表2
労働力商品化のモード変化による資本主義の進化:
1.一般財の外部商品化
2.一般財の内部商品化
3.一般財の一般商品化
4.一般財の一般商品化+労働力の外部商品化=資本主義市場経済の成立
i)労働力外部商品化型資本主義市場経済(Eモード)
ii)労働力内部商品化型資本主義市場経済(Iモード)
iii)労働力一般商品化型資本主義市場経済(Gモード)
Gモードではじめて資本家以外にメリットが生じる。
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現代の金融と地域経済 下平尾勲退官記念論集
著者名等 下平尾勲/編著
出版者 新評論
出版年 2003.2
大きさ等 22cm 530p
NDC分類 330.4
件名 経済学 ≪再検索≫
要旨 現代のわが国の経済における長期不況の中で最も鋭く問題が露呈しているのは、貨幣・金
融現象と地域問題である。バブル経済の崩壊が生産過剰とともに極端な株価・地価暴落に
端を発してから、金融、不動産、建設業などの産業分野の不良債権が表面化した。これら
の主要産業の極端な経営縮小と合理化は、商業・サービス業、製造業、さらに地域経済へ
と波及し、景気が悪化した。またそれにより、企業赤字の拡大と銀行の不良債権の増加と
が悪循環に入っている。本書は、これら貨幣・金融および地域経済・産業に関する現代の
状況をどのように捉えるのかという問題意識を起点として、現状分析、基礎理論、学説、
政策などが「第1部 金融・貨幣の経済学」、「第2部 地域経済・産業の経済学」に大
別されて論じられ、それぞれの争点が網羅されている論文集である。
目次 第1部 金融・貨幣の経済学(現代の金融と貨幣;現代の国際金融);第2部 地域経済
・産業の経済学(現代の地域経済;現代の地域産業)
内容 内容: 金融・貨幣の経済学 現代の金融と貨幣 1990年代長期不況と金融 下
平尾勲著
内容 成長通貨の供給と金融仲介 小林真之著
内容 信用創造と「資金の先取り」 木村二郎著
内容 銀行信用の本質と諸機能について 真田哲也著
内容 現代貨幣と貨幣の起源 楊枝嗣朗著
内容 インフレーション・ターゲティング論の虚妄性 建部正義著
内容 金融機関の公共性 濱田康行著
内容 株価形成要因としてのガバナンス構造 高田敏文著
内容 信託銀行資産の成長:1980~2000年 一ノ瀬篤著
内容 オーストラリアにおける地域通貨の開花の基盤 佐藤俊幸著
内容 自己資本比率決定の銀行モデル 鴨池治著
内容 非耐久財は貨幣となりうるか?実験研究によるアプローチ 川越敏司著
内容 戦後恐慌論論争における富塚体系の位置 後藤康夫著
内容 現代の国際金融 ユーロ発足とドイツ金融市場 岩見昭三著
内容 アメリカの金融革新とファースト・アカウント 坂本正著
内容 起業金融とアメリカの投資銀行 川波洋一著
内容 アメリカの信用組合 数阪孝志著
内容 中国の資本取引自由化への道 毛利良一著
内容 中国における中小企業の発展と金融 汪志平著
内容 現在中国の信用リスクと対策 陳作章著
内容 地域経済・産業の経済学 現代の地域経済 地域経済の再生 下平尾勲著
内容 「地域振興」から「地域再生」へ 鈴木浩著
内容 日本的NPOの成長と自立の条件 星野〔キョウ〕二著
内容 〈共生〉社会に向けた主体性の再定位 片山善博著
内容 生産要素の差別的移動性と地域経済システム 山川充夫著
内容 ほか12編
川越敏司の論考はほとんど地域通貨の基礎理論に読める。
効用/生産コストなる指標はよくわからない。
擬似貨幣を所持している間にいかに生産力を上げるかということだろう。
《つまり、メキシコではココアのような耐久性のない財が貨幣として用いられていたのである。しかし、マルクスは、自分自身が挙げている貨幣となる財が備えるべき条件のうち、特に耐久性という側面について劣ったココアのような財がなぜ貨幣になりえたのか、そのための条件は何か、といった問題には深入りしていない。》151頁
川越敏司が主に参照したのは以下、
Nobuhiro Kiyotaki and Randall Wright,“On money as a medium of exchange,"Journal of Political Economy,Vol.97,1989,pp.927‐954
第12章非耐久財は貨幣となりうるか?
