選択の公理化、つまり期待効用仮説の定式化がそれにあたる。
http://cruel.org/econthought/profiles/neumann.html
ジョン・フォン=ノイマンの主要 (経済関連) 著作
- "Zur Theorie der Gessellshaftspiele", Mathematische Annalen 1928.
- "A Model of General Economic Equilibrium", 1937, in K. Menger, editor,Ergebnisse eines mathematischen Kolloquiums, 1935-36. (Translated and reprinted in RES, 1945). → http://piketty.pse.ens.fr/files/VonNeumann1945.pdf
- Theory of Games and Economic Behavior, with O. Morgenstern, 1944.
- "A Communications on the Borel Notes", 1953, Econometrica
- "Solutions of Games by Differential Equations", with G.W. Brown, 1953, in Kuhn and Tucker, editors, Contributions to Theory of Games, Vol. I.
- "Two Variants of Poker" with D.B. Gillies and J.P. Mayberry, 1953, in Kuhn and Tucker, editors, Contributions to Theory of Games, Vol. I.
- "A Numerical Method to Determine Optimum Strategy", 1954, Naval Research Logistics Quarterly
- The Computer and the Brain, 1958
フォン=ノイマンについてのリソース
- HET ページ: 安定状態成長 (Steady-State Growth), フォン=ノイマン体系, ゲーム理論, フォン=ノイマン-モルゲンシュテルン期待効用仮説
- The Works of John von Neumann ny Adam Brandenburger and Elizabeth Steinat (at Co-opetition)
- "Sraffa and von Neumann" by H. Kurz and N. Salvadori
- John von Neumann biography at Vermont.
- John von Neumann and von Neumann Architecture for Computers
- von Neumann at MacTutor Mathematics Archive
- More Biographies: (1), (2), (3), (4).
- The John von Neumann Theory Prize of the Institute for Operations Research and Management Science
- S. Ulam, "John von Neumann, 1903-1957", Bulletin of the AMS, 1958.
- O. Morgenstern "Collaborating with von Neumann", JEL, 1976.
- M. Dore, S. Chakravarty and R.M.Goodwin, editors, John von Neumann and Modern Economics, 1989.
- von Neumann Page at Laura Forgette
- von Neumann Page at Britannica.com
均斉成長経路(の定式化とブラウワーの定理の一般化)
"A Model of General Economic Equilibrium", 1937, in K. Menger, editor,Ergebnisse eines mathematischen Kolloquiums, 1935-36. (Translated and reprinted in RES, 1945).
→ http://piketty.pse.ens.fr/files/VonNeumann1945.pdf
http://matsuo-tadasu.ptu.jp/academic.html
08年7月29日 立命館大学経済学会セミナー(28日)番外編報告レジュメ
吉原直毅著『労働搾取の厚生理論序説』について
p.1 p.2 p.3 p.4 p.5 p.6 p.7 p.8 p.9 p.10 p.11
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フォン・ノイマンの多部門成長モデル
フォン・ノイマンが1937年に発表した経済成長モデル。新古典派成長モデルの基となったラムゼイのモデルが1部門の経済成長モデルであるのに対し、各種の財の生産、投資がなされる現実の経済に即したモデルの構築が行われた。多部門モデルは、第二次世界大戦後、サミュエルソン、森嶋らの努力によって改良が加えられた。サミュエルソンの見出したターンパイク定理はとりわけ有名な発見である。
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https://ja.wikipedia.org/wiki/ジョン・フォン・ノイマン
経済学
- フォン・ノイマン多部門成長モデルによる経済成長理論への貢献。
- 生産集合・再生産の生産システム概念の導入。
- ブラウワーの不動点定理を使い均衡の存在を証明。
- 経済学での最も大きな貢献として、オスカー・モルゲンシュテルンと共に経済学にゲーム理論を持ち込んだことが挙げられる。この応用がゲーム理論の本格的な幕開けとされ、現在、経済学ではミクロ経済学・マクロ経済学と並ぶ重要な分野として確立している。
https://ja.wikipedia.org/wiki/不動点
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8D%E5%8B%95%E7%82%B9
数学において写像の不動点(ふどうてん)あるいは固定点(こていてん、英語: fixed point, fixpoint)とは、その写像によって自分自身に写される点のことである。
http://mathsoc.jp/publication/tushin/1101/nishimura.pdf
『経済学と数学』
京都大学経済研究所
西村和雄
数学者の貢献
経済学者には,数学や工学から転向してきた人が数多くいる.イギリス人で 20 世紀初頭を代表す る数学者兼哲学者であるラムゼー( 1903-30)は,数学基礎 論,確率論,哲学のみならず,経済学の 分野でも論文を発表し,26 才の若さでこの世を去った.ラムゼーの死後 2 ヵ月後に発表された Economic Journal において,ケインズが,ラムゼーの才能と論文の重要さに賛辞を述べている.ラム ゼーの論文は,その後の経済成長と財政学の分野の発展に大きな影響を与えた.
やはり,20 世紀を代表する数学者フォン・ノイマン(1903-57)は,経済学者モルゲンシュテルン (1902-77)と共にゲームの理論を開発しているが,同時に,経済成長の多部門モデルにおける斉一成長経路の存在証明の論文を書いて,その後の経済学に大きな影響を与えていった.
...
ノイマンは,1932 年にプリンストンの高等研究所の数学のセミナーで,数理経済学の講演をしたこ とがあった.1936 年,ウイーン大学の数学者カール・メンガー(Karl Menger)に依頼され,ノイマンは, ウィーンでの研究会で経済学の講演をする予定であった.ヨーロッパには行ったノイマンは,実際は, ウイーンには寄らず,ドイツ語の論文をパリからメンガーに送っただけであったが,その論文は,1937 年に出版されたカール・メンガーのセミナーの講演集の中に含まれることになった.
カール・メンガーの父は,ウイーン大学の経済学教授をしていたカール・メンガー(Carl Menger) である.
経済学における限界革命は,スイスのレオン・ワルラス(1834-1910),イギリスのウィリアム・ジェボ ンズ(1835-82),オーストリアのカール・メンガー(1840-1921)によって,1870 年代に行われた,限 界効用を基礎とする理論の発展のことである.限界効用は数学的には,偏微分と対応している.
ウイーン大学には,1895 年に設立され,マッハ,ボルツマン,シュリックと引き継がれた哲学の講 座があり,その内容は,哲学でも次第に自然科学に 近づいていった.1928 年に,数学,物理,哲学, 経済学など,広い分野のメンバーが,マッハ協会を設立し,ウイーン学団を結成した.その思想が論 理実証主義である.中には,統計学者のワルドや経済学者のモルゲンシュテルンもいた.ワルドは, 経済の方程式体系に非負解があることを証明し,モルゲンシュテルンは,1944 年にノイマンとの共 著で『ゲーム理論と経済行動』を発表した.ちなみに,1938 年にオーストリアは,ナチスドイツに併合 され,モルゲンシュテルンやメンガーは,ウイーンを去って,アメリカに渡った.
1932 年にプリンストンで講演をし,1936 年にメンガーに送ったドイツ語の論文は,1945年に英訳されて,「一般経済均衡モデル」という名で,経済学の学術誌レビュー・オブ・エコノミック・スタディーズ に掲載された.
ノイマンの論文は,1928年のミニマックス定理の論文と同様,線形計画法,非線形計画法の発展の基礎となった.ノイマンの結果を整理し直すなら,線形計画法の鞍点定理となる.また,ノイマンの論文の中では,関数ではなく,対応について不動点が存在することをブラウアの不動点定理を用いて証明している.これは,今日,角谷の不動点定理として知られている結果である.ノイマンの論文 には,一般均衡というタイトルがつけられているが,それまでの静学的な一般均衡モデルを動学化しているという点で,画期的であった.ノイマンのこの論文は経済の生産技術面から,斉一成長経路と, 最大成長率の存在を証明している.この論文と,変分法を用いて社会的厚生の最大化条件を導出したラムゼーの論文が,その後の経済動学理論の発展に対する基礎を与えたのである.
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2011-09-06
アロー=デブリュー破れたり?
http://d.hatena.ne.jp/himaginary/20110906/what_if_equilibrium_never_existed
『労働搾取の厚生理論序説』
■吉原 直毅 20080228 『労働搾取の厚生理論序説』(一橋大学経済研究叢書 55), 岩波書店,298p. ISBN-10: 4000099140 ISBN-13: 978-4000099141 \5460 [amazon]/[kinokuniya] ※ w01
■出版社による紹介
「格差社会」化やワーキング・プア問題が焦眉の現代において,マルクス『資本論』の労働搾取概念は主流派経済学の理論体系にはない独自性を持つ厚生理論である.本書では,現代経済学の手法によって,労働搾取概念を厚生経済学における一つの非厚生主義的well-being指標として,その理論的再構成を探求するプレリュードである.
■著者による紹介
吉原 直毅 「吉原直毅『労働搾取の厚生理論序説』(岩波書店, 2008年2月刊行予定)について」
吉原 直毅 『労働搾取の厚生理論序説』
■目次
第1章 今、なぜ労働搾取理論なのか?