実験研究によるアプローチ
…
Cuadras-Moratoのモデルでは、永久に耐久的な財1および2と、2期間で劣化して使用できなくなる非耐久的な財3の三つの財を考える。生産されたばかりの1期目の財3を財3.1、2期目の財3を財3.2として区別しよう。経済主体は無限期間生存し、それぞれタイプ1、2、3に分かれていて、それぞれのタイプを代表する主体が無数に存在する。タイプじの主体は財i (これを消費財という)を手に入れることでUiの効用を得て、生産コストDiで財i+1を生産するものとする(ただし、 i+1が3を越える場合は3で割つた余りとする)。どの主体も一度に一つしか財を保有できないものとする。各主体は、経済全体に各タイプの主体がそれぞれどの財を保有しているか、その比率について知っているものとする。各主体は市場でランダムに取引相手と出会い、お互いに保有する財を交換するか否かの意思決定を行う。お互いに交換に合意したときのみ交換が成立する。相手と同じ財を保有している場合は交換を行わないものとする。交換が成立し消費財を手に入れた主体は新しい財を生産して次の交換に備える。消費財を手に入れられなかった主体は引き続き同じ財を保有したまま次の交換に備える。なお、財3.2を保有していて消費財を手に入れられなかった主体は、財3.2を廃棄して新たに財を生産しなければならない。割引率をβとして、主体iは生涯にわたる効用と生産コストの差額である純利益の割引現在価値の期待値を最大にするような交換戦略をもちいると考える。ここで、主体iが財jをもって交換に参加した時に得られる生涯効用の期待値を評価関数Vijとする。では、どのような条件があれば、非耐久的な財3が交換の媒介物として商品貨幣になるのだろうか。
図1(a)では、タイプ1の主体とタイプ2の主体がはじめにそれぞれが生産した財2および財3.1を交換し、 続いてタイプ1の主体が手に入れた(すでに1期経過している)財3.2をタイプ3の主体の生産した財1と交換する様子を描いている。このように、財3が劣化してしまうまでの2期の間にタイプ2の主体からタイプ1の主体、そしてタイプ3の主体へと財3が流通することにより、すべての主体がそれぞれの消費財を手に入れることができる。すなわち、財3が交換の媒介物としての商品貨幣となったのである。なお、この交換プロセスにおいて、タイプ1の主体とタイプ3の主体との間の交換においてはお互いに相手が欲している財、すなわち消費財をもっているので交換が成立するのは自明であるが、タイプ1の主体とタイプ2の主体との間の交換は自明ではない。なぜなら、タイプ2の主体はタイプ1の主体がもっている財2が消費財なので交換を望むが、タイプ1の主体にとってはタイプ2の主体のもつ財3.1は消費財ではないので、交換を望むかどうかは自明ではないからである。では、タイプ1の主体が財2と財3.1を交換するための条件を考えてみよう。もしV13.2>V12ならば、タイプ1の主体にとって、財3.1を財2との交換によって手に入れた後、次期に財3.2をもって交換に参加する方が、財2を交換せずに保有したまま次期に交換に参加するよりも生涯効用の期待値が高いわけだから、このときタイプ1の主体は財2を財3.1と交換することになる。動的計画法によって計算すれば、V13.2>V12であるための必要十分条件U1/D1>5.2301であることがわかる。この条件が満たされていれば、非耐久的な財3が貨幣となりうるのである。

…
3 考察と展望
本論では、耐久性のない財がどのような条件で貨幣になりうるのかを探求したCuadras‐Moratoのモデルにもとづいた経済モデルを用いて実験室実験を行い、耐久性のない財が実際に貨幣にな)りうるのか否かを実証した。実験結果によれば、唯一実験設定に依存するタイプ1の主体の行動が理論的予測と整合
的であったので、耐久性のない財3が交換の媒介物としての商品貨幣となる場
合が高い頻度で観察された。また、永久に耐久的な財1は実験設定に依存せず
に常に商品貨幣になるのであるが、これも高い頻度で観察された。唯一理論的
予測と異なる結果だったのが、タイプ3の主体の行動で、そのために、理論的
予測と異なり、もう一つの永久に耐久的な財2も交換の媒介物となってしまっ