1.1 現代における貧富の格差問題
1.2 労働搾取概念に基づく市場経済の厚生的特徴分析
1.3 本書における方法論と各章の構成について
第2章 マルクス的一般均衡モデルと均衡解概念
2.1 基本的生産経済モデル
2.2 再生産可能解
2.3 再生産可能解の存在定理
2.4 一般凸錐生産経済の特殊ケース:フォン・ノイマン経済と均斉成長
2.5 マルクス的均衡解に関する厚生経済学の基本定理
2.6 労働者階級内の異なる消費選好の存在する経済での均衡解
第3章 レオンチェフ経済体系におけるマルクスの基本定理
3.1 森嶋型「労働搾取率」及びマルクスの基本定理
3.2 労働価値説と転化論
3.3 数理マルクス経済学による,労働価値説の限界の露呈
3.4 転化問題に関する“New Solution”アプローチ
3.5 「マルクスの基本定理」の厚生的含意
第4章 一般的凸錘生産経済におけるマルクスの基本定理
4.1 森嶋型労働搾取に基づくマルクスの基本定理
4.2 代替的労働搾取の定式に基づくマルクスの基本定理の可能性:その1
4.3 代替的労働搾取の定式に基づくマルクスの基本定理の可能性:その2
4.4 労働者階級内の異なる消費選好の存在する経済でのマルクスの基本定理の可能性
4.5 所得依存的労働搾取の定式の下でのマルクスの基本定理の可能性
4.6 結論に代えて
第5章 搾取と階級の一般理論
5.1 基本的生産経済モデルと再生産可能解
5.2 階級-富対応関係
5.3 富-搾取対応関係
5.4 階級-搾取対応原理
5.5 一般的凸錐生産経済における「階級-搾取対応原理」の成立の困難性
5.6 新しい労働搾取の定式下での階級-搾取対応原理の成立
5.7 所得と余暇に対する選好を持つ経済環境での搾取と階級の一般理論
5.8 マルクス的労働搾取概念の意義――ジョン・ローマーの位置づけ
5.9 マルクス的労働搾取論の限界?
第6章 搾取・富・労働規律の対応理論
6.1 基本的生産経済モデルと再生産可能解
6.2 再生産可能解の存在問題
6.3 富-労働規律対応関係
6.4 富-搾取-労働規律対応関係
6.5 結論
第7章 労働搾取理論の公理的アプローチに向けて
7.1 「マルクスの基本定理」問題における「労働搾取の公理」
7.2 「階級搾取対応原理」問題における「労働搾取の公理」
7.3 労働搾取の3つの代替的アプローチ――労働スキルの個人間格差の存在する生産経済への労働搾取理論の拡張可能性
■引用
第1章 今、なぜ労働搾取理論なのか?
1.1 現代における貧富の格差問題
1.2 労働搾取概念に基づく市場経済の厚生的特徴分析
「1970年代における「マルクス・ルネッサンス」の影響下で、現代的な数理的分析手法を用いて、マルクスの経済理論を再構成する研究が活性化した。しかしそれらの研究成果は基本的に、古典的なマルクス主義の経済学体系の理論的土台の堅固性に疑問符を突きつける効果を持っていたのである。具体的には、例えば、古典的なマルクス主義の経済理論はいわゆる投下労働価値説(labor theory of value)」を理論的土台にして構築されたものであるが、この投下労働価値説の理論的頑健性に重大な問題があることが次第に明らかにされてきたのである。マルクスの労働搾取論もまた、投下労働価値説を理論社的土台として構築されたもの故、投下労働価値説への批判は、労働搾取論の学問的影響力低下へと波及する効果があった。」(吉原[2008:8])
第5章 搾取と階級の一般理論
「剰余生産物が利潤として資本家に帰属するのは、いかなるメカニズムによって説明されるだろうか? それは、労働者からの剰余労働物の掠め取りではなく、むしろ生産手段の不均衡な私的所有と市場における資本の労働に対する相対的希少性ゆかに、その資本財の所有主体である資本家に帰属すべく発生するレント(rentr=賃料)が、正の利潤であるという説明で十分である。」(吉原[2008:171])
第7章 労働搾取理論の公理的アプローチに向けて
「今や、労働価値説は市場の交換関係を説明する理論社とは成り得ない事が知られる様になり、さらに7.1節と7.2節の結論によって、労働搾取論もまた、資本主義経済の客観的運動法則に関する理論ではなく、むしろ特定の規範的評価基準に基づく、資本主義経済の規範的特徴付けの為の理論である事が明らかになったきたと思う。各労働者もしくは各個人の取得労働時間がどの様に確定されるかという問題は、客観的かつあたかも自然科学的に自ずから一つの数値に確定されるという類いの話ではなく、むしろ人々の納得と合意を以って確定されるべき数値であるという意味において、規範的評価の関わる問題と考えるべきなのである。」(吉原[2008:274])
■書評・紹介
◆立岩 真也 2009/02/01 「二〇〇八年読書アンケート」,『みすず』51-1(2009-1・2 no.569):-
著者名等 森嶋通夫/著
出版者 岩波書店
出版年 2005.3
大きさ等 22cm 404p
注記 Theory of economic growth./の翻訳
NDC分類 330.8
件名 経済学
要旨 さまざまな成長理論を動学的なフォン・ノイマン・モデルの上に統合し、多部門一般均衡
成長理論の数理的な枠組を拡張した画期的な業績。森嶋経済学はこれ以降新古典派経済学
に別れを告げることとなる。
目次
ほか);
半直線;ヒックス=マランヴォー軌道;規範的特性));
大化:第一ターンパイク定理;消費者の選択による振動 ほか);
(可変的な人口とマルサス的貧困の回避;代替アプローチ:修正と精緻化 ほか)
内容 様々な成長理論を動学的なフォン・ノイマン・モデルの上に統合し、多部門一般均衡成長
理論の数理的な枠組を拡張した画期的な業績。これ以降新古典派経済学に別れを告げる後
期森嶋経済学の出発点。本邦初訳。