本研究では、均衡Aが成り立つようにUとDを設定したが、均衡Bが成り立
つ場合の実験結果と比較することがさらに必要であろう。また、タイプ3の主
体の理論から逸脱した行動が、全体の均衡の達成にどのような影響を与えるの
かはまだ定かではないので、タイプ3の主体の行動が理論的予測と一致する場
合と一致しない場合を、例えばコンピュータ・シミュレーションによって比較
検討することも今後の課題となろう。いずれにせよ、理論的には非耐久財が商
品貨幣となることはかなりデリケートな問題と考えられたが、本研究によれば
多少他の主体の均衡からの逸脱が見られようとも、非耐久財が商品貨幣となり
うるという実験結果が得られたことで、Cuadras-Moratoの理論的予測がかな
り頑健なものであることが確かめられたといえるだろう。
注
(1) William S. Jevons, Money and the Mechanism of Exchange, London: Henry S. King and Co.,1875.
(2) カール·マルクス著,武田隆夫ほか訳『経済学批判』岩波文庫、1859年、第2章4節貴金属、202~203ページ。
(3)Paul Einzig,Primitiwe Money,Oxford:Pergamon Press,1966
(4) Nobuhiro Kiyotaki and Randall Wright,“On money as a medium of exchange,"Journal of Political Economy,Vol.97,1989,pp.927‐954
☆
(5)Xavier Cuadras‐Morato,“Can ice cream be money?:perishable medium of exchange,''Journal of Economics · ,Vol.66,1997,pp 103‐125.
☆☆
(5)Kiyotaki and wrightモデルについては、 実験室実験による研究にはPaul M. Brown “Experimental evidence on money as a medium of exchange," Journal of Economic Dynamics and Control, 20, 1996, pp.583-600 および John Duffy and Jack Ochs,“Emergence of money as a medium of exchange: an experimental study,”American Economic Review, 89, 1999, pp.847-877がある。コンピュータ·シミュレーションによる研究にはRaymon Marimon, Ellen McGrattan, Thomas J. Sargent, "Maney as a medium of exchange in an economy with artificially intelligent agents," Journal of Economic Dynamics & Control, 14, 1990, pp.329-373やErdem Bacscci, "Learning by imitation," Journal of Economic Dynamics & Control, 23, 1999, pp.1569-1585などがある。 (7)経済的実験において、なぜこうした金銭的動機付けが必要かについては、Daniel Friedman and Shyam Sunder, Experimental Methods: A Primer, Cambridge University Press, 1995 (川越敏司、内木哲也、森徹、秋永利明訳『実験経済学の原理と方法』同文舘出版、1999年)を参照。
(8)この場合、タイプ3の主体は財3.1と財3.2のどちらでも交換を受け入れるので、これらを特に区別する必要はないので、財31と財32の場合の結果を合算した。
(9)この場合も注8と同様の理由により、3.1と財3.2の場合の結果を合算した。
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川越 敏司 (著) kindleあり
https://ysk24ok.github.io/2018/03/10/market_design_for_auction_and_matching.html
第一章 市場メカニズムと情報の問題
市場メカニズムでは、家計や企業が各自で需要曲線や供給曲線を元に判断して取引することで
効率的な資源配分が実現できる。
つまり市場メカニズムは資源配分上も情報処理上も効率的なメカニズムである。
市場メカニズムのように各プレーヤーが分権的に意思決定することで
社会的に望ましい結果に自然と導かれていくような方式をデザインすることである。
そもそもいつでも存在するものなのか(均衡の存在の問題)について述べている。
結論から言うと、市場で取引される材の間に粗代替性が成り立っていれば、
市場均衡は必ず存在し、かつ安定である。
第二章 戦略的行動と市場 - ゲーム理論による分析
第二章では不完全競争の場合について述べる。
不完全競争のうちの協力ゲームにおいて、
誰と協力すべきかという望ましさの指標として個人合理性とパレート効率性の2つがあり、
その2つを同時に満たしているときその配分はコアであるという。
コアな配分は他のどの配分からもブロックされないため、安定性を満たしていると言える。
市場均衡はコアの部分集合であるが、
参加する経済主体が十分多くなるとコアは市場均衡と完全に一致する(コアの極限定理)。
耐戦略性、個人合理性、パレート効率性を同時に満たすような方式は存在しないことが
不可能性定理によって証明されている。
マーケット・デザインでは不可能性定理のために理想的な解決ではないものの、
現実問題に対してある程度ワークするようなメカニズムを考える。
そしてこれが理論上ワークする方式を考えるメカニズム・デザインと大きく異なる点である。
ダブル・オークションは現実ではうまくワークすることが示されている。
第三章 オークションの基本原理
配分の効率性と耐戦略性が満たされるが、
オークショニアの不正、情報漏洩、情報収集のコスト、予算制約など様々な理由で
現実ではあまり使用されない。
売り手の期待収入はどれも等しいことが示されているが、
実験室実験・フィールド実験では収益同値定理は必ずしも成り立つとは言えない。
第四章 複数財オークションのケーススタディ
異質材の同時オークションとなる。
異質材の同時オークションにおいて、
全プレーヤーが評価値を正直に入札することが支配戦略になるような方式をVCGメカニズムと呼ぶ。
しかしVCGメカニズムが実際に使用されることは少なく、
二位価格オークションが現実で使用されることが少ない理由と重複するものを除けば、
NP困難、架空名義入札が可能であるという問題点があるためである。
実際、周波数オークションではVCGオークションでも二位価格オークションでもなく
同時競り上げ式が使用された。
VCGメカニズムでは評価値より低い入札が多く観測された。
耐戦略性は現実ではあまり満たされないのかも?
第五章 マッチング理論の諸問題
その順位に基づいて双方の組み合わせを効果的におこなう方式を研究する分野を
マッチング理論と呼ぶ。
参加者全員にとってこれ以上希望順位が上の相手と組になれないようなマッチングを効率的、
ある方式の下で決まったマッチングをブロックする提携が生まれないようなマッチングを安定的、
参加者全員にとって自分の選好を正直に提出することが最善になるマッチングを対戦略性を満たすと言う。
片方のグループについてのみ耐戦略性を満たすマッチングが可能になる
(不可能性定理によって両方のグループについて耐戦略性を満たす方式は存在しない)。
受入保留方式はカップリングパーティーのような一対一マッチングだけでなく、
研究室配属問題や大学入学問題のような一対多マッチングでも有効である。
カップルの存在や選好の地域偏在、スキッピングダウン戦略などの
現実世界の制約条件を克服するために改良を加えることが必要である。
エピローグ
また、オークション・マーケットデザイン・フォーラムが2012年に設立され、
制度設計について数々の提案をおこなっている。
現場の人々の意見を取り入れつつ改良していくという工学的アプローチが必要である。